ヤダリンのひとりごと
ジプレキサによる死亡報道について
平成14年4月17日

 ジプレキサ(=商品名、一般名はオランザピン)による死亡例が大大的に報道された。当院でも今朝、薬剤部から院内パソコンネットワーク上で流されており、また厚生労働省より出された情報提供のコピーが各医局員のデスク上に置かれていた。日本では平成13年6月に発売後、約10か月間に、ジプレキサと因果関係の否定できない重篤な高血糖、糖尿病性ケトアシドーシス、糖尿病性昏睡の副作用症例が9例報告され、そのうち2例は死亡したというものである。ジプレキサは非常に期待されていた非定型抗精神病薬の一つであるだけに残念である。ジプレキサはこれまで84か国で約800万人に処方され、日本では平成13年12月末現在、13万7000人に使用されているとされる。なぜか特に沖縄県での処方頻度が高いらしい。私もかなり多くの患者さんに処方してきた。そして著しく病状が改善した例も経験した。でも、たとえ2例であっても死亡者が出た意味は大きい。

 抗精神病薬による食欲増進や体重増加については、よく話題にされるが、必ずしもそれが悪いばかりではなく、病状改善の指標になるとも言える。しかし、ジプレキサによる体重増加は人によっては著しいものがある。ジプレキサの服用者皆に当てはまるわけではないが、中にはこれまでみたことないくらいのスピードでみるみるうちに肥満になっていく方がおられるのは事実である。

 このような緊急安全性情報が出たからには、我々も慎重にならざるを得ない。しかしながら、また不必要な不安をいだくこともまた問題である。副作用のない薬はない。すべての薬は、効果とともに副作用を持つ。大切なことは、副作用に関する知識を持っておくこと、その早期発見と対処法である。副作用が出る場合もあれば、出ない場合もある。すべての人に出るわけでもない。副作用にも重大な副作用と、一時的にはやむを得ない危険性のない副作用があり、それを判別することが重要であろう。副作用を恐れるあまり、適切な治療ができないのは困るし、また、薬が信用できなければ、効果も半減するであろう。

 現在、ジプレキサを服用している人は多い。どうか、パニックにならないで欲しい。ジプレキサにより副作用の出現なく非常に良好に病状がコントロールされている人すべてが、副作用をおそれるあまり、ジプレキサを中止して、他の薬剤に切り替えなければならないわけではない。引き続き服用可能な人も多いはずである。重要なことは、糖尿病の人には使えないこと、そして、血糖が上昇することがあるので定期的に検査を受けること、あまりにも喉が渇いたり、水を飲みすぎたり、トイレに頻回に行くようになった時には担当医に必ず報告することである。今回の報道で必要以上に不安にならないこと、そして疑問な点は主治医に聞くことを強調したい。

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