ウルトラマンガイア
変身装備 エスプレンダー

ウルトラマンガイアへ、光と音で変身だ!!

 

 

ウルトラマンというキャラクターは、科学が途方もなく発達した星からやってきた宇宙人だ。
だが、単に超文明の異星人というだけではなく、地球人類を優しく見守る超越的存在、神のごとき守護者といったような雰囲気もあり、それはウルトラセブン以降の「ウルトラの仲間たち」にも多かれ少なかれ受け継がれていく事となった。当然ながら、その性格は変身アイテムにも現れていく。

 

ハヤタ隊員が持っていた「ベーターカプセル」には、放送開始以前に作成された初期設定では非常にSF的な、説得力のある科学的な説明が用意されていた。
ウルトラマンのエネルギーは「太陽光線に含まれているβ線」であり、ハヤタ隊員は一回分の活動エネルギーを封入した「βカプセル」を常に携帯している、という設定が、ちゃんとあったのだ。
しかし劇中では、「ウルトラマンを支える太陽エネルギーは、地球上では急激に消耗する」という漠然とした説明がナレーションで語られるだけで、ベーターカプセルとは何なのか、きちんと説明される事は一度もなかったし、その機能がストーリー上で活かされる事も、ほとんど無かった。

ウルトラヒーローの変身アイテムは、もともと最初の時点であまりメカニック性が強調されず、象徴的な扱いだったわけだ。
それが意図的なものだったのかどうかはわからない。まあそれはともかく、以後のシリーズでも、メカニックとしての面だけでなく、それと同時にシンボル的な側面を備えるようになっていったのは確かだ。
「異星人が姿を変えるときに使用する装備品」であると共に「奇跡を呼び起こす神器」でもあるという、二種類の性格を併せ持つようになっていったのだ。

 

ウルトラマンAのウルトラリングなどは、それが顕著に表れているわかりやすい例だろう。機械ではなく「指輪」という時点で、もう既にかなりシンボル的だ。
第一話の冒頭、超獣ベロクロンに立ち向かって倒れた北斗星司と南夕子のもとに、ウルトラ五兄弟が勢揃いして二人にウルトラリングを授ける場面などは、SFというよりは神話の一節といった趣である。
リングさえ持っていれば好きな時に変身できる、というわけではない所も特徴的だ。人類の力ではどうにもならない危機が迫った時にだけ、指輪が輝いて「今こそ変身の時だ!」という事を示すのである。
はじめから奇跡をアテにして、自分では何もしない人間の前には、ウルトラマンは現われない。ウルトラマンは便利なお助け屋さんではないのだ。不可能としか思えない物事にも最後まであきらめずに、全力で立ち向かった結果として「奇跡が発現する」のである。

 

そう、人間と合体したウルトラマンの場合、変身アイテムは「神様からの授かりもの」なのだ!
平成になって登場した「ウルトラマンティガ」や「ウルトラマンダイナ」は、昭和のウルトラヒーローとは少し性格が違っているが、変身アイテムの扱いについては、それほど違いはなかった。それどころか、超古代の戦士という設定を意識したのか、神秘性が以前のものよりも強調されたデザインになっていたほどである。
ところが、「ウルトラマンガイア」に登場する変身アイテム「エスプレンダー」の場合は、それまでのウルトラマンとは大きく違った描かれ方が驚かせてくれた。

 

 

光を開放するから、エスプレンダーだ!

 

地球に破滅をもたらす「根源的破滅招来体」が最初に飛来した時、「光」を手にしてウルトラマンとなった青年、高山我夢。
彼は、その「光」を、たまたま持っていた実験用の光電子管に入れて持ち帰る。
その後、自分で作った手のひらサイズの小さなメカに「光」を移し、以後はその「自作アイテム」で変身するようになった。

今まで、数多くのウルトラヒーローが登場してきたけれども、変身用のアイテムを自作する場面が描かれたヤツはこいつが初めてだ。
科学の力で変身するような特撮ヒーローでさえ、変身アイテムを自分で作ったなんてパターンは、意外に少ないくらいなのに…。

この我夢という青年は、天才的な頭脳を持つ科学者の集団「アルケミー・スターズ」の日本代表という設定になっている。
特捜チーム「XIG」では、その頭脳を活かして、様々な異変を調べて原因を解明したり、怪獣を分析して対策を考案する、といった役目を果たしていた。
ややオタクっぽい雰囲気もある知的な理系のお兄ちゃん、という、ウルトラシリーズではちょっと珍しいタイプの主人公なのだ。
変身アイテムを自分で作ってしまう、というのも異色だ。しかし、異色なだけに印象に残るし、我夢というキャラクターをわかりやすく表現していて、なかなか上手いなあ、と思ったものである。

「エスプレンダー」という名前も、「光を開放する」という意味で彼自身が付けたものだ。
こっそり完成させた自作アイテムに名前なんか付けて、オマケにうれしそうに手に持って一人でポーズなんかとったりする場面があり、なかなか微笑ましくてナイスだった。しかも、そこへ同僚の女性がやってきてあわてたりするのが、よけいに微笑ましくてナイスだ。

 

 

ピンチの連続!そんな時、ウルトラマンが欲しい!

 

玩具の「エスプレンダー」は、おなじみバンダイから「変身装備 エスプレンダー」の商品名で玩具が発売された。
前々年の「ウルトラマンティガ」や、前年の「ウルトラマンダイナ」に登場する変身アイテムがスティック型だったのに対して、エスプレンダーは恐竜戦隊ジュウレンジャーの「ダイノバックラー」を思わせるバックル型アイテムになったのが特徴的だ。
デザインは、ガイアの胸にある「ライフゲージ」(いわゆるカラータイマーに相当する部分)をイメージしているように思われる。カラータイマー部分はウルトラマンの命を示す象徴でもあるわけで、ガイア以外のウルトラヒーローでも、変身アイテムのデザインモチーフとして時々使われている。

ティガの「スパークレンス」やダイナの「リーフラッシャー」は、「古代のウルトラマン」という事を意識したのか、ファンタジー系のアニメなどに出てきそうな、なにやらマジックアイテム的なデザインになっていた。面白いとは思ったけれども、ストレートなカッコよさはあまり感じられないものだったので、個人的には多少の不満もあった。
それに対してエスプレンダーは、作品世界が前ニ作とは無関係という事もあり、見た目もかなり違ったスタイルになっている。
すげーカッコイイ!と大絶賛するほどではないが、前ニ作よりは比較的なじみやすいデザインだと思う。

 

玩具の外観は、形状自体がシンプルな割に、かなり目立つという印象がある。
全体がゴージャスなゴールドで、中央の発光部分は涼しげなブルー、というカラーリングのためだろう。

ゴールド部分は塗装ではなくメッキパーツだが、ざらざらした梨地仕上げになっており、安っぽく見えないように工夫されているのがちょっと上手い。
ただし、劇中で使用している小道具では、フラットな仕上りになっている。
劇中と同じでなければイヤ!と感じるか、コレはコレでイイ!と思うか、人によって意見が別れるところだろう。

ブルーの発光部分は当然ながらクリアパーツだ。
戦隊ブレスの発光部などに比べるとかなり広い面積があるが、裏側に施されたモールドのために、内部の基盤やLEDは見えにくくなっている。

 

 
裏側。グリップは可動式。起こして手に持つ。

 

 

 

光をつかめ!

 

右手に持つと親指に当たる部分に丸いスイッチがある。電源をオンにしたら、さあ、スイッチを押そう!、変身サウンドが鳴り響き、同時にLEDが点滅発光する!
クリアパーツの裏側にあるモールドがクロスフィルターの代わりになるので、LED発光時には光が十字型になる。ちょっとした事だが、けっこう効果的な仕掛けだ。
スパークレンスの発光部分なども同じようになっていたが、エスプレンダーの場合は内蔵LEDが五個もあるので、効果がより際立っている。

その五個のLEDも、一度に全部が光るのではない。まず中央の一個が光り、やがて両脇も光り出して三個になり、最後に五個全部が光る、というようになっている。
しかも、一個、三個、五個と増えるたびに、ゆっくり点滅していたのがだんだん早い点滅へと変化するのも上手い。
エスプレンダーが発する光のパワーが、だんだん強く、激しくなっていくように見えるのが楽しい。

 


最初は中央のLEDがゆっくり点滅を始め…


やがてそれが三個になり…


最後は五個が激しく点滅!写真では見えないが、実際はもっとはっきり十字型に光る。

 

 

変身サウンドも、なかなかパワフルでカッコイイ。単に音がカッコイイだけではなく、LEDの光とシンクロするように、ビャビャビャビャ…と徐々に盛り上がっていって、最後にズギャーン!と一発ぶちかますカンジなのがいい。
スパークレンスやリーフラッシャーの変身サウンドは、「キラキラした感じ」はよく出ていてキレイな印象の音だったが、力強さには欠けていた気がしたので、個人的にはこちらのほうが好みだったりする。

 

欲をいえば、LEDの輝度が低いのか、それともクリアパーツの透明度が低いからか、光が弱いのが少々残念だ。
しかし、それが気になるのは「光の巨人」である「ウルトラヒーローの変身アイテム」だからであって、戦隊ヒーローなどであれば、何とも思わなかっただろう。

他に欠点を挙げるとするなら、前ニ作と違ってカバーが開いたり発光部が起き上がったりするようなギミックが無く、アクション的に少々寂しいものになっている事だろうか。人によっては少々物足りなさを感じる部分もあるかもしれない。

 

まあ、多少は物足りなさもあるが、五個のLEDが横並びになっていて、それが一度に発光するというのはなかなか豪華だ。
それに加えて、近年の特撮ヒーローでは少なかった「主人公が自作した変身アイテム」というのも非常に印象的だし、個人的には非常に好きだったりする。

 

 

 

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