クレヨン王国つうしんき

 

 

「クレヨン王国つうしんき」は、TVアニメ「夢のクレヨン王国」で主人公シルバー王女が持ち歩いていた携帯電話だ。玩具のほうは、ガッツウィットの少し後にやはりバンダイから発売された。
本編では主に、旅をしているシルバー王女が王城と連絡をとるのに使用していたが、舞台がメルヘンの世界なんだから、設定がどうのとか電波の到達距離がこうとか、そういう小難しい屁理屈は考えない事にしよう。

 

 

一見してわかるように携帯電話をモチーフにした、かわいらしい形をしている。
ごていねいにストラップまで付属してくるあたり、芸が細かい。
下の方についているカバーを開いてボタンを押すようになっているところなどもなかなか。
上端にはふたつのLEDが付いていて、呼び出し音が鳴っている時や、シルバー王女の声が出ている時には点滅するようになっている。

 

シルバーからの電話は、いつも突然!

この玩具の最大のポイントは時計機能を内蔵している事だろう。
時刻をセットすると、電源を入れておけば朝8時から夜8時までの間、時々シルバー王女から電話がかかってくるのだ!これは面白いアイデアだ!!
それも、ガッツウィットとは違って2時間おきにかかってくるようになっているので、うっとおしくて困るという事もない。忘れた頃に突然電話が鳴るというのが絶妙で、大変よろしい。
勘のいい人は気付いたと思うが、これはあの「たまごっち」と同じシステムだ。非常に上手い応用の仕方だと思う。
出かける時に、本当に持ち歩いてもらう事を考えているのだろう。電源をオンにしても、うるさい作動音は無しだ。

また、当然ながらこちらから電話をかけてお話をする事も出来るし、しかもそうすると30秒後には自動的にシルバーからも電話がかかってくるようになっている。いっぱいお話したい時にはどんどん電話すれば、向こうからもどんどん電話してくるという寸法だ。
せっかちな子供もこれで大満足。
それだけではない。シルバーからの電話を聞く事が出来なかった場合には、後から留守番電話で聞く事ができるようになっているのだ!

まったく巧妙に作られている。わしは本気で感心した。

 


裏面に書かれている番号案内

 

そのうえ、シルバーとジャンケン勝負が出来る「ジャンケンダイヤル」や、占いが出来る「占いダイヤル」といった遊びの要素も備えていて、さらに時計機能を利用したモーニングコールも出来るようになっているなど、実用性も高い。
これで時刻を表示できるディスプレイがあれば、実際に時計としてもつかえて最高だったのだが、さすがにそこまで求めるのはぜいたくというものだろう。

しかもこれで値段は2980円。ガッツウィットよりも1000円も安いのだから素晴らしい。

 

それでもやっぱり……

ただ、この玩具の最大の弱点は、肝心のおしゃべりの内容が少ないという事だ。
何度話をしても、「アラエッサ」「ストンストン」のどちらかが「ずっこけて笑っちゃった」「大食いでしょうがないの」というだけ。他のおはなしは一切なし!
留守電の内容も決まっていて、「シルバーよ!電話してね」というだけ。
いくら楽しいつくりになっていても、これでは興ざめだ。

話す時刻によって「おはよう!シルバーよ!!」「こんにちは」「こんばんは」に変わったり、向こうから電話してきた時は最後に「また電話するね!」というのが、こちらからかけた時には「また電話してね!」になるなど、細かいところに気を配っているのは好感が持てるのだが……。

それから、上のふたつのボタンは透明カバーの中に収められていないので、ポケットやカバンなどに入れておくと、押したくなくても勝手に押されてしまう時がある。持ち歩く事を想定しているのなら、出来ればこれもカバー内に収めて欲しかったところだ。

 

はっきりいって、もう1000円高くてもいいからしゃべる内容を豊富にして欲しかった。
システム的には文句なし、携帯電話玩具の最高傑作だと思う。
実際に持ち歩いてもらおうというコンセプトも、全く素晴らしい。
しかし、一番大事な部分を削ったのは絶対に失敗だ。実に惜しい。

だが、シルバー王女の声は、やっぱりかわいい。
朝、シルバーの声で起こされるのは、なかなかいい気分である。
それだけでも、この玩具は買う価値があると思う。

 

 

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