TOPIC No.5-3-5b 他の雪印工場への影響(雪印食中毒事件)

東京、高松など計5工場の閉鎖を発表 雪印乳業

2001.01.15(21:40)asahi.com
 雪印乳業は15日、すでに閉鎖を決めている大阪工場(大阪市)のほかに、東京工場(東京都北区)など4工場を閉鎖すると発表した。食中毒事件後の収益が低迷する中、老朽化した工場を閉鎖し、新鋭の工場に生産を移すことで効率化を目指す。また、自社ビルの証券化も行い、約200億円の資金を調達する。

 閉鎖されるのは、東京、大阪両工場のほか、仙台工場(仙台市)、新潟工場(新潟県新発田市)、高松工場(高松市)。今年1月から来年3月末までに閉鎖する。いずれも昭和30年代に操業を始めた古い工場で設備が老朽化しているうえ、設備の刷新にも多額の資金が必要で、もともと工場再編の対象だった。5工場合わせて278人いる正社員は配置転換し、パート94人は解雇する。生産は近くの自社工場や他社工場に振り分ける。新潟、高松両工場は工場跡地を物流拠点として利用、東京、大阪、仙台の3工場の土地は証券化か売却を行う。

 また、東京・新宿の本社ビルや大阪支店ビルなど10カ所の自社ビルも証券化する。

雪印、296億円の当期赤字 中間決算

2000.11.21(20:59)asahi.com
 雪印乳業が21日に発表した9月中間決算は、今夏の食中毒事件の影響を受け、売上高が前年同期比33.0%減の1865億円、経常損益が前年同期で73億円の黒字から、244億円の赤字に転落した。また、期末配当も上場来初めて見送る。ただ、食中毒事件後の売り上げは、牛乳・乳飲料部門を除いて、例年の7―8割程度にまで回復しており、2002年度での連結ベースでの黒字確保を目指すという。

 食中毒に伴う被害者への補償や商品の回収など、関連の費用も241億円に上り、当期損益も296億円の最終赤字になった。

 全体の売り上げの状況は、食中毒発覚直後の9月が前年同月比45%だったが、10月は同52%で、11月は60%程度にまで回復する見通しだ。11月だけでみると、バターやチーズ、アイスクリーム、冷凍食品などが前年同月比73―85%と順調に回復しているが、食中毒の直接の原因となった主力の牛乳・乳飲料は同46%と低迷している。

 収益基盤の立て直し策では、向こう3年間で東京本社ビルなど不動産の売却や証券化で約300億円を調達する方針を打ち出した。

企業の健保組合 雪印に賠償請求へ/食中毒治療費の負担分 中旬から1−2億円に

2000.10.01 The Sankei Shimbun
 雪印乳業製品による食中毒事件で、被害者の医療費のうち医療保険で賄われた分について、十月中旬から企業の健康保険組合などが雪印へ賠償請求を始めることが三十日、明らかになった。健保組合の賠償請求は、交通事故の加害者などに対するケースに限られ、今回のような約一万五千人もの大規模な例は初めて。一人当たりの医療費がまばらで総額は出にくいが、雪印にとって一億−二億円の負担になるとみられる。

 医療費の二−三割は患者の負担分で、雪印は被害者宅を訪れ返還。残る七−八割は勤務先の健保組合などが支払った。ただ、加害者が明確な場合、支払い分は加害者に賠償請求しなければならないことが法律で義務付けられている。厚生省も企業の健康保険組合などに賠償請求するよう行政指導していた。

 一方で、病院などの医療機関から診療内容がわかるレセプトが健保組合などに届く期間は通常、受診から二−三カ月。六−七月に大規模な被害者を出した雪印の場合、遅くとも十月十日には医療費の全額が判明する見込みだ。これを受けて、各健保組合などは十月中旬から賠償請求を本格的に始めることにした。

 すでに大阪社会保険事務局は、大阪府下の被害者が使用した医療保険の特定を始め、各健保組合などに通知することを決定。健保組合、政府管掌健康保険、国民健康保険などの各医療保険者は調査と照合しながら雪印に賠償請求する準備を始めた。松下電器健康保険組合は「雪印事件によるとみられる保険使用は数件わかった。最終的な金額の算定を急ぎ十月中に賠償請求する」としている。

 こうした請求作業は、加害者の特定される交通事故のような事件・事故なら簡単だが、今回は、軽い食中毒程度だと健保組合などに申し出ていないことも多く、健保組合として患者の特定が難航している。このため、被害者に関する情報を雪印に求める健保組合も出ている。

 これに対し、雪印乳業西日本支社は「医療保険の返還にはすみやかに応じる用意がある。ただ、法律上、賠償請求の特定作業は請求者にしてもらう必要があると思う」と話している。

雪印牛乳の「変な味」、乳脂肪の酸化が原因 高松

2000.09.30(00:29)asahi.com
 高松市内の15の小、中学校の児童、生徒ら約1200人が給食に出た雪印乳業高松工場の牛乳を飲み、味に異変を訴えた問題で、同工場は29日、製造工程で一部手違いがあり通常より乳脂肪が酸化したのが原因と発表した。同工場は、健康には影響を与えない範囲としている。

 一方、香川県と同市教委は当面、他社製の牛乳を利用することを決定。また、小、中学生計22人が腹痛などを訴え、うち9人が同日欠席したことが新たに判明したため、牛乳との関係について調べている。

 同工場によると、貯乳タンク(容量2万リットル)内には、かくはん用の羽根があり、原料乳を混ぜる。24日に3000リットルの原料乳をタンクに入れ、再冷却した際、原料乳の量がタンク容量の15%と少なかったのに、長く混ぜ過ぎふだんより多くの乳脂肪が破壊された。また羽根が原料乳の上面を泡立てる形になり、壊された乳脂肪が空気と混ざり酸化が進んだという。この結果、わずかながら脂肪酸化臭が発生して風味が変わった、としている。

 同工場側は「酸度は規格以内なので、正常品。健康上、問題はないと考えるが、工程上の手違いで味が変わったことは、申し訳ない」としている。

 県と高松市によると、同工場の牛乳を利用していた同市と三木町の計22校でこの日、牛乳を取りやめ、代わりにお茶にした。細菌検査の結果が分かる約1週間後まで他社の牛乳に切り替えるという。

 一方、高松市のその後の聞き取り調査によると、腹痛や下痢などを訴えたのは、小学校4校と中学校2校の児童、生徒計22人。同市は「牛乳との因果関係は分からない」とした上で、腹痛を理由に欠席者が出たことなどを保健所に伝え、原因究明については、保健所と協力して進めたいという。

ブランド復活へ外資頼み 雪印とネスレ提携へ/「再建」と「拡販」一致/他メーカー 再編の波に警戒感

2000.09.27 The Sankei Shimbun
 食中毒事件で揺れる雪印乳業が二十六日、ネスレ日本と広範な業務提携に踏みきる方針を表明した。傷ついたブランド力回復のための秘策を求めていた雪印と、日本市場でのシェア拡大をねらうネスレの思惑が一致した形だ。国内トップブランド企業の生き残りと巨大外資の事業拡大にかける今回の動きは、国内の食品業界にも再編の波が本格的に押し寄せたことの表れともいえる。雪印が再建できるかどうかに注目が集まる一方、提携交渉開始の事態に日本の食品メーカーは脅威を感じている。

《体質転換》

 「雪印ブランドは予想以上に傷ついている。これを回復させるためにもネスレの力が必要」

 西紘平社長は、記者会見で悲痛な表情で説明した。平成十三年三月期決算の市乳部門売上高は前年度比三七%減まで落ち込む見込み。黒字転換をめざす十五年三月期でも、市乳部門は十二年三月期の九〇%にとどまる見通しだ。

 こうした状況から、ヨーグルトや乳酸菌飲料などで新たな共同ブランドを立ちあげることを視野に入れている。

 両社は十一年末まで冷凍パスタやアイスクリームの製造・販売で協力しあった経緯もあり、今回の提携は、こうした単品での提携にとどまらず、大規模で本格的な提携になるとみられる。そこには、国内トップブランドの死守より、「おごりがあり、顧客志向や危機管理意識が欠如していた」という会社の体質転換を優先させる姿勢がうかがえる。さらに社外取締役の招請などを掲げ、開かれた企業を目指すとした。

 再建計画の二年間でどれだけ雪印自身が変われるかが、本当に生き残れるかどうかの大きなカギとなりそうだ。

《ネスレの思惑》

 ネスレは世界で五兆五千七百億円の売上高を誇るが、ネスレ日本の売上高は二千六百億円にすぎない。総合食品メーカーであるネスレと異なり、ネスレ日本は「コーヒーメーカー」といったイメージが強い。

 そこで日本での売り上げ増加のため、今年に入ってからネスレ日本は、ポッカコーポレーションとの資本・業務提携やUCC上島珈琲からの自動販売機事業の買収を立て続けに実施。缶コーヒーの自動販売機網を十五万台から四十万台に一気に拡大したばかり。

 ライヘンバーガー社長は「雪印は販売、物流、生乳をはじめとする原材料の調達で豊富な経験を持っている。これらを活用してネスレブランドを日本に浸透させていきたい」と意気込んでいる。

《「本気の強敵」》

 世界の食品業界では、ネスレ以外にも、英蘭の食品・日用品大手のユニリーバや米食品たばこ大手のフィリップ・モリス、仏食品大手のダノンなどが激しい買収合戦を展開。「一社だけではいられない」(西社長)という言葉に沿うように、雪印、ネスレ日本の提携への動きが、日本の食品業界の再編への動きを加速させる可能性もある。

 雪印の直接のライバルにあたる森永乳業は「提携の内容がはっきりと分からないので何ともいえないが、ネスレのような巨大外資の進出はやはり脅威」と話す。大手飲料メーカーは「強敵のネスレは、いよいよ本気を出してきた。ただ国内の商習慣に慣れた雪印と国際企業のネスレの間では、ブランド戦略ひとつをとっても方針の違いが出てくるはず。飲食品ブランドは一朝一夕でできるものではない」と分析する。

 しかもネスレの存在は雪印自身にも脅威に映る。雪印OBは「雪印としては他社に奪われた店頭の棚を奪い返すために、ネスレブランドを利用しようという考えだろう。交渉の過程でネスレに主導権を握られないようにするだけの人材が雪印には不足しているのではないか」と話している。

S&P、雪印を格下げ

2000.08.31The Sankei Shimbun
 米格付け会社のスタンダード&プアーズ(S&P)は三十一日、集団食中毒事件を起こした雪印乳業の公開情報に基づく長期会社格付けを、投資適格とされる「BBB」から、投機的とされる「BB」に格下げした。

 S&Pは格下げ理由を「同社に対する消費者の信頼やブランドイメージが失墜、本年度は営業損失を計上し、収益を短期的に以前の水準にまで回復するのはかなり難しい」としている。

 さらに北海道・大樹工場で製造された脱脂粉乳から黄色ブドウ球菌の毒素が検出され、同工場が無期限の営業禁止を受けたことも「収益の回復を遅らせる」とみている。

 長期会社格付けは、個々の債券ではなく会社全体の一年以上の信用リスクを示している。

雪印乳業、7月の売り上げ77%減 初の赤字へ

2000.08.17(22:26)asahi.com
 雪印乳業(本社・東京)は16日、今年4月から7月までの収支状況を公表した。食中毒事件の影響で生産を一時休止した牛乳を中心に売り上げが激減し、7月の売り上げは前年同月比76.7%減の111億円と大幅減収を余儀なくされた。事件にかかわる処理費は、7月末現在で被害者への補償30億円や返品による製品破棄損43億円の73億円にのぼるという。

 収支報告は、消費者の不信感を募らせた事故の責任説明の一環として、9月中間期の決算発表を待たずに公表され、9月下旬に中間期と通期の業績予想の修正を発表する方針。

 5月までは通常の売上高を確保していたが、事件発覚の6月末ごろから売り上げが減少し、4―7月までの4カ月間の売上高は1474億円で、前年同期比で20.4%減に。前年同期に36億円の黒字だった経常損益も108億円の赤字に転落した。雪印は創業以来、経常損益では中間・通期とも黒字で、初めての赤字転落は確実だ。

 7月の部門別の売り上げ減少率は、市乳類(牛乳や乳飲料)が84.0%で最も大きく、乳食品が75.3%、アイスクリームが61.3%だった。

雪印工場励まそう! 日野市が「牛乳を飲む会」

2000.08.09(21:16)asahi.com
 雪印日野工場がある東京都日野市が9日、同社製の「牛乳を飲む会」を開き、市職員や市民に牛乳を配った。7日に操業を再開した工場を励まそうと、馬場弘融市長が音頭を取った。

 瓶1本を飲み干した市長は「雪印は地域活動にも協力してくれるし、多くの市民が親しみを感じている。うちも宅配を取っていたのに、飲めなくなって寂しかったんです」。

 一連の食中毒では日野工場も、タンクの洗浄記録の不備が指摘された。北村進一工場長は「様々な指摘や検査を受け、今は日本で1番安全だと思います」。

加工乳再利用の実態、厚生省が工場の全国調査へ

2000.08.08(19:33)asahi.com
 厚生省の福島豊総括政務次官は8日、衆院厚生委員会の雪印乳業の集団食中毒事件に関する集中審議で、加工乳の製造過程で製品を再利用することについて「実態を把握したい」と述べ、全国の工場を調査する意向を示した。瀬古由起子氏(共産)の質問に答えた。厚生省は、調査結果を近く設置する「加工乳等の再利用等に関する有識者懇談会」で取りまとめる方針だ。

 また、同委員会に参考人として出席した雪印乳業の西紘平社長は、食品衛生法の省令で禁じている加工乳の製品を加工乳の原料として再利用していたことについて「会社独自の判断。法令違反だという認識はしていなかった」と語った。再利用の作業を屋外で行っていたことについては「本社の段階では掌握していなかった」と述べた。

雪印、食中毒事件後の対策を発表 西社長が会見

2000.08.05(19:51)asahi.com
 7月末に就任した雪印乳業の西紘平社長が4日、同社本社(東京都新宿区)で、就任後初の記者会見をし、参考人として出席した衆院農林水産委員会で明らかにした社長直轄の「商品安全監査室」設置のほか、長期的ケアが必要な食中毒事件の被害者への対応として「お客様ケアセンター」を設けたことなど、事件後に取り組んでいる対策について発表した。

 西社長は、被害にあった消費者への見舞いやお詫びの見通しがたったことや、厚生省が牛乳工場の安全宣言をしたことを受け、会見を開いた。「社会と当社の社風に相当ずれがあった。すべては、顧客第一主義でやっていく」と語った。

 ケアセンターは、本社組織のひとつとして、大阪市の西日本支社内に104人体制で設けた。再発防止策としては、食中毒の原因となった黄色ブドウ球菌の毒素の検査体制を作るほか、全商品で検査項目を増やす。消費者へ向けて年中無休のフリーダイヤルを設け、いつでも工場見学ができる体制にする。これまで商品に記号で記されていた製造工場の区別を、工場名をはっきり書くよう切り替える。

 食中毒事件の影響による損害、損益については、「返品が相当あり、中間決算がまとまる9月下旬にならないとはっきりしない」とした。7月の売り上げだけでは、前年比8割減(240億円減)にまで落ち込むことを明らかにした。

雪印乳業 残り10工場の操業再開

2000.08.03(22:38)asahi.com
 雪印乳業(本社・東京)は3日、厚生省から2日に食品衛生上問題がないとされた十の牛乳工場のうち9工場について、5日から7日にかけて操業を再開することを決めた。高松工場のみ未定で、7日以降になる見通し。一時停止した同社の牛乳工場すべてが、操業を再開することになる。

 操業開始の日程は、5日が愛知、倉敷(岡山県)、6日が花巻(岩手県)、仙台、新潟、静岡、北陸(石川県)、都城(宮崎県)、7日が日野工場(東京都)。

 厚生省は、雪印の牛乳工場20カ所について、第1次と第2次に分けて10工場ずつ衛生面の確認をした。今回、雪印が操業再開を決めた10工場は第2次の工場で、第1次の10工場は7月30日までに順次、生産を再開した。

雪印牛乳などの販売再開 北海道のスーパーなど

2000.07.30(19:30)asahi.com
 雪印乳業札幌工場(札幌市東区)などの操業再開を受け、北海道内のイトーヨーカ堂やセブンイレブンジャパンなどの各店が30日、全国のトップを切って、雪印製の牛乳などの販売を再開した。厚生省が既に事実上の安全宣言を出しているうえ、北海道は雪印発祥の地で同社製品になじみが深いため、販売再開を待ち望む消費者の強い声にこたえて販売を決めたという。札幌市内では夕方までに売り切れるスーパーもみられた。

 札幌市北区のイトーヨーカドー新川店(佐藤行伸店長)は、6日の撤去から24日ぶりに牛乳やコーヒー牛乳など6品目を店頭に並べた。主力の1リットルパック牛乳は、販売再開に合わせて買い求める人が多いとみて、撤去前の約3割増の100本以上を入荷。夕方までにすべて売り切れ、乳飲料もほぼ完売状態だった。

 1リットル牛乳のパックには、「創業の精神に戻り品質管理の徹底に努める」と食中毒事件をわびる文が印刷されていた。買い物かごに入れた同市西区内の主婦(46)は「子どもが『給食で飲み慣れた雪印にして』というので。事件後は、しっかり衛生管理していると思う」。

 北区内の無職佐藤義男さん(77)は「何十年も雪印を飲み続けており、売られていない間はどれを飲んでいいか困った。地元の会社だし、事件を教訓に頑張ってほしい」と話していた。

 北海道内ではこのほか、スーパーのさっぽろ東急ストアなども雪印製品の販売を再開、同ストア豊平店は「待ち望んでいたという人が多かった」としている。

ダイエーも雪印製品販売再開 北海道地区

2000.07.30 The sankei Shimbun
 ダイエーは二十九日、北海道地区の計四十二店舗で雪印乳業製品の販売を三十一日から再開すると発表した。

 対象は乳飲料、バター、チーズなど十四品目。ダイエーは「札幌工場の安全性が確認されており、現地では顧客から販売再開を求める要望も強まってきた」(広報室)と説明している。

 大手スーパーでは、イトーヨーカ堂が三十日から、マイカル北海道が三十一日からそれぞれ北海道の店舗で雪印製品の販売を再開することを決めている。

雪印製品、大手スーパーなども販売再開へ

2000.07.29(06:50)asahi.com
 大手スーパーやコンビニエンスストアが、大量食中毒事件で販売をやめていた雪印乳業の製品について今月末以降、相次いで販売を再開する。今月25日に、厚生省の専門評価会議が雪印の10工場に「安全宣言」を出したのを受けたもの。来月2日ごろには、20工場の調査がすべて終わる予定で、各社とも、このときに出される最終的な「安全宣言」が「販売再開のタイミング」(大手スーパー)とみている。

 イトーヨーカ堂とセブン―イレブン・ジャパンは、7月30日から北海道内のヨーカ堂15店、セブン―イレブン700店などグループの店舗で、雪印の牛乳や乳酸菌飲料など4品について販売する。関西地区を除くその他の地域でも、安全宣言が出しだい、「販売を前向きに検討する」(ヨーカ堂広報室)という。

 ローソンは、8月1日から北海道地区の452店で、牛乳など約20品目の販売を始め、8月8日をめどに近畿地区(1861店舗)を除く全国で販売を始める。

東京工場なども再開/雪印 名古屋工場では商品出荷

2000.07.28 The Sankei Shimbun
 雪印乳業大阪工場の食中毒事件で、操業を停止していた東京、札幌の二工場が二十八日午前、操業を再開した。午後には福岡統括工場も生産を再開する。全国二十工場のうち、トップを切って操業を再開していた名古屋統括工場ではこの日、事件後初めて販売店に向けて商品を出荷した。

 東京工場では午前十時半から、牛乳と加工乳の二種類の製造ラインを始動させた。販売店向けの七万本のビン商品が製造される予定で、二十九日早朝には都内など首都圏に向けて出荷される。

 再開に先立ち、二十七日には伊藤健介工場長が従業員を集め、「消費者の信頼回復のために頑張りましょう」と呼びかけた。工場で働く男性社員は「正直いってホッとしている。職場にも明るさが戻った」と顔をほころばせた。

 雪印では厚生省が安全宣言を出した十工場について三十日までにすべて操業を再開させる方針。

雪印乳業、まず6工場で瓶詰製品などから生産再開

2000.07.26(19:43)asahi.com
 雪印乳業(本社・東京)は26日、厚生省から安全が確認された10工場で、宅配用の瓶詰牛乳と病院などへ出荷する予定がある紙パック牛乳から、生産を再開することを決めた。日程が決まったのは、瓶詰製品を作っている5工場と、病院へ出荷予定がある1工場で、27日から29日にかけて開始する。出荷は早くても28日からになる。ほかの4工場も、量販店の注文がまとまり次第、再開の日を決めるという。

 27日に名古屋統括工場、28日に東京、福岡、札幌工場、29日に神戸、青森工場で生産が再開され、それぞれ翌日から出荷を始める。病院用の製品をつくるのは札幌工場。

 残る野田(千葉県)、厚木(神奈川県)、京都、広島の4工場は、6工場と同時に厚生省から安全性の確認を受けたが、店頭用の製品を作っているため再開がやや遅れる見込み。雪印はスーパーなどからの注文をまとめ、生産量の調整や配送手段が確保できてから、4工場の再開日程を決めるとしている。

 工場停止のあおりを受けて、営業できないでいる雪印の契約牛乳販売店は、22日時点で570店に上っている。

 また大手スーパーやコンビニエンスストアでは、食中毒事件後、雪印乳業の製品の販売を停止しており、厚生省が10工場分について安全宣言をした時点でも「すべての工場で安全が確認されてから検討する」「消費者の動向を見守る」とするところが多い。

 現地調査が進められている残り10工場については、厚生省の専門評価会議が8月2日に安全性について判断する予定だ。

雪印札幌工場、操業再開へ向け準備開始

2000.07.26(14:06)asahi.com
 操業停止中の雪印乳業札幌工場(札幌市東区)で26日午前、操業再開に向けた準備作業が始まった。約2週間ぶりにホクレン農協連合会から生乳が納入され、牛乳の製造ラインが問題なく動くのを確認した。同工場は、試験的に生産した製品の安全性をチェックした上で、操業を再開することにしている。

 午前6時半、生乳を積んだタンクローリー1台が札幌工場に到着した。牛乳用の原料が納入されたのは今月11日以来。通常は毎日130―150トンの生乳が入るが、この日はテスト生産のため10トンにとどめた。

 工場内では、作業員がまずタンクからサンプルの生乳をくみ出し、脂肪分などの成分をチェック。原料供給用のパイプラインとタンクをホースでつないだ。タンク側のバルブをゆるめると、モーター音とともに生乳が送り込まれた。

 この日生産された牛乳などは出荷されず、細菌検査を行う。結果が判明するのは28日朝という。安全が確認されれば、出荷用の生産体制に切り替える方針。生産量は取引先の需要を調べたうえで決めるが、操業停止前を下回る規模でスタートすることになりそうだ。

雪印10工場に厚生省専門家会議が「安全宣言」

2000.07.25(23:35)asahi.com
 操業停止中の雪印乳業(本社・東京)20工場のうち、札幌、東京、名古屋、福岡など10工場について、厚生省の専門評価会議(座長、丸山務麻布大教授)は25日、「食品衛生上の重大な問題はなかった」とする評価結果を明らかにした。事実上の安全宣言としている。ただ再開には、テスト生産を行い、製品の微生物検査も実施するなどの条件をつけた。厚生省は、条件について雪印の確約を取り、操業再開を認める方針。再開は早くても28日ごろになる見通しだ。

 評価会議の検討結果によると、10工場の機器洗浄状況はほぼ良好だった。またパック詰め製品は、6月下旬まで国に届けないまま全工場で再利用していたが、安全に保管された製品だったため問題ないとした。しかし神戸工場では、いったん出荷した製品を恒常的に再利用していたことを確認。雪印側は、今後パック詰め製品を一切再利用しないと説明しているという。

 評価会議は、食品衛生上は問題ないとしたが、総合衛生管理製造過程(HACCP=ハサップ)承認を受けた工場としては不備がある、と指摘した。

 再開への条件は、テスト生産をして安全対策の有効性を確認▽洗浄作業手順書をつくり確実に実行▽操業再開後1カ月間は工程ごとの記録をきちんと取り報告▽未申請の工程は早急に届ける――など6項目に加え、パック詰め製品を再利用しないことを含めた7項目。厚生省は、雪印本社に確約書の提出を求め、再開を認める。

 雪印の牛乳工場は全国に21カ所ある。ずさんな衛生管理が次々と明らかになり、消費者の「雪印離れ」が進んだことから、同社は今月11日、食中毒事件を起こした大阪工場以外の20工場についても自主的に操業を停止することを表明。その後、順次操業を停止させてきた。大阪工場は6月末から操業を停止している。

 今回安全評価を受けたのは、雪印の札幌、東京、名古屋、神戸、福岡、青森、野田(千葉県)、厚木(神奈川県)、京都、広島の10工場。評価会議は残る10工場についても、8月2日に評価を行う予定だ。

 また雪印が独自に第三者機関に依頼していた自主点検は、24日に20工場で終了し、10工場分についてはその結果が専門評価会議で検討された。雪印乳業広報部は25日夜、厚生省の発表を受けて、「指摘を受けた項目について真しに受け止め、早急に対応する。操業再開にあたっては、具体的な対応策を考えて厚生省に検討してもらうので、操業再開まで数日はかかる見込みだ」と話した。

雪印の販売店、22日時点で570店が営業停止

2000.07.25(23:25)asahi.com
 農水省は25日、営業を休止している雪印乳業の契約販売店が22日時点で、570店に上ったことを明らかにした。16日時点では90店だった。営業休止店が増えたことについて同省は「生産を止めた工場に残っていた牛乳を売っていた店があったが、それらが減ったためではないか」とみている。

 関東地区では1220店の契約店のうち249店、近畿では498店のうち116店、九州では415店のうち113店が営業を休止している。近く、工場の生産再開も見込まれており、今後は営業休止店は減りそうだ。

雪印の牛乳販売店、全国で約90店が営業休止

2000.07.20(00:59)asahi.com
 雪印乳業が契約している全国3240の牛乳販売店のうち、16日現在で約90店が営業を休止していることが19日、わかった。雪印が農水省に報告した。食中毒事件を起こした大阪工場がある近畿地方では、29店が営業を休止していることがすでに明らかになっていたが、牛乳工場が操業停止する中、販売店への影響は全国に広がっている。

 また、農水省と生産者団体による、生乳の需給調整会議が19日に開かれ、学校給食が休止しても、牛乳の原料である生乳のだぶつきは少ないことが、生産者団体からの報告でわかった。

 雪印の工場が停止しているため、学校給食が休止期に入ると、生乳の需要が減ることが心配されていた。しかし、21日から31日までの間、販売できない生乳は、九州を除いてほとんどない見通しという。

雪印乳業社長が経団連理事を退任

2000.07.18(19:46)asahi.com
 経団連は18日、集団食中毒事件を起こした雪印乳業の石川哲郎社長から出ていた理事退任の申し出を了承した。石川社長は事件を機に、社長退任を表明、業界団体の日本乳業協会の会長の辞意も固めている。

 一方、同日開かれた経団連の理事会で、今井敬会長は雪印乳業問題について、「産業人の常識では到底信じられないような問題である。人の生命や生活に直結する産業において、こうした問題が生じたことは極めて遺憾である」と語り、会員企業に同様の事故が発生しないよう注意を喚起した。

雪印工場の安全性判断、8月2日までに判定へ

2000.07.18(20:34)asahi.com
 雪印乳業(本社・東京)の食中毒事件で、厚生省は18日、同社が操業を停止している全国20工場の安全性を確認するための第1回専門評価会議(座長・丸山務麻布大教授)を開き、厚生省職員による現地調査の報告を待って、8月2日までに結果を出す方針を決めた。

 厚生省は19日から2日間現地調査に入る札幌、東京、名古屋統括、神戸、福岡統括の5工場を手始めに、7月末にかけて計20工場の衛生管理の状況を調べる。

 国の総合衛生管理製造過程(HACCP=ハサップ)の承認を受けた際に申請した製造工程や設備、衛生管理が守られているかどうかを点検する。厚生省は事件を受け、加工乳を加工乳に再利用することを認めない立場を明確にしており、再利用の配管が取り外されたかどうかも調べる。

 専門評価会議はこの調査結果を受け、10工場は7月25日までに、残りは8月2日までに、安全性を総合判断する。

雪印、生産者や販売店の被害に金銭拠出へ

2000.07.18(20:31)asahi.com
 雪印乳業(本社・東京)は18日、大阪工場の製品が原因の食中毒問題で、余分な経費が発生する生産者団体や、商品の供給を受けられなくなった販売店などに対し、金銭の補てんや無利子融資することなどを盛り込んだ対応策を明らかにした。

 雪印の工場の操業停止で、生産者団体が他メーカーの工場に牛乳を運んで運送経費がかさんだ場合、雪印が負担する。販売店へは融資のほか、返品商品の買い取りにも応じる。また、生産者と国で作る補償基金にも特別に資金を出す。

雪印、大阪除く全国20の牛乳工場を自主点検

2000.07.17(21:46)asahi.com
 雪印乳業は17日、第三者の専門家チームによる牛乳工場の自主点検を18日から行うことを決めた。第三者による自主点検が終わり次第、厚生省は、専門の職員による現地調査を実施する。両者の点検結果を基に、18日に発足する厚生省の「専門評価会議」(座長・丸山務麻布大教授)が、衛生管理状態などを検討する。

 雪印の自主点検は営業禁止処分を受けている大阪工場を除く全国20の牛乳工場が対象。24日までの間に、各工場ごとに1日かけて実施される。

 第三者の専門家チームは、財団法人日本乳業技術協会や社団法人日本食品衛生協会など4団体の総合衛生管理製造過程(HACCP)の専門家を中心に組織。工場1カ所につき、2、3人で調査にあたる。

 厚生省の専門評価会議は食品衛生の専門家6人から成る。専門評価会議が最終的な評価をして安全性が確認されれば、工場の操業が再開できる。厚生省の雪印乳業食中毒事故対策本部は、8月上旬までに調査と評価を終えたいとしている。

雪印グループの雪印食品は「安全性を確認した」と発表

2000.07.15(17:44)asahi.com
 雪印グループの雪印食品(本社・東京)は15日、雪印乳業で食中毒事件が起きたことなどを受けて、自主的に行っていた生産工場の安全点検について、「O(オー)157や黄色ブドウ球菌の検査をした結果、安全であることを確認した」と発表した。

 雪印食品は保健所に依頼し、ハムやソーセージなどの直営の生産工場3カ所と、子会社の生産工場1カ所で、水質検査や液体を貯蔵するタンクのふき取り調査、細菌検査などをした。検査は13日までに終わった。

 雪印食品総務部は、「雪印乳業の食中毒事件後、同じマークをつけた企業ということで、消費者から安全性の問い合わせが多く寄せられている。安心してもらうため、安全性が確認されたことを発表した」と話している。

加工乳、他社も広く再利用 厚生省がHACCP承認例も

2000.07.15(03:04)asahi.com
 雪印乳業大阪工場の製品による集団食中毒を機に問題化している加工乳の再利用が、全国のほかのメーカーでも広く行われていることが業界関係者らの証言で明らかになった。再利用の工程を含む工場の製品に対し、厚生省が総合衛生管理製造過程(HACCP=ハサップ)の承認を与えていた例もあった。いったんパック詰めした加工乳を新たな加工乳の原材料として使った製品を、厚生省が事実上、認めていた形だ。

 HACCP承認を受けていたのは、大手や中小の乳業メーカーなどの複数の工場。大手の工場の場合、パックや瓶に詰められた未出荷の加工乳を開封して専用タンクに冷蔵貯蔵し、「回収液」として新たな加工乳の原料に回していた。このメーカーは、製造後8日間という品質保持期限内に使い、品質管理もしているので問題ないとしている。

 ただ、この工場は最近、県から再利用をしないよう改善命令を受けた。担当者は「この製造方法は30年来、続けている。HACCPの承認も受けたのに」と戸惑いをみせる。

 別の中小メーカーも最近になって、県から改善命令を受けた。工場の責任者は「加工乳を加工乳として再利用する製造工程を、厚生省からHACCP承認してもらっていたので驚いた」と語る。県側は「再利用の工程を国に承認されていたので、国に確認したら改善指導してほしいといわれた」と首をひねる。

 業界側が「再利用は認められている」と受け止めてきたのは、加工乳が省令で定められた脱脂粉乳やバター、水などの原材料からできる製品だからだ。

 ところが、厚生省は11日、全国の自治体や業界団体に通知を流し、(1)10度以下に保存(2)品質保持期限内などの再利用の原則を初めて示した。驚いた日本乳業協会(東京)は13日、厚生省に見解をただしたうえで、「適正な製造条件のもとで」製造された加工乳の再利用には問題がないとされたとして、加盟メーカーに文書で知らせた。

 厚生省は14日、事故対策本部を開き、終了後の記者会見で、加工乳を加工乳の原料として再利用することは「食品衛生法に違反する」と強調した。成分規格を定めた省令が、加工乳の原材料を限定し、加工乳を除外していることを根拠にあげた。森田邦雄・厚生省乳肉衛生課長は「事実とすればHACCP承認の際のミス。事実関係を確認したい」としている。

雪印の工場閉鎖、長期化も 厚生省が見解

2000.07.14(22:47)asahi.com
 厚生省は14日、雪印乳業食中毒事故対策本部後の会見で「すべての工場で厚生省の安全確認調査が済むのは3週間程度かかり、8月上旬がめど」と明らかにした。雪印側は「閉鎖は1週間程度」としていたが、厚生省の安全確認が済んでから操業を再開することに同意しているといい、工場閉鎖の長期化は避けられない情勢になった。

 厚生省の確認調査は、工程の変更を含めた製造工程全般▽製品の再使用状況▽総合衛生管理製造過程(HACCP=ハサップ)の衛生管理マニュアルなどに力点を置き、調査した内容を学識経験者を含めた専門評価会議でさらに検討して安全性を評価、改善点があれば行政指導する。

 同省によると、雪印側は自主点検で立ち会ってもらうと表明していた第三者機関を選ぶめども立っていない模様で、事実上、専門評価会議の検討で肩代わりすることになりそうだ。

厚生省が雪印21工場の独自調査実施へ

2000.07.13(20:50)asahi.com
 津島雄二厚相は13日夕、雪印乳業大阪工場の製品による集団食中毒事件を受けて、同社が21の全工場について実施する自主点検とは別に、厚生省独自の調査を行う方針を明らかにした。職員のほか専門家によるチームを結成し、安全性の確認を行う。具体的な態勢については、14日に開く対策本部の会合で決める予定だ。地方自治体による全工場の点検では、いったん安全宣言を出したものの、「消費者に納得してもらえなかった」(厚相)と判断したからだ。

 独自点検は、新たに問題となっている加工乳の再使用について、温度管理や作業方法に問題がなかったかどうかなど、衛生管理の全工程について行う。

 加工乳の再使用は、厚生省令では認めていないが、厚生省は11日付で「ただちに食品衛生法上問題とはならない」と通知している。このあいまいな点が国民の混乱を招いているとの指摘に対し、厚相は「国民に納得してもらえるようにしたい」と述べ、見直しを含めて検討する考えを示した。

別の4工場でも省令違反

2000.07.12The Sankei Shimbun
 雪印乳業大阪工場が返品された加工乳を再利用した問題で、石川県の北陸工場など少なくとも別の四つの直営工場でも厚生省令に違反する形で出荷前の製品を原料に再利用していたことが十二日、分かった。食品衛生法に基づく「乳および乳製品の成分規格等に関する省令」では、牛乳から牛乳を製造、加工乳から加工乳を製造という形での再利用はできないとされるが、北陸をはじめ、名古屋統括、福岡、都城(宮崎県)の四工場では、加工乳を再利用して新たに加工乳を製造していた。

 これまで注文のキャンセルで出荷されなかった製品の一部を再利用していた北陸工場は「違反という認識はない」としている。

 名古屋統括工場も「適法と思っている。再利用は注文の変更などに対応するため予備として多めに製造しておく分で、ライン全体を流れるうちのごく少量」、都城工場は「見込み生産して未出荷のものを再利用している」と説明している。

流通経路ふさがれ操業中止に 雪印、創業以来最大の危機

2000.07.12(01:55)asahi.com
 ずさんな生産体制によって食中毒事件を引き起こした雪印乳業(本社・東京)は11日、飲用牛乳・乳飲料を生産している21工場の操業の一時停止という、創業以来最大の苦境に立たされることになった。大手スーパーなど主要な流通経路が、全製品の販売を相次いでとりやめるという「出口」封鎖も広がったため、やむなく幅広い操業停止に踏み切った形だ。同社は生産体制の総点検を急ぐが、ブランドイメージの回復は容易でなく、厳しい局面を迎えた。

 今回の停止期間は、1週間程度とされるが、乳業界の需要のピークに入るため、この分の売り上げ減だけでも経営に直結する。このほか、一連の問題発覚後撤去された商品を、再度流通現場で陳列してもらうための販売促進費や、中毒被害者への補償費も加えると、2001年3月期決算(単体)で見込んでいる125億円の経常利益の確保は不可能に近く、創業以来初の経常赤字に転落する可能性も強まっている。

 また、ブランドイメージの悪化の広がりは、大手流通業者の雪印製品不信に直結している。雪印専売店にも、操業停止期間に他の大手メーカー商品の納入あっせんなどをするため、生産体制が回復しても、営業面での原状回復にはさまざまな障害も予想される。

雪印製品撤去広がる ヨーカ堂、ダイエー、コンビニでも

2000.07.11(21:32)asahi.com
 集団食中毒事件を起こした雪印乳業(本社・東京)が、複数の工場で返品や未出荷の加工乳を再利用していたことが明らかになった11日、大手スーパーやコンビニエンスストアでは、雪印製品の撤去対象品目を拡大する動きが相次いだ。小売店側は「消費者の不安がさらに広がった」「乳製品以外の危険性も否定できない」などとしており、「雪印ショック」は収まりそうにない。

 イトーヨーカ堂グループ(本部・東京都港区)は11日セブンイレブンなどを含む全国の約8570店舗から、雪印製のベビーフードや粉ミルク、アイスクリームなど117品目を新たに撤去することを決めた。担当者は「お客さんの信頼感を失ってしまえば、商品価値がなくなったのも同然と判断せざるを得ない」と話す。

 通常は買い取り制のため、問題のあった商品でない限り返品はしないが、今回は全商品の返品を求める予定。公的機関が安全性を保証するまでは仕入れをしない方針という。

 西友(本部・東京都北区)でも11日夕、チーズやバターなど雪印の全製品の販売中止を決め、全国約190店に電子メールで指示した。全製品の撤去については慎重に見極めていたが、「雪印商品そのものに対してお客さんの不安が一層高まった」と踏み切った。

 ダイエー(本社・神戸市)も同日夕、全国の314店すべてで雪印の全製品の撤去を決めて、各店に連絡した。

 中堅スーパーのライフコーポレーション(本社・大阪市東淀川区)は11日朝、全店舗から冷凍食品などを含む雪印乳業の全製品を撤去した。

 コンビニエンスストアでも撤去拡大が相次いだ。

 ファミリーマート(本社・東京都豊島区)では11日午後6時すぎ、雪印の全製品を撤去するよう全国約5600店舗に指示した。

 ローソン東京本社(東京都港区)によると、全国の約7400店全店に対し11日、雪印の製品すべてを店頭から撤去するように伝えた。雪印製品が再び店頭に並ぶ時期については、「安全で、消費者から受け入れられなければならないので、いつになるかはわからない」という。

 全国に1400店余りの加盟店を持つミニストップ(本部・千葉市)も11日午前、雪印の全製品の撤去を決めた。

雪印乳業、全国21工場の操業を自主的に停止

2000.07.12(01:41)asahi.com
 大阪工場で製造した低脂肪乳が原因の集団食中毒事件を起こした雪印乳業(本社・東京)は11日夜、緊急記者会見し、営業禁止処分を受けている大阪工場に加え、新たに全国の計20の牛乳製造工場を操業停止にすると発表した。停止期間は12日から1週間以内と見込み、この間に専門家らを加え、安全性を点検する。発症者が1万人を超えた食中毒事件は、その後、出荷されなかったり返品されたりした乳製品を加工乳などの原材料として再利用していた問題も表面化、雪印ブランドの信用問題に発展している。全国のスーパーなどで雪印製品の撤去の動きが広がり、酪農家への影響も懸念されており、今回の措置は、安全性を確認したうえで消費者の不安を取り除きたいとの考えとみられる。

 11日午後11時すぎ、東京本社と西日本支社で、笹島昭彦副社長ら幹部が緊急記者会見を開いた。この中で笹島副社長は、製造工程での安全性を再点検するため、12日からをめどに、全国20カ所の牛乳製造工場の操業を一時停止すると発表した。点検態勢が整った工場から順次、操業を停止していくという。

 操業の停止期間中、同社は専門家による第3者機関の立ち会いのもと、全製品の製造ラインの工程、製造方法などについて安全性を厳しく点検する。これにかかる期間について、笹島副社長は「1週間はかからないと思う」と話し、各工場の安全が確認され次第、操業を再開する方針を示した。

 操業停止の開始時期のめどを12日からとしたことについて同社は、「学校給食や取引企業が存続できるよう、(他社からの)代替品の手当てがつく段階と判断した」と話した。

 また、返品されるなどした乳製品を加工乳などの原材料として再利用していた問題については、笹島副社長は「そのような情報を得ているが、現段階では、どこでどのように行われていたのかは、調査中で把握できていない」と述べるにとどまった。

 小売店などの取引先の補償問題については、「誠意を持って対応するが、補償額がいくらになるか、ここでは言えない。影響を受ける取引企業数も把握できていない」と説明した。

 雪印は現在、マーガリンやチーズなどの乳製品を含め、全国に計34の製造工場を操業している。このうち、操業停止とするのは、大阪工場を含め、牛乳やヨーグルトなどを製造している全国21の工場。

 同社によると、21の工場での生産量は昨年度実績で1日平均約3600キロリットルで、売上高は同7億5000万円に上るという。大阪工場による集団食中毒の影響で、現在の工場の操業率は15%ほどに落ち込んだという。

 畜産団体関係者によると、牛乳生産全体に占める雪印のシェアは約5分の1になる。スーパーなどで、雪印製品の撤去が進み、全体の消費量が落ちると、酪農家への影響も大きくなる恐れがある。

 一時停止を決めたことについて、笹島副社長は「操業停止は、苦渋の選択です。一連の事件を厳粛に受け止め、消費者の不安を取り除き、安全性の確認を徹底したい。製品で失った信頼は、商品で取り戻すしかない」と話した。

       ◇

 <料理研究家小林カツ代さんの話>

 雪印がここまで牛乳への信頼を落とすと、一企業を超えて、国全体の問題になってしまいました。牛乳の危機です。罪のない酪農家のことが気になります。牛の乳は毎日搾るから、牛乳の消費が減れば、酪農家は汚染されていない純粋なオッパイまで捨てざるを得なくなる。一企業のずさんさのツケが、末端の重労働の人たちにいきます。牛乳は栄養があって安い大切な基礎食品。そごうより、むしろ酪農家の救済にこそ税金を使うべきだと思います。

雪印・幌延工場製のバターも「チーズ臭」で回収騒ぎ

2000.07.10(22:09) asahi.com
 雪印乳業の幌延工場(北海道幌延町)で4月に製造されたバターの購入者から「チーズのようなにおいがする」という苦情があり、同社が商品の一部を全国で回収していたことが10日、わかった。同社は「健康には悪影響はないので、外部には告知しなかった」としている。

 同社広報部によると、回収したのは4月16、17の両日に幌延工場で製造された「北海道バター」(200グラム入り)と、同じ素材で業務用の「ポーション」(1個8グラム)。北海道バターは約25万個、ポーションは約81万個を出荷したが、いずれも約4分の1を回収した。

 北海道バターに対する苦情は6月7日から寄せられ、今月3日までに計45件に上った。最初の苦情があった直後に同社が現物を検査したところ、一部から通常は混じっていない脂肪分解酵素(リパーゼ)が検出された。このため、同社は取引先に事情を説明し、回収を開始した。ポーションに対しては苦情はきていないという。

 同社は可能なものは回収したとしており、残りはすでに売れるなどしたと見られる。

 原因について、同社は「製造当時、バターの製造ラインに機械トラブルがあり、原料クリームの貯蔵が長引いた。その過程でリパーゼが産出し、分解が進んで異臭がでたとみられる」と説明。健康への影響については「微生物や菌は検出されておらず、食べても問題はない」としている。

雪印乳業の石川社長が高血圧で入院

2000.07.10(17:33)asahi.com
 雪印乳業(本社・東京)は10日、石川哲郎社長(66)が「高血圧緊急症」と診断され、9日から入院していることを明らかにした。約1週間の加療が必要という。石川社長の入院中は、笹島昭彦副社長が社長代行に就く。

雪印直営20工場は「問題なし」 厚生省まとめ

2000.07.10(20:27)asahi.com
 雪印乳業大阪工場の製品による集団食中毒事件で、厚生省は10日、大阪工場を除く全国の雪印直営20工場の衛生管理状態は特に問題がない、とする調査結果をまとめた。タンクの洗浄マニュアルや洗浄記録がないなどの理由で、一時的に製造自粛を行政指導されていた東京・日野工場と静岡工場については、すでに問題が是正されているとしている。雪印の関連工場や他社の乳処理施設、計約840工場についても自治体を通じて立ち入り調査を進めており、14日までに結果をまとめる。

 また厚生省は、雪印大阪工場が受けていた国の「総合衛生管理製造過程」(HACCP=ハサップ)承認を取り消すため、行政手続法に基づく聴聞を11日に開く。雪印側の弁明を聞いた上で、早ければ週内にも取り消し処分が決まる見通しだ。

雪印静岡工場から毒素検出されず 11日にも再開へ

2000.07.08(20:51)asahi.com
 雪印乳業静岡工場(静岡市牧ケ谷)の貯乳タンクなどに、国際基準の総合衛生管理製造過程(ハサップ)に基づく手洗浄記録がなかった問題で、静岡市保健所は8日、貯乳タンクや配管のバルブなどを調べた結果、大阪工場で食中毒の原因になった黄色ブドウ球菌エンテロトキシンなどの毒素は検出されなかったことを明らかにした。タンクやバルブを使って製造した5種類の乳製品からも毒素は検出されなかった。これを受け、同保健所は7日に出していた製造中止の指導を解除。工場は11日にも操業を再開する。

 同保健所は6日に実施した立ち入り検査で、同工場に手洗浄記録がなかったことから「衛生状態が確認できない」として製造中止を指導。工場は7日午後から全製品の製造を中止していた。工場は8日から手洗浄記録をつけ始めたという。

雪印、JT・キーコーヒーとの統一ブランドから撤退

2000.07.08(00:14)asahi.com
 雪印乳業は7日、日本たばこ産業(JT)、キーコーヒーと連携して、9月から発売する予定だった3社統一のブランド名「Roots(ルーツ)」を使う飲料事業から撤退することを明らかにした。雪印大阪工場製品による食中毒事件と、その対応のまずさへの批判の高まりを受け、「このままでは、せっかくの新ブランドに悪いイメージを与え、他の2社にご迷惑をかけてしまうため」(広報部)という。統一ブランド事業は残る2社によって進められる。

 この事業は、「同種製品に3社そろって統一ブランドを採用するのは初めて」というふれこみで、5月下旬に発表された。雪印が冷蔵用コーヒー乳飲料、JTが缶コーヒー、キーコーヒーがコーヒー豆などを、「Roots」の名で、それぞれ9月以降に発売する予定だった。

 他の2社は7日予定どおり発売すると発表したが、この商品の商談を始めていた営業部門に対して、取引先から「雪印が入っているとやりにくい」といった声が寄せられ始めていたという。

雪印、厚木工場でも一部で手洗浄記録なし

2000.07.08(01:30)asahi.com
 神奈川県海老名市の雪印乳業厚木工場の立ち入り調査をしていた神奈川県は7日、製造ラインの一部で、マニュアルに基づく機械洗浄を行わず、手作業で洗っていたうえ、洗浄記録も残していなかったとして、工場側に改善するよう口頭で指導した。

 厚木工場には6日から立ち入り調査に入っていた。大阪工場で問題となったバルブはあったが、常設で機械洗浄されていて、洗浄記録も残されていた。

 しかし、加工乳の製造ラインにある、バターを溶かすタンク(容量20リットル)は手作業で洗浄され、記録も残されていなかった。マニュアルでは加工乳の生産工程のすべての洗浄を機械ですることになっている。

雪印乳業静岡工場にも手洗浄記録なし 全製品製造中止

2000.07.08(00:57)asahi.com
 静岡市保健所は7日、雪印乳業静岡工場(静岡市牧ケ谷)の加工乳製造ラインにある調整タンクや貯乳タンク18基などの使用を中止するよう指導した、と発表した。6日の立ち入り検査で、国際基準の総合衛生管理製造過程(HACCP=ハサップ)に基づく手洗浄記録がないことが判明、「衛生状態が確認できない」としている。同工場は、7日午後から牛乳を含む全製品の製造を中止した。

 使用中止になったのは、静岡工場の調合室内にある調整タンク14基、貯乳タンク4基、製造ラインをつなぐ可動式のケミカルホース8本。同工場は1998年6月、HACCPに基づく厚生省の承認を受けたが、手洗浄のタンクについて必要な洗浄者と洗浄時間の記録をつけていなかったという。

 山本純工場長は「手洗浄部分は使用のつど洗浄しているが、HACCPに基づく正確な記録を付けていなかった。管理が甘かった」と説明した。

 保健所は加工乳製造ラインで製造された加工乳に黄色ブドウ球菌などがないかを調べており、工場は検査結果が出るまで製造を中止するという。また、静岡県教委は、学校給食に同工場の牛乳を使用している県内124の小、中学校などに対し、1学期が終わるまで同工場製品の使用中止を指導した。

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