精神分裂病の薬物療法では、どんな薬を飲むんですか。
■精神科で使う薬物は、大きく分けて次の7つに別れます。
 (1)抗精神病薬(=メジャートランキライザー)
 (2)抗うつ薬
 (3)抗躁薬
 (4)抗不安薬(=マイナートランキライザー)
 (5)抗てんかん薬
 (6)睡眠薬
 (7)抗パーキンソン薬
■精神分裂病では、主に(1)の薬を使います。このお薬は、情動を安定化させたり気分をリラックスさせます。また、恐怖感や敵意、被害的な気持ちを取り除きます。思考をまとまらせたり集中力をつけ、幻覚や妄想をとる作用があります。さらには、さほど確実ではないが、意欲を改善させたり、引きこもりから開放する作用も持っています。
■別名、強力精神安定剤ともよばれます。ここで強力精神安定剤などという名称から、おそろしいイメージを受けるかもしれませんが、作用が強力というわけではなく特徴ある薬理作用の面からそのような名称がついているだけです。精神分裂病という病名と同様、この名称は必要以上に悪いイメージを与えているようです。医師の指示どおりに服用すれば、なんらおそろしいものではありません。むしろ安全性は高い薬剤と言えます。
■効果についてはかなり個人差があります。同じ状態を呈していても、ある人にはAという薬がとてもよく効くが、別の人にはAは全く効果がなくBという薬剤が効果があるといった具合です。
■また、使用量の幅がかなり広いことが特徴です。一般の薬は、1回1〜2錠、1日3回などと使用量が決まっていますが、抗精神病薬の場合は、ある人には1を使うとして別の人には30とか40くらいの量を使います。同じ人でも病状の変化に応じて投与量を変更していきます。
■さらに鎮痛剤や解熱剤のように飲めばすぐ効果が現れるわけではありません。飲み続けていくうちに、じわっと効いてきます。最低、2週間位はみる必要があります。2〜3か月経過してやっと効果が出る場合もあります。それまでは待つことが必要です。
■抗精神病薬で、現在、日本で使用できるものは、20数種類あります。
いくつか、代表的な薬を具体的にあげてみましょう。
一般名
商品名
備考
リスペリドン
現在、世界的によく処方されているようです。
クエチアピン
セロクエル
平成13年2月に発売されました。副作用は少ないです。
オランザピン
ジプレキサ
最も、新しい薬剤です。平成13年6月4日に発売されました。
ペロスピロン
ルーラン
日本で開発された薬です。平成13年2月に発売されました。
フェノチアジン系
一般名
商品名
備考
クロールプロマジン
コントミン、ウィンタミン
標準的、基本的なな抗精神病薬です。しかし、私はほとんど使いません。
レボメプロマジン
レボトミン、ヒルナミン
歴史的にも古い非常にすぐれた薬剤ですが、最初の飲みごこちが悪いので外来では使用しにくいです。私は好んで使います。
パーフェナジン
ピーゼットシー
現在、あまり使用されてませんが、私は比較的好んで使います。
プロペリシアジン
ニューレプチル
現在、あまり使用されてません。
ブチロフェノン系
一般名
商品名
備考
ハロペリドール
セレネース、リントン
標準的、基本的なな抗精神病薬です。しかし、私はほとんど使いません。
ブロムペリドール
インプロメン
一時は、よく使われました。ハロペリドールの副作用を軽くした感じです。
チミペロン
トロペロン
注射剤は、すぐれた鎮静作用を有していると思います。
ベンズアミド系
一般名
商品名
備考
スルピリド
ドグマチール、ミラドール
飲みごこちの比較的よい使いやすい薬剤です。鎮静作用は弱いです。私は好んで使います。
スルトプリド
慣れないと使いにくいですが、すぐれた鎮静作用を持ち、私はよく使います。
ネモナプリド
エミレース
現在、あまり使用されてません。
その他
一般名
商品名
備考
ゾテピン
ロドピン、ロシゾピロン
すぐれた鎮静作用を持ち、私はよく使います。
モサプラミン
クレミン
現在、あまり使用されてません。
オキシペルチン
ホーリット
現在、あまり使用されてません。

■上記(2)〜(7)のお薬は、必要に応じて使われることがあります。