TOPIC No.3-37 バイオエタノール

01. 日本のバイオガソリンの動き(2007年01月08日)
02. バイオガソリンについて by石油連盟
03. エチル ターシャリー ブチルエーテル(Ethyl Tertiary-Butyl Ether, 略称 ETBE)byフリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
04. バイオマス・ニッポン by農林水産省
01. 実用化への動きが進むバイオ燃料の話
05. エタノール混合ガソリン、バイオエタノールって何だ??
06. バイオエタノール研究会
07. バイオマスエタノール byフリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
08. TOPIC No.3-39 バイオディーゼル燃料(BDF)
09. 中国のバイオ燃料はどうなる? トウモロコシ高騰で原料変更へ (2008年05月16日) NIKKEI BP


バイオ燃料17日から販売 新潟県内でJA全農

2009年07月01日 中国新聞ニュ−ス

 全国農業協同組合連合会(JA全農)は1日、飼料用に開発された収量の多い米を原料に製造したバイオエタノールを約3%混ぜたレギュラーガソリンを17日から、新潟県内にある農協系列ガソリンスタンドの一部の19店で販売すると発表した。

 年間3万3千キロリットル程度販売する計画で、国産バイオ燃料の大量販売は初めて。植物からつくったバイオエタノールを混ぜれば、その分地球温暖化の原因となるガソリンの使用を減らすことができるため、温暖化対策の一つの柱とされている。

 混合ガソリンは「グリーンガソリン」と名付けられ、値段や品質、燃費はレギュラーガソリンと変わらない。

 当初は3月に販売を始める予定だったが、新潟市にある製造プラントの不具合で遅れていた。原料米は県内約360の農家が昨年、休耕田で栽培した約2千トン。これを使って年間1千キロリットルのエタノールを生産する計画だ。

コメからバイオ混合燃料、休耕田育ち販売へ

2009年06月29日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 コメから作るバイオエタノールをガソリンに混ぜて市販する国内初の事業を、全国農業協同組合連合会(JA全農)と新潟県などが7月中旬から始める。

 生産調整(減反)で主食米の栽培ができない休耕田で原料のコメを育て、環境に配慮した「グリーンガソリン」として売り出す。

 採算面で課題は残るが、農林水産省は、「コメ燃料の実用化は世界で例がなく、日本独自のバイオ燃料をアピールしたい」としている。

 JA全農などでつくる「イネ原料バイオエタノール地域協議会」が、原料となるコメの買い取りから製造、販売までを一貫して行う。

 原料となるのは、飼料用多収穫米「北陸193号」。コシヒカリに比べて収量が1・5倍あり、昨年から新潟県内の農家361戸が休耕田を使って本格的に栽培に取り組み、2250トンを確保した。

 JA全農の関連会社が新潟市に建てた工場で、発酵や蒸留などを行い、コメ1トンあたり445リットル、年間で1000キロ・リットルのバイオエタノールにする。

 国の基準の上限3%のエタノールと97%のガソリンを混合し、グリーンガソリンとして年間3万3000キロ・リットルを製造する。価格はレギュラーガソリンと同じ水準で、県内19か所のJA直営スタンドで販売する。

 コメは100%自給できる数少ない農作物だが、少子高齢化や食の変化で消費は落ち込み、全国の水田約260万ヘクタールのうち、主食米が作られているのは6割の約150万ヘクタールに過ぎない。転作が進まず、水田の荒廃に頭を痛めていたJAにいがた南蒲(なんかん)(新潟県三条市)が、「海外ではトウモロコシや小麦からエタノールを作っている。コメでもできないか」と提案していた。

 原料米の栽培農家の渋谷幸男さん(55)(新発田市島潟)は、「おいしいコメをたくさん作って、高く売りたいのが本音だが、主食米が余っている現状では仕方ない。田んぼを残せるし、機械をそのまま使えるのはありがたい」と話している。

 ◆バイオエタノール=植物から作るエタノール。燃焼時に二酸化炭素(CO2)を出すが、原料の植物がCO2を吸収して育つため、排出量ゼロとみなされる。ブラジルなどでガソリンに混合が義務付けられ、原料のトウモロコシ価格の高騰を招いた。バイオエタノールの国内生産量は昨年3月末で推計90キロ・リットル。政府は2030年までに最大600万キロ・リットルを目標とする。

バイオエタノール混合ガソリン 「グリーンガソリン」の販売開始の延期について

2009年03月11日 全国農業協同組合連合会(JA全農)

 JA全農は、平成19年度農林水産省「バイオ燃料地域利用モデル実証事業」採択を受けて、 新潟県内において世界で初めての、原料イネの栽培からバイオエタノールの製造およびエタノール混合ガソリンの販売までを一貫しておこなう事業に取り組んでいます。

 先般ご案内しましたとおり3月18日から県内19か所のJA-SSでバイオエタノール混合ガソリンの販売開始を予定して、これに向けて、バイオエタノール製造所は平成21年1月初旬より試験運転をおこなっていましたが、本稼働に必要な製造能力が確保できないため一部装置の改善が必要であることが判明しました。

 つきましては、実証事業の万全を期すため、必要な追加工事をおこない、製造数量を安定的に確保するまで、バイオエタノール混合ガソリンの販売開始を延期することとします。 以上

バイオ燃料“グリーンガソリン”の販売開始へ 新潟

2009.03.06 MSN産経新聞

 新潟県産の飼料米「北陸193号」から製造したバイオエタノールを3%混合した“グリーンガソリン”の販売が18日、JA全農新潟石油基地(聖籠町)供給エリア内にある新潟県内19カ所のJAスタンドでスタートする。コメ原料のバイオ燃料が大量に市販されるのはこれが国内で初めて。世界的にも初めてという。(石田征広)

                   ◇

 “グリーンガソリン”を販売するのは全国農業協同組合(全農)と関連企業、県内JA、県、関係市町でつくる「イネ原料バイオエタノール地域協議会」。水田の有効活用のため、平成19年度から農水省の補助を受け、コメ原料のバイオエタノールの製造と利用の実証実験に取り組んできた。

 減反作物として10アール当たり収量がコシヒカリより300キロ近くも多い「北陸193号」の栽培を始め、並行して総事業費16億円(農水省の2分の1補助)をかけてコープケミカル新潟工場(新潟市北区)内にバイオエタノール製造プラントの整備を進めてきた。

 20年に「北陸193号」の栽培面積が300ヘクタール、総収穫量が2356トン(10アール当たり収量781・2キロ)に達し、いずれも目標をクリア。昨年末に完成したバイオエタノール製造プラントも試運転を経て先月14日から稼働を始め、18日の販売開始にこぎ着けた。

 “グリーンガソリン”の愛称は協議会が昨年10月に実施したアンケートで、応募1550点のほぼ3割の圧倒的多数を占めたことから選ばれた。この愛称の頭文字の「GG」をかたどり良好な環境をイメージした配色にしたという専用ロゴ=イラスト=も完成、レギュラーガソリンの価格で売り出す。

 実証実験はコメ1トン当たり445リットル、年間1000キロリットルのバイオエタノールを製造し、これを3%混合した“グリーンガソリン”を年間3万3000キロリットル販売するのが目標だ。協議会は「海外ではバイオエタノールを10%混合しており、3%の混合率は何ら問題はない」と説明する。

 製造プラントの稼働とともに、バイオエタノールの発酵残渣(はっこうざんさ)は飼料か肥料のどちらの原料に利用するかを検討する。もみ殻もバイオエタノールの製造段階の熱源に活用し、計画通りに製造に必要な熱量の90%程度をまかなえるかどうかを検証することになる。

 農水省の実証実験に対する補助は23年度まで。“グリーンガソリン”の存続のカギはコストだが、協議会は18日の販売開始を発表した記者会見で「コストについては差し控えたい」と言及を避けた。

 無理もない。存続には国の補助やバイオエタノールの混合義務付けなど制度面の支援が欠かせないとされているため。

 「北陸193号」の栽培農家に支給されるのは1キロ当たり20円、減反作物として10アール当たり3万円前後。収穫したコメは最寄りのJAに持ち込むだけで主食用米に比べ乾燥などの手間がかからず費用は削減できるものの「黒字とはいえない状況」という。

 国内初の“グリーンガソリン”は、課題を背負いながらも当面は新潟県内の19のJAスタンドだけで販売される。

全農、コメからガソリン代替燃料 製造プラントを公開

2009年02月13日 中国新聞ニュ−ス

 全国農業協同組合連合会(JA全農)は13日、収量が多いが食用には向かないコメを原料に、ガソリン代替燃料のバイオエタノールを試験的に製造している新潟市のプラントを報道陣に公開した。昨年末に完成したプラントは、1月中旬から試験運転を始め、12日にエタノールの製造に成功したばかり。

 製造方法は酒づくりと似ていて、プラントはコメの粉砕や糖化、発酵、蒸留などを行うステンレス製の設備や多数の配管からなり、まるで化学工場のようだ。発酵槽からは、日本酒のような甘い香りが立ち込めていた。

 今後は本格稼働に入る予定で、年間生産目標は1000キロリットル。3月18日からは、製造したバイオエタノールを3%程度ガソリンに混合し、新潟県内の農協系列スタンドで販売する。価格はガソリンと同じに設定するという。

 原料に使っているコメは、県内約360の農家が2008年度、食用米生産の合間を縫って休耕田で栽培した品種で約2000トン。巻口秀彦工場長は「休耕田が減れば農家が思い切りコメづくりができる。誇らしい思いで取り組んでいる」と話した。

混合比10%目標を前倒し バイオガソリンで環境省

2008年06月30日 中国新聞ニュ−ス

 環境省は30日、2030年までにすべてのガソリンをバイオエタノール10%混合ガソリン(E10)に置き換えるとの現行目標の前倒しを検討することを決めた。

 バイオエタノールなどは、化石燃料と比べ二酸化炭素(CO2)排出量が少ないとされ、地球温暖化対策として各国で導入が進んでいる。環境省は「バイオエタノールをガソリンに3%混合する現在の方法ではCO2削減効果が不十分。高濃度の燃料を早く導入したい」としている。

 環境省の「エコ燃料利用推進会議」が06年にまとめた報告書では、30年にはガソリンすべてをE10とし、必要となる約220万キロリットル(原油換算)のバイオエタノールを、国内の廃棄物などから製造したり、輸入したりしてまかなうとの目標を掲げた。同会議で前倒しの幅などを議論し、年度内に実現に向けた工程表を改定する予定。

原油、食料高で成果強調 G8閉幕、額賀財務相会見

2008年06月14日 中国新聞ニュ−ス

 大阪市で開かれた主要国(G8)財務相会合は14日午後、声明を正式発表、食料価格高騰への対策として、一部の生産国が発動している食料輸出規制を取り除くとともに、稲わらなど食料を原料としない次世代バイオ燃料の開発を優先課題とすることを打ち出した。

 これらの問題はローマでの食料サミットの宣言にはあいまいな表現しか盛り込まれなかったが、7月の主要国首脳会議(北海道洞爺湖サミット)で踏み込んだ議論に発展する可能性が出てきた。

 G8声明は為替問題には言及しなかったが、ポールソン米財務長官が会合で「強いドル」の重要性を訴えてドル安是正に理解を求め、フランスのラガルド経済・財政・雇用相が支持、他国からも異論は出なかった。

 欧州連合(EU)議長国スロベニアのバユク財務相も会見で「相場の変動が大きすぎるのは望ましくない」と述べた。

バイオ燃料攻防が焦点に 推進派と規制派、熱い論争

2008/06/03 中国新聞ニュ−ス

 ローマで開幕した食料サミット。最近まで「地球温暖化防止の切り札」ともてはやされてきたバイオ燃料をめぐる各国の攻防が、会議の結果を左右する大きな焦点になりそうだ。バイオ燃料の世界的普及を目指して生産を急増させてきた米国やブラジルなどは、一転して食料危機の原因として「悪玉」扱いされることに強く反発、擁護論を展開する。一方、日本など食料輸入国は、穀物価格高騰を防ぐにはバイオ燃料の規制が必要と主張。五日までの会期中、熱い論争が繰り広げられそうだ。

 ▽広く定着

 「ブラジルの農業やエネルギー産業の成長を快く思わない勢力からの批判にだまされてはいけない」。ブラジルのルラ大統領は、同国のバイオ燃料への批判に強い口調で反論する。

 ブラジルはオイルショックをきっかけに、サトウキビを原料にしたバイオエタノールをガソリンの代替燃料として普及させた。現在、販売される新車の八割以上がエタノールでも走れる仕様となるまで広く定着した。

 ここ数年、地球温暖化防止のための京都議定書で温室効果ガスの排出削減を迫られた先進国向けに輸出が急増し、二〇〇七年の輸出量は約三百五十万キロリットルで世界一。エタノール産業には日本や欧米からの投資も増え続け、経済成長のけん引車として期待が大きい。

 有力週刊誌ベジャは、ブラジルからは近年エタノールと同じように大豆など食料の輸出も大幅に増えており、エタノール増産は食料危機とは無関係だと指摘。「ブラジルはバイオ燃料普及のため、世界を説得するのが責務だ」と訴える。

 ▽足並み乱れ

 バイオエタノールの生産量が世界一の米国でも、ブッシュ政権が原油価格高騰への対策としてトウモロコシによるエタノール生産を奨励。しばしば政情が不安定化する中東や、一部で反米機運が高まる南米からの原油輸入を減らそうという狙いだ。

 食料サミットの米代表団長、シェーファー農務長官は「バイオ燃料増産により、過去三年間に一日当たり百万バレルの石油を節約できた」と主張。ブラジルと同様にバイオ燃料の有用性を訴える。

 ブッシュ大統領は二〇〇七年三月にブラジルを訪問してルラ大統領と会談。バイオエタノールの品質基準を統一し、生産を目指す中米諸国に技術協力を行うことで合意するなど、連携して世界的な普及を目指してきた。

 しかし、途上国の貧困問題解決を強く唱えるルラ大統領は最近「価格が高騰した穀物で燃料をつくるのは間違い。生産に補助金を使うなら、なおさらだ」と述べ、トウモロコシを使った米国のバイオ燃料政策を批判した。食料危機をきっかけに、両国にも足並みの乱れが生じたことがうかがえる。

 ▽激しい駆け引き

 これまで食料や飼料にされていた穀物が燃料用に回されたことで需給バランスが崩れ、価格高騰を招いた―というのが日本など食料輸入国の論拠。食料サミットでも「稲わらなど食料と競合しない原料」の開発を求める意向だ。

 サミット最終日に採択する宣言案は当初、バイオ燃料の「最善の生産の在り方」を探るとして、日本などの主張に近かったが、三日明らかになった修正案では「徹底的な研究」を求めると表現が大幅に後退。最終的にどのような宣言にするか、激しい駆け引きが予想される。(共同=本蔵一茂)

バイオ燃料の国際指針を 国連食糧サミット

2008/05/25 中国新聞ニュ−ス

 【ワシントン24日共同=川北省吾】世界的な食糧危機に対処するため、六月三―五日にローマで開かれる国連の「食糧サミット」で採択される政治宣言案の全容が二十四日、明らかになった。食糧価格高騰による飢餓に苦しむ発展途上国を救済するため、二段階の行動計画を提示、緊急・短期的措置として途上国への資金援助を呼び掛ける一方、穀物などを原料とするため価格高騰の一因と指摘されるバイオ燃料の生産に関する国際指針づくりを中・長期的に検討していくよう求めた。

 世界規模でバイオ燃料づくりに関する指針が決まれば初めてとなる。

 サミットには福田康夫首相も出席する予定だが、七月の主要国首脳会議(北海道洞爺湖サミット)の議論の土台ともなる重要文書だけに、今後の議論が注目される。

 共同通信が入手した政治宣言案は、食糧の国際価格高騰に伴い各地で暴動が相次ぐ現状に「深い懸念」を表明。国際社会が危機克服に向け「協調した行動を取らなければならない」と明記した。

 緊急・短期的措置として、途上国への援助増額または現行の援助の見直しによる危機対応を要請。アフリカの貧困農家救済を目的に国連食糧農業機関(FAO)が提唱した十七億ドル(約千七百五十億円)の援助や、世界食糧計画(WFP)による七億五千五百万ドルの緊急拠出要請への協力を援助国に促した。

 中・長期的には、先進国側が農業助成削減に努めることで途上国農家の農産物輸出を促し、生産性向上を後押しするよう要請。地球温暖化による干ばつなどの悪影響に小作農が適応できるようにする方策も求めた。

 バイオ燃料については「最善の生産の在り方」を探る政府間作業部会をFAOに設置に設置するよう要請。穀物生産国による輸出規制の解除も求めたが、この二点は各国の対立が続いている。

農水省、稲わらバイオ燃料推進 穀物高騰・食糧安保に備え

2008/05/06 FujiSankei Business i.

 農水省が食糧を使わない「日本型バイオ燃料」の生産拡大に乗り出す。世界的な穀物高騰と食糧不足を受けて、稲わらや間伐材を利用する技術開発を進め、耕作放棄地を活用した食料に転用できる燃料用作物を生産する。食糧供給と競合しない形で地球温暖化防止に取り組むとともに、非常時の食糧確保という安全保障上の備えにも目配せするのが狙いだ。

 コメ生産国の特性を生かし、ソフトセルロースといわれる稲わらの利用を施策の柱とする。

 6月以降、農水省は稲わらの効率的な収集と、バイオ燃料の製造技術の実証に入る。稲わらの刈り取りから収集、運搬までを効率的に行うシステムや、酵素などを用いたバイオ燃料の製造技術、発酵後の残りかすを農地に還元するシステムを実証する。

 6月中にも事業主体と実施地区を選定し、32億円を投じて実用化を急ぎたい考え。地元密着型の事業として、地域活性化にもつながると期待している。

 政府は地球温暖化防止に向けて、現在は30キロリットルにとどまっているバイオ燃料の生産可能量を、2030年ごろには600万キロリットル(原油換算で約360万キロリットル)まで拡大する方針だ。

 農水省はこのうち、稲わら、麦わらなどで180万〜200万キロリットル、間伐材などの木材と、耕作放棄地の活用などによる資源作物でそれぞれ200万〜220万キロリットルを生産する計画で、今年度予算では総額80億円をかけて、必要なシステム開発を進める。

ドイツでバイオ燃料「消極論」 環境破壊、食料高が拍車

2008/04/29 北海道新聞

 【ウィーン29日石井群也】地球温暖化対策の先進地ドイツで、温室効果ガス削減に有効とされてきたバイオ燃料の使用に消極論が出始めている。バイオ燃料に適応した自動車の普及が足踏みしているほか、原料となる植物を大量栽培する目的で、熱帯雨林の減少を招いているためだ。

 ドイツ政府は四月上旬、自動車用ガソリンに混合するバイオエタノールの割合を倍増し、6−10%とする計画を中止すると発表した。

 トウモロコシやサトウキビなどから精製されるバイオエタノールは、ガソリンとの混合割合が5%を超えると点火システムなどを改良する必要がある。政府は、バイオ燃料の非対応車について全自動車の1%未満と見込んでいたが、最新調査で三百万台以上、約8%に上ることが判明し、計画を断念した。

 非対応車の大半が海外車種だったことから、バイオ燃料の普及が一国だけでは難しいことも露呈した。

 これを機に、ドイツのメディアはバイオ燃料の問題点を一斉に報道。原料の栽培過程で二酸化炭素(CO2)を吸収し、温室効果ガスの排出量が「理論上ゼロ」になるとされてきたが、需要を満たすには大規模な畑が必要で、CO2の吸収源である南米やアジアの熱帯雨林が焼き払われている実態が紹介された。

 また、短期に効率良く収穫するため、化学肥料や農薬の使用量が増加。長期的に土壌がやせ、樹木の成長にも悪影響を及ぼすとの報告もあった。

 「消極論」に追い打ちをかけているのが、原料の需要増でパンや食肉の価格が一年で二割も高騰し、途上国の食料不足も招いていることだ。メルケル首相は「バイオ燃料生産だけが原因ではない」と火消しに躍起だが、メディアの論調は「バイオ燃料はもっと研究が必要」(フランクフルター・アルゲマイネ紙)と、慎重な見方に傾いている。

ブラジルの草原で14の新種 脚のないトカゲやカエル

2008/04/29 北海道新聞

 ブラジル南東部に広がる草原地帯「セラード」で、脚のないトカゲの仲間やカエルの一種など新種とみられる生物14種類を一度に発見したと、米国の環境保護団体コンサベーション・インターナショナル(CI)やブラジル・サンパウロ大などのグループが29日発表した。

 グループは「セラードは、大豆や(バイオ燃料の原料となる)サトウキビ栽培のための農地や牧草地への転換によってアマゾンの熱帯林を上回る速度で減少している」と指摘。保護対策の強化を求めている。

 発見されたトカゲは脚が退化し、草原の砂地の上をヘビのように身をよじりながら移動するのに適した形態をしている。このほか、こぶのような頭部が特徴のツノガエルモドキの仲間や小型のキツツキなど新種とみられる生物が、29日間の調査で確認された。

ガソリン代替のバイオエタノール、ホンダが植物廃材で量産

2008/04/29 NIKKEI NeT

 ホンダと独立行政法人の地球環境産業技術研究機構(RITE)はガソリン代替燃料のバイオエタノールを低コストで量産できる技術を開発した。稲わらなどの植物廃材を原料に、1リットル当たりの生産コストを国際競争力のある30円程度に抑えられる。原油価格の高騰でトウモロコシなどを使うバイオ燃料の需要が拡大し、食糧価格を押し上げている。省資源と温暖化ガス削減につながる技術として2010年をメドに実用化を目指す。

 ホンダの全額出資子会社である本田技術研究所(埼玉県和光市)とRITEが開発した生産技術は、雑草や稲わらの繊維質をすべて1回の処理でエタノールに変えることができる。繊維質の種類ごとに処理する従来方式に比べ生産効率が上がり、稲わら1キログラムから約400ミリリットルのエタノールが作れる。

バイオ燃料計画を中止したドイツ

2008/04/24 (IPSJapan) JanJan

ドイツ政府は『燃料』としての効果は見られないと判断し、バイオ燃料の使用車両を増やす計画を断念、さらにガソリンに添加するバイオエタノールの比率を現在の5%から2倍の10%にするという決定も覆した。

【ベルリンIPS=ジュリオ・ゴドイ、4月17日】

 ドイツ政府は(来年度の実施を計画していた)新たなバイオ燃料計画を中止するという大きな決断を下した。

 バイオ燃料には『燃料』としての効果は見られないと判断し、バイオ燃料の使用車両を増やす計画を断念、さらにガソリンに添加するバイオエタノールの比率を現在の5%から2倍の10%にするという決定も覆した。

 『ドイツ自動車工業会(VDA)』は当初、新バイオ燃料で走行不可能な車の数は37万5,000台と試算していたが、実は300万台以上に上ることが判明。これを受けドイツ政府は同計画を撤回すると発表した。

 環境問題の専門家は「バイオ燃料は温室効果ガスを削減するどころか、環境全体に悪影響をもたらす」とし、政府の判断を概ね支持した。しかし、自動車の燃料以外にもまだまだ多くの懸念が残されている。

 ハイデルベルク大学『Institute for Environmental and Energy Research』のGuido Reinhardt氏は、油やしや大豆、ナタネといった(バイオディーゼルの原料となる)植物を栽培する際に使用される大量の殺虫剤や肥料、熱帯雨林の破壊の問題などを指摘した。

 さらに、Reinhardt氏は「バイオマス(再生可能な生物由来の有機資源で化石資源を除いたもの。木材・畜産・食品廃棄物など:IPSJ)の利用を推進するべきだ。これならトウモロコシなど穀物生産の妨げにならない」とIPSとの取材に応じて語った。

 すでにバイオ燃料生産がもたらす食糧問題は世界各地で起こっている。エジプト、メキシコ、ハイチ、ボリビア、ウズベキスタンでは近年、農作物の価格急騰が、深刻な食料不足を引き起こし、暴動が起きている。

 バイオ燃料導入の是非をめぐる専門家の諸意見を報告する。

翻訳/サマリー=松本宏美(Diplomatt)/IPS Japan武原真一

バイオ燃料は悪者か 食糧高騰で批判集中

2008.04.24 MSN産経新聞

 世界的な食糧価格の高騰に直面し、温暖化対策の切り札のひとつとして米国が主導するトウモロコシなどを原料とするバイオ燃料増産に批判の矛先が向き始めた。国連の食糧問題に関する特別報告官がバイオ燃料増産を公然と批判し、欧州連合(EU)もバイオ燃料使用の目標見直しを迫られている。6月3日からローマで開かれる国連食糧農業機関(FAO)の加盟国高官会議や7月の主要国首脳会議(北海道洞爺湖サミット)でもバイオ燃料と食糧安全保障が主要議題として取り上げられる見通しだ。(ニューヨーク 長戸雅子、ワシントン 渡辺浩生)

 「バイオ燃料の大量生産は、世界の食糧価格破壊をもたらす『人道に対する罪』である」。国連の「十分な食糧を得る権利」に関する特別報告官ジャン・ジグレール氏はドイツのラジオ局でこう述べた。

 バイオ燃料用の穀物生産のため、食糧用穀物の作付面積が減少してしまうというのが理由だ。とくに、トウモロコシを原料としたエタノールについて、米政府が2006年1月、20年までの生産目標を当時の生産能力の7・5倍の360億ガロンに設定したことを契機に、米農家が小麦や大豆の栽培を縮小し、トウモロコシ増産に走った。

 この結果、他の穀物価格にも高騰が波及。穀物産地のオーストラリアの干魃(かんばつ)や投機筋の資金流入などに加え、アジアの主食であるコメ価格もベトナムなどの輸出停止措置の影響を受け、食糧全体の高騰につながった。

 こうしたなかで、これまで温暖化対策のため、バイオ燃料使用の割合を増やす目的を掲げているEU内部でも、見直しを迫る声があがり始めた。EUの欧州委員会は2020年までに運輸部門の燃料に使用されるバイオ燃料の割合を、現在の2%以下から10%にまで上げることを目指しているが、英国は早急の計画見直しを要請。農業国フランスのバルニエ農業・漁業相も「最優先されるべきは食糧生産だ」と述べた。

 米政府は昨年末、360億ガロンのうち210億ガロンは草の茎や木材のくずなどを使ったセルロース(植物繊維)を原料にして生産するよう目標を修正。超党派でバイオ燃料増産を推進した民主党上院のリード院内総務は22日の地球の日を記念する会見で、「原料を食糧から切り替える必要がある」と強調した。

 ただ、欧州環境委員会の担当者は「政策目標を変更すれば他の目標をリスクにさらすことになる」と反論。バイオ燃料に関する目標数値を変更する考えはないことを強調した。

 FAOは今年2月に専門家による「バイオ燃料政策と食糧安全保障に関する基調声明」を出し、バイオ燃料政策が食糧安全保障に与える影響は十分に解明されておらず、早急な分析が求められていると強調。そのうえで、食糧の安定供給を確保しつつ、貧しい農業従事者がバイオ燃料生産から得られる利益を奪われることのないような政策立案が必要と提言した。

 一方、サトウキビを中心としたバイオ燃料の世界最大輸出国であるブラジルのルラ大統領は、世界が必要な食糧を「供給できないでいるだけで、バイオ燃料が食糧価格に与える影響はない」とすべてのバイオ燃料を否定するような動きを牽制(けんせい)している。 

 また、国際通貨基金(IMF)と世界銀行も、「食糧価格高騰は一部の国の無分別な農作物の価格政策の反映でもある」(ストロスカーンIMF専務理事)と指摘、生産国の農作物に対する補助金や輸出制限なども問題視している。

バイオエタノール実用化へ 島根モデルできれば /島根

2008年04月24日 毎日新聞 地方版 Mainichi INTERACTIVE

 ◇ゴミ焼却炉の廃熱利用、エネルギーコスト大幅減−−県内NPO

 地球温暖化対策として、サトウキビやトウモロコシなどの食物から作られる「バイオエタノール」を県内でも実用化しようという動きが本格化している。島根大や民間研究者らが集まって発足したNPO法人「しまねバイオエタノール研究会」(松江市)では、ゴミ焼却炉の廃熱を利用して、コメからバイオエタノールを製造する手法を研究し、エネルギーコストを大幅に抑えるという結果をまとめた。同研究会は「ゴミ焼却炉の廃熱を利用した製造方法は他県でも実用化されていない。島根モデルとなれば」と期待を寄せている。【小坂剛志】

 ◇注目のエコ燃料

 バイオエタノールとは、穀物や木材などの植物に含まれる糖分を抽出、発酵させて作った燃料で、温室効果のある二酸化炭素の削減につながる「エコ燃料」として注目されている。燃焼させれば温室効果ガスの二酸化炭素が放出されるが、原料となる植物が成長する際に大気中の二酸化炭素を吸収することから、燃焼時の排出量を相殺する環境効果があるという。

 ブラジルでは、すでにサトウキビを原料にしたバイオエタノールが、ガソリンの代わりに自動車燃料として実用化されている。米国ではトウモロコシといった穀物からバイオエタノールを製造することが多く、ブッシュ大統領がバイオエタノール増産計画を打ち出すと、直後からシカゴ市場のトウモロコシ価格が急騰。1年前の2倍の値をつけるという現象も起きた。

 ◇飼料用コメから

 「しまねバイオエタノール研究会」では、「エサ米」と呼ばれる飼料用のコメを使ったバイオエタノール製造を研究している。バイオエタノール製造にあたっては、(1)バイオエタノールは高額すぎる、(2)バイオエタノールの製造過程で逆に二酸化炭素を出すのではないか、という指摘がある。

 同研究会が使う「エサ米」は、1キロあたり20円と、食用のコメよりも安く、手間をかけずに作ることができる。コメに含まれるでんぷんを糖化、アルコール化する「醸造」によって、エタノールを製造する。こうしてできたバイオエタノールの濃度は約15%。燃料として使うには、エタノールだけを分離する「蒸留」を使って濃度を上げる必要がある。ただ、蒸留には多くのエネルギーが必要。そこで、ゴミ焼却施設の廃熱を使うことで、エネルギーコストを抑えて蒸留する設備を設計した。

 同研究会の調査では、エタノール1リットルあたりの製造費用は114〜125円で、「他県の取り組みと比べても十分安価で、採算性がとれる」(同研究会)という。エネルギー収支という点でも、ゴミ焼却炉の廃熱を利用するため、エタノール製造にかかるエネルギーを大幅に低く抑えることができた。

 また、同研究会が使う「エサ米」は飼料用のため、人間の食用とは競合せず、米国の穀物物価高騰のような事態も起こり得ないという利点もある。

 ◇行政も支援を

 同研究会の和泉敏太郎理事長は、「今年度中にも、農業者・廃熱を排出する事業社・石油事業者の3者による共同出資会社を設立し、商用化を目指したい」としている。

 バイオエタノール製造は、国産エネルギーを育てる「エネルギー問題」、休耕田を活用する「農業問題」、温室効果ガスを削減する「環境問題」の三つの見方がある。特に、県内には約7000ヘクタールという休耕田があり、国土保全や農業振興も期待できる。また、多くの自治体にはゴミ焼却炉があり、この廃熱を生かさない手はないだろう。同研究会の取り組みを行政がバックアップすることで「環境先進県」としての島根モデルの実現に近づくはずだ。

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 ◇ご意見、ご感想募集

 この欄に対するご意見、ご感想を、郵送、ファクス、または電子メールでお寄せください。〒690−0886 松江市母衣町83−3 毎日新聞松江支局▽0852・27・1548▽matsue@mbx.mainichi.co.jp

コスモ石油と日本製紙ケミカル、バイオエタノール製造のフィージビリティ調査を開始へ

2008年04月11日 NIKKEI BP NeT

 コスモ石油と日本製紙グループの日本製紙ケミカルは、日本製紙ケミカル江津事業所(島根県江津市)で、バイオエタノール製造に関するフィージビリティ調査を実施することで合意した。

 バイオエタノール製造に関しては、食糧と競合しない草本系・木質系原料からの製造法の検討が急務とされている。セルロースやヘミセルロースからエタノール原料である糖を生成する工程が難しいことが技術課題の1つとなっている。

 日本製紙ケミカル江津事業所は国内唯一の亜硫酸パルプ製造工場。亜硫酸パルプの製造工程では、エタノール原料となる糖質を含む黒液が発生する。コスモ石油と日本製紙ケミカルは、このパルプ製造技術、黒液発酵技術をベースにバイオエタノール製造の検討を進めることが、現実味のあるステップであるとの認識に立ち、技術課題の精査を含むフィージビリティ調査を行うこととした。

 今後1年間にわたって、国内外の有力な技術を調査し、江津事業所の黒液の性状などを評価するとともに、糖化技術の適用やエタノール発酵の生産性などの事前評価を行う。また、競争力強化に向けた技術課題を明らかにし、バイオエタノール増産の可能性についても検討する(日経エコロジー編集/EMF)。

EU:必要エネルギーの10%をバイオ燃料に(全訳記事)

2008/02/10 (IPSJapan) JanJan

【ブリュッセルIPS=デイビッド・クローニン、1月23日】

 欧州委員会は、世界的な飢えを引き起こすのではないかとの懸念をよそに、バイオ燃料使用増加の目標を維持する決定を下した。

 1月23日に公開された気候変動と闘う将来的な行動計画の中で、EUの執行機関である欧州委員会は、以前に合意した2020年までに自動車その他の輸送モードに必要なエネルギーの10パーセントをバイオ燃料とする目標を維持すると発表した。

 この発表は、目標に対する非難集中にも拘わらず行われたもので、批判の声は欧州委員会の内部からも上がっている。開発支援担当のルイ・ミチェル・コミッショナーは今月初め、「先進国のエネルギー確保のために農耕地にバイオ燃料作物を植えると、途上国の伝統的農業に大きなリスクを与えることになる」と語った。

 また、欧州委員会の科学者達も、10パーセントのバイオ燃料使用で温室ガス効果を抑えることができるかどうかは疑問とする調査書を提出している。

 これに対しアンドリス・ピエバルクス・エネルギー担当コミッショナーは、「EUで使用されるバイオ燃料には、生態学的/社会的持続可能性を確保するための基準が適用される」「多様な動植物が生息している場所で生産された作物は燃料製造に使ってはならず、森林あるいは多量の炭素を含む土地でバイオ作物を栽培してはならない」と言う。

 これは、湿地あるいは泥炭地帯でのバイオ燃料生産は、気候変動を引き起こす主要ガスである二酸化炭素の大量放出に繋がるとの報告に従ったものである。

 ピエバルクス氏はまた、EUのバイオ政策で食料品の価格高騰が起こらないよう“保証する”として、「EUの政策により日用品が値上がりしたことが明らかになれば、断固とした措置を取る」と述べた。

 しかし、これらの約束も貧困緩和や環境保全に関わる活動家の危機感を払しょくすることはできなかった。

 オックスファムのスポークスマン、アレクサンダー・ウールコム氏は、「バイオ燃料は途上国の一部農家の収入増に繋がるかもしれないが、これが食糧生産に害をもたらしてはならない」と語っている。

 米農家が大豆をバイオ燃料に転用した方が利益になると判断したため大豆価格は記録的な価格高騰となり、インドネシアでは先週抗議の街頭デモが行われた。

 ウールコム氏はIPSに対し、「EUは非常に大胆な目標を掲げたが、実現のための方法は分かっていない。持続可能な方法による目標達成ができないのであれば、白紙に戻すべきだ」と語った。

 南アメリカの活動家は、「欧州委員会は、ヨーロッパの主要バイオ燃料材料であるヤシを栽培するため途上国の農家が土地を追われている現実から目をそらしている」と批判する。

 「アルゼンチンの地方を考える会」(Groupo de Reflexion Rural in Argentina)のステラ・セミノ氏は、「欧州委員会が提案した持続可能の基準には、大規模な水抽出、土地浸食、土地紛争、人権、労働問題といった要素が欠落している。更に、強制立ち退き、食糧価格高騰といったマクロ・レベルの影響に関する考慮もなされていない」と批判している。

 グリーンピースのフローケ・テイス氏は、作物問題は、燃料効率の悪い車への燃料提供ではなく電力・熱生産の観点から検討できるのではないかと述べ、10パーセント目標は“間違い”と主張する。

 欧州委員会計画の画期的な点は、風力、太陽といったクリーンで持続可能な資源からの電力生産量を増大するため、欧州委員会加盟27カ国それぞれに法的強制力を伴う目標設定を提案している点である。これは、2020年までにEUの温室ガス排出の20パーセント削減実現を目的とする。

 欧州委員会はまた、主要エネルギー消費国が排出する二酸化炭素量の上限を定めることを目的に3年前に設定された排出量取引制度(ETS)の規模拡大を提案している。

 大手電力会社の一部は、ETS割り当て免除により利益を得てきたが、2013年からは新たな計画に従い電力セクターの排出許可はすべて競売にかけられることとなった。しかし、他国が同様の気候変動対策を行っていないことから、国際競争力が弱いと思われる経済活動については競売からの除外を認める模様。

 欧州委員会のジョゼ・バローゾ委員長は、新計画実施コストはEUの国内総生産の0.5パーセントまたはEU市民1人当たり1週間のコストは、現在から2020年まで、約3ユーロ(4ドル)になると予測した。同措置を採用しない場合のコストは10倍になるという。同氏はまた、再生可能エネルギーの使用拡大は、独裁国あるいは政治紛争国から輸入する石油/天然ガスへの依存度軽減という大きなメリットがあると述べている。

 欧州議会メンバー(MEPs)は、新計画に概ね賛成している。

 同議会リベラル派のリーダー、グラハム・ワトソン氏は、同計画は、2004年に委員長に就任したバローゾ委員長がとった最も重要な行動であると語っている。 翻訳=山口ひろみ(Diplomatt)/IPS Japan 山口響

廃材からバイオ燃料製造 硫酸不要の新技術で産総研

2008年01月31日 中国新聞ニュース

 産業技術総合研究所は31日、廃材など木を原料とした環境に優しいバイオエタノール燃料の製造技術を確立することに成功し、今秋にも広島県呉市にある同研究所中国センター内に実験プラントを建設すると発表した。

 これまで、木からエタノールをつくるには硫酸を用いたため、廃棄物処理に手間がかかったが、新技術は硫酸が不要。プラントで実証されれば世界初となる。

 バイオ燃料はトウモロコシなど穀物を原料にしたものが中心だが、生産増による価格の高騰が問題になっているほか、発展途上国などでの食料難を招くとの指摘もある。木はこうした問題を防ぐことができ、廃材を使えば国内で安価に入手できるという。

 産総研の研究チームは今回、数センチのチップ状にした木材をカッターやミルで数十マイクロメートル(1マイクロメートルは1000分の1ミリ)まで粉砕。糸状菌を入れ糖に分解した後、酵母を加えて発酵させ、蒸留後にエタノールを取り出すことに成功した。

自動車用新バイオ燃料

2007/12/28 FujiSankei Business i.

 ■食用以外の原料を使用/すでに国際競争始まる

 トヨタ自動車の渡辺捷昭(かつあき)社長は25日、名古屋市で開いた記者会見で、木片チップから作る新しい代替燃料「セルロース系エタノール」の開発に着手したことを明らかにしました。地球環境に対応した戦略として、ガソリンエンジンと電気モーターを併用するハイブリッド車に軸足を置きながら、全方位で技術開発に取り組み、着々と「世界一」の足場を固めようとする同社の新たな挑戦ともいえます。

 トヨタに限らず、ホンダも自動車用の新バイオ燃料の開発に着手しています。従来の食用植物からつくるバイオエタノールと、両社が取り組む新バイオ燃料はどのような違いがあり、狙いはどこにあるのでしょうか。

                   ◇

 トヨタは社外の大学・研究機関と連携し、新バイオ燃料「セルロース(植物の繊維質の主成分)系エタノール」の開発に着手しました。間伐材や廃木材のチップなどから燃料を抽出する技術で、今秋に取得した三重県内の山林(約1630ヘクタール)の間伐材を用います。

 「クルマだけでなく、インフラやエネルギーまで含めて、総合的な『サステイナブル・モビリティ(持続可能な移動社会)』のあり方を研究する」(渡辺社長)姿勢の一環で、自動車燃料を多様化させる展開でも世界的プレゼンス(存在感)を高める狙いがあります。

 バイオ燃料には、サトウキビやトウモロコシなどを発酵させてつくる「バイオエタノール」や、大豆などの食用油をディーゼルエンジンの燃料とする「バイオディーゼル」があり、セルロース系もその一つです。

 バイオ燃料が脚光を浴びる背景には、中長期的に石油の需給が逼迫(ひっぱく)する中で、リスク分散させることが一つ。加えて、大気中の二酸化炭素(CO2)を光合成で吸収する植物が原料のため、燃焼しても大気中のCO2を増やさないと位置づけられており、地球温暖化対策としても注目が高まっているからです。

 とりわけ、サトウキビの世界最大の産地であるブラジルでは、バイオエタノール対応の乗用車が急ピッチで普及。トヨタやホンダなどの日本メーカーも同燃料対応車を投入し、普及の牽引(けんいん)役となっています。

 ただ、植物由来のバイオ燃料の普及には、問題をはらんでいることも事実です。

 バイオエタノールの製造では、サトウキビやトウモロコシの糖質やデンプン質など、食用と同じ成分を原料とします。このため、供給可能量に限りがあるほか、米国では大豆や小麦などからトウモロコシへの転作が進んで供給量が不足し、小麦などの価格が高騰するという問題も生じています。

               ◇

 トヨタが木片チップを原料にしたバイオ燃料を開発するのも、食用植物を原料にすると、さまざまな問題が出てくることに対応するためです。

 ホンダもすでに、研究開発子会社の本田技術研究所と地球開発産業技術研究機構(RITE)が共同で、食用ではない植物の茎や葉に含まれるセルロース類からアルコール燃料を製造する技術を確立。今年5月には研究所内に実験プラントを設置し、量産技術の確立に向けた研究開発を加速しています。

 一方で、自動車大国である米国でも、セルロース関連燃料の開発予算を増大させる動きがあり、環境対応の次世代燃料技術の国際競争はすでに始まっているといえます。(臼井慎太郎)

おから使いバイオ燃料製造 静岡油化工業

2007年12月08日 中日新聞

年4800リットル生産へ

 鉱物廃油などのリサイクル事業を手掛ける静岡油化工業(静岡市駿河区)は、来年3月からおからを原料にバイオエタノールの製造を始める。全国的にも珍しい取り組み。2月末には年間4800リットルの生産が可能な小規模プラントが完成、5年後には約30倍の規模に拡大する計画。

 バイオエタノールは、サトウキビやトウモロコシなどバイオマス資源(生物資源)を発酵させ、蒸留して得られるアルコール燃料。一般のガソリン車でも3%まで混ぜて燃料とすることで二酸化炭素(CO2)の排出量を削減できるとして注目されている。長島磯五郎社長は「製造コストは1リットル当たり100円以内を目標にしたい」と話す。

 プラントでは、生のおから320キロとジャガイモの皮が主な廃ポテト226キロを原料に、一工程(5日間)で100リットルのエタノールが製造できるという。事業は独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO、川崎市幸区)の2007年度新エネルギー等事業者支援対策事業として採択された。

 エタノールの原料として、大豆の搾りかすであるおからも利用可能なことは知られていたが、大量に集めるシステムが確立されていないことなどから注目されてこなかった。静岡油化は県内を中心に約50の豆腐製造業者から1日約70トンを回収しており、エタノールの原料としては十分な量を確保できる。

 さらに、県工業技術研究所と共同研究を進め、主原料のおからに炭水化物が多く含まれる廃ポテトを混ぜることで糖化を促進し、発酵効率を高めた。同研究所食品環境科の松本豊研究主幹は「今後は製造したエタノールが余剰物とならず、きちんと消費されるシステムづくりが課題。税制など法律も含めて、利用を促すための環境整備が必要」としている。

 静岡油化などによると、全国で年間約80万トンのおからが発生するとされているが、飼料などに利用されるのは一部で、ほとんどは廃棄処分されているという。長島社長は「おからは貴重な燃料になる。環境保護のためにも、当初は採算を度外視してもやりたい」と新規事業に挑む。

 既に事業化している天ぷら油を原料とするバイオディーゼル燃料(BDF)についても来年3月にプラントを増設し、生産量を3倍の日産4500リットルに拡大する。総工費は合わせて約1億3000万円を見込む。

バイオ燃料「1リットル40円」、経産省など目標設定へ

2007年11月23日 読売新聞 YOMIURI ON-Line

 経済産業省と農林水産省は、植物から作る自動車用のバイオ燃料の普及を図るために、来年3月末までに技術革新計画をまとめる。

 2015年までに最大でバイオ燃料の価格を1リットルあたり40円に引き下げる目標を掲げる。

 バイオ燃料としては、トウモロコシなどから作るバイオエタノールが商用化されている。しかし、各国で小麦や飼料作物の栽培農家がトウモロコシへの転作を進めた結果、飼料価格が高騰するなどの悪影響が出ている。国内では、稲わらなどの農林廃棄物からバイオ燃料を作る実証実験が行われているが、1リットルあたり2000円程度とコストが高く、実用化のメドがたっていない。

 両省は、ススキなどの新たな原料からバイオ燃料を安く作るための技術革新を進め、15年までに1リットルあたり40円に引き下げたい考えだ。農林廃棄物から作るバイオ燃料については同年までに1リットルあたり100円に引き下げることを目標とする。それぞれのケースで、いつまでにどんな技術を開発するか、工程表を作る。

沖縄1千億円投資にわく…南西石油ブラジル国営会社に

2007/11/11 FujiSankei Business i.

 米エクソンモービル傘下の東燃ゼネラル石油は10日、保有する子会社の南西石油(沖縄県西原町)の全株式をブラジルの国営石油会社ペトロブラスへ売却することで合意、調印したと発表した。売却総額は55億円。株式の引き渡しは来年3月を予定している。

 ペトロブラスは、買収を決めた南西石油の精製施設について、日本などアジア市場でバイオ燃料を普及させるのに活用する予定だとの声明を発表。1000億円規模の投資が見込まれる地元沖縄では、設備投資による経済効果や、離島でのエネルギーの安定供給確保につながるとの好意的な受け止めが広がっている。

 ブラジルは沖縄県でも実証実験が行われているバイオエタノールの世界有数の輸出国。元沖縄電力会長の仲井真弘多知事は「原油価格が高騰する中、まだ(石油ほど)使われていない燃料への展開などにもちょうどいい」と技術開発の促進にも役立つとの考えだ。

 南西石油には現在、東燃ゼネラル石油が87・5%、住友商事が12・5%出資している。

 ペトロブラスは南西石油の買収により、アジア地域に近い沖縄から、石油製品の需要が大きく伸びることが期待される中国や東南アジアへの輸出に加え、日本国内への販売拠点とすることを狙う。

 南西石油は沖縄県で消費する約6割の石油製品を供給しているが、業績は低迷、2006年12月期の純損益は3億8100万円の赤字となっている。製油所が小規模な上に老朽化していることから、東燃は売却を決めた。

 南西石油が本社を置く西原町の幹部は「町財政や、従業員に与える影響を考えれば、買収で施設が残ることは歓迎だ。新たな設備投資や雇用の創出も期待できる」。

 県産業政策課は「離島県の沖縄でエネルギーの安定供給が引き続き確保されることが大きい」と指摘。「世界的な企業の進出で沖縄の地理的特性が注目され、ほかの企業誘致にもつながるのでは」(同課幹部)と期待を寄せる。

 ペトロブラスの原油処理能力は日量約192万バレル。ブラジルの国内需要分をほぼ満たしており、近年は輸出を強化している。南西石油の買収により海外進出をさらに進める。

IPSコラム:バイオ燃料は温暖化対策の妙薬ではない

2007/11/06 (IPSJapan) JanJan

【IPSコラム=ビンセント・パウロ・ユー3世、2007年10月】

 自動車の燃料消費におけるバイオ燃料の割合が増えてきている。しかしこれは、化石燃料依存からの脱却への「妙薬」ではないとビンセント・パウロ・ユー3世(Vicente Paolo Yu III)は語る。ユー氏は、「サウス・センター」の「開発のためのグローバル統治プログラム」の責任者。

 ユー氏は、この記事において、バイオ燃料はエネルギーの組み合わせを多様化する広範な戦略の一部として見られるべきであると主張する。多様な組み合わせによって、経済的・社会的障害を最小にしながら、より持続可能なエネルギー源に移行することが可能とする。バイオ燃料生産がとりわけ途上国の食料生産を直接犠牲にしないようにしなくてはならないし、途上国貧困層の食べ物が先進国の家畜や自動車と張り合わないようにしなくてはならない。

 気候にやさしいその他のエネルギー源(バイオガス・太陽光・風力・潮力・水力・地熱・水素など)を発電や運輸、日常の消費に使い、化石燃料の将来的な代替エネルギーとしてこれらの使用を拡大するために、さらなる研究開発や投資が必要だ。 翻訳=山口響/IPS Japan浅霧勝浩

規格混在、一本化が急務 バイオガソリン

2007/10/29 FujiSankei Business i.

販売から半年

 植物から作るバイオエタノールをガソリンに混ぜたバイオガソリンを石油業界が発売してから半年たった。環境対策の“切り札”として登場したが、販売量は月1万キロリットル程度で、2010年度に年間販売21万キロリットルという石油業界の目標達成が危ぶまれる状況だ。バイオガソリンをめぐっては、経済産業省・石油業界が提唱する規格と、環境省の規格が混在。両者が歩み寄る気配はなく、石油業界の中にも「規格併存は消費者の混乱を招き、普及のネックになる」との見方があるだけに、規格の一本化が急務だ。

 「京都議定書の目標実現に『E3』は欠かせない」

 今月22日、鴨下一郎環境相は環境省直轄で都内に初めて設置するE3給油設備(東京都新宿区)を視察し、こう断言した。

 バイオガソリンは、経産省・石油業界がバイオエタノールを加工した「ETBE」(エチルターシャリーブチルエーテル)をガソリンに7%混ぜるタイプを、環境省はガソリンに3%のバイオエタノールを直接混合する「E3」をそれぞれ推している。

 ETBE混合タイプはフランスなど欧州で導入され、直接混合は米国やブラジルで普及しているが、国内では規格が分裂。背景には、中央官庁の主導権争いがある。

 日本政府は「バイオマス・ニッポン総合戦略」の見直しを06年3月に閣議決定。事務局となった農水省が、バイオ燃料を国内農業の振興策と位置づけ「30年ごろに国内ガソリン消費量の1割相当の600万キロリットル」との目標を打ち上げ、バイオ燃料実用化のため100億円の予算を要求した。これにエネルギー行政を担う経産省がかみ付き、対立を深めた。

 政府目標では、10年度に輸送用燃料50万キロリットルを石油からバイオ燃料に置き換え、うち石油業界は21万キロリットルを担うとしている。石油元売りの業界団体、石油連盟(石連)は、E3は水分を含みやすいエタノールを直接混合しているため自動車の部品にさびを発生させるなどの影響を与える恐れがあるとみて、ETBE混合タイプを選択。経産省と連携し、4月27日から首都圏のガソリンスタンド50店で試験販売を開始した。

 一方、農水省は環境省を陣営に入れ、E3の普及を目指すと宣言。環境省は10月から大阪府内の2スタンドでE3の試験販売をスタートし、11月9日には都内でも売り出す。

 ≪“国産品”でも対立≫

 環境省は、建設廃木材や木くずなどからエタノールを作るバイオ・エタノール・ジャパン・関西(堺市西区)の“国産バイオエタノール”を調達している。これに対し、石油業界はブラジル産バイオエタノールをETBEに加工している。石油業界は当初、国産バイオエタノールも調達する意向だった。しかし、環境省が国産を引き取って、自らE3の実証販売に乗り出したことに、石油業界は反発している。

 両陣営は対立したままだが、ここにきて鴨下環境相は、「ETBEだけでなくE3も利用してもらい、どちらがよいか検討するため石連、経産省に協力を要請する」と柔軟姿勢を強調する。一方、海外市場での需要拡大に伴ってバイオエタノールが高騰しているのを背景に、石連の渡文明会長(新日本石油会長)も「国産バイオエタノールを調達したい」と話しており、対立する両陣営間に雪解けの兆しもみえ始めている。

 このまま規格が併存すれば、販売の現場が混乱するとみられるだけに、大手石油販売店幹部は「両陣営が話し合う機会があれば、規格統一に動き出すのでは」と期待を寄せる。(今井裕治)

稲わらからバイオ燃料生産 民間の実用化研究を支援へ

2007年09月15日 中国新聞ニュ-ス

 農水省は稲や麦のわら、もみ殻といった農業の副産物からバイオ燃料(エタノール)を生産する実証事業を来年度から始める。モデル地区を2、3カ所選び、5年計画で実用化に向けた民間の実験プラント建設などを支援していく。

 バイオ燃料はガソリンに代わる動力源として注目され、海外ではトウモロコシなどが原料に使われている。日本は大量の食料を輸入に頼っているため、食用ではなく、多くが未利用の農業副産物を使った生産技術の確立を目指す。

 農業副産物の燃料化はまだ研究段階で「実用化を目指す実証事業は初めて」(農水省環境バイオマス政策課)の試み。

 実証事業では、公募で選ぶモデル地区に、農業副産物の燃料化を研究している民間企業などが小規模プラントを建設。周辺の農地から稲わらなどを収集し、日量1−3キロリットルのエタノールを製造する。国は施設整備費の3分の2などを補助する。

エネルギー:バイオ燃料は貧農の救世主になるか?

2007/08/27 (IPSJapan) JanJan

【ワシントンIPS=アビッド・アスラム、8月17日】

 食料価格は、1970年代以降世界的に急落している。しかし、近年、作物から取れる燃料の利用が増え、食料価格が上昇に転じている。バイオ燃料は貧農を潤すことになるのだろうか?

 「ワールドウォッチ研究所」のクリストファー・フラビン所長は、バイオ燃料産業を発展させようとする国は、石油を輸入するよりも自国の作物を使った方がよいと話す。世界の最貧国47か国のうち、石油の純輸入国は38か国、完全輸入国は25か国もある。

 2000年から2005年にかけて、バイオ燃料の使用は2倍になった。米国、欧州諸国、ブラジルで世界全体のバイオ燃料生産の95%を占める。

 バイオ燃料は世界の道路輸送の1%のエネルギーを供給している。国際エネルギー機関(IEA)は、2030年までに道路輸送に占めるバイオ燃料のシェアが4倍になるとみている。

 こうして、バイオ燃料はエネルギー安全保障には寄与している。しかし、食料価格が高騰することにより貧困層の食べるものがなくなり、バイオ燃料生産用に森林が多く伐採されてもいる。米国産トウモロコシの5分の1はバイオ燃料に変わり、ブラジルのアマゾンが失われている。

 「ワールドウォッチ研究所」では、食用の作物をバイオ燃料に使うことをやめて、農場や森林から出た廃棄物を使ったバイオマス燃料を促進することを推奨している。

 地球政策研究所のレスター・ブラウン所長は、「世界の最貧困層20億人の多くは、収入の半分以上を食料に費やしている。穀物価格が高騰することは彼らの生活を脅かす」と語る。世界の砂糖生産のうち10%がバイオ燃料用として使われているに過ぎないが、それでも砂糖価格は急騰している。 翻訳/サマリー=山口響/IPS Japan浅霧勝浩

エネルギー/食:バイオ燃料が食糧援助のコストを上げる

2007/08/04 (IPSJapan) JanJan

【ワシントンIPS=エリ・クリフトン、7月27日】

 米国とECでバイオ燃料の需要が急増、原料となる食品価格を押し上げたことで、食糧援助に依存する飢餓に苦しむ途上国に深刻な影響が及ぶことが懸念されている。

 米政府は輸入原油価格と中東政治情勢の変動の影響を隔離し、中西部の農業活性化に資するとしてバイオ燃料を歓迎。トウモロコシを原料とするエタノール生産を拡大したことで、トウモロコシ価格が昨年2倍に跳ね上がる影響が出た。ECはバイオ燃料を10%混入するバイオディーゼルを義務化。より効率の良いサトウ、パーム油などの原料を提供する南米、東南アジアへ食品上昇の影響が拡大することが懸念されている。

 世界銀行によると基本食品の価格は2005年に比較して21%上昇。穀物、油などの重要品目は30%上昇。国連世界食糧計画(WFP)のジョゼット・シーラン事務局長は、フィナンシャル・タイムズのインタビューに応え、バイオ燃料の生産拡大による食品価格の上昇は「今までにない次元の問題」と語った。

 アースポリシー研究所のレスター・ブラウン所長はアマゾン、インドネシア、マレーシアなどの森林破壊の影響だけでなく、食糧とエネルギー市場の同化を指摘する。食糧価格はもはや原油価格と分離することができず、経済、政治情勢の変動がそのまま世界中の食糧価格に跳ね返ることになる。そのような意味で、バイオ燃料は危険な代替燃料だと警鐘を鳴らす。

 WFPは資金拠出国からより一層の資金提供がない限り、プロジェクトの削減もやむなしと警告。食糧援助の受け手であると同時に、バイオ燃料の原料供給国でもある途上国においては、食品価格上昇の恩恵を受けるのは一握りの大農場主にしか過ぎず、大多数の人々は食品の値上げだけを経験することになる。

 途上国に経済面、環境面で甚大な影響を及ぼすバイオ燃料の生産拡大について報告する。翻訳/サマリー=角田美波(Diplomatt)/IPS Japan浅霧勝浩

バイオ燃料が影響 独ビール値上げへ 導入拡大→大麦の生産減、高騰

2007/04/28 FujiSankei Business i.

 ビール消費大国のドイツで、地球温暖化防止に向けたバイオ燃料導入のあおりを受けて、原料の大麦価格が高騰、ビールの値上げに踏み切る動きが出てきた。世界各地でもバイオ燃料の影響で穀物価格が上昇しており、ビールをこよなく愛する消費者の財布を直撃しそうだ。(坂本一之)

 米誌ビジネスウィーク(電子版)などによると、ベルギーのビール大手インベブのドイツ部門は「5月1日から卸売業者への販売価格を引き上げる」と表明、小幅な値上げをする計画を打ち出した。ドイツ大手のラーデベルガーも値上げを検討しており、大麦価格の上昇によるコスト増を商品価格に転嫁する動きが広がっている。

 もともと大麦の生産規模が縮小しているドイツでは、2006年の収穫不足が影響し、大麦価格は過去1年で1トン当たり200ユーロ(約3万2000円)から400ユーロへと2倍も跳ね上がっている。

 フランス通信(AFP)によると、大麦生産農家は、政府の手厚い助成金を受け取ることができる菜種などバイオ燃料の原料の栽培にシフト。ドイツ国内の大麦畑の面積は年に5%も減少している。すでに国内耕作地1200万ヘクタールのうち200万ヘクタールがバイオ燃料向けの作物を生産しているという。

 政府のバイオ燃料推進政策による穀物生産の減少の影響は大きく、ドイツのパン価格も10%近い上昇が見込まれている。

 ■穀物への余波、世界各地に

 温室効果ガス削減に向けたバイオ燃料の導入拡大は世界各地で進んでおり、中国の英字紙チャイナ・デーリーは、エタノール向けのトウモロコシ使用量が06年に政府制限の300万トンを大きく上回る1600万トンに達し、トウモロコシ価格の高騰を引き起こしていると指摘した。

 ブッシュ米大統領がエタノールの導入拡大を打ち出した米国ではトウモロコシ価格が2月に1ブッシェル当たり4・3ドル台半ばとなり、10年7カ月ぶりの高値を記録、加工食品や家畜飼料とともに食肉の値上がりにつながっている。

 メキシコでは主食のトルティーヤがトウモロコシの高騰で値上がりし、今年1月に4万人近い市民が参加したデモが発生、社会問題にまで発展した。

 ドイツ(国民約8200万人)の1人当たりビール消費量(06年)は1日平均0・31リットル。レストランやバーでは0・5リットルをわずか3ユーロ(約490円)で飲むことができ、欧州内でも安い価格がその人気を支えている。

 激しい競争が続くドイツ市場で値上げに踏み切るのは、ビール会社にとって消費者離れを引き起こすリスクもあるが、大麦のコスト上昇は避けられない状況。関係業界は政府に対し、食料の安全保障を主張してバイオ燃料向け作物に対する助成金を削減するよう求めている。

 ただ、報道で、生産者は、ビール業界が大麦の低価格買い取りなどを進めてきたことで「もはや採算はとれず生産をやめるしかない。バイオ燃料だけが(大麦生産減少の)原因ではない」と構造的な課題も指摘している。

バイオ燃料人気で食料品危機

2007年04月11日 Response

 アメリカではビッグ3が中心となり、エタノールを原料とするバイオ燃料の促進が盛んになっている。

 近い将来のグリーンカーを考えた場合、ハイブリッドは有力な手段だが現行のモデルをハイブリッドにするには1台あたり5000ドル程度のコストがかかる。その点「E85」バイオ燃料ならば、すでに利用可能なモデルを多く抱えるビッグ3にとって、非常に有利。そのため全米でE85を扱うガソリンスタンドを増やすなどのインフラ整備をブッシュ政権に強く求めている。

 ところがこのあおりを食っているのが食料品業界。エタノールが今後有力となると、原料となるトウモロコシが一斉にエタノール製造に回されている。中西部の穀物生産エリアでは今年からトウモロコシの作付け面積が15−20%増やされたが、それでも需要に追いつかないのが現状だ。

 トウモロコシは家畜の餌としての需要も高いが、今年に入り餌の価格は昨年の2倍に上昇。このため、牛乳、牛肉、鶏肉などが軒並み値上げとなっている。今後は食用油などにも影響が出る可能性が高く、グリーンテクノロジーは思わぬところでインフレを生み出す危険性も。《Sachiko Hijikata, US editor》

ビッグ3がブッシュ大統領に直訴…バイオ燃料を政治的に安くして

2007年03月27日 Response

 ハイブリッドカーでは日本のメーカーに遅れをとり、巻き返しに躍起になっているビッグ3。

 しかしビッグ3が考える未来のエコカーは、ハイブリッドよりもバイオ燃料。そこで、GM、フォード、ダイムラークライスラーのCEOが揃ってブッシュ大統領に直訴しているのが、フレキシブル燃料車への税金控除を含むインセンティブの実現だ。

 実はビッグ3が生産する車のおよそ半数が、2012年までにバイオディーゼルまたはE85仕様となる予定。現時点でも米国内には600万台のフレキシブル燃料車が存在するが、全米に17万カ所あるガソリンスタンドのうち、E85やバイオディーゼル燃料を販売しているところは2000カ所に過ぎない。

 ワシントンでブッシュ大統領との会合を持ったビッグ3首脳は、会談後の声明の中で次のように発表した。「我々はグリーンエネルギーのリーダーとなる意思を持っている。しかしそのためには政府、燃料供給会社によるサポート、インフラ整備などが必要不可欠だ」。

 この24日にはインディカーレースに初のエタノール燃料車が登場し、世間はエタノール燃料に改めて注目し始めている。ハイブリッド、FCVなどのハイテクに頼らなくてもグリーンカーは実現できる、とのビッグ3の主張が今後の米国の方向性となるのか、政府の対応に注目が集まっている。《Sachiko Hijikata, US editor》

エタノールに国際基準・米ブラジル首脳、作成合意

2007/03/09 NIKKEI NeT

 【サンパウロ=岩城聡】中南米5カ国を歴訪しているブッシュ米大統領は9日、ブラジルのサンパウロでルラ大統領と会談し、温暖化ガス削減につながるエタノールを国際的に取引しやすくするための共通の基準作りを打ち出す。現在は各地でまちまちなエタノールの品質・成分に統一基準を設けて国際商品としての性格を強めることで、一層の普及を目指す。

 これに先立ち同日朝、ライス米国務長官とブラジルのアモリン外相は、エタノールなどバイオ燃料の生産拡大に向け第三国への技術移転などの分野での関係協力を促進する覚書に調印した。

 ブッシュ大統領は同日午前、ルラ大統領とともに国営石油会社ペトロブラスの関連会社を訪れ、ガソリンとエタノールを混合、保管する施設を視察。ブッシュ大統領は「もし石油の輸入に頼るなら国家の安全保障の問題だ。我々は石油から脱却し、エネルギーを多様化したい」と述べ、石油マネーを背景に中南米で影響力を強めるベネズエラや中東諸国を念頭に、代替エネルギー開発に取り組む姿勢を強調した。

中国、3月中にバイオ燃料に関し5カ年計画発表へ=業界筋

2007/03/03 The Sekai Nippo

 【北京 2日 ロイター】 中国は長らく待たれていたバイオ燃料産業に関する青写真を3月中に公表する可能性が出てきた。複数の業界関係者が2日、明らかにしたところによると、中国政府は、5日から16日まで開催される全国人民代表大会(全人代)閉幕後にバイオ燃料セクターに関する5カ年計画を発表するという。

 同計画では、タピオカや穀物以外の農産物などをバイオ燃料に加工することを奨励する一方で、トウモロコシなどの穀物の利用は制限する見通し。

 中国には、政府が支援するエタノール生産会社が4社ある。その1つである河南天冠集団の幹部は「マスタープランが策定されれば、われわれは独自のプロジェクトを進めることができる」と述べた。

中国糧油控股 三菱商事が資本参加 食糧・農業のビジネス拡大

2007/03/03 FujiSankei Business i.

 三菱商事は2日、香港で新規株式公開(IPO)を進めている中国糧油控股(チャイナ・アグリ・ホールディングズ)との間で、同社に資本参加することで基本合意したことを明らかにした。新株の約20%分を取得し、出資額は6500万ドル(約77億円)。詳細は明らかにしていないが、食糧や農業など新たな中国ビジネス分野の拡大策の一環として、合弁会社の設立を含め、戦略的な資本・業務提携を模索しているもようだ。(上原すみ子)

 チャイナ・アグリは、先月8日に、親会社の中国糧油国際(コフコインターナショナル)から分離独立し、今月21日に香港市場で上場する計画。国有企業でアジア最大の食品コングロマリット(複合企業)の中国糧油食品集団(コフコ)の傘下にある。

 チャイナ・アグリは、今回の上場で総額約26億香港ドル(約403億円)を調達する見通し。コフコインターナショナルは、従来、食用油、大豆食品部門に加えて、「長城ワイン」のブランド名で知られる国産ワイン、飼料部門に加えて、傘下に中国で4社しか認められていない、バイオエタノール生産会社のひとつ、安徽豊原生物化学を保有していた。

 一方で、同グループは今回のチャイナ・アグリの分離独立による上場を機に、大規模なグループ再編を計画している。今後は、コフコインターナショナルとチャイナ・アグリが、兄弟会社の形で、中国糧油食品(香港)の傘下企業となる。コフコインターナショナルが、ワインやコカ・コーラなどの食品、飲料事業、チャイナアグリは、農産物加工とバイオエタノールなどバイオ燃料を中核とする。

 チャイナ・アグリは株式上場で調達した資金を、バイオ燃料分野の設備資金にあてる計画で、中国の広西チワン族自治区などに新規で、キャッサバを利用したバイオエタノールプラントを計画している。

 中国政府は近年、原油輸入依存度を下げようと、植物を原料とするバイオエタノールを推進する一方で、食糧安全保障の観点から、エタノールの原料をトウモロコシから、主食にならないキャッサバやサトウキビ、廃材木への転換を進めており、調達資金は、こうした研究開発にも投じられる見通しだ。

 一方、三菱商事は、日本やアジアで試験的に取り組んでいるバイオ燃料などの技術導入など検討しているものとみられる。さらに、コフコグループの中国国内でのネットワークを生かして日本の農産物などの輸出も進めるもようだ。

 日中両国政府は、4月の温家宝首相の来日時に、コメの対中輸出などで基本合意する見通し。また将来的には、中国がトウモロコシの輸入国に転じると予想されるなど、日中間の食糧や農業関連のビジネス拡大が見込まれている。

バイオ燃料議論、一段と白熱 米農務省の「展望会議」開幕

2007/03/03 FujiSankei Business i.

 米国での爆発的なエタノールブームにより、原料となるトウモロコシ価格が10年ぶりの高値を更新し続ける中、米農務省が農産物の需給見通しを示す毎年恒例の「農産物展望会議」が1日、バージニア州アーリントンで始まった。

 同会議は、本来は伝統的な農業政策について話し合う場。しかし、今年は初めて「エネルギー」分科会も設置され、穀物が果たして期待通りにガソリン代替燃料の原料としての役割を果たせるかどうかなど、エタノールをはじめとするバイオ燃料に関して白熱した議論が展開されている。

 ジョハンズ農務長官は同日、基調講演を行い、エタノールブームを背景に2007会計年度の農産物輸出額が過去最高に達する見込みだとした上で、「ブッシュ大統領が掲げるエネルギーの対外依存からの脱却という目標が、穀物に対する大きな工業需要を生み出した」と指摘。バイオ燃料需要の拡大により米国の農業は絶好調との認識を明らかにした。(アーリントン 時事)

植物性廃棄物バイオ燃料 米、年間1億3000万ガロンへ

2007/03/03 FujiSankei Business i.

 ■政府、6社に開発委託

 米国のブッシュ政権がガソリン消費20%削減目標の実現に向け、紙や木くずなどの植物性廃棄物を使った次世代バイオ燃料プロジェクトを始動させた。ベンチャー6社に技術開発を委託し、4年後に年1億3000万ガロン(1ガロンは約3・78リットル)のエタノール燃料を生産する計画だ。トウモロコシなどを原料とした燃料に比べ食料価格に影響を与ず低コストで製造できる利点があり、成果が注目されている。

 米エネルギー省は2日までに、木くずなどから「セルロース」と呼ばれる植物の細胞壁を取り出し、これを原料にガソリン代替燃料のエタノールを製造する技術を持つブルーファイア・エタノール(カリフォルニア州)など6社に総額3億8500万ドル(約454億円)を助成すると発表した。

 このプロジェクトは昨年立案され、当初予定していた助成額は1億6000万ドルだったが、ブッシュ大統領が今年1月の一般教書で2012年までにガソリン消費を20%削減する目標を打ち出したことを受け、予算を大幅に上積みした。

 エネルギー省のボドマン長官は「セルロースを原料とする低価格のエタノールは、ガソリンの大量消費を一層するかぎを握る」としたうえで「多くの応募があったなかで今回選定した技術は非常に有望」と大きな期待を示した。

 ブルーファイアは、埋め立て地の木片や紙くずなどを酸で溶解させた上で発酵させる技術を保有。1日700トンの廃棄物を処理し、年間1900万ガロンのエタノールを製造する計画で、完成した燃料は少量のガソリンなどに混ぜて使われる見通しだ。

 米紙ロサンゼルス・タイムズによると、同社のクラン最高経営責任者(CEO)は09年末までにプラントを稼働できるとの見通しを示した。エタノール1ガロン当たりの製造コストは1ドルという。

 濃硫酸などで原料を溶かして発酵させる技術は日本でも、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と日揮が05年度まで実施したプロジェクトで実用化のめどをつけ、日揮は米国で事業化の準備を進めている。

 米国のエタノールは主にトウモロコシが原料となっているが、ブッシュ大統領が2017年までに350億ガロンのエタノール生産計画を打ち出したため、トウモロコシの国際相場が高騰。トウモロコシを主食とするメキシコなどで問題化している。セルロースを原料にしたエタノールが普及すれば、食料価格の引き下げにもつながる。(佐藤健二)

                   ◇

【米エネルギー省が選定したセルロース・エタノールメーカー】

社 名           所在地     助成額 原料

ブルーファイア・エタノール カリフォルニア 40  木くず、紙くずなど

アリコ           フロリダ    33  かんきつ類の皮や廃棄物

アベンゴア・バイオエナ   カンサス    76  小麦の茎など

ジー・バイオマス・オ

ブ・カンサス 

ブロイン・カンパニーズ   サウスダコタ  80  トウモロコシのしん

レンジ・フュエルス     コロラド    76  木くずなど 

アイオゲン・バイオ     バージニア   80  農作物の廃棄物など

リファイナリー    

※助成額の単位は100万ドル

バイオ燃料へ税制支援

2007年03月01日 公明新聞 田端氏

二酸化炭素削減へ藻場の育成を提案

 第6分科会で公明党の田端正広氏は、二酸化炭素(CO2)削減に向け、わが国のリーダーシップ発揮を求めるとともに、藻場を育成する関西新空港周辺の事例を挙げ、森林に比べ、短期間で育てられる藻場の再生を提案した。さらに、バイオマス燃料の普及に関して、税制による支援を主張した。

 松岡利勝農林水産相は、藻場育成を検討する考えを示すとともに、バイオ燃料普及に向けた税制措置について「諸外国にならい、日本としても遅れている税制などの条件整備を、早急に、しっかりとやっていきたい」と応じた。

国産バイオ燃料、600万キロリットルへ 農水省が年産目標

2007/02/28 FujiSankei Business i.

 ■稲わら、木材など活用

 松岡利勝農水相は27日、植物を原料とする国産バイオ燃料の年間生産量を現在の約30キロリットルから2030年度には600万キロリットル(原油換算360万キロリットル)に拡大する目標を安倍晋三首相に報告した。サトウキビに加え、稲わらや木材など従来は原料として利用されていなかった材料についてエタノール化の技術開発を進め、多様な作物からの効率生産を実現する。

 この目標は、1府6省で構成する「バイオマス・ニッポン総合戦略推進会議」が策定した工程表に基づき、農水省がまとめた。600万キロリットルはガソリンの年間消費量の約1割に相当する。工程表では、稲わらなどの利用推進のほか、狭い国土面積を考慮し、面積当たりの収穫量が多い原料作物の栽培などを課題として挙げている。

 また、現行法ではバイオエタノールはガソリンに3%までしか混合できないが、この基準の引き上げや、価格面でガソリンに対抗するための税制優遇なども必要とした。

 バイオ燃料は、地球温暖化防止やエネルギーの多様化に向け、政府一丸となった取り組みが求められている。しかし、自動車用燃料としての利用方法や税制措置などをめぐり、各省や民間業界の利害は一致していない。この日も甘利明経済産業相が「目標数値は農水省の試算であって(戦略会議の)合意内容には含まれない」と述べるなど、足並みの乱れが露呈している。

バイオ燃料の生産拡大がビール価格押し上げへ

2007/02/26 NIKKEI NeT

 オランダのビール大手ハイネケンは先週、バイオ燃料の生産拡大によって欧米農業市場に構造変化が起きており、その結果としてビールの原料価格が上がり、ビールの価格も長期的に上昇する可能性があるとの見通しを明らかにした。

 世界的な環境意識の高まりでバイオ燃料の原料となるトウモロコシ、大豆、菜種の需要が増え、農家はこうした作物の栽培を増やしている。このあおりでビールの原料である大麦は生産が減って価格はここ1年で大幅に上昇、欧州の麦芽用大麦の先物価格は1トン当たり230ユーロ(320ドル)を超え、昨年5月から85%上昇している。

 2006年の米国の大麦生産量は1億8005万ブッシェルと1936年以来の低水準となった。干ばつに見舞われたオーストラリアで生産量が3分の1に低下し、大雨の影響を受けた欧州で収穫が質、量ともに低下したことも大麦の価格を押し上げる要因となった。

 米農務省によれば、世界の大麦の需要は過去5年のうちの4年で供給を上回った。同省の穀物取引アナリスト、レビン・フレーク氏は「米国ではエタノール需要拡大を受け、大麦を栽培していた農地がトウモロコシ畑に変わっている。米国は1980年代に大麦の主要輸出国だったが、栽培面積は85年の1300万エーカーから400万エーカーに減少し、現在では純輸入国になってしまった」と話している。(英フィナンシャル・タイムズ特約)

インドネシア バイオ燃料産業育成に本腰 将来性見込み投資170億ドル超

2007/02/24 FujiSankei Business i.

 インドネシア政府が、石油代替エネルギーであるバイオ燃料産業育成に本腰を入れている。原料となるヤシなどの作付面積を大幅に増やし、エネルギーの安全保障を確保するとともに、雇用拡大を通し経済基盤を強化する。将来性を見込んだ国内外からの関連投資は170億ドルを超えた。

 フランス通信(AFP)によると、同国政府は2025年までにエネルギー需要の17%を再生可能エネルギーで供給することを目指している。06年にバイオ燃料開発の国家プロジェクトを立ち上げた。今後8年でヤシやキャッサバなどバイオ燃料の原料となる農作物の作付面積を500〜600万ヘクタール拡大する。

 狙いの1つは、エネルギーの安定確保。同国は石油や天然ガス資源が豊富だが、代替エネルギーで経済成長に伴うエネルギー需要拡大に備える。

 政府は経済政策としての側面からも同プロジェクトが有効と判断している。06年の失業率が10・2%と高いうえ、1日1・55ドル未満で生活する約4000万人の貧困層の所得向上につながるからだ。報道によると、バイオ燃料開発・国家チームのハムディ最高責任者は「失業率を09〜10年には6%に削減したい」と、プロジェクトの効果に期待をかけている。

 バイオ燃料の原料を生産する農場を拡大することによって400万人規模の雇用を創出する。地方でもただちに雇用を拡大できる利点がある。

 関連投資では、すでに現地財閥シナル・マスなどと中国海洋石油が栽培用地や生産工場に55億ドルを投じてバイオ燃料生産に参入する契約を締結。ブラジル国営石油のペトロブラス、マレーシア、韓国、シンガポール、日本など海外からの投資は124億ドルに達した。国内からの投資も約50億ドルに上る。

 インドネシアはバイオ燃料の国家戦略で成功を収めたブラジルの政策を研究しているという。

 バイオ燃料は、主要各国で温室効果ガス削減の動きが本格化していることや、世界最大の石油消費国である米国が石油から代替エネルギーへの切り替えを急ぐ方針を打ち出したことを受け、世界的に需要が高まりつつある。(坂本一之)

23年後にガソリンの1割を/政府、バイオ燃料生産で

2007/02/22 四国新聞

 政府は22日、サトウキビなどから製造するバイオエタノールなどバイオ燃料の国内生産量について、23年後の2030年までに、現在のガソリン使用量の1割に当たる年間600万キロリットルを達成するとした報告書をまとめた。

 同日午前、農水省や経済産業省など関係省庁の局長級による「バイオマス・ニッポン総合戦略推進会議」を開き、報告書を了承。早ければ今月中に安倍晋三首相に提出される。

 報告書は、バイオ燃料のガソリン混合率が3%までとなっている現行制度について、混合割合を高め利用量を増やすことや、税制優遇策など制度改正の必要性に言及。技術開発を進め、コメやサトウキビなどの穀物だけでなく、木や稲わらなども積極的に活用すべきだとした。

大阪府、バイオマス燃料の普及を推進

2007年02月19日 Response

 大阪府は2007年度から本格的に廃材、建材など再生可能な木材を原料にしたバイオマス燃料の普及を推進する。そのための予算として、07年度10億5500万円を計上する。

 大阪・堺市にバイオエタノール製造設備をつくり、あわせて府内にバイオエタノールガソリンを売るガソリンスタンドを約10カ所設置し、5年をかけて実証実験を行う。

 実証実験を行うバイオマス燃料は、建設廃木材を原料とするバイオエタノールを3%混合したガソリン「E3」で、まず公用車から使っていく方針だ。

 また、菜の花を活用したバイオディーゼルについても3000リットル製造することを計画しており、バスやトラック、公用車などに活用していく。

 欧米に比べて、日本はまだバイオマス燃料の普及が進んでいないのが実情で、大阪府は先陣を切って取り組み、この分野で日本をリードしていこうというわけだ。《山田清志》

燃料普及で提携協議 米とブラジル、ベネズエラの影響力そぐ

2007/02/10 FujiSankei Business i.

 米紙ワシントン・ポスト(電子版)は、米国とブラジルが、ガソリンに代わるエタノール燃料の普及に向けた提携の話し合いに入ったと報じた。中南米でのエタノール燃料の生産や消費を拡大させることで、世界3位の産油国ベネズエラの影響力をそぐ狙いという。米国は1年以内にブラジルとの間で具体策をとりまとめたい考えだ。

 報道によると、両国間の協議では固有のエタノール生産技術を交換して生産量を引き上げることをはじめ、中南米諸国にガソリンからエタノール燃料への切り替えを呼びかけることなどが話し合われる見通しだ。

 同紙は、オイルマネーを投じて南米反米左派勢力糾合を進めているベネズエラのチャベス政権の影響力を低下させることが米国政府の狙いと指摘している。

 米国が輸入するブラジル製エタノール燃料への1ガロン(1ガロン=約3・78リットル)当たり54セントの関税見直しが俎上に上る可能性もある。米国は昨年約17億ガロンを輸入。ブラジル製が大半を占めている。米国は主にトウモロコシを、ブラジルはサトウキビを原料としてエタノール燃料を生産しており、両国合計の生産量は世界シェア7割に上る。(滝川麻衣子)

バイオ燃料普及へ 経産省、制度検討会を設置

2007/02/05 FujiSankei Business i.

 経済産業省は、バイオ燃料の普及・拡大に向け、品質確保や脱税防止を目的とする制度の整備について話し合う検討会を設置した。同検討会は石油、自動車業界などの代表に加え、農水や環境をはじめとする関係各省も参加する。専門家で構成される作業部会で詳細を検討した後、一定の方向性を示して、5月までに報告書をまとめる。

 バイオ燃料の導入では、ガソリンとバイオエタノールを全国約4万8000カ所のガソリンスタンドで混合して供給することが想定されている。その場合、安定的な品質の確保やガソリン課税体制の確立、脱税対策などの整備が必要になる。

 望月晴文資源エネルギー庁長官は、「制度面での整備は新燃料導入の土台作りになる」と検討会の重要性を強調。普及促進に向け、ガソリン税の減免措置なども含め議論を進める考えを示した。

 政府の新国家エネルギー戦略は、2030年までに運輸部門の石油依存度を80%に引き下げる目標を掲げており、経産省は新燃料の普及拡大を後押しするため、制度整備を急ぐ方針。

フォード、E85とガソリンとのハイブリッドカーの実証実験を開始

2007年01月30日 Response

 フォード・モーター・カンパニーは、新型ハイブリッドの実証車両20台を今春より納入を開始すると発表した。

 フォードは、2007年ワシントンモーターショーで、今春に納入が予定されているフォード『エスケープ・ハイブリッドE85』を出展した。

 この車両は、石油の消費を節約できる内燃/電気ハイブリッドとフレックス・フューエルという2つの技術を融合した実証車両で、内燃機関にエタノール85%とガソリン15%の混合燃料の使用が可能な、世界初のハイブリッド車だ。

 エタノールは米国産トウモロコシやてんさいから生成されており、化石燃料の燃焼によるCO2を排出しない再生可能な燃料。従来のガソリンの代替燃料として使用することで、温室効果ガスの排出を低減できる。

 同社は、20台の実証車両用エスケープ・ハイブリッドE85を製造しており、今春から6州に納入を開始する。

 フォードのサスティナブル・モビリティ・テクノロジー研究およびハイブリッド車両プログラム担当のナンシー・ジョイアディレクターは「この革新的な研究プログラムは、米国の原油輸入依存度を減らす突破口を開き、世界的な気候変動問題への取り組みにも貢献するだろう。エスケープ・ハイブリッドE85と使用するエタノール燃料は、ともに米国製である」とコメントしている。《編集部》

中国:食糧用穀類を使い込むバイオ燃料

2007/01/23 (IPSJapan) JanJan

【北京IPS=アントアネタ・ベズロヴァ、12月20日】

 中国では、高度成長を支えるエネルギー需要が増大する中、バイオ燃料産業が活況を呈している。中国人起業家は、旧来の化学工程を最新化して穀類や石油をエネルギー源に転換し、大いに成長が期待される収益性の高い「グリーンビジネス」を生み出した。

 しかしながら穀類の価格高騰に対する懸念から、中国はバイオ燃料生産へのトウモロコシその他食用穀類の使用を取り締まり始めた。政府は、代替エネルギー源の増大を支援したいと考えながらも、国の食糧安全保障は環境課題より優先されるべきとしている。

 人民日報は、「中国で最優先されるべきは、13億の国民への食糧供給であり、その上でバイオ燃料の生産を支援する」と、今週農業省作物栽培局の高官Wang Xiaobingが表明した見解を報じた。

 中国は、輸入石油への増大する依存を軽減しようと、再生可能資源を原料とするエタノールやメタノールなどのバイオ燃料の生産を推進している。かつて輸出国であった中国は、今や少なくとも石油供給の43%を輸入している。

 バイオ燃料は、石油に代わる環境に優しいエネルギーと考えられている。中国の経済計画立案者は、エタノール燃料やバイオディーゼルなどのグリーンエネルギーの開発を国家5カ年経済計画の重要優先課題に掲げ、2020年までにグリーンエネルギーが交通燃料全体の15%を占めるようにしたいと考えている。

 しかしながら、増大するバイオ燃料需要が、食糧市場における最近の価格高騰と穀物の在庫不足の原因のひとつに挙げられるようになった。小麦の価格は、米国やオーストラリアなどの主要生産国における不作のため、この10年で最高値にあり、トウモロコシの価格は国内市場で最大20%高騰した。

 中国政府は、穀類価格の高騰に歯止めをかけ、市民が恐慌を来すようなことがないようにするため、小麦の備蓄の一部を放出、競売にかけ始めている。今年は再び大豊作が予想されているにもかかわらず、中国政府高官は、バイオ燃料生産用のトウモロコシの使用を制限せざるを得ないと考えている。

 人民日報は、「バイオ燃料については原則がある。人民の穀物消費に影響を与えることも、耕作地を巡って穀物と争うこともならない」との農業省開発計画立案局Yang Jian局長の発言を伝えている。

 政府当局は、中国国内のエタノール生産の原料はトウモロコシが4分の3を占めていると推定している。人民日報によれば、今年のエタノール燃料の生産量は130万トンと予測される。しかし専門家は、官民両セクターの生産量は500万トンに達するとしている。

 バイオ燃料需要の急増に伴い、既存の生産者は増産を進め、市場には新規参入者も加わった。2005年のエタノール燃料の生産量は100万トン足らずであったが、2010年までには1,000万トンにも達するだろうと地方紙は報道している。

 バイオ燃料は再生可能生物資源を原料とすることから、政府当局の懸念は、生産能力過剰の可能性が食用穀物と原料供給の不足を招きかねないことにある。この懸念は、エタノール生産の原料となっているトウモロコシの茎に関してすでに現実のものとなっている。中国のトウモロコシの茎の価格は、2005年から500%も上昇し、1トン当たり30米ドルにまで達している。

 トウモロコシについても同様の動向が見られている。中国の最高経済機関である国家発展改革委員会(NDRC)が今週発表した公報によれば、2005年の中国の生産加工におけるトウモロコシの消費高は2,300万トンを記録し、2001年から年16.5%の伸び率となったが、同期間中のトウモロコシの生産の伸び率はそれを下回り5%にとどまっている。

 穀類を巡る食品生産者と燃料生産者との敵対関係は中国に限ったものではないが、中国は膨大な人口を養うための1人当たり耕作面積が少ないため、問題はとりわけ深刻である。

 穀物生産量は今年、3年連続の豊作で、過去最高の4億9,000万トンに達すると期待されているが、中国当局の計画立案者は、農地が急速に減少しつつあることから近い将来穀物の供給に影響を及ぼしかねないと心配している。耕作面積は、1999年から2005年の間に8%減少したと言われている。

 Yang Jian局長は、「十分な耕作面積の確保と単位生産高の改善を図り、穀物生産重視の努力を緩めてはならない」と述べたと報じられている。

 専門家は、エタノール生産が今後もトウモロコシを原料にし続けるなら、中国は2008年までにトウモロコシの輸入を余儀なくされるだろうと警告している。政府は、国の安全保障のため食糧の自給を政策方針としていることから、穀類の輸入依存は慎重を期する問題である。

 「トウモロコシの加工が過度に増加したため、家畜飼料が不足し、畜産業の発展に影響を及ぼしている。主要産地の中にはトウモロコシの輸入すら検討し始めているところもある」とNDRCの公報は伝えている。NDRCは、各地の生産者に対し、ジャガイモやサトウモロコシなど非穀物農作物を原料にエタノールを生産する努力を強化するよう求めている。

 しかし中国の生産者は、引き続きトウモロコシを原料にエタノールの生産を続けるだろう。なぜなら、キャッサバやモロコシなどの非穀物系原料の大量植え付けは、適切な農業技術がなく、まだ大規模な実施には至っていないからだ。 翻訳/サマリー=坪沼悦子(Diplomatt)/IPS Japan浅霧勝浩

三菱自動車、FFVの2007年度中にブラジル市場に投入を発表

2007年01月22日 Response

 三菱自動車は、ガソリン、エタノール及びそれらの混合燃料で走行可能なフレキシブル・フューエル・ビークル(FFV)を、ブラジル現地の生産・販売会社 MMC Automotores do Brasil Ltda.(MMCB)とともに、ブラジル市場に2007年度中に投入することを決定したと発表した。

 同社は、環境対応技術の中核となる次世代電気自動車「MiEV(ミーブ、ミツビシ・イノベーティブ・エレクトリック・ビークル)」や次世代ディーゼルエンジンを開発中だが、南米を中心に需要が拡大しているFFVを開発・市場投入する方針だ。FFVの浸透を政府が進めている米国市場向けにも、2009年度中のFFV実用化を目指して開発中としている。

 FFVはサトウキビなどから抽出されるエタノールを燃料とするが、サトウキビが光合成によって大気中の二酸化炭素を吸収し、燃料として使用されても吸収した二酸化炭素を排出するため、二酸化炭素総量が変動しないため、環境に優しい自動車として今後の普及が見込まれている。

 今回のFFVシステムは、排出ガスの濃度を測定するセンサーを排気系に装備することにより、燃料中のエタノール比率を推定し、エタノール比率0〜100% の混合燃料への対応を可能としながら、動力性能や環境性能(燃費、排出ガス)の面でもガソリン車と同等レベルを実現している。

 FFVはGM、フォードなどが市場投入しているが、日系自動車メーカーでは、トヨタ自動車とホンダが市場投入する計画を打ち出している。《編集部》

トウモロコシ上場来最高値 東京市場で約11年ぶり更新

2007年01月17日 中国新聞ニュース

 17日の東京穀物商品取引所のトウモロコシ先物相場は、中国など新興国で増大する飼料需要や、世界的なバイオエタノール燃料向けの需要を背景に買いが膨らみ、約11年ぶりに上場来高値を更新した。来年1月きりが1トン=2万6990円まで上昇し、1996年4月の過去最高値を約11年ぶりに上回った。

 米農務省が前週末に発表した米国のトウモロコシの生産量と在庫量の見通しが、市場予想を下回り「世界的な供給不足の懸念が強まった」(市場関係者)ことも値上がりを加速。原油価格の下落を嫌い、投資資金を原油からトウモロコシに移す動きも指摘された。

エタノールブームでトウモロコシ高騰、養豚農家が悲鳴

2007/01/16 FujiSankei Business i.

 代替燃料として注目を集めているエタノールの増産ブームに養豚農家が悲鳴を上げている。豚の飼料であるトウモロコシがエタノールの原料として使われるため価格が高騰、採算が合わなくなってきたからだ。

 ジーン・ゴーリーさんは3人の兄弟とともにアイオワ州で年間6万頭の豚を飼育している。だが、トウモロコシの価格上昇によりこの1年間の飼育費が26%増えたという。

 アイオワ州の豚、エタノールの生産量はともに国内最大。建設中の設備が完成すれば同州のエタノールの年間産量は現在の2倍以上の114億ガロン(431億5000万リットル)に増大する。

 さらに今年に入って穀物大手のカーギルは4工場を新設、年間1億ドルの増産を目指すことを明らかにした。

 これに加え、37州の知事で構成するエタノール振興知事協会は2010年までに年間120億ガロンのエタノールを企業に消費させることを議会に求めた。

 ゴーリーさんの農場から80キロ圏内に過去3年間に7つのエタノール工場が建設され、なお8工場が建設中だという。

 アイオワ州の養豚業界は過去3年間、毎月、利益を計上してきた。だが、業界アナリストは「トウモロコシ価格の高騰でこの冬でそれは終わるだろう」とみている。

 アイオワ州立大のジョン・ローレンス経済学教授は「養豚業界が行き詰まれば、豚肉の供給が細り、価格も上って消費者に跳ね返るだろう」と懸念している。(ワシントン フィリップ・ブレイシャー)(USA TODAY)

建設廃材使いバイオ燃料 世界初の施設、堺に完成

2007年01月16日 中国新聞ニュース

 建設廃材から地球温暖化対策に役立つバイオエタノールを製造する世界初の工場が堺市に完成、16日開所式が開かれた。環境省は来年度からこのエタノールをガソリンに3%混ぜた「E3」燃料を関東や関西のガソリンスタンドに供給、国内への普及を図る計画だ。

 工場は同省の補助を受けて大成建設や丸紅などが出資するバイオエタノール・ジャパン・関西(大阪市)が建設。

 バイオエタノール原料はサトウキビやトウモロコシなどがほとんどで、木材からの製造は難しいとされてきた。だが、米国の特許技術を用いた遺伝子組み換え微生物を用いることで問題を克服した。

 製造コストはガソリンの原価の1リットル50円程度には及ばないが、「都市に眠っている廃材という資源を活用するため、農作物から作るよりは安い」(同社)という。

木くずからエタノール バイオエタノール・ジャパン・関西、世界初の商業生産

2007/01/15 FujiSankei Business i.

 大手ゼネコンや商社など5社が共同設立したバイオエタノール・ジャパン・関西(大阪府堺市)は16日から、廃木材などを原料に、燃料用エタノールの生産に乗り出す。木質系バイオエタノールの商業生産は、世界で初めてという。

 生物資源からつくりだすバイオエタノールは、温室効果ガスである二酸化炭素(CO2)の排出量を抑制できることから、世界的に注目が集まっている。日本でも、政府が推進する「バイオマス・ニッポン総合戦略」のなかで、自動車燃料などへのエタノール利用を重点施策に位置づけており、今後、着実に普及するものとみられている。

 こうした将来性をにらみ、大成建設、大栄環境、丸紅、サッポロビール、東京ボード工業によって「バイオエタノール・ジャパン・関西」が設立され、堺市でエタノール製造プラントの建設に入っていた。

 同社では建設廃木材、木くず、剪定(せんてい)枝などを原料にして、ガソリンに混合する燃料用エタノールを初年度約1400キロリットル製造する。これを手始めに生産能力の増強を図り、将来的には年間約4000キロリットルを製造する計画だ。

 日本では、ガソリンに3%のエタノールを混ぜて利用し、化石燃料の使用量を減らす方針だが、今回、製造されるエタノールはこの実証実験向けに供給される。事業も環境省の「地球温暖化対策ビジネスモデルインキュベーター事業」に採択され、同省の助成を受けてプラントを建設した。このため16日にバイオエタノール・ジャパン・関西で行われる開所式には、若林正俊環境相も出席する予定。

 燃料用エタノールが普及することで、CO2の排出削減に結びつくとともに、建物の解体によって生じる廃木材のリサイクル率が向上する効果もあり、循環型社会の形成に寄与することになりそうだ。

                  ◇

【用語解説】バイオエタノール

 トウモロコシやサトウキビ、廃木材などバイオマス資源を使って作り出したエチルアルコールのこと。原料を細かく砕き、発酵させてアルコールを抽出する。一般的には原料が確保しやすいトウモロコシなどが用いられる。

 バイオエタノールは、植物資源を使っているため燃料に混ぜて燃焼しても、この分は二酸化炭素を排出したことにはならない。地球温暖化防止に向け、自動車燃料として急速に普及すると見込まれ、日本では2010年度に50万キロリットル(原油換算)の導入を目指している。

バイオ燃料高騰 米トウモロコシ危機 生産量の半分がエタノールに

2007/01/09 FujiSankei Business i.

 ブルームバーグによると、米環境保護団体アースポリシー研究所は、米国でのエタノール生産の急拡大を受けて2008年の米国産トウモロコシ供給の半分をエタノール向け需要が占めるとの試算をまとめた。

 それによると、米国のエタノールプラントのトウモロコシ需要は08年の収穫高の約5割に相当する約1億3900万トン。エタノール向け消費は15年までに供給の約23%に達するとしていた米農務省の需要予測を大幅に上回る規模となる。

 再生燃料協会によると、米国のエタノールプラントは110カ所で年間生産能力は53億ガロン。過去半年で生産能力は12%も拡大している。また、新設や拡張予定のプラントが79カ所あり生産能力は今後2年で60億ガロン拡大する見通しだ。

 ブルームバーグによると、同研究所のブラウン所長は「穀物価格は原油価格と同様の水準まで上昇するだろう」と今後の価格上昇を予想。「貧しい国々の都市部では食料をめぐって暴動が発生する可能性もある」と価格高騰によって食糧問題が深刻化するとの見方を示した。

 同研究所は米政府がエタノールプラントの新設を一時的に停止することやエタノールの原料をトウモロコシから他の植物に移行させるなど、エタノール向けのトウモロコシ需要の縮減を提案している。

 シカゴ商品取引所(CBOT)のトウモロコシ価格は1ブッシェル当たり3・7ドル前後の高値で推移。干魃(かんばつ)やエタノール需要の拡大を背景に昨年1年間では81%も値上がりした。

ビール副産物でバイオ燃料 キリン、環境対応

2006/12/29 The Sankei Shimbun Web site

 キリンビールは28日、ビール製造の際に排出される大麦の殻などの副産物を活用し、来年中にバイオエタノールを抽出する実験に着手する計画を明らかにした。ビール副産物のバイオエタノール化実験は国内で初めて。地球温暖化を背景に環境に優しい燃料としてバイオエタノールは世界的に注目されている。政府もバイオエタノールの国内生産の強化に乗り出しており、キリンでは食品副産物を活用してバイオエタノールの実用化を目指す。食品業界で今後、同様の動きが活発化しそうだ。

 ビールは発芽した大麦を主原料としているが、製造の際には大麦の殻や発芽の際に発生する根などが排出される。同社の場合、こうした副産物は全国の11工場から年間15万トン以上が排出されているという。

 これまで進めてきた家畜の飼料やキノコ栽培の苗床、土壌改良材などへの活用に加え、資源の有効活用や環境問題への対応を一段と進める必要があると判断し、今後は付加価値がより高いバイオエタノールを抽出する利用法を検討する。来年中に研究所や工場、生産本部など社内横断的に人材を集めた研究体制を構築し、実験を始める。

 実用化に向けて大きな課題となるのは採算性だ。キリンでは今回の実験を通じ、ビールなどのアルコール類を生産する技術を活用し、より効率的なバイオエタノールの抽出・精製方法を探ることを目指している。

 同社では「ガソリン価格が高止まりする状態が今後も続けば、採算をクリアできる可能性はある」と強調しており、新規事業の一環として実用化を進める方針だ。

 温暖化ガスの排出削減を定めた京都議定書を達成するため、政府が昨年4月に策定した議定書目標達成計画では平成22年度までに原油50万キロリットル相当をバイオエタノールに置き換える方針を定めている。

 このため、石油連盟は近くブラジルからエタノールを輸入する新会社を設立し、来年4月以降はエタノールを「ETBE」という添加剤に加工して混入したハイオクガソリンを首都圏から順次販売する計画だ。

 ただ、バイオエタノールを大規模に輸出できる国は世界中でブラジルしかなく、原料のサトウキビが世界的に高騰するなど、供給不安が指摘されている。このため、農水省では国内のガソリン消費量の1割にあたる600万キロリットルを国内で製造できる生産体制の整備を将来目標に掲げるなど、国内生産を強化する動きが強まっている。

 すでに沖縄では、サトウキビから抽出したバイオエタノールをガソリンに3%混合した燃料での走行実験が進められているが、今後、本格的にエタノールの国内生産が進みそうだ。

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【用語解説】バイオエタノール

 サトウキビやトウモロコシ、コメ、小麦など植物に含まれる糖を発酵させたアルコールの一種。温暖化ガスの排出削減を義務づけた京都議定書では、植物由来の燃料から生じる二酸化炭素(CO2)は温暖化ガス排出には加算されない決まりになっており、環境に優しい石油代替燃料として世界的に普及が進みつつある。

効果に疑問、フランスのバイオ燃料推進政策

2006/11/10 (IPSJapan) JanJan

【パリIPS=ジュリオ・ゴドイ 、10月19日】

 今月バイオ燃料の給油所を開業させたフランスは、クリーンな運転の取り組みを本格化させた。しかし開始間もないこの時期に、環境活動家はこのバイオ燃料の利用に関する環境収支はマイナスになると言っている。

 新しいバイオ燃料E85は、ガソリンが1リットル1.6ユーロのところ0.8ユーロと低価格。大気の温度を上昇させて危険な気候変動をもたらすとされる二酸化炭素のような温室効果ガスの排出を削減するために利用される。

 E85(ガソリンにエタノールを85%混ぜた燃料:IPSJ)は、主としてビーツや穀草類を原料とし、化石燃料の割合は15%なので、通常のガソリンよりも二酸化炭素の排出が70%少ないと政府筋は発表している。

 10月9日にパリでE85給油スタンドを開業したことは、2015年までにバイオ燃料の消費を少なくとも10%拡大させようという政府計画の一環。

 ブレトン経済財政産業相はE85給油所の開所式において「2009年までに、フランス全国に500から600ヶ所のバイオ燃料給油所を稼動させる」と宣言。「フランスの自動車産業は、2年間のうちにフランスで販売される車両の半数でE85の利用を可能にすると約束している」と述べた。

 ブレトン大臣は、計画の目的は温室効果ガスの排出削減であると同時に、エネルギーの独立を進めるものとし、「産油国に対して、フランスは化石燃料に代わるエネルギーを有することを示したい」と述べた。

 政府発表によると、フランスの温室効果ガス排出量は二酸化炭素相当量(CO2-eq)で年平均5億2,500万トン。二酸化炭素相当量とは、二酸化炭素の温暖化効果を1とする単位。たとえばメタンは温室効果が二酸化炭素の21倍なので二酸化炭素相当量は21。

 京都議定書の取り決めで、フランスは排出量を年間5億トンにまで削減する必要がある。

 2004年に温室効果に関する省庁間委員会(MIES)が発表した報告書によれば、フランスでは運輸と非効率な暖房が温室効果ガスの大きな排出源となっている。総排出量の26%は運輸が占め、そのうち57%は個人の乗用車に由来するものとなっている。さらに、運輸関係の排出は1990より26%増加し、2002年からはほぼ横ばいとなっている。

 今回の動きは、これに歯止めをかけようというもの。シラク大統領は10月5日農家代表との会合の席で、「穀物の実だけではなく、全体を利用する第二世代のバイオ燃料導入」を宣言した。

 大統領は「環境に責任を持ち、経済的にも強い農業」を基盤とする「欧州グリーンケミカル産業」について語り、「新技術の開発は、農業の新しい世界を切り開く」と宣言した。

 フランス農業従事者はこれを歓迎。全国農業連盟のミシェル・ルメタユ(Michel Lemetayer)代表は「フランス農業に新しい有望な見通しを開く」とする声明を発表した。

 しかし、このような奨励策を前に専門家や環境活動家の中には、提示されたグリーン指数が誤解を招くと警告するものがいる。ビーツや穀草類の集約的栽培は、それ自体環境負荷をもたらすと専門家は指摘する。

 「いわゆるバイオ燃料事業の環境収支はマイナスになる。なぜなら原料となる穀草類の生産で大量の殺虫剤などの有毒化学物質、遺伝子組み換え技術が利用されるからだ」とフランス環境協会連盟(French Federation of Environmental Associations)は声明を出している。

 1990年代シラク大統領に仕えたルパージュ元環境大臣はIPSの取材に応じ「エタノール1リットルの生産に石油1リットルの燃焼が必要」と指摘、「政府のバイオ燃料プログラムは農業保護にはなるが、環境保護にはならない」と語った。翻訳=角田美波(Diplomatt)/IPS Japan浅霧勝浩

バイオエタノール 道内、沖縄を拠点化 シェア1割目標 首相指示

2006/11/02 北海道新聞

 安倍晋三首相は一日、松岡利勝農水相と首相官邸で会談し、農作物などを原料とするガソリン代替燃料「バイオエタノール」の普及に向け、北海道と沖縄県を実用化拠点とし、国内で消費される自動車燃料の一割をバイオエタノールで賄うことを目標に、実施計画づくりを進めるよう指示した。

 首相は同日夕、記者団に「地球環境、地域の活性化や雇用、農業の活力からいっても、バイオエタノールの生産を上げ、使用量のパーセンテージ(割合)を上げていくべく、政府として取り組んでいきたい」と述べ、北海道や沖縄経済の活性化にもつなげたい意向を示した。

 松岡氏は北海道と沖縄を選んだ理由について「雇用や所得で他の地域に比べて問題があるので、大きなエネルギー産業が形成されれば大きな雇用効果、所得効果をもたらす」と説明。政府は近く省庁横断の推進組織を発足させ、二○○六年度内にも実施計画をまとめる方針だ。

 具体的には、道内で栽培されるビートや小麦を使った製造施設への支援や混合燃料使用の義務付け、税の減免による低価格化などを検討。現行法で3%までと定めているガソリンへの混合率引き上げも視野に、将来は現在三十キロリットル程度のバイオエタノールの生産を六百万キロリットルまで大幅に引き上げたい考えだ。

首相、バイオ燃料増産体制を指示

2006/11/01 The Sankei Shimbun

 安倍晋三首相は1日、植物由来のバイオ燃料「バイオエタノール」の利用を加速するため、松岡利勝農林水産相に対し、生産拡大に必要な態勢整備を指示した。国内の年間のガソリン消費量の1割に相当する600万キロリットルの生産を目標に、北海道と沖縄県を中心拠点として増産に取り組ませる。バイオ燃料の普及で地球温暖化対策とエネルギー増産の課題に対応するとともに、新しい産業を育成し雇用創出を図る考えだ。

 農水省など関係省庁は今後、バイオ燃料の生産や普及に取り組む企業などへの税制面での優遇など、普及拡大に向けた条件整備を急ぐ。

 農水省の資料によれば、ブラジルは1670万キロリットル(2005年)、米国はそれに次ぐ1500万キロリットルのバイオ燃料を生産し、自動車などへの利用が進んでいる。しかし、日本の生産量は30キロリットルと「実験室段階」(松岡農水相)に過ぎない。このため、農水省は平成19年度予算の概算要求で106億円を計上し、23年度に年間5万キロリットル以上の生産を目標としていた。

 首相はバイオエタノール利用の加速化を所信表明演説で取り上げているほか、1日夜も記者団に対し「地球環境、地域の活性化や雇用などの観点からぜひ生産(量)を上げたい」と強調した。このため、農水省の目標年次が前倒しされる可能性もある。

JA北海道、十勝にバイオエタノール工場 ビートや麦で

2006/10/31 The Sankei Shimbun 東京朝刊から

 JA北海道中央会(宮田勇会長)は30日、北海道十勝管内清水町に、地元産のビート(てん菜)や麦、米などから燃料を製造するバイオエタノール実証プラントを建設すると発表した。年間生産能力は1万5000キロリットルと国内では最大規模となる見通し。平成19年度にも着工、19年度の稼働を目指す。製造したエタノールはガソリンに混合して自動車燃料として販売することを検討している。

 バイオエタノール利用は、地球温暖化の原因となる二酸化炭素の排出抑制につながると期待され、研究が進められている。

バイオエタノール実証プラント 清水設置が最有力

2006年10月30日 TOKACHI MAINICHI NEWSPAPER

JAグループ北海道

年1万5千キロリットル製造

 JAグループ北海道が十勝への設置を検討しているバイオエタノールの実証プラントについて、設置場所は清水町のホクレン清水製糖工場が最有力となっている。関係者によると、最終的な製造規模は年間1万5000キロリットル程度で、プラント電力の一部は併設するバイオガスプラントで発生する電力も使用する計画。30日午後に札幌市内で開く会合で設置場所や規模などを固める見通し。(高田敦史)

 4月に閣議決定された京都議定書目標達成計画では、2010年までに輸送部門でバイオ燃料50万キロリットル(エタノール3%混合ガソリン換算で国内ガソリンの3分の1相当)の導入に向けた強化策を決定。

 農水省も、来年度から5年後に単年度で5万キロリットルのバイオ燃料を国内で製造する計画で概算要求を行っている。この計画では、年間1.5万キロリットルのエタノール製造プラントを国内3カ所に建設して4万5000キロリットル分を確保。残り5000キロリットル分を植物油から製造するバイオディーゼル燃料(BDF)で補完する。

 全国3カ所を想定しているエタノールプラントは、十勝以外では本州と九州が有力。十勝については、原料となるビートや規格外小麦が豊富な上、十勝圏振興機構(とかち財団、有塚利宣理事長)などが数年前から行ってきた各種実証試験の技術的な積み重ねがあったため候補地となった。

 これまでの検討は農業団体中心に行われてきたが、事業実施に当たっては管内3製糖業者(ホクレン、日本甜菜製糖、北海道糖業)が何らかの形で連携するとみられる。また、エタノール1.5万キロで約50万台分のE3が製造できるが、農協系のガソリンスタンドだけでの普及は難しく、石油関連の商社などとの連携も重要になる。

 十勝の計画では温室効果ガスの排出抑制策として、プラントに必要な電力自体も極力化石燃料に依存しないよう、エタノール製造工程で生じた有機物を原料とするバイオガスプラントも建設する方針。

 着工は来年度の予定だが、販路や採算性の見通し、プラント用の水利権の確保など課題も残されている。

バイオ燃料、拠点は道内 豊富な農作物が原料 政府、年内に推進組織

2006/10/29 北海道新聞

 農作物などを原料とするガソリン代替燃料「バイオエタノール」の普及に向け、政府は二十八日までに、北海道と沖縄県を実用化の一大拠点とする構想づくりに着手した。道内で栽培されるビートや小麦を使ったバイオエタノール製造施設への支援や、ガソリンとの混合燃料の使用義務付けなどの案が浮上しており、二○○六年度内にも実施計画をまとめる。

 安倍晋三首相は九月二十九日の所信表明演説で、地球温暖化対策の一環として「自動車燃料にバイオエタノールを利用するなど、バイオマス(生物由来資源)の利用を加速化する」と表明。首相サイドと農水省が近く協議し、十一月にも政府内に推進組織を設置、拠点化に向けた計画作りを始める。実施可能な政策については、○七年度から取り組む考えだ。

 道内は原料となるビートや小麦が豊富なうえに、自然にも恵まれていることから、環境対策の取り組みのアピールに最適と判断。製造と利用の両面から支援して、「環境対策、農業振興に加え、景気回復が遅れ気味の道内の産業創出につなげたい」(首相周辺)と“一石三鳥”の効果を狙っている。

 農水省の試算では、バイオエタノールをガソリンに3%混合した燃料が全道に普及すれば、製造工場やガソリンスタンドへの波及効果で千二百人の新規雇用と二百億円の市場拡大を生み出すと想定している。

 政府は道内のほか、サトウキビ栽培が盛んな沖縄でも実用化を進め、取り組みが軌道に乗れば、全国に広げていきたい考え。構想実現には、製造施設誘致や混合燃料義務化などをめぐって、民間企業や道民の理解が課題になる。

「キビ燃料」民間で給油

2006年10月28日 沖縄タイムス

 【宮古島】サトウキビの糖蜜を利用した新燃料バイオエタノールとガソリンの混合液「E3」を民間の給油所から給油する全国初の実証実験が27日、宮古島市上野のJAおきなわ上野給油所で始まった。初日は、県宮古支庁や宮古島市、実験に協力するJAの関係者が公用車数台に給油した。

 実験を進めるりゅうせきの奥島憲二バイオエタノール・プロジェクト推進室長は開始式で、2007年度はさらに市内3―4給油所で給油を始め、実験車の台数を約1000台に増やす計画を説明。「普及を想定して、製造から販売まで進めていきたい」と語った。

 上野給油所では主に宮古島市の城辺、上野、下地の各庁舎にある公用車が利用する。使用するE3は月量約6000リットルを見込んでいる。

バイオエタノールで走ろう 試験の参加車両募集 帯広

2006/10/24 北海道新聞

 【帯広】財団法人十勝圏振興機構(帯広)は十二月から来年二月まで、十勝産小麦から製造したバイオエタノールを3%混合したガソリン(E3)を使って自動車走行試験を行うことを決め、試験に参加するモニターを募集している。ガソリンより安価で提供する予定で、参加者は給油量などを記録し、データは今後の研究に活用される。

 走行試験は昨年度に続き二回目。昨年度は道外で製造されたバイオエタノールを使い、帯広市などの公用車が参加した。本年度は、同財団が地元産小麦を原料に製造したバイオエタノールを使用。さらに、モニター十八台のうち、九台分を初めて一般募集する。

 参加車両は試験期間中、「E3」だけを利用し、エンジンの始動状況や加速状況のほか、給油量や走行距離を記録する。応募するにあたり居住地などの制限はないが、給油できるのは帯広市内のガソリンスタンド一カ所(西二○南二)のみ。

 希望者は郵便はがきに住所、氏名、電話番号などを記入し、今月二十五日から三十一日までに〒080・2462 帯広市西二二北二の二三の九、十勝圏振興機構 E3モニター募集係に郵送する。問い合わせは同財団(電)0155・38・8850へ。

北海道農協、エタノール混合ガソリン販売へ

2006/10/17 NIKKEI NeT

 北海道の農業協同組合(JA)グループは、てん菜や小麦、米を原料につくる自動車用燃料「バイオエタノール」とガソリンの混合燃料を2008年度をメドに北海道内の系列スタンドで販売を始める。数十億円を投資してエタノール工場を十勝に、ガソリン混合燃料の工場を苫小牧と釧路に建設する。石油元売りが07年度から販売するエタノール入りガソリンとは別方式で、エタノール燃料の利用では異なる方式が併存することになる。

 道農協グループがエタノール生産を主導する。価格が割安に抑えられている、てん菜や規格外小麦・米の販売先を多様化するのが狙い。原料比率は変えられるため、生産量が年によって変化する農産物の安定需要確保に寄与するとみている。

実用化目指し動き活発/バイオエタノール

2006年10月17日 asahi.com

 ■JA北海道中央会など

  ―― 実験プラント計画

 ガソリンの代替燃料として注目されるアルコール燃料「バイオエタノール」の実用化に向け、道内で実証実験などのプロジェクトが相次いで立ち上がっている。JA北海道中央会が実証プラントの建設計画を明らかにしたほか、北海道電力も研究に着手する。バイオエタノールは植物を原料とするため、大規模農業地帯である道内は有力な供給地になる可能性があるとして注目されている。  (報道部・座小田英史)

 バイオエタノールはビートやサトウキビ、トウモロコシなどからつくられるアルコール燃料。ガソリンに混ぜて自動車の燃料として使う。ブラジルや米国などで実用化されており、国内でも帯広、沖縄などで先行実験が行われている。

 JA北海道中央会など関連5団体は先月、来年度事業として、十勝支庁管内にバイオエタノールを製造する実証実験プラントを建設すると表明した。

 宮田勇会長は「施設は大規模なものになる。苫小牧、釧路の貯油所に近く、道外にも産出できる」と、事業化に意欲をみせる。

 実証プラントは国の補助を受けて建設する考えだ。農林水産省では来年度予算の概算要求で、バイオエタノール関連で、106億円を計上。国内3カ所をモデル地区に指定し、85億円をかけプラントをつくるとしている。JA北海道は、モデル地区の一つに選定されるのを目指し、農林水産省などと調整している。

 モデル地区のうち1カ所の施設は数十億の規模で、5年後に年間5万キロリットルの産出を目指す。バイオエタノール混合燃料の給油所までも含めた構想で、施設には5割の補助が出る。

 JA北海道は「生産には規格外の小麦やコーンを使うが、大量に農産物を生産できる北海道は有力な候補地」という。

 北電は11月1日から、北電総合研究所に5人のメンバーからなる専門グループを立ち上げる。2年間をめどに、国内外の利用、製造に関する技術調査や、社有車の燃料として利用調査などを行う。同社は「JAなどから呼びかけがあるなら、喜んで協力する」と共闘も視野に入れている。

 道内のバイオエタノールの研究は、農水省や北海道開発局が帯広市の「とかち財団」と共同で、公用車の走行実験などを行ってきた。試算によると道内産の製造原価は1リットルあたり98円程度。輸出能力があるブラジル産と比べ割高とされ、価格面での課題がある。

迫る値上げの影 京菓子直撃

2006年10月14日 Kyoto Shimbun

原油高、砂糖価格が2割上昇

 長期的な原油高を背景に、ガソリンの代替燃料の原料にサトウキビが使われるようになって世界規模で砂糖の価格が上昇し、その余波が京の和菓子店や砂糖卸業者を直撃している。この1年で仕入れ値は2割以上上がり、和菓子職人は「商品に転嫁はできず、相場が落ち着くまでやりくりするしかない」と耐えている状態だ。

 近年の原油高に伴い、世界最大のサトウキビ生産国ブラジルで、サトウキビがバイオエタノール燃料の原料に回されて品薄になるなどし、世界的に砂糖の原料価格が高騰。砂糖原料の6割近くを輸入に頼る日本でも製糖会社の値上げがこの1年で相次いだ。京都市では、1キロ120円ほどだった卸値が今年に入り150−160円に達した。

 京都市東山区の和菓子店「七條甘春堂」では、毎月約3トンの砂糖を使用する。木ノ下亮社長(54)は「砂糖は和菓子材料の基本で、防腐剤の役割もある。高いからと言って甘さを控えめにするわけにもいかない」と悩みを明かし、「原油高で箱や輸送代も高くなり苦しい時期だが、何とか現状の販売価格を維持しなければ」と話す。ほかの老舗店主たちも「今は乗り切れても今後が心配だ」と漏らす。

 市内のスーパーでは砂糖の特売をやめる店も出ている。卸業者も苦しく、下京区の「中央砂糖」の阿部勲社長(50)は「今年は毎週のようにメーカー価格が上がった。メーカーと取引先に挟まれ弱い立場だが、こちらも値上げ時期を遅らせるなどできるだけ努力している」と話す。ただ、ここに来て原油高にも歯止めがかかり、「年末に向けて砂糖も値を下げ始めるのでは」と沈静化に期待をのぞかせている。

南米:成長著しいバイオ燃料市場に懸念の声も

2006/10/03 (IPSJapan)

【リオデジャネイロIPS=マリオ・オサバ、9月22日】

 エタノールとバイオディーゼルを合わせたバイオ燃料の市場規模が年々拡大の一途を辿るなか、環境保護論者は、原料であるサトウキビ単作地帯の急激な増加による「原始林の減少」や「生物多様性の危機」に警鐘を鳴らしている。

 気候変動の問題に取り組んでいるブラジルのNGO団体、Vitae CivilisのD.ロドリゲス氏は「サトウキビの単作化は環境に良くない。アルコール生産地のサンパウロ南東部では、過度の土地利用や焼畑(サトウキビ畑は収穫前に蛇や虫を退治するため焼畑される:IPSJ)による周辺地域の大気汚染が問題になっている」と語る。

 ブラジル政府はバイオディーゼルの生産拡大を目指し、現在すべてのディーゼル燃料に2%のバイオディーゼルを混合するよう義務付ける法律を成立させている。そして2013年までには5%のバイオディーゼルの混合を義務付ける予定である。さらに同国では、国営石油会社のペトロブラス社が開発したディーゼル燃料の輸入を節約できる新バイオ燃料『H-BIO』技術を導入し、今後もこれらの事業を強化していく構えである。

 さらにロドリゲス氏は「このような事業拡大の犠牲になるのは大抵、小規模零細農業者である。従って、ペトロブラス社は社会的な責任を果たすべきである。環境基準を守ることを促すため、ヨーロッパの輸入業者からの『圧力』があれば被害を未然に防ぐこともできるだろう」と述べた。

 一方(バイオ燃料の普及に積極的に乗り出した)コロンビアは、パーム油利用のバイオディーゼルの製造が成功すれば、米国・ブラジルに次いで第3のバイオ燃料生産国になると見られている。同国では、エタノール混合ガソリンについてエタノールの割合を法律に明記し(2009年で10%、以降15〜20年間で25%にまで増加する予定)、ブラジルを手本としたバイオ燃料の開発促進を図っている。

 ラテンアメリカでバイオ燃料生産に大きな期待が寄せられるなか、専門家の間で懸念が広がりつつある環境問題について報告する。(原文へ) 翻訳/サマリー=松本宏美(Diplomatt)/IPS Japan浅霧勝浩

モテモテ代替燃料 バイオエタノール

2006年10月01日 東京新聞

『食糧も燃料も担う』

 ガソリン価格の高騰、地球温暖化の解決策として注目され始めた代替燃料「バイオエタノール」。安倍晋三首相の所信表明演説でもその利用促進が明言されるほどのモテモテぶりだ。もし新たな燃料の主役になれば、農家は食と産業を担うスター選手に。中東依存も一気に減る。演説通りいくのか。 (山川剛史)

 北海道十勝平野。雄大な農地が広がり、小麦、ビート(テンサイ)の日本最大の生産地帯だ。ここが国産バイオエタノールの“発祥の地”になりそうだ。

 帯広駅から車で十五分ほどの「とかち財団」産業振興センターでは、これまで牛などのえさになっていた規格外小麦などを使い、バイオエタノールを事業化する可能性を探っている。

 「十勝では年間約二万七千トンの規格外小麦が確保でき、現在の技術でも一リットル約九十八円で生産できる。やや課題が残るものの、ビートも大量に生産している。すでに3%を混合したガソリン(E3ガソリン)で車を走らせたが、通常ガソリンとの差は感じない。寒い土地でも、ごく普通に使えることは実証済みです」

 同センターの金森克仁事務局長は、これまでの研究成果を披露する。

 農林水産省は今後五年間で全国数カ所に計五万キロリットルのプラントを整備する計画で、原料が豊かな十勝はその最有力候補だ。

■北海道や新潟 山形、沖縄も

 こうした機運を、帯広市の隣町・芽室町でビートなどを栽培する野本忠治さん(66)は「無限に化石燃料を使う時代は終わった。農家が食糧も産業も担うことになるなんて、なかなか夢のあるいい話だ。もちろん買い取り価格は気になるところだけどね」と歓迎する。

 原料は小麦やビート以外にもいろいろある。

 全国農業協同組合連合会(全農)はバイオエタノール用に新潟県見附市などで多収穫品種のインディカ米の試験栽培を始め、まもなく初めての収穫を迎える。

 同市の菊池武昭さん(58)は「米どころの新潟でも、減反に次ぐ減反でつらい思いをしてきた。バイオエタノールは地球も田んぼも救ってくれるかもしれない。農機は普通のがそのまま使えるし、栽培は休耕田も使える。挑戦したいという人はいくらでもいるよ」と強調する。

 このほか山形県新庄市はソルガム(コーリャン)、沖縄・伊江島、宮古島ではアサヒビールなどが主体となってサトウキビ、堺市では建築廃材、岡山県真庭市では木材の端材と多様な試みを続ける。自動車メーカーのホンダまでもが稲わらなどからバイオエタノールを製造する技術を開発、量産化の道を探る。

 燃料の使い手となる自動車は、「どのメーカー車もほとんど即使用が可能」(ホンダ)な状態。経済産業省は来年夏から石油業界と協力し、首都圏のスタンド約五十カ所でバイオエタノールを混ぜたガソリンの試験販売に乗り出す。

 どの原料が主流となるかはまだ見えないが、生産、供給、利用の三者とも代替燃料への動きを強め、“夜明け前”の状況にあることだけは確かだ。

 日本でこれだけバイオエタノールがもてはやされるのは、何といっても日本が一九九七年に議長国としてまとめた地球温暖化対策のための国際的取り決め「京都議定書」の存在が大きい。二〇〇八年から五年間で、日本はCO2(二酸化炭素)など温室効果ガスを九〇年比で6%削減する目標を持つ。その対策の一環で政府はバイオ燃料五十万キロリットルの導入目標を決定している。

■飼料業者と奪い合いも

 安倍首相は二十九日の演説で「議定書目標達成計画を着実に推進」「自動車燃料にエタノールを利用するなどバイオマスの利用を加速化する」と宣言した。準備は万全なのだろうか。

 まずは原料の調達。

 国内で年間に販売されるガソリンの量は約六千三百万キロリットル。すべてE3ガソリンにすると、百八十九万キロリットルのバイオエタノールが必要という計算になる。

 だが、農水省の試算では「いろいろな原料を合わせると約十万キロリットル分は原料を生産する潜在能力がある」(藤本潔環境政策課長)のだという。

 ということは、多少の努力をしてもガソリン需要の5%、目標の20%しか用意できないということになる。しかも、この数字には砂糖や飼料に使われている分も含まれ、うまく調整しないと飼料メーカーなどとの奪い合いが起きる可能性もある。

■優遇税制は持ち越しへ

 次は普及のカギを握る生産コスト。多くの消費者にとって、ガソリン代の行方は当然気になるところだ。

 農水省のまとめでは、どの原料を使っても一リットル当たり九十−百円の幅に収まるという。バイオエタノールの国際価格(関税込みで約九十四円)とも何とか対抗できる水準だ。

 問題は通常のガソリンとの比較だが、揮発油税(一リットル当たり四八・六円)がガソリン同様にかかると、エタノールは二十円以上も高くなる。混合ガソリンでも値上げ要因になる。

 欧米ではバイオ燃料導入当初は税の優遇措置が取られているが、日本ではまだ何の方向性も出ていない。

 それどころか、この問題は道路特定財源の一般財源化の行方と密接にからみ、小泉政権は中身の結論を先送りした。前出の藤本課長は「原油高の今を逃せば、バイオエタノールを導入する機会を永遠に失う」とイライラを募らせるが、一つの節目となる年末の税制改正では持ち越しの公算が大きい。

 さらに、日本で認められているエタノールの混合率は3%だが、国際的には10%(E10)以上が常識。多様な混合率のブラジルでは100%もざらにある。自動車メーカー側は国際市場も見すえE10への緩和を求めているが、法整備に向けた議論はまだ途中段階だ。

 「日本では政策のパーツがかみ合っていない」

 マーケティング会社「富士経済」の船橋里美主任研究員は現状をこう嘆く。

 基本的には現在の流れを歓迎し、日本のバイオエタノール市場は六年後には三百数十億円規模にまで急成長すると予測するが、「食糧と競合する形でバイオエタノールを導入するのは疑問。残さを利用する技術開発をもっと急ぐべきだ。川上から川下まで合意を得ないまま無理にバイオエタノール導入に踏み切ると、参入する農家や企業のリスク(危険度)を高めることになる」と懸念する。

 最近、ブラジルでバイオエタノール事情を視察してきた神戸大学の西島章次副学長は「農場も工場も日本とは規模がまるで違う。補助金を出してまで国内調達にこだわる必要はなく、ブラジルからの輸入が現実的。国民負担を増やしてまでやるというのなら、もう何も言わない」とあきれ顔だ。

 十勝の試みを先導する帯広畜産大学の西崎邦夫教授はこう訴える。「環境、エネルギー、食糧のどれを優先してもひずみは出るが、バイオエタノールをどうするのかは近い将来、必ず来る問題。国はどうバランスを取るのか、国家戦略として打ち出す責任がある」

<デスクメモ> バイオエタノールは二酸化炭素を吸収した植物から得られるため京都議定書の中で排ガスが削減すべき排出量にカウントされないありがたい燃料だ。心配なのは、このエタノールはお酒として飲むアルコールの純度を高めたものということ。誰ですか「車に飲ませるくらいならオレが飲む」と言っている人は!?(蒲)

ホンダ、バイオエタノール車量産…年内にブラジルで発売

2006年09月14日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 ホンダは14日、植物由来の燃料「バイオエタノール」だけで走る小型乗用車を、日本のメーカーとして初めて量産する方針を明らかにした。

 年内にまず、バイオエタノール車の普及で世界一のブラジルで製造・販売を始める。バイオエタノールは、地球温暖化対策として有力視されていることから、日本政府も普及を目指している。ホンダは、日本市場への投入もにらみ、ハイブリッドなどと並ぶ環境技術の柱にする戦略だ。

 エタノールは酒の成分の一種で、植物のサトウキビやトウモロコシから採取されるものをバイオエタノールと呼ぶ。自動車燃料とする場合は、ガソリンに混ぜたり、ガソリンの代わりに使う。

 ホンダが発売するのは、純度100%のバイオエタノールにも対応する「フレックス・フューエル」タイプの車(FFV)で、シビックとフィットをベースとする。ブラジル工場で年間計6万5000台生産している両車種のうち、半数の約3万台をバイオエタノール車に切り替える方針だ。

 日本メーカーは海外市場で、バイオエタノールの混合比率が10〜25%程度まで対応する車を市販しているが、バイオエタノールだけで走る本格的な対応車は初めてとなる。地球温暖化を防ぐための京都議定書では、バイオエタノールを燃やして排出される二酸化炭素は、植物が吸収したものを大気に戻すだけと考えて、排出量ゼロとみなされるため、環境対応の燃料としても注目されている。

RITEとホンダ、バイオエタノールで革新

2006/09/15 auto-Web

 財団法人 地球環境産業技術研究機構(RITE)と本田技術研究所は、バイオエタノールをトウモロコシやサトウキビといった食用となるもの以外から抽出できないかという研究を行ってきたが、これまで困難とされてきた、茎や葉といったソフトバイオマスに含まれるセルロース類からアルコール燃料を製造する技術の基盤を確立、実用化へ大きなステップを踏み出した。

 これまでは、ソフトバイオマスからセルロース類を分離する工程で副次的に生成される醗酵阻害物質が、糖をアルコールに変換する微生物の働きを妨げ、エタノールの収率が極めて低く、工業化に適さないものであったが、RITEの開発した糖をアルコールに変換する微生物であるRITE菌を使い、Hondaのエンジニアリング技術を活用し、アルコール変換の効率を飛躍的に向上させたもの。

 ソストバイオマスからのエタノール製造に関して、基礎的な課題がすべて解決したこととなり、今後は、工業化に向けて研究を進めていくことになる。

 ちなみに、バイオエタノールが環境にやさしいというのは、燃焼時に放出されるCO2が、もともと植物が光合成により取り込んだもので、大気中のCO2総量に影響を与えないためである。

RITEとHonda、セルロース系バイオマスからのエタノール製造新技術を共同開発

2006年09月14日 HONDA

 財団法人 地球環境産業技術研究機構(RITE)とHondaの研究開発子会社である株式会社 本田技術研究所(以下Honda)は、植物由来の再生可能資源であるソフトバイオマス※1からエタノールを製造する技術に関する共同研究の成果を発表した。

 バイオエタノールは燃焼時に放出されるCO2が、もともと植物が光合成により取り込んだもので、大気中のCO2総量に影響を与えない為、カーボンニュートラルな燃料として、地球温暖化対策に有効なエネルギー源として注目されている。

 しかし、現在のバイオエタノール製造は、サトウキビやとうもろこしの糖質や澱粉質など食用と同じ部分を原料としているため、供給可能量に限りがある。 今回の共同研究では、これまで困難とされてきた、稲藁など、食用に供さない植物の茎や葉といった、ソフトバイオマスに含まれるセルロース類※2からアルコール燃料を製造する技術の基盤を確立し、実用化へ大きなステップを踏み出した。

 RITEの極めて高度なバイオ技術とHondaのエンジニアリング技術の融合により新たに開発されたRITE-Hondaプロセスは、セルロース類からのバイオエタノール製造に道を開き、大幅な増産を可能とするものである。

 そのプロセスは、以下の各工程から成り立っている。 1)ソフトバイオマスからセルロース類を分離する前処理工程 2)セルロース類の糖化工程 3)微生物による糖からアルコールへの変換工程 4)アルコールを精製する後処理工程

 既存の技術では、主にソフトバイオマスからセルロース類を分離する工程で副次的に生成される醗酵阻害物質が、糖をアルコールに変換する微生物の働きを妨げ、エタノールの収率が極めて低くなる。これが、ソフトバイオマスからのアルコール製造の大きな障害になっており、解決する策は今まで見出されていなかった。 微生物によって化学物質を製造するバイオプロセスの開発で世界的に著名なRITEは、従来技術に対し飛躍的に生産効率の高いRITEプロセスを確立、これまでもバイオエタノール製造関連を含む、多くの成果を発表してきた。

 今回、RITEの開発した糖をアルコールに変換する微生物であるRITE菌を使い、Hondaのエンジニアリング技術を活用し、醗酵阻害物質による悪影響を大幅に減少させるRITE-Hondaプロセスの開発に成功、従来のセルロース系バイオエタノール製造プロセスと比較してアルコール変換の効率を飛躍的に向上させることが可能となった。

 このRITE-Hondaプロセスは、バイオエタノールの大幅な増産と利用の拡大を可能とし、持続可能なエネルギー社会の実現に向けた大きな前進となる可能性を秘めている。

 今回の成果により、ソストバイオマスからのエタノール製造に関して、基礎的な課題がすべて解決したこととなり、今後は、工業化に向けて研究を進め、現在は別々の処理で行っている4つの行程をひとつのプラント内で連携させるシステムの開発に取り組み、この連携システム内でのエネルギーリサイクル※3による省エネルギー化と低コスト化を図る。

 また、新しいバイオアルコール製造システムの社会適合性や経済性を検証するために、パイロット・プラントによる実証実験を計画している。

 RITEとHondaは、これらの共同研究の成果を基盤として、将来はエタノールだけにとどまらず、バイオマスから自動車用材料を含むさまざまな産業用物質を生みだすバイオリファイナリー※4への進化を目指し、持続可能な社会の実現に向けて、更なるCO2低減による地球温暖化防止に貢献していきたいと考えている。

※1 ソフトバイオマス

生物由来の再生可能な有機物資源で化石資源を除いたものをバイオマスと言う。狭義には家畜糞尿や廃木材や、食用部分を取り除いた後の植物の残渣などを指すこともある。もともと生物が光合成により大気中のCO2と水から生成した有機物であり、これを燃やしても大気中のCO2は増加しない。

※2 セルロース類

植物の繊維質の主成分。天然の植物質の2/3を占めると言われるが、これまでの技術ではアルコール製造の原料とすることが難しかった。

※3 連携システム内でのエネルギーリサイクル

四つの処理工程のうち、ある工程で発生した熱を他の行程の反応促進に使うなど、熱やエネルギーを効率よくシステム内で使いまわしをすることで低コスト化の鍵となる。

※4 バイオリファイナリー

オイルリファイナリーに対する概念で、バイオマスを原料にバイオ燃料や樹脂などを製造するプラントや技術。

環境省105億円要求 バイオエタノール事業推進へ

2006年08月30日 沖縄タイムス

 【東京】環境省は二十九日、総額二千六百五十四億円の二〇〇七年度概算要求をまとめ、発表した。サトウキビなどを原料とする「バイオエタノール」を混合した自動車燃料の実用化を推進する事業に百五億三百万円を要求。燃料を大量生産し、供給用のスタンドを関東や関西の大都市圏に整備、四万台の車に燃料として供給するほか、宮古島全体で同燃料を生産、普及させる大規模な実証事業を展開する。

 またバイオエタノールにかかる揮発油税、地方道路税、バイオディーゼルにかかる軽油引取税を非課税とするよう税制改正要望に盛り込んだ。

 環境省は宮古島で、経済産業相、農林水産省などと連携した「バイオエタノール・アイランド」構想を計画。

 宮古島産サトウキビからバイオエタノールを製造、島内で消費されるガソリンすべてを、バイオエタノールをガソリンに三%混ぜた「E3」と呼ばれる燃料にすることを目指した実証事業を展開する。

 島内二カ所の製糖工場にエタノール製造プラントを併設し、年間約七百キロリットルを生産する。

 島内十八カ所すべてのガソリンスタンドを改造する。

 そのほか、民間企業が大阪府堺市に建設中の、廃材からエタノールを製造する世界初のプラントを活用して製造設備を整備する。

 E3対応の燃料スタンドを関東や関西に百カ所程度造って流通体制を整備、一般消費者がE3燃料を簡単に購入できるようにする。

 環境省は、バイオ燃料関連ビジネスへの参入を支援する補助金制度も〇七年度から創設する。

バイオエタノール製造へ研究会

2006/8/23 中国新聞地域ニュース

 ▽岡山県、木材など植物資源を活用

 岡山県は、産学官連携組織「おかやま木質バイオエタノール研究会」を設立し、二十四日に岡山市内で設立総会を開く。木材を原料にする木質バイオエタノールの県内での製造、供給を促進し、新産業として育成する。

 バイオエタノールは木材やサトウキビなど植物資源を発酵、蒸留して製造し、ガソリンに混ぜて燃料として使用する。県内では現在、三井造船岡山支社(岡山市)が真庭市にプラントを設けて製造開発に取り組んでいるが、原料木材の収集、運搬でコストがかさむなどの課題があるという。

 研究会は三井造船のほか、岡山大や岡山理科大の研究者、真庭市など十八機関で構成。二、三カ月ごとに会合を開き、原料木材の収集や運搬システムの構築、事業化の可能性を協議する。

 県は「現在一リットル製造するのに約五百円かかるが、ガソリン価格程度まで低減させて普及を図りたい」としている。(田村勇雄)

代替燃料「バイオエタノール」は普及するか

2006年08月22日 NB Online

資源供給国としてブラジルに注目が集まる

 前回は「究極の低公害車」と期待されている、水素を用いた燃料電池車の現状について述べた。では、いわゆる代替燃料はどうなのだろうか。代替燃料として現在考えられるものには天然ガス、ジメチルエーテル(DME)、そしてバイオフューエルなどがある。このうち、最近脚光を浴びているのがバイオフューエル、特に植物よりエタノールを精製するバイオエタノールである。

 バイオエタノールは植物由来の燃料なので、原材料となる植物が生育する過程で二酸化炭素(CO2)を吸収する。燃焼により発生するCO2はこれと相殺するため、地球温暖化対策の切り札として期待されている。現在アメリカを賑わしているのは、ガソリンに対してエタノールを85%混合した「E85」という燃料だ。エタノール100%ののことは「E100」とも言う。

北米ではバイオエタノールは普及しない

 グラフはブラジルにおけるE85、もしくはE100に対応する車両の生産台数と、そのシェアの予測を示したものである。ブラジルではエタノール対応車両が急増してきており、今後も拡大するとCSMワールドワイドでは予測している。一方、北米ではエタノール対応車両は伸び悩むと筆者は考える。両地域における異なる傾向の背景には、バイオエタノールが現在抱えている課題が隠されている。それは主にコストと供給能力だ。

 異なる燃料の価格を比較する場合、同じ熱量当たりの価格に換算して比較するのが一般的である。その条件でガソリンとバイオエタノールを比較すると、バイオエタノールが最も普及しているブラジルでも、2003年末時点でE100の価格はガソリンと同等か、バイオエタノールの方が若干有利という程度である。

 米国での同時期におけるE85の価格はガソリンより1割以上も高く、一般消費者にとってはE85対応車両購入のメリットはない。このように、現在ブラジル以外ではバイオエタノールは製造コストが高く、ガソリンに対して価格競争力がないことが、一般消費者への普及に対する課題となっている。

NEDO研究がスタート…目指せバイオマス燃料のブレークスルー

2006年08月01日 Response

 バイオマス(生物由来)燃料技術のブレークスルーを目指した開発が今年度からスタートする。経済産業省系の新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が「バイオマスエネルギー先導技術研究開発」として15件の委託先を決め、2年間の計画を始める。

 トウモロコシやサトウキビ、天ぷら油や廃材など、バイオマス燃料の“原料”は多いが、製造効率の低さなどが普及の障害になっている。NEDOは2020年−2030年の実用化を想定し、委託の各研究テーマに関して「画期的」な技術を求めていくという。

バイオエタノール燃料普及に向け宮古で全島実験

2006年06月20日 読売新聞 Yomiuri On-Line

温暖化対策 品質やコスト検証

 政府は、植物由来の新エネルギーとして注目されるバイオエタノール燃料の普及に向け、原料となるサトウキビ産地の沖縄県宮古島で2008年度から、自動車用ガソリンに混ぜて利用する大規模な実証事業に乗り出す。

 バイオエタノール製造施設の整備やガソリンスタンド改修などを進め、島内すべてのガソリンをバイオエタノール混合に切り替え、品質やコストを検証する。バイオエタノール燃料を一般車で日常的に使用する試みは初めてで、地球温暖化につながる原油など化石由来の二酸化炭素(CO2)排出を大幅に減らすことを目指す。

 バイオエタノールは、サトウキビやトウモロコシをアルコール発酵させて製造する。ガソリンと混ぜる分だけガソリン使用量を減らせるため、石油代替エネルギーとして米国やサトウキビの大産地のブラジルなどで普及している。

 地球温暖化防止を目指す京都議定書では、バイオエタノール燃焼分のCO2は削減の対象外。日本の現行法では、エタノールを3%までガソリンに混ぜて販売することが認められており、普通のガソリンエンジン車にそのまま使える。

 しかし、経済産業省・資源エネルギー庁によると、同じ熱量で比べると、ガソリン1リットルに対しエタノールは約1・7リットル必要で、価格もエタノールのほうが20〜40円高い。給油設備が整わないため普及は進んでいない。

 実証事業では、サトウキビを原料に使っている島内2か所の製糖工場に、国の補助などでエタノール製造設備を併設し、年間約700キロ・リットルのエタノールを製造。政府が全量を買い取り、島内の石油供給会社へ無償譲渡することも検討している。経産省や環境省などが07年度予算の概算要求に事業費を盛り込む。また、石油供給会社は島内18か所のスタンド設備を改修し、エタノール3%入りガソリンを通常のガソリンより数%安く販売する。政府はガソリンスタンドの改修費も補助対象とする方向だ。

 島内にある約2万台の自動車が利用する見通しで、政府はエタノールの生産、ガソリンとの混合、給油販売までの各段階でコスト削減をどの程度図れるかなどを検証し、全国への普及策につなげる方針だ。

トヨタ ハイブリッド車種倍増へ

2006年06月14日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 トヨタ自動車の渡辺捷昭社長は13日、都内で記者会見し、エンジンとモーターを併用するハイブリッド車を現在の「プリウス」など7車種から、2010年代の初めまでに14〜15車種に増やす方針を明らかにした。

 トヨタはハイブリッド車を2010年代初頭に年間販売台数100万台とする目標を掲げており、普及を加速させる。

 また、ガソリンに混合する代替燃料として注目される植物を原料とする「バイオエタノール」について、様々な混合率に対応できる車を米国市場に投入することを検討する。エタノール燃料が普及しているブラジル市場では、07年春をめどに混合率100%に対応する車を販売する。

 渡辺社長は、石油系が当面は自動車燃料の主流を占めるとの見方を示す一方、石油代替燃料や天然ガス、水素など「あらゆるエネルギーに合わせて動力装置を開発する必要がある」と述べた。

バイオエタノール、原油高で中国政府が後押しか

2006/06/12 中国情報局News

 原油高や大気汚染に対処するため、中国政府は自動車燃料としてバイオエタノールの使用を後押ししていく方針だという。資源専門商社ノーブルグループでエタノール部門を統括しているFabrizio Zichichi氏が明らかにした。12日付で英字紙チャイナデイリーが伝えた。

 バイオエタノールはサトウキビやトウモロコシなどバイオマス(生物資源)から作られる燃料で、京都議定書ではCO2排出量がゼロと見なされる。

 Zichichi氏によると、中国政府は2006年内に1次エネルギー供給におけるバイオエタノールの占める数値目標を設定する見込み。

 中国におけるバイオエタノールの生産量は米国、ブラジルに次いで世界第3位に達している。燃料用にトウモロコシなどを充てることで食糧不足につながるとの懸念があるが、Zichichi氏は「バイオエタノールの利益率が高いことがインセンティブとなって、農民は(トウモロコシなどの)生産を増やす」「ブラジルの事例を見れば食糧不足の心配はない」とコメントした。

 その上で「中国政府は環境に配慮したエネルギーの使用を拡大させようと努力してきたがあまり成功しなかった。しかしガソリンスタンドにE10(バイオエタノール10%混合ガソリン)に対応するよう義務付けることは難しいことではない」と述べた。(編集担当:菅原大輔)

ガソリン、バイオエタノール混合に転換 30年まで

2006年06月12日 asahi.com

 環境省は、国内で使用される自動車のガソリンの全量を、2030年までに植物資源からつくるバイオエタノール10%混合(E10)に切り替える方針を決めた。京都議定書の約束期間(08〜12年)に、ガソリン車の新車すべてをE10対応とするための関係法令も整備する。5月末の「新・国家エネルギー戦略」で運輸エネルギーの脱石油化を打ち出した経済産業省と連携し、来年にも見直す京都議定書目標達成計画に政府方針として盛り込む。

バイオエタノール製造から利用まで

 バイオエタノールは、サトウキビやトウモロコシなど植物原料を搾った汁をアルコール発酵させて蒸留してつくる。燃焼時に出る二酸化炭素(CO2)は「植物が生育中に吸収したものの再放出」との考えから、京都議定書では温室効果ガスとしてカウントされない。

 計画ではまず、約束期間中に、ガソリン需要の最大2分の1程度を3%混合させたガソリン(E3)に切り替える。20年にはE10の供給を始め、30年には全量のE10化を目指す。これに伴うCO2削減量は全量転換時までに約1千万トンと試算。30年時点のバイオエタノール導入量は、原油換算で220万キロリットルを見込む。

 ブラジルや米国では導入が進んでいるが、環境省はアジア諸国でのバイオエタノール生産を推進し、途上国支援と安定的な輸入量確保、排出権獲得も視野に入れる。設備投資などで高価格になり、普及の妨げとならないよう、揮発油税の減税なども検討する。

 自動車対策では、約束期間内に発売する新車をすべてE10対応とするよう国土交通省と検討。E10ガソリンの認可を所管する経産省とも協議する。

 現在販売されている新車はすでにE3ガソリンに対応できるようになっており、E10対応についても、排ガス基準クリアとそのための技術開発、燃料系トラブル対策など導入時の環境面や安全面での課題は、メーカー側がすでに解消しているという。

 今はまだ一般的にE3の販売はしていないが、環境省は今年度、ガソリンスタンドとバイオエタノール普及に向けて沖縄・宮古島で実証実験を始めた。公用車で試験走行し、07年度には、同島のガソリン車すべて(約2万台)をE3化する方針。廃木材や規格外小麦やトウモロコシを原料とした、生産の大規模実験もする。

 政府の京都議定書目標達成計画では、風力など新エネルギーを原油換算で1910万キロリットル導入を掲げている。同省は、このうち、50万キロリットルを輸送用燃料で達成する方針だ。

エコ燃料目標達成ピンチ 実現には8割輸入が必要

2006/04/04 The Sankei Shimbun

 温室効果ガス削減のために政府が導入を進めている植物などの生物資源(バイオマス)を使ったエタノールなどのエコ燃料の利用が、京都議定書目標達成計画での導入目標の4%程度にとどまり、実現のためには今後、燃料の8割以上を輸入に頼らなければならないことが、環境省の試算で4日、分かった。

 エコ燃料は、各国が利用拡大を打ち出しており、国際的な需要増で、十分な量を確保できない恐れもある。このままでは目標を達成できない可能性が高く、政府は利用拡大支援策や輸入の促進策の検討を始めた。

 政府の議定書目標達成計画は、ボイラーや自動車からの二酸化炭素排出削減のため、2010年度に年間で原油換算で308万キロリットル分のエコ燃料を導入するとしている。

車の燃料にバイオエタノール

2006年04月19日 読売新聞 Yomiuri On-Line

◆CO2排出抑制に効果

コスト・安定確保に難

 トウモロコシなどの植物から作る燃料「バイオエタノール」を自動車燃料として利用する計画に、政府・民間が本腰を入れ始めた。植物由来のバイオエタノールは、燃やしても二酸化炭素の総量が増えないため、京都議定書で義務づけられた二酸化炭素などの排出量抑制に役立つからだ。ただ、価格がガソリンより割高になるなど普及には課題も残っている。(豊田千秋)

 ■クリーン

 二階経済産業相は今月10日、バイオエタノールの輸出国であるブラジルのフルラン開発商工相と会談し、ブラジルからの安定的な輸入確保を進めることで一致した。17日には「税制や予算措置でしっかりバックアップするよう小泉総理の指示があった」と述べ、バイオエタノールの導入を本格化させる考えを示した。具体的には、バイオエタノール燃料への優遇税制などが検討される見通しだ。

 バイオエタノールは、サトウキビやトウモロコシなどを発酵させて作るアルコールの一種で、ガソリンに混ぜることで、自動車燃料としても使える。世界で4100万キロ・リットル(2004年)が生産され、7割をブラジル(1500万キロ・リットル)と米国(1400万キロ・リットル)が占めている。

 植物は大気中から二酸化炭素を吸収して育つため、燃やしても二酸化炭素の総量は増えない。京都議定書では、バイオエタノールを利用しても二酸化炭素の排出量に数えないルールになっている。

 ■計画

 日本は昨年4月に定めた「京都議定書目標達成計画」で、2010年度までに原油50万キロ・リットル相当分をバイオエタノールなどの植物由来の燃料で賄うことにしている。石油連盟はこのうちの約4割(原油換算で21万キロ・リットル分)に当たる36万キロ・リットルのバイオエタノールを合成して、ガソリンに混ぜる計画を進めている。日本政府は90年比で温室効果ガスの6%削減を義務づけられている。計画は、削減必要量の1%弱に相当する効果がある。

 具体的には、ブラジルからバイオエタノールを輸入し、そのままでは車の部品を腐食する恐れがあるため、ガソリンなどの精製過程で出る副産物と化学的に合成させ、「ETBE(エチル・ターシャリー・ブチル・エーテル)」という物質に変えてから、ガソリンに混ぜる方針だ。約8%までなら、混ぜても自動車の走行性能に影響はないという。

 一方、沖縄・伊江島では、アサヒビールが蒸留技術を生かして、今年1月から、サトウキビを原料にバイオエタノールの生産を始めた。政府と共同の実証実験で、ガソリンに直接混ぜて伊江村の公用車に使っている。

 ■課題

 国内では、03年にバイオエタノールを直接3%まで混ぜた自動車用ガソリンの販売が解禁され、山形県新庄市などで導入されている。しかし、ガソリンより製造コストがかさむために、普及は進んでいない。

 経産省・資源エネルギー庁によると、ガソリン1リットルの輸入価格を同じ熱量のバイオエタノール(約1・7リットル)で比較すると、エタノールの価格の方が20〜40円高い。ガソリンと混ぜた場合では、小売価格でガソリンより1リットル0・6円程度高くなると試算されている。競争が激しい石油販売業界では受け入れにくく、石油連盟は揮発油税の減免などを求めている。

 バイオエタノールの安定確保も課題だ。現状では、世界で輸出余力があるのはブラジルに限られ、天候不順などで急激に値上がりする可能性がある。

 小西誠一・元防衛大学校教授(燃料化学)は「エタノールの確保先を1国に限るべきではない。東南アジアなどに日本企業が投資して、サトウキビ畑や工場の経営を手がけて、安定供給に努めるべきだ」と指摘している。

「バイオマス・ニッポン総合戦略」を改定

2006.03.31 EICネット

 平成18年3月31日開催の閣議で、バイオマスの総合的な利活用に関する戦略「バイオマス・ニッポン総合戦略」の改定が閣議決定された。

 今回の改定は、京都議定書の発効により、輸送用燃料などへのバイオマスエネルギーの導入促進が必要となっている最近の状況を踏まえたもの。

 (1)バイオマス輸送用燃料について、国が導入スケジュールを示し、積極的な導入を誘導すること、特に国産バイオマス輸送用燃料について、関係省庁が利用事例創出、原料の安価な調達、低コスト高効率な生産技術の達成− −に連携して取組み利用促進を図ること、 (2)未利用バイオマス利活用などを通じ、バイオマスタウン構築を加速化すること、 (3)アジア諸国のバイオマスエネルギー導入の取組みに戦略的に関与し、国内でのバイオマス利活用の成果を海外に普及していくこと− −などを盛り込んでいる。

 この戦略は18年4月1日から適用される。【農林水産省】

日経スペシャル「ガイアの夜明け」

2006年02月14日放送 第199回TV TOKYO

「安いガソリン作れ!」〜サトウキビ畑が油田に変わる〜

 今、ある自動車用燃料が注目され始めている。それは「バイオエタノール」というもの。 それは、サトウキビやトウモロコシなど植物を使って作られるエタノール(エチル・アルコール)のことで、環境にもやさしい新型燃料、と言われている。実はブラジルではこのエタノールで走る車が全体の15%にものぼるという。つまり、"サトウキビで走る車"が町にあふれているのだ。なぜならば、バイオエタノールは環境にもやさしい上に、料金もガソリンの半分くらいだからだ。実はアメリカやヨーロッパでも「バイオエタノール」の需要は高まってきており、相次いで自国での製造工場の建設も始まっている。こうした世界需要をにらみ、バイオエタノール先進国、ブラジルは世界への輸出拡大を狙っている。

 このような世界的エネルギー革命の中、出遅れた日本でも新たな動きが・・・。 2010年度までに"バイオエタノールを混合したガソリン"を普及させていく方向で動き始めているのだ。実は、沖縄・伊江島で、画期的なバイオエタノール作りも始まっている。「サトウキビから砂糖とエタノールを同時に産み出す」という試みだ。これならば国内でも採算のとれる事業モデルを構築できるのではないか・・・・。そう考えて、挑戦を始めたのはあのアサヒビールだ。サトウキビを使った国産の燃料で車は走るのか?そして普及するのか・・・?その挑戦に独占密着した。

【安い燃料を自由に選択・・・エタノール先進国ブラジル】

 広大な土地を持つ南米の国、ブラジル。実はオイルショックを契機にエネルギー政策を転換していた。国が全てのガソリンスタンドにバイオエタノール燃料の販売を義務づけたのだ。つまり、石油に頼らないエネルギー政策。今、ブラジルのガソリンスタンドではバイオエタノールとガソリンを利用者が選んで購入できるようになっている。 サンパウロ州フェルナンドポリス市に暮らす、モスカルジーニさん夫妻は、勤め先との往復で自動車を使っている。昨年、フレックス車と呼ばれる車に買い換えた。実はこの車、ガソリンでもバイオエタノールでも走れるように作られている。利用者はどちらの燃料で走るか切り替えればいいだけなのだ。モスカルジーニさんは「ほとんどエタノールを入れているね、安いから」という。ガソリン車だったころは月に2万7,000円かかっていた燃料代がフレックス車にして半分になった。こうした理由を背景に今ではブラジル国内で2000万台の乗用車のうち15パーセントにあたる300万台がエタノール対応車だという。

 バイオエタノール先進国、ブラジルは、広大な自国の土地で原料となるサトウキビの生産も活発である。世界的な需要の高まりに合わせて、「バイオエタノール」を重要な輸出品として世界にアピールし始めている。こうしたブラジルの世界戦略も追った。

【国産のバイオエタノールを作れ! アサヒビールの挑戦】

 昨年2月、地球温暖化を防ぐための国際協約「京都議定書」が発効。CO2の排出削減目標が決められた。世界第2位の石油消費国にして、6000万台の自動車を保有する日本。ガソリンの使用を減らすことが急務だ。しかし、燃料電池車や電気自動車などの技術開発に力を入れているものの、普及にはまだまだ時間がかかる。そこで、既存の自動車を使いながらCO2を減らすことのできる燃料として日本でも注目され始めているのが、サトウキビなど植物から作られるバイオエタノールだ。しかし、普及への問題点もある。国内でバイオエタノールを生産する場所がないということだ。ブラジルなどからの輸入だけに頼らざるを得ないというのでは不安定だ。

 そこで、アサヒビールは、沖縄・伊江島、九州沖縄農業研究センターと組み、国産で安いバイオエタノールを作る実験を始めている。アサヒビールの研究員・小原聡さん(33歳)は、「アルコールの会社だからアルコールで地球に貢献することをしたい」と語る。

 その実験の舞台となるのが沖縄本島の北部にある伊江島だ。基幹産業はサトウキビから作る砂糖の生産である。しかしそのサトウキビの生産量は年々減りつづけ、今ではピーク時の10分の1に落ち込んでいる。 そこで、小原さんたちは、サトウキビから「砂糖とエタノール」を同時に作ることを提案。 九州沖縄農業研究センターとの共同研究で、従来の2倍以上の収穫ができるサトウキビを新しく開発した。つまりそれならば、砂糖の生産量を確保しつつ、バイオエタノールも作れるのだ。コストを抑えながら、関係者すべてにメリットをもたらす事業として成立させる狙いだ。最終的なバイオエタノールの製造コストの目標は1リッターあたり30円。ガソリン価格を凌ぐことも可能になる。 そして、12月。長い歳月をかけて準備してきたプロジェクトが実を結ぶときが来た。 サトウキビから作る国産のバイオエタノール、果たしてうまくいったのか・・・? そして、日本でバイオエタノールは普及するのだろうか・・・?

*「安いガソリン作れ! 〜サトウキビ畑が油田に変わる〜」 と連動した企画が 2月14日付と2月15日付の日経産業新聞に「浮上するエタノール燃料」とし て掲載されます。番組とあわせてこちらもお読みください。

エタノール普及 官民協力の米国

2006年02月05日 読売新聞 Yomiuri On-Line

脱ガソリンへ コストが課題

 米国でガソリンを代替する燃料として植物由来の「エタノール」が注目を集めている。原油輸入に対する依存度が高い米国では、「石油中毒」(ブッシュ大統領)から脱皮する決め手として官民あげて利用促進に躍起だが、普及には壁も厚い。(ニューヨーク=北山文裕)

 生産拡大

 米エタノール大手ADMは昨秋、エタノールの生産能力を2008年までに約50%増強する方針を表明した。米穀物大手カーギルも、国内外の投資家から資金調達して生産能力の拡大を急いでいる。

 アイオワ、ネブラスカ州など中西部に偏在している生産施設は、カリフォルニアやテキサスなど他州に拡大しつつある。カリフォルニア州での製造施設の建設計画には、マイクロソフトのビル・ゲイツ会長率いる投資会社が8400万ドルを投資した。近年の原油価格の高騰も、エタノールの増産には追い風だ。

 米業界団体の試算では、04年にはエタノール産業が全米で約15万人の雇用を創出、原料のトウモロコシの需要増が農家経済を押し上げた。エタノール増産でガソリン需給が緩和され、ガソリン価格の上昇が14・6%分抑えられたという。

 ブラジルが手本

 政府もエタノールの利用促進に力を入れる。精製会社に、エタノール1ガロン(約3・8リットル)あたり51セントの税額控除を与え、ガソリンとの混合を後押しする。昨夏成立した「総合エネルギー法」もエタノールの利用促進を掲げている。

 ブッシュ大統領は1月31日の一般教書演説で、無尽蔵といえる木や草などの植物繊維を原料にエタノールを製造する技術開発の重要性を強調、6年以内に新技術を実用化する目標を掲げた。

 米国のモデルはエタノール先進国ブラジルだ。

 1970年代から脱石油を目指してきたブラジルでは、サトウキビを原料にしたエタノールとガソリンの混合燃料が主流となっている。ガソリンとの混合比率を問わない「フレックスタイプ」の自動車が普及。2005年には新車販売台数の半分の約86万台をこのタイプが占めた。エタノールの輸出も増えている。

 赤字の燃料

 ただ、エタノールが新しい自動車燃料として本格的に普及するかどうかは未知数だ。

 全米約17万のガソリンスタンドで混合燃料を補給できるのは中西部を中心に約600か所に過ぎない。エタノールの混合比率が85%の代替燃料「E85」の全米平均価格(昨年9月時点)は1ガロン=2・41ドルで、ガソリン(1ガロン=2・77ドル)より割安だが、エタノールは揮発性が高いため輸送が難点で、燃費効率でもガソリンに劣る。

 米コーネル大のデビッド・ピメンテル教授の試算では、トウモロコシが原料の場合、「米国でエタノールの生産・精製に費やすエネルギーは、エタノールが生み出すエネルギーを29%上回る」といい、「代替燃料としては、政府補助なしでは成り立たない」と指摘する。「高すぎるコスト」の克服が、普及に向けた最大の課題となりそうだ。

 エタノール サトウキビやトウモロコシなどの発酵・蒸留で得られるアルコールの一種。米国ではガソリンに混ぜて使われている。原料の植物が成長過程で二酸化炭素を吸収するので、ガソリンの代替品として利用を増やせば、温室効果ガスの排出が抑制される利点がある。

フォードやGM、対応車続々

 「消費者の負担、石油の輸入への依存削減につながる」――。米自動車2位フォード・モーターのウィリアム・フォード会長は、ブッシュ演説への支持を即座に表明した。

 フォードは、ゼネラル・モーターズ(GM)とともにエタノール対応車の販売を20年以上前から始めており、米国ではすでに数百万台が走っている。

 06年中にGMは40万台、フォードは25万台のエタノール対応車を販売する計画だ。フォードは1月に「E85」で動くエンジンと電気モーターを併用するハイブリッド車の試作車も公開した。GMもエタノール対応車のキャンペーンを計画しており、ガソリン・ハイブリッドでの出遅れによるイメージを挽回(ばんかい)する狙いも透けて見える。

石連、「バイオエタノール」使うガソリンを2010年度に実用化

2006年01月19日 日本経済新聞 NIKKEI NeT

 石油連盟は18日、バイオマス(生物資源)から取り出す「バイオエタノール」を使うガソリンを2010年度から実用化する計画をまとめた。加盟石油各社に新ガソリン導入を呼び掛ける。二酸化炭素(CO2)排出量の削減につながるバイオマス燃料の普及が狙い。新ガソリンの導入量はガソリンの年間総需要量の約2割の約1200万キロリットルを目指す。

 新ガソリンはバイオエタノールを加工した「ETBE」と呼ばれるガソリン原料を約7%混入してつくる。導入を目指す新ガソリン約1200万キロリットルに使うETBEは約84万キロリットル。この量を従来のガソリン原料から代替すれば、年約60万トンのCO2排出量の削減が見込めるという。

サトウキビで車走らす〜沖縄県宮古島

2006年01月12日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 ◆廃糖みつでエタノールを作る

 沖縄県・宮古島で、特産品のサトウキビの精製過程で出る廃糖みつから車の燃料を作る取り組みが進んでいる。温暖な気候にはぐくまれた生物資源(バイオマス)を利用した新エネルギー開発の試みだ。那覇空港から飛行機で50分。エメラルドグリーンの海に浮かぶ島を訪ねた。

 平らな島一面にサトウキビ畑が広がっていた。冬とは思えない強い日差しだ。

 「これ、見たことありますか」

 島南部の沖縄製糖宮古工場で、次長の大見謝(おおみじゃ)伊久雄(いくお)さん(50)が、ハチミツが入ったような瓶を差し出した。

 「おいしそう」。思わず言うと、大見謝さんは首を横に振り、苦笑いを浮かべた。「サトウキビから粗糖を搾り取った後の廃糖みつです。苦くて食べられませんよ」

 工場ではこれまで、家畜の飼料用に本土の業者に販売してきたが、船の輸送費がかさみ、処分に頭を悩ませていた。

 「二束三文の廃糖みつを新エネルギーに変身させてくれる施設が、これです」。大見謝さんは建設中のプラントを指さし、声を弾ませた。

      ◇

 廃糖みつの自動車燃料化を思いついたのは、石油卸会社「りゅうせき」(本社・沖縄県浦添市)産業エネルギー事業本部の奥島憲二さん(50)だ。

 約2年前、環境省の地球温暖化対策担当者から「廃糖みつから、燃料として活用できるエタノールを作ってみませんか」と勧められたのがきっかけだった。

 廃糖みつを発酵、蒸留させてできたエタノールは、燃やすとCO2(二酸化炭素)を出す。しかし、サトウキビは生育中に空気中からCO2を吸収するので、排出する一方の化石燃料と違って、地球上のCO2濃度は増えない。

 「バイオエタノールで、環境に優しい新時代の自動車燃料をつくろう」。奥島さんはプラントメーカーや研究機関と交渉を重ねて技術開発体制を作り、トウモロコシ原料のエタノール混合燃料が普及している米国やブラジルなど先進地を調査、事業化を目指した。

 りゅうせきは、環境省の委託(2005〜07年度)を受け、沖縄製糖宮古工場にプラントを建設。廃糖みつからエタノールを生成し、ガソリンに3%混合させた燃料「E3」をつくる。

 昨年10月の合併で誕生した宮古島市も後押し。〈宮古島からストップ・ザ・温暖化!〉のシールを県、市の公用車約100台に張り、実際にE3燃料で実車走行し、PRに力を入れる。

 「島で必要なバイオエタノールは、島内産サトウキビですべてまかなえる。3年後には1日1トンの生産能力を確認し、宮古産エタノールのメドをつけたい」と、奥島さんは意気込む。

 ◆今やバイオマス研究の先進地

 宮古島は今、バイオマス研究の先進地になりつつある。

 県立宮古農林高は04年、サトウキビの搾りかす「バガス」などを使って有機肥料を作り、“水のノーベル賞”ジュニア版「ストックホルム青少年水大賞」を受賞した。

 琉球大や農業工学研究所なども、バガスを炭化したり、牛ふんからガスを製造して発電したりする研究を行っている。

 05年12月には、島内でバラバラに活動していたりゅうせき、宮古農林高など約20の企業・機関が、バイオマスタウン推進プロジェクトチームを結成、廃棄物ゼロの島を目指して動き出した。南の島の挑戦から目が離せない。

バイオマス

 木材、生ごみ、生物の排せつ物など再生可能な生物由来の有機性資源のうち、化石燃料を除いたもの。政府は2002年、「バイオマス・ニッポン総合戦略」を閣議決定し、市町村の取り組みを支援している。化石燃料に比べ収集費用がかさみ、コスト削減が普及に向けてのカギ。

長春:「トウモロコシを石油の代替原料に」動き本格化

2005/10/28 中国情報局

 トウモロコシを石油の代替原料として利用しようと26日、吉林省・長春(ちょうしゅん)市に工業団地がオープンした。中国新聞社が伝えた。

 長春市では今後10年以内に、トウモロコシを原料として、合成繊維、エンジニアリング・プラスチックなどを生産・加工する拠点の建設を予定。最終的な年間処理量は800万トン、工業生産額は1000億元を目指している。

 オープニングセレモニーには、中国共産党・長春市委員会の王儒林・書記も出席。「世界の石油需給が逼(ひっ)迫する中で、トウモロコシを原料とする化学製品の前途は明るい」などとコメントした。

 また、王・書記は、「トウモロコシを原料として燃料用アルコール、多価アルコール、ポリ乳酸などを製造すれば、石油輸入の減少に役立ち、ひいては国家としてのエネルギー安全保障にも有用だ」と発言した。

 さらに、「長春市はトウモロコシの大産地で、吉林省全体の生産量の3分の1を占める」「トウモロコシ産業に関して、長春市は、ほかの都市よりもはるかに優位に立つ」などと強調した。(編集担当:菅原大輔・如月隼人)

サトウキビ原料に自動車燃料開発へ

2005年09月05日 読売新聞 Yomiuri On-Line

政府が実証実験

 政府は、サトウキビを原料にしたエタノールとガソリンを混ぜて作る自動車用の燃料開発の実証実験に乗り出す。

 燃料の一部に植物を使うことで、二酸化炭素の排出量削減に寄与するのが目的だ。政府は、2010年度までに植物などを原料に使うなどした燃料の年間生産量を、原油換算でドラム缶250万本分にあたる50万キロ・リットルにする計画で、安全性などを確認した上で、産業界に活用を呼びかける。

 燃料に使うエタノールは、サトウキビの糖分を発酵させて作り、全体の約3%分を混ぜ合わせる。サトウキビを栽培している沖縄県伊江村で、来年1月から年間37キロ・リットル製造する予定だ。1リットル当たりの燃費は10キロと試算し、同村役場にある公用車63台分の燃料の一部として使用する。

 サトウキビを一部燃料に使った燃料は、ブラジルなどですでに導入されている。しかし、国内では安全性の問題から、これまで実用化されていなかった。

バイオマス燃料、普及の気運盛り上がらず

2005年07月07日 Response

 国のバイオマス(生物由来)自動車燃料政策が足踏みしている。

 旗振り役の環境省は、E3(混合率3%)、E10(同10%)と2段階に分け、ガソリンにサトウキビなどから採れるバイオマスエタノールを混ぜて環境対策としたい考えだが、石油業界が「コストがかかり過ぎる」と難色を示し、エタノールを含酸素系添加剤、ETBEに代えて混合するよう求めている。

 バイオマス燃料は京都議定書のルール上、「二酸化炭素の排出にカウントしない」という規定があり、ガソリンに混ぜて全体の消費量を減らせば、それだけ二酸化炭素の排出削減に貢献する。

すでに経済産業省は関係法令を改正し、3%までの混合を認めているが、バイオマス燃料を積極的に使おうとする動きは見られないままだ。《編集部》

フォード、スウェーデンでエタノール燃料車を市場投入

2005年07月01日 Response

 フォード・モーター・カンパニーは、新世代フォード『フォーカス・フレキシブル・フューエル車(フォーカスFFV)』とフォード『フォーカスC-MAXフレキシブル・フューエル車(フォーカスC-MAX FFV)』をスウェーデンで同時発売すると発表した。

 欧州でのエタノール燃料車普及に向けての先駆者的な役割を果たしていく。

 新型フォーカスFFVとフォーカスC-MAX FFVは、CO2(二酸化炭素)排出量を最大70%低減させた。フォードが進める将来のサスティナブル・モビリティの実現に向けた先進環境保護技術や環境保護のさまざまな取り組みにおいて重要な役割を果たすとしている。

 先代のフォーカスFFVは、異業種間、地方自治体、政府、NGOなどとの緊密な協力関係よって実現可能な具体案を示す成功例として成果を収めている。

 欧州フォード政府・環境事業部門のウルフギャング・シュナイダー副社長は「今回のFFVは、バイオ・エタノール技術をリーズナブルな価格で市場に積極的に提供していくという、フォードの業界に先駆けた取り組みを示すもの。我々は、これらの技術を極めて重要なものと位置付けており、今後も引き続き欧州全域にバイオ・エタノール技術を普及、浸透させ、サポートしていく」としている。《編集部》

「真庭バイオエタノール実証プラント」の竣工式を挙行

2005年06月30日 三井造船株式会社

 三井造船株式会社(社長:元山 登雄)は、独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(以下 NEDO技術開発機構)による平成16年度「バイオマス等未活用エネルギー実証試験事業」に採択された「木質系原料によるバイオエタノール製造」について、実証設備の建設に着手していましたが、このほど完成し、本日、岡山県および真庭市をはじめとする地元関係者を迎え、現地にて竣工式を挙行しました。

 本実証施設は、NEDO技術開発機構との共同研究として、国内有数の林産資源生産地である岡山県北部(真庭地区)において供給される未利用の林産資源を主原料として、木質系バイオマスを糖に変換後、VTT(フィンランド)が開発した酵母を用いて発酵、精製しエタノールを製造する技術を実証するものです。 精製したエタノールは三井造船が開発した浸透圧原理を用いたケイ素とアルミニウム、ナトリウム、酸素を主な組成とする珪酸塩鉱物によって構成されるゼオライトの膜により無水化され、利活用されます。

 現在注目されている地球の温暖化対策の一つとして、ガソリンにエタノールを3%混ぜた燃料が注目されており、運輸部門におけるCO2排出量の削減効果が期待されています。

 三井造船では本事業を通して、効率的プロセスと商業設備としてのコストの低減化を確立し、本技術の実用化を目指します。このことにより、現在未利用あるいは熱源程度の利用にとどまるバイオマス資源から貯蔵、搬送し易い液体燃料を製造することができ、バイオマスの新たな市場開拓を行うことが可能となります。

国内外でバイオエタノール脱水設備などを相次いで受注

2004年09月14日 三井造船株式会社

 ゼオライト膜の製造設備を増強

 三井造船株式会社(社長:元山 登雄)は、ヨーロッパ向けのバイオマスエタノール生産設備向けにゼオライト膜脱水設備1基を、また国内のエンジニアリング会社が建設するPCB処理設備で使用される薬品のリサイクル用に2基、および中国のレンズ製造工程で使用されるIPA(イソプロパノール)のリサイクル用に1基を相次いで受注しました。

 いずれも玉野事業所(岡山県玉野市)で製作し、今秋から冬にかけてそれぞれ納入する予定です。

 三井造船では、CO2削減で関心が高まっているバイオマスエタノール生産や地球環境問題で注目されている有機溶剤の再利用などの大規模脱水市場に十分な対応が出来るように、今回の受注に合わせ、アルコールや有機溶剤を脱水精製できる自社開発のゼオライト膜の製造工程を自動化します。併せて生産能力を増強し標準的な100キロリットル/日のエタノール生産設備に換算して年間5台分のゼオライト膜を製造することが可能になります。

 エタノール生産設備にゼオライト膜を使用することにより、従来法の蒸留設備と比べ、消費エネルギーが半分以下になり、CO2削減にも多大な効果が期待できます。

 ゼオライト膜とは、水を含む有機溶剤等を脱水精製できる機能をもった分離膜で、ナノレベル以下の細孔を有する親水性のゼオライト結晶を管状セラミックの外表面上にコーティングしたものです。実用には管を束ねてモジュールとし、各種プラントに組み込んで使用しています。ゼオライト膜は耐熱性・耐薬品性に優れるとともに、水を分離する性能が優れているため、脱水精製法として一般に用いられている蒸留法と比べ、必要エネルギーを大幅に低減できることやベンゼンなどの有毒な薬品を使わないで済むほか、設備がコンパクトで屋内での設置が可能になるなどの特長があります。

 三井造船では、1998年にゼオライト膜の販売を開始して以来、16件の実績を有します。海外で先行している自動車燃料添加用の無水バイオマスエタノール生産設備用として、昨年10月にはリトアニアの国営アルコール飲料製造会社向けのゼオライト膜装置を受注、2004年2月に納入したのに続き、本年も同設備を受注し、2004年11月に引き渡しを予定しています。

 ゼオライト膜は今後も内外での普及が見込まれることから、この分野での営業活動に注力します。

 2006年にはさらにゼオライト膜の生産体制を2倍に増強、15億円規模の売上を目指しています。

 [ゼオライトとは] ゼオライトは、ケイ素とアルミニウム、ナトリウム、酸素を主な組成とする珪酸塩鉱物で、これらの元素が3次元的に組み合わされ1ナノメートル(10億分の1メートル)未満の微細孔が規則的に配列した網目状の結晶構造となっています。 孔の径より小さな分子だけを通過させる「分子ふるい膜」として、CO2の混合ガスをメタンと分離したり、様々な分野で実用化が期待されています。

2003年9月「温暖化対策にバイオエタノール車」

2003年09月環境情報プラザ

 サトウキビなどを原料にした「バイオエタノール」が注目を集めている。CO2を吸収して育つ植物が原料のため、燃料に使ってCO2を排出しても京都議定書では排出量はゼロとみなされるとあって、90年比で温暖化ガス6%の削減を義務づけられている日本にとっては魅力的だ。このため8月末に改正品確法を施行してエタノール3%混合ガソリン(E3)の販売を解禁。さらに、環境省は10年にエタノール10%混合ガソリン(E10)普及を目標に掲げ、準備を急いでいる。

 米国では1978年から「ガソホール」と呼ばれるエタノール混合ガソリンが市販され、現在はE10が一般車両向けに流通している。消費税免除やエタノール生産への補助などもあって、02年のE10の消費量は日本のガソリン消費量に相当する6000万キロリットルに上っている。米国以外ではブラジルや欧州の一部でも使用されている。 日本でも環境省の中核的温暖化対策技術検討会がまとめた中間報告で、低濃度バイオエタノール混合ガソリンと業務用燃料へのバイオエタノール利用も対策技術として抽出。低濃度バイオエタノール混合ガソリンの普及シナリオは、まず既販車で利用可能な5%以下の混合ガソリンで普及を図りながら、E10供給体制の整備、対応車両の普及を進めるというもの。これに対し、石油業界ではガソリン製造・流通設備の大幅な変更や、供給安定性、費用対効果などの課題を指摘している。

 しかし、検討会による試算では10年にE10対応車両が順調に普及すれば、90年の運輸部門のCO2排出量の2・7%の削減が可能という。このため温暖化対策につながる政策を総動員する姿勢の環境省はバイオエタノールに注目。7月には地球環境局長の諮問機関として石油、自動車業界代表、学識経験者らで構成する「再生可能燃料利用推進会議」を設置、バイオエタノール利用拡大計画の策定を急いでいる。

【ガイアックス税金裁判】どうなるガイアックス

2003年01月23日 Response

 高濃度アルコール燃料をめぐっては、車両火災などのトラブルが相次いだとして経済産業省が規制に動いている。「揮発油等の品質の確保等に関する法律」を改正し、低濃度のアルコール分混入を認める代わり、ガイアックスのような高濃度アルコール系燃料をガソリンで使うことを禁止する考えだ。

 原告側の弁護士は、アルコール系燃料の低公害性を強調し、一方的な行政の使用規制に反発しているが、成分規定と課税の両方で普及への道のりが険しくなりそうな気配だ。《編集部》

環境省、バイオエタノール入り燃料の普及を後押し

2002年12月24日 Response

 環境省は来年度、植物などから製造したエタノール(バイオエタノール)をガソリンに混ぜて使う技術の開発に乗り出す。バイオエタノールが燃焼する際にでる二酸化炭素は、地球温暖化防止の国際的枠組みである京都議定書上の排出量にカウントされないことになっている。

 バイオエタノールが普及する分だけ、ガソリン燃焼時の二酸化炭素排出が減ることになる。環境省はバイオエタノール混合燃料の製造・保有施設に補助金を出し、普及を後押しする考えだ。《編集部》

多様化する燃料をにらみ、環境省らが排ガス性能試験

2002年12月16日 Response

 国土交通省、環境省は16日、DME(ジメチルエーテル)やバイオマス燃料など、ガソリン・軽油以外の燃料についての環境性能調査を行うと発表。

 学識経験者らによる調査検討会を設置し、こうした新燃料を既存燃料に添加した場合の排ガス性能や、低温流動性、酸化安定性など燃料自体の調査に取り組む。調査結果をもとに、大気汚染防止法や道路運送車両法に、こうした新燃料を規定する考えだ。《編集部》

アルコール系燃料は安全上問題あり---専門委員会が最終報告

2002年10月04日 Response

 経済産業省、国土交通省らによる「高濃度アルコール含有燃料に関する安全性等調査委員会」は、あらためて「ガソリン用自動車にアルコール含有燃料を使用することは、燃料系統部品を腐食・劣化させる危険性が存在し、安全上問題」とする最終報告をまとめ、両省は法規制や新燃料を発売する場合の安全性検討体制について検討に入った。

 これに対し、アルコール系燃料大手のガイアエナジー社は「昨年、燃料が原因で車両火災事故が起こったとの報道がなされた後、火災事故等は一件も発生していない」と、あらためて燃料の安全性を強調しつつ、新燃料の安全性を客観的に検討する体制作りを「アルコール燃料の健全な成長につながる」と歓迎するコメントを出した。《編集部》

バイオマスの名のもと、またもや低価格の新燃料---リットルあたり10円安

2002年08月19日 Response

 『ガイアックス』の代理店主や弁護士、大学教授らで作るバイオマス普及会は19日、エタノールを主成分とした自動車燃料を来年早々にも発売すると発表した。低公害という点と、主に揮発油税を課せられないことによる低価格(レギュラーよりリットルあたり10円安く売る見込み)が特徴。

 これらは、『ガイアックス』など先行するアルコール系燃料と同じだが、新燃料はエタノール成分(アメリカから輸入)をとうもろこしから採る点で異なる。同普及会では「諸外国でもエタノールは使われている。将来は日本で生産したい」と鼻息が荒いのだが…。《編集部》

ウィルコ、新バイオ燃料を中国で生産---原材料はいったいなんだ!?

2002年07月09日 Response

 ウィルコ・インターナショナルエージェンシーは、地球環境保護、エネルギー資源保全を両立する新バイオ燃料EMBCバイオエナジーを開発、7月から生産・販売開始すると発表した。

 EMBCは「複合微生物動態系における循環作用」の意味で、バイオマスを核としエントロピーとバイオを融合させたと、している。EMBCバイオエナジーの特徴は、現行の排出ガス規制をクリアし、既存の化石燃料と混合使用してもエンジン性能を損なわず、燃費向上が図れるとしている。

 当面は月産1万キロリットルを中国で生産、順次増産して5年以内に世界に向けて年間1000万キロリットルを生産する。販売計画は日本で初年度7万キロリットルを、石油販売会社のシアーズ系列で販売する。

 不具合発生で問題となっている第二のガイアックスにならなければいいが、との声も。

アルコール系燃料業界が結束---と思いきや、メーカーは参加せず!?2002年05月09日 Response

 「バイオエネルギー自動車燃料普及会」が9日、都内で設立された。『ガイアックス』などアルコール系燃料のスタンドが中心になって設立したもの。今後、自動車メーカーや行政に対し燃料の規格化を働きかけるほか、アルコール系燃料のPRも行う。会員数は160社の見通し。

 ただ、同普及会にガイアエナジーなどの燃料製造元は参加していない。伊藤光弘理事長は「(燃料の)メーカーが何もしてくれず、何とかしなくては、と思った。燃料販売店なら系列を問わずに参加を呼びかけたい」と語った。

これでトラブル防止効果はあるの? アルコール系燃料で国が“注意喚起”

2002年04月25日 Response

 経済産業省、国土交通省は25日、「ガソリン自動車ユーザーの皆さまへ」と題した、アルコール系燃料の使用についての注意を公表した。「アルコール系燃料をガソリン自動車に使用した場合、不具合発生による危険性が否定し得ないことが判明しました」とし、「燃料の給油の際には、この点に十分ご注意下さい」としている。

 両省も自動車メーカーの団体である日本自動車工業会も、これ以上のPRは行わないといい、暗にアルコール系燃料の使用自粛を促すことで“ガイアックス騒動”の幕引きを狙っている。アルコール系燃料最大手のガイアエナジー社は現在のところ、とくにコメントせず、沈黙を保っている。《編集部》

アルコール系燃料は“グレー”---委員会の中途半端な結論

2002年04月25日 Response

 「高濃度アルコール含有燃料の安全性等に安全性等調査委員会」は24日の会合で、「市販されているアルコール系燃料に含まれるアルコール成分は、自動車の燃料デリバリーパイプなどに使われているアルミニウムを腐蝕させることが確認された。ガソリン車にアルコール系燃料を使用した場合、この危険性を科学的に否定できない」とする第1次安全性評価結果をまとめた。

 アルコール系燃料を製造・販売することは合法のため、明確な使用禁止を打ち出せず、やんわりと使用の自粛を求める内容となった。これを受け、経済産業省らは一般消費者に安全性評価を公表する予定だ。《編集部》

「DME」次世代クリーン燃料の開発加速---NKKなど共同で

2002年02月05日 Response

 次世代のクリーン燃料として注目されつつあるジメチルエーテル(DME)の開発・実用化が加速してきた。鉄鋼メーカーのNKK、豊田通商、日立製作所など 9社は5日、DMEの技術開発を推進する研究法人「ディーエムイー開発」を共同で設立したと発表した。同研究法人ではDMEを炭化水素系原料から直接合成する技術を確立して、DME関連技術の早期実用化を目指す。

 DMEは多様な炭化水素系原料から製造が可能であるとともに、燃焼時に硫黄酸化物やばいじんが全く発生しないなど、環境負荷が小さいエネルギー。ディーゼル車に使用される軽油の代替燃料や燃料電池車用燃料としても利用が見込まれている。

 NKKは経済産業省資源エネルギー庁の支援により、DMEを大量かつ安価に製造する直接合成技術の開発に取り組んできた。すでに、今回の研究法人の設立に合意した各社は昨年10月、DMEのマーケティングや製造事業化を検討する共同出資会社も設立している。《編集部》

「アルコール燃料が火災を起こす、とは何だ」ガイアエナジー、国など提訴

2001年12月11日 Response

 ガイアエナジー社はこのほど、国やホンダなどを相手に総額2億円の損害賠償を求める訴えを東京地裁に起こした。「高濃度アルコール燃料が火災を起こすという一方的な発表により、損害を被った」というのが理由だ。実際、8月の火災報道から販売量は急速に落ち込んでいる。

 同社は「ガイアックス」の低公害性を高めた「ニューガイアックス」を来年3月にも発売する方針だが、自動車メーカー側は「車検証に記載されている燃料以外を使った場合はメーカー保証の対象外」という姿勢を崩しておらず、アルコール系燃料をめぐる安全性はいまだスッキリと決着していない。《編集部》

メーカー・役所 vs ガイアエナジー、アルコール燃料直接対決が迫る

2001年11月13日 Response

 経済産業省、国土交通省らが設置した「高濃度アルコール含有燃料に関する安全性等検討委員会」は、今月末にガイアエナジーら燃料事業者の社長に対するヒアリングを実施する。燃料の成分や製造過程での品質確保方法などを聴取する予定だ。

 国内でアルコール軽自動車燃料を製造する3〜4社すべてを呼ぶ予定だが、中でも自動車メーカーと国交省相手に「車両火災報道で損害を被った」と反発する最大手のガイアエナジーが、ヒアリングの場で何を主張するか注目される。《編集部》

ホンダ『オデッセイ』をリコールせよ!! ガイアエナジー社が申し入れ

2001年10月29日 Response

 ガイアエナジー社はこのほど、国土交通省とホンダ、メーカー団体である日本自動車工業会に対し、1997年10月〜1998年10月に生産されたホンダ『オデッセイ』をリコールするよう申し入れた。「アルコール系燃料使用に伴う車両火災は燃料のせいではなく、車両設計にミスがある」というのが理由。

 対象のオデッセイは同型式のエンジンを搭載しているにもかかわらず、燃料系部品で3回も設計変更しているという。申し入れが聞き入れられない場合、「風評被害で燃料の販売が落ち込んだ」として、この三者を対象にした損害賠償請求を起こす考えだ。《編集部》

高効率の次世代燃料生成プラント開発---生産量が数千倍に

2001年10月17日 Response

 東洋エンジニアリングは16日、次世代のディーゼル代替燃料として注目されているジメチルエーテル(DME)の大型製造プロセスの開発にメドをつけたことを明らかにした。現在の数トンでしかない日産量を、7000〜8000トンクラスまで一気に引き上げることができるという。

 今回開発されたものは、天然ガスを合成ガス(一酸化炭素と水素の混合ガス)に転換し、これを触媒上で反応させることによりメタノールを経由してDMEを製造する技術。これまでの製造プロセスよりもはるかに効率が良く、年産250万トンの製造ができる。

 中東などの比較的価格が安い天然ガスを原材料として使用できることや、年産量が実用的数値まで近づいてきたことで、DMEの次世代燃料としての地位はさらに高まったといえるだろう。《石田真一》

アルコール系燃料の調査委員会でトラブルの実態が明らかに

2001年09月28日 Response

 国土交通省、経済産業省合同の「高濃度アルコール含有燃料に関する安全性等調査委員会」の初会合が28日、経済産業省内で開かれた。初会合と言うこともあり、今回はトラブル実態の報告や安全性調査をどのように行うかなどが議論された。

 委員会に提出された資料によると、アルコール系燃料が原因と見られる車両トラブルは全部で59件も発生しており、現象別では、(1)アルミ部品の腐食・詰まり35件、うち車両火災4件、(2)ゴム部品の不良8件、(3)空燃比異常9件、(4)その他・原因不明が7件となっている。

 またメーカー別では、日産15件、トヨタ13件、ホンダ13件、三菱9件、富士重3件、マツダ2件、いすゞとスズキが1件ずつ。輸入車2件だった。

 ダイハツと日産ディーゼル、日野、ヤマハ、カワサキはトラブルの報告が無かった。 《編集部》

アルコール系燃料は危険か安全か---国土交通省で検討会がスタート

2001年09月20日 Response

 国土交通省は20日、アルコール系自動車燃料の安全を調べる検討会の人選を決定し、28日に初会合を開くと発表した。検討会にはガイアエナジーも参加を申し入れていたが「公正中立な検討をするため」(国交省)に却下された。メンバーは行政や学識経験者のほか、メーカ団体である日本自動車工業会、新日本検定協会、日本海事検定協会、化学物質評価研究機構、ガソリンスタンドの団体である全国石油協会のメンバーが入っている。

 車両火災やエンジン不調をもたらした、とされるアルコール系燃料をめぐっては、「燃料に問題がある」とガソリンの利用を呼びかける自動車メーカーに対し、「燃料は問題ない。悪いのは自動車の設計だ」とガイアエナジーは反論しており、年度内にもまとまる検討会の結果が注目される。《編集部》

ガイアエナジーが自動車メーカーと全面対立

2001年09月13日 Response

 ガイアエナジー社は13日に行われた会見の席上、ホンダやトヨタが公表した車両火災について「アルミ材は高温・高圧下で損傷を受ける事例が報告されている」、「当社の調査によれば、アルミ製のパッキンがゴム製に変更された事例があった」と、自動車メーカーの設計に原因があるとの見解を示し、メーカーと全面対立する姿勢を打ち出した。

 会見に同席した同社の顧問弁護士は「燃料漏れはクルマに原因があり、リコールすべき問題と考えている」、「(ホンダやトヨタの発表は)営業妨害ということで訴訟も検討する」と主張した。同弁護士はまた、「現在は証拠を固めている段階」とも語り、近くメーカーを相手に具体的な手段を講じる考えを明らかにした。《編集部》

ようやく行政も本腰---アルコール系自動車燃料を本格調査へ

2001年08月21日 Response

 国土交通省、経済産業省、資源エネルギー庁は、アルコール系自動車燃料に関する検討委員会を発足させる。製造・販売業者や流通の実態、ガソリン車に対する影響など、実車実験も踏まえて今年度までに調査する方針だ。

 アルコール燃料については、ガイアエナジーが製造した『ガイアックス』を使用したクルマで火災事故が4件発生。その後、元々この燃料を製造していた九州の会社が新たなブランドの新燃料を販売するなど、様々なトラブルが相次いでいる。《編集部》

ガイアックスが仲間割れ? ガイアックス? ガイアエナジー??

2001年08月20日 Response

 ガイアックス株式会社(福岡市博多区)は、新しいアルコール系燃料『EPiON(エピオン)』の発売を23日発表する。同社はアルコール燃料の元締めガイアエナジーの元代理店だが、契約問題のもつれから分裂した。ガイアエナジーの燃料漏れと発火事件からチャンスとばかりに新燃料を発売する。

 ガイアックスは福岡県にあるガイアエナジーの元販売代理店で、名称をガイアックスのまま使用している。ガイアエナジーが資金繰りが悪化した際、ガイアックスがガイアエナジーに代わってアルコール燃料を製造していたが、今年3月に製造委託契約をガイアエナジーが一方的に打ち切った。ガイアックスは契約打ち切りの無効と損害賠償を求めて提訴している。

 そんな中、ガイアエナジーのアルコール燃料を使用したホンダ『オデッセイ・プレステージ』などの不具合問題が勃発、同社は苦境に陥っている。それを突くようにガイアックスは新しいアルコール燃料を発売する。ガイアックスでは「ガイアエナジーの燃料とは一切関わりの無いもので、当社の燃料は製造開始以来、現在までに一度も不具合は発生していない」としている。

 ガイアックスは23日に記者会見を開き、エピオンと他社のアルコール燃料との違いを明解にし、製造を受託している大手製造会社の技術陣も説明するとしている。内輪の争いから、自動車の不具合問題が発生、この機にのって新燃料を発売、しかも似たような名前の会社同士で、果たしてアルコール燃料は本当に大丈夫なのか?《編集部》

「寝耳に水です」とガイアックス、エンジントラブルの実情を把握しておらず

2001年08月10日 Response

 ホンダやトヨタなど、高濃度アルコール含有燃料を使ったクルマにエンジンルーム火災などのトラブルが相次いで発生している問題について、該当する燃料『ガイアックス』を発売しているガイアエナジーは9日、「安全性に問題はないが、事故につながる可能性はないか改めて調査する」と発表した。

 ガイアックスについては、スバルの高出力エンジンや、バイクとの相性が悪いことは以前からも指摘されており、ガイアエナジー側でもそれを認めて使用を見合わせるようにWebサイトなどで注意喚起をしていた。また、デジタルメーターを使ったトヨタ『ソアラ』、日産『レパード』などでは、比重の違いから誤作動を起こすことも明らかにしている。

 しかし、今回クローズアップされたホンダ『オデッセイ・プレステージ』でのエンジンルーム火災事故などについては、同社側では詳細をキャッチしておらず、マスコミ各社からの発表があって初めて事態を正確に把握したという。

 ホンダやトヨタ、三菱などアルコール系燃料によるトラブルを発表した会社は、いずれも「アルコール燃料に含まれるブタノール系物質とエンジン部品のアルミ材が化学反応を起こして、腐食した」としているが、ガイア側では「金属腐食試験も実施しており、その際には問題ある数値は出ていなかったが、念のために再実験を早急に行って確認したい」としている。《石田真一》

新燃料『ガイアックス』がエンジンを壊す---ホンダが異例の注意勧告を実施

2001年08月09日 Response

 ホンダは9日、アルコール系の新燃料『ガイアックス』を使ったため、アルミ製部品が腐食して燃料が漏れ、エンジンルーム内で火災を生じた事例を明らかにするとともに、ユーザーに対して使用自粛を呼びかける異例の注意勧告を発表した。

 現在までに報告されている事故事例は合計9件。トラブルの発生件数が最も多かったのは、1997年10月に発売され、3.0リットルV6エンジンを搭載した『オデッセイプレステージ』で7件。うち4件はエンジンルームでの火災を引き起こすなど重大な事故となった。他には1994年型の『シビック・クーペ』が燃料漏れを起こしたケースが1件、軽自動車『ライフ』で燃料パイプが破損したケース1件現在までに報告されている。いずれのケースもエンジン内のアルミ製部品がアルコールに侵されて腐食、そこから燃料などが漏れてトラブルに発展したという。

 同社では「すべてのモデルは無鉛ガソリンの使用を前提に設計されている」として、ガイアックスの使用停止を呼びかけるともに、トラブルを起こした前例のあるモデルを中心に、アルコール燃料を使ったことのあるユーザーを対象とした無料点検を実施することを決めている。ただし、その点検でエンジンに不具合が発見された場合、修繕費用はユーザーの自費となる。

 問い合わせは「オデッセイ・プレステージ専用ダイヤル(0120-886-198)」で受け付けている。《石田真一》

トラブルは多い? トヨタもアルコール系燃料使用停止を呼びかけ

2001年08月09日 Response

 トヨタ自動車は9日、高濃度アルコール含有燃料を使用した4車種で合計13件の燃料漏れやエンジンの故障などのトラブルがあったとし、ホームページに使用燃料についての注意書きを掲載したと発表した。

 高濃度のアルコール燃料では同日、ホンダが発火事故の事例があったと国土交通省に報告している。トヨタ車では発火などの重大な事故には至っていないものの『RAV4』、『オーパ』、『クラウン』、『マークII』でエンジンの始動不良やエンスト、燃料漏れの事例があった。

 同社はホームページ上で、自動車は指定された燃料(ガソリンは無鉛ガソリン、ディーゼル車は軽油)の使用を前提に設計されていることや、高濃度のアルコール燃料を使用した場合には最悪の場合、火災に至る可能性があるとし、メーカー指定の燃料を使用するよう注意を促している。《編集部》

アルコール系燃料トラブルの実態調査へ

2001年08月09日 Response

 国土交通省はアルコール系燃料のトラブルを重視し、日本自動車工業会を通じてメーカー各社に同様のトラブルが起こっていないかどうか調査を指示した。今月末にもまとまる調査の結果をみながら対応を検討する方針。

 ただ、「基本的にユーザーがどの燃料を入れようと自由」(自工会)のため、ガソリン使用を推奨するくらいしか手がないのが実情だ。燃料自体も法的に問題はなく、法的措置などは難しいという。《編集部》

経済産業省と民間が共同で新燃料「DME」商業化へ---世界初

2001年04月12日 Response

 経済産業省と伊藤忠、三菱ガス化学、出光興産などの石油メーカーは共同で天然ガスを原料とする軽油代替燃料である「ジメチルエーテル(DME)」の商業化に乗り出す方針を明らかにした。供給開始予定は2006年で、DMEの商業化に着手するのは世界でも初めてだという。

 DMEは、硫黄酸化物やすすを全く発生せず、窒素酸化物の発生量も2割程度低減できるなど、環境負荷が小さく、ディーゼル自動車用燃料等の幅広い用途に使用可能な新燃料。性質がLPGの主成分であるプロパンやブタンと類似しており、貯蔵、輸送手段にLPGの技術がそのまま応用できるのも特長のひとつ。

 経済産業省では1997年から炭鉱メタンガスを原料に、DMEを製造する技術プラントの研究を石油・化学メーカーと共同で行ってきたが、今後は実用化するために大量生産技術の確立を目指すことになった。

 総合商社の伊藤忠商事、石油・化学製品メーカーの三菱ガス化学、出光興産、インドネシア石油、日揮などが今月中に合弁会社を設立し、オーストラリア西部に製造プラントを建設する。《石田真一》

「環境に優しいガイアックス」は不当表示---環境省が実験結果を発表

2001年03月01日 Response

 環境省は、アルコール系燃料ガイアックスの排出ガスの実態調査の結果を発表した。

 ガイアックスはガイアエナジー社が販売するアルコール系燃料。1リットルあたりの単価がガソリンよりも20円程度安いため、ユーザーの関心も高く、供給するスタンドが急増している。同社では「ガイアックスはガソリンよりも低公害な燃料」と宣伝し、これを販売しているため、環境省が排ガスを測定した。ガソリン100%、ガイアックスとガソリン50%づつ、ガイアックス100%の三種類の燃料を使って排ガスを測定して比較した。。

 この結果、ガイアックスは一酸化炭素及び炭化水素は改善する傾向だったが、窒素酸化物は悪化する傾向を示した。二酸化炭素、燃費はほぼ同じ結果となり、有害物質のアルデヒドの排出量も悪化した。

 環境省ではこうした結果から、ガイアックスはNOx排出量が多く低公害燃料とは言えないとの見解で、資源エネルギー庁に調査結果を通知する。同庁では、これを受けて「低公害燃料」としているガイアックスを不当表示で改善を指導する見込み。 《編集部》

環境省を敵にガイアエナジー、新アルコール燃料を販売

2001年02月23日 Response

 アルコール系のガソリン代替燃料『ガイアックス』を販売するガイアエナジーは21日、アルコール100%で構成された新燃料『ジェネス』のテスト販売を開始した。現在はガイアックスを供給する東京都青梅市内のスタンドのみの提供で、1リットルあたりの価格は95円となっている。

 ジェネスはマレーシアの国営企業であるペトロナスと共同で開発したもの。これまで販売していたガイアックスには石油業界の猛烈な反発から、軽油取引税を課すという動きが見られていたが、アルコール100%で構成されたジェネスは日本の現行法では課税対象に当たらない。そのため低価格化が期待されるが、現状ではテスト販売に留まっているため、ガイアックスよりも価格面では上回ってしまっている。

 ガイアックスについては、環境省が「排出ガス中のNOxはガソリンをオーバーし、アルデヒド系の排出物を含むなど、環境には決して優しくない」という調査結果をまとめ、ガイアエナジー社の分析とは真っ向から異なる否定的な見方を示している。《石田真一》

メタノールが今後の燃料の鍵となる?

2000年11月29日 Response

 アメリカでガソリン燃焼率を高めるためにメタノールを混入したMTBEの販売が水質汚染の原因になる、と廃止が決定され、アメリカ、カナダのメタノール生産業者は大きな打撃を受けた。そこで現在メタノールの使い道としてもっとも注目が集まっているのが燃料電池だ。

 日本は世界最大のメタノール生産国。そこでカナダのメタノ−ル生産業者、メタネックス社は三菱と協力し、メタノールベースの燃料電池のメリットの宣伝につとめている。目的は日本の自動車メーカーに燃料電池の共通燃料となるメタノールを提供することだ。日本でメタノールの需要を上げ、小売りシステムを構築することが最大の課題となる。

 メタノールは確かに現在多くのメーカーで燃料電池のエネルギーとして採用されている。しかしフォード、BMWなどガソリンから燃料電池を動かす、あるいは水素ボンベから直接、というシステムも同時に開発が進められており、メタノールが将来どれだけのシェアを確保できるのかは未知数だ。《Sachiko Hijikata, US editor》

フォードがトウモロコシ燃料スタンド設立を援助

2000年11月10日 Response

 エタノールの含有量が85%で、残りがガソリンという環境重視の混合燃料、「E85」が代替燃料として注目されている。エタノールはほとんどがトウモロコシを原料としており、アメリカでは安価な石油にかわる燃料として期待が集まっている。

 このE85を広めるため、フォードではミネソタ州に40カ所のE85のガソリンスタンドを設立するための援助を行う。現在フォードでは『トーラス』、『レンジャー』、『エクスプローラー』が代替燃料使用車として販売されている。

 フォードでは2002年までに全米で400カ所のE85ガソリンスタンドの設立を目指しており、環境に優しいフォード車のイメージアップをはかっている。 《Sachiko Hijikata, US editor》

フォード、代替燃料エンジンの実験をタイ国内で実施へ

2000年09月21日 Response

 フォードは現在、代替燃料車の開発を急ピッチで進めているが、タイ政府とエタノール車について共同研究を行うということについて合意に達し、19日に発表した。廃棄穀物などを原料にした「バイオエタノール生産技術」の研究や、エタノール自動車の走行実験などを、2001年8月までのスケジュールでタイ国内で実施する。

 今回の共同研究では、フォードのタイ現地法人が生産するライトトラック『レンジャー』に、エタノール対応に改造したディーゼルエンジンを搭載。エタノールに軽油やガソリンなどを混合した状態でエンジンを稼動させ、走行実験を行う。フォードは今回の実験が成功した場合には、東南アジア地区でのエタノール車販売に乗り出すとみられ、成果が注目される。《石田真一》

石油連盟の悲鳴「アルコール燃料課税を高くしてくれ!!」

2000年09月21日 Response

 石油連盟は、ガイアックスが販売するアルコール系燃料に課税することを要望していく方針を決めた。原油が高騰しており、これまで値上げの半分以上をガソリンスタンドが負担していたが、それにも限界が近付いている。ガソリンを値上げすればアルコール燃料との価格格差が広がり、石油連盟では客がそっちに流れるのを警戒して課税による値上げを要望したもの。

 ガイアックスではアルコールを成分調整して既存のガソリン車に使えるようにしており、原料アルコールはシンガポールから輸入している。既存のガソリンよりも市販価格が安くそれによって売り上げを伸ばしており、ガイアックスの店舗数も120店と拡大している。

 ガソリンには1リットル当たり54円程度の揮発油税がかかっているが、アルコール燃料は約1リットル当たり32円の軽油引取税だけが課せられおり、この差がそのまま価格差となって現れている。石油連盟ではアルコール燃料の軽油引取税もガソリンの揮発油税並みに課税を引き上げるよう求めていく。

 一方、石油連盟の岡部会長は原油価格の高騰を価格に転嫁し、10月からガソリン1リットル当たり3円、灯油1リットル当たり8円を値上げするとの見通しを発表した。ガソリンが上がれば、アルコール燃料との価格差がさらに広がり、ユーザーをとられかねない事態で、アルコール燃料の課税引き上げを強く要望していく方針だ。《編集部》

あちらが立てばこちらが……アメリカでアルコール混入ガソリン

2000年07月07日 Response

 アメリカ環境保護局(EPA)はクリーン・ガソリンの規制を少々ゆるめ、エタノール混入のリフォームガソリンの導入を進める方向を示した。リフォームガソリンとは排ガスを減少させるためにガソリンに燃焼剤などを混入させ、二酸化炭素などの排出量を少なくさせたもの。

 アメリカではMTBEがもっとも一般的に使用されてきたが、MTBE燃焼ガスによる地下水への汚染の被害が各地で報告され、州によっては使用禁止を決定したところも。エタノールはMTBEにかわる存在だがやや燃焼率は落ちるため、排ガスに含まれるガソリン燃焼ガスからの有害成分が多くなる。EPAではその規制を緩和させてエタノール使用を奨励していくという。

 ただしエタノールはMTBEにくらべると価格が高い。アメリカ中西部などのトウモロコシの産地ではエタノールを大量に生産することで経済的にうるおうだろうが、一般的にはガソリン価格の上昇につながると考えられている。EPAではエタノールの価格が釣り上げられないよう監視も行うと発表しており、今後のリフォームガソリンの主流がエタノールになることは間違い無さそうだ。《Sachiko Hijikata, US editor》

全米で静かなブームを呼ぶ代替燃料『E85』とは?

2000年04月18日 Response

 エタノールを主原料とした新しいタイプのガソリン、E85が注目を集めている。アメリカでは現在1ガロンあたり1ドル80セント前後(約50円/リットル!)のガソリンの高値が続いており、この傾向は少なくとも夏頃までは続く、とされている。そのためより安く、従来の石油と変わらないパフォーマンスを持つ燃料に注目が集まるのだ。

 E85は85%のエタノールに15%の石油を混ぜた混合燃料。もちろん従来のガソリン車には使用できないが、現在フォード、GM、ダイムラークライスラー、マツダが販売している8モデルのFFV(代替燃料車)に利用されている。

 現在全米で登録されているFFVは3万台だが、今後この数字は倍々ゲームで増えることが予想されている。FFVはアメリカ政府が進めているプロジェクトで、エネルギー省が公式スポンサーとなっている。

 またエタノールはE85のような代替燃料としてだけではなく、石油に10%プラスすることで燃焼剤としても利用されている。特にMTBEが水質汚染の元凶とされている現在、エタノールのガソリン添加剤としての注目度も高い。トウモロコシを原料とするエタノールは資源の枯渇を心配する必要がなく、アメリカ国内で自給できる、という点も将来性を感じさせる。

 今後FFVは郵便局のクルマなどに重点的に配属される予定で、E85を常備するガソリンスタンドも全米に広がっていく予定。燃料電池車が一般的になる前に、こうした代替燃料車は低公害車としてブームとなる可能性も充分だ。 《Sachiko Hijikata, US editor》

エタノール産業が記録的な売り上げ増、その理由は?

2000年03月14日 Response

 アメリカではガソリンの添加剤であるMTBEによる河川などの汚染が社会問題となっている。このため使用を制限する州が出てきているが、大気汚染を防止するためにガソリンをよりよく燃焼させるMTBEのような添加剤は必要なもの。そこで注目を集めているのがエタノールだ。MTBEほどの酸化力はないが、水質を汚染しない添加剤としてガソリンへの混入が進められているのがその理由。

 今年1月には平均で1日1万3000キロリットルが生産され、月間の生産量は39万5000キロリットル。これは改良型ガソリン(RFG)の77%にエタノールが使用されるに充分の量だ。

 またエタノールが人気を集めているもうひとつの理由は、このところのアメリカでのガソリン価格の高値。一方エタノールの減量となるトウモロコシは安値が続いており、エタノールを添加することで高いガソリン価格を多少は抑えられることもエタノールの使用に拍車をかけている。カリフォルニア州ではすでに 2003年にMTBEを完全に禁止することが決定しており、エタノールの需要は今後も高まりそうだ。 《Sachiko Hijikata, US editor》

新型ガソリンは地下水を汚染する問題浮上!! 集団訴訟に発展する可能性も

2000年01月21日 Response

 数年前からアメリカで導入され、「燃焼率が高く大気汚染が少ない」とされる新型ガソリン。だが、 成分中のMTBE(メチル化ブタンエタノール)が水に溶けやすい性質を持っており、地下水汚染の原因になるのでは、という新たな問題が持ち上がっている。

 ニューヨーク州の最高裁判所による調査では、州内の何千もの井戸に汚染の可能性があり、飲料水として不適当とされているものも増加している。MTBEには発ガン性が指摘されており、今後井戸に汚染被害のあった15万世帯以上から石油会社に対する集団訴訟が起こされる可能性もある。

 ニューヨーク州における汚染の状況は www.mtbecontamination.com というウェブページでも確認できるが、こうしたネット作りが今後全米で必要とされる、と被害者の弁護団は述べている。

 ガソリン燃焼率を高める MTBE は現在年間45億バレル近くが生産されており、石油会社がこれから得る利益も数十億ドルと言われている。導入以前からMTBEによる地下水汚染の可能性は論議されていたにも関わらず、石油会社は強引に導入を決定した、というのが被害者側の言い分である。

 ニューヨーク州では、昨年の夏からMTBEの使用を控える様石油会社などに通告しているが、石油会社としても政府が要求する大気汚染の少ないガソリンを販売するには、いまのところMTBE以外の方法は無い。大気汚染の減少か地下水の汚染か、という厳しい二者択一をアメリカ人は迫られていることになる。《Sachiko Hijikata, US editor》

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