TOPIC No.5-3-5 雪印食中毒事件

Index
a. 雪印/大阪工場、b.雪印/他の雪印工場への影響、c.その他牛乳(食中毒事件)、d. 雪印/大樹工場(脱脂粉乳から黄色ブドウ球菌毒素検出)

TOPIC No.5-3-5a 雪印/大阪工場(雪印食中毒事件)

01.雪印集団食中毒事件 byフリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
02.雪印乳業食中毒事件の原因究明調査結果について −低脂肪乳等による黄色ブドウ球菌エンテロトキシンA型食中毒の原因について− (最終報告)
03.雪印食中毒事件考えるシンポジウム(2000年10月7日)への報告 なぜ、雪印の大規模食中毒事件は起こったのか
04.“おいしい本物の牛乳作れ”酪農家・消費者ら強く要請 (新聞「農民」2000.7.24・31付)
05.雪印乳業食中毒事件で分かった「牛乳」の正体 光村憲治(食生活研究家)


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雪印食中毒判決

2003年05月28日 沖縄タイムス

事件風化させず改革を

 雪印乳業の集団食中毒事件で業務上過失致死傷罪などに問われた同社大樹工場(北海道)の元工場長ら二人の被告に対し大阪地裁は二十七日、執行猶予付きの有罪判決を言い渡した。

 この事件は、同社大阪工場で製造された低脂肪乳などを飲んだ約一万三千人が二○○○年六月以降、下痢などの症状を訴え、飲み残し製品から黄色ブドウ球菌の毒素エンテロトキシンが検出された。

 大樹工場ではタンク洗浄の際に発生した洗い汁を回収し、原料の脱脂粉乳に加え、大阪工場に出荷した。

 目先の利益にこだわり、消費者の信頼を裏切って戦後最大の食中毒事件を引き起こした企業の責任は重い。

 当時の社長ら元幹部二人については大阪府警が書類送検していたが、嫌疑不十分で不起訴になった。

 坂倉宏・日本大教授は「事件は個人ではなく、雪印乳業という会社の組織的活動による側面が大きい」と指摘している。

 二人の現場責任者への有罪判決だけでこの事件を風化させてはならない。同社は社会への背信行為を真摯(しんし)に反省し、食品会社として法令順守の企業倫理を確立すべきである。

 集団食中毒事件の後も雪印食品や日本ハムグループによる牛肉偽装事件など食品業界の不祥事が相次いだ。雪印食品は解散に追い込まれ、日本ハムの製品も店頭で一時撤去されるなど打撃を受けた。

 雪印乳業も集団食中毒事件から約三年になるが、消費者の信頼を取り戻すことができず、売り上げの激減から立ち直っていない。

 不祥事の発覚は内部告発が発端になったものが多い。内閣府は内部告発した社員を保護する「公益通報者保護制度」の最終案をまとめ、秋の臨時国会での新法成立を目指している。

 経済界には「内部告発は日本になじまない」との意見もあるが、会社の不祥事もみ消しや消費者被害の拡大を防止するためにも法整備を進める必要がある。

雪印元工場長ら2人有罪 集団食中毒事件 安全義務を怠る 大阪地裁判決  死亡因果関係は否定

2003年05月27日 西日本新聞

 雪印乳業の集団食中毒事件で死者一人、重軽症者百九十九人の業務上過失致死傷罪などに問われた同社大樹工場(北海道大樹町)の元工場長久保田修被告(53)と元製造課粉乳係主任泉幸一被告(51)の判決公判が二十七日、大阪地裁で開かれた。氷室真裁判長は久保田被告に禁固二年、執行猶予三年、罰金十二万円(求刑禁固二年、罰金十二万円)、泉被告に禁固一年六月、執行猶予二年(求刑禁固一年六月)を言い渡した。

 氷室裁判長は「国民の間に乳製品一般の安全性や信頼性に対する不安感が引き起こされ、社会に与えた影響は大きいが、反省している」と判決理由を述べた。

 約一万三千人が下痢などの症状を訴えた戦後最大規模の食中毒事件の公判は、発生から約三年で判決が言い渡された。

 争点となっていた奈良県内の無職女性=当時(84)=の死亡について、氷室裁判長は「血液検査を怠るなど医師の不適切な行為で引き起こされた」として、両被告の過失との因果関係を否定、業務上過失致死罪の成立を認めず計二百人への業務上過失傷害罪を適用した。

 また雪印乳業について「以前にも同様に温度管理の不適切による食中毒を起こしているにもかかわらず安全衛生への注意を怠った」と指摘。「両被告は、食品製造にかかわる者にとって最も基本的な注意義務である安全に対する注意を怠った」と厳しく非難した。

 さらに「安心して購入した被害者は日常生活に支障をきたすなど被害を受けており、厳しい処罰感情も当然」と述べた。

 大阪府警は公表が遅れ被害を拡大させたとして、当時の石川哲郎社長ら元幹部二人も書類送検したが、嫌疑不十分として起訴されなかった。

 判決によると、久保田被告らは大樹工場で二〇〇〇年三月末、停電事故が起きた際、脱脂粉乳の原料が入ったタンクを高温のまま放置。黄色ブドウ球菌が増殖したにもかかわらず大阪工場に出荷し、それを原料にした低脂肪乳を飲んだ二百人に食中毒を発症させるなどした。また久保田被告は、保健所に虚偽の報告をした。

 起訴された三被告のうち、元大樹工場製造課長は交通事故で死亡した。

雪印が子会社株の売却打診

2002年05月21日 Sankei Shimbun

 経営再建中の雪印乳業が子会社の食品卸、雪印アクセス(東京)について、保有する51%の株式のうち40%程度の売却を商社やメーカーなどに打診、筆頭株主の座を伊藤忠商事に譲る意向であることが21日、分かった。

 牛乳部門分離などに伴うリストラ費用を捻出(ねんしゅつ)するのが狙い。

 アクセス社は冷蔵輸送網を持ち、グループ内でも付加価値が高いとされる。100億円前後の売却益を得たい意向だが、「雪印側の打診する株価に難色を示す企業もある」(関係筋)ため、思惑通りとなるかは微妙な面もある。

雪印乳業、約9割減資へ

2002年05月03日 The Sankei Shimbun

 経営再建中の雪印乳業は3日、9割程度の減資を柱とした経営再建策の概要を固め、主力金融機関の農林中央金庫などと最終調整に入った。

 雪印はぎりぎりの減資と既に表明している経営陣の総退陣、追加リストラで株主責任と経営責任を明確にした上で、農林中金のほかUFJ銀行、みずほコーポレート銀行にも金融支援を要請する。

雪印、50%超す減資を2行に支援要請へ

2002年05月03日 Yomiuri On-Line

 子会社の牛肉産地偽装事件などで経営不振に陥っている雪印乳業の金融再建案が2日、固まった。50%超の減資を行うことで、株主責任を明確化するとともに、工場閉鎖や人員削減などのリストラを実施する資金として150億円前後をねん出する方針だ。
 さらに、減資後、資本増強のため、伊藤忠商事と全国農業協同組合連合会(全農)による増資を計画しており、増資額は150―200億円程度の方向だ。これらの増減資に加えて、債権放棄を含めた金融支援のセットで再建を目指す考えで、支援策を巡る交渉は週明けにも本格化する見通しだ。

農林中金が雪印に数百億円支援へ、債務超過を回避

2002年04月27日 Yomiuri On-Line

 子会社の牛肉偽装事件で業績が低迷している雪印乳業が、主力金融機関の農林中央金庫から数百億円規模の金融支援を受ける方向で調整に入ったことが26日、明らかになった。子会社や牛乳部門などの事業、子会社の切り離しに伴って来期以降、債務超過に陥る懸念があるためで、債権放棄と債務の一部を出資に振り替えるデットエクイティスワップ(DES)を組み合わせる案が有力だ。

 雪印乳業は、全国農業協同組合連合会(全農)と伊藤忠商事による増資の引き受けと、農林中金からの金融支援で早期の経営再建を目指す。

30日解散を正式決議 雪印食品株主総会2002/04/26 中国新聞
 偽装牛肉事件で業績が悪化し、経営再建を断念した雪印食品は二十六日、登記上の本店がある札幌市内のホテルで臨時株主総会を開き、商法に基づいて今月三十日に解散することを正式に決議した。岩瀬弘士郎社長ら役員六人が清算人に選任され、訴訟の対応や売掛金の回収、従業員の再就職先の確保などに努める。



雪印が食中毒の研究所を設立へ (2000.12.28) asahi.com

 雪印乳業の西紘平社長は28日、謝罪に訪れた大阪市で、食中毒の研究をする食品衛生研究所を、来年3月に設立することを明らかにした。菌や食品の研究をして、食中毒発生の防止や衛生教育に取り組みたいとしている。

雪印食中毒 下痢症状なお26人/大阪工場、来月で閉鎖

2000.12.22The Sankei Shimbun

 雪印乳業による集団食中毒事件で、雪印の西紘平社長らは二十二日、事件に関する内部調査がまとまったのを受け、東京都新宿区の東京本社で会見、事件から半年たった現在も下痢などで体調の回復していない被害者が二十六人いることを明らかにした。また、製造を停止していた大阪工場について廃業届を同日午後、大阪市保健所に提出し、来年一月末に閉鎖する方針も示した。

 雪印は事件後、「お客様ケアセンター」を設置して高齢者や妊娠中の女性らに対する継続的なケアを行っている。

 対象者は百二人にのぼり、このうち二十六人は下痢が続くなど健康状態がすぐれないほか、ショックから牛乳が飲めなくなった人もいるという。

 また、大阪工場について西社長は「全国で工場の再編を進めており、近いうちに閉鎖する方針だった」と述べた。

雪印、信頼回復めざし乳製品を無料でどうぞ (2000.10.18) asahi.com
 食中毒事件を起こした雪印乳業は18日、スーパーのイトーヨーカドーの関西地区を除く166店で、パック入り牛乳とチーズ計5万個を無料配布した。工場の検査態勢を強化したことや、消費者向けのフリーダイヤルを365日態勢で整えたことを知らせるビラも、一緒に配った。

雪印集団食中毒事件 大樹、大阪両工場の現場検証終了 (2000.09.29) asahi.com

 雪印乳業大阪工場(大阪市都島区)製の乳製品による集団食中毒事件で、大阪府警の都島署捜査本部は29日、大阪工場と食中毒の主因とみられる汚染された脱脂粉乳を製造した大樹工場(北海道大樹町)の現場検証を終了した、と発表した。

 捜査本部の調べによると、大樹工場では3月末の停電が原因で汚染された脱脂粉乳を再利用し、別の脱脂粉乳を製造しており、この一部が食中毒を引き起こした大阪工場の製品に使われていた。約1年半前にも脱脂粉乳の再利用があったが、この時は水分が多く、商品として不適切との理由で再利用したという。

雪印食中毒、脱脂粉乳が主因 厚生省・大阪市が中間報告 (2000.09.20) asahi.com

雪印、事前に毒素検出/大樹工場の脱脂粉乳 大阪市発表まで回収せず

2000.09.07The Sankei Shimbun

 雪印乳業大阪工場(大阪市都島区)製の乳製品による食中毒事件で、雪印乳業は、大阪市が大樹工場(北海道大樹町)製脱脂粉乳からの毒素検出を発表する半月前に、自社の研究施設で毒素を独自に検出していたことが六日までの大阪府警の調べで分かった。雪印乳業はこの事実を府警には報告したが、一般には公表せず、問題の脱脂粉乳も回収していなかった。同社は食中毒の発生直後から検査を実施し、早い段階で大樹工場の脱脂粉乳が原因だったとの見方を強めていたとみられ、府警で関係者から事情を聴いている。

 調べによると、雪印が独自に毒素を検出したのは、大樹工場が四月十日に製造し、埼玉県戸田市内の倉庫に保管していた脱脂粉乳四百袋のうちの一袋(二十五キログラム)。

 同社の分析センター(埼玉県川越市)は、食中毒発覚直後の七月初め、大阪工場で使った原料の汚染を疑い、製造元の五工場から脱脂粉乳を取り寄せて検査した。七月末には高性能の毒素検査機を導入、改めて同じ脱脂粉乳を検査したところ、毒素に対し陽性の反応が出たため、検査結果を府警に連絡した。

 この際、同社では、食中毒発生につながる原因が初めて解明されたにもかかわらず公表を見送ったばかりか、すでに出回っていた問題の脱脂粉乳についても、大阪市の発表(八月十八日)まで回収しなかった。

 府警は八月十一日から大樹工場を捜索し、工場内にあった四月十日製の脱脂粉乳のサンプルや流通過程にあった戸田市内の倉庫内の脱脂粉乳を押収。府立公衆衛生研究所で調べたところ、毒素を検出した。工場内のサンプルの検査結果は、大阪市を通じて発表した。

 これについて、雪印では独自に検査を行ったことは認めているが、「検査結果は府警に連絡しているので、毒素が出たかどうかはいえない。大樹工場で同じ日に製造された脱脂粉乳は大阪工場などで使い切っており、製品が出回ることはなかったため、あえて公表の必要はないと考えている」と説明している。

雪印、毒素に注意を払わず 食品衛生法違反の疑い

2000.08.24The sankei Shimbun
厚生省、温度管理徹底を通達

 雪印乳業大樹工場で黄色ブドウ球菌の毒素が検出された問題で、同社が工場の停電後、問題の原料乳を加熱殺菌したものの、細菌が生きていたときに出した毒素にまでは注意を払っていなかったことが判明した。「加熱後の冷却」という衛生管理の常識を軽視したずさんな管理に、厚生省では「食品衛生法に違反している」と指摘。二十四日までに、都道府県に対して、脱脂粉乳の製造過程で温度管理の徹底を業者に指導するよう通知を出した。

 北海道によると、停電により工場ライン全体は午前十一時から三時間停止。このため、約五〇度に加熱された原料は数分後に冷却工程に回るはずだったが、二〇−四〇度のまま滞留。この間、黄色ブドウ球菌が増殖、毒素が発生。大樹工場はこれを廃棄せず、再加熱して殺菌したが、毒素は残り、そのまま使用されてしまったという。

 食品衛生法では「有毒な、もしくは有害な物質が含まれ、もしくは付着し、またはこれら疑いのあるもの」「病原微生物により汚染され、またはその疑いがあり、人の健康をそこなう恐れのあるもの」は、販売のため採取、製造、加工、貯蔵などしてはならないと規定している。

 厚生省の「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令」(乳等省令)でも、牛乳や脱脂乳、加工乳について細菌数を一ミリリットルあたり五万以下と規定。さらに、保存方法の基準として「殺菌後は直ちに摂氏十度以下に冷却して保存すること」と定めている。このため、厚生省乳肉衛生課では同社の行為について「法令違反は明らか」としている。

 一方、殺菌については基準値を示す厚生省令も、毒素の測定方法や基準値までは示していない。酪農学園大酪農学科の安藤功一教授(食品科学)は「停電で細菌が繁殖しても、殺菌すれば大丈夫と考えて廃棄はしないのが乳業界の常識だ。脱脂粉乳の再利用についても、細菌数の基準をクリアできなかったものを再殺菌して再生するのはどのメーカーでもやっていることだ。毒素の測定が何ら規定されていない省令の不備が浮き彫りになった事件だ」と指摘している。

北海道と農協、近く連絡会議 対策検討開始

 雪印乳業大樹工場(北海道大樹町)が製造した脱脂粉乳から毒素が検出され、同工場が無期限の営業禁止処分となった事態を受け、北海道や地元農協などは二十四日、酪農分野などへの今後の影響を重くみて、対策の検討を始めた。道酪農畜産課は、生乳は周辺の他社工場へ納入され「現段階では酪農家への影響は出ていない」との見解を示しているが、関係団体などと近く連絡会議を開く予定。

 大樹町農協は道の検査結果の発表について、組合員に経緯などを説明するファクスを送付。また、販売団体のホクレン農業協同組合連合会(札幌市)と協議し、八月いっぱいは周辺の他社工場へ引き続き、臨時納入することを決めた。しかし、営業禁止処分が長期化した場合、集乳車の確保などに問題が生じる恐れもあるとして、理事会を開いて対応策を協議する方針。

大樹工場製の汚染粉乳、発表2日前に使用中止

2000.08.24The sankei Shimbun

問題認識?長野県が調査

八ケ岳雪印茅野工場

 黄色ブドウ球菌の毒素が検出された雪印乳業大樹工場の脱脂粉乳を、八ケ岳雪印牛乳茅野工場(長野県茅野市)が原料として使っていた問題で、茅野工場では大樹工場の脱脂粉乳の汚染について大阪市の発表があった今月十八日より以前に使用を控えていたことが二十四日、分かった。長野県食品環境水道課は同日、製品の自主回収にいたる経過に疑問があるとして、茅野工場の関係者から事情を聴くなど調査を始めた。

 食品環境・ケ課によると、四月一日に大樹工場で製造され、出荷された脱脂粉乳のうち三百六十袋(一袋二十五キロ)が茅野工場に納入された。茅野工場はこのうち六十袋を使って今月十四、十五の両日、雪印カルパワーなどの乳飲料や発酵乳などを製造した。

 これらの乳製品の製造後、大樹工場から納入された脱脂粉乳のうち三百袋が残っていたが、茅野工場はこの脱脂粉乳を使用することを控え、別の工場で製造された脱脂粉乳に切りかえていたことが分かった。

 さらに、十六日には自主的に製造ラインを停止し、製造途中の製品を廃棄処分にしていた。

 大樹工場で製造された脱脂粉乳が、黄色ブドウ球菌の毒素「エンテロトキシンA」に汚染されていたことが初めて明らかになったのは、今月十八日に大阪市が行った記者会見だった。

 しかし、茅野工場が大樹工場製の脱脂粉乳の使用を取りやめたのは二日前の十六日だったことから、大阪市の発表前に脱脂粉乳の安全性に問題があることを認識していた疑いがある。

 このため、食品環境水道課では、茅野工場が問題を把握しながら県に報告せず、問題が明るみに出た二十三日になって製品の自主回収などの措置をとったのではないかとみて詳しく調べる。

雪印乳業の東京本社広報部

 今月十一日から十四日にかけて大阪府警が大樹工場に原料の調査に入ったため、同工場の脱脂粉乳を入れていた茅野工場に十五日夜、大樹工場以外の原料を使用するよう指示した。
「原料乳に問題なし」ホクレンと農協が発表 雪印問題 (2000.08.21) asahi.com
 雪印乳業大樹工場(北海道大樹町)の脱脂粉乳から黄色ブドウ球菌の毒素が検出された問題で、北海道の原料乳生産者団体であるホクレンと大樹町、広尾町両農協が20日、記者会見し、「工場に搬入するまでの段階では原料乳に問題がなかった」と発表した。

低温管理タンクで菌増殖か 汚染の仕組み実験で明らかに (2000.07.27) asahi.com

雪印食中毒事件は「構造腐食」だ!

2000年07月18日 Nikkei BP NeT

 「私は寝ていないんだから」

 7月4日、会見を中途半端に打ち切って、逃げるようにエレベーターに乗り込む雪印乳業の石川哲郎社長は、詰め寄る記者にこう言い放った。

 大阪を中心に1万人を超える被害者を出した雪印の食中毒事件――。事件発覚後に数々の問題発言を繰り返した石川社長だが、雪印の企業体質を最もよく表したのがこの言葉だった。

 血の混じる嘔吐に苦しむ患者、商品不足で顧客を失い呆然とする販売店、そして将来の需要減少に怯える酪農家…。さらに、品質保持期限の切れた返品商品を再利用した疑いや、屋外での脱脂粉乳溶解作業なども指摘され、消費者の乳製品に対する不信感を高めた。これだけの混乱した状況を招いた企業のトップの自己中心的な発言は、食品メーカーとしての責任を放棄しているようにすら見えた。

 2日後の7月6日。社内外からの批判の声に押されて、石川社長はついに辞任を表明する。午後5時半、会見場にやつれた表情で現れ、「(商品には)自信を持っていたが、それが過信だった」と反省の弁を語った。「(トップブランドとしての)驕りがあった」とも認めた。

 だが、こうした言葉がうわべだけのものであることが、質疑応答が進むと露呈してくる。危機感の薄い企業体質をさらけ出していくのだ。

 会見当日には、東京・日野工場でタンクの洗浄記録がないことを理由に、午前中で製造ラインを止めていた。それまで作られた商品について「出荷した」と話す石川社長を、横にいた社員が慌てて遮り、「出荷していない」と訂正した。重要な情報が、企業トップに伝わっていないのだ。その数日前にも同じような失態があった。7月1日、会見の席上で、大阪工場長が製造ラインに汚れがあったという新事実を暴露し、知らされていなかった石川社長が「きみ、それは本当か」と愕然とする場面があった。繰り返される過ちが、雪印の病根の深さを物語る。

 それだけではない。辞任会見の中で、石川社長は明確な根拠も示さずに、「一工場をもって、全部(の工場が)そうだということはない。ぜひ、消費者の皆さんにご理解を願いたい」と語り、記者から「言葉で片づくものではない」と非難された。赤字も覚悟しているか、との質問に、「まだ分からない」と前置きをしながらも、こう答えた。

 「まあ、赤字になることはないと思っています」

 常識では理解し難い、危機意識の欠如――。

 乳製品でシェアトップを誇る雪印だが、わずか数日で企業イメージは地に墜ちた。「価値は数千億円」とまで言われた「雪印」ブランドは、一転して不信と不安にまみれてしまった。

 今回の事件は、会社側が強調する「一工場の特殊な事故」なのだろうか。雪印の75年の歴史を振り返ると、決して偶発事故では片づけられない、構造的な問題が見えてくる。

補助金制度に守られて価格上乗せ

 1925年、北海道の酪農家が資金を出し合って設立された「北海道製酪販売組合」が雪印の前身だ。企業の論理で牛乳の買い取りを拒否する乳業メーカーから身を守るための組織としてスタートした。

 生みの親である黒沢酉蔵氏は、足尾銅山事件で被害者の救済運動にのめりこみ、投獄された経歴を持つ。鉱毒をまきちらす企業と、それを隠蔽する政府に噛みついた人物が創業にかかわっていたことは、雪印の皮肉な運命を感じさせる。

 創業後、酪農王国の北海道を地盤として、雪印は順調に滑り出した。だが、戦後まもない50年代には、荒波が押し寄せる。50年、過度経済力集中排除法によって、雪印乳業と北海道バターに分割させられた。

 追い打ちをかけるように、55年3月に集団食中毒事件を起こす。東京で雪印の脱脂粉乳を飲んだ学童1900人が、下痢などの症状を訴えたのだ。当時から品質に絶対の自信を持っていた雪印にとって、衝撃は大きかった。ある役員は、「そんなはずはない」と言うとコップ1杯を飲みほしたが、数時間後にトイレに駆け込む羽目になった。この時、脱脂粉乳からはブドウ球菌が検出されている。

 この窮地から雪印を救ったのは、わずか数カ月後にライバルの森永乳業が引き起こした「ヒ素ミルク事件」だった。死者を出す不祥事に発展したことで、雪印の食中毒事件は人々の記憶から消えていった。

 55年の2つの事件を契機に、雪印の品質管理はより厳格なものになったという。雪印の多くの工場で、敷地内に鯉が泳ぐ池を作り、そこに工場から排出される汚水を処理して流し込んだ。それでも元気に泳ぎ回る鯉の姿が、高い安全性の象徴というわけだ。

 事件後、およそ半世紀にわたって、雪印は順調に成長してきた。しかし、そのことが企業努力の成果だとは言いきれない。背景に、酪農家と乳業メーカーを支える補助制度があるからだ。

 酪農家は、原料乳を地域ごとに決められた指定団体に納入している。乳業メーカーは、この指定団体から、脱脂粉乳やバターの原料となる加工原料乳を買うことになる。その際に、「基準取引価格」が決められており、現在は1kg当たり約62円に設定されている。この価格は、乳業メーカーの生産コストを基に、利益が出る水準に決められている。指定団体が酪農家から買い上げる「保証価格」は約72円。つまり、1kg当たり約10円の補助金が使われているわけだ。牛乳の原料となる飲用乳は自由に価格決定ができるものの、実態は「こうした価格に20円ほど上乗せした水準で決まっている」と酪農学園大学の中原准一教授は話す。

 「飽きない商品が、商いの基本」。雪印の中興の祖である元社長、瀬尾俊三氏の言葉は、今も雪印の社内に浸透している考え方の1つだ。

 しかし、こう解釈することもできる。定番商品だけで十分に儲かるのだから、あえて冒険をする必要はない、と。

ヒット商品なき「スローブランド」

 それを裏づけるように、画期的なヒット商品がほとんど生まれてこない。

 ライバル会社幹部は、「この20年間で、新しい市場を開拓するような大型商品は、ゲータレードくらいではないか」と振り返る。

 だが、この商品は米国企業と提携して、日本市場に投入しただけのもの。80年に発売され、スポーツ飲料という新分野を開拓したが、後発の大塚製薬の「ポカリスエット」、日本コカ・コーラの「アクエリアス」にあっという間に追い抜かれ、シェア数%と低迷している。缶のサイズの大型化、ペットボトル化など、市場の変化に追いつけなかった。スノーブランド(雪印)をもじって、「スローブランド」と揶揄される所以である。

 強力な流通部門を持っていることも、雪印の商品開発力を弱めている。チルド(冷蔵)流通では、自前の系列物流会社だけで全国網を築いている。牛乳やチーズ、バターなどで、目新しい新商品を投入しなくても高いシェアを維持できるのは、自社商品を確実に流通網に乗せることができるからだ。

 しかし、ひとたび違う流通網で勝負しようとすると、商品力の弱さが露呈する。乳製品の1つであるアイスクリームが象徴的なケースだ。98年度、雪印はハーゲンダッツジャパンに抜かれて、シェア6位に転落した。アイスクリームを運ぶ冷凍物流はニチレイの支配力が強い。競争の場が自分の土俵でなくなると、途端にライバル乳業メーカーはおろか、ロッテなどの菓子メーカーにすらかなわない。

 体質改善の動きもあった。

 87年、15年にわたって雪印に君臨し、「乳業界のドン」「雪印の天皇」と言われた山本庸一元社長が逝去した。山本氏は国際化を否定するなど保守的な経営を貫き、晩年には後継者候補を次々と追放し、その老害ぶりが批判された。社長のままこの世を去った山本氏に代わって、正野勝也氏がトップに就任すると改革路線を表明した。

 89年の生産者取締役の排除は、社内では画期的な出来事ととらえられた。酪農家によって作られた雪印は、社外取締役に多くの生産者代表を抱えていた。これが、企業の論理によって工場の統廃合を進めるなどの効率化・合理化の動きの足枷になっていた。

 「雪印は、消費者を向いた経営になる」。そう高らかに宣言したが、結果は思惑通りには進まなかった。

 「外の声に耳を傾けない、内向きの閉鎖組織になっていった」と業界団体の幹部は漏らす。外部の批判がなくなった雪印は、消費者も生産者も見ない、唯我独尊の組織になってしまった。

家族的ゆえに進んだモラール低下

 「よく言えば家族的で、居心地のいい会社。悪く言えば、責任不在のなれ合いの会社」(元乳業メーカー役員)

 事業が低迷しても責任を問われない。逆に、目立つことをすれば、抑えつけられる。こうして、社員の間にぬるま湯体質が広がっていった。雪印の99年度の従業員1人当たり売上高は約8100万円。明治乳業の8900万円、森永乳業の1億1500万円に比べて見劣りする。

 しかし、これまで規制や制度で守られてきた乳業の世界で、厳しい競争が始まっている。乳製品の輸入自由化は来年に控えている。また、明治乳業が製造ラインの合理化によって大きなコストダウンに成功したことで、ここ数年、雪印は牛乳を含む市乳部門でシェアトップの座を奪われている。

 そんな時代に、雪印の社員は変革の波に耐えられない虚弱体質になってしまっていた。99年に最新の設備を誇る京都工場を完成させ、事件を起こした大阪工場は、いずれ閉鎖されると噂されていた。大阪工場では、モラール低下が進んでいたという指摘もある。「家族的」であるがゆえの、リストラに対する失望感の大きさが窺える。

 社内外から集中砲火を浴びて入院してしまった石川社長も、55年の食中毒事件の2年後に入社した「危機を知らない世代」の最初の社長だった。雪印の好調な面だけを見続けた、最も危機感の薄い世代とも言える。これから熾烈な競争に突入するという時代に、雪印はトップから現場社員まで、かつてないほどの脆弱で危険な態勢で臨んでいたことになる。大阪工場での食中毒事件の発生と、その後のずさんな対応は、単なる偶発的な出来事では片づけられない問題を孕んでいるのだ。

 社会的事件を起こしてなお、記者会見で組織内の論理を振りかざす雪印は、四面楚歌の状況に立たされている。果たして、雪印に復活の日は訪れるのだろうか。

 森永乳業の大野晃社長は、「今は流通が見せしめで、雪印商品を撤去しているが、いずれは棚に戻ってくるだろう」と見る。

 だが、問題は雪印に対する消費者の反応だ。「変革」を強く打ち出せなければ、雪印商品の購入を控える風潮が続く可能性も否定できない。そうなれば、「売れ筋」から外れた商品を冷徹に排除する小売業の論理によって、雪印は今度こそ店頭から消える事態に追い込まれる。

 こうした状況に、若手社員ほど危機感が強い。

 今、東京・新宿区の雪印本社ビルには、普段の半分以下の社員しか出社していない。大半が大阪の支援に駆けつけているからだ。残ったわずかな社員が交代で、 24時間体制を敷いて消費者や取引先からの問い合わせに対応している。鳴りやまぬ電話を取り続けた30代の社員はこう語る。

 「こんな事態を招いたのは経営陣のせいだ、と決めつければ楽なんでしょう。でも、社長1人の驕りからきているとは思えない。社員一人ひとりの心の中に、緩みがあったのではないでしょうか」(金田 信一郎)

雪印大阪工場で衆院厚生委が聞き取り調査 (2000.07.17) asahi.com

雪印大阪工場のHACCP承認取り消し 厚生省 (2000.07.14) asahi.com
 厚生省は14日、雪印乳業大阪工場に与えていた「総合衛生管理製造過程」(HACCP=ハサップ)の承認を取り消した。

 対象は承認を与えていた5品目のうち、被害を出した「低脂肪乳」(商品名)などの加工乳と、「毎日骨太」「カルパワー」といった乳飲料の2品目。HACCP承認が取り消されたのは全国で2例目。

脱脂乳を原因として重視 雪印食中毒で大阪府警など (2000.07.14) asahi.com

雪印大阪工場のセレウス菌は微量 大阪市調査 (2000.07.14) asahi.com

 雪印乳業大阪工場(大阪市都島区)製造の「低脂肪乳」など乳製品による食中毒事件で、大阪市は13日、同工場内で6月30日に実施した1回目のふき取り調査の検査結果を発表した。低脂肪乳などの材料に使う無塩バターと脱脂粉乳から食中毒の原因になり得るセレウス菌を検出したが、市は「微量で、今回の食中毒との関連はない」としている。事件の原因菌とされる黄色ブドウ球菌の毒素(A型エンテロトキシン)は検出されなかった。

 同市は、「菌の数が少なく、問題になる結果ではない。いまのところ今回の食中毒はセレウス菌とは関係ないと考えている」としている。

雪印大阪工場食中毒、発症者1万4348人に (2000.07.12) asahi.com
 加工乳の「低脂肪乳」「毎日骨太」「カルパワー」の3製品で、1万4106人。新たに回収命令が出された「のむヨーグルト毎日骨太」や「雪印コーヒー」などの6製品で242人。

低脂肪乳と他製品の工程を結ぶ配管が存在 雪印大阪工場 (2000.07.11) asahi.com

食中毒菌3種検出

2000.07.10 The Sankei Shimbun

 松山市保健所は九日、雪印乳業大阪工場で製造された発酵乳「のむヨーグルト毎日骨太」(五百ミリリットル)を飲んでおう吐や下痢症状を訴えた同市内の男性会社員(三三)から、食中毒菌である黄色ブドウ球菌、病原性大腸菌「O(オー)20」、ウエルシュ菌の三種を検出したと発表した。男性は今月四日に同製品を飲み、五日未明に食中毒症状を訴えていた。

返品の乳製品を原材料に再利用 雪印大阪工場 (2000.07.10) asahi.com

雪印食中毒 ずさん自主検査判明 -大阪市鑑定 汚染源はバルブ以外も-

2000.07.10 The Sankei Shimbun

 雪印乳業大阪工場(大阪市都島区)の製品による食中毒事件で、低脂肪乳の貯蔵タンクのバルブから検出された菌について、検査を進めていた大阪市は九日、同社が自主検査で発表したのとは異なり「黄色ブドウ球菌ではなかった」と発表した。同社は顕微鏡も用いないずさんな検査で、判定ミスをしていたことが判明。バルブが汚染源とも言い切れなくなった。しかし製品からは黄色ブドウ球菌の毒素が検出されていることから、大阪市などは同菌が原因との見方を変えておらず、製造ライン全般を入念に調査して汚染源の特定を急ぐ。

 市は大阪府警の依頼を受けて、証拠品として大阪工場から押収された菌の鑑定を進めていた。

 市立環境科学研究所が顕微鏡検査などで詳しく分析した結果、棒状の「短桿(たんかん)菌」や「桿(かん)菌」と呼ばれる種類の菌で、黄色ブドウ球菌特有の丸い形をした球菌とはまったく異なっていた。

 黄色ブドウ球菌の生み出す毒素についても検査を進めていたが、陰性反応だったことから、市は黄色ブドウ球菌ではないとの結論に達した。

 雪印乳業は今月一日、被害を訴える人が続出していた低脂肪乳の貯蔵タンクのバルブから「黄色ブドウ球菌を検出した」と発表。

 同社によると、先月二十九日、このバルブをふき取り、大阪工場衛生管理室で付着している菌を検査。採取したサンプルの菌を培養し、二十四時間後の三十日と四十八時間後の三十一日の二度にわたって、黄色ブドウ球菌の陽性反応を確認したという。

 検査では、目視で培養菌に黄色ブドウ球菌特有の色や形状がみられたため、顕微鏡を使って確認しなかったという。しかし、専門家によると、食中毒菌などの検査は通常、菌の培養段階で顕微鏡で行うものとされている。

 市の検査結果について、同社は「発表段階では、おおむね間違いなく黄色ブドウ球菌と考えていた。自信を持って発表したが、今の段階では分からないとしか言いようがない」と話している。

 しかし被害者の飲み残しや未開封の製品からは、黄色ブドウ球菌の毒素「エンテロトキシンA」が検出されている。今回の検査結果に、市は「黄色ブドウ球菌が原因との見方に変わりはない」としており、汚染個所の洗い直しを進める。

 一方、汚染の原因は同工場の低脂肪乳の製造ラインに限られており、バルブが少なくとも三週間洗浄されていなかったことから、府警は衛生管理上に過失があった疑いが強いとみて、製造ライン全体の検証を続けている。

 大阪市の九日午後三時現在の集計によると、近畿、中国、四国の二府九県で雪印製品による被害を訴えている人は、計一万三千五百六十四人に達した。

ヨーグルト飲料による発症者61人に 雪印食中毒 (2000.07.08) asahi.com
 大阪市が回収命令を出している低脂肪乳と「毎日骨太」「カルパワー」で発症を訴えている人は、8日午前10時現在の大阪市などのまとめによると、近畿2府4県と広島、岡山両県で計1万3416人になった。

 汚染の恐れのある商品は次の通り。

 低脂肪乳▽毎日骨太▽カルパワー▽のむヨーグルト毎日骨太▽飲むナチュレ3P▽のむヨーグルトナチュレライブ▽コープのむヨーグルト▽コーヒーマイルド――の8品目。

厚生省に対策本部 10日に初会合

2000.07.08 The Sankei Shimbun

 雪印乳業大阪工場の食中毒事件で、厚生省は七日午後、省内に対策本部を設置した。十日に初会合を開く。

 「総合衛生管理製造過程」(HACCP=ハサップ)の承認の取り消しについて、同省は行政手続法に基づく同社からの聴聞会を十一日に開催。同社側から工場設備の問題点に関して説明を受けた上で、正式に取り消しを決める

雪印大阪工場 安全認可申請時に手抜き -汚染バルブとタンクの設計図 意図的に外す/「手続き煩雑」-

2000.07.08 The sankei Shimbun

 雪印乳業大阪工場(大阪市都島区)の製品による食中毒事件で、工場が低脂肪乳製造ラインの安全管理方式の認可を厚生省から受ける際、提出した図面から食中毒菌が検出されたバルブや貯蔵タンクを同社が隠蔽(いんぺい)したとされる問題で、同社西日本支社の安田徹生産部長は七日、産経新聞に対し申請時にバルブなどを記載しなかった理由として「それぞれ用途が多様で申請手続きが煩雑になるのを避けたかった」と意図的に図面から除いたことを認めた。衛生管理に対する同社の認識の甘さが改めて浮き彫りとなった。

 安田部長は、問題のバルブや貯蔵タンクについて、「それぞれ用途が多様で、用途ごとに申請書類の提出が必要だったため提出資料が膨大になる。(資料作成作業が)大変なので、図面から外した」と語った。

 大阪工場が、問題の図面を厚生省に提出したのは、米航空宇宙局(NASA)の考案した食品製造工程の安全管理方式「HACCP」を参考に国が導入した「総合衛生管理製造過程」の認可を受けるため。

 図面には、低脂肪乳の製造ラインの機器の位置関係が示されていたが、今回の食中毒事件で、黄色ブドウ球菌とセレウス菌に汚染されていたバルブは、付属する貯蔵タンクなどとともに記載されていなかった。

 図面は大阪市保健所が年に数回実施する立ち入り調査の際に使われたが、記載されていない汚染バルブや貯蔵タンクは検査対象から外れ、食中毒事件発生後の調査でも図面は使われたため、大阪市はバルブの存在に気づかず、雪印側の自社検査で黄色ブドウ球菌が検出された際、初めてその存在を知ったという。

 貯蔵タンクは平成三年に現在の場所に移設され、バルブや仮設パイプは七年ごろに取り付けられたとみられている。工場が「日本版HACCP」の認可を受けたのは十年一月のため大阪市も関心を寄せていた。

 認可を取り扱う厚生省乳肉衛生係は、工場が自主的に衛生管理の徹底を図るためのHACCPの申請でこうした改ざんが行われたことについて、「手続きが面倒臭いからとは…。本当であれば、非常に残念な話」と話しており、週明けにも低脂肪乳など汚染された製品を作っていた大阪工場の二つの製造ラインの認可を取り消す方針。

雪印 損害数百億円にも -給食使用中止 東北に広がる/統一ブランド事業ご破算-

2000.07.08 The Sankei Shimbun

 雪印乳業大阪工場(大阪市都島区)の製品による食中毒事件で七日、新たにセレウス菌や別の製品から毒素が検出されるなど複合汚染の様相を見せる中、首都圏や東北地方でもスーパーやコンビニエンスストアから同社製品を撤去する動きが一層、広まり加速した。学校給食での使用中止を決める自治体もさらに増えており、このまま“ボイコット”が続けば同社の損害は数百億円規模に達する恐れも出てきた。“スノーブランド”の失墜は東日本でも避けられそうにない。

《撤去加速》

 撤去を決めたのは首都圏で五百八十店を展開するコンビニ「スリーエフ」(本社・横浜市)、全国三百七十店の直営店を持つ大手スーパー「ジャスコ」(本社・千葉市)、山形、宮城両県でスーパー四十五店を営業する「ヤマザワ」(本社・山形市)、福島、宮城、山形、栃木の四県を営業エリアとするスーパー「ヨークベニマル」(本社・福島県郡山市)。いずれも乳飲料を中心にデザート類など六品目から最も多いヨークベニマルの二十一品目。

 小売店では、これまでに大手スーパーの「イトーヨーカ堂」や「マイカル」が販売を中止し、コンビニでも「am−pmジャパン」「ファミリーマート」が低脂肪乳の販売中止を決めており、どんどん店頭から消えている。

 学校給食では、秋田市が「不安に感じる保護者もいる」として十日から小中学校での雪印のチーズやバターなどの乳製品の使用中止を決めた。仙台市でも七日、雪印の乳製品の使用を中止するよう指示した。神奈川県では川崎市など十七市町村で、千葉県では野田市、松戸市が中止を決めた。静岡市でも学校給食での使用を中止する。

《信用失墜》

 雪印乳業によると、七日までに自主回収した大阪工場の製品は低脂肪乳が一リットル、五百ミリリットルのパックで計約五万七千本、毎日骨太が同計千三百四十五本、カルパワーの二百ミリリットルビン二千八百八十七本で、小売価格で計約千六十万円相当。

 同社では「全体ではどのようになるか分からない。売り上げ激減はまちがいない」。大阪と京都、神戸の三工場だけでも「損失は百億円」とされており、関東・東北などへの波及により、業界関係者は「損害は数百億円規模に達するだろう」と話す。

 “スノーブランド”の信用低下は、他の事業にも影響が出始め、日本たばこ産業(JT)とキーコーヒーと共同で進めていた今秋の発売予定の三社統一のコーヒーブランド「Roots」(ルーツ)から雪印は七日、脱退することを決めた。雪印はルーツ事業の売上高を年間四十五億円と見込んでいたが、すべてが水の泡となった。

雪印・大阪工場製造のヨーグルト飲料からも毒素検出 (2000.07.08) asahi.com
 雪印乳業(本社・東京)の大阪工場(大阪市都島区)の製品による集団食中毒事件で、同社は7日、大阪工場で製造した発酵乳「のむヨーグルト毎日骨太」から、黄色ブドウ球菌がつくる毒素「A型エンテロトキシン」を検出したと発表した。

雪印大阪工場、バルブの配管も汚染 (2000.07.07) asahi.com

 同社は、バルブの汚れについて、1日の会見で「10円玉大」と説明していたが、3日の大阪市の立ち入り調査で内側のほぼ全体に広がっていたことが発覚。さらに汚れは広範囲にわたっていたことになる。

 菌が検出されたバルブは、大阪工場の規定では1週間に1度、分解・洗浄することになっていたが、6月2日から23日まで洗浄されていなかった。大阪府警は、ずさんな洗浄に加え、配管とバルブの構造上の欠陥が汚れを拡大させ、菌を増殖させた可能性があるとみている。

 大阪市もこれまでの立ち入り調査で、同社からこの配管部分の汚れの報告を受けていた。

百貨店、スーパーの製品離れ ヨーカ堂も撤去

2000.07.07 The Sankei Shimbun

 イトーヨーカ堂グループは六日、コンビニエンスストアのセブン−イレブン・ジャパンやスーパーのイトーヨーカ堂など全国の八千五百六十七店で牛乳など雪印製品を撤去、販売中止すると発表した。同日夜から一部の店舗で実施、期間は「確実な安全の判定ができるまで」としている。

 スーパー、コンビニのほか百貨店も、お中元売り場から雪印のギフトセットを撤去する動きが加速している。

 イトーヨーカ堂は、「食中毒問題の解決が長期化するとみられ、消費者の不安も高まっている」(コーポレート広報室)と判断した。すでにファミリーマートは約二十の雪印製品を撤去。ダイエーは西日本の百二十店で「低脂肪乳」など三品の取り扱いを中止している。

 また、百貨店では六日に、伊勢丹、三越が雪印のお中元商品について、販売中止を決めた。すでに大丸や阪急百貨店がチーズやバターの詰め合わせを店頭から撤去している。

 ブランドイメージが最重視される贈答品だけに、販売中止は予想以上に広がりそうだ。

雪印集団食中毒 深刻、ブランドの傷 -店頭から撤去/格付けダウン/赤字転落の予測も-

2000.07.07 The Sankei Shimbun

 一万二千人を超える集団食中毒事件を引き起こした雪印乳業の経営が、深刻な影響を受けるのは避けられない情勢となった。スーパーの店頭から相次いで雪印製品が撤去されているだけでなく、食品メーカーの看板である「信用」は大きく失墜。石川哲郎社長が辞意を表明したものの、虚偽報告も加わり、「元に戻るには十年かかる」(ジャスコの岡田卓也名誉会長相談役)との見方もある。キズがついた雪印ブランドの回復の道は厳しそうだ。(大久保俊彦、小雲規生)

《「10年かかる」》

 「被害損失は一、二カ月たたないと分からない」

 六日の記者会見で石川社長は困惑の表情を浮かべた。

 スーパーやコンビニの店頭から雪印製品の撤去が相次いでいる。それも食中毒の原因となった低脂肪乳などの乳飲料だけではない。ヨーグルトなどの乳製品にも及んでいる。

 雪印は平成十二年三月期決算で二年連続の増収増益を記録し、健全な財務内容が自慢だった。しかし、同社の売上高の四分の三は牛乳や乳製品が占める。食中毒問題で今中間期の業績は、下方修正を避けられない。

 「十三年三月期は赤字にはならない」と石川社長は強調するものの、消費者の不信感は高まる一方だ。「創業以来、初めて赤字に転落する可能性は高い」と市場の予測は厳しい。

 新光証券は雪印の格付けを最高ランクの「1」から最低の「3」まで引き下げ、格付け機関のスタンダード&プアーズも消費者の信頼を早期回復できないときは格付けを見直すとしている。こうした評価も追い打ちをかけることになりそうだ。

 虚偽報告を重ねるなど、露呈したずさんな経営体制についても、ある証券会社のアナリストは「投資家に対して雪印は消極的な情報開示をしてきたが、それと表裏一体」と、乳業トップに安住してきたおごりに批判は強まっている。それだけに、大きくキズついたブランド力を回復するに時間がかかるのは必至だ。

 「お客は雪印製品をだれも買わない。元に戻るまで十年はかかるのではないか」−。六日、全店から雪印製品を撤去したジャスコの岡田氏は、こう見放している。

【ライバルは“棚”争奪戦】

《一等席の退場》

 雪印製品の食中毒問題を受けて、スーパーやコンビニなどでは、空いた店頭のスペースをめぐって、はやくも乳業メーカーの争奪戦が始まっている。

 陳列棚の空いたスペースは「自主開発商品や雪印以外の牛乳製品で穴埋めされる」(ファミリーマート)ことになるためだ。

 イトーヨーカ堂グループは、雪印乳業の乳飲料や乳製品について、八千五百六十七の全店舗で販売を中止する。ファミリーマートは牛乳製品の三−四割を占めていた雪印製品を撤去。ダイエーも西日本地域の百二十店で、雪印製品の販売を中止した。

 陳列棚の一等席を占めていた雪印の“退場”だけに、ライバルの乳業メーカーにとっては、この場所取りは絶好のビジネスチャンス。明治乳業は「これまで取引があった店が、雪印製品の回収の影響で商品が不足しているようであれば、出荷量を増やすようにしている」と話す。

 雪印の大阪工場が大阪府内と奈良県内の小・中学校に供給していた一日あたり約三万九千本の牛乳は、一学期中まで森永乳業が代わりに供給することになった。森永は「乳製品全体に対する需要が減ることも考えられるが、学校給食の分はプラスに働いている」とみている。

 飲用牛乳の雪印のシェアは二〇%、明治一九%、森永一三%。今回の問題で雪印のトップは大きく揺らぐとみられ、一段と窮地に陥ることになりそうだ。

雪印社長の辞任会見での一問一答  (2000.07.06) sahi.com

雪印乳業の石川社長が引責辞任を発表 (2000.07.06) asahi.com

雪印ショック 流通、生産現場に不安と怒り (2000.07.06) asahi.com

雪印日野工場の牛乳、東京都が学校給食使用中止 (2000.07.06) asahi.com

雪印乳業石川社長の引責辞任固まる (2000.07.06) asahi.com

連結パイプ設置届けず 雪印大阪工場 -管理工程認可 厚生省、取り消しへ-

2000.07.05 The Sankei Shimbun

 近畿地方を中心に発生した雪印乳業(本社・札幌市)の低脂肪乳による食中毒被害で、同社大阪工場(大阪市都島区)の低脂肪乳の製造工程のうち、黄色ブドウ球菌が検出されたバルブと牛乳の調整乳タンクをつなぐ「仮設パイプ」は、工場が製造ラインの安全管理方式の認可を厚生省から受けた平成十年一月より前に取り付けられていたことが五日、大阪市の調べでわかった。しかし、厚生省に提出した図面からは仮設パイプなどがすっぽり抜け落ちていて、意図的に隠されていた疑いが強い。厚生省もこれを問題視し、認可を取り消す方針だ。

 大阪工場が受けている認可は、厚生省が米国航空宇宙局(NASA)の開発した安全管理方式「HACCP」を参考に導入した「総合衛生管理製造過程」。

 大阪工場は、この方式の認可を受けるため、厚生省に製造ラインの機器の位置関係を示した図面を提出していた。

 ところが、図面の中には低脂肪乳の製造ラインのうち、黄色ブドウ球菌に汚染されていたバルブと牛乳(無調整乳)製造ラインの調整乳タンクを結ぶ仮設パイプなど、今回問題となっている機器類が欠落していた。

 専門家によると、安全管理面が重視される“日本版HACCP”では、こうした他製品の製造ラインとの部品の共有などがあれば、不衛生につながるため認可を受けるのは困難という。

 これまでの大阪市保健所の立ち入り調査に対し、現場の作業員らは仮設パイプを設置し始めた時期を「四、五年前(平成七年か八年)」としていて、厚生省の認可を受ける前だったことが新たにわかった。

 このため、工場は認可を得やすくするために仮設パイプなどを意図的に図面から外し、厚生省に虚偽申告していた疑いが強まっている。

 問題の仮設パイプは、汚染されていた低脂肪乳の調整乳タンクのバルブ以外に、「毎日骨太」「カルパワー」のタンクのバルブにもつなぎ換えられていたことが判明。両製品の汚染も疑われて、回収命令の対象に加わった。

「雪印」製品の撤去、全国に拡大

2000.07.05 The Sankei Shimbun

 雪印乳業の集団食中毒事件が新たな製品回収に発展したことを受けて、大手コンビニエンスストアやスーパーで、同社製品を店頭から撤去する動きが全国的に広がってきた。問題の大阪工場以外でつくった製品も次々と売り場から姿を消しており、同社の業績にも深刻な影響を及ぼしそうだ。

 コンビニ大手のローソンは、「低脂肪乳」以外の二製品の汚染が発覚した四日夜、近畿二府四県の約千八百六十店の店頭から雪印製の乳飲料をすべて撤去。低脂肪乳は全国で六日から発注を中止する。

 ファミリーマートは五日午前中に全国の約五千六百店で、ライフコーポレーションも五日昼までに全国の百八十五店で雪印製の乳製品、飲料、デザートを撤去した。

 スーパーでは、ダイエーが中部、近畿、中四国の直営百二十店舗で、西友も近畿二十七店舗で五日から雪印製品の販売を休止した。

 一方、セブン−イレブン・ジャパンやジャスコなどでは「あまり不安をあおりたくない」として、売り場に「大阪工場で製造したものではありません」との掲示を出して他工場分の販売を継続している。

雪印日野工場でタンク洗浄の記録なし 都が使用中止指導 (2000.07.05) asahi.com

雪印乳業食中毒事件 発症者数は1万人突破 (2000.07.05) asahi.com

 雪印乳業(本社・東京都)の大阪工場の製品による食中毒事件で、下痢やおう吐などの症状が出た人は、5日午後3時の大阪市のまとめなどで1万656人に達した。行政が症状などを確認していない自己申告分も含まれているが、過去25年間では、1988年に北海道で給食の錦糸(きんし)たまごによって1万476人の発症者が出たサルモネラ菌中毒を上回る、最大級の食中毒となりそうだ。

未開封品の毒素検出に全力 -雪印低脂肪乳-

2000.07.04The Sankei Shimbun

 雪印乳業大阪工場が製造した低脂肪乳の集団食中毒事件で、大阪市保健所は四日も同工場に立ち入り検査し、回収された未開封製品から毒素検査のためのサンプルを採取した。

 汚染されたバルブについて同社の虚偽報告が発覚、同保健所は黄色ブドウ球菌を検出した同社の検査結果も信頼できないとして、決定的な物証となる未開封製品からの毒素検出に全力を挙げる。

 一方、各地の生協やJR、地下鉄各駅の売店なども雪印製品を販売停止。近畿の小中学校の給食でも牛乳を他社製に切り替える動きがあり、「雪印排除」が拡大しそうだ。

 大阪府警も三日連続となる現場検証を実施、工場幹部らから引き続き施設の説明を受けた。

 大阪市保健所の立ち入り検査は午前十時から、監視員六人で開始。山積みされた回収品のケースから、これまで毒素が見つかっていない品質保持期限七月五日の分まで範囲を広げてサンプルを採取した。

 毒素は大阪市立環境科学研究所などの検査で、品質保持期限が六月二十八−七月三日の飲み残しの製品で検出されている。

食中毒事件の虚偽説明認める 雪印

2000.07.04The Sankei Shimbun

 雪印乳業大阪工場製の低脂肪乳による集団食中毒で、同社は四日、西日本支社で記者会見し、黄色ブドウ球菌に汚染されていたバルブはほぼ毎日使われており、汚れがかなりひどかったことを明らかにした。また洗浄について現場の担当者が事実と異なる説明を会社にしていたことを認めた。

 説明が次々に覆されたことで大阪市などは同社への不信感を一層強め、立ち入り検査などで原因を独自に追及する構え。大阪府警は四日までに、製造元の同社大阪工場を現場検証するとともに、業務上過失傷害容疑で工場内を捜索、関係資料を押収した。

 同社は四日の各紙朝刊におわび社告を掲載したが、その中で「六月三十日−七月二日」の品質保持期限の低脂肪乳が食中毒を起こしているように書いているのは誤りで、六月二十八日−七月三日の期限の製品が中毒を起こしていることを認め、陳謝した。

 同社は記者会見で、六月二十九日には現場担当者がバルブ内が汚れていることを把握していたが、工場幹部には報告せず、虚偽の報告をしていたことを明らかにした。

本社工場を点検 札幌市 -雪印低脂肪乳-

2000.07.04 The Sankei Shimbun

 雪印乳業の低脂肪乳による食中毒事件で、厚生省が各自治体に牛乳処理施設の一斉点検を指示したことを受け、札幌市は四日、東区苗穂町の札幌本社工場を立ち入り点検した。

大阪市、雪印大阪工場を立ち入り検査 (2000.07.03) asahi.com

 雪印乳業大阪工場(大阪市都島区)で製造された低脂肪乳による食中毒で、大阪市は3日、営業禁止処分にした同工場を立ち入り検査した。この食中毒による発症者は8000人を超えた。

週1回洗浄の規定、長年守らず 雪印乳業大阪工場 (2000.07.03) asahi.com

雪印工場を無期限営業禁止に (2000.07.02)(時事) asahi.com

 雪印乳業(本社札幌市)の大阪工場(大阪市都島区)で製造された紙パック入り「雪印低脂肪乳」を飲んだ人が吐き気などの症状を訴えた事件で、大阪府は2日、発症者の飲み残しの製品から黄色ブドウ球菌が作り出すA型エンテロトキシン毒素を検出したと発表した。既に、雪印側の検査で工場内のタンクバルブから同菌が検出されており、府はこの毒素が食中毒の原因と断定。大阪市は食品衛生法に基づき、同工場を無期限の営業禁止処分とした。

雪印大阪工場を業務上過失傷害容疑で現場検証 大阪府警  (2000.07.02)(時事) asahi.com

大阪府警、2日にも現場検証 雪印低脂肪乳問題 (2000.07.02) asahi.com

製造ラインにブドウ球菌 -雪印の低脂肪乳-

2000.07.01The Sankei Shimbun

 近畿地方を中心に販売された雪印乳業(東京)の低脂肪乳を飲んだ人が下痢などを訴えた問題で、同社の石川哲郎社長は一日、西日本支社(大阪市)で記者会見し、大阪工場の低脂肪乳製造ラインで黄色ブドウ球菌の汚染を発見したと発表した。

 和歌山市衛生研究所が六月三十日に黄色ブドウ球菌の毒素産出遺伝子を検出しており、一連の被害は同球菌による食中毒との見方が一層強まった。

 また発症者はさらに増え、近畿の八府県で四千九百人を超えた。

 会見によると、汚染が見つかったのは、調合タンクなどで余った低脂肪乳を予備タンクに戻す際に通るバルブ部分。同社は製造ラインの九十五カ所で、管の内側などをぬぐい取る検査を実施、バルブ付近の一カ所で黄色ブドウ球菌を検出した。同社はこの汚染が原因かどうかさらに詳しく調べる。

 会見した石川社長は「黄色ブドウ球菌がどこに由来するものかは分からない。洗浄の確認が甘いと言われれば仕方がない。ミスと言わざるを得ない」と話した。

 共同通信の集計で発症者は一日正午現在、大阪府三千二百六十二人、京都府百四十四人、兵庫県二百五十八人、和歌山県八百五十一人、奈良県三百八十人、滋賀県十一人、広島県九人、岡山県一人と、八府県で計四千九百十六人に達した。

 厚生省と大阪市は合同で、大阪工場を立ち入り検査した。

 黄色ブドウ球菌を検出、と雪印乳業発表。原料の調合予備タンク内にあるバルブ付近から検出。生産管理のミス認める。2000.07.01(15:34)The Sankei Shimbun

黄色ブドウ球菌とは

2000.07.01 The Sankei Shimbun

 黄色ブドウ球菌 直径約一マイクロメ−トルの球状の細菌。ブドウの房のように集まるブドウ球菌の一種で、集落は黄色になる。自然界に広く分布、健康な人の体内にも存在する常在菌の一つだが、ブドウ球菌の中で最も病原性が強い。三六−三八度で増殖し、それに伴い毒素を分泌、これが食中毒の原因となる。毒素は壊れにくく、胃や腸で吸収され、三時間程度で下痢や嘔吐(おうと)などが起きるが症状は軽い場合が多い。病気などで免疫力が弱まった人が感染すると、敗血症や肺炎などを起こす場合もある。

雪印大阪工場を立ち入り検査、発症者は4800人超える (2000.07.01) asahi.com

 各府県や大阪市の1日までの集計では、保健所などに症状を届け出ているのは、大阪府で3262人、和歌山県で810人、奈良県で380人、兵庫県で256人、京都府で144人、滋賀県で11人、広島県で9人、岡山県で1人の計4873人。入院患者は約70人になった。

雪印加工乳被害3200人に 黄色ブドウ球菌遺伝子検出 (2000.06.30) asahi.com

低脂肪乳で100人以上おう吐や下痢 雪印乳業大阪工場 (2000.06.29) asahi.com

 雪印乳業(本社・東京都新宿区)の大阪工場(大阪市都島区)で今月下旬に作られた加工乳パック「雪印低脂肪乳」(1リットル)を飲んだ大阪府、兵庫県、和歌山県、奈良県の100人以上が、おう吐や下痢、腹痛などの症状を訴えたことが29日、大阪市などの調べでわかった。

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