TOPIC No.5-13b 2000年度01-06月 医療ミス

医療現場の「ニアミス」、注射や点滴の事例が3割

2000.06.26(21:28)asahi.com
 相次ぐ医療事故の原因を探ろうと、全国の看護婦から集めた計1万件余りのニアミス事例を厚生省研究班(主任研究者=川村治子・杏林大保健学部教授)が分析した結果、注射や点滴に関する事例が3割を占めていたことが分かった。中でも「患者の取り違え」や「似た容器の取り違え」などがとくに多かった。厚生省が、ミス内容を分析するのは初めてで、ひとつ間違えれば大きなミスにつながることもあり、研究班は、確認方法の統一化、薬剤師の役割強化などを提言している。

 26日開かれた医療審議会に報告された。厚生省は研究班がまとめた具体的なニアミス事例を都道府県や医療機関に配布し、事故防止に生かしてもらう考えだ。

 研究班が昨秋、300床以上の病院777病院に協力を依頼。了承を得た計218施設の看護部から、計1万1148件のニアミス事例を集めた。

 調査結果では、注射や点滴に関するものが最も多く、全体の31.4%にあたる3496件を占めた。研究班は今回、報告事例が集中している、この注射業務などに絞って分析した。

 注射や点滴で看護婦は、医師の指示を受けて薬剤を混合したり、薬剤師に発注したりする。実際の注射や経過観察も受け持つ。ニアミスは患者に注射するときに、同姓や似た名前、同じ治療法をとっている患者と間違えるなど「取り違え」が921件を占めて集中していた。また注射する薬の混合など準備中に、似た容器や薬剤名、保管場所が近いなどが要因で間違えたか、間違えそうになった例が436件あった。また薬の単位のミリグラムとミリリットルを間違える▽筋肉注射と静脈注射を取り違える――などの例があった。

 これらニアミスの原因として(1)口頭の指示などが正確に伝わらない(2)容器などの類似(3)患者の名前や外形の類似(4)電話などで薬剤の混合作業などが中断される――などと分析しており、研究班は薬剤の混合作業場所などを広くとる▽薬剤師の役割を強化する▽労働態勢を見直す、などと提言している。

医療事故の4病院 「組織的ミスなし」厚生省医療審部会

2000.06.19(21:50)asahi.com
 昨年から今年にかけて、患者が亡くなるなどの医療事故を起こした京都大医学部付属病院など4病院を調査していた厚生省の医療審議会医療施設機能部会(部会長=浅田敏雄東邦大名誉学長)は19日、「特定機能病院の承認を取り消すほどの組織的ミスはなかった」との意見をまとめた。「特定機能病院」は診療報酬などで優遇される。一方で同部会は「患者が死亡するなどした結果は重大で、医療不信を招いた事態は遺憾」として、4病院に注意を促す文書を送ることを決めた。

 調査を受けていたのは、京大病院、国立循環器病センター、東海大病院、東京医科歯科大病院。昨年11月から今年5月にかけ、薬の調合や処方のミス、人工呼吸器に誤って消毒薬を入れるなどの事故があった。厚生省職員が病院側から事情を聴いたほか、同部会に院長らを招き、事実関係や事故への対処策、事故防止マニュアルの策定状況などについて調査した。

 同審議会は昨年、患者を取り違えて手術した横浜市立大病院に承認辞退を勧告したが、4病院については「複数の医療従事者のミスが重なったとはいえ、横浜市立大病院ほどの組織的なミスではない」とした。また同部会は今後、全国81カ所の特定機能病院の事故防止策を調べるほか、事故の場合の調査対象基準などをまとめる方針を決めた。

福岡・勝山病院の元院長が自宅で首つり自殺

2000.06.11(20:25)asahi.com
 
 福岡県勝山町の勝山病院の木村繁輝・元院長(54)が11日、同町松田の自宅で首をつって死んでいるのを妻(51)が見つけた。福岡県警行橋署は自殺とみて動機などを調べている。同病院は診療報酬を不正請求したとして、5月24日に保険医療機関の指定を取り消されている。

 調べでは、午後零時50分ごろ、妻が昼食のために木村元院長を呼びに2階に上がったところ、物置部屋のクローゼットの金棒にガウンのひもをかけ、首をつっているのを見つけた。近くの病院の医師が駆けつけたが、すでに死亡していた。遺書などはなかった。死亡推定時刻は午前10時ごろとみられる。

 木村元院長は妻と2人暮らし。妻は午前9時半ごろ外出したが、正午ごろ帰宅して昼食の準備をしていたという。

医療ミス防止策を全国調査

2000/06/09 18:47共同
 各地の病院で医療ミスによる患者死亡事故などが相次いでいることから厚生省は九日までに、全国の二百床以上の計約二千八百病院を対象に、事故防止策の整備状況に関する実態調査に乗り出す方針を決めた。

 同省は昨年一月の横浜市立大病院の手術患者取り違えミス以降、事故防止に本腰を入れているが、全国規模の調査は初めて。今秋までに結果をまとめ、不十分な病院には現地に職員を派遣して直接指導する。高度先端医療を提供する特定機能病院に指定された施設については「ひどい場合、指定の取り消しも視野に入れる」(健康政策局)としている。

 調査内容は(1)安全管理指針の整備(2)事故などの院内報告制度の確立(3)事故防止委員会の設置(4)職員研修の実施―の四項目。いずれも今春の制度改正で特定機能病院の指定要件として新たに義務化された事項。

 全国八十一の特定機能病院については各項目について四―六月までを準備期間とし、七月一日時点での達成状況を具体的に回答するよう求め、同月中に結果を集計。その後、二百床以上の施設に対しても報告を求めるが、特定機能病院への質問よりも簡易な内容になるという。

枚方市民病院幹部が医療ミスで死亡の看護記録改ざん指示

2000.06.04(03:06)asahi.com
 乳がんでない患者の乳房を切除するなどしていた大阪府枚方市の市立枚方市民病院で2年前、食道がんの手術後に容体が急変して死亡した男性患者(当時62)の「看護記録」が、病院幹部の指示で書き換えられていたことがわかった。術後管理が不十分だったうえ、容体が急変した際、当直医は院外に出ていて連絡がつかず、蘇生(そせい)処置が遅れたが、改ざん後の記録では、急変後すぐ処置したように書かれているという。男性はこの急変で植物状態に陥り、約15日後に死亡した。病院側は家族に対し、処置が遅れた経緯などを説明していなかった。

 関係者によると、この男性は1998年春、がんに侵されて食道を摘出する手術を受けた。病院側は手術後、気管内に挿管して人工呼吸で酸素を送っていたが、数日後に担当医師の判断で管を抜き、マスクで酸素を送る方法に切り替えた。

 管を抜いた翌日、看護婦は酸素が体内にどれだけ行き渡っているかの目安になる「動脈血酸素飽和度」(SpO2)を看護記録に記入していたが、正常値に比べて低下していることに気づかず、まもなく、男性が苦しみ出した。休日だったため、外科の当直医を呼ぼうとしたが、当直医は持ち場を離れていて連絡がつかなかった。

 しばらくして、別の科の当直医が駆けつけたが、男性は心肺停止状態になっており、再挿管して蘇生処置をして一命はとりとめたが、植物状態に陥ったという。

 当番看護婦らはこうした経過を看護記録に書き込んでいたが、その後、病院幹部の指示で、SpO2のデータ部分や、男性の容体急変後の事実経過を書き換え、すぐに処置を始めたようにしたという。

 病院側は家族に対し、急変の経緯を「たんを詰まらせるなどして苦しみはじめた」などと説明していた。家族によると、男性は管を抜いた翌日に意識が戻り、話そうとするようになっていたという。しかし、急変後は容体が回復しないまま、死亡した。

 複数の外科医によると、通常、気管に入れた管を抜いて呼吸が安定した後は、SpO2が95%程度まで落ち込んだらアラームが鳴るように機材をセットし、看護婦が定期的に監視する必要がある。

 一般的に、脳に血液が送られなくなって3、4分以内に蘇生処置を取らないと、脳が危険な状態になるとされる。枚方市民病院の関係者は「もっと早く処置していれば、男性患者は植物状態にならずに済んだ可能性がある」と指摘している。

 看護記録は、医師が書くカルテとは別に、看護婦が患者ごとに体温や血圧、投薬などの内容を細かく記録しておく書類。

東京医科歯科大病院で医療ミス 入院患者がこん睡状態に

2000.06.02(21:52) asahi.com
 東京医科歯科大学医学部付属病院(東京都文京区湯島1丁目、沼野藤夫院長)は2日、20代の入院患者に対して主治医が常用量を大幅に超える精神安定剤を誤って投与、呼吸停止による重い脳障害を起こしていると発表した。沼野院長は記者会見で、「主治医の思い込みによる処方ミスを薬剤師が見逃すなど、ミスが重なった」などと話した。同病院は同日、事故の経緯を文部省に報告し、警察にも連絡した。

 病院の説明では、患者は5月9日に首の手術を受けた。経過は良好だったが、「よく眠れない」と訴えたため、主治医が同14日、睡眠を促すための精神安定剤「デパス」を処方。その際、0.5ミリグラムとすべきところを、誤って10倍の5ミリグラムとした。

 患者は、同日午後9時前に薬を服用。15日午前零時になって、呼吸が止まっているのを巡回の看護婦が見つけた。手当てで心拍などは戻ったが、重い脳障害の状態になった。現在は、自発呼吸はなく、深いこんすい状態という。

 デパスには呼吸を抑制する副作用がある。

 同病院は通常、薬を処方する際にコンピューターシステムを使っており、常用量を超えると警告が出る。しかし、14日は日曜日だったため、主治医はシステムが動いていないと思い込んだ。助手の研修医に、手書きで処方せんを出すように指示。その際に、誤った内容を伝えた。

 研修医は今春、医師国家試験に合格したばかりで、そのまま処方せんに記入。処方せんを受け取った薬剤師も、常用量を大幅に超えていることに気づかず、調剤した。通常は2人いる薬剤師が、その日は1人しかいなかった。

 同病院は事故後、薬の処方に当たってはすべてコンピューターシステムを通すこととした。人手が少なくなる夜間は薬の処方を必要最小限にし、薬の量も厳重にチェックするよう指示しているという。

 同病院は事故後すぐに家族に説明、24日に沼野院長が謝罪した。その後、国立大学医学部付属病院長会議の作業部会が5月中旬に発表した事故対策に基づいて、家族の了承を得て自ら公表したとしている。

広尾病院の元院長と都幹部を起訴 消毒液注射事故で

2000.06.01(21:23)asahi.com
 東京都渋谷区の都立広尾病院で昨年2月、主婦が誤って消毒液を注射され死亡し、病院側が警察への届け出を遅らせたとされる事件で、東京地検は1日、岡井清士元院長(64)と、同病院を監督する立場だった都病院事業部の秋山義和元副参事(51)を医師法(異状死体等届け出義務)違反の罪で東京地裁に在宅のまま起訴した。主治医(41)も同罪で東京簡裁に略式起訴された。医師の届け出が遅れたことを理由に公判請求するのは極めて異例で、組織的な「事故隠し」の刑事責任が法廷の場で問われることになる。

 岡井元院長は虚偽の内容の死亡証明書を作成したとして虚偽有印公文書作成・同行使の罪でも起訴された。この事件では合わせて9人が書類送検され、同地検はこの日、消毒液を注射した看護婦2人も業務上過失致死罪で起訴し、残り4人については不起訴処分とした。

 起訴状や調べなどによると、同病院で左中指の手術を受けた千葉県浦安市の主婦永井悦子さん(当時58)は昨年2月11日午前9時すぎ、生理用食塩水と間違って消毒液を点滴され、死亡した。

 岡井元院長はその直後、点滴ミスがあったことを主治医から報告を受け、翌朝に主治医らを集めて協議し、都衛生局に電話で報告した。その後、秋山元副参事が病院に電話し、元院長に警察への届け出をしばらく待つよう指示。24時間以内に警察に届けなかったとされる。

 さらに、岡井元院長は3月になって、永井さんの死亡証明書を作成する際、死因の「病死及び自然死」の欄に丸印をつけるなどして遺族に渡したという。

    ◇

 岡井元院長らの起訴を受けて、永井さんの夫の裕之さん(59)は記者会見し、近く損害賠償請求訴訟を起こすことを明らかにしたうえで「医療現場の密室性が問題となっている中で起訴は有意義だと思うが、気持ちは晴れない。昨秋に岡井氏らと面会した時も、妻の死の責任を認める言葉はなかった。何も変わっていないので妻にまだ報告する気になれない」と話した。

千葉の病院で透析患者が死亡、2看護婦のミスが重なる

2000.05.28(21:49)asahi.com
 千葉県東金市台方の県立東金病院(平井愛山院長、191床)で、人工透析を受けた男性患者(65)の血管に空気が入って死亡した医療事故で、病院の調査の結果、事故は2人の看護婦が別々に起こしたミスが重なって起きたことが28日、わかった。

 千葉県警東金署によると、男性の死因は、血管に空気が入った「空気塞栓(そくせん)」だった。

 同病院の調査によると、男性患者には、動脈からの血液に人工透析を施して静脈へ戻す装置と、静脈に抗生剤を点滴するための装置が取り付けられていた。男性の人工透析終了後、50歳代の看護婦が点滴を開始。この際、誤って透析装置の血液ポンプを作動させ、空気がチューブ内に送り込まれた。ただ、通常の手続き通りにチューブを鉗子(かんし)で挟んでいたため、この時は空気はチューブ内にたまっていた。

 ところが、担当を引き継いだ40歳代の看護婦が、チューブ内に空気がたまっていたかどうかを確認せずに、鉗子をはずした結果、空気が静脈内へ流れ込んでしまったという。

 平井院長は「単純なミスが重なった。全国の透析患者に不安を与えないよう、防止策をしっかりとっていく」と話している。

点滴ミスで女性が死亡 千葉県立佐原病院

2000.05.28(19:03)asahi.com
 千葉県佐原市の県立佐原病院(竜崇正院長)に入院していた女性(当時86)が今年2月、点滴中に首の静脈が破れ、出血多量で死亡していたことが28日までに分かった。県警は業務上過失致死の疑いもあるとみて、事情を聴いている。

 同病院によると、2月28日、女性が食欲がなく衰弱していたため、内科医が栄養剤を点滴しようと首の静脈にカテーテルを入れた。その後、女性の血液中の酸素の値が基準を下回ったことに看護婦が気付いた。内科医が調べたところ、カテーテルが静脈を突き破って体内で出血を起こしており、女性は翌日午前1時20分ごろ、出血多量で死亡した。

 女性は肝膿瘍(のうよう)で別の病院に入院していたが併発した肺炎が悪化し、佐原病院に入院していたという。

人工透析中の男性死亡 装置誤作動の疑い

2000.05.26(23:32) asahi.com
 千葉県東金市台方の県立東金病院(平井愛山院長、191床)に腎臓病の治療のため入院していた茂原市の60歳代の男性が25日夕、血液の人工透析を受けた直後に容体が急変し、約2時間後に死亡していたことが26日、分かった。病院側は透析治療をしていた看護婦が透析装置を誤作動させ、患者の体内に空気が入って死亡した可能性が高いと認め、遺族に謝罪した。病院から届け出を受けた千葉県警東金署は、業務上過失致死の疑いもあるとみて関係者から事情を聴いている。

 26日、記者会見した病院側によると、この患者は約2年前から人工透析などの治療を受け、余病を併発して23日から短期入院していた。

 25日は朝から透析を受け、午後3時ごろ、透析終了後の余病治療のための抗生剤の点滴を受けたが、その際に看護婦の呼びかけにも応じないなど異変が起き、午後5時すぎに死亡した。東金署によると、司法解剖した結果、死因は血管に空気が入ったことによる「空気塞栓(そくせん)」だった。この看護婦は透析経験5年8カ月だった。

医療事故情報センターが10周年で記念集会

9:23p.m. JST May 20, 2000 asahi.com
 医療事故で患者側に立つ弁護士の全国的なネットワーク「医療事故情報センター」(事務局・名古屋市、加藤良夫理事長)が20日、名古屋市で10周年記念の集会を開いた。近年、高齢者の医療事故が増える傾向にあることや、医療過誤訴訟の原告の4割が弁護士の対応に不満を持っていることが報告された。原告勝訴の率が上昇していることに伴って訴訟の数も増えており、大きな病院ほど事故が起こりやすい傾向も報告された。

 医療過誤原告の会(本部・長野市)の近藤郁男会長によると、会が発足した10年前では、陣痛促進剤による副作用など産婦人科の事故の相談が多かったが、ここ2年ほどは過去にはなかった高齢の患者の医療事故が70件あり、増えつつあるという。

 加藤理事長は、患者救済や事故の再発防止に取り組む法人組織「医療被害防止・救済センター」構想を提案。福島雅典・京都大大学院教授は、病院に治療成績の公開や事故防止策の強化を求める「医療の質管理法」を制定するよう、運動を進めると明らかにした。

病院側に5000万円賠償命令

2000年5月19日 17時36分共同
 埼玉県越谷市の旧「せんげん台病院」に入院、夫が死亡したのは「医師の誤診と投薬ミス」が原因として、同市の自営業男性=当時(65)=の遺族が、病院を経営していた医療法人純真会と担当医に計約6600万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、浦和地裁(滝沢孝臣裁判長)は19日、病院側に約5000万円を支払うよう命じた。

ニアミスの報告制度導入へ

2000年5月16日 19時29分共同
 医療事故の防止対策を検討していた国立大学医学部付属病院長会議の作業部会は16日、中間報告をまとめた。医療現場から事故や「ニアミス」の報告を受けて分析し、改善策などを現場に還元する制度の導入や病院長をトップとする「事故防止委員会」の設置を提言、安全管理上の問題点を洗い出すためすべての医療現場での緊急総点検も求めている。

体外受精卵を別人に移植

2000年5月14日 11時32分共同
 石川県内の不妊治療を専門に行うクリニック(診療所)で1995年3月、体外受精させた受精卵を、富山県在住で当時20代後半の別の女性患者に移植するミスがあったことが13日分かった。女性は妊娠しなかった。診療所の院長によると、名字が似ていた2人の女性を取り違えたという。83年から行われている国内の体外受精で、取り違え事故が発覚したのは初めて。

医療事故減少は2割以下

2000年5月9日 20時34分 共同
 「看護婦らの9割がこの1年間に職場で医療事故の防止策が取られたと答えたが、事故が減ったと感じているのは2割以下」。東京都内の医療機関で働く看護婦ら医療労働者でつくる東京医療関連労働組合協議会は9日、看護婦らを対象とした医療事故アンケートの中間報告を発表した。

 アンケートは4月に実施。看護婦ら約5300人から回答があった


誤って気管に栄養剤注入

2000年4月25日 15時59分
 島根県宍道町の特別養護老人ホーム「ゆめハウス」の職員(21)が、男性入所者(70)の気管に誤って栄養剤を注入、重体になっていたことが、25日分かった。
 職員は22日午前7時半ごろ、男性に栄養剤を注入する際、腹部からしなければならないのに誤って気管から注入。看護婦が誤りに気付いて注入を停止したが、栄養剤は既に肺に達しており、市内の病院で治療を受けている。

医療事故が昨年1月から全国で43件、30人死亡

11:27p.m. JST April 24, 2000
 輸血ミスや患者の取り違え、人工呼吸器の停止などの医療事故が、昨年1月から今月12日までに公表されただけでも全国で計43件にのぼり、30人が死亡していたことが24日、厚生省のまとめで分かった。同日開かれた中央薬事審議会の特別部会で報告された。

 30人の死亡例には、末期がんの患者や事故前からの症状悪化で事故との因果関係が不明なものも一部含まれているが、業務上過失致死の疑いで医師が捜査を受けている事例もある。

 死亡例では、品川美容形成外科クリニック(東京都)で昨年5月、わきが治療手術の際に麻酔を通常より多く投与、女性が12日後に死亡した。また、点滴の速度を調整するポンプが外れたまま点滴(昨年8月、帝京大医学部付属病院=東京都)▽股(こ)関節手術の際に誤って静脈を切断(今年1月、原整形外科病院=同)▽主治医が抗がん剤の量を間違えて投薬(昨年12月、大阪赤十字病院=大阪府)▽医師の指示書を婦長が院内処方せんに書き写す際に間違え、通常使用量の10倍のモルヒネを投与(今年3月、済生会川口総合病院=埼玉県)などの例があった。

 厚生省に対する事故の報告は医薬品の副作用なら義務づけられているが、医療ミスなどについては義務がない。医療関係者は「事故が急に増えたわけでなく、社会的な関心の高まりで、表面化する事例が増えたのではないか」とみている。

 厚生省は相次ぐ医療事故を受けて先月下旬、医療関係団体などを集めて医療安全対策連絡会議を開き、安全管理の徹底を厚相が初めて要請した。

コスト優先で安全犠牲に

2000年4月19日 17時27分
 大学病院で医療事故が続発していることから文部省は19日、東京都千代田区の国立教育会館に国公私立79大学の付属病院長を集めて緊急会議を開き、事故防止策の徹底を求めた。病院長側からは「医薬品メーカーはコストを下げるために違う薬品にも同じ容器を使い、識別のための色分けなども十分でない。適正な措置を取っていれば、事故には至らなかったケースもある」との意見が出された。

東北大病院のミス認定、1億余万円賠償を命令 仙台地裁

10:28p.m. JST April 13, 2000
  仙台市の東北大医学部付属病院で耳の神経の手術を受けて深い昏睡(こんすい)状態になったのは、投薬ミスのためだとして、仙台市内の元看護婦の女性(30)の家族が、国などを相手取り、約1億6300万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が13日、仙台地裁で言い渡された。梅津和弘裁判長(市川正巳裁判長代読)は女性側の主張をほぼ認め、国と麻酔医に計約1億1860万円の支払いを命じた。

 判決によると、女性は1994年5月25日、同病院で耳の神経の腫ようを摘出する手術を受けた。多量の出血が予想されたため、麻酔医は低血圧状態を維持できる種類の麻酔剤を投与し、その後、上昇した心拍数を抑える薬を与えた。この結果、急激に血圧が低下するなどして低酸素脳症になり、自発呼吸ができなくなった。

 梅津裁判長は、心拍数を抑えるために投与した薬は、低血圧を維持する麻酔剤と併用すると血圧低下の作用が強まることがあると注意書きにあると指摘。「著しい血圧低下を誘発する危険を予見できたのに、安易にこの薬を投与した」と、麻酔医の責任を認めた。

  同病院側は「深昏睡の原因が薬の投与と断定できない」などとして、争ってきた。判決を受け同病院では、「判決文をよく読んで今後の対応を決めたい」としている。

東海大病院の点滴ミス事故で神奈川県が立ち入り検査

01:38a.m. JST April 12, 2000
 東海大学医学部付属病院(神奈川県伊勢原市)で、入院中の女児(1年6カ月)が、静脈に点滴するチューブに内服液を注入されて死亡した事故で、神奈川県は11日、病院の立ち入り検査をした。今回の初歩的ミスには病院の事故防止体制そのものを問題視する見方が広がっている一方、「どこでも起こりうる」との声もあがる。同病院は、高度先進医療を提供できると厚生省に認められた「特定機能病院」の1つ。昨年から特定機能病院の医療事故が相次いだため、今月から3カ月以内に厚生省に病院の安全管理体制について報告することにもなっていた。

 今回の事故は、点滴薬と内服薬を注入する注射器の色は別にしていたものの、「三方活栓」という切り替え装置の方には色などによる区別がなく、誤注入を避けられなかった。

  ほかの病院ではどんな対策がされているのか。

 昨年2月に消毒剤を誤って患者に点滴してしまい死亡させた都立広尾病院では、事故を契機に注射器だけでなく三方活栓の色も点滴用は赤、内服用は黄色に分けている。装置自体の大きさも違うものを使っている。横浜市立大付属病院は輸入製品を使い、小児科用の三方活栓も注入口の内径の違うものを使用している。

 昨年12月に入院患者が通常の8倍の量の抗がん剤を投与され、副作用で死亡した大阪赤十字病院(大阪市天王寺区)は点滴のチューブの注入口付近に色の異なるテープを巻き、複数の人間がチェックするようにした。日大板橋病院(東京都板橋区)では、チューブの色の区別のほかに、用途をフェルトペンで記している。神奈川県立の7病院のうち6病院は、東海大病院同様、注射器の色で区別したうえで、点滴薬などの注入部分から体への挿入部分まで、指でなぞってチューブの区分を確認するなどの約束にしている。

患者にモルヒネ誤投与

2000年3月30日 17時10分
 埼玉県川口市西川口の埼玉県済生会川口総合病院(原沢茂院長)で、末期がんの治療で入院中の無職女性(44)が、痛み止めのモルヒネの量を間違えて投与され、2日後に死亡していたことが30日分かった。川口署によると、誤投与と死亡の因果関係については不明だが、業務上過失致死に当たる可能性もあるとみて関係者から事情を聴いている。

県に3400万円賠償命令

2000年3月24日 14時23分
 愛知県がんセンターに入院中、臨床試験(治験)との説明を受けないまま治験段階の抗がん剤を安全基準を超えて大量に投与され、主婦が死亡したとして遺族が愛知県などに約7100万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が24日、名古屋地裁で言い渡された。

 高橋勝男裁判長は愛知県に3400万円の賠償を命じた。高橋裁判長は「医師が主婦に治験であると説明したとは認められない」と述べた。

薬剤の誤投与で患者死亡

2000年3月21日 12時54分
 札幌市の中村記念病院で1998年1月、入院していた末期がんの男性患者=当時(72)=の流動食用のチューブに看護婦が誤って点滴用の抗がん剤などの薬を入れたため患者の容体が急変、死亡していたことが21日分かった。病院の桜井事務長は同日早朝の取材では「流動食を点滴した」と話していたが、その後の会見で「抗がん剤などの薬を流動食用のチューブに入れたため事故が起きた」と述べた。

医療ミス770件あった

2000年3月19日 16時22分
 大阪府八尾市の医真会八尾総合病院(森功院長、374床)は19日までに、院内の医師や看護婦らの報告に基づいた調査で1997年11月から今年2月までの間に関連6施設を含めミスが770件、ミス寸前のケースが408件あったことを、明らかにした。医療機関が自主的に医療ミスの実態を公表するのは極めて異例で、同病院は「医療事故の防止に役立てたい」としている。近く調査結果を専門誌にも掲載する予定だ。

医療事故防止策を検討

2000年3月14日 16時20分
 横浜市立大病院で昨年1月に起きた患者取り違え事故以来、重大な医療事故が相次いでいることを受け、日本医師会(坪井栄孝会長)など医療関係6団体は14日、東京都内で緊急合同会議を開き、事故の再発防止に向けて「原因を徹底的に究明し、国民の不安を払しょくするための具体的な対策を明示することを決意した」とする共同声明を発表した。

心臓病の女児を「誤診」

2000年3月13日 20時34分
 心臓病を患った長女(2っ)が、国立旭川医科大病院で「風邪」と誤診され後遺症が出たとして、同市の夫婦が13日までに、国に約6170万円の損害賠償を求める訴えを旭川地裁に起こした。訴状によると、長女は先天性の心臓疾患で、1997年に旭川医科大病院で手術を受けた。手術後も治療を続けていたが、98年5月から1カ月以上にわたり原因不明の高熱に侵され、同病院の医師に風邪と診断された。

大阪赤十字病院を捜索

2000年3月11日 13時15分
 大阪市天王寺区の大阪赤十字病院(清水達夫院長)で、がんで入院していた大阪府内の男性患者(63)が予定量の8倍の抗がん剤を誤って投与され副作用で死亡した問題で、大阪府警天王寺署は11日午後、業務上過失致死の疑いで同病院を家宅捜索した。

事故病棟だけがベッド下に

2000年3月8日 18時57分
 京都大病院で人工呼吸器に注入する水とエタノールを間違え、女性患者(17)が中毒死した事故で、事故が起きた病棟だけが、人工呼吸器に注入する蒸留水の容器をベッドの下に置いていたことが8日、明らかになった。同病院は8日、事故発生防止委員会を設置。病棟で異なる看護婦の作業手順を見直し、統一のマニュアルを作成するなど再発防止策を取ることを決めた。

うつぶせ寝で乳児窒息死、両親が医師らを賠償請求・告訴

3:13p.m. JST March 11, 2000
 東京都立母子保健院(東京都世田谷区)にぜんそくで入院した乳児が、うつぶせ状態でたんを詰まらせて窒息死する事故があり、両親が「寝返りがちゃんとできないので、うつぶせ寝にしないよう入院時に再三求めたのに、医師や看護婦は注意義務を怠った」として、都を相手に8700万円余の損害賠償請求訴訟を東京地裁に起こしていることが分かった。両親は、担当医師らを業務上過失致死容疑で警視庁世田谷署に告訴している。

 死亡したのは、東京都調布市若葉町2丁目、鈴木正三さん(29)と妻自由里さん(31)の次男、大己ちゃん(当時4カ月)。

  訴状によると、1998年10月20日、大己ちゃんはぜんそく性気管支炎で同院に入院した。その際、鈴木さんらは「寝返りが出来るようになったばかりで、自分でもとの体勢に戻ることが出来ない」と医師や看護婦らに注意を促し、うつぶせ状態にしないよう再三頼んだ。ところが、翌21日朝、うつぶせ状態でぐったりしているのを看護婦が見つけ、間もなく死亡が確認された。

  都監察医務院の行政解剖で、たんがつまったことによる窒息死と分かった。

 鈴木さんらによると、病院側は警察に届けようとせず、副院長と担当医師が「SIDS(乳幼児突然死症候群)の可能性もあるので、病院で解剖させてほしい」と繰り返したという。

 鈴木夫妻は「病院側はSIDSを口実に病理解剖ですませて、医療事故をうやむやにするつもりだったのではないか」と話している。

入院中にうつぶせ寝で死亡、乳児の両親が都に賠償請求

8:32p.m. JST March 06, 2000
  東京都立八王子小児病院(八王子市台町、川口治夫院長)に入院中の生後39日の長女が死亡したのは、病院側がうつぶせ寝の危険性に十分な注意を払わなかったためだとして、同市内の高校教諭河野明さん(49)と妻啓子さん(48)が6日、同病院の設置者である都を相手取り、総額約7770万円の賠償を求め、東京地裁八王子支部に提訴した。

 訴えによると、河野さん夫婦の長女志保ちゃんは1998年1月17日夕、軽い胃の変形で同病院に入院。病院側はうつぶせ寝による治療中に十分な注意を払わなかったために、翌18日未明、窒息死させた。

 記者会見した河野さん夫婦は「乳児のうつぶせ寝は危ないからと医師に言われて、安心できると思って入院させたのに、病院側は『乳幼児突然死症候群(SIDS)で責任はない』と言うばかり。娘がなぜ死んだのか、裁判の場で明確にしたい」と語った。

 都立八王子小児病院の話 「訴状を見てから、よく検討して対応していきたい」(時事)

生体腎移植で「術後管理に過失」 東京医大に支払い命令

9:14p.m. JST February 28, 2000
 東京医科大学八王子医療センター(東京都八王子市)で、父親から腎臓の生体間移植を受けた次男が死亡したのは「担当医の術後管理に過失があったためだ」として、両親が東京医科大を相手に約8900万円の損害賠償を求めた訴訟で、東京地裁は28日、医師の過失を認め、同大に総額6880万円余の支払いを命じる判決を言い渡した。藤山雅行裁判長は腎臓を提供した父親について「治療に役立つという期待も法的保護に値する」と述べ、個別の賠償も含めて認めた。原告側代理人によると、結果的に移植が成功しなかった場合に臓器提供者(ドナー)の精神的苦痛に対する賠償を認めたケースは初めてという。

 訴えていたのは、東京都小金井市前原町3丁目、会社経営永井忠一さん(56)と妻の安子さん(55)。慢性腎不全患者だった次男の文敏さん(当時23)は1994年7月14日、同医療センターで、忠一さんから摘出した腎臓の移植手術を受けたが、翌日から意識がなくなり、26日、「肺水腫」で死亡した。

 判決で藤山裁判長は、看護記録や専門家による鑑定結果から死因を「手術後の輸液・血液製剤の過剰投与による肺水腫」と認定したうえで、担当医の過失について慎重に検討。担当医について「腎移植手術の経験が豊富で、肺水腫発症の可能性を念頭に置き、血液製剤などの投与を制限することができ、かつそうすべき注意義務を負っていた」と述べ、「肺水腫の発症原因は不明なうえ、発症は急激で、事前の予測は不可能」とする同大側の主張を退けた。

医療ミス認め約1億円賠償

2000年2月24日 15時33分
 山形県鶴岡市の市立荘内病院で1997年、同市の男性会社員(46)が誤った点滴治療で意識障害などを引き起こすウェルニッケ脳症になり、同病院が医療ミスを認めて賠償金9750万円を支払うことで男性と合意していたことが24日分かった。

点滴チューブはずれ入院患者が死亡 高知赤十字病院

1:30p.m. JST February 19, 2000
 高知市新本町2丁目の高知赤十字病院(開発展之院長)で19日、入院中の女性患者(69)の右太ももに挿入されたカテーテルと点滴用チューブの接続部分がはずれ、出血死していたことが明らかになった。同病院は高知署に連絡するとともに、接続部分がはずれた詳しい原因を調べている。

 同病院によると、16日午後1時ごろから看護婦が患者の右太ももの静脈に挿入されたカテーテルと点滴チューブを接続、高カロリー補液などの点滴を開始。17日午前1時10分ごろ、患者の呼吸や心臓が停止しているのに気付いた。その際、カテーテルと点滴チューブの接続部分がはずれ、大量の出血をしていたという。患者は集中治療室に移されたが、同11時10分すぎに死亡した。死因は出血性ショックという。接続部分はチューブをカテーテルに差し込む仕組みになっており、かなりの力を入れないと抜けないようになっているという。

管を1年以上も体内に放置

2000年1月29日 19時53分 共同通信社
 横浜市大医学部付属市民総合医療センター(同市南区、山本勇夫病院長)が、1998年に直腸がんの手術をした女性患者の体内に治療用の管を誤って入れたまま、1年以上も放置していたことが29日、分かった。女性患者は命に別条はなく、既に退院しており、希望で来月、再手術して管を摘出する予定という。

国立病院で呼吸器の電源切れ、少女が死亡 松江

00:59a.m. JST January 23, 2000
 22日午前11時40分ごろ、松江市上乃木5丁目、国立療養所松江病院(中井勲院長)の内科・小児科病室で、入院中の島根県八束郡内の小学校6年の少女(12)がぐったりしているのを看護婦が見つけた。医師らが手当てをしたがすでに心肺停止状態で、まもなく死亡を確認した。自発呼吸の弱い少女に取り付けられていた人工呼吸器の電源が切れており、松江署は医療過誤による業務上過失致死の疑いがあるとみて23日に遺体を司法解剖し、詳しい死因を調べる。

 同署の調べや同病院の説明によると、少女は先天性の脂質代謝異常のため1998年11月から同病院に入院していた。

 同日午前9時50分ごろ、担当の准看護婦が少女の体をふくなどの世話をするために、いったん人工呼吸器のスイッチを切ったが、その後、入れ直したかどうかは記憶にないと話しているという。同病院は再始動させるのを忘れた可能性が高いとみており、少女の家族に説明して謝罪した。

 病院によると、毎日朝体をふく世話を看護婦が交代でしてきたが、スイッチを入れたまま呼吸器をはずすと約15秒後に警告音が鳴るため、習慣的にスイッチを切っていたという。人工呼吸器の扱いについては特にマニュアルは作成していなかった。

 少女は手足がまったく動かず寝たきり状態で、自発呼吸の力も弱いため、気管を切開して人工呼吸器を常に装着していた。

 中井院長は「人為的な呼吸器の操作ミスだった。家族には、まことに申し訳なく、謹んでお悔やみ申し上げますと伝えた」と話した。

 ◆河村博江・厚生省国立病院部長の話 国立病院としてあってはならない事故だ。死亡事故を起こしてしまったことは、患者・家族に申し訳ない気持ちだ。詳しい原因は警察が捜査しているので、その推移を見守りたい。

輸血ミスで書類送検へ

2000年1月12日 12時53分 共同通信社
 JA岐阜厚生連運営の岐北総合病院で1998年9月、看護婦らの輸血ミスから入院中だった岐阜県武芸川町の会社員の男性患者=当時(64)=が死亡した事故で、岐阜県警は12日までに、近く看護婦2人を業務上過失致死の疑いで書類送検する方針を固めた。主治医(37)については引き続き検討する。

女児死亡事故の循環器病センター関係者を書類送検へ

01:57a.m. JST January 12, 2000
 国立循環器病センター(大阪府吹田市)で昨年11月に心臓手術を受けた6歳の女児が、心筋保護剤が混合されていない蒸留水を投与され、死亡した事故について、大阪府警吹田署は11日、業務上過失致死容疑で同センターを家宅捜索した。府警は手術の際に薬剤の投与を担当した技師(臨床工学技師)らにマニュアル違反があった可能性が強いとみており、同容疑で関係者を書類送検する方針。

 同センターによると、女児は昨年11月末、生まれつき心臓の壁に開いている穴をふさぐ手術を受けたが、手術直後から心臓の動きが悪い状態が続いた。補助人工心臓をつけるなどの治療を受けたが、12月末に脳こうそくで死亡した。

 同センターでは通常、1人の技師が心臓を保護する働きを持つ心筋保護剤と蒸留水を混合したあと、注入装置に充てんするよう指導している。しかし、女児の手術の際には、技師は蒸留水のみを注入装置に充てんし、心筋保護剤と混合する作業は、別の技師にゆだねていたという。

 府警は、技師の行為が同センターの指導に背いていた点を重視。この日、吹田署員4人を同センターに派遣し、関係書類を押収した。

手術中の薬剤調合ミスで女児死亡 国立循環器病センター

1:28p.m. JST January 04, 2000
 国立循環器病センター(大阪府吹田市)で昨年11月にあった女児(6つ)の心臓手術で、技師の引き継ぎの不徹底から手術中に本来使わなければならない薬剤が使われず、手術後に容体が悪化して約1カ月後に死亡していたことが4日、明らかになった。同センターの山口武典病院長は「薬剤の混合ミスが死亡の引き金になっている可能性が高く、申し訳ない」としている。

 同センターによると、女児は、昨年11月末に生まれつき心臓の壁に開いている穴をふさぐ手術を受けた。手術直後から心臓の動きが悪い状態が続いたため調べたところ、手術時に使用が予定されていた心筋保護剤が使われていないことがわかったという。センターは、補助人工心臓をつけるなどの治療をしたが、女児は12月末に脳こうそくで死亡した。

 心筋保護剤は心臓の血管に注入し、心臓をすみやかに止めて心臓を保護する働きを持つ。通常は薬剤と蒸留水を混合したあと、注入装置に充てんされる。ところがこの日は、たまたま手伝いで入った技師(臨床工学士)が、蒸留水だけを先に充てんして別の技師に交代。引き継いだ技師が、混合が済んだものとして注入したという。

 センターでは、心筋保護剤と蒸留水の混合と、注入装置への充てんは技師1人がすべて行うように指導している。1人目の技師は、心筋保護剤は混合後時間がたつと使えなくなることから、指導に反して蒸留水だけを先に充てんし、2人目の技師に「混合を頼む」と引き継いだつもりだったという。2人目の技師は「聞いていない」と話しているという。技師2人の現場経験は7カ月程度だった。

 センターは今後、混合・充てんは1人ですることを徹底し、手術直前に注入される液の成分を検査し、結果を医師が確認するなどの対策を取ったという。山口病院長は「救命に努力してきたが、重大な結果を招いてまことに申し訳ない。再発防止に万全を期したい」と話している。

 同センターは臓器移植法施行後2例の心臓移植手術をするなど年間600例以上の心臓手術を手がけており、小児の心臓手術でも国内の中心的な病院になっている。

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