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あなたって、



玄関ドアの閉まる音がした。

容赦のない閉め方。
小さなアパートだから、ちょっとした振動でも響き渡っちゃうのに…。
それに…私…寝てるのに…。


「夕方、友達と飲みだから」と出かけていった。
「何食べるの?」って聞くと、「闇鍋」という答えだった。
目を細め、「うっしっしっ」なんて人にはとても見せたくない表情だった。
「そっか。今夜は冷えるって言ってたものねぇ」
この人の友人は、概ねハチャメチャだから、あながち嘘ではないだろう。
本気で、やってそうだ。長靴とか…。
それでも、「早く帰るから」と少し申し訳なさそうに出ていった。

あまり期待もしてなかったんだけど、思ったよりは、早いかな…。
ぼやっとした浅い眠りの中で、そんなことを考える。

ぱちっ

部屋の蛍光灯がついた。ま、まぶ…しぃ。
無意識に布団の奥へともぐる。
私が、寝てる…のにぃ。
まったく容赦ない。
どさっと荷物を床に置く音がして、がさごそと聞こえるのは、着替えているからか。
しばらくすると音がしなくなった。
少しも…しない。
どうしたんだろ。
顔を半分だけ布団から出して、目を半分だけ開けた。
蛍光灯がまぶしい。
蛍光灯と私の間に人影が見えた。
イツミだ。
いたずらっ子のような笑顔。
冷たい指先が私の額を撫でた。
いつまでそこに座ってるの?
そう考えて、声を掛けようと…。

!?

いきなりイツミは布団に入り込んできた。
中に、ぶわぁっと冷気が入り込んでくる。
うはっ。さぶっ。
その叫びは、声にならなかった。

冷たい鼻先が私の頬に擦りつけられる。
アルコールを含んだ甘い吐息が首筋にかかる。
両腕がするすると私の背中に回り、ぐいっと体がイツミ側に引き寄せられる。
冷たい膝頭が、柔らかい太股の間に入り込んでくる。
脹ら脛や向こう脛を堪能するように、遠慮なく動かし続けられる足。
しだいに…溶けあってしまう。
体も……心も…。

「…イツミ」
「あん?」

「……あなたって、まったく容赦ない」