精神分裂病とてんかんの関係を教えて下さい。
■「てんかん」とは、てんかん発作を特徴とする慢性の脳疾患です。てんかん発作では、意識がなくなったり、けいれん(引きつけ)を生じることがあります。
■さて、「てんかん」で、まれではあるが幻覚や妄想など精神病に似た症状を呈することがあり、「てんかん性精神病」(器質性分裂病様障害)と呼ばれます。「てんかん」の病歴が不明であると、「精神分裂病」と区別がつかないことがあります。また、このような場合でも「てんかん」と「精神分裂病」は全く別の病気と考えます。
■ところで、精神分裂病の治療中にけいれん発作を生じることがあります。その原因の多くは、抗精神病薬による副作用の可能性があります。特にゾテピン(ロドピンなど)を1日300mg以上服用する場合、起こりやすくなりますが、他にレボメプロマジン(レボトミンなど)でも大量に使用すれば起きることがあります。他の抗精神病薬でもきわめてまれではありますが全く起きないとは言えません。急性期で、あるいは慢性的に大量の抗精神病薬が投与されていると生じることがあります。
■私は、ゾテピン(ロドピンなど)を多く処方する場合、同時に抗てんかん薬を処方することがあります。一部の抗てんかん薬は気分の安定化作用があるため一石二鳥となります。
■抗精神病薬の副作用としてけいれん発作を生じた場合には、上記のように一時的に抗てんかん薬を併用したり、薬を減量したり、他のけいれんを起こしにくい抗精神病薬に変更するなどの対策を検討します。
■なお、抗精神病薬の副作用としてけいれん発作を生じる場合、精神症状が改善して薬の量が減ったりすると、発作は起きなくなり、たとえ抗てんかん薬を併用していた場合でもそれを中止することが可能でしょう。
■参考までに、精神科で使う薬の中で、抗精神病薬以外では、抗うつ薬であるマプロチリン(ルジオミール)の大量投与でけいれん発作をきたすことがあるようですが、私は経験がありません。
■精神分裂病でけいれんをきたすのは、薬の副作用以外では、水の飲みすぎで水中毒になった時です。水中毒に関しては別の項を参照してください。
(2001.12.9)