TOPIC No.5-3-5d 雪印/大樹工場(脱脂粉乳から黄色ブドウ球菌毒素検出)


元工場長ら2人に有罪 雪印乳業の集団食中毒

2003/05/27 中国新聞ニュース
 雪印乳業の集団食中毒事件で死者一人、重軽症者百九十九人の業務上過失致死傷罪などに問われた同社大樹工場(北海道大樹町)の元工場長久保田修被告(53)と元製造課粉乳係主任泉幸一被告(51)の判決公判が二十七日、大阪地裁で開かれた。

 氷室真裁判長は久保田被告に禁固二年、執行猶予三年、罰金十二万円(求刑禁固二年、罰金十二万円)、泉被告に禁固一年六月、執行猶予二年(求刑禁固一年六月)を言い渡した。

 氷室裁判長は「国民の間に乳製品一般の安全性や信頼性に対する不安感が引き起こされ、社会に与えた影響は大きいが、反省している」と判決理由を述べた。

 約一万三千人が下痢などの症状を訴えた戦後最大規模の食中毒事件の公判は、発生から約三年で判決が言い渡された。

 争点となっていた奈良県内の無職女性=当時(84)=の死亡について、氷室裁判長は「血液検査を怠るなど医師の不適切な行為で引き起こされた」として、両被告の過失との因果関係を否定、業務上過失致死罪の成立を認めず計二百人への業務上過失傷害罪を適用した。

 また雪印乳業について「以前にも同様に温度管理の不適切による食中毒を起こしているにもかかわらず安全衛生への注意を怠った」と指摘。「両被告は、食品製造にかかわる者にとって最も基本的な注意義務である安全に対する注意を怠った」と厳しく非難した。

 さらに「安心して購入した被害者は日常生活に支障をきたすなど被害を受けており、厳しい処罰感情も当然」と述べた。

 大阪府警は公表が遅れ被害を拡大させたとして、当時の石川哲郎社長ら元幹部二人も書類送検したが、嫌疑不十分として起訴されなかった。

 判決によると、久保田被告らは大樹工場で二〇〇〇年三月末、停電事故が起きた際、脱脂粉乳の原料が入ったタンクを高温のまま放置。黄色ブドウ球菌が増殖したにもかかわらず大阪工場に出荷し、それを原料にした低脂肪乳を飲んだ二百人に食中毒を発症させるなどした。また久保田被告は、営業停止になるのを避けるため、保健所に虚偽の報告をした。

 起訴された三被告のうち、元大樹工場製造課長は交通事故で死亡した。

大樹工場が原因と断定 雪印食中毒

2000.12.19 The Sankei Shimbun
専門家会議最終報告案 大阪工場は無関係

 雪印乳業による集団食中毒事件で、大阪市と厚生省の合同専門家会議は十九日までに、最終報告案をまとめた。

 原因を北海道大樹町の同社大樹工場の脱脂粉乳と断定。事件後ずさんな管理が指摘され、中間報告では「食中毒の要因として否定できない」とされた大阪工場(大阪市都島区)は、原因には無関係として外された。

 最終報告案では、食中毒の原因となった黄色ブドウ球菌が発生した場所は特定できなかったが、増殖した場所を脱脂粉乳製造ラインの遠心分離機周辺と回収乳タンク周辺の二カ所に絞った。

 生乳から脱脂乳を抽出する遠心分離機の周辺は、三月三十一日の停電で、脱脂乳が五時間近く温度管理されずに放置され、黄色ブドウ球菌が発生しやすい状態になっていた。

 また、脱脂乳を一時貯蔵する回収乳タンクも十時間以上、同じ状態が続いていたという。

 最終報告案は、原材料の脱脂粉乳が、大樹工場で黄色ブドウ球菌に汚染されたまま大阪工場に運ばれたことが、今回の食中毒事件につながったとしている。

 合同専門家会議は、最終報告案を二十日に大阪市で開く会議に提出する。

雪印乳業大樹工場が操業再開

2000.10.14(11:24)asahi.com
 営業禁止命令が解除された雪印乳業大樹工場(北海道大樹町)は14日朝、56日ぶりに操業を再開した。午前7時半すぎ、原料乳を入れたタンクローリー(10トン)の第1便を、大樹町の伏見悦夫、広尾町の大野進両町長や酪農関係者、従業員ら約50人が出迎えた。同工場は「開かれた工場を目指す」としており、この日、報道陣にチーズの生産ラインを公開した。

 同工場で毒素を含む脱脂粉乳を製造したことが判明して約2カ月。この間、粉乳の日付改ざんや管理のずさんさなどが次々と発覚し、今月10日になっても、営業禁止命令解除への最終的な製品検査もパスできないほどで、関係者は最後まで振り回された。

 ようやく操業再開にこぎつけ、「タンクローリーを見て胸が熱くなった」との声も聞かれ、工場内は歓迎ムードが盛り上がっていたが、同社に対する消費者や酪農関係者らの強い不信感は当分消えそうもない。

チーズのテスト生産開始 雪印大樹工場

2000.10.03The Sankei Shimbun
 雪印乳業の低脂肪乳による集団食中毒事件で営業禁止処分を受けている同社大樹工場(北海道大樹町)は、チーズ製造工程施設の安全性が二日に確認されたため、再開に向けたチーズのテスト生産を三日始めた。

 テストは七日までの予定で、帯広保健所の職員が立ち合い、生乳約二百十トンを使ってカマンベールチーズなど計八種類のチーズを実際に製造する。同保健所は完成した製品に食中毒菌や毒素のエンテロトキシンがないかを検査し、問題がなければ来週にも営業禁止処分を解除する見通し。

 北海道は八月二十三日、脱脂粉乳のサンプルから毒素が検出されたとして、同工場を営業禁止処分にした。これに対し、同工場は九月二十二日に再開の条件となる衛生面の改善計画書を提出、設備の洗浄や消毒を実施していた。

 同工場は雪印のナチュラルチーズの約五○%を製造する主力工場。

雪印集団食中毒事件 大樹、大阪両工場の現場検証終了

2000.09.29(22:52)asahi.com
 雪印乳業大阪工場(大阪市都島区)製の乳製品による集団食中毒事件で、大阪府警の都島署捜査本部は29日、大阪工場と食中毒の主因とみられる汚染された脱脂粉乳を製造した大樹工場(北海道大樹町)の現場検証を終了した、と発表した。

 大樹工場では約1年半前にも脱脂粉乳を別の脱脂粉乳の製造に再利用していたが、捜査本部は、その時の再利用は細菌による汚染ではなく、水分超過が理由だったと結論付けた。

 検証は大阪工場が7月2日に始まり、製品のサンプルなど約530点を押収。黄色ブドウ球菌の毒素に汚染されていない脱脂粉乳を使い、乳製品約500本の製造実験をした。一方、大樹工場は今月8日に始まり、業務日誌など約610点を押収。停電を想定し、高温の水を製造ラインの配管内などに流し込んで滞留時間ごとの温度変化のデータを収集した。捜査本部は検証を踏まえ、両工場幹部らから本格的な事情聴取を進める。

 捜査本部の調べによると、大樹工場では3月末の停電が原因で汚染された脱脂粉乳を再利用し、別の脱脂粉乳を製造しており、この一部が食中毒を引き起こした大阪工場の製品に使われていた。約1年半前にも脱脂粉乳の再利用があったが、この時は水分が多く、商品として不適切との理由で再利用したという。

大樹工場の検査開始 雪印食中毒/帯広保健所、安全性確認へ

2000.09.25 The Sankei Shimbun
 雪印乳業の低脂肪乳による集団食中毒事件で、汚染脱脂粉乳を製造し営業禁止処分を受けている雪印大樹工場(北海道大樹町)が改善計画書を提出したのを受け、帯広保健所は二十五日午前、安全性を確認するため、貯乳タンクの立ち入り検査を始めた。

 大樹工場では大阪府警の現場検証が続いているが、帯広保健所は貯乳タンクについては支障がないとして、ふき取り検査などで安全性を確認した後、貯乳タンクに限って処分解除も検討する。

 この日は帯広保健所の職員三人が工場内の生乳受け入れ用の貯乳タンク(容量約八十トン)を布でふき取る検査を実施。布を保健所に持ち帰り、エンテロトキシンや一般細菌の有無などを調べる。

 北海道は大樹工場で製造した脱脂粉乳から黄色ブドウ球菌の毒素が検出されたため、先月二十三日、大樹工場を営業禁止処分とした。大樹工場側は今月二十二日、営業再開への条件となる衛生面の改善計画書を提出していた。

雪印食中毒、脱脂粉乳が主因 厚生省・大阪市が中間報告

2000.09.20(22:13)asahi.com
 雪印乳業の製品による集団食中毒で、厚生省と大阪市の原因究明合同専門家会議(座長=小崎俊司・大阪府立大大学院教授)は20日、第2回目の会議を開き、「今回の食中毒の主因は同社大樹工場製の脱脂粉乳である」とする中間報告をまとめた。毒素が検出された大阪工場製の低脂肪乳と発酵乳に使用されており、これらの製品の製造工程で唯一の共通点だったことを理由としている。しかし、この脱脂粉乳の使用を確認できない製品の有症者も報告されていることから、「大阪工場におけるずさんな衛生管理も要因として否定できない」とした。

 合同専門家会議は、細菌学や公衆衛生学を専門とする公立研究所や大学の学識経験者10人で構成される。

 発表された中間報告の概要によると、黄色ブドウ球菌の毒素が検出された大阪工場製品は、品質保持期限6月28日―7月4日の低脂肪乳と、同7月13、14日の「のむヨーグルト毎日骨太」、同7月12―14日の「のむヨーグルトナチュレ」。

 大阪工場の原材料の使用記録は不備が多かったが、調合記録や倉庫の入出庫伝票などから、これらの製品には6月20日に同工場に入荷された問題の大樹工場製脱脂粉乳が使われていることが確認、または推測された。低脂肪乳と発酵乳の製造工程は全く別であることも確認されており、専門家会議では、この脱脂粉乳が主因であると判断した。

 しかし、大阪工場の製品では、問題の脱脂粉乳が入荷される以前に製造された低脂肪乳や、この脱脂粉乳の使用が確認できない「毎日骨太」「カルパワー」「コーヒー」などを飲食した人からも症状の訴えが寄せられている。中間報告では、「その病因物質は確認できない」とした。

 一方で中間報告では、大阪工場の不衛生な管理実態も指摘した。本来週1回と決められているのに、最長21日間洗浄されていなかったバルブがあったことや、移動式脱脂粉乳溶解機の適正な洗浄が確認できなかったことなどを列挙。

 小崎座長は、「脱脂粉乳を原因とした場合、現時点では説明できない有症者がいるので、大阪工場の実態に要因があることも否定できないとした」という。

 同会議は今後、大樹工場での停電時やその後の復旧状況についての解明をしていくとしている。

雪印茅野工場のヨーグルトから毒素 大樹工場の粉乳使用

2000.08.30(22:30)asahi.com
 黄色ブドウ球菌の毒素が検出された雪印乳業大樹工場(北海道大樹町)製の脱脂粉乳を、長野県茅野市にある同社の子会社、八ケ岳雪印牛乳茅野工場が乳製品の原料に使っていた問題で、長野県は30日、同工場製のヨーグルトから毒素を検出したと発表した。県は同日、八ケ岳雪印に商品回収を命じた。同社は関係製品を社内検査で「安全」と判断し、1週間余り市場に流しており、検査の甘さと対応の遅れが裏付けられた。

 毒素が検出されたヨーグルトは、今月15日に茅野工場が製造した「雪印牧場の朝」。

 八ケ岳雪印は15日に雪印乳業本社から問題の粉乳の回収を指示され、翌日、原料使用を打ち切った。だが、15日までの商品は、一部のサンプルを調査しただけで安全と判断して出荷。23日に北海道が粉乳の汚染を公表して初めて自主回収した経緯がある。

汚染脱脂粉乳1年半前にも再利用 雪印大樹工場幹部供述

2000.09.10(06:45)asahi.com
 雪印乳業大阪工場製の乳製品による集団食中毒事件で、食中毒の汚染源とみられる脱脂粉乳を製造した大樹工場(北海道大樹町)の幹部が、大阪府警の都島署捜査本部の調べに対し、「1年半前にも、社内規定を上回る一般細菌数を検出した脱脂粉乳を再利用して別の脱脂粉乳を製造した」と供述していることが9日、わかった。捜査本部では、問題となった脱脂粉乳製造の1年半前にも汚染された脱脂粉乳を再利用したことが、今回の脱脂粉乳再利用の判断に影響を及ぼした可能性もあるとみて、工場関係者から引き続き事情を聴いている。

 調べによると、1998年秋ごろ、大樹工場で製造した脱脂粉乳から社内規定を上回る一般細菌数が検出された。当時の雪印乳業の規定は現在と同じ1グラム当たり9900個以下。このときの検出値はこの値を超えていたが、厚生省令の基準(5万個以下)は下回っていたという。同工場はその数日後、この脱脂粉乳を再利用し、生乳と一緒に新しく脱脂粉乳を製造し、出荷していた。一般細菌数が増えた理由は不明で、この脱脂粉乳を使用した製品で食中毒の発症は確認されていないという。

 調べに対し、工場幹部は再利用した理由について、「一般細菌が社内規定を上回っていたのを知っていたが、高温殺菌すれば問題ないと思った」と話しているという。

 これまでの調べによると、大樹工場では今年3月31日午前11時ごろ停電事故が発生。製造中の脱脂粉乳の原料乳が加温された状態で3時間滞留し、黄色ブドウ球菌が大量増殖して毒素が発生し、高温殺菌後も残ったとみられている。同工場は4月1日に製造した脱脂粉乳900袋のうち、社内規定を上回る一般細菌数が検出された450袋を別の生乳と合わせて再利用し、10日に脱脂粉乳820袋を製造。このうち、278袋が大阪工場に入荷された。

 大樹工場幹部は4月の再利用について、「1年半前に問題がなかったので、今回も大丈夫と考えた」と説明しているという。

雪印、事前に毒素検出/大樹工場の脱脂粉乳 大阪市発表まで回収せず

2000.09.07The Sankei Shimbun
 雪印乳業大阪工場(大阪市都島区)製の乳製品による食中毒事件で、雪印乳業は、大阪市が大樹工場(北海道大樹町)製脱脂粉乳からの毒素検出を発表する半月前に、自社の研究施設で毒素を独自に検出していたことが六日までの大阪府警の調べで分かった。雪印乳業はこの事実を府警には報告したが、一般には公表せず、問題の脱脂粉乳も回収していなかった。同社は食中毒の発生直後から検査を実施し、早い段階で大樹工場の脱脂粉乳が原因だったとの見方を強めていたとみられ、府警で関係者から事情を聴いている。

 調べによると、雪印が独自に毒素を検出したのは、大樹工場が四月十日に製造し、埼玉県戸田市内の倉庫に保管していた脱脂粉乳四百袋のうちの一袋(二十五キログラム)。

 同社の分析センター(埼玉県川越市)は、食中毒発覚直後の七月初め、大阪工場で使った原料の汚染を疑い、製造元の五工場から脱脂粉乳を取り寄せて検査した。七月末には高性能の毒素検査機を導入、改めて同じ脱脂粉乳を検査したところ、毒素に対し陽性の反応が出たため、検査結果を府警に連絡した。

 この際、同社では、食中毒発生につながる原因が初めて解明されたにもかかわらず公表を見送ったばかりか、すでに出回っていた問題の脱脂粉乳についても、大阪市の発表(八月十八日)まで回収しなかった。

 府警は八月十一日から大樹工場を捜索し、工場内にあった四月十日製の脱脂粉乳のサンプルや流通過程にあった戸田市内の倉庫内の脱脂粉乳を押収。府立公衆衛生研究所で調べたところ、毒素を検出した。工場内のサンプルの検査結果は、大阪市を通じて発表した。

 これについて、雪印では独自に検査を行ったことは認めているが、「検査結果は府警に連絡しているので、毒素が出たかどうかはいえない。大樹工場で同じ日に製造された脱脂粉乳は大阪工場などで使い切っており、製品が出回ることはなかったため、あえて公表の必要はないと考えている」と説明している。

雪印汚染粉乳の保管倉庫を調査、新たに改ざん45袋確認

2000.08.31(22:46)asahi.com
 毒素に汚染された雪印乳業大樹工場(北海道大樹町)製の脱脂粉乳が新たに見つかった問題で、北海道帯広保健所は31日、汚染粉乳が保管されている帯広市の運送会社の倉庫を立ち入り調査した。同工場製の脱脂粉乳の在庫をすべて調査した結果、品質保持期限が手押しスタンプで改ざんされたとみられる袋が新たに45袋見つかり、同社や同保健所は毒素の検査や実際の製造日の確認を急いでいる。

 立ち入り調査は保健所の職員3人が約2時間半かけて行った。調査結果によると、運送会社の倉庫には、今年6月30日から8月13日にかけて製造されたとされる同工場製の脱脂粉乳が計2488袋あった。うち「6月30日製造分」の45袋は、すべて品質保持期限が手押しスタンプで印字されていた。

 保健所はこのうち3袋分の検体を持ち帰り、毒素の有無などを検査する方針。同社に対しても自主検査を指示するとともに、実際の製造日の確認を求めている。

汚染された粉乳の保管倉庫を立ち入り検査 帯広保健所

2000.08.31(21:17)asahi.com
 毒素に汚染された雪印乳業大樹工場(北海道大樹町)製の脱脂粉乳が新たに見つかった問題で、北海道帯広保健所は31日午前、汚染粉乳が保管されていた帯広市の運送会社の倉庫の立ち入り調査に入った。保管されている粉乳の正確な量や製造日時などを調べる。

 雪印は当初、汚染が問題となった4月10日に製造された脱脂粉乳は、750袋(1袋25キロ入り)と公表していた。ところが、実際には約70袋多い約820袋が製造され、この約70袋を含む計216袋の脱脂粉乳が「7月12日製造分」としてこの倉庫に保管されていたことが分かった。

 同社の説明によると、同工場では恒常的に、脱脂粉乳の未出荷分の一部を帳簿(製造日報)に記載せずに保管。製造量が不足した時に、品質保持期限(製造日から1年半)を改ざんして、手押しのスタンプをつけて出荷していたという。

 雪印によると、4月10日製の脱脂粉乳は、この倉庫を含む3カ所の倉庫から大阪工場などに出荷されていた。

大樹工場製の汚染粉乳、発表2日前に使用中止

2000.08.24The sankei Shimbun
問題認識?長野県が調査

八ケ岳雪印茅野工場

 黄色ブドウ球菌の毒素が検出された雪印乳業大樹工場の脱脂粉乳を、八ケ岳雪印牛乳茅野工場(長野県茅野市)が原料として使っていた問題で、茅野工場では大樹工場の脱脂粉乳の汚染について大阪市の発表があった今月十八日より以前に使用を控えていたことが二十四日、分かった。長野県食品環境水道課は同日、製品の自主回収にいたる経過に疑問があるとして、茅野工場の関係者から事情を聴くなど調査を始めた。

 食品環境・ケ課によると、四月一日に大樹工場で製造され、出荷された脱脂粉乳のうち三百六十袋(一袋二十五キロ)が茅野工場に納入された。茅野工場はこのうち六十袋を使って今月十四、十五の両日、雪印カルパワーなどの乳飲料や発酵乳などを製造した。

 これらの乳製品の製造後、大樹工場から納入された脱脂粉乳のうち三百袋が残っていたが、茅野工場はこの脱脂粉乳を使用することを控え、別の工場で製造された脱脂粉乳に切りかえていたことが分かった。

 さらに、十六日には自主的に製造ラインを停止し、製造途中の製品を廃棄処分にしていた。

 大樹工場で製造された脱脂粉乳が、黄色ブドウ球菌の毒素「エンテロトキシンA」に汚染されていたことが初めて明らかになったのは、今月十八日に大阪市が行った記者会見だった。

 しかし、茅野工場が大樹工場製の脱脂粉乳の使用を取りやめたのは二日前の十六日だったことから、大阪市の発表前に脱脂粉乳の安全性に問題があることを認識していた疑いがある。

 このため、食品環境水道課では、茅野工場が問題を把握しながら県に報告せず、問題が明るみに出た二十三日になって製品の自主回収などの措置をとったのではないかとみて詳しく調べる。

雪印乳業の東京本社広報部

 今月十一日から十四日にかけて大阪府警が大樹工場に原料の調査に入ったため、同工場の脱脂粉乳を入れていた茅野工場に十五日夜、大樹工場以外の原料を使用するよう指示した。

「原料乳に問題なし」ホクレンと農協が発表 雪印問題

2000.08.21(00:59)asahi.com
 雪印乳業大樹工場(北海道大樹町)の脱脂粉乳から黄色ブドウ球菌の毒素が検出された問題で、北海道の原料乳生産者団体であるホクレンと大樹町、広尾町両農協が20日、記者会見し、「工場に搬入するまでの段階では原料乳に問題がなかった」と発表した。

 ホクレンなどによると、両町の各酪農家は1日2回搾乳した生乳を大型冷蔵庫に貯蔵し、2日に1回巡回してくるタンクローリーで同工場に送り出す。タンクローリーの運転手は日報に農家ごとの乳温を記録しており、毒素が検出された脱脂粉乳の製造日である4月10日までの10日間は平均で5度、最高で9度と安全なレベルだったという。

 また、農家ごとに10日に1度実施する細菌検査でも、直近の4月3、4日のデータでは、1ミリリットルあたりの生菌数が平均4000個、タンクローリー単位の検査でも平均7000個、最高8万7000個で、ホクレンの自主基準値である10万個を下回っていたという。

 ホクレンの板東寛之牛乳共販課長は会見で「このデータでは細菌の増殖はありえない。(毒素の原因が生産者段階にある可能性は)全くないのではないか」と述べた。

停電が毒素発生の要因か? 雪印の大樹工場

2000.08.22(22:24)asahi.com
 雪印乳業大阪工場の集団食中毒に関連し、同社大樹工場(北海道大樹町)製の脱脂粉乳から黄色ブドウ球菌の毒素が検出された問題で、製造日から10日ほど前の3月末に停電があり、生産ラインが一時ストップしていたことが22日、道の検査でわかった。道はこのトラブルと毒素発生の関連を調べている。また、道は問題の製品と同時期につくられた保存サンプルから毒素を検出しており、23日午前にも検査結果を公表する。

 道関係者によると、問題の製品がつくられる10日ほど前の3月末に、同工場で停電が発生したことがわかった。道はこのトラブルによって、その後の製造工程での素材の温度管理に支障が生じて菌が繁殖し、毒素が発生する要因になった可能性もあるとみている。

 北海道電力によると、当時大樹町全域で、雪によるショートが原因で電圧が低下したとみられるトラブルが発生したという。

 また、「4月10日製造」と記載される製品の実際の製造日は、生産ラインが稼働する4月9日から11日までの3日間で、この時期につくられた複数のサンプルから毒素が検出された。これは大阪市の検査とも符合するが、道は毒素の発生量が食中毒を引き起こす程度だったかどうかについて詰めの分析を進めている。また、製造工程に菌が増殖するような状況があったかどうかについても検証している。

 北海道通産局によると、大樹工場では4月10日にも日中に約3時間の停電があった。しかし、道はこの停電については、「それ以前につくられた製品からも毒素が検出されており、今回の問題とは無関係」と説明している。

他社に原料乳搬入/雪印大樹工場操業停止

2000.08.21The Sankei Shimbun
生産農家、需要に不安ぬぐえず

 雪印乳業大樹工場(北海道大樹町)が製造した脱脂粉乳から黄色ブドウ球菌の毒素が検出され、同工場が操業停止になったことで、原料乳を搬入していた大樹町農協と広尾町農協は二十一日、生産農家が生産した原料乳を同工場に代わって直接、近隣の乳業メーカーへの搬入を始めた。

 両農協はこれまで、生産農家二百五十戸から毎日約三百トンの原料乳を計八台のタンクローリーで集め、大樹工場に納入していた。今回の操業停止決定後も、いったんは大樹工場のタンクに搬入したのち、他の工場へ運ぶ応急処置が取られていたが、雪印側から「操業停止中の受け入れは困難」との連絡があり、両農協は改めて対応を検討。その結果、北海道全域から二十台のタンクローリーが集められ、集められた原料乳は直接、近隣の乳業メーカーへ搬入されることになった。

 受け入れ態勢が整い、生産農家の混乱はひとまず回避された形だが、広尾町農協の今井彦一組合長は「乳牛からは毎朝、生乳が出る。いつまでも他地域の乳業メーカーが受け入れてくれる保証はない。一刻も早い大樹工場の再開を望んでいる」と話している。

雪印の社長が農協などにおわび行脚 でも酪農家は素通り

2000.08.20(20:45)asahi.com
 雪印乳業大樹工場(北海道大樹町)の脱脂粉乳から黄色ブドウ球菌の毒素が検出されたのを受けて、同社の西紘平社長が20日、同工場に原料乳を出荷している大樹、広尾の両農協と、大樹、広尾両町の役場を訪れ、「ご迷惑をかけ、申し訳ない」とおわび行脚をした。

 同社広報部によると、西社長らは19日午後7時半ごろ大樹工場に到着、現場で事態収拾の陣頭指揮をした後、20日午前中に役場などを回った。しかし、地元の酪農家や消費者、商業関係者、報道陣には会わず、20日午後、帯広空港発の飛行機であわただしく東京に戻ったという。

 一方、帯広保健所は20日午後、同工場で再調査と検査を行った。

 同保健所によると、この日の調査は補足的なもので、久保田修工場長や製造ラインの責任者らから、衛生管理の状況や製造記録、流通日報などを中心に聞き取り調査をし、脱脂粉乳製造工程も再検査した。同保健所生活食品課の三冨和男主幹は「調査は一応、終わった。大阪市や厚生省とも協議しながら、データと検体の分析結果を精査したい」と話した。

道が製造状況聞き取り、手がかりなし 雪印乳業大樹工場

2000.08.19(23:52)asahi.com
 雪印乳業大阪工場の集団食中毒事件に関連し、北海道十勝支庁大樹町の同社大樹工場製造の脱脂粉乳から黄色ブドウ球菌の毒素が検出された問題で、19日午前に同工場の立ち入り検査を始めた道は、同日午後9時半まで担当者から製造時の状況を聞くとともに、工場内で衛生上の問題点がなかったかを調べた。現時点では原因解明につながる有力な手がかりは得られておらず、道は今後も検査を続ける。

 当時の製造記録などの資料は大半が大阪府警に提出されて残っていないため、検査は日中はヒアリングを中心に進められた。夕方からは工場内の製造ラインなどを調べた。現在の工場内の状況については、特に衛生管理上の問題は見つからなかった。

 また、毒素が検出された脱脂粉乳が製造された4月10日前後の製造過程を、担当者が現場で再現する形で検証。この日の製品の流通経路についても調べた。これらの点について、道食品衛生課は「まだ不明の点が多く、さらに聞き取りを行う必要がある」としている。

 雪印北海道支社によると、大樹工場で脱脂粉乳を製造するのは週に1、2日程度。4月は生産が比較的少ない時期に当たり、製造日は1日と10日の計2日だけという。

 道は工場にあった脱脂粉乳の保存サンプルなど二十数検体を持ち帰り、毒素の有無を調べることにしている。また、製造記録の一部についても工場側から提供を受けた。

別製品ラインで製造/雪印大樹工場 毒素検出の粉乳

2000.08.19The Sankei Shimbun
 
フル稼動で流用、管理行き届かず?

 雪印乳業大樹工場(北海道大樹町緑町)で製造された脱脂粉乳から黄色ブドウ球菌の毒素が検出された問題で、同工場の脱脂粉乳は専用のラインではなく、チーズの副産物である「ホエイ」の生産ラインを使って製造していたことが、雪印関係者の話で十九日分かった。問題の脱脂粉乳が製造された四月は原料となる生乳の生産量が多い一方、飲用の牛乳の需要が少なく、各工場では保存のきく脱脂粉乳などの生産ラインがフル稼働になる。生産ラッシュ時に衛生管理が行き届かず、脱脂粉乳が汚染された疑いが浮上、“人災”の可能性が強まった。

 大樹工場はチーズの専門工場で、最新鋭の製造ラインを備えた雪印の看板工場。雪印関係者によると、大樹工場では通常、チーズとホエイを製造。ホエイはチーズの製造過程で原料乳を攪拌(かくはん)した際に抽出されるホエイ成分を加熱、濃縮したうえで霧状にし、高圧処理で粉末にしたもの。ホエイは、菓子の原料などとして使用される。

 脱脂粉乳は原料乳から脂肪分を抜いた脱脂乳を、ホエイと同じように加熱や高圧処理を経て粉末にしたもので、ホエイの生産ラインを使用すれば製造できる。脱脂粉乳は主にバターと水を加えて加工乳を製造するのに使われ、一年以上の保存が可能で汎用(はんよう)品目も多い。

 雪印によると、大樹工場では脱脂粉乳は月に二、三回しか製造しておらず、チーズの製造量が一年間に一万トン以上なのに対し、脱脂粉乳はわずか三百トンしか作られていないという。

 さらに、問題の脱脂粉乳が製造された四月から六月にかけては、乳業メーカーが一年間のうちで生産ラインをフル稼働させる時期にあたる。

 これは、気温が温かくなり、牛の食欲が増して生乳の生産量が増える一方、飲用の牛乳の需要は夏場にならなければ高くならず、原料乳を効率的に利用しようとして脱脂粉乳など保存のきく製品を生産しなければならないためだ。

 大樹工場ではホエイを生産するラインを使い、急ピッチで脱脂粉乳を製造している過程で、黄色ブドウ球菌が発する毒素に汚染された疑いがある。

大樹工場が操業停止

2000.08.19 The Sankei Shimbun
 
 大樹工場で製造された脱脂粉乳から黄色ブドウ球菌の毒素「エンテロトキシン」が検出されたのを受け、雪印は十九日、大樹工場の操業を自主的に停止した。当面の間、操業が停止される見通し。

 食中毒事件との因果関係や衛生管理状況を確認するため、北海道庁が同日午前から立ち入り検査に入ったことに加え、同社も製造工程を自主調査するためで、両方の調査が終わり次第、操業を再開させる方針。

チーズの“城”看板倒れ/雪印大樹工場汚染 「最新鋭」のはずが…/h3>2000.08.19 The Sankei Shimbun

北海道ブランドにも傷

 「北海道の工場で汚染」−。雪印の大樹工場(北海道大樹町緑町)で製造された脱脂粉乳から毒素が検出されたニュースは、雪印が全国の二十工場で操業を再開し、ようやく信頼回復に向けて動き始めた矢先だった。これまで「大阪の事件」というイメージがあったが、雪印発祥の地である北海道の工場で、しかもトップブランドに引き上げたチーズの専門工場での汚染であるだけに、雪印のイメージダウンはさらに深刻化、主力商品のチーズにまで影響が及ぶ恐れも出ている。

 黄色ブドウ球菌の毒素が検出された大樹工場は、ナチュラルチーズやカマンベールチーズを製造。プロセスチーズを製造する中標津工場(北海道中標津町)も同じ規模だが、最近のカマンベール人気もあり、大樹工場は最新鋭のシステムを備えた「東洋一のチーズ工場」といわれる。

 「雪印にとってチーズへの思い入れは、バターと並んで格別」と雪印関係者。明治乳業、森永乳業よりも後発メーカーだった雪印をトップブランドに押し上げたのは、チーズとバターの売り上げ。チーズのシェアは、六〇%以上を占めた昭和四十年代よりは下がったものの、現在も三〇%近くを維持し、一〇%前後の二位以下を大きく引き離す。

 消費者にとっても、雪印のチーズは特別なものらしい。大阪工場(大阪市都島区)で製造された「低脂肪乳」(加工乳)を飲んだ人が食中毒症状を訴え、大半のスーパーなどが雪印の全製品を店頭から撤去したが、チーズやバターは販売を続ける店もあった。「食中毒は加工乳で起きた話。飲み物は買わないが、バターやチーズは買う」という消費者の声も多かったが、チーズ工場での汚染が今後、どんな影響を与えるか懸念される。

 また、北海道の工場で生産された商品が汚染されたことに危機感を強める関係者もいる。役員まで務めたOBは、雪印の企業イメージを「雪印=チーズ・バター=北海道」と表現する。

 大正十四年に「北海道製酪販売組合」としてスタートした雪印にとって、北海道はいわば“城下町”。食中毒の発覚後、雪印商品の販売をやめていたスーパーやコンビニが、まず販売を再開したのも北海道だった。「消費者のニーズの高さを受けた措置」(大手コンビニチェーン)で、その後の全国への販売再開に道を開いたが、今回の汚染で地元の雪印離れが起こらないともかぎらない。

 脱脂粉乳は食中毒事件を起こした低脂肪乳など加工乳製品のほか、アイスやヨーグルトにも使用する基幹的な原料。雪印広報部は「大樹工場では脱脂粉乳の製造量は少なく、被害が拡大する可能性は小さい」とみているが、チーズと北海道という二重の“看板汚れ”の影響は予想以上のものかもしれない。

地元に募る不安/雪印大樹工場

2000.08.19 The Sankei Shimbun
 年間六千四百トン。ナチュラルチーズの生産量で東洋一の規模を誇る雪印乳業大樹工場では十九日、事務所の正面玄関を固く閉ざしたまま。操業停止にもかかわらず、通常通りに出勤した約百二十人の社員、従業員たちは黙々と業務をこなしていた。

工場長「ここから、とは」/酪農家「善後策考えねば」

 新聞で毒素検出について知ったという工場作業員(五三)は、「通常通り勤務するようにいわれただけ。毒素の検出については何も知らされていない」と言葉少な。早朝、町内約百四十戸の酪農家から集められた搾りたての生乳約二百トンも通常通り納入された。生乳を積んだ「ミルクローリー」と呼ばれる運搬車が工場に入ると、白衣に身を包んだ従業員が、生乳を黙々と工場内のタンクに移し替えていた。「生産者の方々に混乱を起こさないよう、通常通り生乳を受け入れました」。生乳は、近隣の雪印別海工場や磯分内工場に振り分ける予定という。

 午前八時五十五分。帯広市内から車三台に分乗してきた北海道庁の検査官六人が到着。工場総務課の渡辺純一課長に「製造工程の検査に来ました」と説明し、正面入り口から大樹工場に入り込んだ。

 七月の大阪府警の捜査で関係書類が押収されているため、今回は主に久保田修工場長からの聞き取り調査が行われている。久保田工場長は「まさかここから毒素が出るとは思ってもいなかった。検査には全面的に協力し、原因を突き止めたい」と話すが、従業員らは検査官に対し不安な視線を向けていた。

 地元のシンボル工場への立ち入り検査に、地元農家の衝撃も大きい。町内の全酪農家から集めた生乳全量を同工場に出荷している大樹町農協では、午前九時半から緊急理事会を開いた。同農協の高橋亘組合長(六四)は「安全宣言が出た直後にこんな事態になってしまった。出荷制限につながらないよう、善後策を考えなければ…」と終始、不安顔だった。(大野正利)

雪印食中毒事件 終息一転ズサン体質

2000.08.19 The Sankei Shimbun
本社「寝耳に水」操業再開直後…甘い管理

 厚生省の「安全宣言」が出され、終息の方向にあった雪印乳業の集団食中毒事件は十八日、北海道・大樹工場製造の脱脂粉乳から毒素が検出されたことで、新たな展開を見せた。原料自体の汚染が食中毒の原因だった疑いが強まり、大阪工場だけでなく、大樹工場から脱脂粉乳を納入していた神戸などの各工場にも衝撃が広がり、監督自治体から改めて不信の声があがった。だが、東京の雪印本社は「寝耳に水」と動揺するばかりで、問題の“震源”となった大樹工場も説明に応じないなど、危機管理が甘い雪印の体質を露呈した。

 大阪市の発表を受け、雪印・東京本社の広報部の幹部は「まさに『寝耳に水』の調査結果。手元に大樹工場に関する資料さえなく、何も答えようがない」と困惑しきった表情だ。

 大阪市の発表は午後六時から開かれたが、東京本社がこの情報を把握したのは発表のわずか三十分前。それも報道各社の問い合わせによってだった。

 この幹部は「大阪工場の話と思っていたが、まさか他の工場のこととは…」と言葉を詰まらせ、大樹工場については「チーズの工場とは知っているが、脱脂粉乳を作っているかどうかも分からない」と答えるのがやっと。

 今回の食中毒は「大阪で起きた事件」ということもあり、これまで東京本社と西日本支社(大阪市)で同時に会見を開くことが多かったが、「情報一元化」で今回は報道対応も東京本社に一本化された。だが、「早い対応を求められているのは分かるが、事実関係を把握しなければ会見も開けない」と要領を得ず、「完全把握したうえで十九日以降なるべく早く社長が会見して説明する」と相変わらず危機管理意識が欠如した対応に終始した。

 本社の管理部門に勤務する若手社員は「全工場で操業が再開され、十六日でやっと十日たったばかりなのに。安全宣言の根幹が揺らいでしまう。また商品回収という大きなパニックにならなければいいのですが」と言葉少なに語った。

 東京本社では役員や担当部長が対策会議を開き、同日夜、全工場の脱脂粉乳を再検査すると発表した。十九日に同工場が道庁と帯広保健所の緊急調査を受けるとともに、同社も直ちに同工場で製造した同一ロットの脱脂粉乳を再検査し、製造工程に問題がなかったかを調査する。また同工場以外の脱脂粉乳も自主的に安全確認するという。

         ◇

 《雪印乳業大樹工場》 明治十九年に牧場が作られて以来、酪農が盛んだった北海道大樹町に、昭和十四年に集乳所として設立された。昭和三十二年からチーズの製造を始め、現在は各種ナチュラルチーズや粉乳類を製造している。約八万二千平方メートルの広大な敷地に、約二百五十人の従業員が働いている。昨年度一年間で、同社全体の製造量の約一%に当たる約二百九十トンの脱脂粉乳を製造、ほぼすべてが道外の別の工場に出荷されている。

雪印食中毒、原料の脱脂粉乳から毒素 北海道の工場製造

2000.08.19(11:11)asahi.com
 雪印乳業(本社・東京)大阪工場の製品による集団食中毒事件で、大阪市は、同社大樹(たいき)工場(北海道大樹町)が製造した脱脂粉乳から黄色ブドウ球菌の毒素(エンテロトキシンA型)が検出されたと18日、発表した。これまで毒素は大阪工場製の低脂肪乳など3製品から検出されているが、大阪工場以外の製品や原材料からの検出は初めて。同市は原因究明のため、大阪工場の施設や衛生管理などを調査中だが、原料として使われたこの脱脂粉乳が汚染源になったことも考えられるとしており、今回の食中毒に関係する施設が大阪工場以外に広がる疑いも出てきた。

 毒素が検出されたのは、大樹工場が保管していた脱脂粉乳の2サンプル。大阪府警が押収し、大阪府立公衆衛生研究所に鑑定を依頼していた。いずれも4月10日に別々のラインで製造されたもので、1グラム当たり4ナノグラム(ナノは10億分の1)の毒素がそれぞれ検出された。

 同工場で同じ日に作られた脱脂粉乳は25キロ入り計750袋。このうち大阪工場には6月20日、278袋が入荷した。うち一部は6月23日製造分の発酵乳に使われていた。脱脂粉乳はこのほか、回収命令の出た低脂肪乳や、毎日骨太、コーヒー牛乳などにも使われるが、同工場では入荷した原料についてごく一部しか記録に残していないため、問題の脱脂粉乳がそれらの製品に使われたかどうかは今のところ判明していない。

 この脱脂粉乳は、同工場以外にも神戸工場(神戸市)に32袋、福岡工場(福岡市)に40袋が運ばれた。いずれも製品の原料として使い切ったという。大阪市には神戸工場製の低脂肪乳や毎日骨太などによる発症者が34人届けられており、同市は神戸市と福岡市に連絡して、被害などの調査を依頼した。

 残りの脱脂粉乳は埼玉県の倉庫会社が保管しており、府立公衆衛生研究所が現在検査中という。

 同研究所によると、脱脂粉乳は、生乳を高温で加熱殺菌した後で濃縮し、さらに加熱、乾燥して作られる。熱に弱い菌そのものは検出されなかったことから、同研究所は、殺菌前に温度管理の不備などが原因で菌が増殖し、毒素を出したと推測している。

雪印大樹工場、操業を一時停止 立ち入り検査に協力

2000.08.19(11:14)asahi.com
 雪印乳業大阪工場の集団食中毒事件に関連して、同社は19日朝から、原料に使われたとみられる脱脂粉乳から黄色ブドウ球菌毒素が検出された大樹工場(北海道十勝支庁大樹町)の操業を停止した。一方、北海道食品衛生課と帯広保健所はこの日朝、同工場の立ち入り検査を始めた。同社は「検査に協力するために一時的に操業を止める必要があると判断した」としている。

 大樹工場には、脱脂粉乳のほかにチーズの製造ラインがある。立ち入り検査の間に異物が混入するなどのおそれがあるため、全面的にラインを止めることにしたという。再開時期について、同社は「検査が終了した段階で検討する」としている。

 同社によると、大樹工場の生乳処理量は年間でチーズ用が6万6100トン、脱脂粉乳用が3500トン。チーズが主力で、脱脂粉乳を製造するのは週に1、2日程度という。

 大樹工場が操業停止したのを受け、道内の生乳流通を受け持つホクレン農協連合会は、19日に同工場に納入する予定だった生乳305トンを、ほかの乳業メーカーや雪印のほかの工場に振り向けた。

 ホクレンは「操業停止が長期化しても、配乳調整を続けて酪農家にダメージが出ないようにする」と説明している。

関係者絶句…「繁殖するはずない」/発祥の地でなぜ…

2000.08.19 The Sankei Shimbun
 今回毒素が検出された脱脂粉乳を製造していた大樹工場(北海道大樹町)は昭和十四年に集乳場として設立した歴史ある工場。家庭用乳製品を作るための主力工場として稼働していた。

 雪印乳業にとって北海道は発祥の地。新型設備もそろい、同社も「この工場なら絶対大丈夫」と衛生管理に一番の自信を持っていただけに、今回の毒素検出に関係者は大きなショックを受けた。

 これまで、雪印北海道支社では、大阪工場の食中毒事件を「特異な状況が重なった不幸な事件」との見方が強かった。ある製造担当の幹部社員は「北海道の工場は、内地(北海道以外の都府県)の工場とは違う。いい製品をつくろうと頑張り、衛生管理を徹底してやっている。大阪工場のような事件は考えられない」と話していた。それだけに、今回の毒素検出には言葉を失った。

 また、雪印乳業の元技術系幹部は「考えられない」と絶句した。「大樹工場周辺は四月でもまだ雪が残り、早朝は氷点下になるくらいに寒い。黄色ブドウ球菌が繁殖するはずがないのだが」と話す。

 一方、別の元技術系幹部は、脱脂粉乳からの毒素検出を聞いて、昭和三十年三月に起きた集団食中毒事件「八雲事件」を思い出した。北海道の八雲工場(閉鎖)で製造された脱脂粉乳が原因で、東京都の小学校で二千人近い患者を出したこの事件はこれまで雪印の「汚点」であり、衛生管理の大切さを学ぶための教訓とされてきたからだ。「徹底的に原因を解明しなければ、抜本的な対策は取れない。今こそ社員は原点を見つめ直してほしい」と話した。

雪印食中毒で厚生省が北海道や埼玉県に関連施設調査指示

2000.08.18(21:15)asahi.com
 雪印乳業大阪工場の食中毒事件で、原料の脱脂粉乳からも黄色ブドウ球菌の毒素が検出されたことを受け、厚生省は18日、原料を製造した工場のある北海道と、原料搬送先の牛乳工場などがある埼玉県、神戸市、福岡市に関連施設を調査するよう指示した。

 厚生省によると、問題の脱脂粉乳は北海道にある雪印の大樹工場で4月10日に製造され、雪印の大阪工場のほかに神戸、福岡の両工場と、埼玉県内の研究所と倉庫に運ばれた。

 大阪工場の事件の原因調査では、ほかの工場の製品からは同じ時期に被害者が出ていないことから、厚生省は「原料の脱脂粉乳などはシロではないか」(生活衛生局)とみてきた。それだけに、今回の毒素検出は「意外な感じだ」と受け止めている。

 ただ、同じ原料が使われた福岡工場の製品では食中毒事件が起きておらず、出荷されたのは気温の低い4月で菌が一気に増殖する時期とは考えにくいとして、「原料の汚染がどの程度、大阪工場の事件と関係があったか判断するのは今の段階では難しい」という。

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