Q | 先生は、統合失調症の安定期にはどんな薬物療法を行っていますか。 |
A |
■統合失調症の治療は薬物療法が主体で、それに抗精神病薬が使われることは、他の項で述べました。現在、日本で使用可能な抗精神病薬は、30種類近くあるようですが、私が臨床でよく使うのは、わずか数種類です。特に最近は、非定型抗精神病薬と呼ばれる新しい薬剤を処方しています。それぞれの精神科医がどういう薬を使うかに関しては、その医師の好みや趣味的な面があり、ある1人の患者さんについて10人の精神科医が処方することを仮定した場合、10種類の処方が出ても不思議ではありません。これが正解とか間違いとかというものはありません。従って、ここで述べることが一般的ではない可能性も十分あります。 ■ところで、ここでいう「統合失調症の安定期」とは、急性期の症状がおさまり、徐々に薬の量が減り、この薬さえ飲んでおけばとりあえず当分の間、安定した状態が続くであろうという外来通院の時期をさしており、かなり長期間、つまり数か月以上あるいは数年間もの間、同一処方が続くような場合に相当します。 ■さて、私の場合は、上記の安定期の処方で多いのは、最近は、リスペリドン[リスパダール]2〜4mg/日、オランザピン[ジプレキサ]10〜15mg/日、ペロスピロン[ルーラン]12〜24mg/日、クエチアピン[セロクエル]400〜600mg/日です。 ■以前は、レボメプロマジン[レボトミンなど]25〜100mg/日、スルピリド[ミラドールなど]300〜800mg/日、ゾテピン[ロドピンなど]75〜100/日、パーフェナジン[ピーセットシーなど]8〜16mg/日、ブロムペリドール[インプロメンなど]6〜12mg/日を好みましたが、非定型抗精神病薬が使えるようになった現在、新たにこれらの処方をすることはまれになりました。 ■もちろん、これ以上の量の薬を使う場合もこれ以下の量の場合もあります。誤解していただきたくないのは、これを見て自分の薬の量が多すぎるのではないかと思い、薬の量を減らすのを急ぐことです。薬は時間をかけてゆっくりと減量すべきです。また、人によっては安定した病状を維持するのにある程度の量を使わなければならないことがあります。 ■先日(平成15年4月)、私が外来で継続して診療している統合失調症の患者さん(安定期にある人が大部分を占める)の処方を調べてみたところ、処方人数が最も多いのは、リスペリドンであり、以下、レボメプロマジン、クエチアピン、オランザピン、スルピリド、ペロスピロン、ゾテピンと続いていました。(就寝前に少量のレボメプロマジンが処方されているのは除く。)現在は、おそらくクエチアピンが減り、オランザピンの使用例が少しずつ増えているかもしれません。 ■時に、デポ剤といって1回打つと約1か月の効果が得られる注射を単独で使用したり内服薬と併用することがあります。 (2003.9.14) |