精神分裂病で通院しています。月1回の注射をすすめられました。この注射について教えて下さい。
デポ剤といって特殊な注射剤があります。通常の注射は数時間くらいしか体内に存在しませんが、このデポ剤は油に薬を溶かし込んでいて、筋肉注射するとそれが徐々に体の中に溶け出していき、1回の注射で2週間から1か月間、効果を発揮します。
現在、我が国で使用されている抗精神病薬のデポ剤としては、ハロペリドールとフルフェナジンの2種類しか存在しません。外国ではもっと種類も多く積極的に使用されているようです。
薬を飲み忘れやすい人にはとても便利な注射です。飲み薬と違って、安定した血中濃度が保たれます。また、内服薬よりも薬の総量が少なくて済みます。
時々私も診療で使っています。とにかく薬を飲むのが嫌で何度も入退院を繰り返していた患者さんに、この注射剤を月1回使うことで、飲み薬なしにもかかわらず再入院までの期間を長くすることができた例を経験しています。
作用や副作用は、飲み薬の抗精神病薬と同じです。
しかし、必ずしもこのデポ剤を使ったからといって内服薬をゼロにすることができるわけではありません。病状に応じた細かい薬の調節や副作用止めについては内服薬を併用しなければならないことがあります。また、定期的な受診と注射ができなければ意味がなくなります。それと副作用が出る場合、なかなか体から薬が出ていかないために、それが長期間続く可能性があります。
ところで、この注射は、あくまで病状がある程度安定して維持期に入った時に使用すべきであって、急性期に薬をに飲まないからといって使用すべきではないと考えます。