TOPIC No.2−31N-3 2007年度 中国状況


中国、穀物輸出に関税 食品高騰で異例の措置

2007年12月30日 中国新聞ニュース

 【北京30日共同】中国財政省は30日、2008年1月1日からの1年間、小麦やコメ、大豆など穀物と穀物製品の8種類57品目に5−25%の輸出関税を課すと発表した。

 食品類の価格高騰に歯止めがかからないため、関税を課して穀物輸出を減らし国内消費向けに回すことを狙った異例の措置。ただ、中国の農産品の一大輸入国である日本を含め、新たな関税が国際市況に影響を及ぼす可能性もある。

 税率は麦類が20%、麦類製粉が25%、コメ、トウモロコシは5%などとなっている。財政省は小麦やコメなどの輸出を促す輸出還付税を20日から廃止したばかりだった。

 中国では11月の消費者物価指数が前年同月比で6・9%上昇。特に食品価格は同18・2%と大幅に上昇している。食品価格高騰は特に中低所得者の家計を直撃し、社会的な不満の高まりを懸念する声も出ていた。

2008年中国企業の養老金:1人あたり100元増に

2007/12/28 CHINA PRESS

 12月27日、中国労働保障部養老保険司の副司長である尹志遠氏は、中国政府公式サイトで、「2008年より、企業定年養老金の水準を、2007年の実施を基に10%前後引き上げ、毎月1人あたり100元(約1600円)前後増加する見通し。」と語った。

 尹志遠氏によれば、中国各地の経済発展レベル・収入・物価の増加幅にはそれぞれ格差があり、養老金支払能力、財政支援能力も違う。

 それゆえ、2008年の各地における養老金調整水準も画一ではないという。

 また、中国国務院によって、2005―2007年、企業基本養老金の水準は3年連続で上昇しており、2008年―2010年もまた3年連続で上昇するという。伸び率は2005―2007年を上回る見通しとのこと。(China Press 編集部:徐)

GDPの1.35%投資、数値目標も…中国「環境中期計画」

2007/12/25 FujiSankei Business i.

 中国の国務院(中央政府)は国内総生産(GDP)の1・35%相当を環境保全関連の投資に充当することを柱とした2010年までの「環境中期計画」をまとめた。10都市の汚水処理率を70%以上に向上させることなど具体的な数値目標も盛り込んだ。同時に輸出企業に対する環境検査の強化を図る。一方で、来年1月から全国規模で環境汚染源調査にも着手するなど、包括的な環境政策を推進する。日本も環境問題では対中支援に積極的で、27日からの福田康夫首相の訪中時でも、焦点の一つとなりそうだ。(河崎真澄)

 ≪SO2削減へ≫

 中国の環境投資は00〜05年はGDPの1%強だったが、新たにまとめた中期計画では、主要汚染物質の排出削減目標を達成するための具体的措置を規定して、環境保護への強い決意を示した。

 中国では現行5カ年計画(06〜10年)で、二酸化硫黄(SO2)の排出を10%削減する方針を打ち出している。しかし初年度の06年は逆に小幅増加したほか、今年も目標の削減率には届かなかったもよう。中期計画では排出量は環境が受け入れ可能な水準を超え、汚染は深刻だと警告した。

 中期計画では汚染源への対策による水や大気の質の改善と、廃棄物の処理、監視態勢の強化など重点分野ごとに、数値目標を含んだ詳細な措置を規定した。地方政府に半年に1回の環境報告の公表を義務付けている。

 ≪責任者配置を≫

 さらに国家環境保護総局と商務省が連携し、輸出企業に対する環境検査を強化する。汚染物質の違法排出など悪質な企業を摘発し、対外貿易を一定期間禁ずるなどの処罰を行う。輸出コスト低減のため、環境対策を怠る企業が多数みつかっているためだ。海外で中国製品の安全性に対する批判が強まる中、環境対応の強化をアピールする。

 環境検査は地方政府の環境保全部門が、エネルギー消費と汚染物質の排出が多い企業を重点的にチェック。違法企業のリストを定期的に中央政府に通知して、輸出業務停止などの処分を行う。

 このほか冶金(やきん)、セメントなど環境汚染リスクが高く、貿易規模の大きい業種について、企業内に環境管理組織を設け、環境監督責任者を置いて企業の対策や汚染状況を報告するよう要請した。

 ≪全国規模調査≫

 一連の環境保全政策の基本データとして、国務院は来年1月から、初めての全国規模の汚染源調査に着手するため、「全国汚染調査条例」をまとめた。工業や農業、家庭の各部門で詳細に調査してデータベースを構築する。環境保全政策実施の裏付けとする方針だ。

 工業部門では原材料の使用状況。生産、排出段階の各種データを、農業部門では用水、排水の状況、農薬、飼料の使用状況など、環境汚染につながる実態を調査する。企業が虚偽の報告をしたり調査を拒否したりした場合には、最高5万元(約80万円)の罰金を科すなど強制力ももたせた。

 中国の環境保全に対しては、今月初めに北京で行われた閣僚級の「日中ハイレベル経済対話」において、汚染物質削減と地球温暖化防止の双方に効果がある「コ・ベネフィット(相乗便益)」型事業を中国で実施することで合意するなど、日本も政府レベルで支援を行う。福田首相の訪中では日中共同での環境保全もテーマとなる見通し。

中国、0・18%追加利上げ 景気過熱抑制、今年6回目

2007年12月20日 中国新聞ニュース

 【北京20日共同】中国人民銀行(中央銀行)は20日、景気過熱抑制のため金融機関の貸出基準金利を21日から1年物で0・18%引き上げると発表した。預金基準金利は1年物定期で0・27%引き上げる。中国の利上げは9月半ば以来で、今年6回目。

 貸出基準金利は7・47%、預金基準金利は4・14%となる。

 中国当局は利上げや銀行に対する貸し出し抑制指導で金融引き締めを図っているが、過大な投資や通貨供給量の大幅な伸びが続き、消費者物価指数も8月以降、政府目標(3%以内)を上回る6%台の上昇率が続いている。

 中国共産党と政府は今月3−5日、来年の経済運営方針を話し合う中央経済工作会議を開催。金融引き締めを一段と強化していく方針を打ち出していた。

大富豪ランキングが物語る中国超絶格差社会

2007年12月12日 月刊アスキー 2008年1月号掲載記事 文●山谷剛史

2007年に倍増!中国富豪No1の資産額

 フォーブス誌(アジア版)が中国の金持ちランキングベスト40を、また中国の胡潤誌が同じく金持ちランキングを発表した。

 フォーブスの栄えある1位は26歳の若き不動産女王の揚恵妍さん。揚恵妍さんは広東省に根ざしている不動産業「碧桂園」の執行役員を務めている。その資産額は160億ドル。日本円にして約2兆円なのだからスケールにただ脱帽するばかり。ちなみに氏は中国一の金持ちではあるが、中国の百度で画像検索をかけてみると意外といっては失礼だけど、着飾らない氏の写真がたくさん出てくる。

 4位までは不動産または不動産絡みの企業が並び、ベスト40を見てもそのほとんどが不動産で占められている。住宅バブルと言われている中国らしい現象といえる。

 不動産以外で目立つのが、5位の大手電器チェーン店「蘇寧」の張近東氏(40億5000万ドル)。蘇寧と家電販売で一騎打ち状態となっているライバルの「国美電器」黄光裕氏(30億6000万ドル)も10位にランクインしている。

 太陽光発電も注目したい。6位に「LDK Solar」彭小峰氏(30億8500万ドル)が、30位に「天威英利」の苗連生氏(10億ドル)がランクイン。中国でも太陽光発電が投資先として注目を浴びていることの証だ。

 気になるIT業界はというと、検索の「百度」の李彦宏氏(20億3500万ドル)が21位、オンラインゲームほか医薬や金融の方面にも業務を拡大している「巨人集団」の史玉柱氏(20億2000万ドル)が24位、人気のチャットソフトを提供する「騰訊」の馬化騰氏(10億3600万ドル)が40位にランクインした。史玉柱氏は元々はプログラマであったが、現在は様々な事業を手がけているため、純粋にITで財を得たとはいい難い。とすれば純粋なIT長者は百度の李彦宏氏と騰訊の馬化騰氏だ。この2人の企業が提供する各サービスは中国の若いPCユーザーなら誰もが知っているものだ。

 中国富豪ベスト40の業種 不動産がダントツ1位で、旧来の製造業が2位に、鉱業が3位となっているあたりに、時代が変わっていることが見て取れる。ITのほか太陽光発電など新時代の業種も少ないながらランクインしている。

 中国富豪ベスト40の所在地 今や香港よりも本土に金持ちがいる時代なのだ。また、四川省と湖南省を除き皆沿岸部の省に集中しており、沿岸部と内陸部の格差があるのは興味深い。

 不動産業に関わる人々が中国屈指の富豪となったのは、単に地価が上がって利益を得ただけでなく、中国内外からの投資により不動産関連の株が急上昇しているのも一因だ。胡潤誌では800位まで紹介しているが、800位の資産でもおよそ120億円にもなる。

 資産家が次々と生まれる一方、中国の掲示板ではこのトピックが大変な話題となっており、僻みのようなコメントがそれを埋め尽くしている。インターネット利用者の多くが生活すらままならない収入しか得ていない。多くの人の収入は1万〜3万円程度なのだ。中国における、日本どころではない貧富の差がこのトピックひとつとっても垣間見ることができる。

「乳製品のブラックホール」中国、世界市場に打撃

2007/12/03 朝鮮日報/朝鮮日報JNS リュ・ジョン記者

 中国が「乳製品のブラックホール」と呼ばれるほどの大量消費国に浮上、世界のチーズ市場に打撃を与えている。

 韓国貿易協会によると、今年1月から10月までの中国のチーズとカード(凝乳)=チーズの中間材料=輸入額は4308万ドル(約47億7000万円)で、前年の3813万ドル(約42億2000万円)より34.6%増えた。これは2000年の392万ドル(約4億3400万ドル)に比べると約11倍もの増加だ。1997年、北京に第1号店を出したピザハットは現在、上海・広州など50都市170店舗へと拡大している。

 中国人一人当たりの牛乳消費量も01年の2.2キロから05年には8.8キロと、4年間で4倍に増えた。特に、昨年4月に温家宝首相が「わたしには夢がある。中国人が毎日、牛乳500ミリリットルを飲むことだ」と発言して以来、中国人の牛乳消費量はさらに急速に増えている。

 韓国のチーズメーカー、サンハチーズのシム・ギチェ外資購入担当は「牛乳10カップからチーズ1カップ分ができる。牛乳の供給が画期的に増えない限り、チーズの値上がりは今後も続くだろう」と話している。

 こうした中、世界の乳製品市場は影響を受けている。AP通信は今年6月、「米国の各ピザ店は昨年よりチーズの値段が78%上がり、経営が非常に厳しい」と報じた。そして「今までは目分量でチーズを載せていたベテランピザ職人も、今は計量コップでチーズの分量を量っている」という。

 イギリスのネットニュース、テレグラフも「今年は中国人のチーズ消費量増加やオーストラリアの干ばつが重なり、イギリス国内のチーズ・バター価格も最近30−40%上がった」と報じた。高麗大学経済学科のカン・ソンジン教授は「中国の所得水準が上がり、西欧文化が流入したことからチーズ・牛乳だけでなくコーヒー・小麦粉といった食料品の価格が上昇している」と言う。カン教授は「2008年の北京オリンピックを前に、食料品や原材料の需要が急増、中国の「ブラックホール」現象は一層深刻になるだろう」とみている。

中国のごみ堆積量70億トン 占有面積、琵琶湖並み

2007年11月29日 中国新聞ニュ-ス

 【北京29日共同】中国都市部で排出されたごみの堆積量が70億トンを突破、600平方キロに上る土地を占有していることが、29日までに分かった。中国自然資源学会など研究団体の専門家らがこのほど、北京での記者会見で明らかにした。約670平方キロの琵琶湖にほぼ匹敵する面積が、ごみで埋まっている計算になる。

 大部分が野積み状態で、全体の50%近くが有害物質除去などの処理がされていない実態も報告された。急速な経済発展でごみ排出量が爆発的に増える中、処理システムの不備が深刻な汚染をもたらしている。

 中国自然資源学会の董鎖成常務理事によると、全国668市のうち、約3分の2の市で廃棄物処理制度が機能しておらず、郊外の至る所にごみの山ができている。中小都市の中には廃棄物処分場がない市もあるという。

イタリアで中国産トマト急増 基本食材の侵食に危機感

2007年11月24日 中国新聞ニュ-ス

 パスタやピザなどさまざまなイタリア料理に使われ、同国では食材の王様格のトマト。その本場に中国産が押し寄せており、イタリアの農業生産者団体コルディレッティは国産ものの消費を呼び掛けている。

 コルディレッティの発表によると、トマト製品の中国からの輸入量は近年増加し、今年は前年比163%の急増となった。中国は世界屈指のトマト生産国で、そのほとんどが輸出用。

 イタリアが輸入したトマト製品は、そのまま瓶詰めされたり、味付け加工して「イタリア産」パスタソースとして出荷され、一部は輸出されている。

 これまでの法令では、容器詰めした場所を産地として表示できたが、トマト農家が強く反対したため、来年1月からは、濃縮加工したトマトピューレについては原産地表示が義務付けられることになった。

 コルディレッティのマリーニ会長は「皮むきトマトなどについても原産地表示を求めていく」と語った。(ローマ共同)

成長率「11.5%」温首相“初予測”インフレを警戒…GDP見通し

2007/11/22 FujiSankei Business i.

 国営新華社通信は21日、シンガポール訪問中の中国の温家宝首相=写真(ロイター)=が、今年の中国の国内総生産(GDP)成長率が11・5%に達するとの見通しを示したと伝えた。中国のトップが今年の成長予測を明言したのは初めて。昨年(11・1%)に続く11%台の高成長であり、温首相は「景気過熱とインフレの防止」が大きな課題と指摘した。

 温首相はシンガポールの中国大使館で講演した際に経済予測に言及した。中国経済は今年1〜9月期も11・5%成長。温首相の見通しは、10〜12月期も11%台半ばの成長を政府が見込んでいることを示した形で、今後、金融引き締めなどの調整策を強化するとみられる。

 温首相はまた、経済政策面の当面の課題として(1)成長優先の粗放な発展方式の転換(2)農業の基礎とサービス産業発展の重視(3)国有企業改革の推進−などを指摘。また、GDP1単位当たりのエネルギー消費を2010年までに05年比20%削減するなどの省エネ目標の達成に全力を挙げる姿勢を改めて示した。

 今年10月に6・5%に再加速した消費者物価上昇率については、供給を確保し円滑な流通を保証することで抑制を図る姿勢を示した。

 中国は今月末か来月初めに、来年の経済政策を決める経済工作会議を開催する見込み。温首相のシンガポールでの発言は、会議に向けた中国政府の認識を明確にしたものと言える。(北京 時事)

死の海を救え、中国・渤海湾浄化で運河構想

2007/11/23 朝鮮日報/朝鮮日報JNS 北京=李明振(イ・ミョンジン)特派員

 中国政府は、深刻な水質汚染で「死の海」となっている渤海湾の浄化を図るため、大規模運河の建設を計画している。

 渤海湾と西海(黄海)の間にある山東半島を南北に貫く運河を建設し、よどんでいる渤海湾の海水が西海の海水と混ざるようにすることで、渤海湾の水質を浄化するのが狙いだ。天津−上海間の航路も約300キロ短縮され、物流費用の節約も見込める。

 運河は渤海に面した莱州と西海側の青島郊外にある膠州を結び、長さが110−130キロ、幅200メートル、深さ10メートル規模。建設費は1000億元(約1兆4600億円)が見込まれる。

 中国政府は運河建設を含む「渤海湾環境保護計画」を第11次5カ年計画(2006−10年)の戦略プロジェクトに盛り込み、11の関係官庁のうち10官庁から建設に向けた同意を取り付けた。

 現在渤海湾には、毎年57億トンの汚水と216万トンの汚染物質が流入している。専門家は現在の状態が続けば、10年後には生物が生息できない「死の海」に変わると警告している。

 しかし、運河建設より渤海への汚染物質流入を遮断するほうが経済的で、運河を建設すれば西海までもが汚染されるとの反対論も根強い。運河が通過する地域では土壌が塩分による被害を受けることも考えられる。

中国経済の実体は公式統計の4割減、米エコノミストが発表

2007年11月15日 AFP News発信地:ワシントンD.C./米国

【11月15日 AFP】米シンクタンク「カーネギー国際平和基金(Carnegie Endowment for International Peace)」のシニアアソシエイト、アルバート・ケイデル(Albert Keidel)氏は14日、中国の実質経済は直近の公式統計よりも40%小規模であるとの見方をAFPとのインタビューのなかで示した。

 元米財務省官僚で世界銀行(World Bank)でエコノミストを務めた経験もあるケイデル氏は、アジア開発銀行(Asian Development Bank、ADB)のデータおよび世銀のガイドラインを基に、為替相場の影響を受けない購買力平価(PPP)ベースで中国経済の各種統計を算出しなおした。その結果、実際に中国政府が公表している数値と比べて40%低い数値が得られたという。

 また、世銀が貧困の基準として定める1日1ドル未満で生活する貧困者の中国における人数は、現行推定の3倍となる3億人だった。

 購買力平価(PPP)ベースによる中国実質経済の算出を行ったのは、ケイデル氏が初めてだという。

 「今回の算出で得られた数値は、中国政府の重視政策が、国内経済の発展、公共投資、公害対策、貧困削減といった国内事項に偏重する理由を明確に物語っている」(ケイデル氏)

 このほか、2005年の中国の国内総生産(GDP)は約5兆ドル(約553兆円)、米国は約12兆ドル(約1330兆円)となった。

 この結果に基づけば、中国が日本を抜いて世界第2の経済大国となり得ることはあっても、2030年以前に世界最大の経済国である米国を抜く可能性はなくなる。

 ケイデル氏の同分析・算出結果は、カーネギー国際平和基金の報告書および英フィナンシャル・タイムズ(Financial Times)紙にも掲載されている。 (c)AFP/Rob Lever

中国、温暖化対策で基金…排出権取引の売却益など活用

2007/11/10 FujiSankei Business i.

 中国政府は9日、温暖化ガスの削減など気候変動対策の一環として、資金・技術支援を担う「中国クリーン開発メカニズム(CDM)基金」を正式に発足させた。国連のCDMプロジェクトに基づく温暖化ガス排出権の売却益、国際金融機関の支援を原資に、省エネと汚染物質排出削減に向けた一連の政策を補完する。

 12月にインドネシアのバリ島で開かれる国連気候変動枠組み条約第13回締約国会議(COP13)を前に、独自の政策努力をアピールした。中国は、温暖化ガス削減について、先進国が率先すべきだとの立場を維持し、義務的な削減目標は一貫して拒否している。

 基金を運営する財政省のCDM基金管理センターによると、主な使途は(1)エネルギー消費効率の向上と省エネ対策(2)政府部門の人材育成と国民の啓蒙(けいもう)(3)再生可能エネルギーの開発・利用の支援−など。また、一部は「適切な」金融商品に投資して基金を充実させるという。

 中国国家発展改革委員会によると、中国政府が今年10月末までに承認したCDMプロジェクトは885件。これによる温暖化ガス削減量は二酸化炭素(CO 2)換算で15億トン。排出権の売却収益は150億ドル(約1兆6900億円)となり、うち30億ドル強を基金に充当する。(北京 時事)

中国政府、ハイテク産業奨励…「外国企業投資目録」改訂

2007/11/09 FujiSankei Business i.

 中国政府は8日までに対中直接投資のガイドラインである「外国企業投資産業指導目録」の2007年改訂版を発表した。12月から施行する。対外開放継続の基本方針を維持して経済発展と外国の資本、技術力を吸収する一方、内需の急拡大に直結する資源開発分野では規制を強化する。

 共産党機関紙の人民日報によると、国家発展改革委員会などがまとめた同ガイドラインには、ハイテク産業や新素材製造業への投資を奨励する方針が盛り込まれた。01年のWTO(世界貿易機関)加盟を受けてサービス業に関しては規制緩和を進めるとしている。

 省資源と環境保全策として再生可能エネルギーや循環経済などへの投資を新たに奨励項目に追加。環境汚染やエネルギー・資源を多く消費する外国企業の事業は禁じる。さらに、貴重な鉱物資源に対し、外国企業による調査や採掘を禁止して国家による資源確保を進める。このほか、国家的な戦略産業についても外資参入規制を一部で強める方針だ。

 一方、米国などから貿易黒字削減の努力を求められていることに対応し輸出重視の方針を修正した。政策変更の姿勢を内外に示すことで批判をかわす狙いとみられる。

北京−上海間を時速300キロ…高速鉄道計画で国務院に統括組織

2007/10/31 FujiSankei Business i.

 中国国務院(中央政府)は30日までに、北京−上海(全長1318キロ)を時速300キロ以上で結ぶ旅客専用高速鉄道プロジェクトを統括する、曽培炎副首相をトップとする指導組織を設置した。

 中国政府は先に、北京−上海線の事業化研究報告を承認。指導組織の設置を受け、投資総額2200億元(約3兆5200億円)の大型プロジェクトが本格始動する。

 中国は2010年までに総延長7000キロの旅客専用高速鉄道を建設する予定。北京−上海線はその基幹路線で、鉄道省は年内に線路基盤の建設に着工する方針だ。ただ、関係者は完成までには5年程度はかかるとみている。

 高速車両は、日本の新幹線、仏アルストム、独シーメンスなどからの技術導入をベースに、本体は中国メーカーが製造する。中国は今年4月、在来線の高速化を実施し、「はやて」型車両などを使用して時速200キロ以上の営業運転を開始した。(北京 時事)

世界時価総額トップ10中国5社ランクイン…上海、香港株価高騰反映

2007/10/31 FujiSankei Business i.

 上場企業の時価総額で世界のトップ10社に中国企業が初めて5社ランクインしたことが30日、明らかになった。上海や香港など上場先の市場活況が背景にある。中国石油天然気など中国企業4社がすでにリストされていたが、ランク外にあった生保最大手の中国人寿保険の株価が急騰して8位に入り、10位だった米AT&Tを11位に押し出して、5社目のランクインとなった。一方、売上高で世界50社に入る中国企業は2社のみ。中国企業はいわば株価先行型の企業評価となっている。(坂本一之)

 ≪大型銘柄に買い≫

 ブルームバーグによると、中国人寿保険の株価は30日までに香港や上海市場で急騰し、時価総額が米ドル換算で約2591億ドルに達した。米通信最大手のAT&T(約2529億ドル)、ロシアのエネルギー大手ガスプロム(約2541億ドル)や中国石油化工(約2577億ドル)を上回って、8位にランクインした。

 この結果、人寿保険に加え、ベストテンには2位に中国石油天然気、4位に携帯電話通信最大手の中国移動、5位に国有商業銀行最大手の中国工商銀行、9位に中国石油化工が入り、半数の5社を中国企業が占めた。

 他の上位企業には石油最大手のエクソン・モービル、総合電機のゼネラル・エレクトリック(GE)、マイクロソフトの米3社と、オランダに本社を置く英蘭系メジャー(国際石油資本)ロイヤル・ダッチ・シェル、ロシアのガスプロムが残った。

 時価総額は基本的に株価に発行株式数をかけた数値で表すが、主に中国や香港の個人投資家の殺到買いで上海や深セン、香港で相場が高騰。ベンチマークである上海総合指数の場合、最高値より若干下げたものの30日の終値で前日比2・60%増の5897・19と、年初来では2・2倍に膨れあがっている。個人投資家は中国の大型銘柄に買いを集中させており、時価総額を一気に押し上げた。

 ≪売上高では2社≫

 株価高騰で時価総額を肥大化させた中国企業だが、事業の実態を反映する売上高の世界ランキングで、トップ50社に入る中国企業は、時価総額でベスト10に入った5社のうち2社だけだった。中国の証券市場でも専門家の間ではバブル懸念が強まっているが、1億を超えた証券口座を支える中国の個人投資家の買い意欲は根強く、相場高騰の源泉ともなっている。

 さらに大型優良株の相次ぐ上場成功で、「新規上場銘柄は必ず株価が上がる」との妄信も生んでいる。ロイター通信によると、香港上場の中国石油天然気はさらに、11月5日に上海でもA株(人民元建て)で上場し、最大で40億株を発行。約89億ドルを調達する。同社の調達額は、2007年の世界の新規株式公開(IPO)で最大規模となる可能性がある。25、26の両日に行われた投資家の投資応募額は総額3兆3000億元(4400億ドル)に達し、個人投資家の熱意をみせつけた。

 しかし、9月には中国人民銀行(中央銀行)が今年5回目となる金融機関の貸出・預金基準金利の引き上げを実施するなど、金融当局は市場高騰に警告も発している。

                ◇

■世界の時価総額ランキング

(1)エクソン・モービル(米)   5114

(2)中国石油天然気(中)     4532

(3)ゼネラル・エレクトリック(米)4137

(4)中国移動(中)        4104

(5)中国工商銀行(中)      3521

(6)マイクロソフト(米)     3277

(7)ロイヤル・ダッチ・シェル(蘭)2822

(8)中国人寿保険(中)      2591

(9)中国石油化工(中)      2577

(10)ガスプロム(露)      2541

〔11〕AT&T(米)       2529

〔22〕トヨタ(日)        2028

30日、ブルームバーグ調べ、単位億米ドル

中国大手が北に製鉄所建設へ…“将来のハイテク産業中心”工業団地

2007/10/31 FujiSankei Business i.

 30日付の中国紙、第一財経日報によると、中国の鉄鋼大手、唐鋼集団(河北省唐山市)は、北朝鮮当局との間で、北東部の金策工業団地に年産150万トンの製鉄所を建設する協力意向書に調印した。投資額、プロジェクトの期間など詳細は不明。中国は世界最大の鉄鋼生産・消費国だが、原料の鉄鉱石は半分以上を輸入に依存。国際価格の上昇を背景に、大手メーカーは海外で新たな開発・調達先を模索している。唐鋼集団は、資源は豊富だが未開発の北朝鮮に注目したとみられる。

 同紙によると、金策工業団地は総面積2000平方キロ、金策、端川の港湾都市があり、鉱物資源は豊富。北朝鮮は外資を導入して資源開発、ハイテク産業の中心に育成する意向という。(北京 時事)

「調和社会」に課題山積 第2期胡政権 改革阻む既得権益層

2007/10/27 FujiSankei Business i.

 中国の胡錦濤指導部が先の第17回共産党大会で「和諧社会(調和の取れた社会)」を掲げ2期目のスタートを切った。急速な成長の中、市場経済が生んだ極端な「格差社会」の現実に対し、バランスある成長を目指す「科学的発展観」で国民の期待に応えられるのか。課題は山積している。

 ▽国有資産流出

 山東省済南市。同省最大の複合企業「魯能」の総鏡張りの本社ビルが、日光を浴びて光り輝く。国有企業として設立され、鉱業や金融など多角経営で総資産740億元(約1兆1200億円)の巨大企業となった。

 中国誌「財経」は今年初め、同社の株の約92%がわずか37億元で名も知れぬ私営企業に売却されたとスクープ、中国政界に激震が走った。総資産の5%という異常な安値。その買い手が「党政治局員の家族」とうわさされた点に政界の関心はあった。

 こうした「国有資産の流出」は全国で起き、深刻な問題となっている。だが魯能問題はその後報道規制が敷かれ、一切報じられていない。「庶民が何も知らないうちに権力と金を握る者が、さらに金を得ていくのさ」。済南市の男性(30)はあきらめ顔で吐き捨てるように言った。

 ▽許認可権

 「長者番付に載る富豪の9割は党の後ろ盾がある人たちだ」。改革派のある知識人は、魯能問題は氷山の一角だと指摘する。党や政府の幹部には有形無形の資産がある。

 「土地に建物を建てるためには100を超す印鑑が必要だ」と上海の不動産会社幹部(51)。手続きを進めるため役人に接待攻勢をかける。「下っ端には食事でいいが、中堅幹部にはマージャンでわざと10万元(約150万円)ぐらい負けてあげる」。高官に対しては留学子弟の生活費の面倒をみるなど、さまざまな方法がある。役人にとって、「許認可権」が富を産む“錬金術”の源泉だ。

 ▽巨額契約

 中国メディアは最高指導者の家族の私生活を一切報道しないが、英BBC放送(中国語電子版)によると、胡錦濤国家主席の長男、胡海峰氏が社長を務める企業が昨年12月、1台20万ドル(約2300万円)の液体検査機器を国内147の空港に配備する巨額契約を政府民航総局と結んだという。民航総局は「あくまで製品の技術で判断した」と強調した。だが、言葉通りに受け止める人は少ない。

 「国有資産の管理体制を充実させ、公平な市場参入を推し進める」と胡主席は15日の党大会の活動報告で宣言。政府は過去5年間で約2000項目の許認可権を廃止、見直ししたと強調しているが、ごく一部にすぎない。

 「健全な市場経済には権力を分散させる政治体制改革が必要だが、やれば党幹部は既得権益を失ってしまう」(改革派知識人)。調和社会の実現には「既得権益層」の抵抗が立ちはだかる。(済南 共同)

                ◇

【用語解説】調和社会

 経済成長一辺倒を見直す胡錦濤指導部の「科学的発展観」を踏まえ、中国共産党は2004年の党中央委員会第4回総会で「和諧社会(調和の取れた社会)」づくりを提唱、格差是正や持続的安定成長を目指す方針を強調した。05年の全国人民代表大会(国会)でも、温家宝首相が調和社会づくりに取り組む考えを表明。胡錦濤国家主席は第17回党大会の活動報告で、調和社会の実現を「長期の歴史的任務」と強調、政策運営の最重要課題に掲げた。(共同)

食肉価格、9月43%上昇 中国、不動産開発投資も加速

2007/10/27 FujiSankei Business i.

 中国国家統計局が26日公表した各種経済統計の詳報によると、今年9月の食肉・同製品価格は前年同月比で43・0%上昇と依然高い水準にあるほか、1〜9月の不動産開発投資は前年同期比30・3%増加と1〜8月の同29・0%から加速したことが分かった。

 中国政府は、景気過熱の防止を当面の最大課題としているが、一連の抑制策にもかかわらず、効果は上がっていない。五輪を控えた開発ブームに沸く北京では9月の新築住宅価格は15・3%も値上がりし、全国平均の10・0%を大きく上回った。

 9月の消費者物価指数(CPI)は6・2%の上昇となり、8月の6・5%から若干減速した。しかし、食品価格は16・9%の値上がりと、「高止まりの状態」(国際金融筋)だ。政府の今年のCPI上昇率目標「3%以内」の達成はほぼ不可能で、年間では4%強(昨年は1・5%)に達するとみられる。

 投資の活況について大和総研の斎藤尚登主任研究員は(1)農業、インフラ・エネルギー、省エネ投資の奨励(2)地域間格差是正を目指す東北、中部、西部の振興策実施−など政府の方針を指摘し、「抑制策を講じても固定資産投資は大きくは減速しない」と予想した。(北京 時事)

食肉価格、9月43%上昇 中国、不動産開発投資も加速

2007/10/27 FujiSankei Business i.

 中国国家統計局が26日公表した各種経済統計の詳報によると、今年9月の食肉・同製品価格は前年同月比で43・0%上昇と依然高い水準にあるほか、1〜9月の不動産開発投資は前年同期比30・3%増加と1〜8月の同29・0%から加速したことが分かった。

 中国政府は、景気過熱の防止を当面の最大課題としているが、一連の抑制策にもかかわらず、効果は上がっていない。五輪を控えた開発ブームに沸く北京では9月の新築住宅価格は15・3%も値上がりし、全国平均の10・0%を大きく上回った。

 9月の消費者物価指数(CPI)は6・2%の上昇となり、8月の6・5%から若干減速した。しかし、食品価格は16・9%の値上がりと、「高止まりの状態」(国際金融筋)だ。政府の今年のCPI上昇率目標「3%以内」の達成はほぼ不可能で、年間では4%強(昨年は1・5%)に達するとみられる。

 投資の活況について大和総研の斎藤尚登主任研究員は(1)農業、インフラ・エネルギー、省エネ投資の奨励(2)地域間格差是正を目指す東北、中部、西部の振興策実施−など政府の方針を指摘し、「抑制策を講じても固定資産投資は大きくは減速しない」と予想した。(北京 時事)

中国GDP実質11.5%増、1−9月…年内に世界第3位の規模に

2007/10/26 FujiSankei Business i.

 【北京=福島香織】中国国家統計局は25日、1〜9月の国内総生産(GDP)が16兆6043億元(約265兆6688億円)で、前年同期比の実質成長率が11・5%増になったと発表した。

 第3四半期(7〜9月)も同11・5%増だった。第2四半期(4〜6月)の11・9%をやや下回ったものの、3四半期連続の11%台成長で、通年でも中国政府目標の8%を大きく上回る5年連続の2けた成長は確実だ。

 年内にドイツを上回り、米日に次ぐ世界第3位のGDP規模になるとみられている。

 李暁超報道官は「(1〜9月に国内の)消費の経済成長への貢献率は37%、投資の貢献率は41・6%、外需(輸出)は21・4%」と説明。先に閉幕した第17回共産党大会で訴えられた内需牽引(けんいん)型の経済成長モデルへの転換には、もうすこし時間がかかりそうな情勢だ。また、過剰流動性(カネ余り)に対する警戒感が強調され、不動産市場の高騰が指摘された。今後、引き締め政策などマクロ経済コントロールを強化していく方針という。

「不動産市場を注視」中国当局…低インフレなど成長に不透明要素

2007/10/26 FujiSankei Business i.

 中国で住宅販売価格が上昇している。北京など一部大都市では今年1〜9月の上昇率が10%を超え、新築マンションは庶民の手の届かない高額だ。25日に国内総生産(GDP)統計を発表した国家統計局の報道官は、注視すべき分野として不動産市場を挙げた。「高成長、低インフレ」の中国経済の足元に不透明要素が広がっている。

 統計局の李暁超報道官は会見で、住宅価格、不動産開発コストなどの詳細な数字を示した上で「特に、供給に占める中級以下の中小型住宅の比率が低すぎる」と問題点を指摘した。「GDPの会見で統計局がこれほど住宅に言及するのは異例」(国際金融筋)という。

 中国の主要70都市の住宅価格は1〜9月で前年同期比6・7%上昇したが、7〜9月期は8・2%に加速。土地開発コストも急上昇し、7〜9月期の土地取引価格は15%も上昇した。

 北京では中心部の新築マンションは1平方メートル当たり2万元(約32万円)超が普通。一方で、北京市民の平均可処分所得は年間で約2万元(昨年実績)にすぎない。

 李報道官は「住宅価格は継続的に上昇するとの予想が市場に存在し、投資目的の需要が価格を押し上げている」と警戒感を示した。政府は不動産開発の審査厳密化、2番目の住宅を購入する際の頭金の比率引き上げなどの対策を講じているが、こうした「インフレ期待」の退治が最も困難な課題かもしれない。

 今年1〜9月の消費者物価指数(CPI)は前年同期比4・1%上昇し、通年では昨年の1・5%を大幅に上回るのは確実だ。CPIには住宅販売価格は算入されていないが、建材など関連する製品価格が値上がりすれば、CPIを押し上げる可能性もある。(北京 時事)

江沢民色残る顔ぶれ 中国共産党最高指導部

2007.10.22 MSN産経新聞

 【北京=野口東秀】中国共産党の第17期中央委員会第1回総会(1中総会)が22日、北京の人民大会堂で開かれ、今後5年間の政権を担う最高指導部の政治局常務委員会のメンバー9人が選出され、2期目の胡錦濤政権が発足した。新しく常務委入りしたのは、「2階級特進」を果たし「ポスト胡」の最有力候補である習近平上海市党委書記(54)、李克強遼寧省党委書記(52)の2人を含む4人。

 この常務委人事は、江沢民前総書記が強い影響力を及ぼした布陣とみられ、胡総書記は今後、独自の人脈と影響力をいかに発揮し党内の安定を図るかが課題となる。

 習、李両氏以外の新任は賀国強党中央組織部長(64)、周永康公安相(64)の2人。留任した5人は、胡総書記(64)、呉邦国全国人民代表大会(全人代=国会)常務委員長(66)、温家宝首相(65)、賈慶林全国政治協商会議(政協)主席(67)、李長春氏(63)。

 引退は曽慶紅国家副主席(68)ら3人。政府人事は来年3月の全人代で決まり、曽氏はその際に副主席を退く。

 習近平氏と李克強氏は、「ポスト胡」の次世代リーダーとみられており、習氏は来年の全人代で曽氏の後任として国家副主席に、李氏は筆頭副首相に就くとみられる。賀氏は党中央規律検査委書記に就任した。

曽慶紅副主席引退へ 中国指導部が世代交代

2007/10/19 中国新聞ニュース

 【北京18日共同=加藤靖志】中国共産党の最高指導部、政治局常務委員会の現行メンバー八人のうち、序列五位の実力者、曽慶紅そう・けいこう国家副主席(68)と呉官正ご・かんせい(69)、羅幹ら・かん(72)両氏の三人が引退することが十八日分かった。北京で開会中の第十七回党大会で選ばれる新中央委員の候補者名簿に三人の名前がなかった。複数の中国筋が共同通信に明らかにした。

 党大会では、江沢民こう・たくみん前国家主席(81)に重用された曽氏の去就が最大の焦点。江前主席の影響力が薄まることで胡錦濤こ・きんとう国家主席=党総書記=(64)は政権掌握力を一段と強化、指導部の世代交代が一気に進むことになる。

 新常務委メンバーには、次世代指導者候補として注目される習近平しゅう・きんへい・上海市党委書記(54)、李克強り・こくきょう・遼寧省党委書記(52)らが有力視されている。

 曽氏は、常務委から退くことで、来年三月の全国人民代表大会(全人代=国会)で国家副主席からも引退する。

 新中央委員は党大会最終日の二十一日に選出され、翌二十二日の第十七期中央委員会第一回総会(一中総会)で政治局常務委の新メンバーが決まる。

 曽氏の続投説もあったが、五年前の第十六回党大会で引退年齢とされた六十八歳に現時点で達しており、同氏の引退は党幹部人事の公平性を確保する狙いもあるとみられる。曽氏は一九九八年、国家主席だった江氏の訪日に同行。現指導部では主に党務の運営を担ってきた。

 現在の常務委メンバーは、選出時に江前主席の意向が強く働き、曽氏のほか呉邦国ご・ほうこく・全人代常務委員長(66)、賈慶林か・けいりん・全国政治協商会議主席(67)ら五人が江氏系の「上海閥」とされてきた。

 常務委は胡主席をトップに九人で構成、黄菊副首相が六月に死去した後は八人となった。曽氏、呉官正氏、羅幹氏の引退で、一九三九年以前に生まれたメンバーは全員引退する。

最低賃金相次ぎ引き上げ 中国各地でコスト増警戒も

2007.10.05 MSN産経新聞

 中国各地の当局が、企業従業員の最低賃金基準を相次ぎ引き上げている。政府の格差是正策に沿った措置だが、大幅引き上げが続いている地域もあり、外資系企業からは「新たなコスト増要因」(北京の日系メーカー)と警戒する声が強まっている。

 中国紙、人民日報などによると、北京市が7月から1カ月の最低賃金基準を640元(約9800円)から730元に引き上げたほか、上海市(新基準840元)、天津市(同740元)、江蘇省(同850元)などでも今年改定された。

 格差是正を重点課題とする胡錦濤指導部の方針を受け、労働社会保障省が2004年に最低賃金規定を改正して以来、全国の直轄市、省、自治区計31地区で昨年末までに延べ60回の引き上げが行われたという。

 規定では「2年に少なくとも1回は最低基準を調整」となっているが、昨年は9地区で2年連続引き上げられ、北京、上海などは昨年、今年とも上昇した。

 当局側は規定を守らない企業を公表して、監督を強める方針。一部パート従業員の賃金が基準以下だと批判された米マクドナルドの現地法人は、8月に従業員約4万人の賃金を平均30%引き上げると発表した。(共同)

中国経済は11・6%成長 07年、人民銀行が予測

2007/10/01 中国新聞ニュース

 【北京1日共同】中国人民銀行(中央銀行)研究局はこのほど、今年の中国の国内総生産(GDP)成長率が昨年実績を0・5ポイント上回る11・6%になるとの予測をまとめた。消費者物価指数も年間で4・6%上昇、政府目標(3%以内)を超える見通しとしている。中国紙、中国証券報が一日までに伝えた。

 中国経済は上半期のGDP成長率が11・5%を記録、消費者物価指数も八月に前年同月比で6・5%上昇し、上げ幅としては十年ぶりの高水準となった。景気過熱懸念が一段と強まる中、安定成長に向け政府が有効な政策を打ち出せるかどうかが課題となっている。

 予測によると、高成長のけん引役となってきた固定資産投資は、政府の引き締め策にもかかわらず地方や高収益企業などを中心に堅調に推移、年間では前年比25―26%の伸びになる見通し。

 輸出の伸びは今後やや鈍る一方、輸入は増加するとみられるが、今年の貿易黒字は過去最高だった昨年を40%上回る二千五百億ドル(約二十九兆円)程度と推計している。

 今年下半期のGDP成長率は七―九月期が11・7%、十―十二月期が11・5%となり、来年上半期も10・8%と高成長を予測している。

中国経済、五輪後も高成長 野村証研究所が予測

2007年09月08日 中国新聞ニュース

 2008年の北京五輪後の中国経済は不況に陥る可能性が小さく、引き続き高成長を維持すると予測したリポートを野村証券金融経済研究所がこのほどまとめた。

 競技会場や道路など建設関連投資の「五輪特需」がピークを過ぎており、特需効果が消えても中国経済への影響が軽微とみているためだ。

 五輪開催後に特需効果がはく落し、景気の腰折れを経験した日本や韓国とは対照的。北京五輪以降も中国の実質国内総生産(GDP)伸び率が10%近くという「過熱」状態も予想される。

 リポートは北京市当局の公表資料などを基にまとめた。それによると中国では01年の五輪開催決定以降、競技施設や空港などの建設、整備が比較的急ピッチで進み、五輪関連の建設投資が既に峠を越えているという。

 五輪によるGDPの押し上げ効果は07年が0・22%にとどまり、観光収入が加わる開催年の08年も0・25%程度の見通し。このため五輪終了による景気落ち込みも同程度と見込んでいる。

中国でがん患者急増 環境汚染や農薬原因か

2007/09/05 The Sankei Shimbun WEB-site

 中国各地でがん患者が急増しているとの報告が相次いでいる。一部の専門家は環境汚染や農薬、抗生物質の過剰使用による食物汚染などが原因と指摘し「政府による対策が急務」と警告する。急速な経済発展のひずみか、豊かさの代償か。貧困層を中心に庶民は不安を強めている。

 衛生省は5月、2006年のがんによる死亡者は前年比約19%増、農村では同約23%増となったと発表した。新華社発行の中国誌「瞭望東方週刊」によると、がん患者専門の北京腫瘍(しゅよう)医院が昨年診察した数は約15万5000例で、10年前の3.4倍以上。妊婦や子供が発症するケースも増加しているという。

 「薬を買う金も尽きた」。山東省平邑県の農村に住む楊張氏さん(82)は2月、せき込む夫(75)を病院に連れて行った。エックス線検査で肺がんと判明、貯金の1万元(約16万円)は診察料と鎮痛剤代で消えた。医療保険制度は未整備。手術や化学療法を行う余裕はなく、今は「じっと死を待つ」(村人)という日が続いている。

 楊さんの村では、2000年以降、16人ががんで死亡、うち5人は今年1月から3カ月間に相次いで死亡した。近隣の村でもがん患者が増加。村人は、ゴム工場が垂れ流す汚水や農薬を疑うが実態は不明だ。水質汚染が目立つ淮河流域ではこうした村が増えている。

 広東省韶関市の村でも、カドミウムなどの重金属による水質汚染により、20年間に人口の約10%に当たる約300人ががんなどで死亡。黒竜江省大慶市の工業地区ではがん患者に加え、脳障害を患った赤ちゃんが相次いで生まれた。

 環境汚染とがんの直接的な関連について科学的な証明はされていないが、衛生省の専門家らは淮河流域で行った調査結果として「汚染物を垂れ流している企業と、がん死亡者が多い地区の分布が一致した」としている。

 胡錦濤指導部は淮河流域での再調査を関係機関に指示するなど公害防止策を強めているが、北京の外交筋は「日本ですら深刻な公害を克服するのに数十年かかった。民主的チェック機能がない中国で解決するのは極めて困難」と指摘している。(共同)

中国9兆円の特別国債発行…海外での外準運用の原資に

2007/08/31 FujiSankei Business i.

 中国政府は30日までに、巨額の外貨準備の一部を海外で本格運用するため、6000億元(約9兆円)の特別国債を発行した。調達資金を中国人民銀行(中央銀行)が保有する外貨と交換し、海外の株式、投資ファンドなどで運用する方針だ。

 中国財政省の公告によると、特別国債は期間10年、表面金利は4・3%。今後、さらに数回発行し、2000億ドル相当の外貨を調達、近く設立する国有の「中国投資有限責任公司」が海外運用する。

 運用先としては既に、米投資ファンドのブラックストーン・グループに30億ドルを出資することを決定している。今後の運用先、規模次第では、国際市場を「中国マネー」が揺るがす可能性も指摘されている。

 中国の外貨準備高は今年6月末現在で1兆3326億ドルと世界最大。貿易黒字の拡大と、人民元相場の急上昇を抑制するドル買い・元売り介入で急増している。国内で資金過剰となり、インフレ懸念が生じているほか、為替リスクも増大。外貨準備の効果的な運用を迫られていた。

 特別国債は、直接引き受ける商業銀行から人民銀行が一括して買い取る。人民銀行は、この国債を銀行間市場で売買し、新たな流動性調節手段とする見込みだ。(北京 時事)

中国製お絵描きセット回収 米、鉛混入で2万7000個

2007/08/31 The Sankei Shimbun WEB-site

 米消費者製品安全委員会(CPSC)は30日、中国製のお絵描きセットのパッケージなどに鉛を含んだ塗料が使われているとして、発売元の米玩具販売大手トイザラスが自主回収すると発表した。昨年10月から全米で2万7000個を販売している。

 セットに入っている水彩絵の具の一部にも高レベルの鉛が含まれていることが確認されたという。健康への被害事例は報告されていない。

 木製のケースに入ったお絵描きセットには、クレヨンやパレット、鉛筆削りなどが入っている。価格は約20ドル(約2300円)。(共同)

中国、世帯収入格差55倍に…農村部で社会不安が増殖

2007/08/23 FujiSankei Business i.
不法なカネで一段と 研究所が調査報告で指摘

 中国で上位10%の高所得層と下位10%の低所得層の平均世帯収入の格差が約55倍になっているとの報告を、中国改革基金会国民経済研究所がまとめた。上海など沿岸部に集中する高所得者層の収入増で格差は拡大傾向にある。その背景として同研究所では、「脱税や収賄など公式統計には表れないグレーな収入が国内総生産(GDP)の20%以上も存在する」などと指摘。格差拡大が社会不安増大につながりかねない情勢となっている。(河崎真澄)

 ≪公開避けたがる所得≫

 中国政府が公式統計としているのは、全国の都市住民と農民の所得格差が3・3対1程度とする数字。2005年には上海に隣接する江蘇省で都市部の富裕層と貧困層の収入格差が最大で10・7倍と報告されている。

 しかし、独自の調査に基づく結果を盛り込んだ同研究所の報告では、同省都市部の上位10%と下位10%の平均世帯収入格差も実際、約31倍に達していた。低所得層の収入に大きな変化はなく、高所得層にカネが偏在する傾向が強まっている。

 富裕層は所得の公開を避けたがるが、これは脱税や収賄、不透明な土地取引による収益など、表には出せない不法な収入が多く含まれるのが原因だ。同研究所では、こうしたグレーな収入が中国全体で総額4兆8000億元(約76兆8000億円)にも上ると試算している。

 上海など不正や腐敗でグレーな収入を膨らませる高所得者層は、内外の株式や不動産への投資などで稼ぎ、香港やマカオなどで贅(ぜい)を尽くした旅行を楽しむなど、農村部では考えられない生活を謳歌(おうか)している。こうした表面的な豊かさが報じられ、農村部を中心に不満が鬱積(うっせき)し、社会不安が増殖する悪循環が起きている。

 アジア開発銀行(ADB、本部マニラ)がまとめた研究報告「アジアの不平等」でも、1に近いほど格差が大きい「ジニ係数」のうち、中国が2004年の段階で0・47となり、「中南米諸国に近い水準」に達したという。社会不安を招く「警戒ライン」の0・4も大きく上回っており、その傾向はさらに強まっているものとみられる。ADBでは、所得格差が成長の阻害要因になりかねないとの見方も示した。

 ≪相場過熱も深刻化≫

 北京五輪を来年8月に控え、株式市場や不動産相場の高騰が続いていることも格差拡大の背景にある。世界的に不安定な株式市場の動向をよそに上海証券市場の総合指数は、年初から約80%も高騰し最高値圏にある。また6月の都市部の固定資産投資が、前年同月比で28・5%増と相場過熱も深刻化。少なくとも五輪閉幕まで、相場の高騰はおさまりそうもない。

 格差の是正は胡錦濤政権にとって、北京五輪や2010年の上海万博開催をにらんだ「和諧(調和)社会」実現という目標の根幹をなす。それだけに、グレー収入への対処として、地方政府と癒着する経済界など腐敗を生む土壌を、中央政府がいかにコントロールできるかが課題となる。秋に開催予定の5年に1度の中国共産党大会で、地方幹部の人事が当面の大きな課題となりそうだ。

中国が0・18%追加利上げ 景気過熱抑制で1カ月ぶり

2007年08月21日 中国新聞ニュース

 【北京21日共同】中国人民銀行(中央銀行)は21日、金融機関の貸出金利を22日から1年物で0・18%引き上げると発表した。預金金利も同じく0・27%引き上げる。景気の過熱抑制が狙いで、中国の利上げは7月以来約1カ月ぶり。

 同行は利上げの理由について、貸し出しの伸びやインフレの抑制を挙げた。利上げに伴い1年物貸出金利は7・02%、預金金利は3・60%となる。

 中国では7月の消費者物価指数が前年同月比5・6%上昇し、約10年ぶりの上げ幅を記録。不動産価格などの上昇も加速し、追加利上げを予測する声が高まっていた。

中国全土に豚の疫病拡大 当局が情報開示抑制か

2007年08月17日 中国新聞ニュース

 【北京17日共同】豚の疫病で感染率が極めて高いウイルス性疾患「豚繁殖・呼吸障害症候群」が中国各地で大流行している。中国の通信社、中国新聞社は17日までに、全国31の省、自治区、直轄市のうち26地域に感染が拡大したと伝えた。

 中国では今年に入り豚肉の価格が高騰しているが、同病による供給減少が主な原因とみられる。中国の「食の安全」に内外の注目が集まる中、中国政府はイメージダウンを警戒、当局が詳しい情報開示を抑えているとの指摘も出ている。

 新華社によると、先月22日までに同病により4万5546頭の豚が死んだ。終息の見通しは立っておらず、中国新聞社は同病について「今年に入り、状況は極めて厳しい」と伝えた。

 中国で発生した豚の疫病では、2005年、四川省などで豚連鎖球菌が人に感染、少なくとも38人が死亡したケースなどがある。

上海株、4800を突破 最高値更新、1年で3倍に

2007年08月13日 中国新聞ニュース

 【上海13日共同】13日の上海株式市場の総合指数は前週末比1・49%高の4820・06で取引を終え、最高値を更新した。取引開始後から買いが先行して初めて4800を突破。株価は、この1年で約3倍に上昇した計算だ。

 上海株は国内の投資家が取引の大部分を占めることなどから、米国の住宅ローン焦げ付き問題による世界的な株安傾向にほとんど影響されず、連日のように最高値を更新。節目となる5000の突破が目前となった。

 上海株は5月末、中国政府が証券取引の印紙税を突然3倍に引き上げたことで急落。速過ぎる株高に危機感を強めた政府が株式ブームの沈静化を目指したためで、一時はそれまでの最高値から約20%も下落した。

中国7月、CPI上昇5%超か 来月にも追加利上げ

2007/08/11 FujiSankei Business i.

北京市の食肉市場。豚肉の高騰で7月のCPI上昇が予想されている(ブルームバーグ)

 ■物価押し上げるブタ肉不足

 人民日報(電子版)などによると、週明けにも発表される7月の消費者物価指数(CPI)が前年比5%以上上昇するとの証券各社の見通しが相次ぎ、金融当局が9月にも追加利上げに踏み切るとの見方が広がっている。

 モルガンスタンレー証券(アジアパシフィック)は5・5%、米ゴールドマン・サックスは5・1%と予想している。

 中国政府は今年のCPIの目標レンジを「3%以内」に設定しており、これを大幅に上回る格好で、従来のインフレ懸念がインフレ圧力に発展する可能性が高い。アジア開発銀行のエコノミストは、「金融当局は9月にも追加的な利上げに踏み切る」と予測している。

 CPIは6月に同4・4%と2年9カ月ぶりの高水準を記録。インフレ懸念を抑えようと、中央銀行の中国人民銀行は、7月20日に、今年3回目となる利上げを実施したばかり。このため、追加の金融政策は9月か、10月にずれ込むとの見方が一般的だ。

 中国では、豚肉は庶民の台所に欠かせない食品で、世界最大の豚肉消費国。CPIの構成品目の約3分の1を食品が占めるだけに豚肉の価格高騰が大きく反映されているとみられている。

 このため、7月末に開催された国務院常務会議では、金融政策だけではなく、豚肉を安定供給するための増産対策なども協議された。

 豚肉価格の高騰は、昨年の価格下落や伝染病の発生に加えて、飼料のトウモロコシがエタノールブームなどで高騰し、多くの養豚農家が廃業してしまったためだ。 

 このため、政府はの補助金を投入するなど農民の養豚意欲を高めるための方策に必死だ。このほか、備蓄なども検討しているというが、供給不足を解消するには時間がかかりそうで、金融当局も難しい舵取りを迫られることになりそうだ。

世界貿易4年連続2けた増…中国、機械で日本抜く

2007/08/09 FujiSankei Business i.

2007年版貿易投資白書

 日本貿易振興機構(ジェトロ)が8日発表した「2007年版貿易投資白書」によると、06年の世界貿易額(輸出ベース)は推計で、前年比15・4%増の11兆8742億ドル(約1401兆1556億円)と4年連続の2けた成長になった。

 原油高や金属資源の高騰を背景に資源国の輸出額が膨らんだ結果、中東、オーストラリア、ブラジル、ロシアなどが躍進した。また、06年の世界の直接投資も3年連続で高成長を記録した。

 東アジアでは前年比27・2%増となった中国の輸出好調が目立った。パソコンや通信機器などの輸出が伸び、機械機器輸出に占めるシェアでは、中国が初めて日本を抜き、ドイツ、米国に次ぐ第3位に浮上した。

 ジェトロ海外調査部では、中国の貿易黒字の急増について外資による加工貿易の定着に加え、「従来、海外から輸入していた部品など中間材調達を中国国内にシフトした貿易構造の変化が背景」と分析した。07年通年でドイツ、米国に続く、中国の輸出額「1兆ドルクラブ」入りが確実視される。

 投資については、06年の国境越えのM&A(企業の買収・合併)が同14・8%増の9745億ドルと00年のピーク時に次ぐ高水準。中国は66・5%増の143億ドルで、そのなかで中国石油化工(シノペック)によるロシア石油会社の買収など、石油や天然ガス資源の権益取得分が約3分の2を占めた。

国家ファンド“紅い資本”23兆円の脅威

2007/08/01 FujiSankei Business i.

金融攪乱の恐れ…監視体制急務

 米中間の新たな経済摩擦要因に中国の「国家ファンド(SWF)」が浮上してきた。2日からオーストラリアで開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)財務相会合で、米国が国家ファンドを議題に持ちだす見通しとなったが、これは2000億ドル(約23兆6000億円)で9月にも運用を始める「中国国家投資公司」に警戒感を示した動きと受け取れる。訪中しているポールソン財務長官が中国側に懸念を伝える可能性もある。(河崎真澄)

 ≪軍需産業守れ≫

 国家ファンドとしてすでに、シンガポールの政府系投資会社やノルウェーの年金基金などが実績をあげている。日本もシンガポールを参考にした外貨準備の運用検討を始め、米国も関心を寄せているが、とりわけブッシュ政権が神経をとがらせているのは中国だ。背景には(1)巨額な資金規模(2)米軍事・エネルギー産業保護と安全保障(3)ファンド運用方針の不透明さ−の3点がありそうだ。

 中国が投資先の第1弾として米投資会社ブラックストーン・グループに30億ドルの出資を決めているが、これは小手調べにすぎない。当初から2000億ドル規模の外貨を用意するほか、必要に応じて資金は数千億ドル規模で積み増す用意もある。これまで通り米国債を保有し続けるとの見方もあるが、すでに保有高が5000億ドルを超えたとの見方もあり、米国債は“人質”になりかねない。

 しかも巨額の資金力にものを言わせて、中国の国家ファンドが米国企業の買収に相次ぎ乗り出す恐れもある。中国からいかに米軍需産業やエネルギー産業を守るかは、安全保障上の問題だ。2005年8月には議会の反発で中国海洋石油(CNOOC)による米石油大手ユノカル買収を拒絶した経緯があるが、中国は国家ファンドを通じて今後、再び米企業に触手を伸ばす可能性がある。

 ≪不透明な運用≫

 さらに国家ファンド運用方針の不透明さが“不気味さ”を増幅しているようだ。国家が投資家であり、運用方針や投資実態を市場に情報公表する義務を負わない。国家ファンドで情報を一般に公開している国はノルウェーなど一部しかない。

 双日総合研究所の吉崎達彦副所長は「(ハイリスク・ハイリターンを求める)ヘッジファンドに国家ファンドが無造作に流れるとモラルハザート(道徳的危険)が市場に生じる」と警戒する。

 中国やノルウェーなどのほか、ロシアや中東産油国の石油安定基金を含めると、世界的な国家ファンドの資産規模は2兆5000億ドル(約295兆円)に達すると英エコノミスト誌では試算している。これはヘッジファンド預かり資産残高の1兆6000億ドルを大きく引き離す規模となる。

 財政への悪影響を恐れる米国だけでなく、国際金融市場も国家ファンドの動向には神経質にならざるを得ない。中国や中東産油国などが情報公開なしに不意に数百億ドルのカネを動かすと、金利や為替など金融市場の撹乱(かくらん)要因になりかねない。

 ≪中東、ロシアも≫

 中東産油国の国家ファンドも、1バレル=77ドル台まで高騰した国際原油相場を背景にパワーを増しており、中東が「ユーロ建て比率を増す」「米ファンドに出資する」といった“うわさ”にも金融市場は過敏に反応する。

 日本やノルウェー、シンガポールなど米国や国債金融市場として“話せば分かる”外貨保有国とは異なり、中国、ロシアや中東産油国など“新興プレーヤー”は市場でどのような荒手を使うか予想がつかず、国際社会としてこうした国家ファンドの暴走を食い止める手だても限られている。

 米ブッシュ政権には国家ファンドに関する“うわさ”が一人歩きして金融市場を乱高下させるリスクがあるとして、国際通貨基金(IMF)などに対し規制の導入を求める声も出始めている。

 これまで国家の外貨準備は自国通貨や銀行資産を「守る」役割が中心だったが、一定の保有レベルに達すると資金があふれ出て、株や不動産などリスク資産に向かう「攻め」の運用に転じることは防ぎきれない。米投資銀行大手モルガン・スタンレーは、世界の国家ファンド資産が3年以内に倍増、2015年に12兆ドルになると試算した。

 高利回りを求めて運用対象が広がるのは時間の問題だが、市場のルールにどう適合させるか、国家ファンドへ国際的な監視態勢確立が急務だ。

中国で取材妨害、干渉続く 外国人記者クラブ発表

2007年08月01日 中国新聞ニュース

 【北京1日共同】北京の「中国外国人記者クラブ」(メリンダ・リュウ会長)は1日、北京五輪を約1年後に控えた中国で、海外メディアに対する取材妨害や当局による干渉がことし157件発生、中国政府が五輪取材で求められる報道の自由の保証などの国際的基準に応えていないとする調査報告を発表した。

 調査は北京、上海などに駐在する20数カ国、163人の記者が回答。全体の約40%に当たる記者が、当局による拘束や呼び出し、取材源に対する脅迫、身体的暴力などを報告した。

 この中には、中朝国境を取材した英テレビクルーが武装警察に拘束された例や、チベット自治区で取材したドイツの記者のインタビュー相手が罰金を科された例などが含まれる。

 調査では、回答者の67%が中国が五輪に向け保証した取材の自由を実現していないと指摘。95%は「中国の現状は報道の国際的基準を満たしていない」と答えた

食の安全で監督強化促す EU委員が中国に

2007年07月23日 中国新聞ニュース

 【北京23日共同】欧州連合(EU)のクネワ欧州委員(消費者保護担当)は23日、中国国家品質監督検査検疫総局の李長江局長と北京で会談、クネワ委員は中国側が食品を含めた製品の品質管理と監督を強化するよう求めた。

 クネワ委員は会談後の共同会見で「(不良品の割合が)1%であっても、欧州と中国の消費者にとって危険なことに変わりはない」と指摘。「中国側が製品のブランドと品質を守るためさらに努力するよう求めていく」と述べた。

 李局長は「製品や食の安全は一国だけの問題ではない。世界各国が向き合うべきだ」と述べた。

中国、バークレイズ株取得 98億ユーロ、最大級の海外投資

2007年07月23日 中国新聞ニュース

 【ロンドン23日共同】英大手銀行バークレイズは23日、中国の政策金融機関、中国国家発展銀など外国金融機関2社から出資を受けると発表した。

 2社はバークレイズが目指すオランダ大手銀ABNアムロホールディングの買収資金を提供。買収が成功すれば、中国発展銀はバークレイズに最大98億ユーロ(約1兆6400億円)を出資し、株式の9・8%を保有する大株主となる。中国企業の海外投資額としては最大級となる。

 バークレイズは同日、ABNに対し買収提案額を引き上げた。

 出資するのは、国家発展銀とシンガポールの国営投資会社テマセク・ホールディングス。バークレイズへの出資は、中国政府が出資を決めた米投資会社ブラックストーン・グループが仲介した。

中国、残留性有機汚染物質削減ストックホルム条約の履行を3日から実施

2007年07月06日 IB Times

 「中国『残留性有機汚染物質(POPs)に関するストックホルム条約』履行の国家実施計画」が今月3日にスタートした。

 同国家実施計画は、中国・国務院が今年4月14日に承認したもので、中国は今後、各段階、各地域、各業界でダイオキシンなど条約でリストアップされる12種類の残留性有機汚染物質を削減、排除、抑制していく。

 国家実施計画によると、残留性有機汚染物質のコントロール分野では、2015年までに5大分野・17種類の活動が予定されており、必要とされる金額は合計340億元にのぼるという。

 なお、12種の残留性有機汚染物質とは、アルドリン、ディルドリン、エンドリン、DDT、ヘプタクロル、クロルデン、マイレックス、トキサフェン、ヘキサクロロベンゼン、PCB(ポリ塩化ビフェニル)、ダイオキシン類、フラン類。(日中経済通信)

北京の有料水、半分は偽物 飲用に適さない水道水使う

2007年07月10日 中国新聞ニュース

 【北京10日共同】中国紙、京華時報などは10日までに、北京市民が職場、家庭内で日常的に使用している有料飲料水のうち、少なくとも5割が水道水などを入れ、ラベルを偽造した偽物だと伝えた。

 水道水が飲用に適さない北京では、多くの市民が飲料水入りの大型ボトル(約19リットル入りなど)を購入、室内の専用給水器に取り付け、飲んでいる。このうちの半数が偽物とすれば、北京五輪を前に中国の「食の安全」への懸念がさらに強まりそうだ。

 報道によると、北京市では娃哈哈(ワハハ、浙江省)、ネスレ(スイス)の中国法人など4社が有料飲料水大手で、毎年計1億本の大型ボトルを販売。しかし業界の調査で、4社の銘柄入り大型ボトルが小売店を通じ、販売総数の2倍に当たる2億本も流通していることが判明、関係者は「半数は偽物だ」と断じた。

 同紙は、市内の特定業者が4社の銘柄を記したラベルを大量偽造、大型ボトルに張った上で水道水などを注ぎ、販売していると“告発”した。

中国政府 違法黙認で地方批判 環境汚染の陳情増加

2007/07/07 FujiSankei Business i.

 新華社電によると、中国国家環境保護総局の周生賢局長は6日までに、「地方政府が独自の政策をつくり、環境違法行為を大目に見ることが環境保護の死角となっている」と述べ、中央政府の指示に従わず、企業の違法行為を黙認する地方政府を強く批判した。地方官民の癒着の結果、生命や生活を脅かされる民衆の不満は高まっており、今年1〜5月に同総局が受理した陳情は前年同期比8%増の1814件に達した。

 中国政府は、地元住民の飲み水に影響が出た江蘇省太湖の汚染問題を受け、温家宝首相が住民に謝罪するなど環境汚染問題に危機感を強めており、「5大戦役」と称し、地方の湖・河川の汚染改善などに向けた対策に着手している。

 周局長は、違法企業を擁護する地方政府の政策を「用心棒」行為と批判。「一部企業は昼夜問わず操業し、大河に廃水を垂れ流し、水質が変化し、のりのような状態になったところもある」と懸念を示した。

 さらに、「地方企業が汚染物質を違法に排出した結果、経営者はもうかり民衆は被害を受け、政府はツケを払わされる」と述べ、民衆の支持と理解を得られる厳重な措置を講じると強調した。

 潘岳・国家環境保護総局副局長によれば、2005年に問題となった松花江汚染事故以降、平均2日に1回の割合で突発的な環境汚染事故が発生し、その7割は水質汚染だという。(北京 時事)

【コラム】「肉体国家」中国、「頭脳国家」韓国(上)

2007/07/07 朝鮮日報/朝鮮日報JNS 朴正薫(パク・ジョンフン)記者(経済部)

 果てしなく続く中国広東省の工業団地を取材するうち、記者の頭の中に「肉体国家」という言葉が浮かんできた。カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)のリチャード・ローズクランス教授(政治学)が提唱した興味深い分類法によると、世の中には「肉体国家」と「頭脳国家」の2種類の国家が存在するという。前者が肉体(労働力)で糧を得る製造業の国なら、後者は研究開発・デザイン・マーケティングといった知的財産に根ざした国家を指す。労働力を使って製品を作り出す製造業が隆盛する中国は、今や肉体国家の代表例となった。世界史をひもといてみても、今の中国のように地球規模で製造業の基盤を掌握した国はなかった。そうした意味では史上最強という言葉もあながちうそではない。

 記者はホンダ自動車の広州工場を訪ねてみた。ここで生産される車は決して安物の小型車などではない。同工場では、日本のものと変わらない高品質なアコード、オデッセイといったホンダの主力モデルを製造している。半信半疑の取材陣の質問を最後まで聞かず、現地法人の付守杰副社長は「世界各国にあるホンダの工場のなかでも、この工場の生産性はトップレベルだ」と答えた。同工場と日本国内の工場との間には6カ月のギャップしかない。ホンダの本社が新モデルを発表すると、ちょうど6カ月後には広州工場でも同じモデルを生産し始める。最新型のホンダ車が次々と生産されていく現場で、韓国の製造業の生き残り策に頭を悩ませてみたが、どうにも答えは出てきそうになかった。

 一方中国は、先進国の製品を模倣する「偽物大国」との悪評に悩まされている。それを理由に中国の工場は下請工場の水準だと思いこんでいたとしたら、それは大きな間違いだ。サムスンの中国現地工場のユ・ヒョソン社長は「中国工場の生産性は韓国の工場を上回っている」と話す。そして「中国に安い労働力だけを求める時代は終わった。われわれの目標は先進性と高付加価値を実現することだ。サムスンの中国工場が韓国のサムスン工場を打ち負かすこともあっていいのではないか」と語った。工場の一角には「逆水行舟」というスローガンがはられていた。船が水の流れに逆らって進むように、逆転の発想を大切にしようという意味らしい。「量」で圧倒してきた中国の製造業が「質」さえも身につけ始めたとしたら、これほど恐ろしいことはない。

「肉体国家」中国、「頭脳国家」韓国(下)

2007/07/07 朝鮮日報/朝鮮日報JNS 朴正薫(パク・ジョンフン)記者(経済部)

 今回の取材で、シンガポールのリー・クアンユー元首相が昨年語った「時限爆弾」のような警告を思い出した。リー元首相は昨年の訪韓時に「韓国が今していることは20年後にはすべて中国もやることになる」と語った。一般製造業における体力勝負で韓国に勝ち目がないなら、種目を変えて挑戦する必要がある。そのためにはどうすればよいのだろうか。取材中、松山湖科学技術団地を訪れた際に、その答えが見つかったような気がした。

 この団地に名を連ねる企業の中に、見覚えのある会社を見つけた。それはMP3プレーヤー「アイリバー」で知られるレインコムの生産拠点だった。レインコムの全製品は100%中国工場で製造される。「体(生産機能)」はすべて中国に移転し、韓国では商品の企画・開発・デザインといった「頭」だけを残したわけだ。レインコムの楊コ準(ヤン・ドクジュン)社長にアイリバーを成功させた秘訣(ひけつ)を尋ねたところ、「製造業という概念を捨てたから」という答えが返ってきた。

 「レインコムは文化企業です。モノを売るのではなく文化的な価値、つまりデザインとブランドを通じて新しいライフスタイルを提案する企業です。逆説的な話ですが、製造業が生き残るためには、まず製造業の枠から脱しなくてはなりません」

 文化で利益をあげるというレインコムの「頭脳戦略」に、韓国の製造業が生き残るためのヒントが隠されている。それは世界的に知的財産の重要性が増す中、中国の上の空間を確保する戦略だ。「筋肉」ではなく、知識・技術・企画といった頭脳勝負で常に中国をリードすれば韓国も生き残ることができる。逆に真っ向勝負で中国と組み合っていたところで、勝算はない。勝つための唯一の方法は付加価値を基準にした高い位置に陣取り、そこから中国を活用することだ。韓国が「頭」となり、中国という「体」を駆使するのだ。

ダルフール問題、五輪に影響せず 「建設的役割に評価」と中国

2007/07/06 FujiSankei Business i.

 スーダンのダルフール紛争問題を担当する中国政府の劉貴今アフリカ事務特別代表は5日の記者会見で、同問題に絡んで北京五輪ボイコットの主張が西側の一部で出ていることについて、「問題解決へ成果を上げている中国の努力を理解せず、色眼鏡で見ている」と反論、ダルフール問題が五輪に影響することはあり得ないと語った。

 スーダンなどアフリカ4カ国を歴訪し、パリのダルフール問題国際会議にも出席した劉氏は「中国の建設的役割は国際社会、特にアフリカ諸国の間で高い評価を得ている」と指摘。中国とスーダンの関係をもって、五輪を政治化させるのは根拠がないと批判した。(北京 時事)

中国、環境保護徹底へ「5大戦役」 汚染排出削減「楽観できず」

2007/07/06 FujiSankei Business i.

 5日付の中国共産党機関紙・人民日報によると同国国家環境保護総局の周生賢局長は深刻化する環境問題の解決を徹底させるため(1)湖沼の環境改善(2)河川流域の汚染防止(3)工業汚染対策(4)農村環境保護(5)違法地域への許認可制限−の5つの取り組みを「5大戦役」と位置付け、全国で展開する方針を示した。

 同局長は4日のテレビ会議で「汚染物質の排出削減に関する情勢は楽観できない」と警告している。同総局がこのほど抜き打ち検査したところ、75カ所に上る都市の汚水処理場のうち38カ所で処理基準に達していなかったり、運転停止があったりした。

 また、検査を受けた529企業のうち、44%に当たる234企業に環境保護面で違法行為が見つかった。(北京 時事)

【コラム】「中国発食糧危機」が韓国に与える影響

2007/07/01 朝鮮日報/朝鮮日報JNS ハン・サムヒ論説委員

 中国ほど豚肉をよく食べる国はない。大抵の中国料理には豚肉が入っている。しかし中国では最近、その豚肉の値段が跳ね上がっている。1年で29%も値上がりし、タマゴの値段も31%上がった。消費者物価全体は3%上がったが、食品の値段は7%、中でも肉の値段は18%値上がりした。温家宝首相は5月27日、ある豚肉の売場を視察した際、「食品の値上げは社会不安を引き起こす恐れがある」と言った。実際に1989年の天安門事件で、一般市民がデモに加わった要因の1つは物価不安だった。

 中国で豚肉が値上がりしている背景には2つの原因がある。1つは世界的なエタノール・ブームだ。「地球温暖化を防ぎ、原油高を乗り切るバイオ燃料」としてトウモロコシからエタノールを作り、ガソリンの代わりに自動車の燃料として使うのだ。米国ではトウモロコシの20‐25%がエタノールの原料になっている。それによりトウモロコシが品薄になっていることから、米国のトウモロコシ価格は半年で70%も値上がりした。そしてその余波が全世界に広がりつつある。中国では昨年トウモロコシが豊作だったが、価格はここ9カ月間で30%も上がった。豚はトウモロコシで作った飼料を食べて育つ。従って、豚肉の値段も上がっているというわけだ。

 中国の豚肉が高騰しているもう1つ原因は中国の所得水準が高くなるにつれ、中国人の食生活が植物性から動物性に変化しているということだ。85年は1人当たりの年間食肉消費量が20キロだったが、2000年には50キロに増えた。

 米の環境問題研究所「ワールド・ウォッチ研究所」で所長を務めたレスター・ブラウン氏は95年、著書『だれが中国を養うのか?‐迫りくる食糧危機の時代』(原題:“Who will feed China”)を出版した。ブラウン氏によると、牛肉1キロを生産するのに穀物飼料7キロが必要になるという。7人が食べられる分量の穀物で家畜を飼い、その肉を食べてしまえば1人分にしかならないということだ。

 ブラウン氏は「中国に端を発する食糧危機が必ず来る」とみている。トウモロコシや豆で家畜を飼えば、トウモロコシと豆に含まれるエネルギーのほとんどは、家畜が歩き回り、呼吸し、排泄する過程で失われる。生物学者は「光合成を行う植物→草食動物→肉食動物と、食物連鎖が一段階上がるたびにエネルギーは90%以上失われる」と説明する。牛や豚が摂る栄養のうち、筋肉・骨・肉に行くのは10%にも満たないそうだ。家畜は植物性の栄養を動物性タンパク質に変える機械とも言えるが、この機械はとても効率が悪い。中国人の食生活が効率の悪い肉類中心になれば、その分だけ食糧消費は増加する。要するに、中国には今「エタノール・ブームによるトウモロコシ不足」「食生活の変化による穀物消費増加」という2つの問題を抱えているのだ。そして、そこから脱するのは容易でない。

 中国は産業化・都市化が盛んな国だ。田畑が次々と消え、農業に携わる人も徐々に減っている。そして中国は世界で最も水を貴重とする国の1つだ。黄河は70年代以降、時折水の流れが途切れる「断流」を繰り返している。砂漠化により不毛の地も増えている。穀物の生産量を画期的に増やすには難しい条件下にあるのだ。

 今や、世界の人口の5人に1人は中国人だ。中国の食糧難は中国だけの問題ではない。連鎖的な穀物危機は全世界に広がる可能性がある。韓国は穀物飼料のほとんどを輸入に頼っているため、穀物需給に神経を尖らせざるを得ない。韓国に輸入される飼料用トウモロコシの値段は昨春1トン当たり平均136ドル(約1万6755円)だったが、今春は182ドル(約2万2422円)になった。1年で34%値上がりしたことになる。中国の穀物状況は「対岸の火事」ではないのだ。

中国で労働契約法成立、外国企業は人件費増加が必至

2007/06/30 朝鮮日報/朝鮮日報JNS 北京=李明振(イ・ミョンジン)特派員

 中国の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)は29日、労働契約法を可決した。同法には雇用安定保障、終身雇用拡大など労働者の権利拡大が盛り込まれている。これにより低賃金を理由に投資した韓国などの外国企業にとっては、直ちに10−15%の人件費増加につながる可能性がある。その上、中国政府は来月から輸出企業に対する輸出増値税の還付率を引き下げると発表したばかりで、外国企業の負担は日増しに膨らむ見通しだ。

 全人代が可決した労働契約法は、事業主が労働者を雇用した日から1カ月以内に書面契約を結び、書面契約を結ばない場合には2倍の賃金を支払わなければならないと定めている。また、2回連続で期限付きの雇用契約をした後、再契約を結ぶ場合には、終身雇用扱いとしなければならず、みだりに解雇できなくなる。さらに、これまでは正規賃金の50%を支払えば、最長で6カ月間、試用社員として雇用可能だったが、同法施行後、試用期間は技術職で2カ月までに制限され、正規賃金の80%を支払わなければならなくなる。一方、事業主が従業員の10%以上を解雇する場合には、労働組合と協議する必要があり、退職金の支払いも義務化される。

 これについて山東省煙台市でプラスチックパイプ工場を営む韓国人経営者(45)は「輸出増値税の還付縮小に退職金負担が加われば、商売をたたんだほうがましだ」と反発している。大韓貿易投資振興公社(KOTRA)北京貿易館のキム・ミョンシン課長は「労働契約法の成立だけでも10−15%の費用負担増が予想され、労働組合の権限が強化されたことも負担になる」と分析した。在中国韓国大使館のカン・ヒョンチョル労務官は「中国政府は労働関連規定の新設と同時に労働者の社会保険加入義務化など既存規定の実施強化にも努めている」と指摘した。

中国海運最大手COSCO 輸送力強化へ2400億円調達

2007/06/30 FujiSankei Business i.

 ■欧米向け物流量拡大で

 中国海運最大手の中国遠洋運輸集団(COSCOホールディングス)が事業拡大に向けて150億元(約2400億円)規模の資金調達を実施したことが28日までに明らかになった。世界の生産拠点として輸出拡大が続く中、中国政府も海上物流のインフラ整備を強化しており、今後も物流量が拡大すると判断。先行投資を急ぐ。

 ≪買収も視野≫

 ブルームバーグによると、コンテナ船輸送でアジア大手のCOSCOは今月18日に17億8000万株を1株当たり8・48元で発行。150億元の発行規模は中国で2007年に入り同時点で4番目の水準だ。株式の発行内訳は戦略投資家に5億3500万株、機関投資家には3億5690万株で、個人投資家が最も多い8億9190万株となっている。株式市場に大量のタンス預金が注ぎ込む格好だ。

 事業拡大を目指すCOSCOは、調達した資金を購入予定のコンテナ船12隻や物流会社への出資や買収などに充てる計画だ。

 COSCOが船舶の購入資金を調達する背景には、米ウォルマート・ストアーズなどの小売業者がアジアからの調達を拡大していることがある。生産コストの低いアジア拠点で製造されたテレビや衣類、玩具などの販売が欧米で拡大し、その物流が伸びているためだ。

 ≪ハブ港湾に≫

 中国の輸出は、外資による生産拡大と国内企業の成長を受け急増し、2000年の2492億ドルが06年には約3・9倍の9690億ドルに達した。

 上海港の06年貨物取扱量も前年比21・2%増の5億3700万トンに急拡大し、初の5億トン台となった。上海港は05年から世界1位の取扱量を誇っている。

 これまで港湾整備を進めてきた中国政府は06年からの第11次五カ年計画で海上輸送の強化を打ち出し、ハブ機能を備えた国際的な物流拠点の構築を進めている。

 また、中国紙の国際商報などによると同国の小売り売上高は07年に前年比13・9%増の8兆7000億元(約135兆円)に達する見通しで、商務省は国内の消費拡大を受けて「全体的な物流規模は大幅に拡大するだろう」と中国の物流関連ビジネスがさらに拡大すると指摘する。

 国内の陸上物流では独や仏、香港など7社が共同出資し鉄道を活用したコンテナ物流の合弁会社「中鉄連合国際コンテナ」を設立。外資が鉄道物流に初めて本格参入した。10年までに総額120億元を投じ北京や上海など主要18都市にコンテナの大型物流センターを構築し配送事業を展開する計画。

 中国に進出する日本の小売業者からは「物流システムの未整備が商売のネックになっている」との指摘もあり、物流規模の拡大とともに、外資の経営ノウハウを導入した効率の高い物流システムの構築が今後の課題となりそうだ。(坂本一之)

中国の窯で人身売買も 悲惨な実態と報道

2007/06/16 中国新聞ニュース

 【北京16日共同】中国山西省と河南省のれんが焼き窯で発覚した未成年者らの強制労働問題で、国内メディアの報道から悲惨な労働現場や組織的な人身売買の実態が明らかになってきた。河北省の窯では少女が性的奴隷にされていたとの報道もある。

 中国政府は現地への調査団派遣を決めるなど実態解明に乗り出したが、後手に回った胡錦濤政権への批判も招きそうだ。

 山西、河南両省で十六日までに五百五十八人が救出されたが、強制労働者は未成年者だけで千人以上といわれ、まだ多くが山間部の窯に監禁状態とみられる。山西省政府は十五日、十日以内にすべての強制労働者を解放させるよう各地の役場に命じたが、農村の役人と労働者を連行した業者の癒着も指摘されている。

 中国紙、南方週末によると、最近救出された少年(17)は河南省鄭州市の駅前で薬を飲まされて誘拐された。窯では夜も鍵を掛けた部屋に閉じ込められ、逃げようとして監視人に暴行され障害者になった者もいた。少年は「監獄のようだった」と振り返った。

 別の少年はいったん解放され帰省する途中で、現地の労働局職員に再び別の窯へ行くよう指示された。

 同紙は、未成年者を連れてくる人身売買業者、買い取る職人頭、窯の経営者が連携、専門的な人材供給ネットワークがあると指摘。未成年者は従順で監視しやすいため標的になっていたという。

 雑誌「民主と法制」は昨年から陝西省住民が被害にあった河北省臨西県の窯での強制労働事件を報道。陝西省のニュースサイトによると、この窯では「いい仕事がある」とだまされて窯に連行された少女が性的行為を強要されていたという。

10%以下に成長抑制目指す 中国、景気過熱に警戒

2007年06月12日  中国新聞ニュース

 【北京12日共同】中国国家発展改革委員会の韓永文秘書長は12日、共同通信加盟社訪中代表団と会見し、今年の国内総生産(GDP)成長率について「10%以下に抑えたい」との目標を表明した。中国政府は持続的な安定成長に向け、今年の目標を8%前後に設定。しかし、1−3月期も前年同期比11・1%の高い伸びを記録しており、秘書長は景気過熱に強い警戒感を示した。

 また、米国などから切り上げ圧力が根強い人民元相場については「国民経済全体の安定からみて慎重に取り組む」として、大幅な切り上げなど急激な改革は行わない方針をあらためて示した。

 韓秘書長は中国経済の現状について「エネルギー消費や環境問題などで大きな代償を払っている」と指摘し、固定資産投資の伸びを抑制する考えを強調。一方で、地方政府や企業が経済成長を優先させているため、中央政府の政策が徹底していない実情を認めた。

【円・ドル・人民元 通貨で読む世界】中国の暴走抑制に道筋

2007/06/10 The Sankei Shimbun

 頻発する海外での中国製食品の有害物質混入の露見は、歯止めがかからない環境破壊と同じように、共産党官僚による13億人の統治システムが限界にきていることを暗示している。水や空気に加え食の安全確保は政治の基本なのだが、それを実現できないなら、体制が独裁的であろうと民主的であろうと政治支配者の正当性が問われる。

 北京指導部はそんな危機感を持っているのだろうが打つ手は相変わらず、中国の古いことわざにある通り「殺鶏嚇猴」(鶏を殺して、猿を脅かす)。だが、責任者だった国家食品薬品監督管理局の前局長を収賄罪で死刑にしようと、事態が改善するかどうか党中央のスーパー・エリートですら不安にさいなまれている。

 知り合いの北京の教育官僚は一切外食しない。昼食も30分以上かけて自宅にもどってとる。奥さんが厳選した安全な食材を料理する。家族をごっそり東京に移住させ、本人には逆単身赴任の北京エリートもいる。

 チャイナ・リスクとは予測がつかないことにある。古代中国の思想家、荘子の格言「成即毀(成れば壊れる)」は中国史そのものである。今の二けた成長の裏側をみれば、明らかに分裂、崩壊の危機の芽が多岐にわたって膨らんでいる。その危機がいつどこでどんな形に展開するのか、判断材料すらない。

 市場も環境もグローバル化した今、このリスクは中国に暮らす人々のみならず、日本など近隣アジア、さらに全世界を襲う。少なくても民主政治で、司法、立法、行政が分立し、幅広く多様な有権者の意見が政治に反映するなら、政治の先行きは予測できる可能性が高いが、北京では政治改革の動きすら封じられている。

 チャイナ・リスクをどう管理するか、という観点で考えると、今回の主要国首脳会議(ハイリゲンダム・サミット)で果たした日本の役割には意義がある。安倍晋三首相は渋るブッシュ大統領を説得し、米国に日本、欧州、カナダの合意を尊重し、長期的な目標を設定することを受け入れさせた。この合意をもとに米国と並んで中国、インドなど京都議定書に参加していない世界の二酸化炭素(CO2)排出量の4割以上を占める主要排出国が参加できる枠組みをつくる道筋を付けた。さらにサミットでは安倍首相の呼びかけで、知的財産保護の分野で模倣品や海賊版対策に関する多国間の枠組みを定めた新条約締結に向け、議論を加速させることでも一致した。

 中国関連合意は環境、知的財産権と分野が限定されているが、国際的なルールの枠組みの中に中国を引き込み、いわば多国的な「外圧」により、中国の暴走を抑えてゆく。日本、欧州、ロシアとも同意できたこと自身が、中国に対する強力なメッセージになる。特定国による外圧はナショナリズムからくる反発を呼ぶが、多国間の枠組みによる強制力は、「国際社会との調和」をめざす中国の指導部にとっても受け入れやすいはずだ。1990年代末、当時の朱鎔基首相は世界貿易機関(WTO)加盟に際し、国際的なルールという大義を使って国有企業改革を断行した。安倍首相の活躍を演出した日本外務省が中国を国際的な枠組みに追い込む意図を露骨に示すことは対中外交上まずいだろうが、サミットはこれから日本がとるべき対中国戦略の先駆けになった。(編集委員 田村秀男)

中国重慶市で数千人暴動 また公務員の暴力が引き金

2007/06/09 The Sankei Shimbun

 香港の人権団体、中国人権民主化運動ニュースセンターの9日の発表によると、中国重慶市で3日、公務員が農民に暴行したのをきっかけに群衆数千人が暴動を起こし、約10人が重軽傷を負った。中国の主要メディアは報道していない。

 同センターによると、3日午前、重慶市南岸区で花を売っていた農民夫婦を追い払おうとした同市の職員が、夫の頭をスコップで殴りつけ、目撃者の女子中学生にも暴行を加えた。怒った群衆が出動した警官隊約100人と衝突、警察車両2台を破壊した。(共同)

踊る中国「株民」 一獲千金夢見て…ばくちまがいのバブル

2007/06/09 The Sankei Shimbun

 【北京=福島香織】中国で1億人以上の庶民が株式熱に浮かされている。自宅まで抵当に入れて資金をつぎ込む“ばくちまがい”の株バブル。危機感を募らせた中国財政省は先月29日、過熱した株式市場をさますため売買時にかかる印紙税率の引き上げを発表した。すると一転、暴落した。株価は5日を底に再び上がり始めた。一獲千金を夢見て狂奔する個人投資家「股民(株民)」とそれを抑えたい当局の攻防は続きそうだ。

虎の子をつぎこんだ

 「お手伝いさんがこそこそ何をしているのかと思えば、家のパソコンを勝手につないで株価を見ていたのよ!」。北京市の不動産会社に勤務する女性が不満を打ち明けた。「虎の子をつぎ込んでいるんだって。顔面蒼白(そうはく)で仕事どころじゃないって」

 先月29日、上海証券取引所の代表的な指標、上海総合指数は前日比1.47%増の4334.924ポイントで引け、史上最高値を更新した。その夜、当局は、印紙税を従来の3倍の0.3%に引き上げると発表した。

 この引き締め策をきっかけに株価が急落し始めた。5日の前場、600銘柄以上がストップ安。一種のパニックだ。この乱高下に泣かされた「股民」は数えきれない。

 上海株式市場が熱に浮かされ出したのは昨年。不動産価格の上昇が年平均5%前後に落ち、投資対象として魅力を失った。そこで、個人投資家が注目したのが4年間にわたる下落で割安感が出てきた株だった。昨年後半以降、工商銀行や中国銀行など大型優良企業の新規上場が相次ぎ、株式投資の環境が整備されたことも追い風になった。

赤字企業も高騰

 急騰する株価に、株には手を出したこともなかった庶民も投機熱をあおられた。中国は今年、物価上昇率が預金金利を上回りつつあり、「銀行預金は損をする」と預金を切り崩して株に走る人が続出した。

 家を担保に6万元借りて株に投資した老人や学費を株に投じる大学生、陝西省西安市の臥竜寺の和尚まで株に夢中になる狂奔ぶりを中国メディアが報じた。上海総合指数は2月27日に8.8%の暴落を経験したが、規模が小さく外国資金もほとんど入っていない市場は「政府の神秘資金」の投入ですぐに回復したとささやかれている。

 今年4、5月、新規に開かれた証券口座は昨年1年の新規開設口座を上回り、5月29日には1億口座を突破。口座数の99.5%が個人投資家で、「その約3割がリスクを顧みず全財産つぎ込む“ばくち”式株式投資で、赤字企業の株まで高騰するデタラメぶり」(地場証券会社関係者)だ。

カジノ以下の市場

 さらに不健全さを増大させるのが「インサイダー取引」の横行だ。株高騰の最中、非上場の小規模証券会社「広発証券」と上場企業「延辺公路」のインサイダー取引が発覚。「カジノはルールがあるが、中国株式市場はルールがない。カジノ以下」という著名経済学者、呉敬●(=王へんに連)氏の言葉を証明した格好だ。

 中国当局は今年に入って再三、クレジットカードで調達した資金や老後、病気への備えを株に投入することの危険性を警告した。だが、効果のほどはさっぱりで、切り札として印紙税率の引き上げに踏み切った。

 ネットの掲示板には「政府の裏切り!」という「股民」の恨み節が渦巻く。地場証券関係者は「こうでもしなきゃ、彼らは株が下がることもあるということを信じない。愚かな股民を市場から追い出し、鉄火場を健全な株式市場にするための荒療治」という。

 8日、株価は5日の底値(3404.146ポイント)から4日連続で上昇し、3900ポイント台を回復。荒療治の効果はもう続かないのか。「政府が再び神秘資金で買い支える」とのウワサも流れ、株バブルに狂わされる人はまだまだ増えそうだ。

■中国の株式市場 人民元建てのA株、米ドル建てのB株の2種類が上海、深センの両証券取引所で扱われている。主に外国人投資家が売買できるB株は上海、深セン合わせて109銘柄で、国内外経済にほとんど影響のない規模。上海A株は840銘柄、深センA株は599銘柄で、外国人も指定国外機関投資家を通じて市場参加できるが4〜5%以下だ(数字はいずれも今年4月の時点)。2月下旬の「中国発世界同時株安」は中国経済の悪化を連想した「売り」集中が重なった結果と言われている。

125万人が強制立ち退き 北京五輪で人権団体指摘

2007年06月05日 中国新聞ニュース

 来年8月の五輪開催に向けて再開発が進む北京市内で、少なくとも住民ら125万人が今年4月までに強制的に立ち退きさせられたと、国際人権団体「居住権・強制退去問題センター」(本部ジュネーブ)が5日、報告書で指摘した。

 2005年の時点では、北京で強制立ち退きの対象となった人数は約40万人で、五輪開催が近づくにつれて急速に増えている。五輪開催までに150万人に達する見込みという。

 報告書によると、北京での強制立ち退きは01年7月に五輪開催が決定して2日後に始まった。住民を25−60キロ離れた郊外に引っ越しさせ、その場所にスポーツ施設のほか、高級マンションやショッピングセンターを建設した。

 住民が補償を求めても、支払われるのは市場価格以下。北京中心部で家を買うには不十分な額しか渡されなかった。強制退去の際にけが人も出たという。

 同団体は「代替住居の確保と暴力のない移住は当然の権利。国際オリンピック委員会は候補地選びで、住居の確保も不可欠な要素として考慮すべきだ」と訴えている。(共同)

中国07年も貿易黒字拡大へ 2500億ドル以上と予測

2007年05月29日 中国新聞ニュース

 【北京29日共同】中国の国家発展改革委員会は29日、2007年通年の貿易黒字が過去最高の2500億ドル(約30兆円)−3000億ドルに達するとの見通しを明らかにした。過去最高だった06年の1774億7000万ドルに比べ40−69%の伸びになる。

 同委員会は「短期的には貿易黒字が縮小する可能性は少なく、貿易黒字は今後長期間続く」と予測。その背景として世界的な経済成長が続き、中国製品への需要が高まっており、長江デルタなど主な生産拠点では海外からの注文をさばききれずにいると指摘した。

 さらに中国に進出している外資の多くは輸出向けの生産が中心であり、人民元の切り上げや輸出優遇税制の撤廃などにもかかわらず、生産拠点の中国以外へのシフトが進んでいないことも原因としている。

中国新幹線、備品盗難はじめ「非文明的行動」相次ぐ

2007/05/20 The Sankei Shimbun WEB-site

 【北京=野口東秀】日本やフランスなど各国の技術を導入したのに「国産」と宣伝している中国版新幹線が早くもピンチだ。4月18日から各地で時速200キロ以上の高速運転が始まったが、乗客による車内の備品持ち去りが後を絶たない。来年の北京五輪に向け、どうすればマナーが向上するのか中国指導部も頭が痛い。

 「社会公民の恥。中国人のイメージに悪影響を与える。五輪に向けこうした非文明的行動は注意しなくてはならない」。国営新華社通信(電子版)は乗客のマナーに疑問を投げかけ、処罰が有効策と指摘している。

 新華社によると、河南省鄭州市の検査場で検査員約100人は車内を点検して嘆いた。手洗い場のセンサー式蛇口、手洗いや排水の備品が消え、飲みかけのジュースが座席に放置されていた。

 中国各紙によると、信じられないほど備品が持ち去られている。トイレットペーパーに緊急脱出用のハンマー、便座の温度調節用つまみ、トイレットペーパーホルダーの軸など。センサー式蛇口のように持ち去っても何に使うのか想像もつかないものも含まれている。

 座席の物入れ網が破かれたり、トイレで喫煙したり、通風孔へのごみ投入、緊急用ボタンへのいたずら、トイレの水を流さない−など悪質なマナー違反も目につく。さらには大声を出したり床にたんを吐くなど傍若無人に振る舞う、足を前の座席に投げ出して足のにおいを発散させるなど周囲の迷惑を省みない行動もあるという。

 日本の新幹線車両をベースにしたCRH2など高速列車の愛称は「和諧(わかい)(調和)」号。名前は立派だが、車内の様子は公共精神の欠如を物語っている。

1人当たりGDP 北京市書記、5年で1万ドル目標

2007/05/18 FujiSankei Business i.

五輪都市にふさわしい文明度に

 中国共産党北京市委員会の劉淇書記は17日、同市で開幕した第10回代表大会で演説し、2012年までの5年間で一人当たりの域内総生産(GDP)を1万ドルの大台に乗せる目標を掲げた。同市の06年の一人当たりGDPは6210ドル。08年の北京五輪開催を発展の原動力とし、年平均9%前後の経済成長を目指す。

 劉書記は北京五輪と改革開放30周年(08年)、新中国成立60周年(09年)、中国共産党結成90周年(11年)に触れ、今後5年間の重要性を指摘した。北京五輪組織委員会会長を務める劉書記は「今年と来年の最重要課題は五輪成功に全力を挙げること」と強調。しかし、「都市・市民の文明度が国際的大都市の水準にまだ達していない」とし、五輪開催都市にふさわしい公共マナーなどの確立に引き続き努める方針を示した。

 また、首都の「安全と安定」確保を第一の政治任務と位置づけ、市民の利害に直接かかわる民生問題の解決や所得格差の緩和などに力を入れると述べた。さらに、北京市の劉志華副市長が汚職で解任されたことを踏まえ、幹部腐敗の摘発と予防をさらに強化する必要性を訴えた。(北京 時事)

中国の経常黒字30兆円 日本を抜き世界一

2007/05/12 Iza

 中国国家外貨管理局は11日までに、2006年の経常黒字が前年比55%増の2499億ドル(約30兆円)に達したと発表した。貿易黒字の急増を反映し、世界一の経常黒字国だった日本を抜いた。06年の日本の黒字額は19兆8390億円(速報値)だった。中国の経常黒字は貿易黒字と直接投資の増加で年々増え続けており、経常黒字の対国内総生産(GDP)比は9・5%と、日本やドイツを大きく上回った。(北京 共同)

中国、米国に次ぐ世界2位の貿易大国へ ドイツ抜く見通し

2007/05/01 FujiSankei Business i.

 新華社電によると、中国商務省傘下の国際貿易経済協力研究院の李雨時副院長は30日までに、広東省広州市で開かれたセミナーで講演し、中国の今年の輸出入総額は2兆1000億ドル(約250兆円)に達し、ドイツを抜いて、米国に次ぐ世界2位の貿易大国になるとの見通しを示した。

 中国の昨年の貿易総額は前年比23・8%増の1兆7600億ドル。黒字は1775億ドルと過去最大だった。今年1〜3月期も総額は23%強の伸びで、李副院長は「この勢いが年内は継続する」と述べた。

 また、貿易総額が12〜15%の伸びを続ければ、2010年には米国を上回り世界最大の貿易大国になると予想した。ただ、摩擦を意識して、「中国政府は国内企業に対し、先進的な製品、技術の輸入を奨励している」と付け加えた。(北京 時事)

生活苦でメダル売却、ホルモン剤で後遺症…中国人選手、悲惨な末路

2007/04/16 The Sankei Shimbun WEB-site

 【北京=福島香織】国家のために戦った中国人アスリートの多くが引退後、苦しい生活を強いられている。コーチらによる賞金の搾取、ハードなトレーニングがもたらす重度のスポーツ障害。そして学歴がないため仕事が見つからない。元長距離選手が生活のため栄光のメダルを売り出したことから、北京五輪を来年に控え、中国選手の悲惨な人生が改めて注目を集めている。

 この元選手は艾冬梅さん(26)。艾さんは1999年の北京国際マラソンで優勝したが、現役時代の無理がたたって足の後遺症に悩まされている。2003年に引退した後は夫と行商などで生計を立てていたが、うまくいかなかった。現役時代に稼いだ5万元(約75万円)以上の賞金はコーチに横領されたとして裁判で争っている。

 今月、とうとう生活苦に耐え切れずメダル16個を200〜1000元(約3000〜1万5000円)で売り出すと発表した。「娘がもしスポーツ選手になりたいといったら足を折ってでもやめさせる」という艾さんに同情が集まり、これまでに2万元(約30万円)以上の支援金が寄せられた。

 中国紙・新京報によれば、同じような境遇に置かれている引退選手は決して少なくない。

 艾さんと同期の元女子陸上中距離選手(30)も9歳からスパルタ式の訓練を受け、足を負傷して26歳のとき引退した。いまも就職できない身を「私はコーチの実験品だった」と嘆いている。元重量挙げ女子全国チャンピオンは大衆浴場のマッサージ師になったが、現役時代に服用していた男性ホルモン剤の後遺症で顔にひげがはえ男のように声変わりしたままだ。

 中国ではスポーツ選手は国家機関で育成され、国家のために競技する。賞金やCM出演料も「強化費」名目でコーチらにピンはねされ、外国チームに移籍しようものなら育成費の返還が求められる。スパルタ式の練習についていくことができなければどんどん振り落とされる。毎年3000〜6000人の選手が引退している。その後の生活保障は整備されておらず、約4割が生活苦にあえいでいるという。

社会主義の看板、重荷 物権法採択し全人代閉幕

2007/03/17 FujiSankei Business i.

 □民間企業は発展促進

 16日閉幕した全国人民代表大会(全人代=国会に相当)では、物権法と企業所得税法はともに高い支持率で採択され、経済の資本主義化に向けた実態が変えようのないものであることを印象づけた。しかし保守派から強い抵抗があった物権法は、今後一層の貧富の格差拡大を招くことも予想され、改革開放と和諧(調和のとれた)社会という本質的には対立するイデオロギーを内包する胡錦濤政権は一層慎重なカジ取りを迫られそうだ。(北京 福島香織)

 物権法は、全人代の審議で若干の用語を修正したが最終案と基本的に変わらない内容で採択された。同法の意義は私有財産に対し公有財産と同等の法的地位を与えたことにある。これにより国内総生産(GDP)の7割を占める私有財産が保障され、民間企業の発展を促進、公有制主体の建前は事実上崩れることになる。

 また農村の土地請負経営権(農地使用権)と宅地使用権について永久所有を容認するなど事実上の土地私有化を進めたことも大きい。土地の譲渡、抵当化については「農地は非農業に転用できない」「村の同意が必要」など現行の土地政策、関連法による制限を加えている。

 ■農村宅地も売買

 一方で初期の草案にあった「農村宅地(使用権)流通不可」「都市民は農村宅地を購入できない」といった文言が最終的に削られたことは、広東省や北京市郊外などで既成事実化されている農村宅地売買を追認したものといえる。

 山東省経済学院不動産法研究センターの調査では、山東省内42カ村の68・9%の村ですでに宅地が売り出されており、都市周辺の条件のよい農村では宅地を売り、都市に出稼ぎに行き、定住する農民が急増している。物権法はこうした傾向を加速させる可能性がある。

 ただ、これが行きすぎると、失地農民の増加や農村の弱体化につながる懸念もあり、王兆国・全人代常務副委員長が(制定の)「条件は成熟していない」と強く牽制(けんせい)した理由でもある。

 ■進む税制透明化

 一方、企業所得税法は、国内外企業の平等な競争環境を整え、中国企業の成長を促すことが期待される。25%という統一法人税率は他国と比べても必ずしも高くない。すでに進出済みの外資には5年の猶予もあり、外資には「中国の巨大市場に魅力を感じている企業にとってはあまり影響はない」(日系自動車メーカー)という冷静な声が多い。中国政府にとっては当面、約930億元程度の減収となるが「税制の透明化」が進み、脱税防止につながることも期待されている。

 新法は経済面の社会主義決別を示唆しているが、司法の独立が未整備な政治体制の中では、拝金主義の風潮ばかり強まり、既存の社会矛盾が拡大する可能性もある。それが政治改革への追い風となるか、社会主義回帰を唱える保守派を勢いづけるかが、今後の注目点といえそうだ。

500万円のプーアル茶も 中国、茶への投機が過熱

2007年03月17日 中国新聞ニュース

 【上海17日共同】中国で茶への異常な投機ブームが起きている。主な対象は日本でも人気が高いプーアル茶で、産地の雲南省の茶販売店では、3キロ30万元(約500万円)の“超高級茶”も登場した。

 中国経済はカネ余り状態が続いており、投機マネーが株式や不動産だけでなく、茶にも向かった格好だ。プーアル茶は中国で庶民が日常的に飲んでおり、投機ブームで庶民の手が届きにくくなる懸念もあるという。

 雲南省の省都、昆明の茶販売店。約500万円の茶は直径30センチほどの円盤形に固められている。一部の高級品は古いほど味がよくなるとされ、この茶は1973年産。店員は「値段の交渉に応じてもいい」と持ち掛けてきた。

全人代代表に出稼ぎ労働者 初の草案、女性22%以上に

2007/3/16 FujiSankei Business i.

 北京で開催中の中国の全国人民代表大会(全人代=国会)で、国会議員に当たる全人代代表に農村部からの出稼ぎ労働者を選出する初の草案を、盛華仁・全人代常務副委員長が15日までに提出した。

 「農民工」と呼ばれる都市部への出稼ぎ労働者は1億人以上。安い賃金で過酷な労働に従事し、行政上も差別的待遇を受けているため、社会的弱者として不満を募らせやすい境遇にある。

 盛副委員長は、「農民工は産業労働者の重要な構成部分になっており、全人代で適当な数の代表を持つべきだ」と指摘。出稼ぎ労働者が集中している省・直轄市は「農民工代表」を選出しなければならないと語った。

 さらに全人代代表の女性の割合についても、2008年1月に選出される第11期全人代で22%以上にすることが提案された。全人代代表選出に関して女性の比率が明確に規定されるのは初めて。

 03〜07年の第10期全人代で女性代表の比率は20・24%で、第9期に比べて1・58ポイント低下した。1978年に始まった第5期以降、割合は20%前後で推移していた。

 ある女性代表は「重大決定に対する女性の影響力を高め、多くの女性の権益や叫び声を反映させるのに有益だ」と指摘した。

 現在の全人代代表は08年3月に5年の任期が切れる。(北京 時事)

中国、私有財産を保証 全人代「物権法」を採択

2007/03/16 The Sankei Shimbun Web-site

 【北京=野口東秀】中国の第10期全国人民代表大会(全人代、国会に相当)第5回会議は16日午前、私有財産の不可侵を明記し同財産保護を法的に保証する「物権法」案と外資優遇税制を撤廃する「企業所得税(法人税)法」案などを採択し閉幕した。最高人民法院(最高裁)と最高人民検察院(最高検)の活動報告にはそれぞれ16.9%、16.3%と大量の批判票(反対、棄権)が集まり、汚職を取り締まる立場にある司法当局に対する国民の不満の大きさを改めて示した。

 物権法は私有財産を国家の財産と同列に扱い、「公民の合法的な私有財産は侵されない」とした2004年の改正憲法を具体化、「公有制」を基本とする中国にとり市場経済化への大きな転機ともなる。

 中国筋によると、物権法の審議では、「過度な資本主義は貧富の格差を拡大する」などとして反対があったが、胡錦濤政権は多発する強制的な住居の立ち退き問題の歯止めを念頭に、反対派を封じ込め制定を進めた。

 胡錦濤政権の狙いは、民衆を保護する制度を通じ、党大会に向け「社会の安定」を図ることだ。しかし物権法の採択では保守閥を中心に批判票が集まった。

 また、法院報告は反対359票、棄権127票、検察院報告は反対342票、棄権128票となった。昨年の批判票は法院報告21.9%、検察院報告18.3%だった。

中国で高まる海外ブランド不信 国産品質向上、現地報道も影響か

2007/03/15 The Sankei Shimbun Web-site

 15日付の中国週刊紙、国際先駆導報は、インターネットを通じた世論調査で、海外ブランドに不信感を抱く中国の消費者が約5割に達したと伝えた。日米欧の海外ブランドへの信仰は根強いものの、国産品への信頼が向上しつつある上、中国メディアが海外製品の欠陥を大きく報道することも影響しているとみられる。

 調査は今月中旬に同紙と大手ポータルサイトの新浪網が共同で実施、約2500人が回答した。海外ブランドへの信頼感では「問題が多いので、信用できない」が約49%で、「問題があるのは一部で、国産品より安心できる」の37%を大きく上回った。

 高価なシャツがすぐ色落ちしたが返品に応じてくれなかったなど具体例を挙げた回答もあり、全体の8割が海外ブランドは「中国の消費者を差別していると思う」としている。海外製品を信頼できない理由として「偽物が多いから」と答えた人もおり、中国国内で偽物が出回っている実態を指摘する意見もあった。

 中国ではここ1、2年、地方当局が外国ブランドへの品質検査を強化。日本のデジタルカメラや米国の化粧品などがメディアで批判を受け、不買運動も起きている。(共同)

大卒124万人が就職難 雇用創出追いつかず

2007/03/14 FujiSankei Business i.

 【北京=福島香織】中国の田成平・労働社会保障相らは全国人民代表大会(全人代=国会)にあわせて13日、北京で記者会見し、「今後数年の間は深刻な就職難が続く」との見通しを示した。中国では昨年の大卒者約413万人のうち約30%の約124万人が就職できなかった。

 また、今年の大卒者は前年より82万人増の495万人で、就職浪人も含めると大卒だけで600万人の就職口が必要となる。このため田氏は「大学生自身の観念も変わらねばならない」とし、大卒者に農村回帰や地方での就職に目を向ける必要があると訴えた。

 田氏は、昨年の雇用創出が1184万人と、過去最多であったことを強調。しかし(1)企業改革やリストラの深化(2)大卒者など新たな労働力の急増(3)農村の余剰労働力の都市流入急増−などで雇用創出が追いつかないことを認めた。

 対策として、税務・金融政策や研修などによる就職希望者の能力アップなどの充実を進めるとした。これにより、今年は900万人以上の雇用創出をみこんでいるが、新たな就職希望者は2400万人と見込まれ、退職者による「空席」を加えたとしても、とても足りる状況ではない。

汚職官僚4万人立件 全人代で報告

2007/03/14 The Sankei Shimbun Web-site

 【北京=野口東秀】中国最高人民検察院(最高検)13日、開会中の全国人民代表大会(全人代=国会)で活動報告を行い、2006年に収賄や横領など汚職事件で立件した公務員は4万41人に達したことなどを明らかにした。05年より1406人減少しているが、1日当たり109人が立件された計算で、相変わらずの「汚職大国」ぶりだ。

 公務員汚職のうち、収賄・公金横領の額が100万元(1元約15円、1500万円)以上の大型事件は623件。容疑者のうち閣僚・省長級幹部は6人(前年比2人減)、中央・地方の局長級は202人(同6人増)だった。汚職に関与して逃亡したが拘束された容疑者は、前年比137%増の1670人。また、国家財産の横流し、横領で立件された国有企業職員は、前年より1625人多い1万742人だった。

 また、職権乱用や私情を含んだ捜査、収賄などで立件された司法当局者も、06年は2987人に上った。

5日開幕の中国全人代 私有財産保護を明記 「物権法」審議が焦点

2007/02/27 FujiSankei Business i.

 ■社会主義放棄? 保守派は反対も

 【北京=福島香織】私有財産の保護を明記した「物権法」が3月5日に北京で開幕する中国の全国人民代表大会(全人代=国会)の焦点になりそうだ。「社会主義公有制」を憲法に掲げる中国だが、実際に採択されれば資本主義化が加速されるのは必至。だが一方で、社会主義国家のレゾンデートル(存在意義)を問われかねないとして、保守派勢力は「同法は憲法違反」として要望書をインターネット上に発表するなど、反発を強めている。

 ≪改革開放から「資本主義」へ≫

 中国は2004年に憲法を改正し、「合法な私有財産」を不可侵とする方針転換を行った。物権法はこれを具体的に進めるための法律。最終草案が昨年12月末の全人代常務委員会会議で可決された。通例では、3月の全人代に上程されれば、そのまま採択される。

 その場合、社会主義の看板のもとに資本主義化を進めたこれまでの「社会主義市場経済」というトウ小平氏の改革開放路線から、資本主義にカジを切り、事実上、社会主義の看板も下ろすことになるとの指摘もある。

 だが、物権法の草案可決に反発した保守派は、呉邦国・全人代常務委員長らあての反対要望書を2月15日付で発送。元国務院発展研究センター顧問の馬賓氏ら、反対要望書に署名した人物は3275人にのぼり、中央の退職幹部や政府機関の現職幹部も多数含まれる。

 要望書は、中国の社会主義経済制度の基礎は「全民所有制」にあるとし、「社会主義の公共財産は神聖にして不可侵」と規定する憲法12条などに違反すると主張している。

 ≪保守派勢力も急速に台頭≫

 物権法では、国有企業解体の過程で横領に似た手口で資産を得た私営企業についても「時効」を認め、財産権を保障する内容になっているとみられる。要望書は、こうした特権階級に不満を募らせている国民の関心を集める可能性がある。

 社会矛盾の責任を改革開放政策に求める保守派勢力は04年以降、急速に台頭。物権法制定を既定方針とし、国際化と市場経済の仕上げを目指す胡錦濤政権の経済政策にも影響を与えかねない勢いだ。

                   ◇

【用語解説】中国の物権法

 財産に対する所有権や抵当権などの権利を定める法律。国有財産などと同じように「私有財産の不可侵」が草案には盛り込まれているもようだ。近年の急速な経済発展により、人民の財産に対する権利意識が向上していることを背景に、2002年から全人代で審議が開始されたが、「社会主義公有制」を掲げる中国の憲法と矛盾していることなどを理由に、保守派などは強く反発している。

貧困農村問題に焦点 格差拡大、迫られる根本的改革 全人代

2007/03/08 FujiSankei Business i.

 【北京=福島香織】中国の北京で開催中の全国人民代表大会(全人代=国会)における政策提言機関の中国人民政治協商会議(全国政協)で農村格差の問題がクローズアップされている。農村では自力で生活が維持できない貧困層が1億1000万人以上。中央政府は6月までに農村の最低生活保障制度の確立に向け「タイムスケジュール」を出すと表明しているが、深刻化する貧富格差問題で、より根本的な改革に迫られている。

 全国政協委員で中国農業技術推進協会会長の陳耀邦氏らが明らかにしたところによると、約8億人の農民の中で生活補助を必要とする貧困農民は1億人前後。このうち1人当たりの平均年収が683元(約1万587円)以下の絶対貧困層は2148万人という。958元以下の低収入層も3550万人に上る。

 すでに生活補助を受けているのは1509万人で昨年は41億6000万元の補助金が投入されたが、絶対貧困層の全員に補助するとなれば、さらに60億元以上が必要。中央財政において負担はさほど大きくないが、補助金政策だけでは根本的な貧困問題の解決にはならないとの批判もある。

 農民の平均年収は昨年3587元で前年実績を10・2%上回った。しかし、上は江蘇省無錫市郊外の華西村のような村営企業上場で村民の平均年収が10万元を超えた豊かな村から、下は平均年収300元以下の貧困村まで、農民の間でも格差はむしろ広がっている。

 一部の貧困農村地域では電気も道路も教育、医療施設もなく、置き去りにされている。工業開発などで農地を強制収用され、土地も仕事も社会保障もない「三無」農民の問題も突出してきた。

 政協委員の林毅夫・北京大学中国経済研究センター主任は、華西村の成功例は他の農村は簡単に模倣できないと指摘した上で、「農業の現代化とともに農民の都市出稼ぎを促進して現金収入の増加をはかることも重要」と話し、農村人口の都市への移動が貧困問題解消の鍵になるとみている。

中国の航空機需要 25年までに3000機 欧エアバス予測

2007/02/22 FujiSankei Business i.

 ■現地に主力機の組み立てライン建設も

 ■オペレーティングリース強化

 仏トゥールーズに本社を置く欧州の航空機メーカー、エアバス社は、中国で2025年までに旅客と貨物を合わせ、少なくとも3000機の需要が見込めるとの予測をまとめた。エアバスは中国で05年に56機、06年に76機を納入。1995年に7%だった中国におけるシェアを35%まで高めているが、米ボーイングが累積納入機数では先行している。両社の中国でのシェア争いは、さらに激化しそうな雲行きだ。(上原すみ子)

 ≪05年比で3倍≫

 エアバスが今月まとめた25年までの中国市場の予測で、主力の旅客機需要が2650機。総資産価値は2890億ドル(約34兆3690億円)に達する見通しだ。このなかで25年末までに実働する旅客機数は、05年末の760機から2700機へと約3倍に増える見通し。

 06年に世界の航空機受注で6年ぶりに首位を奪還した米ボーイングは中国市場でもリードしている。日本航空宇宙工業会によると、06年の中国航空会社や政府による発注は全体で373機。このうち、ボーイングが214機で、エアバスは159機だった。

 中国の航空旅客・貨物の需要は急増を続けているが、機材調達には中国の政治的な要因も大きく作用する。ボーイング機の大量調達は、膨張を続ける対米貿易黒字への対策として、06年4月の胡錦濤・国家主席の訪米時の対米交渉の“目玉”となった経緯がある。このためエアバスも官民一体の売り込みを急いだ。

 昨年10月のシラク大統領の訪中では、シラク大統領と胡主席が対中武器禁輸解除を求める共同声明を発表。その一方、天津市の浜海開発区にエアバス主力の中型機「A320」の組立ライン建設や、「A320」の150機の商談もまとめ、巻き返しを図っている。

 ≪コストダウン≫

 エアバスは、昨年12月に中国企業と生産合弁会社を設立しており、08年末から「A320」の生産を開始。11年まで月間4機を生産する。現地生産によるコストダウンでシェア50%を目指す。

 一方、エアバスは業績不振が続いている。ドビルパン仏首相が近くエアバス側がまとめる1万人の人員削減案を承認する見通しとなったが、経営立て直しは急務で、中国市場での受注の成果がそのカギになりそうだ。

 中国での航空機の需要増に対応し、米GEグループや日本の大手商社の双日などは、中国での航空機オペレーティングリース事業の強化に乗りだしている。オペレーティングリースは、中古機になったときの査定価値をあらかじめ差し引いた価格で航空機リース料を設定する仕組み。航空会社側にとって初期投資を抑制できる利点がある。

 双日は昨年3月に、アイスランド航空などと共同で中国向けの航空機のオペレーティングリース合弁会社、チャイナアイスをアイスランドに設立した。ここからボーイング737−800型(189人乗り)9機を調達し、中国国際航空(エアチャイナ)や海南航空に供給する計画だが、引き合いが増えており、追加調達も検討している。

大国の責任「軍事力を含む力必要」 人民日報が論評

2007/02/15 The Sankei Shimbun Web-site

「中国脅威論」に反論

 【北京=野口東秀】15日付中国共産党機関紙「人民日報」(海外版)は「国防力と国家の責任」と題し「中国が大国の責任を果たすには軍事力を含む相当の力量が必要だ」とする論評を掲載した。1月に実施した衛星攻撃兵器(ASAT)実験にも間接的に触れ、軍事費の不透明さや増強などに対する「中国脅威論」に反論した。

 筆者は中国誌「世界軍事」の陳虎編集長。論評は国際社会で中国に対し「責任ある大国としての役割を求める声」が強まっており、テロや災害などグローバルな問題で「中国の積極的な影響力の発揮が必要とされている」と指摘。「責任が大きくなればなるほど大きな力量が必要」と述べた。

 衛星攻撃実験に対する日米欧からの批判を念頭に、中国の技術は国際社会の水準と比べるとまだまだ遅れており、「すでにある国では数十年前に有しているのに大げさに反応している」と反論した。

 国防費の不透明さや急速な軍拡に対する批判について「国防に関する情報をすべて公開できる国はない」と主張。「ある国の軍事費はその他の国の合計に匹敵する。バランスの取れた状態と言えるのか」と指摘し、米国への対抗意識をむき出しにした。中国が新世代の主力戦闘機「殲(せん)10」を配備したことに対する西側の反応にも「大げさな反応の裏にどんな意図が隠されているか考えるべきだ」と総括している。

アフリカ照準…中国流の援助外交 胡主席、資源確保に奔走

2007/02/08 The Sankei Shimbun Web-site

 胡錦濤・中国国家主席は6日、訪問中のアフリカで大陸随一の経済大国、南アフリカに入った。先月末から12日間、計8カ国に及ぶ今回のアフリカ歴訪も、モザンビークとセーシェルを残すのみとなり、最終盤を迎えた。

 行く先々の資源国で経済援助を奮発した最大の狙いが、資源の確保にあるのは明らかだ。だが、安い中国製品の大量流入が経済を混乱させているといった不満も現地には強く、中国流の対アフリカ外交も岐路にさしかかっているようだ。ロイター、AP、AFPの各通信社の報道などを基に胡主席のアフリカ行脚をまとめた。(佐藤貴生)

カメルーン

 国交樹立から36年で中国指導者として初めて、1月30日に訪問した。ビヤ大統領と会談、供与や低利融資などで約1億ドルの資金を提供することで合意した。対中債務の帳消し(額は不明)にも応じ、商都ドゥアラに学校2校と病院を建設、首都ヤウンデの病院に医療器具などを提供することでも合意した。大統領は会談後、「カメルーンへの投資を(主席に)呼びかけた。ガスや石油、鉱物開発では無限の機会がある」と、中国による資源開発に期待を寄せた。

リベリア

 数年前に台湾と断交、中国と復交した。胡主席は、内戦で疲弊し失業率が80%を超す経済の復興のため、1000万ドル余の対中債務帳消し、今後2年間にわたる総額2500万ドル相当の事業の実施、関税の免除方針を表明。2月1日に会談したアフリカ初の女性大統領サーリーフ氏も「民間資本と投資家が必要。国家主席、貴国の助けを当てにしている」と、資源分野への投資を求めた。

スーダン

 この国の石油生産量の3分の2を輸入する一方でダルフール紛争にはダンマリの中国に、国際的批判は強い。中国企業と合弁で設立された現地の製油所や各種建設事業などで数千人もの中国人が働いている。2日のバシル大統領との会談では、さすがに、紛争解決努力の注文を付け、紛争をめぐる人道支援に480万ドルを拠出するとしたものの、声明には盛り込まずじまい。大統領宮殿建設への1200万ドル無利子融資と、債務帳消しも約束した。

ザンビア

 3日に到着し、ムワナワサ大統領との会談で、「経済貿易協力区」の設置で合意、8億ドルの拠出を表明した。この世界有数の銅輸出国での銅の開発協力をさらに強化する。債務免除に加え、洪水被害対策に15万ドルの支援も行う。180前後の中国企業が進出、衣料業界などでの劣悪な労働環境や低賃金、度重なる工場閉鎖には現地住民の不満も強い。2005年、現地職員50人の死亡事故が起きた中国企業経営の銅山訪問は抗議デモへの懸念から、中止された。

ナミビア

 ポハンバ大統領との間で5日、小学校建設などを目的とする410万ドルの無償供与と同額の低利融資を新たに行うことで合意。中国人観光客を増やすことや経済・技術協力協定にも調印した。04年からはウランの輸入を始めるなど、地下資源の輸入拡大を図っている。安価な中国製品の大量流入に伴う自国産品の値崩れへの批判もあり、国内人権団体は中国人社会への反発が高まりかねないと警鐘を鳴らしている。

南アフリカ

 6日からの訪問でムベキ大統領と経済、農業分野における協定を締結した。ブドウの衛生管理、タバコ、リンゴなどの輸出入拡大を盛り込んだ議定書にも調印した。昨年の中国との2国間貿易高は90億ドルに迫る勢いで、この国でも中国製品の氾濫に対しては野党などから批判が上がる。同大統領はしかし、1月から国連安保理非常任理事国になれたことについて中国の支援に謝意を表明、蜜月関係を印象付けた。

なぜ今アフリカで反中感情が…?

2007/02/05 朝鮮日報/朝鮮日報JNS 香港=宋義達(ソン・ウィダル)特派員

 今月3日、ザンビアの首都ルサカの空港に到着した中国の胡錦濤国家主席は、現地の人々約2000人からの歓迎を受けた。しかし、空港から市内に至る道には武装警察数千人、ザンビア大学内には学生デモを阻止するための警察数百人が配備されていた。また野党「愛国戦線」のマイケル・サタ総裁は2日間、胡錦濤主席の訪問先に接近することを禁じられている。

 それもアフリカ大陸で最も早い1965年に中国と国交を結んだザンビアで「反中感情」が膨らんでいるからだ。確執の根は98年、北部シャンビシ経済特区内の銅鉱山を買い取った中国人が、現地人の労働組合設立を弾圧し、わずかな給料しか与えないという横暴を極めていることにある。

 昨年7月には中国人の賃金未払いで労働者のデモが起き、これを制圧する際に中国人監督官が労働者らに発砲、46人が死亡した。元労働者のアルバート・ウムワナウモさんは「中国人は私たちを人間扱いしない。彼らは私たちを支配できる権利を持っているかのように振舞う」と非難した。

 昨秋の大統領選に出馬したサタ氏は「ザンビアは中国の1つの省に転落しつつある。私たちは非民主的な外国の存在を望んでいない」と露骨な中国追放論を主張、28%の支持を得た。同氏は、首都ルサカでは対立候補だったレヴィー・ムワナワサ現大統領の3倍の票を得た。

 こうしたムードはナミビア・ジンバブエ・南アフリカ共和国・アンゴラなどにも広がっている。低価格の中国製品で就職先を失った南アフリカ労働組合会議(COSATU)のメンバーたちは、2005年12月の集会で自国の繊維産業を衰退させたことに抗議する意味で「メード・イン・チャイナ」と書かれた赤いTシャツを引き裂いた。

 今年、ナイジェリア武装集団が中国人労働者を狙い拉致事件を起こしたのも、反中感情と関係があるものとみられている。これは中国がアフリカの天然資源を奪い、低価格で製品を作り、現地の産業を衰退させていることから、「中国も欧米諸国とまったく同じ略奪者だ」という認識が拡大しているためだ。

 スウェーデンにある「ダグ・ハンマーシュルト財団」を率いるヘニング・メルバー氏は「アフリカ人たちは中国に対し人種差別主義への怒りにも似た強い憤りを表している」と語った。

輸出補助金問題で 米、中国をWTO提訴

2007/02/05 FujiSankei Business i.

 米通商代表部(USTR)は、中国政府が世界貿易機関(WTO)協定が禁じている「輸出補助金」などを拠出しているとして、WTOに提訴した。米国の対中WTO提訴は3件目。米政府が問題視する補助金は日中合弁企業にも流れているとみられ、提訴の行方は日本企業の中国事業にも影響を与えそうだ。

 USTRは、中国が税制などを通じて、鉄鋼や木工品、IT(情報技術)製品など幅広い品目で不当に輸出競争力を高め、輸入品を差別していると主張。「米国の中小企業と労働者が被害を受けている」(シュワブ代表)としている。

 具体的には、中国による輸出企業への法人税・付加価値税減免や低利融資など6件が輸出補助金に、自国製品購入に対する税還付など3件が同じくWTOが禁じる「国内産品優先使用補助金」に当たるという。

 USTRは、中国の輸出の約6割は外資系企業によるものだと指摘。米テレビに出演したシュワブ代表は「米国、欧州、日本、アジアの一部企業は(補助金の)恩恵を受けている」と語り、中国で操業する多国籍企業を巻き込んだ提訴になることを認めた。

 昨春、中国は補助金制度についてWTOに報告。米国は外国企業を著しく不利にするとして、同制度の是正を強く求めたが、中国側は応じていなかった。これまでに米国は中国の半導体や自動車部品の関税をめぐってWTOに提訴している。(ワシントン 時事)

ルーズさ、不衛生… 中国ア大会に不満続出で五輪不安

2007/02/05 The Sankei Shimbun Web-site

 【長春(中国吉林省)=川越一】2008年北京五輪の試金石として注目された第6回冬季アジア大会(中国吉林省長春)が4日、閉幕。大きな失態はなく、組織委員会は「90点」の自己採点。しかし、中国外の選手・コーチらからは“中国方式”に対する不満も聞こえてくる。施設などは及第点だが、大会に関わる運営面では課題が続出している。

要人出席でアピール

 アフリカ8カ国歴訪を前にした胡錦濤国家主席が過密日程をぬって開会式に出席し、開会宣言。4日の閉会式には温家宝首相が駆けつけた。要人が出席することで、中国政府の国際総合大会に対する関心を内外に印象づけた。

 アジア・オリンピック評議会(OCA)では「中国政府はすべてのスポーツの背後にいる」と政府挙げての支援を称賛。リップサービスに乗せられた地元メディアの間では、冬季五輪も招致できるとの期待感も広がりつつある。

振り回された選手

 役員だけの参加を含めると初めてOCA加盟の全45カ国・地域が顔をそろえた。アジアにおける冬季競技の普及・発展には貢献した。

 しかし、選手はずいぶん振り回された。日韓選手団は入国手続きなどで2時間を浪費した。アイスホッケー女子のように、長春到着時に割り当ての練習時間が終わっていたケースもあった。

 「急にあっちに行けと言われて50元くらいかかった」と頬を膨らませたのはフィギュアスケート・アイスダンスの渡辺心選手。輸送スケジュールも表彰式などを考慮に入れていない。臨機応変に対応できないため、メダリストが取り残されることもしばしばだった。

中国びいき

 地の利を生かすのは開催国の特権だが、度が過ぎると軋轢(あつれき)が生じる。

 スピードスケート・ショートトラックの韓国選手が表彰式で「白頭山(中国名・長白山)はわれわれの土地」と記した紙を掲げて物議をかもしたが、中国人審判の自国びいきの不公平判定が引き金になったとされる。

 役員の知識不足やマナーの悪さも問題点に挙げられた。ノルディックスキー距離では競技役員が仕事を放棄してコース内を中国選手と併走したこともあった。

検査ない会場

 各会場に入場する際には参加証のバーコードをチェック。パソコン画面の写真と照合する。その後、金属探知機を通過。警備員による身体検査も受ける手はずになっていた。

 だが、胡主席が出席した開会式をピークに警備がルーズになっていった。携帯電話などは探知機を通さず、手荷物検査がない会場もあった。

 2000年シドニー五輪の警備担当者が「スポーツイベントを狙ったテロは時間の問題だ」と発言している中、不安にならざるを得ない。

異様な臭い

 「もう1度中国でやれといわれたら? 嫌ですね」。アイスホッケー女子の近藤陽子主将が思わず本音を口にした。

 女子選手に不評だったのはトイレの臭気だ。開閉会式会場でもある五環体育館では、場内禁煙にもかかわらず、トイレでたばこを吸う人が後を絶たず、異様な臭いが通路まで漂ってくる。大気汚染が深刻な北京での屋外競技では、今大会以上に選手を悩ませそうだ。

【北京春秋】闇の子供悲し

2007/01/29 The Sankei Shimbun Web-site

 「黒孩子(戸籍のない子供)」というと、一般に中国の人口抑制政策の「一人っ子政策」に反して生まれた第2子以降の子供のことを指し、男児を望む農村で産み捨てられる女児が多かった。ところが、最近は都会で急増している。例えば、広東省の工業地域の珠江デルタでは黒孩子がすでに5万人以上。既婚者の子供を産むシングルマザーが増えているからだ。

 珠江デルタでは香港、台湾を含む外国駐在員の愛人の出産が多い。昨年汚職で罷免された前国家統計局長も前上海市党委書記もみな愛人がいた。中国では婚外男女関係は違法ながら、女性の方とてかい性のない男と結婚するより、実力者の愛人になる方が幸せという。

 だが、戸籍のない子供は学校に行くのも一苦労だ。香港居留権を狙う「香港駆け込み出産」という手もあったが、最近は「駆け込み出産」防止のため、香港当局が妊娠7カ月以降の中国人女性の入境を原則禁止した。知人のホステスは、出産後に相手が愛人手当をくれなくなったので、「5000元で他人に譲った」と事も無げに語る。

 こんな闇の子供が全国にいったいどのくらいいる? 人口抑制も、男女関係のモラルも、出産という女性の権利擁護も大切だけど、一番大切なものを忘れていないだろうか。そろそろ出産年齢リミットを迎える私は考え込んでしまうのである。(福島香織)

環境指標、世界で100位 中国の「現代化報告」

2007/01/28 The Sankei Shimbun Web-site

 中国科学院などは「中国現代化報告」(2007年版)の中で、中国の04年時点の経済発展と環境のバランスを指標に基づき世界各国と比較したところ、118カ国中100位だったと伝えた。28日付の中国各紙が報じた。

 指標は、2酸化炭素排出量、生活排水の処理率、有機農業の普及率など30分野を対象に各国のレベルを総合評価。この結果、スイスなど15カ国が最高レベル、スペインなど30カ国が平均レベルだったのに対し、中国など26カ国は「低水準」と判断された。

 また報告は、天然資源について「中国は日韓より100倍以上も消費している」と指摘。大気環境でも「カナダ、スウェーデンより7倍は汚れている」としている。(共同)

地下銀行の融資1兆元(約15兆円)に

2007/01/25 FujiSankei Business i.

 ■景気過熱抑制で「裏」が繁盛、6割は市場流入しバブルに

 非合法な民間金融「地下銀行」の中国国内での融資規模が昨年末現在で、約1兆元(約15兆円)に膨れあがっていることが中国の研究機関の調査で明らかになった。1年間で20%の急増となる。そのうち、約6000億元(約9兆円)が株式市場に流入しているとの報道もあり、金融当局は地下銀行がマネーロンダリング(資金洗浄)の温床になるとともに、株式市場のバブル化を誘発しかねないと取り締まりを強化している。(相馬勝)

               ◇

 新華社電によると、地下銀行の実態調査は、中央機関の委託を受けて、北京の中央財経大学が中国で初めて実施した。全国20省の82市・県および206村の中小企業110社と個人事業主1203人に直接調査したほか、金融機関や司法当局からも聞き取り調査した結果をまとめている。

 それによると、地下銀行の非合法融資は2005年末現在で、約8000億元(約12兆円)に上っていた。これは正規の金融機関による融資規模の30%近くに達している計算だ。

 これについて、調査を担当した同大金融学院の李建軍・助教授は「中国政府が05年4月から景気過熱抑制策を打ち出し、炭坑や石油、鉄鋼、セメントや不動産などの業種に対して、正規の金融機関からの資金供給を厳しく抑制したためで、特に中小企業を中心に運転資金を地下銀行からの非合法融資に頼っている」と指摘している。

 さらに、李助教授がこのほど、昨年の地下銀行の実態について追跡調査したところ、昨年末現在で、非合法融資額が約20%増の約1兆元に達していたことが分かった。

 特に、黒竜江省では約50%増と激増しているほか、遼寧省と福建省でも約40%増と、特に東北地方での増加が目立っている。李助教授はこの原因について、「東北地方は中央政府による東北再活性化政策で、大型国有企業の再生に資金が集中し、中小企業に資金が回らないことが最大の要因だ」と分析している。

 しかし、経営資金などを地下銀行に頼る傾向は東北地方に限らず、全国に拡大しており、「政府が経済成長を抑制する政策を続ける限り、地下銀行が拡大し続けることは必至だ」と李助教授は指摘している。

 一方、地下銀行の肥大化傾向が進んでいる原因について、香港の中立系紙「太陽報」はこのほど、大量の非合法資金が株式市場に流れ込んでいることを挙げている。その額は総額で6000億元に達しているという。

 これらの資金は、主に外国資本や中国の私営企業が非合法な貿易によって得たもので、当局には報告していないため、株式投資によって、マネーロンダリングをすることが目的だ。また、これらの資金の一部が黒社会(マフィア組織)を通じて、地下銀行に滞留しているという。

 中国各紙によると、中国証券業監督管理委員会や中国国家外貨管理局、中国公安省などは「これらの非合法資金が株式市場に流入することによって、株式市場のバブル化を誘発するほか、地下銀行がマネーロンダリングの温床になる」として、ここ数年、各地の地下銀行の拠点や銀行口座などの摘発を進めている。

ワイン消費が急拡大、内外ブランド競争激化

2007/01/25 FujiSankei Business i.

 中国のワイン消費が急拡大している、2005年実績に対し10年までには、中国が世界市場のワイン需要伸び率予測の8倍近い36%の増加となる見通しとなった。経済自由化で海外の高級ブランドや生活様式が沿岸都市などで広がり、ワインが中国人の食生活に急速に浸透してきたようだ。

 AFP通信は、フランスのアルコール飲料国際見本市である「Vinexpo」事務当局の見通しとして、10年には世界ワイン市場が05年に比べ4・8%増加するのに対し、中国は36%増になるとの調査をまとめた。この時点で年間消費量は5億5800万リットルと予測され、中国は位のルーマニアを追い越す見通し。

 中国の05年ワイン消費量は01年に比べ7500万リットル増の4億1000万リットルで世界10位だった。

 ロバート・ベイナット事務局長は証左報告の中で、「中国の輸入ワイン需要は05年から10年までに53%伸びるだろう」と指摘し、需要の伸びよりも輸入品の増大が多いとの見通しを示し、中国人の「ブランド志向」「輸入品志向」などの消費傾向が、今後ワインの輸入増に結びつくとした。

 すでに中国は豪州産ワインの輸入も急増しており、06年は前年比5・6倍の2126万6000リットルを記録。日本などを抜いて豪州にとって6位の輸出先となっている。

 人民日報(電子版)によると、中国の4大ワインブランド「張裕」「長城」「王朝」「威竜」のワイン生産量は現段階では市場の51・49%を占める。中国は経済発展に伴いワイン市場も沿岸都市部の高所得層から内陸部や中間所得層に広がりつつあり海外ブランドを含めたシェア争いがますます激しくなりそうだ。(坂本一之)

人口増、4億人抑制 「一人っ子」政策の成果

2007/01/25 FujiSankei Business i.

 中国の国家人口計画生育委員会の張維慶主任は24日までに、計画出産に関し、過去30年間の「一人っ子」政策により、人口増が4億人抑制されたと成果を強調、同政策を継続して高齢化社会、男女出生比率のアンバランス是正に取り組むことを明らかにした。

 張主任は、現時点の中国の総人口は13億1000万人とした上で、現行5カ年計画が終了する2010年には13億6000万人に抑制すると述べた。中国の総人口は今世紀半ばに15億人のピークを迎え、その後は徐々に減少すると予想されている。

 張主任はまた、人口の70%が居住する農村部から都市部への大規模な流入も問題と指摘。

 ただ、農村と都市を区別して流入を抑制している戸籍制度について、「改革は必然だが、慎重さを欠くと、都市に多数のスラムができる」とし、性急な改革を否定した。(北京 時事)

急成長の弊害に直面 おもちゃ業界 賃金上昇、電力不足

2007/01/24 FujiSankei Business i.

 世界のおもちゃ出荷量の75%が中国製だ。2005年の輸出額は前年比10%増の152億ドル(約1兆8240億円)。このうち78%が香港に接する広東省で生産された。同省には8000社といわれる中国おもちゃ会社の5000社が集中、ピーク時には150万人の従業員がいた。

 人件費の安さと従業員の従順さにひかれ、マテルなど多くの米企業が過去20年の間にここに進出してきた。だが、産業の急成長によって種々の問題が生じ環境が大きく変わろうとしている。

 マテルのトム・デブロースキー国際戦略部副部長は、「賃金は上昇、労働力は以前ほど潤沢ではなくなり、電力不足が続いている」という。

 創業40年、5000人の従業員を抱える現地大手メーカーに勤める女子従業員(28)は「昨年9月に最低賃金水準が20%上って月給が88ドル(約1万560円)になった。8時間労働、21日勤務。その他の待遇も悪くなく、夫も同じ工場にいるので便利」と満足げだ。

 だが、企業側にとっては最低賃金の引き上げは辛い。これに加え海外企業からのコスト引き下げ圧力が強い。広東おもちゃ組合の幹部は、「賃金上昇を考えれば米企業のコスト圧縮要請は理不尽。ウォルマートの価格引き下げ要請は特に厳しく、大量に仕入れるだけに影響も大きい」と嘆く。

 安い賃金、豊富な労働力を求めて内陸部に生産拠点を探す企業も出始めた。「価格が安いだけに、おもちゃ産業は他産業より深刻な問題を抱えている」と指摘する声もある。(USA TODAY 広東省東莞 キャラム・マクリード)

マカオ、ベガス抜く カジノ売り上げ8400億円

2007/01/24 The Sankei Shimbun Web-site

 【北京=福島香織】中国政府が唯一賭博を公認する特別行政区マカオ統計当局によると、昨年のカジノ売り上げが速報値で69.5億ドル(現在のレートで約8400億円)に達し、米ラスベガスの推計65億ドルを超えた。カジノ市場対外開放からわずか4年、カジノ都市として世界首位に躍り出た背景には、膨張する中国経済からあふれでるチャイナ・マネーと国際カジノ産業に流れ込む外資がある。

 昨年のマカオカジノ売り上げは前年比22%増。今年も順調に伸びる見込みで、2007年は80億ドルに達するとの推計もある。マカオのカジノ売り上げは昨年1〜10月の段階ですでに56.3億ドルを記録し、ベガス同期の54.4億ドルを上回っていた。賭博税はマカオ税収の7割を占める。

 地場カジノ関係者によれば、マカオカジノの客の93%は中国大陸からの客だ。国内経済の過熱が警告され不動産投資にも陰りが出る中、中国の新興富裕層は03年に個人旅行が解禁されたばかりのマカオのカジノに押し寄せている。昨年、広東省東莞市にある小さな町の町長が1.1億元の公金をマカオカジノで使い9000万元(約13億500万円)も負けた事件が明らかになったように、客には汚職官僚も少なくない。

 清濁併せのむチャイナ・マネーを吸い上げるべく外資も殺到。24日付の証券時報によれば現在、マカオカジノに進出している外資系5社の初期投資は計200億ドル。中でも04年5月に開業したベガス資本のサンズはテーブル数でいえば地場カジノ・マカオ博彩(SJM)を超え、世界最大規模だ。すでに投資分の回収に成功、05年のマカオでの収益はサンズ全体収益の70%以上を占めるという。

本土妊婦の香港入り規制 「永住権」「一人っ子逃れ」で殺到

2007/01/23 FujiSankei Business i.

 香港当局は来月から中国本土の妊婦の入境を厳しく制限する。香港での出産を望む本土からの妊婦が押し寄せ、病院側で地元の妊婦に手が回らないなどの影響が出ているためで、予約がない妊娠7カ月以上の妊婦について香港入境を禁止する。

 本土の妊婦が香港での出産を希望するのは、出生地によって得られる子どもの香港永住権取得に加え、「1人っ子政策」の制約を逃れるのが主な理由。高度な医療、サービスが受けられるのも、富裕層にとって魅力だ。

 しかし、病院の受け入れ態勢には限りがある。本土の妊婦増加で、満足なケアを受けられない地元の妊婦が続出し、社会問題化していた。

 これまでは、観光資格で入境し、短期滞在中に出産を果たすケースが多かった。2月1日に導入する新制度では、香港での出産を望む妊婦に、事前に検査を受けた上で出産予約と公立病院の場合で3万9000香港ドル(約59万円)の出産費用前払いを原則義務付ける。

 出産日が近づいて再入境する際、「予約確認書」を持参していなければ入境は拒否される。また、あくまでも「香港の地元妊婦優先」のため、状況次第では予約受け付け自体が制限される。

 ただ、入境時に係官が「妊娠7カ月以上」と正確に見極められるのかとの指摘もあり、香港当局は専門の医療スタッフを常駐させて監視する。(香港 時事)

1人当たりGDP、初の1万ドル

2007/01/22 FujiSankei Business i.

 中国広東省の広州市統計局は2006年の同市の域内総生産(GDP)が6000億元(約9兆円)を超え、1人当たりでは中国の都市で初めて1万ドルの大台に乗せたとの推計をまとめた。広州市は中国で最も発展が著しい広東省の省都。登録人口は約700万人で、製造業を中心に海外からの投資が集中し、生産力を高めている。トヨタ自動車、ホンダなどが合弁会社を設立し、日本の自動車メーカーの中国での生産拠点ともなっている。

 市のGDPはここ数年、15%前後の伸び。中国全体の10%を大きく上回っており、06年も14%台半ばは確実とみられる。中国紙、第一財経日報によると、中国全体の1人当たりGDPは約1700ドル(05年)で、国際通貨基金(IMF)統計では世界の106位にとどまっている。1万ドルを超えたのは45カ国・地域だった。(北京 時事)

「太った子=健康」の中国、経済成長に応じて肥満児急増

2007/01/15 The Sankei Shimbun Web site

 中国の子どもは国の経済成長と同じくらいの勢いで大きくなっている−。中国政府の最新データによれば、都市部に住む6歳の男の子は30年前に比べ、6.35センチ身長が高く、3キロ体重が重くなった。

 北京、上海に住む6歳の男女の平均は身長118センチ体重21.3キロ。米国の6歳の平均は同じ118センチで体重は23キロ。一方、10−12歳の中国人の8%が肥満、このほか15%が体重過剰と推定されている。米国では6−11歳の18.8%が体重過剰だ。

 肥満の専門家ジ・チェンジさんは「中国は肥満の時代に入った。肥満児の増加ぶりはショッキングですらある」と話す。

 毛沢東の経済政策で、3000万人が飢餓で死んだのはわずか45年前のできごとだ。高度経済成長によって、食卓は豊かになり、自動車が自転車に取って代わった。用事はインターネットで済ませる習慣が広がりつつある。

 ジさんは「中国では太った子は健康とすることわざがなお生きている」という。

 このため、中国政府の担当者が、マクドナルドなどのファストフードは控えるよう呼びかけてもあまり効果がないのが実情。北京のセールスマン、リュウ・ゴジアンさんはマクドナルドで娘(7)がハンバーガーをほおばるのを見て、「この子は私や妻よりよく食べているから、きっと大きくなるよ」と目を細めていた。(USA TODAY)

06年対中投資、微増し630億ドル 対外投資は3割増

2007/01/15 The Sankei Shimbun Web site

 中国商務省は15日、2006年の対中直接投資実行額は前年比4.5%増の630億2100万ドル(約7兆5000億円)だったと発表した。05年は0.5%減の603億ドルで、微増に転じた。銀行、保険など金融を含めた実行額は前年比4.0%減の694億6800万ドルだった。

 薄熙来商務相は同日、06年の中国からの対外投資は前年比32%増の161億ドルに達したことを明らかにした。

 中国政府は、全面的に外資を誘致する政策から環境関連やハイテクなどを優先する政策に転じており、国内への外国企業の投資を選別する一方、中国企業の海外投資を奨励し、資源や高度な技術を確保する姿勢を強めている。

 中国は外資優遇税制を早ければ08年に廃止する見通しで、広東省南部や上海周辺では人件費も上昇しつつある。今後はコストを考慮してベトナムなどへの投資拡大を検討する企業も増えそうだ。対中投資がすぐに急減する可能性は低いが、「高水準で横ばいが続く」(三菱東京UFJ銀行)との見方が強い。

 06年の投資国・地域別の実行額は公表されていないが、1−11月累計では、香港、英領バージン諸島、日本、韓国、米国が上位を占めている。中国は投資の先行きを示す契約額を昨年から公表していない。(共同)

中国の気候温暖化 食糧難、水不足 そして利権のにおい

2007/01/13 The Sankei Shimbun Web site

 この暖かさはなんだ? 北京の1月というと普通零下10度前後まで冷え込む極寒の季節のはずだが、ほおをなでる風がやわらかい。北京では4月中旬に咲く海棠の花が昨年11月に開花して話題になった。チベットでは元旦、日中20度を超えた。寒いのはきらいだが、待ち遠しいはずの春もこんなに早いと薄気味悪い。今年は厄災が多いのではないか…。そんな不吉な思いがよぎる。

 中国では1998年、2001年も記録的な暖冬だった。北京の暖冬はもう珍しくない。それでも今冬、無性に胸騒ぎがするのは、中国政府がこのほどまとめた初の「気候変化国家評価報告書」の概要を読んだからか? 報告書は科学技術省、中国気象局、発展改革委員会ら6部門合同でまとめ、全文はまだ出ていないが、昨年末に概要が一部発表されている。

 それによると、最近の10年で中国沿海の海面は毎年1−3ミリ上昇し、この50年で西北部の氷河は21%減少、チベットの凍土層は4−5メートル薄くなった。2020年までに中国の平均気温が1.3−2.1度上昇し、年間降水量が2−3%増加。この結果、黄河などの蒸発率が15%前後増え、干魃(かんばつ)と洪水の頻度が急増。2010年から30年にかけて西部の水不足は年200億立方メートルに達する。21世紀後半には中国の主要農作物の生産量は最大37%減少し、中国は長期的な食糧難に陥る。デング熱やマラリアなどの疫病も流行する…。報告書は警告する。気候変動は国家安全保障に直結する問題だと。

 2010年には米国を抜いてCO2排出量が世界一になるとの予測もある中国は一応、京都議定書に批准しているが、発展途上国には発展する権利があるとの立場で、経済成長抑制につながるCO2削減義務を負っていない。そんな中国が気候変動にここまで危機感を示すのはおそらく初めてだ。

 昨年夏、100年に1度といわれた大干魃が重慶などを襲った。中国気象局は今年が観測史上最高の「暑い年」になると予測。さすがの中国も経済発展より、気候変動による食糧安保と水不足の方が危機的問題だ、と気づき始めたわけか。

 だが報告書では、省エネ技術や代替エネルギーの発展を訴えるくらいで、肝心の処方箋は示されていない。「中国は将来的に排出権取引など環境ビジネスの最大市場。技術をもった日本やEU諸国がこぞってくる」と、ある環境専門家は外国頼みのホンネをちらりとのぞかせる。「だから今、その利権をねらう科技省や発展改革委らの水面下の主導権争いが結構激しい」

 なるほど、中国が気候温暖化問題に急に目覚めたのはそういう背景もあったか。長江の洪水予防という目的の三峡ダム建設も、北部の水不足解消のための運河建設計画「南水北調」も、強い抵抗を押し切って推進できたのは、関係省局や地方政府に利権への執着があったからだ。中国では利権が絡まねば何事も前に進まない。だが利権で進む計画が目的を達成するどころか、まったく反対の結果をもたらすケースも少なくない。

 私の胸騒ぎの正体は実のところ、早すぎる春や報告書が訴える危機に対してではなく、国の存亡がかかわる問題にも利権のにおいをかぎとってしまうこの国の人たちのあり方に反応したのかもしれない。(中国総局 福島香織)

中国は気象も国家機密? 外国人の観測など禁止に

2007/01/13 The Sankei Shimbun Web site

 中国政府は今月から外国人が許可なく中国国内で気象観測を行ったり、気象台を設置したりすることを禁止する「気象探測・資料管理規定」を施行した。中国の国家機関での勤務者、外国人双方に適用され、違反者は、秘密漏えいやスパイなどとして処罰される可能性がある。

 同規定は「中国保守国家秘密法」「中国国家安全法」などに基づいており、違反者は国家安全部門などにより刑事責任を追及される。規定によると、外国の組織または個人は、中国の領土または直轄する海域で気象観測したり、気象資料を譲渡したりする際は、規定を順守する必要がある。ただ、直轄海域の範囲は不明だ。

 外国の組織などに提供する際も批准が必要。中国と外国の両組織が気象観測する際は厳格な要件を満たす必要がある。(北京 野口東秀)

広州、中国初の所得1万ドル都市に

2007/01/05 朝鮮日報/朝鮮日報JNS 北京=李明振(イ・ミョンジン)特派員

 飛躍的な経済成長を遂げている中国の都市の中で、広州市が初めて「個人所得1万ドル(約118万円)時代」に突入した。

 上海で発行されている第一財経日報は4日付で、「2006年、広州市の総生産額が05年度より14.4%増加した。これにより広州市の1人当りの国内総生産(GDP)は、中国の都市の中で初めて1万ドルを超える見込みだ」と報じた。

 同紙によると、広州市の06年の総生産額は6236億元(約799億ドル=9兆4600億円)だ。

 05年に広州市に戸籍を置いていた人口は750万人で、毎年12万‐13万人ずつ増えている点を考えると、1人当りのGDPが1万ドルを超える見通しだという。

 これにより、広州市以外で経済が発達している中国主要大都市の06年の1人当たりのGDPも、ほぼ1万ドルに迫っているものとみられる。

 05年の中国の大都市の1人当たりのGDPは広州が8500ドル(約100万円)で1位、上海が7600ドル(約90万円)、 深センが7300ドル(約86万円)の順だった。この後に蘇州、杭州、北京などが続いている。

 専門家らは、広州の1人当たりのGDPは日本の1980年代中盤、韓国の90年代中盤水準だが、実際の購買力をみる購買力評価(PPP)ではもう先進国水準に到逹していると評価する。中国の経済規模は、購買力評価基準のGDPではすでに米国に次いで世界2位だ。

 韓国銀行のキム・ジュフン北京代表処所長は「広州の実際の購買力は、単純なGDP数値の5倍ほどの5万ドル(約592万円)水準で、もう韓国を抜いたと考えるべきだ。為替切り上げの速度などをみると、1人当たりの所得の高速成長の勢いが続くと思われる」と買った。

 一部大都市の生活水準は先進国水準だが、地域間の格差は中国の社会安定に大きな脅威となっている。05年の中国全体(香港除く)の1人当たりの平均GDPは1703ドル(約20万円)だったが、31の省・市・自治区の70%以上がこれに満たなかった。

【格差、環境破壊…岐路に立つ中国】変わりゆく4つの現場を歩く(5−1)

2007/01/04 The Sankei Shimbun Web site

 □限界に来た「世界の工場」

 ■矛盾社会、農村から改革

 1978年12月の共産党中央委員会総会(11期3中総会)で、トウ小平氏主導による近代化(改革・開放)路線を開始して以来、中国は驚異的発展を遂げた。2005年、国内総生産(GDP)は米国、日本、ドイツに次ぐ世界4位になり、06年には外貨準備高が1兆ドルを超え、首位の日本を抜いた。

 「発展是硬道理」(発展は絶対的道理)として、高成長政策を持続した結果だが、格差の拡大、腐敗の蔓延(まんえん)、資源の浪費、環境破壊など矛盾も深刻化し、各地で暴動や紛争が頻発、社会不安が高まっている。胡錦濤政権が昨秋、成長第一主義から脱皮すべく「和諧(調和)社会」建設を決議した背景だ。

 来年の北京五輪を控える中国は今秋、5年ぶりに第17回全国大会(党大会)を開き、胡錦濤第2期政権の指導体制を再構築、和諧社会建設を新たな党の路線にし、持続的発展と安定した社会実現を目指す。

 和諧社会のカギは、発展から取り残された農村の再建。胡政権の掲げる「新農村建設」の方向を2つの農村取材で探り、また出稼ぎ労働で発展した深セン、環境汚染で知られる重慶の新しい動きを取材した。(中国総局)

                    ◇

 【解説】

 ■成長第一主義から脱却図る

 今秋開かれる中国共産党の第17回党大会では、胡錦濤総書記が主唱する「和諧社会」建設を党の基本路線として採択、成長第一主義から調和の取れた発展へと転換する。しかしその実現には経済・社会の構造的変革が不可欠であり、多くの障害、抵抗も予想されている。

 和諧社会建設は、昨年10月の党中央委員会総会(6中総会)で、基本路線として決議、党大会で胡総書記が行う活動報告の基調になることが決まった。人と人、人と自然、都市と地方などの関係の調和を取り、持続的な発展を図るとの理論。

 背景には、さまざまな矛盾や問題が噴出、社会の安定だけでなく、持続的発展を脅かしているとの認識がある。「反思改革」(改革の反省)の声が広がり、弱者層や青年層の間には毛沢東崇拝が復活した。毛時代には深刻な格差や腐敗問題はなかったからだ。

 発展の矛盾は農村問題に突出して現れ、三農(農業、農村、農民)対策が急務になっている。党が毎年頭に発する最重要指示「1号文書」は、4年連続で今年も農業関係。昨年の1号文書の「新農村建設」は現行第11次5カ年計画の柱になった。

 中国政府は昨年、農業税撤廃など農民の負担軽減や収入増を図る措置を取ったが、三農問題解決には、巨額の資金投入に加え、発展構造の変革や政策転換が必要で簡単ではない。

 農業問題の権威、温鉄軍博士によると、三農問題は、珠江デルタなど沿海部を中心に工業振興が加速した1990年代に深刻化したという。その発展は全国農村からの低賃金出稼ぎ労働力(民工)に支えられた。豊富で安価な労働力は、外資も引き寄せ、「世界の工場」と呼ばれたが、その実態はそう喜べない。

 昨年、中国の国内総生産(GDP)は20兆元を突破したが、その4割は外資系が占めた。GDPの6割強は輸出入(昨年は推計1兆6000億ドル超)に依存する。外資と対外貿易に依存した経済成長は、今日一億数千万に膨らんだ民工なしにはあり得なかった。

 北京大軍経済観察センター主任の仲大軍氏によると、民工の実質賃金は90年代初めとほとんど同じという。昨年のサッカーW杯ドイツ大会の中国製記念グッズは、販売価格の20分の1で輸出された。民工の低賃金労働で利益を上げるのは中国メーカーだけではない。

 しかも、乗用車、電子製品など付加価値の高い製品は外資系がほぼ独占、民族系企業の買収や下請け化が進む。中国が最近、高技術製品開発を奨励しだしたのも、従来の低賃金労働に頼った発展方式から脱皮する必要からだ。

 和諧社会実現に向け、農村建設が進み農民が豊かになれば、出稼ぎが減り、産業活動や都市機能の維持に影響が及ぶ半面、農民の消費を増やし、輸出依存型から内需拡大型経済への転換を可能にする。しかし障害も少なくない。

 その一つは、改革・開放以来、経済成長が、特に地方指導者の「政治成績」の基準になってきたことだ。その最も有効な手段が、不動産開発や工場誘致のための農地の収用だ。それは同時に、官僚の腐敗を蔓延させ、自然環境も犠牲にした。

 胡錦濤政権は2004年以来、マクロコントロールを強化、土地収用を規制する通達も何度も出したが、地方の土地開発は止まらず、03年以降4年連続で成長率が2ケタを記録する一因になった。昨年、上海の陳良宇書記を摘発したのも、地方への警告にほかならない。

 それはまた、第17回党大会で、胡錦濤氏の政治権力を強化、江沢民前総書記の息のかかった現指導部を刷新する予告でもある。党大会前に、路線のからんだ党内抗争が激化する可能性もある。(伊藤正)

                    ◇

  1月 (〜2月)トウ小平氏南巡講話15周年

  2月 トウ小平氏死去10周年(19日)

  3月 全国人民代表大会開催

  6月 (末までに)第17回党大会代表決定

  7月 香港返還10周年(1日)

     盧溝橋事件70周年(7日)

  8月 中国軍創設80周年(1日)

     北京五輪開幕まで1年(8日)

  9月 日中国交正常化35周年

 10月(?)第17回党大会開催、胡錦濤政権2期目へ

                    ◇

【用語解説】党大会

 中国共産党の最高決定機関である全国大会のこと。5年に1度開催。総書記の活動報告を討議、採択するほか、中央委員会など党中央機関メンバーを改選する。大会直後の新中央委第1回総会で、総書記以下政治局・同常務委員を選出するが、翌春の全国人民代表大会(全人代)で選ばれる国家、政府、全人代の指導部は事実上、党大会で決まる。胡錦濤体制が発足した5年前の第16回大会は江沢民前政権下で開催されたため、人事も路線も前政権の決定を引き継ぐ形になった。

【格差、環境破壊…岐路に立つ中国】変わりゆく4つの現場を歩く(5−2)

2007/01/04 The Sankei Shimbun Web site

 【重慶】

 ■企業とともに汚染も郊外へ“移転”

 長江と支流の嘉陵江の合流地点、重慶市・合川から一般道路を通って市中心に戻る道すがら、霧の立ちこめる農地や山中に忽然(こつぜん)と新しい工場が現れる。ひとつじゃない。コンクリート工場、製薬工場、発電所…。

 「ありゃ、重慶市内から引っ越してきた工場だよ」と通りすがりの農民。重慶では環境改善策として今、市中心部の汚染工場の市郊外への移転を進め、新しい工場も郊外に誘致する。現地を案内してくれた重慶っ子、黄蘭さん(28)は「汚染は気になるし、新しい工場建設で農地の強制収用をめぐって農民ともめることも多い。都市のために農村が犠牲になっている」と説明する。彼女も工場誘致で農地を失った「失地農民」だ。

 重慶は、犬が太陽にほえる、そういわれるほど晴天の日が少ない。長江の広い川面から立ち上る水蒸気は、盆地型の地形のせいで濃い霧になり、北海道なみの面積と3000万以上の人口を持つメガ都市を覆う。2000年当時、1075の重工業を含む2040企業が市内に集中し、霧はそれらの工場や、工場に電力を供給する火力発電所の排気を閉じこめてとどまり、かつては深刻な大気汚染で知られた日本の四日市市にたとえられたこともあった。世界銀行の03年の報告で重慶の大気汚染はアジア都市のワースト3だ。

 経済成長最優先の時代、こういう状況がむしろ発展の象徴とされていたが、胡錦濤政権が環境保護や省エネを重視した「科学的発展観」を打ち出してからは地方政府の意識も変わってきた。環境対策に真剣に取り組みだし、重慶の場合、化学工業を中心に29の汚染企業を03年から07年までの間に市中心部から移転させると決定、すでに23企業の移転が完了している。07年以降はさらに53の汚染企業の移転が予定される。この結果、04年は環境保護重点都市47都市中ワースト1だった重慶の大気汚染は06年11月現在、ワースト8にまで抑制されている。

 ただ、この改善は市の40行政区のうち「政治成績」の対象となる9行政区に限っての話。冒頭で紹介したように、都心の汚染は改善されても、実は郊外や農村に汚染が拡散されるという問題が新たに浮上している。

 中国では汚染改善の最も手っ取り早い方法として、近年、全国で汚染企業の閉鎖、移転が進められてきた。昨年、基準値を超える汚染排水を垂れ流していた汚染企業2600社以上が閉鎖され、1750社が生産停止を命じられた。企業の移転については全国的な統計はないが、北京では07年までに200企業が都市部から郊外へ順次移転。上海では06年6月、250企業について移転、生産休止などの方式で汚染やエネルギー浪費の問題解決が打ち出された。

 しかし、移転先の農村から不満の声が高まっている。貴州省銅仁市郊外の農村では、汚染を理由に都心から移転してきた合金工場に怒った農民が06年1月、工場を襲撃、4人の逮捕者が出る事件が発生するなど一部ではすでに治安に影響する問題にもなっている。「裕福な沿海部の省の汚染企業が貧しい西部の省に移転する例が増えている」(業界紙記者)との指摘もあり、06年1月、新華社によれば新疆ウイグル自治区の政治協商委員会(政府への政策提言機関)は「汚染の内地から西部、都市から農村への移転に関する警告」という報告書を提出、西部大開発の名の下に汚染企業が西部に移転される現状に強い懸念を示した。

 もちろん汚染企業は移転の際に汚染防止対策を行うという建前だが、「移転費用の工面だけでも大変なのに金のかかる防止対策まで手が回らないのが現状」(前出の記者)なのだ。

 過去、中国の汚染は、地方政府が汚染企業と癒着し、経済発展のために環境破壊を黙認してきた構造があった。今、ようやく地方政府が環境意識に目覚め始めた。それは評価されるべきことだが、金や力のある都市や省の環境改善が貧困省や農村を犠牲にし、汚染格差という新たな課題も生まれつつある。重慶に太陽が輝く日はまだ遠い。(福島香織)

【格差、環境破壊…岐路に立つ中国】変わりゆく4つの現場を歩く(5−3)

2007/01/04 The Sankei Shimbun Web site

 【深セン】

 ■権利求め民工も進化

 香港に隣接する広東省深セン市。1980年に経済特別区に指定されて以来、外資を積極導入するなどして発展、30年前、人口3万人あまりだった漁村は、1000万の一大工業都市に変身した。安価な加工品で世界市場を席巻、「世界の工場」と呼ばれる中国の代表地区の一つだが、いま発展を支えてきた出稼ぎ労働力に変化が始まった。(矢板明夫)

 ≪絶えぬトラブル≫

 昨年11月下旬のある午後、深セン市労働局の待合室に20人ほどの男女がいくつかのグループをつくり、情報を交換していた。賃金の未払いや不当解雇など、雇用主とのトラブルを抱え、労働局に相談に来た人たちだ。

 湖北省荊州市出身の李利華さん(28)は段ボール工場で約半年間働いた後、自己都合で退職したが、最後の1カ月の賃金は払ってもらえなかった。「半ばあきらめていたけど、ここに来れば相談に乗ってくれると聞いたので」

 同局関係者によると、窓口相談の数は年々増え続け、100件を超える日もある。「労働法など諸法規を知りながら、違反する悪質な経営者が後を絶たない」からだ。

 ≪著しい改善≫

 深セン地区には、玩具、衣料品、食品を中心に、台湾など外資系を含む加工場が密集。価格競争は激しく、しわ寄せは労働者に行く。長時間労働と低賃金など、劣悪な労働条件が数年前から問題になりだし、「血汗工場」という新語もできた。

 それでも「以前より格段に改善された」と、96年以来、服工場に勤める重慶市出身の李吉平さん(31)。10年前は毎日朝7時から夜11時まで15時間働き、休日なしだったが、現在は1日11時間労働で月3日間は休み、月給は手取り700元から2000元以上に増えた。95年施行の労働法など関係法規や政策が整備された効果もあるが、労働者の権利意識の高まりが大きいと関係者は話す。

 ≪高まる意識≫

 深センには「民工」と呼ばれる全国からの出稼ぎ農民が約700万人いる。都市と農村の極端な収入格差が背景にあり、劣悪な条件でも民工は無尽蔵と信じられてきた。しかし、状況は変わった。民工も携帯電話を持ち情報を交換、待遇改善を要求したり、好条件の職場に転じたりするようになった。

 深センなど珠江デルタ地区が、「民工荒(不足)」になって久しい。上海周辺の長江デルタ地区への民工移動も一因だ。深セン市政府が昨年7月、最低賃金を約20%アップして810元と、全国最高水準にしたのも、民工不足の深刻さを示す。ある外資系企業経営者は「深センは労働コストが高くなりすぎ、魅力がなくなった」と話した。

 ≪戸籍がネック≫

 民工側は賃金上昇だけでは満足していない。先の李吉平さんには7歳の長男がいるが、小学校の学費は年間2万元近く、市民の10倍もかかる。医療費も市民の3倍以上という。民工には深センの戸籍がなく、市民の権利が与えられていないからだ。

 深センで衣料品工場を経営する相山騰さん(35)=東京都出身=は戸籍問題の解決は急務だと話した。「民工が結婚し、子供が学齢期になると、教育問題などで郷里に帰ってしまい、技術教育が無駄になることが多い。中国政府は産業構造の転換を掲げているが、現状では労働集約型から抜けられないだろう」

 相山さんは一昨年、湖北省随州市の国営服工場を買収した。人件費が安いだけではなく、地元出身の労働者が多く、定着率が高いことに目を付けた。出稼ぎ労働者に依存した深セン型成長は限界と相山さんは見ている。

【格差、環境破壊…岐路に立つ中国】変わりゆく4つの現場を歩く(5−4)

2007/01/04 The Sankei Shimbun Web site

 【小崗村】

 ■「第1村」開けぬ見通し

 中国共産党が改革・開放へ路線転換を決定する1カ月前の1978年11月24日夜、安徽省小崗村(シャオガンツン)。村民18人が寄り合い、「家庭生産請負制」を実施する密約を結び血判を押した。村単位の生産隊ごとに生産・分配する人民公社という国の集団制への反逆だった。

 「食い物が何もなくなった。死刑になってもいいと思った」

 当時のリーダーで血判状を起草した厳宏昌さん(58)は、村の生産請負制記念館の天井を仰いで話した。館内には18人が血判を押す様子を再現した肖像がある。

 中国の多くの農村同様、働いても働かなくても収入に差がない人民公社制の下で、小崗村の生産は停滞していた。78年、村は大干魃(かんばつ)に見舞われ、餓死者が出るほどの食糧不足に陥った。農民たちが求めた活路が、土地を家庭ごとに分け、生産を請け負う、いわば「個人経営」だった。

 これを知った当時の華国鋒政権は、禁止命令を出す。党機関紙「人民日報」も厳しく批判したが、安徽省の万里第1書記(当時)は決然と村を支持した。「人民日報は農民を食わせられるのか」と。

 全国が注視する中で小崗村の79年の食糧生産は前年の4倍、村民の平均収入は20倍の400元(現在のレートは1元約15円)に達した。家庭請負制はたちまち全国の農村に広がり、83年には人民公社制が廃止されてしまう。

 小崗村は「改革第1村」と呼ばれ農村改革の歴史をつくったが、その後の発展は思わしくない。村のトップ、蒋保斌・党委書記によると、現在、476人の村民平均年収は4000元。省の平均は上回っているものの豊かとはいえない。主産業の農業とエビなどの養殖では収入が伸びないのだ。

 昨年2月、沈浩・前書記は、上海の養豚業者などの投資を受け、村の耕地の大半をまとめて業者側に貸し、集団経営する構想を打ち出した。農村富裕化の一つのパターンだ。「小崗村、集団経営へ」と報じられた。

 しかし構想は挫折した。厳さんは「土地面積に応じて利益を分ける? 人民公社みたいじゃないか」と猛反対。省政府も疑問を持ち、村民も反対論が多数になった。

 結局、全108世帯のうち23戸の農民だけが村全体の9分の1の土地を、この上海の業者に貸し出している。「借地料」は年間総額8万元だ。

 村には昨春以来、大学生3人が入り、マッシュルームの栽培実験に成功した。当初は懐疑的だった村も収入増をもくろむ。

 「今まで何が売れるかという発想が欠けていた。大学生に刺激され村民に積極性が生まれた」と蒋書記。将来は外資導入も、と書記は話したが、人材も技術もなく、見通しは暗い。

 昨年11月、村民が肥料購入や生産物の売却を統一して行う集団組織をつくった。「加入は強制ではなく、人民公社とは違う」(蒋書記)というが、集団制のメリットにも気づき始めたようだ。

【格差、環境破壊…岐路に立つ中国】変わりゆく4つの現場を歩く(5−5)

2007/01/04 The Sankei Shimbun Web site

 【南街村】

 ■効率追い毛沢東へ回帰

 タイムトンネルに入ったような錯覚に襲われた。村の中央にある「東方紅広場」には10メートルの毛沢東の彫像がそびえ、民兵が24時間歩哨に立つ。村の至る所に、毛沢東の語録や毛思想を賛美するスローガンだけが掲げられていた。

 河南省南街村(ナンジイエツン)。「個人経営」の農業を主体にした小崗村とは対照的に、徹底した集団主義で企業経営に成功し、豊かさを実現したモデル村だ。

 村民は3400人余。家電完備のアパート式住宅に住み、電気・水道代から医療、大学までの教育、冠婚葬祭などすべて無料で、「何でも支給され、本当に幸せ」と村民の于城森さん。その自宅の居間には、支給品の「光る毛沢東時計」があった。

 もともとは穀物生産が主の貧しい農村で、小崗村にならい家庭請負制を実施した時期もあった。1977年から村を率いる王宏斌党委書記(55)が、豊かさへの出路を工業化に求めたのは80年代前半だ。

 日本の設備を導入した即席めん工場など、次々に工場を建設、今では26の村営企業を有する地域でも有数の企業集団になり、農地はほぼ姿を消した。全従業員約1万人のうち、9割は近隣農村からの出稼ぎ者。彼らに村民並みの福利はないが、不満はほとんど聞かなかった。

 王書記によると、村民への報酬原資のうち7割は住宅などの福利に充て、残り3割を給与として支払うため、書記を含めた村民1人当たりの給与は250元ほどという。この村のユニークさは、王書記の強力な指導力の下で、毛沢東路線を復活させたことだ。

 企業化を開始当初、農業と同じく個人経営が主だったが、効率が悪かったうえ、企業間の確執も絶えなかった。王書記は84年、集団所有制へ復帰、企業を村営化した。企業経営が軌道に乗り、収益が膨らむにつれ、村民は私利に走り、幹部の横領なども発生しだした。

 「毛主席を尊敬している」王書記は、毛思想で村民の思想を再武装、生産活動から私生活まで集団の規律を徹底していく。

 村の1日は朝6時すぎ、毛沢東賛歌の「東方紅」で始まり、学習会や軍事教練で集団思想をたたき込む。党支部は共産思想から親孝行まで10項目の査定基準をつくり、1項目でも落第点を取ると医療費の一部が有料になる。

 近年、南街村の企業経営は困難に直面、王書記への批判も伝えられているが、「将来は賃金をゼロにし、私有財産のない理想社会を目指す」と書記は意気軒高だ。

 人民公社時代と同じ集団所有制を維持している村は全国に2000余あるとされるが、南街村ほど毛沢東路線に忠実な村は珍しい。(野口東秀)

外国メディアの取材阻止? 中国、人権派弁護士を連行か

2007/01/03 The Sankei Shimbun Web site

 香港紙、明報は3日、昨年末に「国家政権転覆扇動罪」で懲役刑の判決を受けた中国の人権派弁護士、高智晟氏が1日夜、家族とともに北京の自宅から連行されたと報じた。関係者の話として伝えた。

 中国政府は北京五輪対策の一環として、外国人記者らを対象とした取材規制を1日から期限付きで部分緩和。取材対象者の同意があれば当局の許可なしで取材が可能となった。このため外国メディアが同氏らと接触しないよう、当局が連行したとみられている。

 高氏は陝西省の山間部で軟禁されている可能性が高いという。同氏は2005年秋、胡錦濤国家主席に「法治の徹底」を求める公開書簡を発表、業務停止処分になった。昨年末には懲役3年、執行猶予5年、政治的権利はく奪1年の判決を受け、自宅で当局の監視下に置かれた。(共同)

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