TOPIC No.5-16-1 糖尿病(1999年 -2007年)


なくそう・減らそう糖尿病:第7部・世界の取り組み/4

2007年11月16日 毎日新聞 東京朝刊 人生は一回しかない

 ◇途上国、悲惨な治療実態

 「神様からびんたを食らったような衝撃を受けた」。初めて発展途上国の糖尿病患者の状況を知った時のことを、国際糖尿病支援基金の森田繰織(さおり)会長(41)=横浜市=はこう振り返る。

 森田さんは99年の正月、知人の紹介でフィリピン・マニラ郊外にある低所得者向けの病院を訪れた。糖尿病の重症患者が入院している病棟は、蒸し暑く、汗や尿のにおいが漂っていた。

 日本では既にペン型のインスリン注入器が主流だったが、目にしたのは昔ながらの注射器。しかも、使い捨てせずに繰り返し使っているという。インスリンはすべて、オーストラリアの支援組織「インスリン・フォア・ライフ」から無償で提供されたもので、患者たちは「一滴も無駄にできない」と語った。

 森田さん自身も、高校1年の時に1型糖尿病を発病した。以来、何事も悲観しがちになっていたが、この日を境に変わった。「フィリピンでは、インスリンの全体量が不足している上、1カ月のインスリン代が一般の労働者の収入を上回る。普通に治療できる自分がいかに恵まれているか、初めて気付いた」

 これをきっかけに、01年に基金を創設。寄せられた募金を基に、「フォア・ライフ」などの組織と提携して支援活動を進めている。仕事の傍ら、自費で現地を視察するなどして途上国の実態を調べ、ウェブ上や国際会議などで紹介している。

 世界糖尿病財団の推計では、世界の糖尿病患者約2億4600万人の8割が途上国にいる。だが、森田さんによると、世界で生産されるインスリンの75%が先進国で消費され、インスリン不足は途上国共通の重い課題。専門医や知識を持つ人が少なく、食材が限られて食事が偏りがちなことなども、患者増加や症状悪化に拍車をかけているという。森田さんは「少しでも多くの人に、途上国の惨状を知ってほしい」と訴える。【須田桃子】

日清食品がダイエット新スープ かみ応えで勝負

2007年04月07日 中国新聞ニュース

 日清食品は7日、かみ応えのある具材で満足感が得られるスープのカロリー調整食品「カミングダイエット」を25日から発売すると発表した。通信販売だけで、希望小売価格は14食入り1セット1万2600円。

 ダイエットが続かない理由として「満足感がない」が上位にくることに注目。内臓脂肪の蓄積で生じるメタボリック症候群の予防に向けた特定健診が4月から始まったこともあり、商品化した。

 カミングダイエットはスープの中に、「かむ」から命名したでんぷんと食物繊維でできた「カミングシート」が入っている。カロリーは1食当たり210−250キロカロリーで、おにぎり2個分程度。1日3食のうち1食をこれにすることで、総摂取カロリーが抑えられるという。

 スープの味はコーンポタージュやトムヤムクン、ボルシチなど7種類ある。

糖尿病患者の受診格差3倍 地方で多く首都圏少なく

2007年08月12日 中国新聞ニュース
 

 都道府県別の人口10万人当たりの糖尿病患者による1日の外来受診者が、2005年は最多の徳島が262人で、最少の沖縄の88人の3倍に上ることが11日、厚生労働省の調査で分かった。

 受診者が多いのは地方圏に目立ち、これらの自治体では、公共交通機関が発達していないため、近距離の移動にも自動車を使うことが多いなど、運動不足になりやすいことが糖尿病を誘発する一因となっていると推測している。

 徳島は、糖尿病による死亡率も1993年から05年まで13年連続で全国1位。県の担当者は「成人の肥満者の割合が全国平均より高いことや、1日当たりの歩行数も全国平均より1000歩以上少ないことが関係している」と推測する。

 一方、受診者が少なかったのは首都圏で目立ち、神奈川(93人)や埼玉(127人)は若い人の割合が比較的高いことを、考えられる理由として挙げた。これらの県では、糖尿病死亡率も全国平均より低い。その他は、特に思い当たる原因が分からないなどとしていた。

【試行私考 日本人解剖】第2章 機能・体質 病気「小太りの秘密」

2007/03/19 The Sankei Shimbun WEB-site

 ■内臓脂肪がもたらす危険

 飢餓に備えてエネルギーを効率よく体内に取り込む特有の倹約遺伝子が相次いで発見され、太りやすさの解明が進む日本人。今回は、糖尿病や高血圧など肥満が誘発する病気を発症しやすい体質に迫る。メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)は世界的に注目されているが、その予防が特に大切な民族の姿が浮かび上がってくる。(小島新一)

 ≪少ない善玉≫

 国内では、肥満の基準として日本肥満学会が平成12年に定めた「BMI(肥満指数)25以上」という数値が定着している。一方、世界保健機関(WHO)の基準は「BMI30以上」。25以上は「Preobese」で、肥満「予備軍」に過ぎない(BMI=体重[kg]÷身長[m]の2乗)。

 なぜ日本人の基準は厳しいのか。日本肥満学会理事長の松澤佑次・住友病院院長(大阪大名誉教授)は「BMIでは男女とも最も病気になりにくい22が日本人の標準体重ですが、25を超えると糖尿病をはじめさまざまな疾病を発症するリスクがグンと高まります。そこで数字として区切りのよい『25』を基準として、注意が必要な目安としました」と話す。

 いわば小太り肥満でも病気になりやすい体質の謎を解明する鍵として最近注目されているのが、脂肪細胞から血液中に分泌される「アディポネクチン」というタンパク質だ。平成8年、松澤院長が教授を務めていた大阪大医学部第2内科などが発見し、糖尿病や虚血性疾患、高血圧、脂肪肝などの発症や炎症を抑えることが次々と判明。その作用メカニズムも解明されつつある。脂肪が分泌する生理活性物質は「アディポカイトサイン」と総称され、「善玉」と「悪玉」に大別される。アディポネクチンは前者だ。

 「実は日本人は、この善玉タンパク質の分泌が欧米人より少ないのです」と松澤院長。

 ≪欧米人より蓄積≫

 「同じ腹部の肥満でも、皮下脂肪が多い欧米人に比べ、日本人、特に男性では内臓脂肪がより多く蓄積されることが分かってきました。そして不思議なことに、アディポネクチンは脂肪から分泌されるにもかかわらず、内臓脂肪が増えると分泌量が下がるのです」

 その実証例が、滋賀医科大の上島弘嗣教授や門脇祟助手らが昨年、海外の医学誌に発表した日米共同調査だ。40代の日本人と米国の白人男性計416人を腹囲によって4群に分けて内臓脂肪を比べたところ、どの群でも日本人の方が内臓脂肪の面積および対皮下脂肪面積比が大きいことが分かった。特に腹囲の細い2つの群では、内臓脂肪面積が皮下脂肪を上回った。

 また、日米の40代男性各約100人を腹囲で3群にわけてアディポネクチンの血中濃度を調べたところ、いずれの群の平均値も日本人は米国人より低く、60−49%しかなかった。

 「日本人が他の民族と比べても内臓脂肪の蓄積によるメタボリックシンドロームの危険性に注意すべきなのは明らか。アディポネクチンはその診断にも役立つと期待されます」と松澤院長はいう。

 ≪大太りしない?≫

 日本人は太りやすいと言っても、欧米人のように「巨体」レベルの人は少ない。欧米では人口の20−30%がBMI30以上なのに対し、日本では2−3%に過ぎない。

 上島教授は「日本人も欧米並みに太りうる」と警告を鳴らす。ハワイに移住した日本人の子孫である日系人のBMIを調べたところ、欧米人の平均に近い「27」だった。「日本人の遺伝的体質を持つ日系人でもそれだけ太る。日本人が小太りどまりなのは、アメリカほど車に依存せず、自ら動く環境が残っていることや食生活の影響と考えられます」。

 一方、前回紹介した「β3アドレナリン受容体」の遺伝子変異体をはじめとする日本人の倹約遺伝子とは逆に、欧米人が持つ倹約遺伝子が彼らを大きく肥満させていると考えるのは、京都大名誉教授の清野裕・関西電力病院院長。グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド(GIP)と呼ばれるホルモンに関わる遺伝子がそれだ。

 GIPは栄養素、特に脂肪摂取が刺激となって十二指腸などから分泌され、糖と脂肪の脂肪細胞への取り込みを促進し肥満の引き金となる。肉食中心の欧米人はこのホルモンの分泌が盛んで、古来、穀物中心の食生活だった日本人はGIPの分泌が少ない。そのため日本人の肥満度は欧米人より低いのだという。

 清野院長は、血液中の糖分をコントロールするインスリン分泌量が日本人は欧米人の半分から4分の3程度しかないことを1970年代に突き止めた。インスリンが多く必要となる肉食中心の食生活になった戦後の日本人に糖尿病が急増しているのもこのためだが、GIPにはインスリンの分泌を促す作用もある。

 「日本も飢饉はあったがヨーロッパほどひどくはなく、稲作などで一定の食糧が確保できたという見方をすれば、倹約遺伝子が必要だったのは白人。日本人がどんどん肥満しているか、欧米人に比べて肥満の進行は少ないと考えるかによって、倹約遺伝子の意義付けも異なります」

 人の健康状態や病態を決定づける遺伝子や生活習慣との関連は、多様な角度から考える必要がありそうだ。

【糖尿病の食事・糖尿病食】食べて糖尿病対策! アーモンドのススメ 河合 勝幸

2007年03月08日 All about

 アーモンドを食事に取り入れることで食後血糖値の上昇を抑え、血清インスリン濃度も下げて、体の酸化ダメージを軽減するという発表がありました。

 アーモンドを食事に取り入れることで、食後血糖値の上昇を抑え、血清インスリン濃度を下げ、体の酸化ダメージを軽減することができるという発表がありました。かの「グリセミック指数」の提唱者のジェンキンス博士らのグループです。 [The Journal of Nutrition. 136: 2006]

 効果あり? アーモンド食の実験内容

 (生のアーモンド23粒/日をよくかんで食べるのは美肌効果もバツグン)

 この研究の詳細をご紹介しましょう。カナダのトロント大学のスタッフと学生ら、ヘルシーな15人(男性7人、女性8人)が、3種類のテスト食を食べて、その違いを検証しました。

 まず最初に初期値を知るため、白パンのみ97g(炭水化物49.0g、タンパク質8.4g、脂肪3.1g)を2回にわたって摂取してもらい、基本データを取りました。次いで3種類のテスト食を取ってもらいました。

 ?アーモンド食 (白パン97g+アーモンド60g)

 ?米飯食 (ご飯60g+チーズ68g+バター14g)

 ?マッシュポテト食 (マッシュポテト68g+チーズ62g+バター16g)

 このテスト食はエネルギー2,500kJ、炭水化物50g、タンパク質21g、脂肪34gで揃えてあります。

 食後の血糖上昇の割合を示すグリセミック指数は、炭水化物50g摂取後の血糖上昇を時系列で記録して、その曲線の面積の比を指数にします。コントロールの白パンのみを100とすると、米飯食が38±6と低かったのですが、アーモンド食も55±7と十分に低レベルです。マッシュポテト食は94±11と高い指数でした。

 血清インスリン濃度も同様の結果です。

 A1Cへの影響は?

 短期間の実験ですからGA(グリコアルブミン、過去1〜2週間の血糖指標)やA1Cの差はでません。ですから抗酸化ペプチドのグルタチオン等のタンパク・チオールの酸化型、還元型の比を調べて、高血糖の酸化ストレスを調べました。 これならば短時間の高血糖の影響が計測できます。

 分子内に硫黄(S)を含むシステインやメチオニンなどのアミノ酸は、酸化されると-S-S-結合になるので酸化ストレスが分かるのです。

 これによっても、白パンのみ97gを食べるより白パン97g+アーモンド60gの方が酸化ストレスが小さいことが立証できました。高血糖そのものが酸化ストレスですから、これによってもアーモンド食の食後血糖上昇の少ないことが裏付けされます。

 更にアーモンドは抗酸化のビタミンEが豊富ですし、皮の部分にはファイバーだけでなく約20種類の抗酸化物質があると言われています。血糖コントロールに必要なマグネシウムもたくさんあるのです。

 でも、ナッツ類は高カロリーですね。いつもカリカリ食べていたら太らない?と心配する人もいるかもしれません。

【試行私考 日本人解剖】第2章 機能・体質 運動能力「筋肉」

2007/02/12 The Sankei Shimbun WEB-site

 ■加圧運動で筋力アップ

 体を引き締めて健康を維持しようと、スポーツクラブなどで体を鍛える人が日本でも増えている。メタボリックシンドローム(内臓肥満症候群)のように、じわじわと体をむしばむ脂肪と対照的に、筋肉と筋力は体力の基本。しかし、適度なトレーニングがなぜ健康によいのか、どうすればいいのか、そうしたメカニズムや方法は案外知られていない。(守田順一)

 ◆世界と互角

 筋肉美を競うボディービル。その本場、米ロサンゼルスに乗り込み、1994年、ワールドジムチャンピオンシップス世界大会ミドル級で優勝した安田強さんは、日本人の体が世界に通用することを印象づけた1人だ。現在はトップビルダーとしての経験を生かし、フィットネス関連商品を扱う会社「ストロング」(大阪市都島区)を経営している。

 「アメリカはジムやトレーナーのレベルだけでなく、気候から健康に対する意識まで、あらゆる面で環境が整っていた。自分の環境を自分でつくれるものが勝つ。世界大会で優勝し、人種の“壁”を超えたと思った」

 安田さんによると、ボディービルの世界では白人は全身の中で胴が太い▽黒人はふくらはぎが細い−などの“弱点”がある。アジア人は比較的胴が長いが、バランスよく体を鍛え、丸みのある体のラインを繊細に表現することでハンディも克服できるという。

 安田さんがトレーナーに選んだのは、肉体派スター、A・シュワルツェネッガーのライバルで、ヘビーデューティートレーニングの考案者、マイク・メンツァー氏。世界レベルで競うには当然、ハードなトレーニングも必要だが、そこで学んだのは、十分な休養と目的を持って取り組む精神面の大切さだった。安田さんは「体を鍛えることは、何をどう食べるか、どう体をコントロールするかという自分の肉体との対話であり、自分を内側から変えることなのです」と話す。

 ◆パワーアップ担う速筋

 筋力は、筋肉を収縮させたときに出せる力。筋肉の断面積1平方センチあたりの筋力は約6キログラムといわれ、個人差は少ない。速筋と遅筋、中間的な存在の中間筋とがあり、速筋は疲労しやすいが、瞬発的にパワーを発揮できる。遅筋はパワーは劣るものの、酸素がなくても糖を使って活動するため持久力がある。

 遅筋は太くならないため、筋力アップには速筋を活動させ、太くする必要があるが、最大筋力をかけないと発達しない。スポーツ選手がウエートトレーニングでパワーアップを図るのはそのためだ。

 速筋を太くしたい人にとって、「加圧トレーニング」は、日本で発明された最も画期的なトレーニング法だろう。手足の付け根を特殊なバンドで締め、筋肉の中を流れる血液を適度に制限して手足を動かしたり、加圧と除圧を繰り返したりして、成長ホルモンの分泌を促進。短い時間、しかも軽い運動で激しい運動以上の効果を得るものだ。

 「正座して足がしびれたときに筋肉が張る状態をヒント」に、ボディービルダーでもあるサトウスポーツプラザ(東京都)の佐藤義昭さんが、自らの体を使って約40年前に発明。東京大の石井直方教授(運動生理学)との共同研究では、平均60歳の女性20人が4カ月間で最大30%、上腕二頭筋が増大するなどの結果が得られた。プロゴルファーの杉原輝雄氏が実践していることでも知られる。

 ◆カギは成長ホルモン

 加圧トレーニングが効果を上げる仕組みはこうだ。

 血流を適度に制限して運動すると、遅筋の酸素が維持できず、速筋が活動する。同時に「疲れ」を感じさせる筋肉内に乳酸が蓄積されることで脳がだまされ、多量の成長ホルモンが分泌される。

 加圧運動後の成長ホルモン濃度は、通常運動の約10倍、安静時の約290倍に及ぶ。加圧後は末梢の毛細血管にまで血液が回るようになり、血行も加圧前に比べ約70%促進される。

 「成長ホルモンは脂肪を分解し、筋肉をつくり、骨密度の上昇やケガなどの回復に効果がある」と佐藤さん。加圧トレーニングは、筋ジストロフィーや脳出血患者らのリハビリなどにも用いている。また、平成16年からは東大医学部付属病院の「22世紀医療センター」プロジェクトの1つとして講座も設けられ、先進医療としての注目が集まる。さらに、筋力や骨量の減少が問題になる宇宙飛行士向けのトレーニングとしても本格的な研究がスタートしている。

 佐藤さんは「加圧トレーニングは東大などの協力でメカニズムが解明され、スポーツや医療、介護予防、ダイエットなどさまざまな分野に有効なことが分かってきた。ただし、安全かつ効果的にトレーニングするには加圧の有資格者から指導を受けてほしい」と話している。

内臓脂肪で糖尿病、仕組み解明

2007年02月09日 読売新聞 Yomiuri On-Line

東大教授らチームがマウス実験で

 中高年に多い内臓脂肪型の肥満が糖尿病を引き起こす仕組みを、東大病院糖尿病・代謝内科の門脇孝教授らの研究チームが、マウスを使った実験で解明した。

 治療薬の開発につながる研究成果で、米医学誌「ネイチャー・メディシン」電子版に掲載された。

 内臓脂肪が蓄積すると、脂肪細胞から出るアディポネクチンというホルモンの量が減る。アディポネクチンは、血糖値や中性脂肪を下げる働きがあるため、分泌量が減ると糖尿病などの生活習慣病の引き金となるメタボリック・シンドローム(内臓脂肪症候群)を起こすことが知られていた。しかし、そのメカニズムは未解明だった。

 門脇教授らは、マウスの肝臓細胞の表面に、2種類のたんぱく質を発見。これらにアディポネクチンが結合すると、血糖値や中性脂肪が下がり、脂肪を燃やす働きも上がることを確認した。ところが、内臓脂肪が蓄積した肥満マウスは、細胞表面にこのたんぱく質が少なくなる。逆にこのたんぱく質を増やすと血糖値が改善することがわかった。

 門脇教授は「内臓脂肪型肥満でアディポネクチンが減少しても、このたんぱく質を増やすことで、糖尿病を治療できる可能性がある」と話している。

リンゴに“メタボ”予防効果あり

2007年02月01日 東奥日報

 県主催の「りんごで健康づくりセミナー」が一日、弘前市の弘前商工会議所会館で開かれた。アサヒビール未来技術研究所の神田智正氏が「りんごポリフェノールの効用について」と題し講演。「リンゴを十二週間以上、継続的に摂取することで『メタボリックシンドローム』(内臓脂肪症候群)の予防と改善に効果がある」と述べた。

 セミナーには、保健師や栄養士、消費者ら約百五十人が参加した。

 同市のニッカウヰスキー弘前工場にも勤務経験のある神田氏は、リンゴの食品としての機能性を説明した上で、体に良い働きのあるリンゴポリフェノールの効用について、「内臓脂肪の低減や、脂質の代謝改善、血流の改善などといった抗メタボ作用がある」と説明。多角的な研究データを示しながら、リンゴの医学的効用を語った。

 講演後、新品種「星の金貨」や、「王林」など黄色品種のリンゴ試食会や、リンゴを使った料理の展示が行われ、参加者は味を確かめながら、リンゴの良さを感じ取っていた。

見直しましょう“果物” ダイエットに効果 生活習慣病を予防

2007/01/30 The Sankei Shimbun WEB-site

 日本人の果物摂取量が年々減っている。今や先進国では最低水準となり、特に20、30代で極端に少ない。果物は生活習慣病の予防に効果があることが明らかになっている。ミカンやリンゴのおいしい季節。生産者や研究者らは「嗜好(しこう)としてばかりでなく、毎日200グラム、ミカンなら1日約2個、リンゴなら1日約1個は食べてほしい」と呼びかけている。(岸本佳子、頼永博朗)

減り続ける摂取

 厚生労働省の国民健康・栄養調査によると、国民1人の1日当たりの果物摂取量は平成16年、119.2グラムで、昭和50年の193.5グラムから年々、減っている。

 年代別にみると、60代で165.8グラムなど高齢層で多く、1〜6歳は121.6グラム、7〜14歳も120.5グラムと低年齢層でもある程度食べられている。しかし、20代で77.4グラム、30代で63.1グラムと、1〜14歳の3分の2〜半分程度だ。

 摂取量が減っている理由について、財団法人「中央果実生産出荷安定基金協会」(中央果実基金)の需要促進部長、野田知広さんは「今の若い世代は皮をむいたりするのを面倒と考えがち。清涼飲料水の普及も影響している」としたうえで、「ダイエットブームのなか、果物は甘いので太りやすいという誤解がある」と話す。

 中央果実基金によると、果物100グラム当たりのエネルギー量はショートケーキの約15%で、200グラムでも1日所要量の4%相当の約80キロカロリーにすぎない。果物は水分や食物繊維が多く、低カロリーでありながら満腹感を得られるため、「食前に食べると主食の摂取量が自然と少なくなるため、ダイエットに効果的」と啓発している。

血糖値上げない

 「果物を毎日、適量食べることは、糖尿病や心臓病、脳卒中の予防に効果的」。こう話すのは、独立行政法人「農業・食品産業技術総合研究機構」の果樹研究所上席研究員、田中敬一さん。

 血糖値の急激な上昇は、肥満や糖尿病の要因になる。高血糖はまた、心臓病や脳卒中を招く恐れもある。以前は、ブドウ糖などの過剰な摂取は抑え、デンプンなどから糖分を取る必要があると考えられていたが、最近の研究では、デンプン食品よりも果物の方が血糖値を上げないことが分かってきたという。

 日本糖尿病学会も、糖尿病患者に対し、1日80キロカロリーの果物摂取を勧めている。田中さんは「医師の中にも依然として果物の糖が糖尿病を誘発するリスクが高いと考えている人がいるが、それは誤り」と指摘する。

200〜300グラムどうぞ

 ビタミンやミネラル、食物繊維の供給源という印象の強い果物だが、“健康パワー”もある。

 田中さんの果樹研究所の実験では、被験者14人に果物の中で比較的多く果糖を含むリンゴを1日420グラム、3週間毎日食べてもらったところ、12人の中性脂肪値が低下。平均で21%減少したという。

 世界がん研究基金と米国がん研究財団は、果物の摂取により、がんの発生リスクが減ることを報告している。特に日本人に多い胃がんの場合、果物を毎日300グラム食べる人は50グラムしか食べない人に比べ、リスクが半減するという。

 一昨年には、厚労省と農林水産省が「食事バランスガイド」を作成。果物については1日当たり200〜300グラム食べることを推奨している。

甘みと酸味 料理にも

 生の果物を食べてもらえないのならば、料理に取り込んでしまえばいい−。銀座ライオンブラッスリー小松店(東京)の料理長、安斎功二さんは、リンゴを使った料理を提案する。その一つが、「リンゴ包み 鶏肉のロースト」。千切りにしたリンゴを鶏肉で巻き、皮面をソテーした後、オーブンで火を入れる。ソースは砂糖とバターでソテーしたリンゴを、バルサミコと赤ワインで煮詰めたものだ。

 安斎さんは「フランス料理では鴨とオレンジを合わせるなど果物を料理に使うのは一般的。食材を選べば、家庭でも甘みと酸味の組み合わせを気軽に楽しめる」と言う。

 中央果実基金も果物を使った多彩な料理のレシピをホームページ上で紹介している。野田さんは「核家族化が進み、こたつを囲んでミカンなどを食べる習慣が失われつつある。果物を上手に生活に取り入れてほしい」と話している。

肥満予防に効くおかゆ開発

2007/01/29 中国新聞地域ニュース

 アルファー食品(出雲市)と島根大医学部は、消化吸収されにくいデンプン「アミロース」を多く含む米「夢十色」を使ったおかゆなどを開発した。食後の血糖の上昇を低くする効果があり、実験した塩飽邦憲教授は「糖尿病や肥満の予防効果が期待できる」としている。夢十色はコシヒカリの約1.5倍のアミロースを含む。おかゆなどにするとさらさらとした食感でおいしい。白がゆとおじやの2種類を開発した。

糖尿病治療 カギ握る酵素 東大チームが働き解明

2007年01月04日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 日本人が欧米人に比べて糖尿病になりやすいのは、血糖値調節の膵臓(すいぞう)細胞を増やす仕組みに弱点があるためらしい。東大の研究チームが動物実験でカギを握る酵素の働き具合を解明した。糖尿病の新たな治療法にもつながる成果として注目される。米医学誌で3日報告した。

 肥満になると血糖値を調節するインスリンの働きが鈍り、糖尿病にかかりやすい。日本人は欧米人より肥満の割合は少ないが、日本では最近、糖尿病の患者が増え、その理由はよくわかっていない。

 東大糖尿病・代謝内科の門脇孝教授らのチームは、糖を代謝するグルコキナーゼという酵素に注目。この酵素の働きが弱い“日本人型”マウスと、通常のマウスそれぞれに、脂肪の多い食事を与え続け、糖尿病を発症する仕組みを調べた。

 どちらのマウスも肥満になり、インスリンも効きにくくなったが、通常のマウスは膵臓のインスリンを作る細胞が増えて分泌量も増え、血糖値を調節した。一方、日本人型のマウスは膵臓の細胞が増えず、糖尿病になった。詳しく調べたところ、グルコキナーゼに膵臓の細胞を増やす役割があることが初めてわかった。

【糖尿病の食事・糖尿病食】忘年会 糖尿病でもお酒を楽しむ10ヵ条 河合 勝幸

2006年12月08日 All about
.

 糖尿病でなくてもアルコールは微妙な問題なのに、いざ糖尿病と診断されると途方に暮れてしまいます。医師に聞いても「適量」と言うだけだし、年末年始の飲み会は断れないし……、どうしよう!

 糖尿病でなくてもアルコールは微妙な問題なのに、いざ糖尿病と診断されると途方に暮れてしまいます。医師に聞いても「適量」と言うだけだし、年末年始の飲み会は断れないし……、どうしよう!

 アルコールは本当に扱いにくい課題ですね。

 体の問題だけでなく、ストレスや心の状態も影響します。陽気な仲間と飲めば楽しいですが、飲み過ぎると品行やモラルが問われます。まして糖尿病となると少しお酒への姿勢を考えなくてはいけません。

 糖尿病でもアルコールを楽しむ10ヵ条

 1.空腹で参加しない

 血糖降下剤やインスリンを使っている人がアルコールを飲むと、思いがけない低血糖になることがあります。まず医師と打ち合わせて、対策を習うことが大切です。 空腹のままで飲まないように。必ず事前に少し、何か食べるようにしましょう。

 2.おいしく安全に飲める量を知る

 お酒には「おいしく飲める量」があります。缶ビール(350ml)、清酒1/2合、120mlのワイン、ウイスキー水割りシングル1杯などです。これらは同じアルコール量なのです。女性はこの分量、男性でも2倍までが、糖尿病者にとって1日の無難な基準となっています。

 3.飲酒の仕組みを知っておく

 アルコールは胃から直に吸収されるので、飲んで5分もすれば血液に現われています。血中のピークは30分から90分後ぐらい。肝臓がアルコールを分解できる量は、酒が強い人も弱い人も一定していて、体重75kgの人では350mlの缶ビールを2時間で分解します。

 インスリンを使っている人は、肝臓にとってアルコールは毒物だと理解してください。血糖が下がってもブドウ糖を放出する回路がうまく働かなくなるので、油断は禁物です。

 4.1型の人は「IDグッズ」を身に着ける

 酩酊と低血糖症状はよく似ています。1型の若者がビール1缶飲んで急に低血糖になっても、酔っ払いとして扱われるでしょうね。これはとても危険です。特に外国旅行では、1型の人はIDグッズが必要です。

 5.アルコールは気を緩めると叩き込む

 いやいや、よく分かってますよ。ホントに……。グラスを重ねる程、お皿の盛り方も昔に戻るのです。気が大きくなりすぎないように、注意注意。

 6.医師への報告をしよう

 週に2回以上飲む人は、そのことを医師に伝えましょう。薬が代ることがあるのです。

 7.血糖コントロールが悪いときは飲まない

 ますます悪化します。アルコールで体を壊したことがある人も飲まないこと。お酒を飲んで食事を抜くのは最悪です。

 8.おいしくゆっくりと飲もう

 イッキ飲みはとても危険です。お酒は糖質カット、カロリーカットのライトビールや辛口のワインなどを。シャンパンは「ドライ」でも加糖してあるので、「ブリュット」を選びましょう。

 9.神経障害がある人は飲まない

 手や足に合併症の神経障害がある人は断念しましょう。目に合併症が出た人も同じです。アルコールが症状を悪化させます。高血圧の人もアルコールをやめれば改善されるはずですよ。

 10.アルコールは高カロリーだと忘れずに!

 アルコールは栄養素ではなく、ただのエネルギー源です。日本の食品交換表では交換するものがありませんが、アメリカではビール1缶(350ml)が油脂10gと交換になっています。

 アルコールは1gで7kcal。350mlのビールがアルコール分5%とすると 350*0.05*0.8=14g すなわち14gのアルコールです。0.8を掛けるのは比重が軽い分です。

 いかがですか? 食事をカロリーだけで考えて、飲んだ分だけ食べなければいいと錯覚する人がいます。これは誤りですよ。引き算の対象がないのですから。

 アルコールは体に必要な栄養素ではないことを覚えておいて、グッドコントロールしながら、楽しく飲みましょう。私もすぐに忘れてしまうので、気をつけないと……

発酵食品「テンペ」に生活習慣病予防効果!

2006年07月02日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 インドネシアの伝統食で、日本でも普及し始めた発酵食品「テンペ」に糖尿病や動脈硬化など生活習慣病を予防する効果のあることが、岡山大医歯薬学総合研究科の松浦栄次助教授らの研究で分かった。

 こうした効果に注目し、新たな商品開発に乗り出す企業なども現れている。

 テンペは、ハイビスカスなどの葉の表面に付着したテンペ菌を、煮た大豆に混ぜて発酵させた食品。クリに似た風味で、インドネシアでは揚げ物や炊き込みご飯の食材に用いられている。

 松浦助教授らは、男女56人に大豆テンペを50グラムずつ4週間食べさせ、摂取前後の血液を比較したところ、すべての人で糖尿病に近付いた程度を示す物質が減少し、テンペの摂取をやめた後も効果は2週間続いた。

 悪玉コレステロール代謝物も男性で平均3・3から0・5に、女性で同2・9から0・7に低下した。松浦助教授は「大豆イソフラボンの効果は男性だけだが、テンペは女性にも有効」と話す。

 大手スーパー「イトーヨーカ堂」を傘下に持つ「セブン&アイ・ホールディングス」は、約120店舗で販売している。リピーターも多く、「口コミで需要が広がっている」(広報センター)という。茨城県常陸太田市の納豆製造会社「くめ・クオリティ・プロダクツ」では、板状に加工し、真空パックに詰めた商品を考案した。 -------------------------------------------------------------------------------

テンペ by新潟マルシン食品(株)

直売所で、大豆発酵食品「テンペ」の普及を図るby 読谷村農漁村生活研究会、沖縄テンペ普及協会

歯周病の治療で 糖尿病良くなる? 歯周病の治療をすると、糖尿病が良くなると聞きましたが、本当ですか。(愛知県小牧市 58歳の公務員)

2006年06月07日 読売新聞 Yomiuri On-Line

徹底的にすれば 症状軽減も可能 (愛知県小牧市 歯科医師会長 松浦 克成)

 歯周病は、歯の周辺の組織に細菌が感染して起こる慢性的な感染症です。

 ところで、糖尿病にかかると、歯周病が悪化すると言われてきました。実際、糖尿病の人は歯周炎や歯周病にかかっている人が多いという報告があります。また、最近になって、歯周病が進行すると、糖尿病の症状も悪化するという関係も判明しています。これらのことは、歯周病になると血糖値のコントロールを悪化させ、結果的に糖尿病の発症につながるなどの可能性があるためだと考えられています。

 このため、歯周病を徹底的に治療すれば、糖尿病の症状がが軽減するなど、患者にとっていい傾向に働くことが明らかになってきました。

 以上のことから、現在、健康な方も定期的に歯科医を受診され、歯周病の予防に努めるようお勧めします。

膵臓正しい位置に作るのは二つの遺伝子…京大研究グループ

2006年05月29日 読売新聞 Yomiuri On-Line

糖尿病治療に生かせる可能性

 動物の体が出来ていく際、膵臓(すいぞう)が正しい位置につくられるように指示する遺伝子を、京都大医学研究科の川口義弥助手らの研究グループが突き止めた。遺伝子は二つあり、正しく働かないと十二指腸になるべき細胞の一部が膵臓になるなど、本来とは異なる部位に組織ができた。これらの遺伝子を制御できれば、インスリンを分泌する膵臓細胞を体内で新たに作ることができ、将来的には糖尿病の治療へ生かせる可能性があるという。

 遺伝子は「ptf1a」と「Hes1」。ともに細胞の核内で遺伝情報が読み取られる際のオン、オフを指令するスイッチ役たんぱく質を作る遺伝子で、ptf1aは発生段階で膵臓になるべき細胞(前駆細胞)を正しい組織形成へと導き、Hes1は様々な細胞間の情報伝達にかかわっている。

 グループはマウスの胎児を使った実験で、Hes1が働かないよう遺伝子操作した場合、胃や十二指腸の前駆細胞でもptf1aが活動し、一部で膵臓組織を作ることを確認。両方の遺伝子が働かないようにした場合は、本来の胃や十二指腸の細胞になった。

 川口助手は「Hes1がptf1aの働きを制御し、膵臓組織を正しい位置に作らせているようだ。これらの遺伝子をうまく操れば、胃や十二指腸の細胞を膵臓組織へ変換できるようになるかも知れない」と話している。

 この成果は米医学誌ジャーナル・オブ・クリニカル・インベスティゲーション電子版で発表された。

糖尿病、合併症3割減目標に厳し〜い生活指導開始へ

2006年05月22日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 糖尿病患者の生活習慣などを従来の治療より厳格に指導し、脳梗塞(こうそく)のような重い合併症を30%抑える大規模な臨床試験が東大など全国71の医療機関で近く始まる。

 身長170センチ、体重72キロの人なら3か月で約8・5キロの減量を目指すなど目標を極めて高く設定する例のない試み。約3000人の患者を3〜4年間追跡し、合併症予防の新たな指針を作る方針だ。

 糖尿病は予備軍も含め患者が1620万人もいる“国民病”。合併症は腎臓や網膜の障害など細い血管のほか、脳梗塞、心筋梗塞など太い血管でも起こる。

 臨床試験は太い血管の合併症予防が主な目的。血糖値を下げるインスリンの働きが弱まる2型糖尿病患者(45歳以上70歳未満)で、平均血糖値(HbA1c)が7・0%以上あり血圧、脂質が正常でない人が対象。

 半数には現在の糖尿病治療ガイドラインに基づく「標準療法」を行い、残り半数には治療薬を使う例も含め、血圧、脂質、血糖の値を正常枠内に戻す「強化療法」を、平均3年間継続。二つのグループ間で合併症の発症率などを比較する。

 参加者には血圧計、エネルギー消費も測定する歩数計を貸与し、主治医は患者の記録を常に把握。患者の生活習慣指導が中心になる最初の3か月で数値が改善しない場合、薬の使用や指導を強化する。

 国内では、標準療法で腎症、網膜症など細い血管の合併症予防効果の報告はあったが、心筋梗塞などの発症予防に関する研究はなかった。海外では同様の強化療法で心筋梗塞の発症が56%抑制されたという研究があったが、患者数が160人と少なかった。

米、20年間で2型糖尿病倍増 推計2000万人、対策追いつかず

2006/05/14 The Sankei Shimbun

 16日付の米紙ニューヨーク・タイムズは、糖尿病のうち肥満や運動不足、ストレスなどに起因するとされる「2型糖尿病」の患者数が米国で過去20年間に倍増し、推計2000万人に上っていると報道、増加のペースが速すぎて対策予算が追いつかない現状に警鐘を鳴らした。

 「2型」は食事や運動、喫煙、飲酒などの生活習慣が発症や進行に影響を及ぼすといわれる。日本の糖尿病患者の大部分はこのタイプだけに、米国の状況は日本にとってもひとごとではなさそうだ。

 同紙によると、糖尿病は米国の主要疾病のうち、死亡率が上昇し続けている唯一の病気。糖尿病に起因する年間の米国人死者数は約22万5000人に上り「米国人が直面する最重要の脅威の一つ」(米公衆衛生協会のジョージ・ベンジャミン事務局長)となっている。(共同)

糖尿病患者、将来の合併症は?ベンチャーが予測システム

2006/05/04 The Sankei Shimbun

 糖尿病の患者が最も注意しなければならない合併症。大阪市のバイオベンチャー、サインポストは、患者の遺伝子解析などから、将来どんな合併症が起きる危険性が高いかを予測するシステムを開発した。6月下旬から販売の予定で、すでに医療機関数カ所が導入の方向といい、糖尿病患者の診療支援につながりそうだ。

 糖尿病患者は国内で約740万人、潜在患者の予備軍を含めた数は約1620万人と推定されている。食生活や運動など生活習慣に気をつけ、まず糖尿病にならないようにすることが大事だが、発症した場合は、合併症を起こさないことが重要になる。

 糖尿病の3大合併症は神経障害と腎症、網膜症。サインポストは、東洋紡と、遺伝子検査をする器具「DNA(デオキシリボ核酸)チップ」を共同開発。これに患者から採取した血液をつけると、遺伝子の特徴から3大合併症のうちの腎症と網膜症、さらに動脈硬化や心筋梗塞(こうそく)が起きやすい体質かどうかがわかるという。

 腎症の発症は高血圧と関係が深い。遺伝子から腎症を起こしやすいと判明した場合、高血圧にならないよう注意が必要と認識でき、すでに高血圧を併発している場合は、血圧管理をより厳重にして対応することになる。

 患者の利用料は、初回検査を3万円前後とする方向で調整している。

 サインポストは、大阪大学大学院医学系研究科の山崎義光助教授の研究成果を事業化するため、東洋紡やベンチャーキャピタルなども出資して設立。今後は、製薬会社による新薬の臨床試験でこのDNAチップを使い、その薬が効きやすい人の体質をつきとめる事業も行うことにしている。

インスリンポンプ

2006年03月27日 読売新聞 Yomiuri On-Line

24時間 少量ずつ投薬

 大阪府の高校1年生A子さん(16)は、2歳の時に「1型糖尿病」を発症し、小学3年生の時から1日3回、血糖値を下げるインスリン製剤を自分で注射していた。しかし、睡眠時に薬が効き過ぎて血糖値が過度に下がり、低血糖状態によるけいれんが数回起きた。そこで、小学6年の時、大阪市大病院小児科で相談し、薬を少量ずつ体内に送り込む「インスリンポンプ」をおなかにつけた。

 インスリンは、膵臓(すいぞう)から分泌されるホルモンで、血液中のブドウ糖を全身の細胞に取り込ませ、血糖値を下げる作用がある。インスリンが少なかったり働きが悪かったりすると、血中のブドウ糖が増えたままになる。これが糖尿病で、放っておくと失明につながる網膜症や、腎臓、神経の障害が出る。1型糖尿病は、インスリンが出なくなるため、毎日のインスリン製剤の注射が一生欠かせない。

 インスリンの分泌を詳しくみると、膵臓から常に少しずつ分泌される「基礎分泌」と、食事で血糖値が高くなると多く出る「追加分泌」がある。治療では▽基礎分泌に相当し、効果が長時間続くタイプを就寝前に注射する▽すぐに効果が表れ、追加分泌にあたるタイプを3度の食事の前に使う――など1日数回の注射が必要だ。

 しかし、量や注射のタイミングがうまく調整できないと、効き過ぎて低血糖になったり、足りずに高血糖になったりする。

 インスリンポンプは、携帯電話サイズのインスリン注入器。患者の腹やももなど、皮膚の下に入れたカテーテル(細い管)から、薬を注入する。一気に注入する注射と異なり、微量のインスリンを24時間、自動的に流し続ける(基礎分泌に相当)。本体は服のポケットに入れて持ち運ぶことができ、食事前などにスイッチを押せば、追加注入できる(追加分泌に相当)。

 安定した血糖管理ができ、低血糖や高血糖の危険を減らせる。血糖値が上がりやすい夜中や明け方に増やすなど、注入量を時間帯に合わせて設定できる機種もある。

 カテーテルの交換は1日または3日に1回でよく、注射する痛みや手間が少ない点も長所だ。A子さんも低血糖症状はほとんどなくなり、「注射と違い、人目も気にならない」と言う。

 米国の研究では、注射に比べ、ポンプを使った方が血糖の管理が良く、低血糖の発生回数も少なかった。

 大阪市大病院小児科医師の川村智行さんは「膵臓の自然な分泌に近い注入が実現できる。簡単で安全な治療法」と話す。低血糖でけいれんなどの重い症状が頻繁に表れる人や、食事や睡眠が不規則な人などにもポンプが向いているという。

 ポンプを使うには医師の診察が必要。保険がきき、患者の自己負担は、3割負担なら注射療法に比べて1か月3000円高くなる。

 米国では24万人以上が使っているのに対し、日本では2000人(推定)と少ない。機器が数十万円し、現在の保険点数では病院側の経済的負担が大きいことが普及しない一因とされる。

 常に体にカテーテルをつける煩わしさを嫌う人や、管を固定するテープで皮膚がかぶれる人もいるので、主治医に十分相談して決めたい。(山口博弥)

インスリンポンプに関する情報

 →1型糖尿病とインスリンポンプについて紹介したホームページ「Dr.インスリンの1型糖尿病教室」(http://www.insulin.ne.jp/)。「施設情報」には、ポンプを使っている医療機関のリストもある。

 →日本IDDMネットワークは1型糖尿病や子どもの糖尿病患者の支援組織。問い合わせは事務局((電)090・2713・7849)へ。ホームページ(http://www5.ocn.ne.jp/~i-net/)。

インスリンの静脈注射、アレルギー抑制に効果…糖尿病

2006年01月30日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 糖尿病治療に用いるインスリンを患者の静脈に直接投与することで、インスリンに対する重いアレルギー症状を抑える効果があることを、米ハーバード大の浅井真人研究員らの研究チームが突き止めた。

 米医学誌に発表した。

 糖尿病は、膵臓(すいぞう)から分泌され、血糖値を下げるホルモンであるインスリンが不足したり、正常に作用しなくなったりすることで発症する。患者は、インスリン製剤を皮下注射して血糖値をコントロールするが、まれにインスリンに拒絶反応を示し、全身に発疹(ほっしん)が出たり、呼吸困難になったりする人がいる。

 浅井研究員らは、インスリンの皮下注射で重いアレルギー反応を示す20歳代の男性糖尿病患者に対し、ごく少量のインスリンを静脈に点滴注射。アレルギー反応が出なかったことから、徐々にインスリンの量を増やし、最終的に皮下注射と同じ量を投与した。

 浅井研究員は「感染症に気をつければ、静脈注射はアレルギー反応の強い糖尿病患者の有効な治療になる」と話している。

糖尿病患者に朗報、夢の吸入式インスリン初承認

2006年01月28日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 【ワシントン=笹沢教一】米食品医薬品局(FDA)は27日、インスリンを口から吸入する方式の糖尿病患者向け治療薬を承認した。

 これまで自己注射などの形で行われてきたインスリンの投与が、吸入式で行えるようになることで、患者の負担は大きく軽減されることになる。

 FDAが承認したのは米ファイザー社が申請していた「エクスベラ」。ほかの2社と共同開発の形態を取っている。食前に特殊な吸入器で微粒子状のインスリンを吸入し、肺に送り込むというもので、適応対象は1型と2型糖尿病の成人。欧州委員会もこの薬を26日に承認した。

 全米糖尿病協会によると、米国の糖尿病患者は2100万人を数え、500万人が自己注射を行っている。また、世界保健機関の統計によると、世界の患者は1億7000万人を突破している。

医療ルネサンス北陸フォーラム「糖尿病と共に生きる〜血管合併症の予防〜」

2005年12月16日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 現在、日本では40歳以上の3人に1人が糖尿病または予備軍といわれ、その数は増え続けている。原因は脂肪を取り過ぎる食生活や、運動不足による肥満など。このような現状をふまえ、糖尿病をテーマにした「医療ルネサンス北陸フォーラム」が富山県高岡市生涯学習センターホール(ウイング・ウイング高岡 4階)で開かれた。富山大学理事・副学長・病院長の小林正さんが「糖尿病と共に生きる」と題して講演。座談会では会場からの質問にも答えた。会場は高齢者を中心に幅広い世代の聴衆で埋まり、糖尿病への関心の高さを物語っていた。

基調講演 ―自分が主治医になる―

国立大学法人富山大学 理事・副学長・病院長 小林 正さん

(1967年、大阪大学医学部を卒業後、米国St.Louis University Medical School内科インターンレジデント、Kansas University Medical School内分泌Fellow、Stanford University Medical Center NIH Fellowを経て帰国。88年に滋賀医科大学第三内科病棟医長、92年に富山医科薬科大学第一内科教授、2000年に同大附属病院院長・副学長、04年国立大学法人富山医科薬科大学理事・副学長・病院長、05年から現職。日本糖尿病学会常任理事、日本内科学会、日本糖尿病学会、日本内分泌学会、日本肥満学会(以上各評議員)などを務める。カリフォルニア州医師免許取得、米国内科専門医)

 糖尿病は最初は痛くもかゆくもありません。何の症状もないので、合併症になって初めて気づく。しかしそれでは遅いのです。まずは糖尿病をよく知ることが大切です。

 現在、糖尿病の治療を受けているのは患者の45%にしかすぎず、これは大問題です。なぜなら医療機関に行かないと合併症の進行がわからず、気づいたら透析が必要になっていたり、失明したりしかねません。

 糖尿病の3大合併症は、腎症、網膜症、神経障害です。今、日本では約22万人が人工透析を受けており、透析は必要になる原因のトップが糖尿病です。網膜症は目の血管がもろくなり眼底出血して網膜に白斑ができて視力が落ち、進行すると失明します。

 糖尿病になってから合併症の発症までは個人差はありますが、神経障害は0〜5年、網膜症は7〜8年、腎症は10年くらい。神経障害は足のしびれ感、腱反射がないなどが最初の徴候です。腎症はかかりつけ医で尿のタンパク(微量アルブミン)を検査する。網膜症は早期発見ならレーザー治療ができますから、自覚症状がないうちから年に1〜2回は眼科で検査を受ける。いずれの合併症も早期の徴候を見逃さないことが大切です。

動脈硬化に注意を

 小さな血管の合併症≠ナある3大合併症に対して、最近多いのが大きな血管の合併症≠ナす。糖尿病によって心臓や脳に行く大きな血管が詰まり、脳卒中や心筋こうそくを引き起こします。

 血糖は3度の食事ごとに上がり、その都度血糖の波≠ェ血管の壁に酸化ストレスなど悪影響を及ぼします。波が高いと血管の壁がボロボロになり動脈硬化になる。しかも動脈硬化は3大合併症のように何年も先に発症するのではなく、軽症や境界型※1の人も含めて、突然に心筋こうそくや脳こうそくを起こします。

 始まりは不適切な食生活、運動不足、睡眠不足、ストレス、飲酒、喫煙などの生活習慣が重なって無自覚なまま肥満になり、やがて肥満症をはじめ、高血圧症、高脂血症、高コレステロール血症、糖尿病となって脳血管疾患などの合併症につながる。内臓脂肪※2がたまって起きるこれらの症状を死の四重奏≠ニ呼び、諸症状が関連しあい心筋こうそくや脳こうそくの恐れが高まる状態をメタボリックシンドロームともいいます。これを改善するには、やはり生活習慣の見直しが基本です。

一に運動、二に食事

 生活習慣病の改善には、一に運動、二に食事、しっかり禁煙して、最後に薬。初めから薬だけに頼るのは邪道です。食事について言うと、糖尿病になったら何も食べられないなんて嘘です。何でも食べられますし、糖尿病食はおいしくバランスもよい。ただし適切なカロリーをとってください。身長(m)×身長(m)×22=標準体重に、仕事の強さによって25〜30カロリーをかけたものが、あなたに必要なエネルギー量です。

 厚生労働省の戦略研究で今年から糖尿病専門の看護士や栄養士をトレーニングし、モデル都市の開業医院へ派遣して食事療法などを指導することになりました。自分はどんな食事をしたらよいか、気軽に相談出来ること、診療の中断がなくなることが目的で全国で5年間行われ、私がリーダーとして研究をまとめます。

 数値の目標は、70才以上ならヘモグロビンA1cは7%ほど、血糖値は空腹時で130〜140mg/dl、食後で180くらい。若い人は6・5%以下、空腹時は130未満、食後は180未満。ヘモグロビンA1cが8・5%以上は要注意。血糖値200以上ならぜひ低くする努力を。この数値を守っていれば深刻な事態は避けられるでしょう。

 糖尿病と上手に付き合うには、自分が主治医になることです。医者にまかせにせず、自分で自分を管理する。一度の人生をいかに生きるかは自分次第なのです。生きがいを持ち、夢を抱いて、ぽっくりいくまで生き生きと…みなさんそんな一生を送ってください。

※1…空腹時血糖が126mg/dl以上は糖尿病の疑いありとされ、110〜125mg/dlの人は「境界型」とされる。

※2…脂肪には「内臓脂肪」と「皮下脂肪」の2種類があり、内臓脂肪が生活習慣病の要因となる。ヘソ回りが男性85センチ以上・女性90センチ以上なら内臓脂肪型肥満。

糖尿病を見逃していませんか? 3つ以上あてはまる人は検査を!

1 血糖値が高いといわれたことがある。

2 肥満気味である

3 高血圧といわれて薬を飲んでいる。

4 糖尿病の親兄弟、家系に糖尿病の人がいる

5 40歳以上である。

6 外食が多く、野菜をあまり食べない。

7 あまり運動をしない、クルマに乗る機会が多い

8 妊娠時に尿から糖が出たことがある。

会場からの質問を中心に、より具体的な助言がされた対談 ―「一病息災」の前向き精神で―

小林 正さん

竹村 一朗 読売新聞高岡支局長

竹村―日本人に糖尿病が多いのは遺伝的な特有の理由があるのでしょうか。

【小林】 日本人はインスリンの分泌が少なくても生きられる生活環境にあったと思います。インスリンを出す能力の低い遺伝子が多いので、飢餓には強く、肥満に弱い。これはアジア人共通で、欧米人とは異なります。日本人こそ食事・運動療法が重要です。

竹村―糖尿病は絶対に治らない病気ですか?という質問が会場からありました。

【小林】 いったん糖尿病と診断された方は、残念ながら、その素質はずっと続きます。しかし「一病息災」という言葉があります。糖尿病になったからこそ、健康的な生活ができるとポジティブにとらえてください。まさに「糖尿病と共に生きる」ということです。

竹村―悲観的ではなく前向きに、ただし油断はせず、ですね。次に老化を促進する活性酸素の害を防ぐ生活上の注意は?という質問です。

【小林】 まずバランスのよい食事。これはとりもなおさず糖尿病食が適しています。そして運動が重要。運動を習慣づけて、昔ながらの日本食をとるだけで元気に長生きできます。

竹村―運動については、歩くことに加えて、他に手軽にできることはありますか。

【小林】 水泳がおすすめです。近くにプールがある方はぜひ利用してください。また身近な自然や環境を生かして工夫することも大切です。忙しい方はとりあえず階段を使う。エスカレーター、エレベーターは禁止です。

竹村―インフルエンザの季節ですが、糖尿病は感染症に弱いといわれています。

【小林】 糖尿病の方が感染症にかかると重症化します。まずは予防が必要で、日頃から運動して健康な肉体をつくることが大切。インフルエンザについては予防注射をするとよいでしょう。自治体の助成など上手に利用してください。

竹村―最後にあらためて、元気で長生きの秘けつをお聞かせください。

【小林】 富山は奥ゆかしい方が多いようですが、頭は使っても気は使い過ぎずに、思っていることを言い、自分が生きたいように生きるのがよいと思います。

竹村―ありがとうございました。今日のフォーラムを生かして、みなさんが元気で長生きされることを祈念して終わりたいと思います。

主催/読売新聞北陸支社・富山県国民健康保険団体連合会

後援/富山県・富山県医師会・富山県看護協会

Q 血糖値が高いのですが…

2005年12月13日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 ここ数年、健康診断で、「血糖値が高めなので食事に注意するように」と言われています。こういう場合、どんなことに注意したらよいのでしょうか。お酒を飲んだり、間食をするのがよくないのでしょうか。今のうちに気をつけていないと、糖尿病になったりするのでしょうか。また、親は糖尿病でしたが、それが糖尿病へのなりやすさにつながったりするのでしょうか。

A 早期糖尿病の場合も規則正しい食生活を <ながい内科クリニック(金沢市)院長 永井 幸広>

 ご質問にある「血糖値(血液中のブドウ糖濃度)がやや高めである」場合には、耐糖能異常や早期の糖尿病が隠れていることがありますので、できれば外来で経口ブドウ糖負荷試験を行って、正確に耐糖能(糖を処理する能力)ならびに、インスリン(血糖を低下させるホルモン)分泌能をチェックする必要があります。糖尿病に至っていなくても、耐糖能異常が存在する場合には、その他の生活習慣病(高血圧・高脂血症・肥満など)を合併していることが多く、メタボリック症候群として高率に動脈硬化を引き起こすことが知られています。

 また耐糖能異常の場合には、年間十数%の割合で糖尿病に進展することが知られており、特に家系内に糖尿病の方がおられるとその危険性は高くなります。したがって糖尿病でなくても、耐糖能異常が存在する場合には「病的状態にある」と認識することが肝要です。

 治療に関しては、生活習慣の是正が最も重要となります。バランスのとれた規則正しい食生活と適度の運動(1日8000歩以上)を行うことにより、糖尿病への進展が抑止可能となります。規則正しい食生活とは、主食・主菜・副菜のバランスがとれた3食を均等に決まった時間に摂取することです。緑黄色野菜はカロリーが低く食物繊維を豊富に含んでおり、食後の血糖上昇を改善してくれますし、カリウムを多く含むため血圧上昇を抑えてくれます。

 アルコールに関しては、適度な量(アルコールとして1日30グラム程度=ビール350ミリ・リットルまたはお酒1合)であれば問題ありません。菓子類や清涼飲料水などは糖質を多く含んでおり、血糖値を上昇させ耐糖能を悪化させますので、できるだけとらないように注意して下さい。果物(みかん2個またはりんご半分程度)や乳製品(牛乳180ミリ・リットルやヨーグルト180グラム程度)を間食としてとるようにしましょう。

 外食や宴会などで摂取カロリーが多くなる場合には、その他の時間の食事量を減らす、あるいは運動量を増やすなどして対処して下さい。糖尿病は自覚症状が乏しい病気です。定期的に血糖値やグリコヘモグロビン(1〜2か月間の血糖コントロールの指標)をチェックしていくことが重要です。

歯周病と糖尿「負の連鎖」

2005年11月22日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 埼玉県に住む大学名誉教授Aさん(69)は、50歳を過ぎたころから、健康診断の度に「糖尿病の境界型」と指摘された。

 血糖値は、空腹時に110mg/dl未満が正常とされるが、Aさんの数値は110前後を行ったり来たり。だが、当時はもっと深刻な悩みがあった。歯周病だ。

 歯茎がひどく腫れ、果物などをかじると必ず出血する。歯のぐらつきも気になった。近所の歯科医院で、歯茎を切ってうみを出す処置や、歯周病菌の死がいなどが固まった歯石を除去する治療を受けたが、腫れはすぐに再発した。

 「すべて抜くしかありませんね」。2002年末、歯科医院でそう宣告され、新年早々、慌てて駆け込んだのが日本歯科大病院(東京都千代田区)。その時、歯周病だけでなく、以前の治療のためか、歯がひどく傷んだ状態だった。

 歯周病の治療は、歯と歯茎のすき間の歯周ポケットにたまった歯石や歯周病菌を、スケーラーと呼ばれる器具でかき出す方法が一般的だが、何度も繰り返すと歯を傷める。

 Aさんの歯は、特に前歯の損傷が大きく、同病院では歯石除去を最小限にとどめた。代わりに、先端が高速で振動する超音波スケーラーを使い、微小な酸素の泡を歯茎のすき間などに吹き付けて、歯周病菌を殺す治療を行った。

 自宅で丁寧な歯磨きも心がけ、歯を1本も抜くことなく、歯周病菌が減った。

 すると、歯茎の出血や歯のぐらつきがなくなったばかりか、思いがけない変化が起こった。

 「血糖値が80〜90で安定したんです」

 糖尿病と歯周病。全く別の二つの病気が「互いに病気を悪化させる要因になっている」と同大名誉教授の鴨井久一さんは指摘する。

 重い歯周病を持つ糖尿病患者を対象に、鴨井さんらが行った調査では、抗菌薬などで歯周病治療を入念に行った患者ほど、血糖値が下がる傾向がみられた。

 しかしなぜ、歯周病で血糖値が変動するのか。鴨井さんは「歯茎の炎症で生じる物質や、歯周病菌が出す毒素の影響」と推測する。これらが血管内に入り込み、肝臓や脂肪細胞などに作用して、血糖値を下げるホルモンのインスリンを作りにくくするというのだ。

 こうして血糖値が上がると、歯茎も高血糖状態になり、歯周組織の破壊が進行。歯周病菌がさらに増え、糖尿病が悪化する「負の連鎖」に陥る。

 糖尿病患者の診察時に、歯の状態まで診る内科医は多くない。だが、歯茎の腫れなどが気になる場合、血糖値を下げる薬物治療だけでなく、歯周病治療も試す価値がありそうだ。

 歯周病 歯周病菌によって、歯肉が腫れたり出血したりする歯肉炎や、歯を支える歯周組織が破壊される歯周炎が起こり、悪化すると歯を失う。成人の8割に症状があるとされる。日本歯周病学会認定の専門医は、同学会のサイト(http://wwwsoc.nii.ac.jp/jsp2/index-j.html)で閲覧できる。

糖尿病の膵島移植

2005年11月07日 読売新聞 Yomiuri On-Line

インスリン分泌再開

 京都府の30歳代の女性は15歳の時、血糖値を下げるホルモンのインスリンが分泌されなくなる「1型糖尿病」と診断され、インスリンの注射を受け始めた。しかし、徐々に病状が悪化し、血糖のコントロールが困難になった。突然、低血糖で意識を失い、交通事故に遭ったこともある。昨年、京都大学病院で「膵島(すいとう)移植」を2回受けたところ、インスリン注射が不要となり、健常者と同じ生活に戻ることができた。(科学部・木村達矢)

 糖尿病は、膵臓(すいぞう)から分泌されるインスリンが不足し、血糖値が高い状態が続く病気だ。進行すると、失明や腎臓障害などの合併症が起きる。

 インスリンは、膵臓の膵島(ランゲルハンス島)と呼ばれる細胞の塊の中にあるβ細胞で作られる。1型糖尿病では、この細胞が徐々に破壊され、インスリンが分泌されなくなる。こうした重症患者に、臓器提供者から心肺停止後に採取した膵島を移植するのが膵島移植だ。

 海外では、膵島移植は約30年前に始まったが、移植したβ細胞はなかなか定着しなかった。しかし、2000年にカナダ・アルバータ大が成功率を飛躍的に高める手法を開発、一躍注目を集めた。

 日本でも、移植医らの「膵・膵島移植研究会」を中心に、この治療法を実施する準備が進み、最初の移植が2004年4月、冒頭の女性に京大病院で行われた。

 膵島移植はまず、臓器提供者から摘出した膵臓組織を酵素でばらばらにし、膵島だけを回収する。健康な人には約100万個の膵島があるが、京大では約40万個集めることに成功。これを、患者の肝臓にある門脈と呼ばれる血管に点滴注射する。門脈内が最も膵島が定着しやすいためだ。定着した膵島は、血糖値の増減を感知してインスリンを分泌するようになる。

 1か月ほど入院して治療し、通常は1回の移植で血糖コントロールが大幅に改善する。インスリン注射からの解放を目指し、3回まで移植を行う。京大では、これまで7人に延べ14回の移植を行い、この女性ら2人はインスリン注射が不要となった。それ以外の人も血糖値が改善した。

 糖尿病の根治療法には既に、脳死者から膵臓そのものを移植する膵臓移植がある。1回の治療でインスリンが不要になるなど効果は高い反面、手術が複雑なうえ、強力な免疫抑制剤が必要で、患者の体の負担が大きい。

 京大膵島移植チームリーダーの松本慎一さんは「膵臓移植に比べ、メスを使わず、局所麻酔で1時間弱で終わる膵島移植は、患者の負担が非常に小さい」と説明する。

 ただ、膵島移植の場合も免疫抑制剤は必要で、口内炎や高コレステロール血症などの副作用がある。インスリンが不要になっても、数年後に再び必要になる場合もある。

 移植の対象は、75歳以下で、インスリン分泌がほとんどなく、血糖コントロールが難しい人。保険は適用されず、京大では研究費で賄っている。京大は現在、高度先進医療に申請中で、認められれば約300万円の患者負担となる。

 膵島移植は、千葉市の千葉東病院でも2人に、神戸大で1人に行われている。

 脳死者からの膵臓移植は、臓器移植法施行後、約20例にとどまり、提供者不足が大きな課題だ。最近では、生体肝移植のように、親族などから膵臓の約半分を摘出して移植する試みも始まった。生体膵臓移植が千葉東病院と大阪大で、生体膵島移植は京大で行われており、今後、広まる可能性もある。

「膵・膵島移植研究会」が膵島移植実施を認めている施設

東北大(仙台市) (電)022・717・7000

福島県立医大(福島市) (電)024・547・1111

千葉東病院(千葉市) (電)043・261・5171

京都大(京都市)   (電)075・751・3111

神戸大(神戸市) (電)078・382・5111

福岡大(福岡市) (電)092・801・1011

[おとなクリニック]糖尿病

2005年10月27日 読売新聞 読売家庭版からYomiuri On-Line

 Q: 会社の健康診断で血糖値が高いと診断されました。とくに自覚症状はないのですが、これは糖尿病なのでしょうか(東京都 50歳 男性)

 A: 糖尿病の多くは無症状で、進行していくと疲れやすい、のどが渇くなどの症状が現れます。無症状のうちに糖尿病の検査と適切な治療を進めることが大切です。

              ◇ ◇ ◇

 糖尿病は、高血糖(早朝空腹時の血糖値が126mg/dl以上、随時の血糖が200mg/dl以上)が長期間続くことにより、さまざまな合併症をきたし、失明、腎不全、足の壊疽(足が腐ること)、心筋梗塞、脳梗塞などの原因となる慢性疾患です。大きく分けてインスリンが欠乏する1型糖尿病と、インスリン作用が低下する2型糖尿病があります。

 自覚症状がないとのことですが、あなたは最近、疲れやすく、のどが渇いて水をたくさん飲むようになり、尿量が増えたということはありませんか? 糖尿病の多くは無症状ですが、血糖値が高く、これらの症状が現れたときは、かなり進行した状態です。しかも神経障害が合併すると、しびれ、立ちくらみ、指先の違和感などが出てきます。

 このように糖尿病は怖い病気です。ご質問の方も軽く考えて放置したりせずに、糖尿病の検査を受けることをおすすめします。

 診断は、まずブドウ糖の処理能力をみるため、ブドウ糖負荷試験を行い、「糖尿病」「境界(糖尿病予備軍)」「正常」のいずれかを判定します。この検査と合わせて、普段の自覚症状や別の日の血糖値でも126mg/dl以上あることが確認されれば、「糖尿病」と診断します。

 空腹時の血糖値が110mg/dlを超えている方は、将来、糖尿病に移行する可能性が高い、糖尿病予備軍となります。この場合も医師の指導が必要です。

 治療の原則は、食事療法と運動療法です。1型の場合にはインスリン注射が絶対必要ですが、2型の場合は、必要であれば薬剤の投与やインスリン注射を行います。とくに2型は、肥満や過食、運動不足など生活習慣の問題が強く関係しているので、バランスの取れた食事と適度な運動が重要となります。

 一度、糖尿病になってしまうと完治させることはできませんが、適切な診断を受け、治療を続けていけば正常な血糖値を保つことはできます。このことが合併症のない体を維持することになるのです。

 及川 眞一・日本医科大学 第三内科教授(東京・文京区) 

インスリンの分泌抑制物質を発見…糖尿病で新治療法へ

2005年10月11日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 群馬大生体調節研究所(小島至所長)は11日、独立行政法人理化学研究所(野依良治理事長)と協力し、すい臓のβ細胞内にあるたんぱく質「グラニュフィリン」が、糖尿病の原因となるインスリンの分泌量を抑制していることを突き止めたと発表した。

 今後、さらに仕組みの解明を進め、グラニュフィリンに着目した糖尿病の新たな治療法につなげたいとしている。

 同大研究所の泉哲郎教授らによると、同研究所は1999年、インスリン分泌にかかわっている可能性のある物質としてグラニュフィリンを発見。マウス実験で、グラニュフィリンがないとインスリンの分泌量が多くなることを確認したという。

 今回の研究は、米国の学術誌「ジャーナル・オブ・セル・バイオロジー」の10月10日号に掲載された。

 糖尿病はインスリン不足などから、血糖値が高くなり様々な合併症を伴う。治療にはインスリン注射や、インスリン分泌を促進する薬の服用などがある。

インスリン分泌の細胞増殖に成功、糖尿病治療に期待

2005年09月26日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 血糖値を下げるインスリンを分泌する膵臓(すいぞう)のベータ細胞を必要なだけ増殖させることに、岡山大大学院の田中紀章教授(消化器・腫しゅ瘍よう外科学)、小林直哉助手らのグループが成功した。

 ベータ細胞が破壊されてインスリンを作れない1型糖尿病の治療への応用が期待される。25日付の米科学誌ネイチャーバイオテクノロジー電子版に発表した。

 グループは、人の膵臓にある膵島細胞からベータ細胞を分離。細胞が死なずに増殖を続ける遺伝子を、ウイルスを運び役にして組み込んだ。細胞が十分に増えたところで、この遺伝子を特殊な酵素で切り、増殖を止めた。

 この細胞を必要量だけ、1型糖尿病マウスの腎臓に移植すると、2週間以内に血糖値が正常になり、30週間維持された。インスリン分泌過剰による低血糖は起きず、がんの発生もなかった。移植しない糖尿病マウスは10週間以内に死んだ。

 小林助手は「他人のベータ細胞を移植すると拒絶反応の問題が残るので、直接移植するのでなく、体内埋め込み型人工膵島の開発を進めたい」と話している。

 生活習慣と関係なく発症する1型糖尿病の根本治療には、脳死後の膵臓移植や心停止後の膵島移植が行われるが、提供者が少なく、一部で始まった生体膵島移植も、提供者に危険を及ぼす恐れがある。

糖尿病テーマにフォーラム 広島

2005/09/11 中国新聞地域ニュース

 糖尿病をテーマにした第二回広島大学健康フォーラム(広島大病院、中国新聞社主催)が十日、広島市中区の中国新聞ホールであった。

 内分泌代謝内科の山根公則講師は「合併症を防ぐため、食事・運動・薬物療法で、血糖コントロールの指標となる糖化ヘモグロビン値(HbA1c)は6・5%以下を目標に」とアドバイス。

 歯周診療科の中村茂夫助手は「糖尿病が歯周病を悪化させるだけでなく、歯周病が糖尿病の進行にも影響を及ぼす」とし、歯周病の治療によって血糖値が低下したという報告を紹介した。

 約五百人の参加者からは質問も相次いだ。

糖尿病の生活指導、携帯やPCで 近く実験開始

2005年09月02日 asahi.com

 「揚げ物の回数が増えました。煮物、焼き物、刺し身などなら、摂取エネルギーを抑えられます」「早足歩きの回数が増えました。努力の成果が表れています」――。IT(情報技術)を利用し、糖尿病患者がいちいち通院しなくても携帯電話やパソコンでこまめに生活指導を受けられるシステムを、聖マリアンナ医大や広島市立大などの研究チームが開発、近く実証実験を始める。

 対象患者は、軽度の糖尿病や「糖尿病予備軍」の人。まず、問診や検査結果などを基に、主治医と話し合って改善目標を立てる。その上で、約30項目の治療計画の中から患者に適した運動や食生活など3項目を選び、体重管理とともに登録する。

 以後1週間ごとに、目標の達成度を尋ねるメールが携帯電話やパソコンに届く。回答を返信すると、その内容に応じてコンピューターが的確な助言メールを自動的に送る仕組みだ。この部分は診療報酬はかからない。

 糖尿病治療では生活習慣の改善が極めて重要だが、1〜2カ月ごとの通院で医師に指導されてもなかなか続けられない人が多い。医師にとっても、一人ひとりの患者に多くの時間や労力をさくのは難しいが、このシステムならば患者、医師ともに負担が小さい。

 研究チームは提携する病院・診療所を募っている。インターネットで食事・運動療法について最新情報を提供するほか、受診希望者が参加医療機関を検索し受診予約もできるようにする。

 ウェブサイトでシステムの概要を説明している。

 研究チームの須賀万智・聖マリアンナ医大助手(予防医学)は「多忙な人も無理なく取り組め、よりよい健康状態と生活の質を維持するのに貢献できるのではないか。将来的には地域の保健所や中核病院などとも連携したい」という。

 厚生労働省の02年の調査では、20歳以上のうち、糖尿病患者は約740万人、糖尿病の前段階など予備軍とされる人は約880万人に上る。同省も、糖尿病の予防対策にITによる支援システムの開発研究に取り組んでいる。

【糖尿病】食後の高血糖を下げたい!河合 勝幸

2005年06月23日 All about

 食事でカロリーを取り過ぎると高血糖になると思っている人が大勢います。でも、カロリーと高血糖は直接の関係はありません。食後の血糖上昇の約90%は炭水化物によるものです。

 食事でカロリーを取り過ぎると高血糖になると思っている人、いませんか?ご存知かもしれませんが、カロリーと高血糖は直接の関係はありません。食後の血糖上昇の約90%は炭水化物によるものです。病院の食事療法で1単位80kcalの計算ばかり教えられるので、何が食後の血糖上昇に影響するのかご存知ない人が食後の高血糖で悩んでいます。

 血糖というのは血液に含まれるブドウ糖のことですね!さまざまな食品の炭水化物はからだの中で最終的にはこのブドウ糖になります。といっても、バターを100kcal食べても血糖は上がりませんよ。脂肪酸はからだの中でブドウ糖にならないからです。このバターと同じ100kcalのブドウ糖(炭水化物)を口にすれば血糖値が100mg/dlぐらい急上昇します。1型の人ならよくご存知ですが、低血糖のリカバリーはブドウ糖10g(約40kcal)〜15gを摂取しながら目標に戻します。

 今回は、上記のような疑問をお持ちの方に対し、気になる食後の血糖値を下げるにはどうしたらいいかをご説明します。

 食後の血糖値を抑えるためには食前血糖値も目標内に

 食後の高血糖にご注意

 皆さんが気にしているA1Cは過去2〜3ヵ月の平均血糖値を示しています。A1Cが7%というのは、平均血糖値が血しょう中のブドウ糖170mg/dlのことですから、やはりもっと下げたいですね。A1Cはつまるところ、空腹時と食後の血糖値の平均ですから両方下げないことにはA1Cは下がりません。

 食後2時間の血糖値を下げるためには、食事に含まれる炭水化物の量をグラム単位で把握することが第一です。その定量を経口剤やインスリンと合わせるのです。ピザのような高脂肪、高タンパクでもあるトッピングと、パン生地のピザ台を一緒に食べると、食後2時間の血糖はあまり上がりません。そのかわり、タイムラグがあってから血糖が上がりますから、次の食前がとても高くなってしまいます。

 食前血糖値が高いと、食後2時間の血糖はどうしてもコントロールできません。食後の血糖値を抑えるためには食前血糖値も目標内にしておくことです。そのためのエクササイズも大切なテクニックです。

 こんなことも食後血糖値に影響します

 脂肪や食前血糖値だけでなく、食品の炭水化物の質も大きく関係します。これは「グリセミック指数」として話題になりましたね。料理の調理法や材料の状態(粉末やすりおろしたもの)、果物だったら熟成の程度もかなり影響します。青いバナナを一房買ってきて毎日食べたとします。実は「グリセミック指数」は毎日の熟成度合いによって変化するのです。

 それでは、バナナの本当の「グリセミック指数」は何時のものを指すのでしょうか?正解はありません。誰も分からないのです。食後の血糖上昇を表わすグリセミック指数は一つひとつの単品の食材で調べます。ところが、食事はいろいろな食品を一度に食べますね。こうなると本当のウェートは不明です。

 まとめ

 食後の血糖急上昇を抑えるためには食事で食べる炭水化物の総量を目標値に合わせることが大切です。2型の人も炭水化物を食事あたり50g〜70gぐらいにしてみてください。アルキメデスのように「ユーレカ!(わかった!)」と開眼するかも知れませんよ。

 食後の血糖上昇を抑えるサプリや健康茶などがありますね。人によってはモチベーションが高まってとても有効ですので、試してみてください。

もっと食べてもいい?チョコレートと糖尿病 河合 勝幸/h3>2005年04月10日 All about

 もう、チョコレートが"嫌いなふり"をしなくてもいいようです。チョコの「フラボノイド」が血圧を下げ、インスリンの効き目をよくするデータが出ました。でも高カロリーです。どうしよう?

 もう、チョコレートが"嫌いなふり"をしなくてもいいようです。チョコの「フラボノイド」が血圧を下げ、インスリンの効き目をよくするデータが出ました。でも高カロリーです。どうしよう?

 ダークチョコレートがインスリン感受性を高めて血圧も下げると発表したのはラキラ(L'Aquila)大学(イタリア)のダビデ グラッシらの研究グループです。さすが、イタリア人!

 この記事を読んで、夢見心地でコンビニへチョコレートを買いに行く前にちょっと復習をします。

 チョコレート100gで480kcalですよ。いいですね!そしてこの記事はAmerican Journal of Clinical Nutrition Vol.81 No.3 2005 3月号からの引用です。 チョコが糖尿病にいいというのは、まだ実証された科学ではありません。こういうテストをしたら、このような結果になったということです。

 その正体は「フラボノイド」

 最近の医療やヘルシー食の話はまるで有機化学の勉強みたいです。抗酸化物質のポリフェノールというのは、化学でおなじみの亀の甲(六角形のベンゼン環)に2個以上の水酸基を持つものの総称で、そのサブグループにフラボノイド類があります。

 これは果物や野菜の「色」に関係が深い化合物で、チョコレート、日本茶、赤ワイン、タマネギ、リンゴ、クランベリー、ピーナッツ等に多く含まれていることはご承知の通りです。

 そのフラボノイド類の中でも特にカテキンなどで知られている「フラボノール」や「フラバン-3-オール」が注目の的です。

 これらの植物由来抗酸化物がからだを呼吸に伴うフリーラジカルの攻撃から、あるいはタバコの煙や環境汚染から守ってくれると考えられています。LDL(悪玉)コレステロールの酸化を防いで動脈硬化も予防してくれるようです。 さらに

 ?血小板の過反応を減らす

 ?血管を柔らかくする

 ?心・血管を調節するエイコサノイドのバランスをよくするetc これらの効果も報告されています。

 そして、ココアやチョコレートには赤ワインの2倍、日本茶の3倍もの抗酸化物質が含まれているという論文だってあるのです。 [コーネル大学 2003年12月、Journal of Agricuture and Food Chemistry]

 どんなチョコレートを選ぶの?

 まずホワイトチョコレートは除外しましょう。これはカカオバターなのでフラボノイド(色素でもあるのです)は期待できません。

 チョコレート大好き人間はたくさんいるのに、カカオとココアとチョコレートの関係をご存知の方は少ないでしょうね。

 南米アンデス原産のカカオ(cacao)の木には不思議なことに幹や枝に直にカカオの実がなります。実の中には種子がたくさん入っていて、その種子をローストしてからペースト状にしたものが「カカオマス」です。カカオマスからカカオバターを取った(脱脂)ものが「ココア」パウダーです。ココア(cocoa)のことを英語では"コウコウ"と発音しますね。いやぁーフクザツ!

 チョコレートはカカオマスに砂糖や香料、脂肪を加えて作ったものです。

 このカカオの精製工程で「フラボノイド」が損失します。種子の発酵やアルカリ処理、ローストなどが行われるからです。

 フラボノイド(ポリフェノール)は苦味やえぐ味のような刺激性の強い成分ですからある程度は取り除かなくてはなりません。そこで、おすすめは「ダークチョコレート」です。

肥満防ぐたんぱく質…やせ薬開発や糖尿病改善も

2005/03/21 読売新聞 Yomiuri On-Line

 肥満の予防に役立つたんぱく質を、慶応大と山之内製薬の研究グループがマウス実験で突き止めた。このたんぱく質は人間にもあり、やせ薬の開発につながると期待される。

 この成果は21日付の米科学誌ネイチャー・メディシン(電子版)に発表される。

 慶応大医学部の尾池雄一講師らと山之内製薬分子医学研究所は2003年に、肝臓から分泌され、血管や皮膚の再生機能を持つ新しいたんぱく質を発見、AGFと名づけた。

 その仕組み解明のため、遺伝子操作でAGFを失わせたマウスを作ったところ、普通のマウス(平均30グラム)(写真右、慶応大提供)の2倍近い、約50グラムの肥満マウス(同左)になった。基礎代謝が低下し、内臓脂肪や皮下脂肪が多く、糖尿病の症状も現れた。逆に、AGFの量を約2倍に増やしたマウスを遺伝子操作で作り、高カロリーのエサを3か月間食べさせたが、約8グラムしか太らず、糖尿病にもならなかった。同じエサを食べた普通のマウスは、約24グラムも体重が増え、糖尿病を発症した。普通のマウスを1年間太らせた後で、AGFの分泌量を増やしたところ、肥満や糖尿病が改善されることが確認できた。

ウエストサイズが糖尿病の目安…米で3万人調査

2005/03/22 読売新聞 Yomiuri On-Line

 【ワシントン=笹沢教一】米国成人男性のウエストのサイズが糖尿病の危険度の有効な指標になることが、米ジョンズホプキンス大の約3万人に対する疫学調査でわかった。

 肥満度の指標としてよく使われるBMI値よりも、優れた目安になりそうだという。米臨床栄養学会誌の最新号に掲載された。

 同大の研究チームは、米国男性のウエストサイズを身長や体重にかかわらず5段階に分け、生活習慣に伴う肥満と強く関連する「2型糖尿病」の発症頻度を比較。最も小さい74〜86センチのグループに比べ、より大きいサイズのグループは糖尿病の人が2倍以上に達し、特に100センチ超のグループは、最小グループの約12倍にもなった。

 身長と体重から肥満度を数値化するBMIでは、同様のグループ分けをしてもここまで明確な差は出ないという。ウエストによる糖尿病の危険度予測がうまくいくのは、腰回りの脂肪が、2型糖尿病の発症に強く関係しているためらしい。

漫才で血糖値低めに

2005/02/24 読売新聞 Yomiuri On-Line

「ものごとは楽観的に考えてあまり悩まないのが健康にも良いようです」と笑う田中さん 糖尿病を笑い飛ばそう――。筑波大(茨城県つくば市)看護科助教授で糖尿病療養指導士の林啓子さんは、笑いのトレーニングビデオを取り入れた「糖尿病を笑い飛ばす会」を、来月から始める。

 同県牛久市のクリニックの患者を対象に、ふだんから笑う習慣を身につけてもらうことで、運動や食事など、とかく“規制”が多い療養生活を楽しく過ごし、治療効果をあげようという試みだ。

 きっかけは、イライラや不安といったストレスで増えるホルモンが高血糖を招くのではないか、と考えたことから。一昨年から4回にわたり、糖尿病の患者に漫才などを見せ、その前後の血糖値の変化を調べる実験を行った。

 昼食を食べた後、1日目は林さんによる糖尿病についての講義を聞いてから血糖値を測定。2日目は、食後にプロの漫才を聞いて笑ってもらってから測った。すると、まじめな講義よりも漫才で笑った後の方が、食後2時間後の血糖値は低いとの結果が出た。

 茨城県新治村に住む田中利彦さん(62)も、実験に参加した1人。漫才で笑った後の方が血糖値の上昇が少なかった。

 10年ほど前から薬を飲んでおり、できるだけ歩くようにするなど運動にも気をつけているが、血糖を表す数値(ヘモグロビンA1c、正常は5・8以下)は、7から8を行ったり来たりだ。

 もちろん実験の“効果”は一時的なもので、薬がいらなくなるわけでもないが、田中さんは「何事もくよくよ悩まず過ごすのが良さそう」と、日ごろの生活でも心がけている。

 林さんらの研究はその後、回を重ねた実験によって、ただ「お笑い」を見せれば良いわけではないことも分かってきた。高齢者が多い糖尿病患者に、今どきの若手のお笑いを見せても、反応は今ひとつ。「何をおもしろいと感じるかは、1人ひとり違う。一律に『お笑い』のビデオを渡すだけでは駄目」と林さん。

 そこで来月からの「笑い飛ばす会」では作戦を変更。吉本興業の協力で新たに作成した「笑いの練習」ビデオを見ながら、まずは、“笑いやすい体質作り”を目指すことにした。

 毎週2時間の糖尿病教室のうち30分を、笑顔作りの練習にあてる。「笑(え)み筋(きん)」と呼ばれるほおの筋肉を動かすトレーニング法を覚え、自宅でも鏡を見ながら繰り返してもらう。半年間続けてもらい、笑いやすい体質作りが糖尿病にどう変化を与えるかを調べる。

 糖尿病患者には、療養を続けるうちに、うつ的な精神状態に陥る人もいる。笑いが及ぼす血糖低下作用には未解明な面は多いが、「まずは、糖尿病に伴う苦労を笑い飛ばそうということ」と、林さんは意気込んでいる。

 笑いと血糖値の実験 インスリン療法をしていない患者19人を対象に実施。昼食後に講義を聞いた場合の食後2時間血糖値(単位はミリ・グラム/デシ・リットル)は平均で123上昇したが、漫才を聞いた後では77の上昇幅にとどまった。血糖値を下げるインスリンの分泌は増えていないことから、「腹筋運動を伴う大笑いで、運動療法的な効果があったのでは」(林さん)と推測している。

NHK:1620万人の糖尿病患者……カロリー制限だけでそれ防ごうとする「愚」

February 23, 2005 余丁町散人(橋本尚幸)の隠居小屋 - Blog

 今晩のNHK。糖尿病はもはや国民病と言っていい。1620万人がその患者ないしは予備軍だという。でも。それへの対策は、あいも変わらず耐え難い「粗食栄養指導」だけ。だから栄養指導産業はいまや国民的大規模営利産業になりつつある。個人的体験からして、ちょっとおかしいと思う。

 糖尿病及びそれへの予備軍に対しては、一番効果的なダイエットは「炭水化物抜き」ダイエット(アトキンス・ダイエット)だろう。つまりコメを食べなければいいだけの話なのだ。いくら肉と脂肪とアルコールを大量に摂取しようとも(トータルカロリーは膨れあがったとしても)、コメさえ食べなければ確実に血糖値を下げることが出来る。散人がこの一年身を以て実験してきた経験的事実であるから間違いはない。肉とか脂肪とかウイスキーは、食べたいだけ食べて飲みたいだけ飲んで一向に構わない。コメ(炭水化物)を食べなければそれでいいのだ。血糖値は確実にこれで下がる。

 でも、それを日本のエスタブリッシュメントはなかなかそれを認めず、あいかわらず普通の人には耐え難いコメ中心の「粗食ダイエット」を国民に押しつけようとしている。日本のコメ農家の商売を考えての日本的ポリティカリーコレクトネスだろうが、だいたいあんな粗食を続けられる人は少ない。だから1620万人もの患者がいるのだ。都市住民も、あまり自民党(農村)的プロパガンダにナイーブにだまされていると、自分の寿命を縮めることになるだけではないか。すべからくアトキンスダイエットで自己防衛だ。

 あえて、専門外の分野であるにもかかわらず、テレビを見ていてあまりに腹が立ったので申しあげる次第。

 でも、専門家の方も同じことを言っているよ↓

 主食を抜けば糖尿病は良くなる!(高雄病院理事長、江部康二)

世界初の生体膵島移植 京大病院、20代の女性に

2005/01/19 中国新聞ニュース

 重症の糖尿病女性患者に、五十代の母親が提供した膵臓(すいぞう)から膵島細胞を分離して移植する生体膵島移植が十九日午前、京都大病院(院長・田中紘一教授)で始まった。手術を担当する田中教授らによると、脳死、心臓死からの膵島移植や生体膵臓移植はこれまで行われているが、生体膵島移植は世界初という。

 患者は近畿地方の二十代の女性。低血糖発作で自覚症状がないまま突然、意識を失う「無自覚性低血糖症」で、事故などに遭う危険性がある。

 京都大医学部の倫理委員会は二○○三年十月、個別審査を条件に生体膵島移植を承認。昨年十二月、糖尿病でない近親者が提供するなどの条件を母親が満たしたとして今回の手術を認めた。

 手術では母親の膵臓の半分を摘出、インスリンを分泌する膵島を分離し、カテーテルを通じて患者の肝臓に注入。摘出と膵島分離に計八―九時間が見込まれ、終了は十九日夕以降の見通し。

 膵島移植は患者にとっては開腹せずに済み、リスクの小さい治療法だが、膵臓は再生しないため、提供者が糖尿病になる危険性は残るとされる。

京大病院倫理委、膵島細胞の「生体間」移植を承認

2004/12/20 読売新聞 Yomiuri On-Line
 京都大病院(京都市左京区)は20日の医の倫理委員会で、慢性膵炎(すいえん)のためインスリンが分泌できず、重度の糖尿病にかかっている患者の治療で、膵島細胞の生体からの移植を承認した。

 患者は急激に意識が混濁する無自覚性低血糖の症状があり、命が危険にさらされる可能性が高いことなどから踏み切る。実施されれば世界初だが、臓器提供者(ドナー)の健康な体にメスを入れることになり、あくまで緊急避難的な措置だとしている。移植は来年1月中旬にも行う。

 患者は近畿地方の20歳代の女性。4歳の時に慢性膵炎となり、15歳でインスリンを投与しなければ生命を維持できない「インスリン依存状態膵性糖尿病」になった。提供者は50歳代の母親で、膵臓を半分摘出、30―40万個の膵島細胞を分離して女性の肝臓の門脈に点滴で注入する。

糖尿病一緒に自己管理

2004年11月26日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 福岡市で糖尿病を中心に診療する南昌江内科クリニック。ここに、自己管理のため足しげく通う人たちがいる。碓井律子さん(68)もその1人。

 受診して糖尿病の薬の処方を受けるのは月2度だが、週3回は院内で開かれる体操教室に参加する。運動療法指導士がついて、ストレッチやウオーキングを2時間行う。

 先月には、調理実習室を備えた新しい診療所の建物が完成し、管理栄養士と調理師の指導による料理教室もスタート。今月は、カモと野菜をふんだんに使った治部煮(じぶに)風の鍋や切り干し大根の酢の物など4品目を作った。「自宅じゃ、目分量でしょ。勉強になります」と碓井さん。

 院長の南昌江さん(41)は「薬や自己注射で治療していても、糖尿病の管理の基本は、適切な食事と適度な運動。かといって無理をしても続きません。食事や運動の楽しみを一緒に味わっていきたいと思っています」と言う。そう考えて、料理や運動用の部屋を設けた。

 実は、南さん自身、14歳の時に、血糖値を下げる働きのあるホルモン、インスリンが出なくなる1型糖尿病を発症し、インスリンの自己注射をしながら、病気と付き合っている。

 福岡赤十字病院などで勤務の後、「じっくり患者さんと付き合いたい」と98年に開業。院長以下スタッフ10人で、このうち4人は糖尿病患者。看護師4人と管理栄養士は糖尿病療養指導士の資格を持つ。患者でもある専門家たちは、患者の話をよく聞き、話をする。

 そのため初診は2時間がかり。院長の診療が2、30分のほか、血液や合併症の神経障害などの検査、看護師の問診や生活指導にも時間がいる。2回目は、弁当持参で受診し、食べて血糖値を測る。栄養指導もあるので、2時間はかかる。

 こうした指導が評価され、定期受診する患者約1300人の4割は、生活指導のみで薬は飲んでいない。

 野村雅子さん(69)は南さんと10年以上の付き合い。病気が進み眼底出血が現れてから糖尿病とわかった。腎臓の異常をうかがわせる尿たんぱくも出ていたが、少量の薬と生活改善で腎臓も落ちついた。

 「やせすぎだから、2000キロ・カロリーぐらい食べてもいいですよ」と南さん。糖尿病の管理なら、食事の量を抑えるのが通例だが、健康全般に気を配ると、型どおりの指導にはならない。

 南さんは「かかりつけ医として、長くお付き合いすると、病気だけではなく、その人の人生が目に入ってきます。病気があっても、お互いにいい人生を送りたいって思うんです」と話している。(渡辺 勝敏)

 <糖尿病治療> 糖尿病は患者と予備軍を合わせると1620万人という国民病。生活改善が基本だが、薬の選択、インスリン自己注射の調整など、専門的な知識を持つ医師でないと対応が難しいケースもある。

生活習慣病予防に目標量 厚労省、日本人の食事基準を公表

2004/11/22 The Sankei Shimbun
 厚生労働省は22日、2005年度から5年間使用する「日本人の食事摂取基準」を公表した。糖尿病や脳卒中などの生活習慣病予防に重点を置き、特に管理が大切な栄養素の「目標量」を新たに設定したのが特徴。

 基準の名称も従来の「日本人の栄養所要量」から一新した。学校給食や保健所の栄養指導などに今後活用される。

 厚労省生活習慣病対策室によると、赤ちゃんから70歳以上までの年代別、男女別にエネルギーと各栄養素の摂取量を定めた基準。これまでの指標は栄養不足にならないための「推定平均必要量」や、過剰摂取による健康被害を防ぐ「上限量」などが中心だった。

 今回はこれらの指標のほか、生活習慣病予防で目指すべき摂取量を明確にするため、不足しがちな食物繊維やカルシウム、逆に減らすべきコレステロール、食塩などの「目標量」を示した。

 例えば食物繊維の目標量は男性の場合、18−69歳が1日当たり20グラム、70歳以上は17グラム。女性は18−49歳が17グラム、50−69歳は18グラム、70代以上は15グラムときめ細かく設定。食塩は年齢、性別に応じて1日当たり3−10グラム未満に減らすのを目標量とした。

「食べても太らない」特定酵素の働き解明…阪大チーム

2004/10/18 読売新聞 Yomiuri On-Line
 脂肪組織中のある酵素の働きを抑えると、たくさん食べても体重が減り、血糖値も下がることを、大阪大大学院医学系研究科の下村伊一郎教授(内分泌代謝学)と竹田潤二教授(発生工学)らの研究チームが動物実験で突き止めた。

 糖尿病や肥満治療への応用が期待される。米医学誌「ネイチャーメディシン」電子版に18日発表した。

 研究チームが着目したのは、細胞増殖やがん抑制などに深くかかわっている「PTEN」という酵素で、体内のあらゆる組織にある。この酵素が脂肪組織にだけできないマウスを作った。

 PTENのないマウスはえさをよく食べた。正常なマウスと比べると、生後10週で体長は変わらないのに、体重は25%少なく、脂肪組織の重さも4分の1だった。

 このマウスは体温が通常より1度ほど高く、エネルギーを体から熱として放出するため、脂肪がつきにくいとみられる。血糖を調節するインスリンを注射すると、正常なマウスより血糖値が下がるなど糖代謝も活発だった。

 肝臓など他の組織でPTENの働きを抑えると、がん化が進む可能性がある。下村教授は「この酵素を脂肪組織だけで特異的に抑え込むことができれば、生活習慣病の治療に使えるかもしれない」と話している。

糖尿病、点滴での膵島細胞移植で完治…京都大病院

2004/10/17 読売新聞 Yomiuri On-Line
 京都大病院で今年4月と7月の2回、膵臓(すいぞう)内でインスリンを作る膵島(すいとう)細胞の移植を国内で初めて受けた京都市内の糖尿病の女性が完治したことが16日、わかった。

 女性はインスリンが体内から減少する1型糖尿病で、国内ではこれまで膵臓移植でしか完治できなかった。細胞移植は30分程度の点滴で行うため、開腹する膵臓移植に比べて患者への負担が格段に少なく、国内に約14万人いるとされる1型糖尿病患者への朗報となりそう。

 女性は30歳代。14歳で1型と診断された。以来約20年間、1日4回のインスリン注射が欠かせなかった。

 京大病院は4月に心停止した男性の膵臓から分離した約35万個の膵島細胞を国内で初めて女性に移植。その後、女性の体内でインスリンの分泌開始が確認された。7月初めにはさらに別の提供者から約40万個が移植され、必要なインスリンを作ることが出来るようになった。8月初めに退院し、現在は免疫抑制剤を服用するだけとなった。

 膵島細胞移植は2000年、カナダ・アルバータ大が医学雑誌で細胞分離方法を発表以来、急速に世界で普及した。海外では脳死者から採取し、約500の移植例があるが、国内では、膵島細胞が臓器移植法で脳死の提供者(ドナー)から取り出せる対象になっていないため、このケースのほかに、心停止したドナーから取り出した同細胞を京大病院と千葉東病院(千葉市)が4人に移植している。

 京都大病院臓器移植医療部の松本慎一助手の話「移植の方法が点滴で安全なうえ、免疫抑制剤による副作用もほとんどない。さらに多くの患者が移植を望むと思う」

糖尿病の発症左右するDNA変異発見 愛媛大

2004/09/13 asahi.com
 糖尿病の95%を占める2型糖尿病になりやすいかどうかを左右しているDNA変異を、愛媛大糖尿病内科の大澤春彦助教授(臨床検査医学)らが発見した。米国人類遺伝学会雑誌10月号で発表する。DNAの塩基配列が1カ所だけ変異した1塩基多型(SNP)で、糖尿病の中核的な原因遺伝子であるレジスチン遺伝子の働きを左右していた。まず、糖尿病発症リスクの判定に期待されるほか、将来的には新しい治療法開発にも役立ちそうだ。

 今回の変異は、19番染色体で見つかった。愛媛県と千葉県で2型糖尿病患者と健常者それぞれ約500人を調べたところ、4種類ある塩基のうち一般の人だと「C(シトシン)」なのに、2型糖尿病患者の多くで「G(グアニン)」になっている場所があった。父と母から1本ずつ受け継いでいるDNAで、双方に変異がある人は患者で13.9%、健常者で8.5%と、患者の方が多く変異を持っていた。

 計算上、双方のDNAに変異がある人では、発症リスクが変異を持たない人の約2倍だった。

 この変異を人為的につくると、作られるレジスチンの量が4〜10倍にもなることが確かめられた。実際に、2本のDNAの双方に変異を持つ患者では、血中のレジスチン濃度が変異がない人の約2倍に上がっていた。レジスチンは、血糖を下げるインスリンの働きを妨げることで2型糖尿病を起こす。

 これまでに発表された海外でのデータも含めて解析した結果、DNAが2本とも変異を持っている場合の発症率は、人種を超えて高いことも分かった。

 国内の糖尿病患者は約740万人。大多数を占める2型糖尿病は複数の遺伝的要因に、運動不足や肥満、過食、ストレスなどの生活習慣が加わり発症することが知られている。これまでいくつかのSNPが報告されていたが、今回のように、遺伝子から発症までの流れを含めて分かったのは初めてだ。

 研究の指導にあたった同大の牧野英一教授は、「2本あるDNAの両方に変異がある人は、発症を防ぐために生活により注意が必要だ。今回の結果は、体質を事前に把握することで予防にもつながる。新たな治療法を考える上でも大きな成果だ」と話している。

《1塩基多型(SNP=スニップ)》

 遺伝情報の個人差を生み出すDNAの違い。ヒトのDNAは4種類の塩基30億個でできている。塩基配列の差が、姿形や体質など個性の基盤となる。塩基配列の差のうち、人口の1%以上の頻度で存在するものを「遺伝子多型」と呼び、そのうち1塩基だけの差がSNP。特定の病気になりやすいかどうかや薬の効き方などをめぐり、個人差を生じる原因として注目されている。

油断禁物、「やせ形」も飲酒で糖尿病の危険 厚労省調査

2004/09/12 asahi.com
 太った人に比べ糖尿病にかかりにくいと言われるやせ形の男性も、酒を飲む習慣があると危険が高まることが、厚生労働省の研究班(主任研究者=津金昌一郎・国立がんセンター予防研究部長)の調査で分かった。日本酒2合程度でも、糖尿病のかかりやすさが倍になるという。

 秋田と岩手、長野、沖縄の各県で、40〜60歳の男女計約2万9000人について、90年からの10年間の健康状態を追跡した。うち約1200人が新たに糖尿病になった。

 ボディー・マス・インデックス(BMI)という体形の指標を使い、飲酒と糖尿病との関係を分析。標準値の「22」以下のやせ形の男性では、日本酒に換算して毎日1〜2合の酒を飲む人は、飲まない人の倍、糖尿病にかかりやすかった。2合を超えると、リスクは3倍になった。

 これは、同じ調査で分かった肥満によるリスク増大に匹敵するという。

 結果をまとめた虎の門病院(東京都)の野田光彦・内分泌代謝科部長は「飲酒を長期間続けるとインスリン分泌が下がる。やせ形はもともと分泌能力が低い人が多いので悪影響が出やすいのではないか」という。

 女性では飲酒する人数や量が少なく、関係は分からなかった。

アトキンス・ダイエット、長期的には推奨できない―新研究

2004.09.03 農業情報研究所

 油の乗った肉、バター、高脂肪の乳製品などいくら食べてもよい、ただ炭水化物の摂取を一日30グラム以下に抑えれば痩せられる、肥満病が蔓延するなか、こんなダイエットが大流行している。言わずと知れた「アトキンス・ダイエット」だ。日本でどれほど流行しているかは知らない。しかし、この40年、世界中で売られたアトキンス・ダイエットの本は4,500万部にのぼり、このダイエットと、付随するアトキンス食品が大人気を博している。

 しかし、このダイエットは最初の数ヵ月は有効であるかもしれないが、長期的には体重を減らすのに役立たないばかりか、危険でさえあり得るという新たな研究が英国医学雑誌・ランセット誌に発表された(Arne Astrup,Thomas Meinert Larsen,Angela Harper,Atkins and other low-carbohydrate diets: hoax or an effective tool for weight loss?,Lancet 2004; 364: 897-99)。

 肥満男女のダイエットの諸研究は、低カロリー・低脂肪の通常のダイエットよりも、最初の6ヵ月ほどは速く体重を減らすが、12ヵ月もすると差がなくなる。これらの研究をレビューした研究者は、このダイエットは短期的には体重を減らし、血圧・血糖値・コレステロールのレベルも減らす効果があり、一概には否定できないと言い、その理由はよく分からないが、他の多くのダイエット同様、食品の選択が制限され、蛋白質が満腹感をもたらすからだろうと推測する。しかし、このダイエットの影響に関する科学的に堅固な証拠はほとんどなく、新たな研究が隠れた危険性を明らかにする可能性があると強調している。

 長期的影響に関する研究は少ないが、数少ない研究は1年後からは体重がもとに戻り、副作用が出ることが多いようだ。頭痛、筋肉の痙攣、下痢あなどが始まる。これは、炭水化物の不足がもたらす症候に一致する。これらは、単純に、組織に血糖を供給するのに十分な炭水化物が不足していることから起きる。成人の一日当たり炭水化物最低必要量は150グラムだが、このダイエットをする人はその5分の1しか摂取していないことになる。

 全粒穀物パンやシリアル、果物、野菜の摂取の制限は健康なダイエットとは言えず、心臓病や癌の危険も増やす。研究者は、長期的影響の研究を欠くこのダイエットは推奨できないと結論する。

 前に、米国ではBSEにもかかわらず牛肉消費が一向に減らないどころか、牛泥棒まで生み出している、これには健康志向がもたらすアトキンス・ダイエットも関係していると述べた(健康志向が米国を狂わせる―アトキンス・ダイエットで牛泥棒横行,04.4.14)。体重増が遅れるからと牛に牧草も食わせず、成長促進剤としての抗生剤を混ぜた濃厚飼料を与えて安価で大量の牛肉を供給する工業的システムも見直されるどころではない。アトキンスがもたらす副作用は、こんな身勝手な人間への牛からの報復の一つかもしれない。 

2人の提供者から初の「膵島細胞」同時移植…京大病院

2004/07/22 読売新聞 Yomiuri On-Line
 京都大病院は22日、血糖値を下げるインスリンを膵(すい)臓内で分泌する膵島細胞を、心停止した60歳代女性と50歳代男性の提供者から採取し、重い糖尿病の女性に移植する手術を行った。

 2人の提供者からの同時移植は国内初。患者は近畿地方の30歳代女性で、術後の経過は良好という。

脂肪肝:成人男性「隠れ」2割 血液検査正常でも−−愛知医大分析

毎日新聞 2004年06月07日 東京夕刊 Mainichi INTERACTIVE
 肥満度の指標(BMI)や血液中の中性脂肪値が正常でも、脂肪肝の可能性のある人が男性で2割、女性で1割いると予測されることが愛知医大の各務伸一教授(消化器内科)らの分析でわかった。肝臓に脂肪が過剰にたまる脂肪肝は、高脂血症や動脈硬化など生活習慣病の入り口の症状とされ、将来的に心筋梗塞(こうそく)や脳卒中につながる恐れがある。同大の福沢嘉孝助教授は「血液検査などの値が正常でも油断は禁物だ」と警告している。

 福沢助教授らは、03年度に愛知県厚生連長久手農村健診センター(山田晴生所長)で人間ドックの検査を受けた1055人を対象にした。受診者全員に腹部の超音波検査を実施、30・6%の人が、脂肪肝と診断された。

 非脂肪肝と診断された人について男女別にBMI=体重(キロ)を身長(メートル)の2乗で割る▽血液中の中性脂肪▽同ヘモグロビンA1c−−の3項目の平均値を出した。男性でBMI22・1、中性脂肪107ミリグラム(血液1デシリットル中)、ヘモグロビン4・9%、女性で同じく21・6、81ミリグラム、4・8%を「正常モデル」とした。

 一般の健康診断で、BMIや中性脂肪値が正常でも、脂肪肝の可能性のある人がどの程度いるのかを推定した。「ロジスティック回帰分析」という統計処理方法を用いて、3項目の数値変化と脂肪肝の発症確率の分布を調べた。その結果、正常モデルでも、男性は20・8%、女性は9・3%の確率で脂肪肝の可能性があることが分かった。

 従来の診断基準では、BMI25以上で脂肪肝を疑っていたが、BMIは正常でも内臓の周囲に脂肪がつく内臓型肥満が増えていることと関係しているとみられるという。福沢助教授は「生活習慣病の予防のためには、診断基準を厳しくする必要がある」と話している。【吉川学】

WHOが肥満予防の世界戦略採択、運動と食生活に指針

2004/05/22 読売新聞 Yomiuri On-Line
 【ジュネーブ=長谷川由紀】世界保健機関(WHO)年次総会は最終日の22日、生活習慣病の原因となる肥満を予防するための「食事、運動、健康に関する世界戦略」を採択した。戦略は条約と違い、強制力はないが、運動や、健康的な食生活などダイエットに関する初めての国際的な指針となる。

 WHOによると、心臓疾患や糖尿病などの慢性疾患による死者は、先進国だけでなく、開発途上国でも急増しており、世界の死亡原因の6割を占める。

 戦略は、こうした疾患の大きな要因となっている肥満防止のため、食事に関しては<1>バランスのとれたエネルギーの摂取と健康的な体重の維持<2>脂肪の摂取を控える<3>果物や野菜などの摂取増<4>砂糖、塩の摂取制限――などを勧告。また、1日最低30分間、中程度の運動を行うよう勧めている。

 戦略策定にあたり、ブラジルなど砂糖生産国は「砂糖に関する摂取制限は、貿易障壁につながる恐れがある」などと反発したが、最終的に摂取量の数値を本文に盛り込まないことで、決着した。

血糖値、自分で測ると数値改善 糖尿病患者ら調査で判明

2004/05/09 asahi.com
 糖尿病の患者や血糖値が正常より高い「予備軍」の人が、自分で血糖値を測ると数値が改善することが、国民健康保険中央会の調査・研究でわかった。糖尿病患者や予備軍は1620万人いるとみられ、自己測定が予防や改善に役立つ可能性があるという。

 インスリンを投与する必要がない比較的軽い患者と予備軍を対象に調査。患者85人と予備軍100人に週3回、自宅で血糖値を測ってもらい、自己測定しなかったグループと、2カ月後の血糖値や体重の変化を比較した。

 その結果、自己測定した患者は普段の血糖レベルを示すヘモグロビンA1cが平均で6.98%から6.65%に下がり、体重も60.6キロから58.6キロに減った。予備軍もヘモグロビンが0.17ポイント、体重が1.2キロそれぞれ減った。自己測定をしなかったグループはほとんど数値に変化がなかった。

 国保中央会は「自分で測って数値の変化を実感することで、食事に気をつけたり、運動したりするなど自然に生活習慣を意識するようになったのではないか。自己測定が予防に役立つ可能性がある」としている。厚生労働省が02年に行った調査によると、ヘモグロビンA1cが6.1%以上の有病者が約740万人、5.6〜6.1%未満の予備軍が約880万人と推定される。

アトキンスダイエット(1)

2004年03月29日 医学都市伝説

 ちょっと前にダラダラ書いたように、私はいわゆる正統的ダイエットというには少々逸脱した側面のある、バランスのいい普通の食事と相当過激な運動という組み合わせで、かなりの減量を成功させてきた。しかし、あちこちに故障ができ、過激な運動ができなくなると、少しバランスを考えた程度の食事では、ジリジリというよりはドンドン体重が増えるのである。

 かなり極端な低脂肪食とか、ほとんど居直りに近いブックスダイエットなども手がけてみたが、まるっきり成功しない。大体、人間というのは我慢に我慢を重ねるようなことには向いていないし、楽にできるようなことなら目的が実現できるはずもない。ブックスダイエットなんぞ、もっともらしいことすらその理屈にはなく、そもそも相撲取りと同じような食パターンでやせようなんて、はじめから無理に決まっているわけだ。

 というわけで、最後の砦がアトキンスダイエットである。健康ということさえ無視すれば、これでやせられるのは自明なのである。というのは、我々はこれと同じ原理で、短期間にげそげそ痩せていく人をいつも見ているからである。それは何かといえば、コントロール不良の糖尿病だ。

 糖尿病では、T型U型の違いはあれ、組織に糖を取り入れるインシュリンが働かなくなるので、血中に糖がいくらあふれていようと、その糖はほとんど利用できず、組織は脂肪(部分的には蛋白質)の分解のみによってエネルギーを得なければならない。アトキンスダイエットで炭水化物を極端に制限した状態と同じになるわけだ。

 精神科疾患を持つ患者さんには、なぜか糖尿病を合併している人が多く、我々も結構この疾患の管理に頭を悩まされる。普通の内科医に治療を依頼しても、治療合理的に協力するのが患者というものだと信じきっているので、自己破壊的なことを平気でするような患者の面倒までは見られない場合が多い。大体、スラムみたいなところでカツカツで暮らしているような人に対して、のんきな「食事指導」をしてことたれりとするような想像力欠如を見ていると、ああ、こいつに頼むだけ無駄だったと思い知る。

 私たちが見ているような精神疾患合併例では、一切食事療法を守れない人もいて、130kgもあった体重が半年の間に半分になったような人も見たことがある。アウトになればそのときと、ほとんどヤケクソで見ていたら、その減量のおかげでインシュリン感受性を取り戻すのか、ほとんど耐糖能が正常化してしまう場合もある。

 そういう場合はかなりの負担を体に強いているので、やせたというのはむしろ症状といっていいのだが、中にはそれでけろりと問題が消失するような例があるのが面白い(と言っては何だが)。長期的にはまたいろいろと、ややこしい事がは出てくるものの。純粋に体重を減らすという目的なら、この減量メカニズムを使わない手はなく、事実それが効果があるとして、否定的評価にもかかわらず利用されているわけだ。

 私はその否定的評価も認めつつ、これなら体重は減るに違いないとも思っている。では、低炭水化物高脂肪高たんぱく食でなぜ体重がへるのか、その理論的な側面のおさらいを次回に述べてみたい。

アトキンスダイエット(2)

2004年03月30日 医学都市伝説

 前回、アトキンスダイエットというのは、いわば糖尿病のときのエネルギー代謝と同じような状態を作り出すものだと述べた。もちろん糖尿病では血中にブドウ糖がみちあふれている状態なのに、インシュリンが働かないために組織が糖を利用できない状態であり、アトキンスダイエットでは糖に分解される炭水化物の摂取量をへらして、低血糖状態を作り出している点が違う。

 しかし、身体の側はエネルギーを確保しないといけないので、両者とも、脂肪やたんぱく質を分解してエネルギーに変えているという状態は同じだ。いわゆる絶食や超低カロリー食では、たんぱく質分解も結構進むので、筋肉組織などもやせ細り、結果として代謝量の減少をまねき、リバウンドの原因になる。アトキンス系では蛋白と脂肪はたっぷり取るため、この点は回避される(らしい)。

 高校の生物で習うので覚えておられる方もおられるだろうが、炭水化物とたんぱく質のエネルギーは1gあたり4Kcalで、脂肪のそれはほぼ10Kcalである。脂肪はエネルギーに富む物質で、飢えに苦しむ危険を幾多となく迎えた動物種は、大多数がこの脂肪をいざという時のために蓄えるように設計されていて、人間は特にその点が念入りなのである。

 糖の利用ができないとき、主要なエネルギー元は脂肪に切り替わる。そのメカニズムはいろいろあるらしい。関与する局所ホルモンがいっぱいあって、中には抗肥満薬として使われる可能性がある物質もあるようだ。アミノ酸も1部は糖に変換されてエネルギーに動員されるが、そう効率がいいものではない。脂肪は糖に変換される部分と、遊離脂肪酸として直接TCAサイクルに入ってエネルギーになる部分があり、後者のほうが割合は大きい。

 ただ、そのためには糖由来のオキザロ酢酸という物質が必要で、この量には限界があって、余った遊離脂肪酸経由の物質(アセチルCoAという名前、どこかで聞かれた事があるだろう)は縮合してケトン体になる。このケトン体はそれ自身エネルギー源になり、とりわけ脂肪酸が超えられない脳血流関門も越えて、脳細胞のエネルギー源にもなる。また、ケトン体は満腹中枢を刺激して、空腹感を抑制する作用もある。

 ただ、これらは酸性物質なので、体の酸塩基平衡をみだす事がある。腎機能低下があるような場合、ケトアシドーシスという命にかかわる病的状態を呈する可能性もないではない。このダイエットの注意として、水分摂取を増やして酸塩基平衡を正常に保つようなどといわれるが、このへんはちょっと注意が必要なところであろう。

 いくら炭水化物を取らないからといって、脂肪とタンパクとり放題というのでは、あまった部分はまた脂肪として溜め込まれるのではないか、と思ってしまうのだが、脂肪細胞への脂肪酸取り込みはインシュリンが関与しており、炭水化物を抑えるこのダイエットでは、インシュリン分泌量が少ないため、取り込みも少なくなる。また、脂肪酸から脂肪を合成するときには、糖由来の物質が必要で、やはり脂肪合成は抑制される方向に向かう。

 てなわけで、このダイエット法はこと減量ということに関して、表面的な合理性を貫壁に保っているのである。自分で納得するためにいろいろ資料を集めてみたが、普通の臨床レベルの生化学常識からは、ツッコミするのは難しい。気になるのは、使われなかった脂肪酸はどこに行くのだろうと調べても、はっきりしたことがわからなかった点。腸から排泄されるなんて、怪しいダイエットサイトには書いてあるのだが、そんなことあるかねぇ。どんな形であれ、食ったものはエネルギーとして使い残せば身体にたまるはずなので、その辺が今ひとつ説得力不足である。

 このダイエット法に対する正統的な栄養学や医学の批判というのも、結局はそこに集中している。レビューもいくつかあるが、短期的には成功するが、長い時間をとればあまり成功していないという言うものが多い。まあ、たしかに私なんか毎日フライドチキンとベーコンエッグばっかり食ってるので、鮭茶漬けとタラコおにぎりの夢見るようになってますものなぁ。たいがい、こっそり炭水化物食うようになりますぜ。

 でも、たった10日ほど過ぎただけなのに、なんとなく減量できてきたような気もしないではないので、せめて1月ぐらいは真面目にがんばってみますか。結果は追って報告ということで。

糖尿病治療に一歩前進――ブタ胎児からのインシュリン分泌細胞移植で拒絶反応なし

2004年02月27日 Wired News Kristen Philipkoski
 ブタの胎児のインシュリン分泌細胞を使った画期的な実験が行なわれ、糖尿病の新たな治療法につながるかもしれないと、期待が寄せられている。

 ワシントン大学セントルイス校で行なわれたこの実験では、ブタのごく初期の胎児から取り出された細胞が糖尿病のラットに移植された。移植を受けたラットは、拒絶反応を抑える薬を投与しなくても、ブタの細胞を自身の細胞として受け入れ、自らの体内でインシュリンを作り出せるようになった。

 もしこの方法が人間でも成功すれば、インシュリンが欠乏する糖尿病の対症療法になるばかりでなく、病気そのものを治すことさえ可能かもしれない。実験に使われたネズミの体内では、その後も死ぬまでブタの細胞を通じてインシュリンが分泌されつづけた。

 今回の実験を率いた、ワシントン大セントルイス校医学部教授で腎疾患を専門とするマーク・ハマーマン博士は、「将来的には、人間の1型糖尿病患者のインシュリンをブタのインシュリンを使って置き換える方法として、この技術が使われることを期待している。ブタのインシュリンは人間に対しても問題なく効果を発揮する」と話している。この実験に関する論文は『アメリカン・ジャーナル・オブ・フィジオロジー――内分泌・代謝』誌の4月号で発表される。

 1978年に人間のインシュリンを使った製剤が米ジェネンテック社によって開発されるまで、糖尿病患者は定期的にブタのインシュリンの注射を受けていた。しかし、患者がインシュリンを常に注射しなくてすむように、(膵臓(すいぞう)で作られる)インシュリン分泌細胞である「ランゲルハンス島細胞」を動物または人間から採取して移植する方法の研究が進められてきた。だが、これには拒絶反応という大きな問題が立ちふさがっている。

 生物の免疫システムは、外部から入ってきた細胞を攻撃するようにできている。その細胞が同種の生物のものであっても例外ではない。このような理由から、ハマーマン博士らのチームは実験用のラットを2グループに分けた。一方のグループには、免疫による拒絶反応を抑える薬が投与され、対照群であるもう一方のグループにはこの薬が与えられなかった。

 研究者たちは当初、対照群ではブタの細胞は拒絶されるだろうと予想していた。実際にはそうはならなかった理由を、ハマーマン博士は次のように推測している。まず、移植されたブタの細胞が非常に早い段階で採取されていたことが挙げられる。ちょうどブタの胎児へと成長を始める間際で膵臓をまるごと摘出したため、取り出された細胞は、拒絶反応の原因となるタンパク質を作る段階まで至っていなかったというわけだ。さらに、実験を行なった研究者たちは、腹膜に細胞を移植した。腹膜の血管は直接肝臓につながっている。健康な人でも、インシュリンはこのように肝臓に入るように分泌される。

 ハマーマン博士は「成長のこれほど早い段階で細胞が取り出されたことも、膵臓がまるごと使用されたことも、腹膜に移植されたことも、これまで前例がなかった」と説明する。

 博士は、年末までに同様の実験を霊長類で行なうことを目指している。もしこれが成功すれば、人間での試験もその後すぐに開始されるだろう。

 人間のドナーからのランゲルハンス島移植は、最近になって進展を見せている。すでに何人かの人たちが移植を受けているが、この方法では、拒絶反応を抑えるために1日18錠もの錠剤を飲まなければならない。

 また、膵臓の提供者も簡単には見つからない。小児糖尿病研究財団の研究副責任者を務めるマーク・ハールバート博士によると、1年間に提供される6000の膵臓のうち、利用可能なものはわずか2000前後だという。これに対し、小児糖尿病とも呼ばれる1型糖尿病の患者は全米で150万人にものぼるうえ、毎年新たに1万3000人が1型糖尿病と診断されている。

 ハールバート博士は今回の実験を前途有望だと評価し、人間でもよい結果が出ることを期待していると話す。

 「従来、異なる種に移植したブタの細胞はすべて、免疫システムによって拒絶されるのが常だった。だが今回の実験モデルでは、発生段階にあるブタの膵臓を使うことで、免疫の問題を回避できたようだ」とハールバート博士。

 拒絶反応を回避する方法に関しては、別の研究も進められている。たとえば、米リバイビコー社(クローン羊『ドリー』を生んだロスリン研究所の研究者たちが立ち上げた英PPLセラピューティクス社から独立した会社)では、人間に拒絶反応を起こさせる遺伝子を取り除いた遺伝子組み換えブタが開発された。リバイビコー社は年内にも、このブタから取り出した細胞を使って人間への試験を行なう可能性がある。

 動物の細胞を人間に移植する行為は異種移植と呼ばれている。だが、エイズウイルスのような新種のレトロウイルス[感染した細胞のDNAに自身の遺伝子を恒久的に組み込むウイルス]が人間界に持ち込まれる危険性があるという理由で、異種移植に対しては反対の声もある。米食品医薬品局(FDA)は混乱を避けるため、ガイドラインを設けている。

 ハマーマン博士によると、ブタの胎児のニューロンでパーキンソン病や脳卒中を起こした人々の脳を治療する研究が行なわれた際には、移植によってレトロウイルスが持ち込まれることはなかったという(残念なことに、この研究では患者の症状を改善する効果もあがらなかった)。

 「理論上のリスクはたしかにあるし、考慮すべき点ではある。だが、一部の人が想像しているような重大な障害にはならないと思う」とハマーマン博士は語った。 [日本語版:米井香織/長谷 睦]

【糖尿病の食事・糖尿病食】 糖尿病予防にコーヒーが効く? 河合 勝幸

2004年01月25日 All about健康・医療

 たしかにコーヒーの愛好者は疫学的にも2型糖尿病になりにくいようです。でもこれはコーヒーが糖尿病予防になることを証明したものではありません。特に糖尿病の人がコーヒーをガブ飲みすると? たしかにコーヒーの愛好者は疫学的にも2型糖尿病になりにくいようです。でもこれはコーヒーが糖尿病予防になることを証明したものではありません。特に糖尿病の人がコーヒーをガブ飲みすると?

 1927年創刊の伝統あるアメリカの医学誌[Annals of Internal Medicine]1月6日号にハーバード大学の公衆衛生学の研究者らが、レギュラーコーヒーを1日6杯以上(8オンスカップ)飲む人は2型糖尿病になるリスクが男性で半分に、女性で30%近く下がると発表しました。コーヒーを飲まない人と比べるとこうなるというものです。

 それにもかかわらず、本当にコーヒーがいいのかどうかは更なる研究が必要だと研究者はコメントしています。執筆者のひとり、Fu助教授(ハーバード大学医科大学院)は、『統計上のエビデンスはとても明白なので、コーヒーは2型糖尿病を予防すると言ってもいい。問題は予防のためにコーヒーをたくさん飲むことを勧めるかどうかだ。私はまだそのレベルの話ではないと思う』と言っています。

 "コーヒーが2型糖尿病を予防するようだ"という研究は、2000年にオランダの研究チームが、これまた権威あるLancet誌に発表したのがきっかけです。これは、1日7杯以上コーヒーを飲む人は、2杯以下の人よりも7年間の2型糖尿病発症率が50%少ないというものでした。世界中で話題になったものです。日本からも東京大学大学院・朝日生命糖尿病研究所・国立ガンセンター研究所等の研究者たちが寄稿した、コーヒーを週1回以上飲む日本人は、空腹時血糖値がおおむね低いという論文がLancet誌に載りました。もっとも、フィンランドからはコーヒーの有無は2型の発症率とは関係がないという報告も寄せられました。

 ただ、オランダの研究はレギュラーコーヒーとカフェインレスコーヒーの比較、あるいは紅茶などの他のカフェイン飲料との相関が明らかではありませんでした。つまり、2型糖尿病の発症率を低くしたのがコーヒーそのものなのか、コーヒーに含まれる『カフェイン』のような薬物成分のせいかどうかがはっきりとしなかったのです。

 ヨーロッパの人に比べてアメリカ人はカフェインレスコーヒーをよく飲みます。そこで『ナースの健康スタディ』のような大規模コホート研究ができるハーバード大学医科大学院公衆衛生学の研究者がより大きな規模でコーヒーと2型糖尿病発症の相関関係を調べてみました。医療従事者(男性)4万人、ナース(女性)8万人を12年から18年もさかのぼって追跡調査したものです。

 その結果が上記のようにオランダの研究を裏づけるものとなったのです。

 不思議なことに、カフェインの入ったレギュラーコーヒーをよく飲む人には喫煙者が多く、脂っこい食品を好み、運動不足気味の『生活習慣』の悪い(!)人が多かったのですが、肥満度(BMI)は同じようなものでした。でもなぜか2型糖尿病の発症率は低かったのです。

 『カフェイン』が代謝を高めて、集中力、運動能力をアップするのは知られていますが、以前からカフェインは炭水化物よりも『脂肪』の代謝を高めることが指摘されてきました。

 高脂肪食はインスリンの効き目を悪くして2型の引き金になりますので、糖尿病を発症する前ならコーヒーのご利益も大いに期待できそうです。

 でも既に2型糖尿病になってしまった人には、大量の『カフェイン』は炭水化物(ブドウ糖)の利用効率を悪くして高血糖に結びつく恐れがあります。

 こんないい話、糖尿病になる前に聞きたかったですね。

【糖尿病の食事・糖尿病食】スプーン1杯のシナモンが効く! 河合 勝幸

2003年12月27日 All about健康・医療

シナモン(肉桂)はスパイスであり、生薬でもあります。糖尿病にいいとはかねてから言われていましたが、いよいよアメリカ糖尿病協会の学術誌に載りました。[Diabetes Care 2003,12月号]

シナモン(肉桂)はスパイスであり、生薬でもあります。糖尿病にいいとはかねてから言われていましたが、いよいよアメリカ糖尿病協会の学術誌に載りました。 [Diabetes Care 2003,12月号]

以前からシナモンが糖尿病者の血糖やコレステロール、血中脂質を下げると発表していたドクター リチャード・A・アンダーソン(Beltsville Human Nutrition Research. メリーランド)が、糖尿病ケアの一流誌に新たな論文を発表しました。

1日わずか1g(小スプーン1/4)のシナモンを40日間摂取しただけで、糖尿病者の血糖、血中脂質が改善したというものです。

これは2型糖尿病での研究で、2型というのはインスリン(ホルモン)がうまく作用しない、あるいはインスリンの分泌能力が低下した状態で、エネルギー源として大切なブドウ糖(炭水化物)が筋肉や脂肪細胞に取り入れにくくなる病気です。そのため、活力が落ちたり、血中にあふれたブドウ糖が血管や臓器を傷害していろいろな合併症を引き起こします。

ドクター アンダーソンによると、シナモンを摂り過ぎると害があるかも知れないので、1日1gで十分だということです。

小スプーン1/4のシナモンはトーストにふりかければ、おなじみのシナモントーストができますし、コーヒーやフルーツジュース、朝食シリアルにかければより美味になるというものです。

実験では60人の2型糖尿病者に1日あたり、1g、3gあるいは6gのカプセル入りのシナモンと、ニセ薬としての小麦粉カプセルを見分けがつかないようにして40日間摂取してもらいました。その結果として、シナモン組は量に関係なく血糖値、コレステロール値、中性脂肪値が30%以上も低下したのだそうです。

そのしくみは不明ですが、ドクター アンダーソンによるとシナモンにはインスリン分泌を増大させて、より効率よくからだの細胞にブドウ糖を取り込ませる未知の『物質』があるのだろうとのことです。

シナモン1gで3kcalしかありませんからカロリーの問題は全くありません。

以前の研究ではシナモンが脂肪細胞に作用してブドウ糖の取り込みを高めることが分かっていたそうです。動物実験やイン・ビトロ(試験管の実験)ではシナモンが糖代謝を20倍も高めたとも同博士は説明します。

シナモントーストはとてもおいしいですよ。

食べ過ぎにご注意を。

糖尿病 十四年患者数は一六二〇万人

2003年8月27日(社会保険旬報 8月21日発行 NO.2181−3)
 厚生労働省は六日、平成十四年糖尿病実態調査結果の速報を発表した。それによると、糖尿病が強く疑われる人は七四〇万人、糖尿病の可能性を否定できない人を合わせると一六二〇万人にのぼることなどが明らかになった。

 糖尿病は、ひとたび発症すると治療が困難であり、また網膜症や神経障害などの合併症を引き起こすことが多く、QOLの低下が著しいことが知られている。また平成十二年度の糖尿病の医療費は一兆一一五五億円(前年比三.五%増)と推計され、医療保険財政に与える状況を重くみて、厚生労働省は健康日本21において糖尿病対策を柱の一つに据えている。そこでは二〇一〇年の目標として糖尿病有病者数を一〇〇〇万人、治療継続率を一〇〇%としている。

 今回の速報では、糖尿病が強く疑われる人が七四〇面人、可能性を否定できない人をあわせると一六二〇万人。平成九年調査ではそれぞれ六九〇万人、一三七〇万人であり、五年で七%、一八%と急増している。また、強く疑われる人のうち現在治療を受けているのは五〇.六%(九年調査では四五.〇%)で目標値一〇〇%には程遠い状況だ。

 さらに糖尿病が強く疑われる人のうち健診を受けたことのある人の半数以上は治療に結びついているが、健診未受診者では八九.四%が治療を受けていないこともわかった。

 こうした結果から、自身が糖尿病、あるいはその可能性があることを知らず、その結果、症状が進行してしまうことがうかがえる。したがって、第一ステップとして健診の受診を促すこと、第二ステップとして糖尿病の可能性のある患者には積極的に生活習慣改善を含めた治療を促すことが糖尿病対策には不可欠なことがわかる。

「糖尿病に乗馬器具が効果」名大と松下電工

2003年06月26日 The Sankei Shimbun
 松下電工先行技術研究所と佐藤祐造・名古屋大総合保健体育科学センター教授らは26日、松下電工の家庭用乗馬型フィットネス器具「ジョーバ」を使った運動が、血圧上昇などを最小限に抑えながら糖尿病改善に効果があるとの研究結果を日本糖尿病学会で発表したことを明らかにした。

 これまで運動療法ができなかった心肺機能に問題のある患者や高齢者の利用も可能で、同社は「病気の改善に少しでも役立てれば」としている。

 ジョーバは松下電工が2000年から発売。前後、左右、上下など乗馬中の6方向の動きを再現することで、台座にまたがった利用者が無意識のうちに背筋、腹筋、大腿(たい)筋などほぼ全身に運動効果が得られる。

 一方で、台座の動きに対してバランスを保つ受け身的な運動なので心拍数、血圧への影響はごく限定的。散歩程度の心拍数、血圧の上昇で、自転車をこぐのと同程度の効果が得られるという。

 研究グループが日本人に一般的な2型糖尿病患者20人にジョーバを使った運動を毎日30分実施したところ、3カ月後に18人のインスリン抵抗性の指標が低下、症状が改善されたという。

すい臓の物質「GLP1」投与し糖尿病マウス治療

2003年04月20日 asahi.com
 ヒトの膵臓(すいぞう)でつくられる物質を加えると、マウスの腸の細胞がインスリンを出すようになる――。こんな実験に横浜市立大の谷口英樹教授(臓器再生医学)と研究員の鈴木淳史さんらが成功した。この腸の細胞を糖尿病のマウスに移植したところ、血糖値が正常に戻った。インスリン注射をしなくてもすむ糖尿病の治療法につなげたい考えだ。

 この物質は、GLP1という、アミノ酸がいくつかつながったもの。血糖を調節するインスリンの分泌などにかかわるとされている。

 谷口教授らは、GLP1を妊娠中のマウスに注射すると、母親と胎児双方の腸にインスリンを出す細胞が現れることを確認。また、マウスの腸の細胞にGLP1を加えて培養し、糖尿病のマウスの腸に移植したところ、2カ月後に血糖値が正常域まで下がった。移植しなかったマウスは血糖値が高いまま、8週以内に死亡した。

 腸の細胞が変化してインスリンを作り出したとみられる。

 その理由について、いろいろな臓器のもとになる幹細胞、もしくは内分泌細胞がGLP1の働きで変化した可能性があるという。

 谷口教授は「GLP1はヒトの腸でもマウスと同じように働くと考えられる。1年以内にヒトで効果を確かめ、新しい治療薬の開発につなげたい」と話している。

 成果は17日付の全米科学アカデミー紀要オンライン版に発表された。

生活習慣病になりやすい体、ミトコンドリアゲノムで解析

2003年04月13日 asahi.com
 岐阜県は10日、同県国際バイオ研究所(同県各務原市)が、ヒトミトコンドリアのゲノムから、肥満や糖尿病などの特徴的な遺伝子タイプを特定したと発表した。科学技術振興事業団(埼玉県川口市)とデータベース化し、11日からインターネット上のホームページで公開する。研究の基礎データとなり、生活習慣病の予防につながると期待されている。

 ヒトミトコンドリアは1個の細胞に約500個ある。エネルギーなどを作り出し、細胞核と同様にDNAを持っている。そのDNAは1万6569の塩基対で構成されている。

 同研究所は00年から研究を開始。肥満、糖尿病のほか、パーキンソン病や100歳以上の高齢者など6群に分類、96人ずつの計576人の日本人を調べた。この結果、肥満や長寿、糖尿病などで統計的に証明できた6種類の遺伝子タイプが見つかったという。

 同研究所は「遺伝子タイプから体質を知ることで、生活習慣病の予防に役立つ。日本人のルーツを探る手がかりにもなる」と話している。ホームページはhttp://www.giib.or.jp/mtsnp

運動しなくても脂肪燃焼

2002年10月07日 Yomiuri On-Line
◆東大チームがホルモンの働き確認、糖尿病治療に期待

 運動しなくても、脂肪や糖分を燃やして、運動したのと同じ効果を生み出せるホルモンを東京大学医学部の門脇孝・助教授、山内敏正医師らが確認した。このホルモンの働きを強める薬を開発できれば、糖尿病の治療や肥満防止に生かせるかもしれない。7日付の米科学誌ネイチャー・メディシン(電子版)で発表する。

 このホルモンは「アディポネクチン」と呼ばれ、脂肪の蓄積や合成をする「脂肪細胞」から分泌される。

 具体的な働きについては不明だったが、研究チームは、アディポネクチンが筋肉や肝臓にあるAMPKというたんぱく質の働きを強めることをマウスの実験で発見した。AMPKは運動する時に活躍する物質で、筋肉がエネルギーを作るために糖分を取り込んだり、脂肪を燃やす働きがある。

 運動の時、アディポネクチンは分泌されないが、マウスにアディポネクチンを投与すると、特段運動をさせなくても血糖値が下がることを確認しており、研究チームは、アディポネクチンは、まるで運動したかのように、筋肉に糖分や脂肪を消費させるよう仕向けているとしている。

 筋肉や肝臓などに脂肪がたまると、糖分の取り込みが悪くなり糖尿病につながるが、通常、アディポネクチンは食後に分泌され、一時的に過剰となった脂肪や糖分を燃やすことで、体内の栄養バランスを保つとみられる。肥満が進むと、アディポネクチンを分泌する脂肪細胞の働きが弱くなり、バランスが崩れてしまうらしい。

 アディポネクチンの働きを強める薬を開発できれば、運動がままならない糖尿病患者の治療や肥満防止が容易になると期待される。

糖尿病患者に朗報、インスリン分泌細胞で治療

2002年08月03日 Yomiuri On-Line
 死亡した人間の膵臓(すいぞう)から、血糖値をコントロールするインスリンを分泌する「膵島(すいとう)細胞」を取り出し、重症の糖尿病患者に点滴によって移植する治療体制が整った。

 国立佐倉病院(千葉県佐倉市)の剣持敬・外科医長を中心に全国の医師らで作る「膵・膵島移植研究会」の作業班が、1996年から続けてきた検討結果に基づき、実施マニュアルを完成させたもの。提供者が出れば、今月中にも移植に向けた国内初の膵島細胞の摘出などが始まる見通しだ。

 膵島は、直径0・1―0・3ミリの球状の塊で、膵臓内に成人1人あたり約100万個が点在する。「ランゲルハンス島」とも呼ばれ、インスリンを分泌する。

 国立佐倉病院によると、移植の対象となるのは、インスリンが分泌できなくなったインスリン依存型糖尿病患者。提供者の膵臓を摘出後、遠心分離法によって分離した膵島細胞を凍結保存。一定量が蓄えられた時点で、肝臓内の血管である門脈から点滴して肝臓に生着させ、インスリンを分泌させる。

 マニュアルには、〈1〉膵島移植を希望する患者と家族に十分な説明を行う〈2〉膵島の分離、保存などはマニュアルに示す基準を満たした施設で行い、公平な移植が出来るようにする〈3〉患者や提供者のプライバシー保護に配慮する――などを盛り込んでいる。

 膵島移植は、臓器本体の移植と違って開腹手術が不要で患者の負担が小さい。また、膵島そのものは遺族の同意だけで摘出できる。海外では1990年代から本格的に始まり、実施例は約500に上る。米国やカナダでは糖尿病が根治したケースも数多く報告されている。

 インスリン依存型糖尿病は、国内に600万人以上いると推定される糖尿病患者の4―6%を占める。根治療法としては膵臓の臓器全体を移植する手術が有効だが、臓器移植の例はまだ少ない。

 同研究会によると、膵島細胞は、臓器移植に適さない膵臓から取り出すため、待機患者の多い臓器移植を補完する形になるという。

 提供者の人数の問題もあって、膵島移植は年間数例で推移すると見られているが、将来的には、どの部位にも変化できる幹細胞からインスリンを分泌させる細胞を作り、自己移植する「再生医療」に応用できる可能性があるという。

 剣持外科医長は「臨床例を重ねて糖尿病の根治療法の確立に役立てたい」と話している。

食品成分表、18年ぶり全面改訂

2000.11.22(14:09)asahi.com
 学校給食や栄養指導などに利用される「日本食品標準成分表」(科学技術庁資源調査会編)が18年ぶりに全面改訂され、5訂版が22日、大島理森・科技庁長官に報告された。食物繊維やコレステロールについてのデータや、輸入品と国産品、調理前後の成分の違いなどを、きめ細かく盛り込んでいる。

 食生活の多様化を反映し、4訂版より16%増の1882品目を収録。食べられる部分100グラム当たりのエネルギー、たんぱく質、脂質といった従来の分析項目に、関心の高い食物繊維やコレステロールを加えた。

 輸入サバの脂質が国産の倍以上あることや、タイの成分が天然ものと養殖ものでは大きく違うことなども示している。

 改訂作業のなかで、「旬がある」といわれる野菜と魚介類の代表計19品目の季節変動も分析。ホウレンソウのビタミンCと、カツオの脂質について変化を認めた。カボチャや大根、イワシ、サバなどは明確な季節差がみられなかったという。

「辛くないトウガラシ」誕生 ダイエット効果はそのまま

2000.12.23(10:34)asahi.com
 「辛くないトウガラシ」が、京都大の矢澤進教授(園芸学)による品種改良で生まれた。辛くはないが、ふつうのトウガラシの辛み成分カプサイシンと同じ減量効果をもつ成分を含んでいる。静岡県立大や森永製菓研究所も加わった研究グループは「ダイエット食品などに応用できそうだ」と特許を出願している。

 矢澤教授はタイで病気に強い品種を見つけ、持ち帰った。「最初はものすごく辛かった。栽培していたら、偶然、辛くないのができた。この性質を固定させようと7年かかって交配などを重ね、新品種を作った」と話す。

 カプサイシンをほとんど含まないため、市販されているどの品種より辛みがない。さらに、それまで知られていなかった成分が見つかった。化学構造を調べた静岡県立大の渡辺達夫助教授(食品化学)は「カプシエイト」と名付けた。

 カプサイシンとよく似た構造だが、ほんのわずかピリッとするだけで味はなく、「食品に混ぜるとまったくわからなくなる」という。

 京大の伏木亨教授(栄養化学)らはマウス実験で、1日に体重100グラムあたり1ミリグラムのカプシエイトを2週間与えたグループ、同量のカプサイシンを与えたグループ、普通のえさを与えたグループの3つを比べた。カプシエイトとカプサイシンのグループは、どちらも脂肪が平均3割少なくなり、減量効果が確かめられた。

 カプサイシンは、アドレナリンなどを分泌させて脂肪の消費を活発にすると考えられている。カプシエイトにも同じ作用があるらしい。

 森永製菓研究所によると、このトウガラシやカプシエイトの特許を国内だけでなく国際的にも出願中。ふつうのトウガラシは減量効果が出るほどたくさん食べられないが、「カプシエイトなら大量に食品に混ぜることができ、ダイエットにつながる」と、飲料や菓子に入れる実用化をめざしている。

武田の糖尿病治療薬、心不全の副作用で注意呼びかけ

2000.10.05(20:17)asahi.com
 厚生省は5日、糖尿病治療の画期的な新薬として武田薬品工業(本社・大阪市)が開発し、昨年12月から発売している「アクトス」(成分名・塩酸ピオグリタゾン)の服用中に副作用として急激なむくみや体重増加が起こり、心不全につながったとみられる症例が5件あったとして、同社に対して、添付文書の改定と、緊急安全性情報(ドクターレター)を出して医療機関に注意を促すよう指導した。同社によると、昨年8月から販売されている米国では約40件の副作用報告があるといい、海外でも医療機関への情報提供を強化するという。

 同日改定された添付文書では、心不全の既往症がある患者には同薬を処方しないよう求め、心不全の恐れがある心筋こうそくや狭心症などの患者には、慎重に投与することとした。

 副作用が確認されたのは今年4月。3月から服用を始めた60代の女性が2、3週間後に家事で息切れを起こすなどの心不全を発症。足がむくむなど1カ月で体重が8キロ増えた。また別の60代女性は服用から約1カ月後に全身のむくみを訴えた後、呼吸困難の状態に陥った。副作用のあった5人はいずれも以前から循環器系の疾患があった人たちで、現在はみな軽快しているという。

糖尿病抑制の新薬剤 東大講師ら実験成功 -原因タンパク質に効果-

2000.06.10【サンアントニオ(米テキサス州)9日=共同】by The Sankei Shimbun
 日本人に多いタイプの糖尿病の原因をつくるタンパク質の遺伝子を、薬剤で働きにくくすることによって、糖尿病の発病や肥満を抑える動物実験に、東大医学部の門脇孝講師と山内敏正医師、薬学部の影近弘之助教授らが初めて成功した。

 サンアントニオで開かれている米国糖尿病学会で十二日に発表する。

 この遺伝子は「PPARγ(ガンマ)」と呼ばれる。栄養を体に蓄えるのに不可欠な、小型の脂肪細胞をつくる働きに関与するが、栄養が過剰なもとでは小型脂肪細胞を大型化させ、インスリンを効かなくする働きも併せ持つ。PPARγが働いてしまうため糖尿病になりやすい体質は、日本人の九五%以上が持つといわれる。

 研究グループは、PPARγとセットになって作用するタンパク質の効果を抑える薬剤を開発。高脂肪の食事を与えた実験マウスに投与した。

 薬剤を投与しないマウスは肥満や糖尿病などの症状が現れたのに対し、投与したマウスはインスリンが効かなくなる状態や糖尿病の発症、肥満がほぼ完全に抑えられた。

 今回の研究対象は「インスリン非依存型糖尿病」で、日本人の糖尿病の大半を占める。脂肪の取りすぎなどの食生活や運動不足といった生活習慣と、遺伝的な要因の両方が関係している。

 門脇講師は「PPARγは、かつて長い飢餓状態にあった人類が、栄養を効率よく蓄えるための『倹約遺伝子』と考えられる。飽食の現代にはこの遺伝子の働きを抑える薬物療法も必要で、これが可能になれば、食事や運動療法の有効性も高くなるだろう」と話している。

季節の栄養盛り込んで 食品成分表、18年ぶり改定

2000.06.04(16:03)asahi.com
 食品の栄養計算のおおもとになる日本食品標準成分表(科学技術庁資源調査会編)が、18年ぶりに全面的に改められ、今秋、5訂版が発表される。これまでの「1食品1成分」の原則にとらわれず、季節で最高10倍近く変わる魚や野菜の分析値を初めて盛り込んだり、一部の肉で調理前と調理後に分けて示したりするのが特色だ。

 成分表はカロリーやたんぱく質、ビタミン類などの量を分析したもの。学校給食や病院食の献立づくりに欠かせない。栄養士たちはパソコンにデータを入れるなどして活用している。

 いまの4訂版は1982年に刊行。健康への関心の高まりを背景に、大学や出版社が転載したものを合わせると400万部を超え、隠れたベストセラーだ。

 旬による成分の変化が収録されるのは、カツオやホウレンソウ。

 カツオの脂質は、4訂版に100グラム当たり2グラムと記されている。しかし、今回の調査で、秋に太平洋を南下する「戻りガツオ」は脂がたっぷりのっていて、春から初夏の「初ガツオ」の10倍近くになることが確かめられた。ホウレンソウのビタミンCは、夏より冬が2、3倍多いという。

 肉はこれまで「生」として扱ってきたが、豚のロースや若鶏(わかどり)のもも肉など一部について、「焼き」や「ゆで」の調理をした場合の栄養データも載せる。

 また、食卓の「国際化」を映し出して、輸入品と国産品とを別々に表記する品目を増やす。たとえば、欧州から輸入されるマアジやサバでは、脂質が国産品を2、3倍上回る。

 科学技術庁資源室は「食生活が変わり、食卓に並ぶ食品が多様化するとともに、流通の形態も変化している。それらを反映して、より実際に即したデータになるよう充実を図った」と話している。

 発泡酒なども加えた約1880食品の最新データを盛り込む5訂版は、政府刊行物として出版される。家庭でダイエットのカロリー計算に使う人たちからも関心を集めそうだ。

三共、糖尿病治療薬販売中止で特別損失380億円

7:27p.m. JST March 30, 2000
 三共は30日、肝臓への副作用との関連が否定できない死者53人を出した糖尿病治療薬「ノスカール」の販売中止に伴い、2000年3月期の連結決算に特別損失380億円を計上すると発表した。連結当期利益の業績予想は790億円から410億円に下方修正され、10期ぶりの当期減益に転じる見通しになった。

 三共は「副作用の原因が究明されれば販売を再開したい」としてきたが、29日の取締役会で「販売継続は困難」との結論を出した。これに伴いノスカールの原料や半製品、米国での販売権などの評価損を特別損失に計上することになった。

取りすぎ予防に上限値

1999年6月28日 11時32分 共同通信社
 厚生省の公衆衛生審議会は28日、健康な生活のため1日どれだけのエネルギーや栄養素が必要かを示す『日本人の栄養所要量』の第6次改定をまとめた。欠乏症の予防が中心だった従来の考え方を転換し“飽食時代”の過剰摂取に対応したのが特徴。

 ビタミンAやカルシウムなどに初めて上限値を設けたほか、運動不足の人が増えている現実を考慮しエネルギー所要量の区分も『下方修正』した。

HOMETOPIC医療