TOPIC No.5-13 医療ミス

Index
a. 1999年度、b. 2000年度01-06月、c. 2000年度07-12月、d. 2001-2002年度 、e. 2003-2004年度、f. 2005-2006年度
01 医療過誤 YAHOO!ニュース
02 医者にメス -患者のための医療を求めて-
03 医療事故情報センター--弁護士と医療スタッフと医療被害者を結ぶヒューマンネットワーク-
04 医療事故調査会 医療事故を防ぐために
05 (財)日本医療機能評価機構
06 市民のための医療事故相談室
07 MEDIO(医療事故市民オンブズマン・メディオ
08 国立弘前病院 放射線医療ミス byWeb東奥


TOPIC No.5-13e 2003-2004年度/No.5-13f 2005-2006年度

管の挿入ミスで3人死亡 日本医療機能評価機構集計

2007年06月27日 中国新聞ニュース

 医療事故や、事故につながる恐れのあるヒヤリ・ハット事例の収集、分析をしている日本医療機能評価機構(東京都千代田区)は27日、「ドレーン」と呼ばれる医療用の管に関連する事故が、2004年10月−今年3月に約570医療機関から寄せられた報告の中に計38件あり、うち3件で患者が死亡していたと発表した。

 一方、昨年1年間に約250医療機関から報告のあったヒヤリ・ハット事例は、前年より約1万2700件増の計19万5609件に上った。同機構は今後、内容を詳しく分析する。

 同機構によると、ドレーンは患部にたまった血液や体液を体外に排出するための管で、金属製のとがった部分を胸部や腹部に刺して挿入して使用。38件のうち、誤って臓器を傷つけるなど挿入時の操作ミスが24件と最も多かった。

肺にチューブ誤挿入、70歳女性死亡 新潟市民病院

2006/09/23 The Sankei Shimbun

 新潟市の新潟市民病院で、看護師が入院中の女性患者(70)の肺に誤って栄養チューブを挿入したため、女性が肺炎症状を起こして死亡していたことが23日、分かった。同病院は誤挿入と死亡の因果関係を認め遺族に謝罪した。

 同病院などによると、女性は8月上旬に救急車で搬送されて入院。今月14日、看護師が鼻から食道を通して胃に挿入する栄養チューブを、間違って気管から肺へ通し、栄養剤が肺に入った。女性は肺炎の症状を起こし、救命措置がとられたが21日に死亡した。

 看護師はチューブが正常に挿入されたかどうか音を聞くなどして確認する作業をしたが、誤挿入に気が付かなかったという。

看護師が点滴ミス、入院の63歳死亡…愛媛の病院

2006年06月25日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 愛媛県八幡浜市の市立八幡浜総合病院は24日、内科の看護師(21)が、濃度を薄めて点滴でゆっくりと投与すべき点滴用塩化カリウム溶液の原液を一気に注入したため、入院中の男性患者(63)が死亡したと発表した。

 県警八幡浜署は、看護師らから事情を聞き、業務上過失致死容疑で捜査を始めた。

 同病院によると、男性は脳梗塞(こうそく)と糖尿病などの合併症で入院した。栄養補給などのため、主治医が看護師に、塩化カリウム原液とビタミン剤などを混ぜた上、24時間をかけて点滴するよう指示した。ところが看護師は23日午後5時40分ごろ、誤って原液だけを側管に注入したという。このため塩化カリウムが高濃度のまま体内に入ってしまい、男性の容体が急変。蘇生(そせい)治療を受けたが、同日午後10時10分ごろ、心不全で死亡した。

 藤田繁院長はミスと死亡との因果関係を認め、謝罪した。

緑膿菌の院内感染で1人死亡…都老人医療センター

2006年06月24日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 東京都は23日、都老人医療センター(板橋区)で昨年7月から12月にかけて、抗生物質の効かない多剤耐性緑膿(りょくのう)菌が入院患者5人に院内感染し、うち1人が死亡した疑いがあると発表した。

 同センターによると、死亡したのは77歳の男性肺炎患者。5人から検出された緑膿菌はいずれも遺伝子型が同じで、診療などを通して感染した可能性があるという。同センターの稲松孝思感染症科・研究検査科部長は「死亡した患者は抵抗力が落ちていた。緑膿菌は最近、多発傾向にあり、これからも警戒が必要だ」と話している。

患者取り違えなど事故18件 全国の医療機関

2006/02/18 The Sankei Shimbun

 旧国立病院や民間病院など全国560の医療機関で、平成16年10月から18年3月までに、患者の取り違えといった医療事故が18件あったことが15日、財団法人「日本医療機能評価機構」(東京都千代田区)の集計で分かった。このうち3件は患者に障害が残る可能性が高い事故だった。

 報告書によると、18件のうち患者の取り違え事故は9件。うち血液型の異なる別患者の輸血用血液を誤って輸血した事故が2件あった。このうち1件の患者は障害が残る可能性が高いという。

 取り違えでは、別の患者の検査結果に基づき抗がん剤投与が行われたり、白内障手術で別の患者の眼内レンズが使用された事故もあった。

 残り9件は左右や部位を間違えた事故で、手術で穴を開ける場所を間違えたり、医師がレントゲン写真を左右逆に見て反対側に胸腔ドレーンを挿入した例もあった。

 事故には至らなかった「ヒヤリ・ハット事例」は昨年4月から半年間で343の医療機関から256件寄せられた。別の名前を呼ばれた患者が返事をしたことが原因となったケースも多かった。

広島市医師会に賠償命令 検査ミスでがん見落とし

2006/04/25 中国新聞ニュース

 広島市の臨床検査センターが細胞検査で子宮がんを見落としたため死亡したとして、同市南区の女性=当時(43)=の遺族が、同センターを運営する広島市医師会に計約一億二千万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、広島地裁は二十五日、医師会側の過失を一部認め、計六百万円を支払うよう命じた。

 能勢顕男裁判長は判決理由で、死亡との直接的な因果関係は認めなかったが「検査に誤りがなければ、原告が延命した可能性はあった」とし、適切な医療処置を受けられなかったことによる遺族の精神的苦痛を認めた。

 判決によると、女性は一九九五年四月と六月、出血したため臨床検査センターで検査を受けたが、センターはがん細胞を見落とした。別の病院で子宮がんと診断され、手術を受けたが再発、九八年一月に死亡した。

帝王切開のミスで死亡、医師逮捕 福島の県立病院

2006/02/18 The Sankei Shimbun

 福島県大熊町の福島県立大野病院で2004年12月、帝王切開した女性=当時(29)=が死亡した医療ミスで、富岡署は18日、業務上過失致死と医師法違反の疑いで執刀した医師、加藤克彦(かとう・かつひこ)容疑者(38)=大熊町下野上清水=を逮捕した。

 調べでは、加藤容疑者は04年12月17日、胎盤癒着で大量出血する可能性を知りながら、十分な検査や高度医療が可能な病院への転送などをせず帝王切開を執刀、癒着した胎盤を無理にはがし大量出血で福島県楢葉町の女性を死亡させた疑い。

 また女性の死体検案を警察署に届けなかった疑い。

 加藤容疑者は容疑の一部を否認、富岡署は「事故を警察に届けておらず証拠隠滅の恐れがあった」としている。

 病院側は「手術直後はミスという認識はなく、届けなかった」と話している。

 加藤容疑者は1996年に医師免許を取得、04年4月から産婦人科医として大野病院に勤務。病院の産婦人科医は加藤容疑者だけだった。

 富岡署は病院関係者から事情を聴き、加藤容疑者の上司らのかかわりなどを調べる。

 福島県は昨年3月に事故を公表。加藤容疑者の判断ミスを認め、遺族に謝罪し、昨年6月に加藤容疑者を減給1カ月の懲戒処分とし、病院長を戒告処分としている。

 富岡署は県の公表で事故を知り、昨年4月に病院を家宅捜索、18日には県病院局などを捜索した。

 大野病院は産婦人科を含む8診療科からなる総合病院。1951年に開設された。病床数は150床。(共同)

投薬誤り出産の男児死亡 警視庁、日大練馬病院を捜査

2006/02/06 The Sankei Shimbun

 日大練馬光が丘病院(東京都練馬区)で診療を受けていた妊娠中の女性(32)が昨年9月、誤った薬剤の処方を受け、出産した男児が死亡していたことが6日、分かった。警視庁捜査一課と光が丘署は医療ミスの可能性もあるとみて、業務上過失致死容疑で調べている。

 調べなどによると、女性は早産の傾向があったため同病院に入院し、昨年9月22日に退院したが、25日午後2時すぎに破水して自宅で出産。男児は別の病院に運ばれたが、翌日死亡した。

 病院は女性に、早産を防止するために子宮の運動を抑える「ルテオニン」という錠剤を処方していたが、退院時に流産や人工中絶後などに投与する「メテナリン」という子宮の収縮を促進する錠剤を誤って処方したという。

 同病院は「調査中なのでコメントできない」としている。(共同)

内部告発者が逆転敗訴 日本医科大の患者死亡事件

2005年11月09日 asahi.com

 手術で第1助手を務めた男性医師(47)が、死亡した患者の遺族や報道機関に「手術でミスがあった」と内部告発したために名誉を傷つけられたとして、日本医科大学(東京都文京区)と執刀医が、この医師を相手に損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が9日、東京高裁であった。江見弘武裁判長は、請求を棄却した一審判決を変更。「告発内容は真実ではなく、真実と信じる相当の理由もなかった」として違法性を認め、医師に計550万円の支払いを命じた。医師側は上告する方針。

 判決によると、同大付属病院で97年、あごの骨折を修復する手術を受けた20代の女性が2日後に急死。医師が、遺族や報道機関に「手術中にあごの骨を固定するワイヤがミスで脳に刺さった」などと証言。マスコミに大きく報じられた。

 江見裁判長は「報道で大学や執刀医の社会的評価は低下した」と認定。その上で、医師が根拠とした手術中のX線写真について「画像が不鮮明で、ワイヤが刺さっていると積極的に裏付けるものとは評価できない」と述べた。

駿河台日大病院で医療ミス、酸素チューブ使用法誤る

2005年10月24日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 駿河台日大病院(東京・千代田区)で今月4日未明、容体が急変して死亡した男性患者(58)に対し、担当した女性看護師が誤った形で酸素チューブをつないでいたことが24日、わかった。

 病院は医療事故と判断し、警視庁神田署と都に届け出るとともに、男性の死亡と事故に因果関係があるかどうか調べている。

 同病院によると、女性看護師は3日夜、脳出血で入院していた意識不明の男性患者を検査室に移動する際、気道を確保せずに酸素チューブをつなぐミスをしたという。この直後、男性の容体が急変し、呼吸困難に陥り、約8時間半後に死亡した。

 女性看護師はこの事故を報告していなかったが、今月20日に匿名のメールが日大医学部に送られて発覚。調査の結果、看護師がミスを認めたため、病院側は医療事故と判断したという。看護師は、報告をしなかった理由については、病院に説明していない。

 今回の事故を受け、小川節郎病院長は「(医療事故の)報告などのマニュアルが十分に機能せず、誠に遺憾だ。このようなことのないよう、診療充実に向け努力していく」とするコメントを発表した。

医療過誤:日野市立病院に損害賠償支払い命令 東京地裁

2005年10月24日 毎日新聞 Mainichi INTERACTIVE

 東京都の日野市立病院で03年、入院中の男性(当時53歳)が死亡したのは病院が適切な措置を怠ったためだとして、遺族が病院を設置する同市と担当医を相手取り、約1億4000万円の損害賠償を求めた訴訟で、東京地裁は24日、市側に計8154万円余の支払いを命じた。佐藤陽一裁判長(秋吉仁美裁判長代読)は「適切な措置を怠り、診療上の過失があった」と述べた。

 判決によると、男性は03年9月16日夕、のどの痛みを訴え同院で診察を受けたところ、「急性喉頭蓋炎(こうとうがいえん)」と診断され緊急入院。同夜に容体が急変し翌17日未明、死亡した。

 判決は、急性喉頭蓋炎の場合、のどが腫れて気道をふさぐため窒息死の恐れがあり、医師は確実に気道が確保されるようにし、患者から目を離さないよう経過観察する必要があると指摘。「担当医は、頻繁に患者の部屋を訪れ慎重に観察するよう看護師に指示していない。症状が急変することがないと軽信した」と述べた。【武本光政】

 日野市立病院の話 今後の対応は判決内容を見たうえで検討したい。

医療過誤訴訟:阪神2軍コーチの勝訴確定

2005年10月18日 毎日新聞 Mainichi INTERACTIVE

 阪神タイガースの元投手で2軍投手コーチの葛西稔さん(38)らが、兵庫県西宮市立中央病院で死亡した二男(当時8カ月)に適切な処置を施さなかったとして、市などに損害賠償を求めた訴訟で、最高裁第2小法廷(滝井繁男裁判長)は14日付で、市側の上告を退ける決定を出した。請求を棄却した1審判決を取り消し、約5200万円の支払いを命じた大阪高裁判決が確定した。

 2審判決(05年3月)によると、二男は97年1月、発熱して同病院に入院し、気道が狭くなるクループ症と診断された。翌月6日早朝に呼吸困難となり、医師が気管内に管を挿入するなどしたが、同日午後に死亡した。

 葛西さん側は、医師が必要な監視を怠り気道確保が遅れたと主張。1審は訴えを退けたが、2審は「速やかに処置していれば助かった可能性が高い」と判断した。【木戸哲】

酸素不足で患者死亡、タンク補給されず…長野の病院

2005年10月17日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 長野県千曲市の長野赤十字上山田病院(西沢啓治院長)は17日、人工呼吸器を使用していた重症肺炎患者1人が今月13日、酸素の供給不足のため死亡したと発表した。

 病院は千曲署に届け出るとともに、第三者による事故調査委員会を設けて調べる。

 病院によると、13日夕、この患者の呼吸器の酸素圧力が下がり、アラームが鳴った。血中酸素の低下や不整脈があり、看護師が救命処置を施したが、1時間後、急性呼吸不全で死亡した。

 調査の結果、屋外の液体酸素タンク(約2200キロ)の残量が20キロしかなく、十分な酸素が供給されていなかった。液体酸素は5日ごとに補給することになっていたが、9月29日から補給されていなかった。

 また、14〜17日に、酸素療法を受けていた肺炎やがんの患者6人(60〜80歳代)が死亡していた。病院は「6人とも血中酸素などに異常はなく、因果関係はない」とみているが、調査委員会で関連を調べる。

医療事故:人工呼吸器外れ、80代男性が重体 看護師不在の間に−−仙台・東北大病院

2005年10月16日 毎日新聞 Mainichi INTERACTIVE 東京朝刊

 仙台市の東北大病院は15日、宮城県内に住む80代の男性患者の人工呼吸器が外れる事故が起きたと発表した。男性は一時心肺停止状態に陥る重体で、集中治療室(ICU)で治療を受けている。同病院は家族に謝罪するとともに、厚生労働省や県警に報告した。里見進院長は「再発防止に努めたい」と話している。

 同病院によると、事故は13日午後6時前、患者ののどに差し込んだ気管切開チューブと、人工呼吸器の接合部が外れて警報が鳴っていることに、他の患者の様子を見に来た研修医が気付いた。

 普段は看護師が室内に常時いるが、この日は救急患者が相次ぎ、一時不在になっていた。午後5時25分に確認した際は異常はなかった。人工呼吸器は体を大きく動かすと外れることもあるが、男性は手足がマヒして首しか動かせないため、外れることは想定していなかったという。【山寺香】

 

医療過誤:函館赤十字病院に2770万円支払い命令

2005年10月13日 毎日新聞 Mainichi INTERACTIVE

 北海道の函館赤十字病院(赤沢修吾院長)で受けた手術による後遺症で障害が残ったとして福岡県二丈町の女性(56)とその夫(56)が、同病院を経営する日本赤十字社(東京都港区、近衛忠テル社長)を相手取り約9000万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が13日、函館地裁であった。大久保正道裁判長は原告の訴えを一部認め、2770万円の支払いを認めた。

 女性は00年1月、右脳へ続く主幹動脈にできた動脈瘤(りゅう)から出血し、再出血防止のための手術を同院で受けた。その際、動脈瘤か動脈が破裂し、止血に手間取ったため1時間以上に渡って約2400CC出血し、左脳にも障害が起きて四肢まひと意識障害になった−−などと訴えていた。【佐野優】

医療ミス:チューブ誤挿入で患者死亡 宮城の医師送検

2005年10月13日 毎日新聞 Mainichi INTERACTIVE

 胃に栄養食を投与するチューブを誤挿入し、入院していた男性患者(当時83歳)を死亡させたとして、宮城県警亘理署は13日、同県山元町の国立病院機構宮城病院(木村格(いたる)院長)の神経内科の男性医師(34)=昨年9月に退職=を業務上過失致死容疑で仙台地検に書類送検した。

 調べでは、医師は昨年8月12日、男性患者の腹部に開けた穴から胃に直接栄養食を送る「胃ろう」用チューブを交換したが、先端が胃に達したかどうか確認せずに栄養食を注入し、同月14日に腹膜炎で死亡させた疑い。

 患者はチューブ交換後徐々に容体が悪化したが、病院側は半日以上ミスに気付かなかった。この間も栄養食を送り続けたため腹腔(ふっくう)内にたまり、炎症を起こしたらしい。医師は交換作業の経験が数回しかなかった。【赤間清広】

投薬ミス訴訟:埼玉医大医療センターの敗訴確定 最高裁 2005年09月30日毎日新聞 Mainichi INTERACTIVE

 埼玉医大総合医療センター(埼玉県川越市)の投薬ミスを巡り、死亡した埼玉県鴻巣市の高校2年、古館友理さん(当時16歳)の遺族が、大学と元主治医ら6人に約2億3000万円の賠償を求めた訴訟で、最高裁第2小法廷(津野修裁判長)は30日、双方の上告を棄却する決定を出した。大学と医師4人に約8370万円の支払いを命じた2審判決が確定した。

 友理さんは00年9月、腫瘍(しゅよう)治療のため入院。主治医が週1回投与のはずの抗がん剤を1週間にわたって連続投与し、同年10月に多臓器不全で亡くなった。

 さいたま地裁は04年3月、大学と医師3人に約7680万円の賠償を命じたが「投薬ミスに気づいた後も隠し続けた」との遺族の主張は退けた。これに対し、東京高裁は05年1月、賠償額を約690万円増額し、抗がん剤を投与した研修医の責任も認め、医師2人が虚偽の死亡診断書作成したことに対する慰謝料支払いも命じた。【木戸哲】

診療ミスで後遺症、横浜市と担当医に1億円賠償命令

2005年09月29日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 横浜市救急医療センター(横浜市中区)の医師が適切な診察をしなかったため、同市内の男児(10)に全身まひと言語障害の後遺症が残ったとして、男児とその両親が慰謝料など約2億1800万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が29日、横浜地裁であった。

 小林正裁判長は医療ミスを認め、市と担当の小児科医に約1億円と、介護費用などとして毎月28〜56万円を支払うよう命じた。

がんと誤判定し肺切除 検体取り違え、60代男性

2005/09/22 The Sankei Shimbun

 国立がんセンター中央病院(東京都中央区)は22日、患者3人から採取した細胞を検査する際に検体を取り違え、60代の男性を誤って肺がんと判定、今月初旬に右肺の約3分の1を切除する医療ミスが起きたと発表した。

 男性は既に退院し、手術が必要ない慢性炎症性腫瘤(しゅりゅう)と分かった。同病院は、検査技師が検体に患者識別のシールを張り間違え、確認も怠ったのが原因とみている。外部の専門家を含む事故調査委員会を設置し、原因究明や再発防止策を検討する。

 野村和弘病院長は記者会見で「コンピューター断層撮影(CT)検査で肺がんを強く疑わせる所見があり、細胞検査が陰性でも切除が強く推奨されるケース。しかし経過観察という選択肢もあり、選択の機会を奪うことになった」と謝罪した。

 他の2患者のうち、「がんの疑い」とされた1人は手術を受けがんと確定、「良性」の1人は診療に影響なかった。

 男性は首都圏在住。8月初めに肺がんの疑いで、内視鏡を使い肺の細胞を採取する検査を実施、肺がんと診断した。9月初旬に手術したが、病変部が肺の奥深くにあるため手術中の細胞検査はできず、肺の一部を切除。しかし、切除した組織を検査した結果、がんではないことが分かり、取り違えが判明した。

 同病院では、手術前の細胞検査でがんが確認できなくても手術するケースは年間約200例あり、うち20―30例は手術後に肺がんでないことが分かるという。(共同)

輸液ポンプから空気流入 患者その後死亡、東北大

2005/09/14 The Sankei Shimbun

 東北大病院(仙台市青葉区)は14日、7月下旬、東北地方の50代の女性患者に生体肝移植手術中、急速輸液ポンプから静脈内に空気が流入し一時心機能を低下させる医療ミスがあったと発表した。

 患者は13日に多臓器不全で死亡したが、里見進病院長は会見で「空気が混入した事実は確かだが、死亡との因果関係は不明」と説明。事故調査委員会を設置、原因を究明するとしている。

 ポンプには空気が入ると警報が鳴って自動停止する機能が付いているが、これを切っていた。仙台北署は業務上過失致死の疑いもあるとみて調べる方針。

 東北大病院によると、患者は重度の肝不全で手術。急速輸液ポンプをつないで静脈に血漿(けっしょう)を送り込んでいたが、容器が空になったことに担当の外科医が気付かず、最大約3分間、150ccの空気が流入した。患者の血圧が突然低下し、ポンプを切った。

 警報装置を切ったことについては「警報の感度がよく、すぐに自動停止する。大量出血した患者への輸液が止まるのを避けるためやむを得なかった」としている。

 空気の流入で脳への障害が心配されたが、術後のコンピューター断層撮影(CT)検査では脳の異常は見つからなかったという。(共同)

徳島県に1億円賠償命令 大阪高裁、医療ミス認定

2005/09/13 The Sankei Shimbun

 徳島県立中央病院で帝王切開し出産した子どもが脳性まひになったのは医師の不適切な対応が原因として、大阪府の両親らが徳島県に約1億6000万円の損害賠償を求めた訴訟で、大阪高裁は13日、請求を棄却した一審大阪地裁判決を取り消し、県に約1億1000万円の支払いを命じた。

 小田耕治裁判長は「帝王切開の実施が早すぎた。両親にリスクも説明していない」と指摘。「子どもは肺機能が未成熟な未熟児で、その後の呼吸管理が不十分だったため脳性まひになった」と病院側の医療ミスを認めた。

 判決によると、母親は1992年6月、同病院で帝王切開することが多い「前置胎盤」と診断され入院。7月に少量出血する程度だったのに、医師は「いつ大出血が起こるか分からない」などとし、子どもが31週の段階で帝王切開した。

 両親は「主張を認めていただき感謝している」とコメント。徳島県は「判決内容を検討し対応を考えたい」としている。(共同)

血管に空気誤注入で脳障害 東海大東京病院

2005/09/02 The Sankei Shimbun

 東京都渋谷区の東海大東京病院で2003年10月、心筋梗塞(こうそく)のため入院していた男性患者=当時(60)=が、カテーテルを動脈に挿入して血管を調べる検査を受けた後、脳障害を起こして意識不明になっていたことが2日、分かった。

 担当の男性医師(34)がカテーテルの挿入口から誤って空気を注入したのが原因とみられ、警視庁原宿署は業務上過失傷害容疑で調べている。

 男性は今年2月に脳腫瘍(しゅよう)が見つかり7月、肺炎による呼吸不全のため62歳で死亡している。

 調べでは、男性は03年5月に入院し、心臓の冠動脈の詰まりを開通させる治療を受けた。経過観察のために同年10月10日、右ひじの動脈からカテーテルを挿入して冠動脈に造影剤を流し込み、血管を調べる検査を受けた。

 ところが男性医師は検査終了後、腕に巻いて血管を圧迫する止血具に注射器で空気を入れて膨らませようとし、誤ってカテーテル挿入口に空気を入れてしまったという。男性は脳組織が破壊される「脳空気塞栓(そくせん)症」になった。(共同)

防衛医大3医師を書類送検、抗がん剤ミスで患者死亡

2005年09月01日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 埼玉県所沢市の防衛医大病院で2003年1月、食道がんで入院中の男性患者に抗がん剤を投与ミスし死亡させたとして、埼玉県警捜査1課と所沢署は1日、当時の主治医(32)と研修医2人(いずれも28歳)を業務上過失致死の疑いでさいたま地検に書類送検した。

 調べによると、主治医は03年1月中旬、食道がんで入院していた同県狭山市、無職松本亨さん(当時66歳)への抗がん剤投与を研修医に指示するにあたり、本来は副作用を防ぐため3週間の休薬期間を設けなければならないのに、2日間しか間隔を置かなかったため、松本さんを集中投与による全身機能障害で死亡させた疑い。

 研修医2人は、誤った指示に気づかないまま抗がん剤を投与し、松本さんを死亡させた疑い。

医療過誤訴訟、法人・医師らに2億5千万支払い命令

2005年07月12日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 京都府宇治市の宇治川病院で2001年1月、じんましんの治療で間違った薬剤を注射され、寝たきりになった同府城陽市寺田袋尻、小学6年加藤美嘉さん(11)と両親が、病院を経営する医療法人「仁心会」と、担当だった同病院の元医師、元准看護師を相手取り、介護費用など約2億6000万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が12日、京都地裁であった。

 田中義則裁判長は3者の責任を認め、「死亡に匹敵する重大な後遺障害を負い、身を削るような介護を強いられ、精神的苦痛は計り知れない」として計約2億5000万円の支払いを命じた。

 判決によると、元医師堀道輝被告(72)(業務上過失傷害罪で1審・禁固1年、控訴)が、元准看護師南千代子被告(64)(同・禁固10月、控訴)に、美嘉さんに塩化カルシウムの注射をするよう指示。南被告が間違って塩化カリウムを注射したため、美嘉さんは心肺停止状態になり、重い障害が残った。

 田中裁判長は、堀被告について「注射に立ち会うなどの事故発生の注意義務を怠った」、南被告も「指示を誤解し、医師に確認もせず注射した」といずれも過失を認定した。仁心会には使用者責任があるとした。

 さらに、病院側が事故後、両親に「准看護師は医師の指示通り注射した」などと説明し、原因の調査や報告を怠った責任も認めた。

 宇治川病院は「判決を非常に重く受け止めている。十分に検討したうえで、善処させていただきたい」とのコメントを出した。

治療中に肺傷つけ女性死亡 秋田・大館市立総合病院

2005/07/09 The Sankei Shimbun

 秋田県の大館市立総合病院(武内俊(たけうち・まさる)院長)で、胸にたまったうみをチューブで吸い出す治療中に肺から出血、血が気管に詰まり、市内の70代女性が死亡していたことが9日、分かった。病院は「チューブが肺を傷つけたとみられる」として遺族に謝罪した。

 市立総合病院によると、女性は7日、胸の痛みなどを訴えて入院。8日の検査で胸にうみがたまっていることが分かった。直径約8ミリのチューブを胸に刺し、うみを吸い出す処置中に肺から出血し、女性は8日夜に死亡した。病院が大館署に届けた。同署が死因などを調べる。

 チューブは先端に金属製の針が付いており、吸い出す際は針を抜く構造になっている。

 武内院長は「亡くなったことは残念な結果。原因を調べて、再発防止策を考えたい」としている。(共同)

脳手術ミスで女性が意識不明 杏林大病院、警視庁が捜査

2005/07/06 The Sankei Shimbun

 杏林(きょうりん)大病院(東京都三鷹市)で6月、脳血管手術を受けた東京都内の70代の女性患者が、手術後にくも膜下出血で意識不明になっていることが6日、分かった。病院側は「手術中のカテーテルの操作ミスで血管を傷つけた可能性がある」と家族らに謝罪し、警視庁三鷹署に届けた。同署は業務上過失傷害容疑で捜査を始めた。

 病院は外部の専門医を含む調査委員会を設け、原因の究明を進めており、石井良章(いしい・よしあき)病院長は「結果を重く受け止め、再発防止に努めたい」としている。

 病院側によると、女性は4月から歩行障害やめまいの症状があり6月20日、脳浮腫などで同病院に入院。脳硬膜の静脈に異常が見つかり、6月30日に閉塞(へいそく)した血管を再開通する手術を受けた。

 手術は午前9時40分ごろに始まったが、女性が吐き気などを訴えたため約3時間で中止。女性は同日午後4時20分ごろ、くも膜下出血で昏睡(こんすい)状態となり呼吸も停止、集中治療室(ICU)で意識不明の状態が続いている。

 手術は50代の助教授、40代の非常勤講師、30代の助手の3人が担当。当初は助手がカテーテルを操作したが、操作が困難になるなどして途中で助教授に交代した。3人とも手術の経験は豊富という。(共同)

左右の目を間違え手術 名古屋医療センター

2005/07/05 The Sankei Shimbun

 国立病院機構名古屋医療センター(名古屋市中区)で6月下旬、男性患者の左目の奥にできた腫瘍(しゅよう)の摘出手術をした40代の男性医師が、誤って正常な右目側を切開していたことが5日、分かった。

 医師はすぐに家族に事情を伝え、了承を得て手術をやり直した。患者の回復は順調という。

 医師は手術前、右目のまぶたに印を付けており「腫瘍は右目側と思い込んでいた」と話しているという。まゆ毛の下を約5センチ切開したが腫瘍が見つからず、ミスに気付いた。

 同センターは「健常な目を切開したのは大きな問題で非常に申し訳ない。再発防止に努める」としている。(共同)

患者死亡後にカルテ加筆 兵庫医大

2005/07/05 The Sankei Shimbun

 兵庫医大で静脈瘤(りゅう)破裂を防ぐ手術を受けた男性(72)が、術後の処置ミスで死亡した問題で、主治医が男性の死亡後「手術の危険性を手術前後に説明した」とカルテに書き加えていたことが5日、分かった。

 外部調査委員会の報告書などによると、男性は昨年11月11日に手術を受け、翌12日夕に吐血。風船のついたチューブを挿入して止血する処置を受けたが、13日に食道静脈瘤破裂でショック死した。

 男性は過去に2回、同じ手術を受けていたことから、手術に危険が伴っていた。カルテには「主治医が手術前と後に危険性について説明した」との記載があったが、実際は本人や家族への説明はなかった上、主治医が男性の死亡後に加筆し、カルテを改ざんしていた。

 この点について、報告書は「時系列に反するカルテ記載は言語道断。教育・監視のシステムの強化が必要」と厳しく批判した。(共同)

カテーテル誤挿入、女性患者が失血死

2005年07月04日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 大阪府立成人病センター(大阪市東成区)に入院していた府内に住む50歳代の女性患者が先月27日、栄養補給用カテーテルの挿入ミスで大静脈が破れ、失血死していたことが4日、わかった。

 センターはミスを認めて遺族に謝罪した。府警東成署は遺体を司法解剖し、医療ミスと死因との因果関係について捜査を始めた。

 センターによると、女性患者は消化器がんの治療で今年4月に入院し、点滴で栄養補給を受けていた。先月27日正午ごろ、消化器外科診療主任の男性医師(40)が、患者の首の左側静脈からカテーテル(直径2ミリ)を挿入し、レントゲン撮影したところ、カテーテルは大静脈の血管を破って胸腔に達していた。医師はすぐ抜き取ったが、患者は直後に大量出血し、間もなく死亡した。

 医師は、同種のカテーテル挿入を約300例経験しているが、それまで挿入していた首の右側などから入りにくくなったため、部位を変えたという。

手術ミスで女性患者死亡 香川の病院、県警が捜査

2005/05/28 The Sankei Shimbun

 香川県善通寺市の国立病院機構善通寺病院(田村禎通(たむら・よしゆき)院長)で、大腿(だいたい)骨の接合手術中に医師が誤って血管を傷つけ、女性患者(69)=同県満濃町=が死亡、病院と患者の家族が28日までに、善通寺署へ届けた。

 同署が司法解剖したところ、死因は骨盤内の静脈損傷による出血性ショック死と判明した。同署は、業務上過失致死の疑いもあるとみて関係者から事情を聴いている。

 同病院によると、患者は自宅で転倒、左太ももの付け根を骨折した。26日に入院し、手術は27日午後2時50分ごろから始まった。

 執刀した男性の整形外科医(41)が骨の中に固定用の器具を入れるため、金属製のガイドワイヤ(長さ約50センチ)を体内に挿入したところ、誤って骨盤の内側に刺した。

 患者の血圧が下がり始め、輸血などの措置を取ったが心停止。いったん蘇生(そせい)したが、同日午後9時40分ごろ死亡した。

 同病院はミスを全面的に認め、患者の家族に謝罪した。

 田村院長は28日に会見し、医師がガイドワイヤの動きを注意深く確認していなかったと説明。「患者が死亡する医療事故を起こしたことを深くおわびする。責任は当院にある」と述べた。

 医師は15年の経験があり、同様の手術を30例以上執刀しているという。病院は捜査の結果を待ち、医師の処分を決める方針。

 善通寺病院はベッド数351で、20の診療科を持つ総合病院。(共同)

医療ミス「3年3回」で再教育、日医が8月から新制度

2005年05月20日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 医療ミスを繰り返す「リピーター医師」の再教育の方法を検討してきた日本医師会(日医、植松治雄会長)は19日、再教育制度を8月にスタートさせることを決め、各都道府県の医師会に通知した。

 対象は当面、全国で約200人になる見通しで、研修を拒否したり、研修後も事故を繰り返したりした場合は、氏名公表や除名処分も検討する。日医が、闇に包まれていた問題医師の実態把握と再教育に本格的に乗り出すことで、医療安全が前進することが期待される。

 制度創設に当たり問題となったのは、リピーター医師の把握方法。日医は、自ら運営し、会員約16万人のうち開業医を中心に約12万人が加入する医師賠償責任保険(限度額1億円、免責額100万円)に着目。「医療の信頼回復のために再教育が必要な医師」の当面の基準として、同保険の加入者で「過去3年で3回以上の有責事故を起こした者」とした。

 研修は、これらの医師のほか、医業停止などの行政処分を受けた医師、行政の窓口などに寄せられた情報などで著しい非行や未熟な医療行為が明らかな医師を加えて実施。2日間にわたり、医療安全対策の専門家や法曹関係者、市民代表の有識者らから、安全対策などの講義を受ける。

 研修には、対象者のほか都道府県医師会の再教育担当者も参加する。研修の成果は、都道府県医師会の再教育担当者らが面談などで評価する。必要に応じて「3年3回」の基準を厳しくすることも検討する。将来的には、日医の医賠責保険で把握できない民間の病院保険や診療所保険などの組織とも連携し、対象を広げていく方針だ。

 リピーター医師の再教育問題は、厚生労働省の検討会が今年4月、医業停止の行政処分を受けた医師に限り、現場復帰前に再教育を義務づけるべきだとの報告書をまとめている。医療側でも、日本産婦人科医会(会員約1万2800人)が昨年、会員に事故報告を求めるなどの動きがある。

 だが、〈1〉行政処分の対象者は、刑事事件や診療報酬の不正請求で罰せられた医師が大半〈2〉不必要な子宮摘出手術が発覚した富士見産婦人科病院(埼玉県所沢市)が処分を受けるまでに25年かかるなど、速やかな対応がとれない――などの問題が指摘されている。

 日医は昨年4月の植松会長就任以降、処分に消極的だった姿勢を転換、リピーター医師や行政処分を受けた医師の再教育、会員医師に対する生涯教育の充実を重要課題に掲げていた。

薬剤4倍投与後、患者死亡 旭川医大、ミス認め謝罪

2005/05/02 The Sankei Shimbun

 北海道旭川市の旭川医大病院(石川睦男病院長)で、入院中の男性患者(80)が誤って適正量の約4.2倍の薬剤を投与され、12時間後に死亡していたことが2日、分かった。病院は「死亡との因果関係ははっきりしない」としながらも投薬ミスを認め、同日、遺族に謝罪するとともに、文部科学省に報告した。

 病院によると、死亡した男性は道内在住で、腎臓結石で4月上旬に入院。腎盂(じんう)炎などを併発し、22日夕、血液が凝固する危険な症状に陥ったため、泌尿器科の男性医師が血液の流れを促進する薬剤を点滴で投与、改善が見られないために投与をやめた。約12時間後の23日朝、男性は細菌が血液の中に入る敗血症で死亡した。

 カルテなどから、医師が適正量の約4.2倍の薬を投与していたことが判明。医師は、過剰投与について「思い込みで単純な計算ミスだった」と話しているという。(共同)

バイパス血管切り患者死亡 新潟県立がんセンター

2005/04/27 The Sankei Shimbun

 新潟県立がんセンター新潟病院(田中乙雄院長)は27日、新潟市の70代の男性患者に実施した手術で、心臓へのバイパスになっていた動脈を知らずに切り離し、患者が心筋梗塞(こうそく)で死亡したと公表した。

 病院によると、5日午前に胆のう摘出などの手術をした際、胃の動脈が傷つき出血。患者は以前に別の病院で受けたバイパス手術で、この動脈を心臓につなげていたが、外科部長の執刀医(44)は気付かずに止血のため切り離した。

 その後、動脈が心臓につながっていたことが分かったが、患者の状態が安定していたため、執刀医は手術を続けた。

 しかし、術後に患者の血圧が低下。バイパスの動脈を再びつなげる手術をしたが容体は改善せず、5日夜に死亡した。血管を切り離したことが、心機能を低下させたとみられるという。

 執刀医は、患者のバイパス手術を知っていたが、どの血管をバイパスに使っているのか確認しなかった。

 田中院長は「患者とご遺族に衷心よりおわび申し上げる。今後は慎重な情報把握に努める」と話している。(共同)

重大な医療事故533件 報告義務化で主要病院

2005/04/16 The Sankei Shimbun

 患者が死亡するなどの重大な医療事故が、大学病院や国立病院など主要な病院で3月までの半年間に533件あり、うち死亡例は83件に上ることが15日、財団法人「日本医療機能評価機構」(東京)の集計で分かった。昨年10月、報告が義務付けられてから集計は初めて。同機構は事例を分析し、再発防止に役立てる考え。

 報告が義務化されたのは、大学病院や国立病院など276施設。ほかに任意で医療機関257施設が参加し、集計対象は計533施設。1施設当たり1件の報告があった計算となった。

 事故の程度は「障害が残る可能性が低い」が254件で最多。「不明」(104件)「死亡」(83件)「障害が残る可能性が高い」(74件)の順だった。発生場所は病室が241件でトップ、手術室も77件と多かった。

 体内に異物が残った事故は16件。ガーゼや縫合針、鉗子(かんし)、ねじ、義歯、カテーテルなど多岐にわたっていた。

 同機構は当面、異物残存のケースと、医療機器の使用に関する事故(7件)の二つのテーマで原因などを分析する。2005年度は年4回の集計を予定しており、医療機関に傾向や対策をフィードバックする。

 報告制度は、後を絶たない医療事故の再発防止を目指し厚生労働省が医療法施行規則を改正して義務付けた。患者が死亡したり予期しない処置が必要となったりした重大事故が報告対象。正直に報告してもらうため病院名は伏せ、行政処分をする厚労省とは別の同機構が受け付ける。(共同)

医療事故:医師の過失なくても補償 訴訟の重圧回避、再発防止へ提言−−厚労省研究班

2005年04月02日 毎日新聞 東京夕刊

 医療事故時に、医療従事者の過失の有無にかかわらず患者や家族に金銭補償する「無過失補償制度」の導入を国に求める提言を、厚生労働省の研究班がまとめた。患者に加え、事故責任をめぐる訴訟の重圧から逃れられる医療従事者にも利点がある。医療ミス隠しも減ると期待され、再発防止策も立てやすくなるという。医師や患者の新たな金銭負担は必要だが、研究班は「訴訟が多く賠償額も高額な出産時の脳性まひなどだけでも試験的に始めるべきだ」と、早期の実現を求めている。【西川拓】

 スウェーデンやフィンランドでは「無過失補償制度」が社会保障制度として確立している。英国では重い障害が起きた事故、仏では国立病院での医療事故を対象にこの制度が導入されている。

 研究班は、これらの国の事例を検討した。その結果、患者側にも医療従事者にも大きなメリットがあるうえ、導入した国では医療事故も減少傾向にあると結論づけた。

 日本の医師や病院が加入する賠償保険は、訴訟などで医療従事者の過失が認定されるか、医療機関が示談に応じた場合しか患者側は補償を受けられない。だが、医療従事者の過失が明白なケースは1割ほどで、残りは解決が長引く傾向がある。

 研究班は、医師不足が深刻な産科や小児科の問題点を探り、改善策を提言するため02年度に結成された。医学生へのアンケートでは、産科が敬遠される理由として、医療事故による訴訟の多発が挙がったため、「無過失補償制度」の国内への導入を検討した。

 導入に必要な費用が課題となるが、脳性まひを対象にした研究班の試算では、支払額は年間約360億円と予想した。産科医が出産1件につき2万円の掛け金を負担し、年間の出産数(約110万件)から約220億円を工面し、残りを公的補助でまかなうことを提案している。事故の原因究明などに当たる独立機関の設置も盛り込んだ。

 研究班の岡井崇・昭和大教授(産婦人科学)は「補償制度を導入し、事故の原因究明をする体制をつくれば、医療現場は大きく改善する。そのための一定の負担増は認められるのではないか」と話している。

東京医大患者死亡:4人すべて医療事故と認め謝罪

2005年04月01日 毎日新聞 Mainichi INTERACTIVE

 東京医科大学病院(東京都新宿区)第2外科(石丸新(あらた)教授)で心臓弁の手術を受けた患者4人が死亡した問題について、同大は1日、4人の死亡をすべて医療事故と認め「ご家族におわび申し上げたい」と謝罪した。これまでは「事故でなく、手術に伴う合併症」と主張していたが、外部の専門家による調査委員会が「手術した医師の基本的な知識や技術の不足」が原因と結論付けたため、一転して事故と認めた。

 石丸教授は、当初は合併症と判断した理由について「第2外科の医師全員で検討し判断した」と説明。「結果的に教授を含めた講座全体のレベルが低かったと言われてもしかたがない」と全面的に非を認めた。また、技術の未熟な医師に執刀させたことについても「私の執刀医の決め方が甘かった」と話した。ただし「個々の手術の執刀医は、心臓外科グループの医師が話し合って決めていた」とし、教授自身は決定に深くはかかわっていなかったとした。

 同大は今後の対策として、手術のビデオ撮影や家族への公開、循環器内科との連携を進めるほか、医療ミスの有無に関係なく、死亡した患者についてはすべて、専門委員会が調べることなどを挙げた。

 石丸教授や執刀医らの責任問題は裁定委員会で審議し、早急に結論を出す。同大によると、執刀医は調査委員会の結論について「全力を尽くしたが残念だ。非常に責任を感じている」と話し、3月30日付で辞表を提出したという。【山本建】

医療過誤訴訟:手術後急死「病院側に過失」 8400万円賠償を命令−−さいたま地裁

2005年04月01日 毎日新聞 東京朝刊 Mainichi INTERACTIVE

 さいたま市大宮区の産婦人科医院で98年、卵巣の腫瘍(しゅよう)摘出手術を受けた埼玉県戸田市の女性(当時28歳)が手術翌日に急死したのは薬剤と輸液の過剰投与が原因などとして、病院を運営する医療法人「かしわ会」を相手に遺族が損害賠償約9000万円を求めた訴訟の判決が31日、さいたま地裁であった。山崎まさよ裁判長は病院側の過失を認め、賠償金約8400万円の支払いを命じた。

 判決などによると、女性は98年3月24日、同病院で卵巣嚢腫(のうしゅ)と診断され、同7月5日に入院。翌6日に腫瘍の摘出手術を受けたが容体が悪化、同7日に肺水腫で死亡した。遺族は「肺水腫を起こす恐れのある薬剤と過剰な輸液の投与が原因で医師の注意義務違反」と主張、病院側は「原因は狭心症」と反論していた。

 判決は、女性は死亡時、妊娠22週目で血液の循環量が増えており、複数の薬剤と輸液の過剰投与でさらに血液の循環量が増し心臓に負担を掛けたと判断、過失にあたると認めた。原告側弁護人は「ほぼ主張が認められた」と判決を評価。病院側弁護人は「予想外の判決」として控訴する方針を示した。【村上尊一】

都立病院の医療事故、機器会社幹部や医師ら不起訴処分

2005/03/26 読売新聞 Yomiuri On-Line

 東京都立豊島病院(板橋区)で2000年と01年、人工呼吸に使われた2つの医療機器の接続不具合から乳児2人が死亡した事故で、東京地検は25日、業務上過失致死容疑で書類送検されていた医療機器販売会社2社の幹部と同病院の当時の医師、看護師の計9人について、嫌疑不十分で不起訴処分にした。

 国内の医療事故で、医療機器の会社関係者が刑事責任を問われた初のケースだったが、同地検は「他病院で起きた不具合事例を病院に知らせており、結果回避のための説明義務は果たしていた」と判断した。

 医師と看護師についても「類似の事例は学会誌で報告されていただけで、接続の不具合が死亡事故につながるという予見可能性は低い」としている。

 書類送検されていたのは、医療機器販売会社「アコマ医科工業」(文京区)の社長(46)ら2人と、同「タイコヘルスケアジャパン」(世田谷区)の幹部2人、同病院小児科の当時の医師3人と看護師2人。

気管チューブ外れ脳障害 杏林大病院で入院男児

2004/12/25 The Sankei Shimbun
 東京都三鷹市の杏林大病院で1月、気管軟化症などの治療で入院していた当時1歳6カ月の男児の気管に挿入していたチューブが外れ、心肺停止状態になっていたことが25日、分かった。

 命は取り留めたが、男児は低酸素脳症となり、今も意識不明の状態。病院は同日、記者会見し、石井良章院長が「重大な事故を起こし、申し訳ない」と謝罪した。

 病院の説明によると、男児は気管がふさがってしまう症状があり、呼吸困難を避けるため気管切開手術を受け、気管を広げるチューブを入れていた。チューブはひもで首に固定していたが、1月31日午後10時ごろ、看護師が病室を訪ねると、ひもがほどけてチューブが外れ、男児がうつぶせになって呼吸が停止していた。

 ひもは31日午前、看護師が交換して固く結んだという。気管を切開して挿入したチューブが外れた例は同病院では初めてで、病院側は「ひもが自然に緩んだのか、男児が引っ張ったのかなど原因は特定できなかった。固く結べば外れないという過信があった」と話している。(共同)

医療ミス:行政処分の医師、再教育を義務化へ−−厚労省方針

2004年12月23日 毎日新聞 東京朝刊 Mainichi INTERACTIVE
 医療ミスなどで業務停止などの行政処分を受けた医師の再教育制度を検討している厚生労働省は22日、医師法を改正し、処分を受けた医師に再教育を義務づけることを決めた。同日の第3回再教育検討会(座長・北島政樹慶応大医学部長)で義務化の方針が了承されたためで、06年の通常国会に改正案を提案する方針だ。

 現行の医師法には再教育の義務づけがなく、業務停止期間が終われば、医療活動が再開できるため、厚労省が10月から検討会で具体策づくりを進めてきた。この日は05年度から再教育制度を試行することも了承された。同省は試行を通じ、再教育のカリキュラムや実施主体などを詰め、改正案をまとめる方針だ。【江刺正嘉】

東医大手術死亡、専門家は「執刀医レベル低い」と指摘

2004/12/15 読売新聞 Yomiuri On-Line

 東京医大病院第2外科の一連の死亡例について、主任教授は、14日の会見で「不適切な医療行為が原因ではなかった」と語った。しかし、弁膜症のほかに、この外科医の専門であるバイパス手術でも8人が死亡していたことが判明し、心臓外科の専門家は「執刀医の技術レベルが余りに低い」と指摘している。

 関西地方の心臓外科医は「死亡15人のうち11人までを同じ医師が執刀していたとは驚きだ。バイパス手術の死亡率は平均で約2%で、単純に考えても多過ぎる」と話し、「医局内に力量のある外科医がいないのであれば、早い段階で腕の良い医師を連れてくるべきだった」と語る。

 弁膜症手術の死亡例についても、関東地方の病院の専門医は「全体的に手術時間が長過ぎる」と指摘。弁膜症手術は、病院側の説明によると、1例目の女性の手術が約7時間だった以外は、残りの3例は13時間以上かかっていた。

3人死亡の執刀医、バイパス手術でも8人死亡…東医大

2004/12/15 読売新聞 Yomiuri On-Line
 東京医科大学病院(東京都新宿区)第2外科の外科医(45)が担当した心臓弁膜症の患者が相次いで死亡した問題で、第2外科主任教授の石丸新教授(57)らが14日、問題発覚後、初めて厚生労働省で記者会見した。

 この中で、2001年以降、第2外科で行われたバイパスと弁膜症の手術計249件のうち、患者が死亡したのは15件で、うち11件(バイパス8件、弁膜症3件)は、この外科医が執刀していたことを明らかにした。石丸教授は「外科医は第2外科のすべての手術に(執刀医か助手で)かかわっていた」と説明した。

 会見などによると、外科医がこれまでに執刀した手術は計163件。専門のバイパス手術については、豪州留学から帰国直後の2001年2月から現在までに143人を執刀し、うち8人が死亡した。死亡率は5・6%で、この手術の平均的な死亡率とされる2%を上回っている。

 弁膜症については、2001年3月―03年4月に20人を執刀。死亡は3人で、死亡率15・0%は、弁膜症手術の平均死亡率3―4%を大きく上回っている。

死亡多発後、執刀医外す 東京医大

2004/12/14 The Sankei Shimbun
 東京医大病院第二外科で同じ医師が執刀した心臓弁膜症の患者3人が相次いで死亡した問題で、病院側はこの3例以降この医師を弁膜症手術の執刀医から外し、外部の専門医に執刀を依頼する態勢に変更していたことが14日、分かった。

 石丸新・第二外科教授らが同日、記者会見して明らかにした。石丸教授は「最も質の良い医療を提供するため、外部との交流を高めた結果」として、この医師の技術レベルに問題があったためではないと説明した。

 会見によると、この医師は冠動脈バイパス手術の経験が豊富で、心臓弁膜症手術は今回問題となった2002年10月の最初の死亡例が14例目の執刀だった。

 第二外科は死亡に至ったことを重視し、その後は執刀を2人体制に変更。しかし、翌年3月までに死亡例がさらに2例続き、その前後から外部の専門医を招いて執刀を依頼する形とした。その後の弁膜症手術での死亡例は1例しかない。

 石丸教授はこれらの死亡例について「すべて重症例の難しい手術で、合併症による死亡だった」と説明。01年以降に行った冠動脈バイパス手術と弁膜症手術計249例のうち、患者の死亡例は15例あり、そのうち12例にこの医師がかかわっていたことも明らかにした。

 病院側は医療事故だったかどうかを客観的に調査するため、専門学会に依頼して近く検証委員会を設置。来年2月までに結果を公表する方針。(共同)

群馬県立心臓血管センターで医療事故、遺族に賠償へ

2004/12/13 読売新聞 Yomiuri On-Line
 群馬県立心臓血管センター(前橋市亀泉町)で1月、60歳代の男性患者が直腸がんの手術後に死亡したことをめぐり、同県が病院の過失を認めて遺族に損害賠償として約3000万円を支払うことが、13日わかった。

 県議会に賠償額を補正予算案として提出している。

 県病院局などによると、男性は昨年11月に手術を受けた。術後、傷口から感染が起こるなどして容体が悪化し、合併症による多臓器不全で今年1月に死亡した。

 病院で調査した結果、術後の治療に一部過失があったといい、遺族に謝罪した。

 県病院局は「遺族の意向などを踏まえ、公表を控えてきた」としている。

心臓弁膜手術後3人死亡、同じ医師が執刀 東京医大病院

2004/12/11 The Sankei Shimbun
 東京医大病院(東京都新宿区、臼井正彦院長)第二外科で2002年10月から03年3月にかけて、同じ男性心臓外科医(45)が執刀した心臓弁膜症の患者3人が、手術後に相次いで死亡していたことが11日、分かった。院長ら病院トップへの報告はなかった。

 東京医大病院は同日以降、事実関係を厚生労働省、都、新宿署に届けるとともに、事故調査委員会を設けて調査する。

 胸部外科学会の統計では心臓弁膜手術の死亡率は3%前後という。

 東京医大病院では今年1月にも心臓弁手術を受けた患者1人が死亡し、この医師は助手として手術に参加したが執刀はしていなかったという。

 患者遺族の関係者によると、このうち執刀しなかったケースを含む3遺族が医療ミスの疑いがあるとして東京簡裁に証拠保全を請求。簡裁は10日、死亡患者のカルテなどの保全手続きをした。

 関係者によると、1例目の女性(71)は02年10月に手術を受けたが、03年1月に死亡。また、同年1月に手術を受けた女性(81)も同月中に死亡した。さらに03年3月に手術の女性(68)は同年4月に亡くなった。

 東京医大病院によると、この医師はこれまで心臓弁膜症手術188例にかかわり、執刀経験は21例だという。

 循環器外科の専門家は「患者の年齢や心臓の状態などによって手術のリスクは異なり、ミスかどうか判断するには医学的な検証が必要」と話す。別の医師は「トップに事実が報告されない体制の方が問題。患者側に手術のリスクを説明していたかどうかも確認する必要がある」と指摘する。(共同)

 <心臓弁膜症> 心臓の血液の出入り口にある弁が、肥厚や変形により正常な機能をしなくなる症状。弁が狭くなり、血液の流れが妨げられるものを狭窄(きょうさく)症、弁が不完全に閉鎖するため、血液の逆流を起こすものを閉鎖不全症という。

 弁膜症の原因は、病気の後遺症や高齢化などさまざまで、原因を特定できないものも多い。心筋の収縮力を増強させる強心剤などを投与する内科的治療と、弁の悪い部分を修復する「弁形成手術」、弁そのものを人工弁に取り換える「弁置換手術」などの外科的治療がある。(共同)

4倍の速さで点滴後、71歳女性死亡 東京・江戸川区の病院

2004/12/09 The Sankei Shimbun
 東京都江戸川区の葛西中央病院(早川大府院長)で11月、心肺停止状態になった入院中の都内の女性(71)に、通常の約4倍の速さで昇圧剤を点滴し、その後女性が死亡していたことが、9日分かった。病院から届けを受けた警視庁葛西署は業務上過失致死の疑いもあるとみて調べている。

 病院によると、女性は肺炎などのため10月28日から入院。11月15日午前に腹痛を訴え、同日午後4時ごろに心肺停止状態になった。院長は救命措置として昇圧剤200ミリリットルを10時間で投与するように医師に指示したが、誤って2時間半で投与されたという。女性は翌16日午前0時20分ごろ死亡した。

 病院は「死因が不詳」として16日に同署に届け、その後事故調査委員会を設置した。同署は院長らから当時の状況を聞くとともに点滴装置を押収。遺体を司法解剖し詳しい死因を調べている。

 早川院長は「点滴が指示より速かったことは事実。死因との関係は不明で、事故調査委員会と警察の調査を待ちたい」と話している。(共同)

限度量3倍の薬で意識不明か 70代男性、京都大病院

2004/12/03 The Sankei Shimbun
 
 京都大病院(田中紘一院長)は3日、抗リウマチ薬を投与した近畿在住の70代の男性が意識不明になったと発表した。集中治療室(ICU)で人工呼吸器で管理している。

 医師歴1年の研修医が限度量の3倍近い投与を指示、これが原因となった可能性もあり、京都府警川端署に届けた。

 男性は2000年以降、関節リウマチなどで同病院で受診し、抗リウマチ薬のメトトレキサートなどの投与を受けた。今年10月25日、消化管出血のため同病院に緊急入院した。

 男性は通院中は、外来担当医の指示で同薬を週1回、1日6ミリグラム服用していた。入院後、病棟担当の研修医(25)が連日投与を指示。5日間にわたり計11回、22ミリグラムが投与され、数日後に呼吸状態が悪化した。

 この薬は最高で週に8ミリグラムまでしか使ってはいけないとされている。研修医は「この薬に関する十分な知識がなかった」と話しているという。研修医を指導する11年目の医師もチェックをしていなかった。

 田中院長は「治療に全力で当たっており、患者に深くおわびする」と話した。

 この薬は免疫を抑えるなどの作用があり、過剰投与で肺炎が重くなったのではないかという。同病院は医療事故調査委員会を2日付で設置、詳しい原因や再発防止策について検討する。(共同)

TOPIC No.5-42新型肺炎(SARS)

高齢化社会YAHOO!ニュース

呼吸器外れ女性患者死亡 愛知の病院で手術中に

2004/11/15 The Sankei Shimbun
 愛知県祖父江町の尾西病院(鈴木一也院長)で10月下旬、子宮筋腫と卵巣のう腫の摘出手術中に麻酔を兼ねた人工呼吸器の管が外れて患者の女性(33)が意識不明となり、半月後に死亡していたことが15日分かった。

 同病院は医療ミスを認め遺族に謝罪。稲沢署は業務上過失致死容疑で捜査を始めた。

 病院によると、女性は10月28日午後、腹腔(ふくこう)鏡を使った手術を受けた。筋弛緩(しかん)剤で自発呼吸ができない状態にし、人工呼吸器で酸素を気管内に送り込んでいたが、管の接続部分が外れて無呼吸状態になった。

 異常を知らせるアラームが切れていたため、麻酔担当の男性医師(54)らが容体の変化に気付いたのは無呼吸になってから約30分後だった。女性は低酸素で意識不明の重体となり、意識が戻らないまま11月14日に多臓器不全で死亡した。

 手術は麻酔担当医と執刀医(53)のほか、女性看護師らが当たったが、アラームのスイッチを入れるのは看護師の仕事だった。管が外れた部分は患者の顔の近くで、手術中は頭部に布をかぶせていたため気付くのが遅れたという。

 鈴木院長は「重大な医療ミスを犯した。院内に事故調査部会を設置して原因究明に努めている」としている。

「大腸がんを便秘と誤診」 遺族が日赤に6900万円賠償請求

2004/11/11 The Sankei Shimbun
 神戸赤十字病院付属須磨診療所(神戸市須磨区)で大腸がんの治療を受け、その後死亡した女性=当時(54)=の神戸市に住む遺族が10日、当初がんを便秘と誤診され適切な治療を受けられなかったなどとして、日本赤十字社に約6900万円の損害賠償を求める訴訟を神戸地裁に起こした。

 訴状によると、女性は1999年6月に腹痛を起こし同診療所で腸閉塞(へいそく)と診断され入院。医師はエックス線写真から「便の塊」と説明、女性は詳細な検査を求めたが点滴とかん腸を繰り返した。

 入院約10日後の6月末の再検査で腫瘍(しゅよう)だったことが分かり、手術が行われたが、他臓器への転移を調べる検査は行われず、7月末に肝臓への転移が判明。その後、女性は症状が悪化して翌年5月に死亡した。

 遺族は「早期に大腸がんと診断し、適切な治療をすべきだったのに便秘と即断して検査を怠った。適切な治療を受ければ長期に延命できた可能性が高い」と主張。

 日赤側は「訴状を受け取った上で、内容をよく検討し、しかるべく対応したい」としている。

杏林大病院で医療ミスか 内視鏡検査後に女性患者死亡

2004/11/09 The Sankei Shimbun
 杏林大学医学部付属病院(東京都三鷹市)で10月、大腸の内視鏡検査を受けた80代の女性患者が検査の約6時間後に死亡していたことが8日、分かった。警視庁三鷹署は医療ミスの疑いがあるとして、業務上過失致死容疑で病院関係者から事情を聴いている。

 調べでは、女性は6月ごろから同病院に入院中で、10月6日午後、小型カメラを装着した管を大腸に挿入して患部を見る内視鏡検査を受け、同日午後7時ごろ死亡した。

 司法解剖の結果、女性の大腸付近に穴が開いていたことが判明。三鷹署は担当医が内視鏡の操作を誤り、大腸に穴が開いて出血、死亡した可能性があるとみている。

 病院側は8日午後、三鷹署に連絡。医師法では死亡から24時間以内に警察に届けることになっており、病院は「遺族から警察に届けないよう言われ、戸惑ったので時間がかかった。最終的に病院として届けた方がいいと判断した」と説明している。

点滴薬取り違えで有罪判決 大阪地裁

2004/11/09 The Sankei Shimbun
 点滴薬を取り違えて患者を死亡させたとして、業務上過失致死罪に問われた准看護師、元久美子被告(30)=奈良市=に対し、大阪地裁は9日、禁固1年6月、執行猶予3年(求刑禁固1年6月)の判決を言い渡した。

 角田正紀裁判官は「基本的な注意義務を怠り取り返しのつかない重大な結果を招いたが、病院の薬の保管体制にも問題があった」と述べた。

 判決によると、元被告は2001年5月5日、大阪府八尾市の今川病院に過呼吸で救急搬送された女性=当時(32)=に対し、医師から精神安定剤の点滴を指示されたが、薬棚から強心剤のアンプルを取り出して名前を確認せず誤って点滴、女性を薬物ショックで死亡させた。

医療過誤:人工呼吸器装着ミス、男性患者死亡 横浜の病院

2004年10月02日 毎日新聞 Mainichi INTERACTIVE
 横浜市港北区の菊名記念病院(山本登院長)で、人工呼吸器の装着ミスで13分間酸素が流れず、同市内の男性患者(73)が死亡していたことが1日、分かった。装着ミスを示す警報音は無視されていた。病院側はミスを認めて遺族に謝罪し、神奈川県警港北署に届け出た。同署は業務上過失致死の疑いもあるとみて関係者から事情を聴いている。

 病院などによると、男性は9月22日午前8時前、肺炎のため緊急入院。血液中の酸素が少なく、看護師が人工呼吸器を取り付けた。ところが酸素が流れるチューブを誤って逆向きに接続したため、男性には酸素が全く流れなかった。男性は6分後に心臓発作を発症。一度は回復したが、再び発作を起こし、同日午前11時すぎに死亡した。

 誤接続の直後、呼吸器から酸素が送られていないことを知らせる警報音が鳴ったが、看護師は警報を切ったという。患者が自力呼吸をすると鳴る場合があり、これが原因だと思い込んだらしい。心臓発作で呼吸が停止した後に再び警報音が鳴ったため、看護師は、ようやく誤接続に気づいて装着し直したが、最初の警報音が鳴ってから13分が経過していた。

 病院側は「酸素を送らない状態が、心臓に悪影響を与え死亡につながった可能性がある」とミスを認めている。

 男性の長女(44)は「チューブを見たが、逆に接続しても一目で誤りが分かりにくかった。病院にも問題があるが、呼吸器メーカーは誤りにくい製品を作ってほしい」と訴えている。【高木昭午】

医療事故報告制度:「事故、3分の1に」−−野本・医療機能評価機構理事が抱負

2004年10月01日 毎日新聞 東京夕刊 Mainichi INTERACTIVE
 ◇きょうからスタート

 後を絶たない医療事故を防ごうと、初の医療事故報告制度が1日、スタートした。独立行政法人・国立病院機構の病院や大学病院など大規模施設255機関が対象で、患者が死亡したり、重症化したケースで、明白なミスだけでなく、予期せぬ事故も含めて報告を求める。国から独立した第三者機関の財団法人「日本医療機能評価機構」(東京)が報告を受け付け原因を分析。結果を公表し、再発防止につなげる。担当の野本亀久雄・同機構理事は「4、5年で医療事故を3分の1から4分の1まで減らしたい」と抱負を語った。【玉木達也】

 改正された医療法施行規則に基づく制度で、医療機関は事故が発生した場合、原則として2週間以内に発生日時や患者、担当医師のデータ、事故の状況などをまとめた報告書を作成。同機構内に設置された医療事故防止センターに提出する。

 センターは医学の専門家らでチームを作り、内容を検証。考えられる原因を検討して、その結果を関係機関や国民に公表し、同様事故の再発防止に役立ててもらう。センターは提出が義務付けられていない民間病院にも任意で提出するよう呼びかけている。

 あくまでも再発防止が目的で、公表時、病院名は明らかにせず提出資料に基づいて、関係者が処罰されることはない。

 野本理事は日本臓器移植ネットワークの副理事長で、臓器移植制度の定着に力を尽くした実績もある。

 同理事は「医療事故といっても多種多様で、原因もさまざまなことが考えられる。予断や偏見を持たずに、報告から上がってきたデータを冷静に分析したい」と話す。その上で、「最初の1年半ぐらいは情報収集に徹するしかないが、それ以降は徐々に対策を提案し、事故の大幅な減少につなげていきたい」という。

頸椎の手術で女性患者死亡 福島で医療事故

2004/09/29 The Sankei Shimbun
 福島県いわき市平の松村総合病院で24日、頸椎(けいつい)の手術中に女性患者(52)が医療事故による出血性ショックで死亡していたことが29日までに分かった。

 病院側は医療事故としていわき中央署に届けた。

 同病院によると、この女性は厚生労働省が指定する難病の一つで、頸椎が骨化する病気の「頸椎後縦靭帯(じんたい)骨化症」で入院中だった。

 24日朝から、できた骨を取り除くための手術をしていたが、骨をドリルで削る際に動脈を損傷し大量出血、手術開始から約12時間後に死亡した。

 執刀医は40代男性の整形外科専門医。同病院では、10年間に同様の手術を10件経験しているという。

 病院側は手術中のミスを認めた上で「家族に対して誠意を持って対応したい」と話している。

福島県が6400万賠償へ 県立病院の医療事故で

2004/09/28 The Sankei Shimbun
 福島県猪苗代町の県立病院で2001年9月、盲腸の手術を受けた中学生が一時意識不明になった医療事故で、福島県は28日までに、6400万円を支払い和解する方針を固めた。同県議会での議決を経て正式に決まる。

 福島県は事故後、担当医の過失を認め、家族と話し合いを進めていた。

 手術は01年9月26日に実施。担当医が中学生に適切な姿勢を取らせないまま麻酔をかけたため、脊椎(せきつい)に打った麻酔が上半身に広がった。中学生は低酸素脳症を起こし、一時意識不明となり、両手足などに障害が残った。

6600万円支払いで和解 東大病院の医療過誤訴訟

2004/09/28 The Sankei Shimbun
 東大病院で脳腫瘍(しゅよう)の摘出手術後に投与された薬の副作用で、意識不明の状態が続いているとして、大阪市の楊鴻飛さん(85)と妻ら3人が、東大側に計約1億300万円の損害賠償を求めた訴訟は28日、東大側が計約6600万円を支払うことで、東京高裁(西田美昭裁判長)で和解が成立した。

 一審東京地裁は「呼吸困難になった場合の治療態勢を整えるべきだったのに怠った」として東大側の過失を認め、同額の賠償を命じていた。東大側は控訴したが、同日の控訴審第1回口頭弁論で和解した。

 楊さんは1998年9月、東大病院脳神経外科で手術を受け成功したが、入院中に意識障害を起こしたため、研修医が超即効性睡眠薬を2回にわたり静脈注射。一時呼吸停止となり、蘇生(そせい)はしたが低酸素脳症となり、今も意識不明の状態が続いている。

 和解条項は「この事故を医療安全の貴重な教訓として生かす」とし、研修医が扱うことができる薬剤のガイドライン策定など、改善策を遺族側に示した。

 楊さんの妻杜雲峰さんは「東大病院の改革の一歩が実感できたことを、喜ばしく思う」と話している。

情報ファイル:千葉・市川の医療損賠訴訟 遺族側が逆転敗訴−−東京高裁

2004年9月23日 毎日新聞東京朝刊 Mainichi INTERCTIVE
 大腸のポリープ摘出手術後に出血多量で死亡した千葉県市川市の男性(当時56歳)の遺族が、「主治医が必要量の輸血をしなかったのが原因」として、病院側などに約9400万円の賠償を求めた訴訟で、東京高裁は22日、約8050万円の支払いを命じた東京地裁判決(今年3月)を取り消し、遺族側に逆転敗訴を言い渡した。根本真裁判長は「主治医に過失があったとはいえない」と指摘した。

 被告は市川市の日下部病院を経営する医療法人と主治医。1審は「必要量の輸血をしていれば、死亡は回避された」と過失を認定していた。【渡辺暖】

「リピーター医師」を再教育 日本医師会、来年度から

2004/09/14 The Sankei Shimbun
 日本医師会(日医)は14日、医療事故を繰り返す「リピーター医師」を矯正するため、特別なカリキュラムで再教育する「医療安全再教育制度」(仮称)を創設すると発表した。本年度中に日医内の委員会で制度の具体的な内容を作成、来年度から実施する予定。

 さらに、リピーター医師などについて、氏名の公表や再教育をしても、矯正されない場合、制裁として除名する方針も示した。

 日医は、リピーター医師を「反省なく事故を繰り返す医師・医療機関であり、日ごろの医療実践の中で著しい非行や未熟な行為が判明したもの」と定義。委員会や各地の医師会と連携して再教育を受けるべき医師を判定する。

 再教育を受ける前の途中退会を認めないほか、日医に入会していない非会員の医師にも再教育を受けるよう促す方針。

 リピーター医師の再教育制度は、厚生労働省も10月に検討会を設置することを決めている。日医は独自の制度をつくり、厚労省の具体案が明らかになれば「一緒に協議することもあり得る」としている。

 また医療の質を担保するため、医師免許に更新制を導入することについても「社会の要請があることは理解しており、検討の余地はある」として、厚労省が導入を検討する場合は前向きに対応する姿勢を示した。

最高裁、患者の薬アレルギー死で病院の過失認める

2004/09/07 読売新聞 Yomiuri On-Line
 医師が薬剤投与にあたり、急激なアレルギー反応(アナフィラキシーショック)への十分な備えをしなかったことなどが原因で患者が死亡したとして、遺族が約1億2000万円の賠償を病院側に求めた訴訟の上告審判決が7日、最高裁第3小法廷であった。

 藤田宙靖(ときやす)裁判長は、「病院はショックに備えて投与の経過観察を十分に行い、発症後に迅速で的確な救急処置を取れるよう医療態勢を整える注意義務があるのに、怠った」と述べ、請求を棄却した大阪高裁判決を破棄した。そのうえで、死亡との因果関係について審理を尽くさせるため同高裁に差し戻した。

 判決によると、神戸市内の男性(当時57歳)は1990年8月、国家公務員共済組合連合会が経営する「大手前病院」(大阪市)に入院。結腸がんの手術の18日後、投与していた抗生剤の種類を変更した直後に急性循環不全で死亡した。変更後の薬剤には、副作用としてショック症状の可能性を示す注意書きもあった。

診療中の事故1割超す、厚労省が全国18病院を調査

2004/09/07 読売新聞 Yomiuri On-Line
 全国の病院で、医療事故を含む診療中の「有害事象」の発生率が10%を超えることが、厚生労働省の研究班の中間報告で7日、分かった。

 国内には現在、医療事故の報告制度がなく、医療事故の目安となる発生率が具体的に明らかになったのは初めて。研究班で今後、調査を進め、厚労省はその結果をもとに事故防止策などを探る。

 調査対象となったのは、全国から無作為に選んだ30病院。このうち18病院が調査に同意した。

 研究班では、「有害事象」として〈1〉患者の死亡が早まった〈2〉退院時に患者に障害が残った〈3〉新たな入院が必要になった〈4〉入院期間が延びた〈5〉予定外の処置や治療が新たに必要になった――の5項目を定義。調査は各病院から無作為抽出で250冊の診療録(カルテ)の提出を受け、看護師、医師が2度にわたって、各項目に該当するケースがないかを調べた。

 発生率がまとまったのは、18病院のうち調査を終えた計6病院で、大学病院など高度な医療を提供できる「特定機能病院」が3病院、その他の病院が3病院。発生率は、特定機能病院が10・5―12・2%、その他の病院が11・1―12・8%とほぼ同じだった。

注射ミス、医師が無罪主張 薬剤間違え女児寝たきりに

2004/09/06 The Sankei Shimbun
 京都府宇治市の宇治川病院で2001年1月、じんましんの治療中だった加藤美嘉ちゃん(10)=同府城陽市=が薬剤を取り違えて注射され寝たきり状態になった事件で、業務上過失傷害罪に問われた医師堀道輝被告(71)と元准看護師南千代子被告(63)の初公判が6日、京都地裁(氷室真裁判長)で開かれた。

 堀被告は「(注射後の)処置は適切だった」と無罪を主張。南被告は薬剤を間違えたことは認めたが「注射は(堀被告の)指示通りにやった」と主張した。

 起訴状によると、南被告は01年1月15日、薄めて使うべき治療薬の塩化カルシウム液と間違え、塩化カリウム液の原液を美嘉ちゃんに注射。

 美嘉ちゃんは容体が急変し心停止したが、堀被告は心臓マッサージなど必要な蘇生(そせい)措置をせず、約20分間放置。美嘉ちゃんに低酸素脳症による全身まひなどの傷害を負わせた。

 美嘉ちゃんの両親は、宇治川病院と堀被告らに計約2億6000万円の損害賠償を求める訴訟を京都地裁に起こしている。

治療ミスで患者死亡させた医師3人、書類送検…兵庫

2004/09/03 読売新聞 Yomiuri On-Line
 兵庫県伊丹市の民間医療機関で昨年5月、腹水を取り除く治療を受け出血した同市内の男性(当時32歳)に十分な止血措置を行わず、死亡させたとして、県警捜査1課などは3日、市立伊丹病院の診療部長(59)と同内科医長(41)、民間医療機関の院長(57)の3人を業務上過失致死容疑で神戸地検に書類送検した。

 調べによると、男性は昨年5月20日、肝硬変でたまった腹水を民間医療機関で除去。針を腹に刺した際、血管を損傷し血液が逆流したが、数秒間で収まったため、院長は止血措置をしなかった。帰宅後、男性は腹痛を訴え、市立伊丹病院に救急搬送された。診療部長と内科医長は、腹の右に血管損傷による腫瘤(しゅりゅう)を見つけ、出血が進む可能性が高かったのに、開腹手術などの十分な止血措置を講じず、翌日に男性を死亡させた疑い。

 県警は、両医療機関の医師らのミスが重なった複合過失と判断した。

チューブ誤挿入で80代の男性死亡 神奈川の県立病院

2004/08/23 The Sankei Shimbun
 神奈川県松田町の県立足柄上病院(堀口一弘院長、336床)で、80代の男性患者が胃に入れるべきチューブを誤って肺に挿入され、死亡する医療事故があったことが23日、分かった。

 松田署が司法解剖した結果、死因は急性肺炎だった。同署は業務上過失致死の疑いがあるとみて看護師や医師らから事情を聴いている。

 病院などによると、男性患者は肺腫瘍(しゅよう)などの治療で入院中で19日午後、看護師が栄養補給のためのチューブを誤って肺に挿入したという。病院は翌20日昼すぎ、誤挿入に気付いたが、男性は同日夜、死亡した。

 病院は遺族に事情を説明し謝罪した。病院側は「取り返しの付かないミスで申し訳ない。再発防止に全力で取り組む」としている。

医療中の死、第三者機関が検証 厚労省、来年度設置へ

2004/08/22 asahi.com
 手術や治療で起きた事故死などを含む不審な医療関連死をめぐり、厚生労働省は原因を究明するための調査、分析を公費で行い、患者側と病院に報告する第三者機関を来年度から設置する方針を固めた。事例の内容は公表する。当面は、東京や大阪など法医学や病理学の医師の体制が整っている5カ所程度の地域でモデル事業を行い、軌道に乗れば全国に広げる。長期化しがちな患者と病院との紛争を早期に解決させ、事例を積み重ね再発防止策にも役立てることを目指す。

 第三者機関によるシステムは、専門性の壁に阻まれ、弱い立場の患者側にとって「不審な死」についての真相究明が進む効果も期待される。

 調査対象は医療事故を含め、予期できなかった死亡や診療行為による合併症などで死亡した場合など、死因があいまいな事例。明らかな病死や刑事事件になる可能性が高いものは対象外とする。

 第三者機関の主要メンバーは、内科、外科、法医、病理の4学会を中心に、関係学会や医師会の協力を得ることを想定している。

 医療関連死があった場合、患者の遺族は病院などを通じて第三者機関に調査を依頼する。遺族の同意を前提に病院が自主的に依頼することもできる。第三者機関が調査を必要と判断すると、法医学、病理学の専門医が解剖を実施。これと並行して、疾患に関連する学会の専門医が死亡した患者のカルテを見たり、主治医からヒアリングをしたりして死因を調査する。

 こうした調査を受け、第三者機関に設置する評価委員会が死因を特定する報告書をまとめ、病院と患者の遺族に提出。事例を積み重ねることによって、予防・改善策を検討できることも期待しており、プライバシーに配慮しながら事例の内容を公表する。

 病院側に責任が認められると、両者間で賠償問題が発生することも考えられるが、第三者機関は関与しない。調査件数は年間200件程度を想定し、解剖や調査にかかる人件費などを中心に公費で負担する予定で、来年度予算の概算要求に盛り込む予定だ。

 厚労省は今後、対象とする死亡例の基準や、調査の具体的な手順、評価委員会のメンバー構成などを詰める。モデル事業を通じて課題を探り、全国展開したいという。

 医療事故をめぐる民事訴訟は年々増加する傾向にあり、最高裁によると、医療事故にかかわる訴訟は03年には約千件にのぼり、10年間で2倍強になった。医療訴訟は長期化するため、第三者の目を通すことで死因に客観性や中立性を持たせ、紛争を早期に解決することを目指す。

 医療事故をめぐっては、財団法人・日本医療機能評価機構(東京都千代田区)が10月から、大学病院などから重大事故に関する情報を集め類型化し、再発防止に役立てる仕組みが始まる。しかし、個別のケースを専門医らが調査することはなく、今回の第三者機関は初めての本格的なシステムとなる。

器具の不具合で心臓手術患者が死亡…岩手県立北上病院

2004/08/20 読売新聞 Yomiuri On-Line
 岩手県立北上病院(北上市九年橋)は20日、心臓手術を受けた40歳代の男性患者が医療器具の不具合で死亡したと発表した。

 病院によると、男性は7月29日、狭くなった心臓の血管を広げる手術を受けた。循環器科の医師が微細な管の先に風船を付けたカテーテルを血管内に通し、患部でふくらませた。この後で風船をしぼませようとしたが、膨らんだまましぼまなくなった。

 男性は心臓に血液が流れなくなり、心筋こうそく状態に陥り、転院先の病院で今月1日に死亡した。なぜ風船がしぼまなくなったのかは、分かっていないという。

 カテーテルは米ボストン・サイエンティフィック社製。同社は病院に「このカテーテルを使った手術60万例のうち、抜けなくなったのは52例で、死亡は2例」と説明していた。

 後藤勝也院長は会見で「ご遺族に深くおわび申し上げる」と謝罪した。

MRSA陽性に気付かず患者死亡 鹿児島大病院で医療ミス

2004/08/05 The Sankei Shimbun
 鹿児島大病院(田中信行院長)は5日、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)陽性との手術前の検査結果に気付かず手術を行い、手術後に患者がMRSA感染がもとで敗血症となり死亡したと発表した。

 病院側は記者会見で、見落としがなければ死亡を防止できる可能性があったことなどを理由に医療ミスと認めた。田中院長は「ご遺族のみなさまに深くおわび申し上げます」と謝罪した。また鹿児島南署などに事故を報告した。

 病院側の説明によると、成人の患者が外科手術のために今年6月に入院。同じ日に外来で鼻腔(びくう)細菌の検査を行ったところMRSA陽性と判明。しかし手術時に30代の男性主治医が検査報告書を見忘れ、そのまま手術を行った。手術後3日目にドレーンという器具を抜いた際、手術跡からうみ状のものが出たため、検査したところMRSA陽性を確認。抗生物質の投与を行ったが、患者は術後約2週間で敗血症で亡くなった。

 手術前と手術後のMRSAの菌型は同一であるが、感染経路は特定できていないという。

 同病院では6月にこれ以外にも4件のそれぞれ菌型が異なるMRSAの感染症が発生しているという。

呼吸器外され5分間放置、80代女性死亡

2004/07/26 The Sankei Shimbun
 青森市の青森県立中央病院は26日、11日にたんの吸引のため人工呼吸器を外された80代の女性患者が死亡する医療ミスがあった、と発表した。

 原田征行院長によると、11日午後零時35分ごろ、女性看護師がこの患者のたんを取り除くためいったん人工呼吸器を外したが、別の病室から呼ばれ、そのまま病室を出た。

 約5分後に、別の患者の付添人がこの患者の顔色が悪いことに気付き、ナースコールをした。別の看護師が人工呼吸器を装着したが、午後1時15分、死亡が確認された。

警報音20回、看護師対応せず心臓病患者死亡

2004/07/22 読売新聞 Yomiuri On-Line
 循環器系疾患の先進治療で知られる「榊原記念病院」(東京・府中市)で3月、入院中の男性患者の容体が急変、心臓の異常を知らせる警報音が何度も鳴ったにもかかわらず発見が遅れ、患者が死亡する事故があったことが22日、分かった。

 病院側は対応が不適切だったとして遺族に謝罪。警視庁は業務上過失致死の疑いで関係者から事情を聞くなど捜査を始めた。

 亡くなったのは都内の国立大4年生だった間下智亮さん(当時23歳)。間下さんの両親や病院の説明によると、6歳の時に先天性の心臓病の手術を受けた間下さんは、下半身にむくみが出たため今年3月19日に入院。不整脈と診断され、血栓も確認されたことから心電図モニターによる監視を受けることになった。

 モニターは患者に送信機を付け、看護師の作業スペースに置かれた受信機で電波を受けて脈拍の状態などを見る仕組みで、異常があるとパソコンの電子音で警告する。入院5日目の23日、朝食を取った間下さんは午前9時過ぎ、近くのトイレに入って容体が急変。脈の回数の異常を知らせる警報音が同40分から56分の間に20回鳴ったが、看護師らは対応せず、10時45分ごろになって、看護師が心停止状態で倒れていた間下さんを発見。救急措置を施したが同日夜、死亡を確認した。

 病院によると、間下さんが入院していた病棟に当時いた3人の看護師のうち1人は警報音に気づいたが、「電波が届かないところにいる」と思いこみ、よく調べず、他の看護師は救急患者の処置に追われて気づかなかった、という。

 両親は都内で会見し、「有名な病院で安心していたのに、なぜ対応が遅れたのか納得できる説明がない」と不満を述べた。

 菊池利夫副院長は「病状の変化は予想外だったが、処置が早ければ救命できた可能性はあった。申し訳ない」と謝罪している。

愛媛県に二審も賠償命令 医療過誤訴訟で高松高裁

2004/07/20 中国新聞ニュース
 愛媛県立中央病院で狭心症の手術を受け死亡した男性=当時(58) =の遺族が「病院側が処置を怠った」として、県に約一億七百六十万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、高松高裁(松本信弘裁判長)は二十日、約七千三百七十五万円の賠償を命じた一審松山地裁判決を支持、県側の控訴を棄却した。

 判決によると、男性は一九九七年一月、愛媛県立中央病院で狭心症の手術を受けた直後に容体が急変。全身がけいれんするなどのショック状態になったため、医師らが心臓マッサージなどをしたが、低酸素脳症に陥り意識が回復しないまま九八年四月に死亡した。

 昨年九月の一審判決は病院側のミスを認め、県が「処置は適切だった」として控訴した。

富士見産科訴訟、元勤務医の上告棄却…患者勝訴が確定

2004/07/13 読売新聞 Yomiuri On-Line
 旧「芙蓉(ふよう)会富士見産婦人科病院」(埼玉県所沢市、閉鎖)の不正診療事件に絡み、不要な手術で卵巣や子宮を失ったとして、患者と遺族63人が、元勤務医4人に損害賠償を求めた訴訟で、最高裁第3小法廷(藤田宙靖(ときやす)裁判長)は13日、元勤務医側の上告を退ける決定をした。

 元勤務医らに総額約5億1000万円の賠償を命じた1、2審判決が確定した。

 経営母体の元理事長夫婦らは既に敗訴が確定しており、1981年の提訴から23年間で、患者側勝訴が最終決着した。

 1、2審判決によると、同病院では73年以降、経営母体の医療法人「芙蓉会」元理事長が、医師の資格がないのに、超音波断層診断装置で「子宮が腐っている」などと虚偽の診断をした。元理事長の妻の元院長や勤務医らも、手術不要の患者を入院させ、健康な子宮や卵巣を摘出した。

 患者側は、芙蓉会と元理事長ら7人、国、埼玉県を相手取り、約14億4400万円の賠償を求めて提訴。東京地裁は99年、国と県の責任を否定する一方、芙蓉会と7人に連帯して約5億1000万円を支払うよう命じ、元理事長夫婦は控訴せずに確定した。その後元勤務医1人が死亡し、芙蓉会が控訴を取り下げたため、東京高裁は昨年、勤務医4人の控訴を棄却した。

 死亡した元勤務医の遺族が1億5000万円の和解金を患者側に払っているため、残る賠償額は約3億6000万円となる。

 元理事長夫婦は80年、医師法違反などの罪で起訴され、90年に有罪が確定している。

 被害者同盟の小西熱子代表(52)の話「判決確定まで長すぎた。被告の医師は今も医療行為を行っており、医師免許の取り消しを行政側に求めても、係争中だからと逃げられ、悔しい思いをしてきた。病院側の破産で賠償金は得られず、今後、何らかの救済がなされるべきだ」

医療事故など、国民の健康に新たな脅威指摘…厚労白書

2004/06/18 読売新聞 Yomiuri On-LIne
 坂口厚生労働相は18日午前の閣議に2004年版厚生労働白書を報告した。

 「現代生活を取り巻く健康リスク―情報と協働でつくる安全と安心」を副題とした白書は、経済発展や技術革新などで国民の健康水準が向上する一方、健康を脅かす要因(健康リスク)が新たに発生していると指摘。

 具体例として、食品安全問題、医療事故などを挙げ、国民、行政、企業、医療従事者などが情報を共有し、社会全体で対策に取り組む必要性を強調している。

アトピー悪化は医師の過失 医院に640万円賠償命令

2004/06/16 The Sankei Shimbun
 ステロイド剤の代わりに刺激の強い薬剤を用いた不適切な治療法でアトピー性皮膚炎が悪化したとして、東京都の女児(8つ)と両親が、都内で皮膚科医院を運営する医療法人と院長に約1150万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、東京地裁は16日、医院側に約640万円の支払いを命じた。

 女児らの代理人弁護士によると、非ステロイド治療で医院側の過失を認めた判決は初めて。

 判決理由で片山良広裁判長は「刺激やかゆみを感じさせる治療で、かえって症状を著しく悪化させ、全身衰弱をもたらした」と指摘。「医師として因果関係を知り得たのに治療を続けた過失がある」と判断した。

 判決によると、女児は足に湿疹(しっしん)が消えなかったため2000年4月、この医院を受診し、アトピー性皮膚炎と診断された。院長の勧めで、レーザー照射や刺激の強い外用剤を使った非ステロイド治療を受けたが、直後から全身に炎症が広がり、高熱や脱毛などの症状が続いた。

 医師は症状の急変を「別の病院で処方されていたステロイド外用剤を中断したことによるリバウンド」と説明し、漢方薬や小児への使用を禁じられた軟こうを処方したが症状はさらに悪化。女児は約3カ月後に金沢大病院に入院してステロイド剤による治療を受け、約1年で回復した。

 訴訟で病院側は「非ステロイド治療で知られた医院なので、患者も納得していたはずだ」と反論していた。

 <アトピー性皮膚炎> 強いかゆみを伴う湿疹(しっしん)が全身にできる。ダニやハウスダストなどさまざまな要因が関連して発症するとされる。ステロイド系外用剤を用いた治療が一般的だが、効果のない高額な健康器具を売るアトピー商法や、非専門医によるステロイド離脱治療などが問題化している。日本皮膚科学会は治療指針で、症状に応じた適切な薬物療法を呼び掛けている。

採血ミスで後遺症 患者、安浦町を提訴

2004/06/15 中国新聞地域ニュース
 広島県安浦町の町立国保診療所で看護師が採血で誤って動脈を刺して内出血し、後遺障害が残ったとして、同県豊田郡の元船長男性(58)が十四日までに、病院を管理運営している町に約八千五十七万円の損害賠償を求める訴訟を広島地裁呉支部に起こした。

 訴えによると、男性は二〇〇二年八月、健康診断で病院から採血を勧められた。看護師が左腕に採血用の針を刺した際、静脈ではなく動脈に刺さり、多量の内出血をした。

 その後、化膿(かのう)止めや痛み止めの薬などを処方され、紹介された他の病院に通うなどしたが症状は改善せず、鈍痛や握力がなくなるなどの症状が続いている。

 五月二十五日に提訴した男性は「三カ月以上は内出血で腕が黒くなっていた。船の仕事は重労働で、もうできなくなった」と話している。町は「慰謝料を示したが、折り合いが付かなかった」と説明。「被害を与えたのは申し訳ない。来年三月の呉市との合併前の早期解決を図りたい」としている。

投薬ミスで女性患者死亡 豊橋市民病院、遺族に謝罪

2004/06/07 The Sankei Shimbun
 愛知県豊橋市の豊橋市民病院で昨年6月、リウマチの女性患者(63)が抗リウマチ剤の過剰投与で再生不良性貧血を起こし、合併症で死亡していたことが7日分かった。同病院は投薬ミスを認め、遺族に謝罪した。

 同病院によると、女性は2001年1月に通院を開始。02年5月から、再生不良性貧血を引き起こす可能性がある抗リウマチ剤を毎日1錠投与し、昨年3月には投与量を毎日2錠に増やした。

 昨年5月、女性が体調不良を訴えて緊急入院。再生不良性貧血が判明し、抗リウマチ剤の投与を中止したが、肺炎と敗血症を併発して6月12日に死亡した。

 同年4月の血液検査で再生不良性貧血との結果が出ていたが、男性主治医(36)が検査結果を見落とし、入院するまで約3週間にわたって抗リウマチ剤の投与を続けていたという。

 同病院は先月、3100万円を支払うことで遺族と合意した。院長は「誠に申し訳ない。今後このようなことがないよう注意したい」としている。

 再生不良性貧血は、血液を作る骨髄の働きが衰え、血液中の赤血球などが減少する厚生労働省の指定難病。

点滴ミスで女性患者死亡 千葉の成田赤十字病院

2004/05/27 The Sankei Shimbun
 千葉県成田市の成田赤十字病院(加藤誠院長)で16日に女性看護師(22)の点滴ミスで60代の女性患者が死亡していたことが分かった。同病院が27日、記者会見し明らかにした。

 病院によると、女性は4月中旬から入院。今月15日、血液中のカリウム濃度が下がったため、男性医師(38)が点滴に塩化カリウム20ミリリットルを混ぜるよう看護師に指示した。

 塩化カリウムは栄養剤の入った点滴パックに混ぜ薄めて投与するとの指示だったが、看護師は16日午前1時すぎ、誤って直接静脈に点滴。心電図に異常が出たため別の看護師が駆けつけたが、約1時間後に心不全で死亡した。

 塩化カリウムを直接静脈に注射すると、心臓まひなどが起こる可能性がある。医師は点滴方法を書類で指示していたが、勤務2年目の看護師が確認を怠ったとみられる。

 同病院は16日に成田署に届け出た。千葉県警が業務上過失致死容疑で捜査している。

 加藤院長は会見で「ダブルチェックを徹底するなどマニュアルを作成し、防止対策に努める」と陳謝した。

放射線過剰照射で?死亡、和歌山県立医大病院が謝罪

2004/05/17 読売新聞 Yomiuri On-Line
 和歌山市の和歌山県立医大病院が、和歌山市の咽頭(いんとう)がんの男性入院患者(当時70歳)に、治療計画の1・13倍の放射線を照射し、患者が8か月後に咽頭出血で死亡していたことが17日、わかった。解剖の結果、がん付近の正常細胞が壊死するなど放射線障害の症状があり、病院側は「過剰照射と因果関係がある可能性が高い」とし、遺族に謝罪した。

 病院によると、過剰照射があったのは昨年9月19日と22日。放射線科の助教授の機器入力ミスによるもので、23日に誤りに気づき、治療を中断した。患者はがん細胞が消え、いったん退院したが、今年3月にのどの痛みを訴えて再入院し、今月死亡した。

 大西克尚院長は「原因究明と再発防止に努めたい」と話した。

美容整形手術で女性死亡 京都、業過致死で医師を書類送検

2004/05/11 The Sankei Shimbun
 京都市下京区の「川崎クリニック山口美容外科」で美容整形手術を受けた滋賀県甲南町の女性=当時(50)=が脳死状態に陥ってその後死亡する事故があり、京都府警五条署は11日、執刀医に過失があったとして、業務上過失致死容疑で同医院に勤務する男性医師(34)=大阪府吹田市=を書類送検した。

 調べでは、医師は昨年9月14日、女性に麻酔薬を投与して下あごの骨を削る手術を実施。女性は途中で気道閉鎖を起こし体内酸素濃度が低下、脳死状態になり、意識が戻らないまま10月2日、転院した病院で肺炎のため死亡した。

 医師は、麻酔薬を使う手術では気道閉鎖などが想定されるのに酸素吸入のためのボンベを準備せず、業務上必要な注意義務を怠った疑い。

 同署によると、医師は「救護措置が十分でなく悔やまれる」と容疑を認めている。100例以上の同様手術の執刀経験があるが、いつもボンベを準備していなかったという。

 川崎クリニックは京阪神を中心に数医院を展開。女性の遺族には約5000万円を支払い、示談が成立しているという。

 川崎クリニックは「医師が適切な処置をとったと信じたいが、司直の判断を待ちたい。誠意を持って対応した」としている。

医療ミス:研修医の大量投薬で女性患者死亡 北里大学病院

毎日新聞 2004/05/08 MSN-Mainichi INTERACTIVE
 神奈川県相模原市の北里大学病院(藤井清孝院長)で、20代の研修医が通常の使用量を大幅に上回る不整脈治療剤を70代の女性患者に投与し、患者が死亡していたことが7日、分かった。

 同病院などによると、男性研修医(25)が4月6日の当直時間の午後11時ごろ、がんで入院していた女性患者(76)の不整脈を看護師から知らされ、不整脈治療剤「リドカイン」を静脈注射した。その後、女性の容体が急変し、数時間後に急性リドカイン中毒で死亡した。リドカインの濃度には2%と10%の2種類があり、10%のものを2%の量で誤って使ったという。

 同病院は事故を同県警相模原署に報告。同署は研修医らから業務上過失致死容疑で事情を聴いており、研修医は「処方する量を間違えてしまった」とミスを認めているという。

医療安全支援センター設置へ 広島市

2004/05/08 中国新聞地域ニュース
 広島市は七月をめどに、市役所内に「医療安全支援センター」を設ける。患者や家族からの医療事故相談などの対応充実を図る。

 市役所十一階の社会局保健部に、相談室を設置する。専門知識を持った嘱託職員や事務員が常駐して、電話と面談で対応する。センターは中立的な立場で、市内の医療機関に対する患者や家族からの苦情や不安などを受け付け、問題解決を図るため医療機関との仲介にあたる。病気に関する相談などにも応じる。

 医療関係者や弁護士、学識経験者、市民代表ら約十人で構成する「医療安全推進協議会」をつくり、センターの活動内容や相談事例などについて助言や指導を受ける。市民代表は近く公募する。

 医療事故が全国で相次ぐ中、厚生労働省が二〇〇二年度から、都道府県と保健所を設置する市と特別区に、支援センターの設置を要請している。広島県は昨年十一月、県庁内に開設し、政令市では四月現在で川崎、京都、神戸市が開設している。

医療過誤判決、東大病院に6600万賠償命じる2004/04/27 読売新聞 Yomiuri On-Line
 手術後に研修医が麻酔導入薬を過剰投与したうえ、適切な心肺蘇生(そせい)処置も怠ったため、植物状態になったとして、患者と家族が東大医学部付属病院(東京都文京区)に、約1億300万円の賠償を求めた訴訟の判決が27日、東京地裁であった。

 菅野博之裁判長は「麻酔導入薬投与の結果、呼吸困難などの症状が生じるのは予見できたのに、経験不足の研修医が単独判断で投与を行ったのは過失にあたる」と述べ、計約6600万円の支払いを命じた。

 手術を受けたのは、大阪市で中国語塾を経営していた中国籍の楊鴻飛さん(85)。現在も同市内で入院生活を送っている。

 判決によると、楊さんは脳下垂体腺腫(しゅ)と診断され、1998年9月に東大病院に入院し、手術を受けた。ところが、手術翌日になり、手術の影響で興奮状態に陥った。麻酔導入薬「ドルミカム」を投与したが、その直後に呼吸が止まった。研修医が当直医をポケベルで呼んだが返答がなく、救急部の医師の到着も遅れた。蘇生措置を試みたものの、楊さんは植物状態となった。

 永井良三院長の話「当方の主張が認められず残念だ。今後の対応は関係機関と協議したい」

医療過誤:禁止の抗がん剤併用、入院の患者死亡−−川崎・聖マリアンナ医大東横病院 毎日新聞 2004年4月27日 Mainichi INTERACTIVE
 川崎市中原区の聖マリアンナ医科大東横病院(斎藤宣彦院長)で、大腸がん治療のため入院した60代の男性患者に、併用が禁止されている2種類の経口抗がん剤が同時に処方され、多臓器不全で死亡していたと同病院が27日、発表した。病院側は既に遺族に謝罪し、神奈川県警中原署に死亡を報告している。

 病院によると、男性は今年3月18日に入院。同25日に主治医がそれまで使っていた経口抗がん剤を「フルツロン」(商品名)から「ティーエスワン」(同)に変更した。5日後、男性が他に服用していた胃かいようなどの薬が切れ、主治医とは別の研修医が処方したが、前回の処方を参考にしたため変更前のフルツロンも誤って一緒に処方。男性は3月31日から3日間、2種類の抗がん剤を同時に服用した。主治医が気付いて中止したが、4月13日に死亡した。

 二つの抗がん剤は併用すると毒性が強まり、白血球や血小板が急減する危険な副作用が出る。【伊藤直孝】

医療ミス:リピーター医師の処分制度、日医が1年以内に 毎日新聞 2004年4月21日 Mainichi INTERACTIVE
 日本医師会(日医)の植松治雄新会長は21日、医療ミスを繰り返す「リピーター」など悪質な医師について、除名を含めた厳しい処分をする制度を1年以内に設けることを明らかにした。全国の医師の6割に当たる約16万人が加入する最大の団体が独自の対策に踏み切れば、問題のある医師の排除や事故防止が大きく進みそうだ。

 植松会長は東京都千代田区の日本記者クラブで講演し、「安全で安心できる質のいい医療をどのように国民に提供できるかが一番に求められている」と述べ、医療事故対策が日医の最大の課題であることを強調した。

 日医は国民の医療不信に応えるため、「自浄作用活性化委員会」をつくったり、会員向けの冊子「医の職業倫理」を配布してきた。しかし植松会長は「外部から『本当に自浄作用が進んでいるとは思えない』と批判を受けている。これからは実行に移し、本当に(日医が)変わったと見られない限りは信頼されない」と語り、取り組みが不十分だったことを認めた。

 そのうえで植松会長は今年度内にリピーター医師の具体的な処分基準などをまとめ、制度をスタートさせることを明言。各都道府県医師会にも新たに設置する「自浄作用活性化委員会」を通して情報を集める。

 リピーター対策をめぐっては、産婦人科の開業医らで作る日本産婦人科医会(会員約1万2800人)が、リピーター医師を把握して再発防止を図るため、会員に事故報告と研修義務を課す制度を今月から始めた。同会は報告を怠ったり、医療行為に改善が見られない場合は会員の除名や専門医の資格停止の処分を検討している。【江刺正嘉】

医療過誤:血管に空気注入で死亡、医師を書類送検 熊本市 毎日新聞 2004年4月16日 Mainichi INTERACTIVE
 熊本市の熊本赤十字病院(東大弼(ひがしだいすけ)院長)で心臓カテーテル検査中に誤って血管に空気を注入するミスのため男性患者(当時80歳)が死亡する医療事故があり、熊本東署は担当の男性医師(29)を業務上過失致死容疑で16日、熊本地検に書類送検した。

 調べでは、医師は同病院に勤務していた03年9月30日、動悸(どうき)と息苦しさを訴えた男性患者に心臓カテーテル検査を行った際、注入器具内の空気の有無の確認を怠り、造影剤と共に空気を男性の冠動脈に注入した疑い。男性は直後に心筋こうそくに似た症状を引き起こし、約2週間後の10月13日、多臓器不全で死亡した。

 病院によると、医師は01年6月に医師免許を取得、03年4月〜04年3月末の間、同病院循環器科に勤務。心臓カテーテル検査の経験は助手役を含め約200回あったという。

 東院長は16日、記者会見し「基本的な確認のミスによって発生した医療事故。ご遺族の方々に対し心からおわび申し上げる」と謝罪した。病院と遺族の間では同日、示談が成立したという。【門田陽介】

内視鏡手術で動脈傷つけ男性死亡 愛媛県立中央病院 2004年03月22日 The Sankei Shimbun
 愛媛県立中央病院(松山市)で今月18日、同県北条市の80歳の男性患者の胃に栄養剤を送るチューブを入れるため穴を開ける内視鏡手術を実施中、誤って大動脈を傷つけ、男性を失血死させていたことが22日、分かった。松山東署は業務上過失致死の疑いで調べている。

 同病院によると、手術は50代と20代の2人の男性医師が担当。20代の医師が内視鏡手術を行った。手術終了後、男性の血圧と呼吸が低下。検査で体内での出血が疑われたため、輸血や点滴をした後、止血のため開腹手術に踏み切ったが回復せず死亡したという。

 同病院は19日、松山東署に届け出た。男性はくも膜下出血で別の病院に入院していたが、脳こうそくや肺炎などを併発し3月4日、中央病院に転院したという。

 同病院の藤井靖久院長は「遺族に対し心よりおわびする。警察の捜査を待ち、誠意を持って対応したい」と話している。

青戸病院手術ミスで3医師ら医業停止処分 医道審が答申 2004年03月17日 The Sankei Shimbun
 厚生労働省医道審議会は17日、東京慈恵会医大青戸病院(東京都葛飾区)の腹腔(ふくくう)鏡手術ミスで患者を死亡させた事故で、執刀医ら医師2人を医業停止2年の行政処分とするよう答申した。手術実施を認めた当時の診療部長(不起訴)も監督責任を問い、医業停止3カ月とした。

 答申を受け、坂口力厚労相が18日に最終的に処分を決定する。

 この事故では3医師が業務上過失致死罪に問われ、東京地裁で公判中。医療ミスが続く中、厚労省は重大な不正をした医師は判決確定を待たずに処分する方針を打ち出しており、その初適用となった。医療事故で刑事責任を問われなかった上司の医師が行政処分を受けるのも初めて。

 さらに医道審は埼玉医大総合医療センターで2000年、抗がん剤を過剰投与して女子高生=当時(16)=を死亡させ、業務上過失致死罪で有罪が確定した当時の主治医も医業停止3年6カ月とするよう答申した。

 厚労省医事課によると、医療事故による医師への処分はこれまで医業停止1年6カ月が最も重く、青戸病院の2医師も含め最も厳しい処分。

 青戸病院事故で医業停止2年とされたのは、執刀医だった斑目旬(38)、患者の主治医で手術の助手だった長谷川太郎(34)の両被告。手術の助手で一緒に起訴された医師は公判で起訴事実を否認しており、今回は諮問されなかった。

 医道審は従来、刑事事件で有罪確定したか、診療報酬の不正請求をした医師、歯科医師を処分対象としていた。しかし青戸病院のケースは未熟な医師が指導医の立ち会いも求めず、腹腔鏡手術での前立腺摘出という難手術を強行しており、医師法が処分対象とする「医事に関する不正行為」に当たると判断、刑確定前の処分を答申した。

 起訴状によると、斑目被告らは02年11月、千葉県の男性=当時(60)=の前立腺がんを摘出するため腹腔鏡手術を行った際、誤って静脈を傷つけるなどして大量出血させ、死亡させた。

刑確定前の医師処分諮問へ 東京慈恵会医大青戸病院事故 2004年03月16日 The Sankei Shimbun
 厚生労働省は15日、東京慈恵会医大青戸病院(東京都葛飾区)の腹腔(ふくくう)鏡手術ミスで患者が死亡した事故について、当時の主治医ら医師3人の行政処分を17日に開かれる医道審議会医道分科会に諮問することを決めた。

 この事故では主治医だった長谷川太郎被告(34)ら手術にかかわった3人の医師が業務上過失致死罪に問われ、東京地裁で公判中。厚労省は相次ぐ医療事故対策として、重大な不正があるケースでは有罪確定前でも医師を処分する方針を打ち出しており、処分が決まれば適用第1号となる。

 医道審は従来、有罪判決確定者と診療報酬を不正請求した医師を処分対象としていたが、昨年10月、重大な不正は早期に処分する方針を決めた。未経験の難手術を指導医の立ち会いもなく行った青戸病院事故はこの対象になり得るとして、厚労省が本人の聴聞手続きなどを進めてきた。

 起訴状によると、長谷川被告らは02年11月、千葉県の男性=当時(60)=に対し、腹腔鏡手術で前立腺がんを摘出しようと計画。誤って静脈を傷つけるなどして大量出血させ、1カ月後に死亡させた。

 東京地検は公判で、長谷川被告らが難しい手術を未熟なまま興味本位で行ったとしている。手術を許可した当時の診療部長や輸血担当の麻酔医ら3人も書類送検されたが不起訴となっている。

医療事故:同じ施設で同じようなミス繰り返す 総務省調査 2004年03月12日 [毎日新聞]Mainichi INTERACTIVE
 全国の大規模病院の中で、同じ施設で同じようなミスが繰り返されているケースが相次いでいることが12日、総務省の医療事故に関する行政評価・監視結果で分かった。同省は、安全対策が不十分だとして、全国すべての医療施設に事故を報告させる制度の導入や、事故防止策を検討するため全施設に設置が義務付けられている安全管理委員会を活性化させることを厚生労働、文部科学両省に勧告した。

 頻発する医療事故を受け、総務省が初めて調査・勧告した。全国の医療施設の中から、公立や民間の病院も含め計217施設を任意抽出し、01年1月から02年7月までの約1年半の事故について調査した。

 それによると、手術器具やガーゼを誤って体内に残したり、点滴投与の対象患者を間違うなど、同じ施設で同じ種類のミスを繰り返しているケースが17施設で計91例あった。死亡したり、重度障害を負う例はなかったが、同省は「一歩間違えば深刻な事態に陥る」として、安全対策の徹底を要請した。

 また、安全管理委員会は3施設で設置されていなかったほか、大学病院・国立病院の計4施設で一度も開催されていないなど、活動実績が乏しいことも判明した。

 厚労省は04年度から、大学病院や国立病院などの大規模施設に限定して事故報告制度を始めるが、総務省は「再発防止のためには全施設からの報告が必要」としている。【江刺正嘉】

毒カレー「日赤の治療に過失」、200万円賠償命令2004/03/02 読売新聞 Yomiuri On-Lin

 和歌山市の毒物カレー事件で、初期治療が不適切だったなどとして、鳥居幸さん(当時16歳)の遺族が保健所を設置する市と日赤和歌山医療センターを運営する日本赤十字社(東京都)に慰謝料など計5000万円、谷中孝寿さん(同64歳)の遺族が市に1000万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が2日、和歌山地裁であった。

 礒尾正裁判長は、同医療センターの初期治療について「脈拍や血圧、ショック状態の管理などを怠った。適切な管理があれば、幸さんは死亡した日時にも生存していた可能性があった」と過失の一部を認定し、日本赤十字社に200万円の支払いを命じた。市への請求は退けた。

 その一方、礒尾裁判長は「ヒ素により死亡した可能性は残り、過失と死因との因果関係は認められない」とした。保健所については「発生直後、食中毒と判断することが誤りとはいえない」と請求を退けた。

手術ミスで右足切断、自殺 医師に賠償命令 2004年02月26日 The Sankei Shimbun
 香川県観音寺市の「クニタクリニック」医師、大西敏行被告(44)=業務上過失致死罪で一審有罪、控訴=の手術ミスで、妻=当時(51)=は右脚の切断を余儀なくされ、それを苦にして自殺したとして、夫と子供3人が大西被告に約8900万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が26日、高松地裁観音寺支部であった。

 小林康彦裁判官は手術ミスを認め「右脚切断で神経症的状態に陥り、自殺を図ることは予見可能で、医療事故と死亡の間には因果関係がある」として、大西被告に約5450万円の支払いを命じた。

 判決などによると、妻は1999年7月、診療所で両下肢静脈瘤(りゅう)の手術を受けた際、大西被告が右脚の静脈と間違って動脈を摘出。右脚が壊死(えし)したため、別の病院で右脚を切断した。娘の結婚式を前にした2000年4月、自宅で自殺した。

 賠償額の算定では、妻の心因的要因分が減額された。

 高松地裁は昨年11月、大西被告に禁固1年、執行猶予2年(求刑禁固1年6月)の判決を言い渡している。

法務省:医療ミスの判決、厚労省に情報提供へ 2004年02月24日[毎日新聞]Mainichi Interactive
 医療ミスなどで医師や歯科医師の刑事罰が確定したことを厚生労働省が把握できず、大量の行政処分漏れを起こしていた問題で、医師らが起訴されたり、判決を受けた事実を法務省が厚労省に通知することになった。厚労省が24日に発表した。法務省はすでに全国の検察庁に指示し、運用を始めた。法務省が個別の刑事処分を他省庁に情報提供するのは初めてだが、国民の医療不信が高まり、厳正な処分のためには必要と判断した。

 情報提供するのは全国の50地検と8高検、最高検。医師、歯科医師について起訴(略式も含む)した時点で検察官が起訴事実の要旨を法務省に連絡する。さらに裁判所で判決(控訴審、上告審も含む)や略式命令が出た際にも同様に内容を伝え、同省刑事局を通じて厚労省医政局に通知する。

 厚労省は、罰金刑以上の刑が確定したり、診療報酬の不正請求があった医師、歯科医師について、これまで医師免許取り消しや業務停止の行政処分を求めて厚労相の諮問機関「医道審議会」に諮ってきた。処分の対象になる医師らの情報は、同省医事課が都道府県を通じて集めているが、大半を新聞記事に頼っているのが実情。罰金刑の医療事故などは報道されないことが多いため、把握しきれないケースが相次いでいた。

 法務省は当初、厚労省からの情報提供要請に「事件が無数にある中で、医師らの事件だけを調べて通知することは多忙で難しい」と断っていた。しかし、医療事故が多発する中で、法務省も「問題のある医師への行政処分は時代の流れであり、協力する必要がある」として姿勢を変えた。厚労省は「ようやく法務省の情報を得られることになったので、きちんと処分する」と話している。

 毎日新聞は、85年から99年までに医療ミスで業務上過失致死罪などの刑事罰が確定した医師38人のうち、21人が処分漏れになっていたことを00年に報道した。これをきっかけに両省の協議が始まっていた。【江刺正嘉】

産婦人科医会:ミス重ねる医師把握へ 事故報告と研修義務化[毎日新聞]2004年02月22日 Mainichi Interactive
 日本産婦人科医会(坂元正一会長、約1万2800人)は21日、理事会を開き、医療ミスを繰り返す「リピーター」医師を把握して再発防止を図るため、会員に事故報告と研修義務を課すことを決めた。4月から実施する。報告を怠ったり、医療行為に改善がみられない場合には会員の除名や専門医の資格停止の処分を検討する。医師の団体がリピーター対策に本格的に乗り出すのは初めてで、他の団体にも影響を与えそうだ。

 産婦人科の開業医らでつくる同会などによると、産婦人科医は医師総数の約5%だが、診療科別の訴訟件数は全体の12%(02年)。被害補償のため医師が加入する日本医師会の医師賠償責任保険の支払額では産婦人科の事故が5割を占める。医師会会員のうち責任を認めて同保険で4回以上賠償した悪質なリピーターは約30人いるが、大半は産婦人科医だ。

 このため産婦人科医会は「反省しない一部の医師が産婦人科の信頼を大きく失墜させており、自浄作用が強く求められている」と判断。同会本部と47都道府県の支部に「医療事故安全対策委員会」を設置し、新生児の死亡や重い脳障害、妊産婦死亡などの重大事故が発生したり、訴訟が予想される場合には過失の有無を問わず会員に支部の委員会への報告を義務付け、本部にも報告する。

 委員会は、報告を受けた事故が明らかなミスであったり、ミスが繰り返されているケースについては、過去の医療行為や患者側への対応が十分だったかどうかを含めて詳細に調査し、改善点を指導・勧告する。重大なミスや、ミスを重ねている医師・医院には特別研修を課し、本部の担当役員も派遣する。

 報告を怠ったり改善や反省が見られない医師については除名などのほか、日本医師会とも連携し、人工中絶ができる母体保護法指定医の資格停止処分も検討する。

 リピーター問題をめぐっては、厚生労働省が医師の行政処分強化と再教育システムの検討を本格化させており、産婦人科医会はこうした動きを先取りした形だ。【江刺正嘉】

 ◆解説◆保険データの活用を

 日本産婦人科医会が会員に対して医療事故報告と研修の義務化に踏み切った背景には、ミスを繰り返す「リピーター」が産婦人科に多く、国民の不信が高まっていることがある。医療全体の信頼回復のためには、日本医師会をはじめ、他の団体も同様の対策を講じることが求められる。

 日医は、事故の被害補償のための医師賠償責任(医賠責)保険を持ち、保険の支払い実績をもとにリピーター会員を把握している。傘下の産婦人科医会はリピーター会員の実態をつかむため、日医に医賠責のデータ提供を求めた。しかし、「守秘義務」を理由に拒否され、代わりに事故報告制度を導入せざるを得なかった事情もある。

 それでも同医会が独自に対策をスタートさせる意義は小さくない。川端正清常務理事は「事故を早く把握でき、医師への指導も迅速にできる。安易なミスが繰り返されるのを防げるはずだ」と説明する。

 一方の日医は、一昨年から対策を検討してきたが、内部の調整が難航し、有効な手だてを打ち出せないでいる。医賠責のデータを抱え込まず、ミスの再発防止にどう生かすかがいっそう問われる。【江刺正嘉】

「血圧」「血糖」投薬ミス…男性、一時意識不明 山形県立病院

2004年01月07日 The Sankei Shimbun
 山形県河北町の同県立河北病院(千葉昌和院長)で昨年11月、通院していた同県の50代の男性に薬剤師が血圧降下剤と間違えて名称の似た血糖降下剤を渡し、服用した男性が低血糖で一時意識不明になっていたことが7日、分かった。  男性は同病院に運ばれ翌日に意識が回復したものの、体調不良で現在も入院している。

 同県県立病院課によると、間違えたのは血圧降下剤「アルマール」と血糖降下剤「アマリール」。11月20日、人工透析のため来院した男性に誤って渡し、自宅で服用した男性は24日に意識不明となった。血糖値が通常の約4分の1に下がっていたという。

 男性は25日に意識を回復したが原因が分からず、26日に自宅から持参したアマリールを飲み再び血糖値が下がった。同日医師が回診中に偶然薬が違うことに気付いたという。

 調剤は薬剤師2人が担当していた。病院側は男性に謝罪するとともに、アルマールの取り扱いを止めて別の名称の薬に変えたり、チェック体制を強化するなどの改善策をとったという。

手術後に女性患者が死亡 慈恵会病院で医療ミスか

2004年01月07日 The Sankei Shimbun
 東京都港区の東京慈恵会医大病院で昨年12月、腸の手術を受けた足立区の女性(38)が翌日、心肺停止状態になり、1月1日に死亡していたことが7日、分かった。

 東京慈恵会医大病院は1日に警視庁に連絡。捜査一課と愛宕署は医療ミスの可能性があるとみて、業務上過失致死容疑で、医師ら関係者から事情を聴き捜査している。

 調べでは、女性は昨年12月10日、渋谷区の病院で死亡した胎児を取り出す手術を受けた。腹痛などが続いたため、東京慈恵会医大病院へ転院。その日のうちに子宮の止血手術を受けた。

 その際、腸に穴が開いたとみられ、女性の容体が急変。12日に腸の穴をふさぐ手術を受けたが、13日に心肺停止状態に陥り、1月1日に死亡した。

 渋谷区の病院は女性を転院させる際「子宮に穴があいたかもしれない」と説明したといい、捜査一課などは女性の司法解剖を行い、死因につながった医療ミスが何なのか調べている。

 東京慈恵会医大病院は「医療ミスの可能性の有無などは一切答えられない。病院としても死亡原因を調査中」としている。

麻酔薬を誤注射、乳児一時心停止 横浜の県立病院

2004年01月06日 The Sankei Shimbun
 神奈川県立こども医療センター(横浜市)で平成14年6月、手術中に麻酔薬を誤って注射し、乳児が心停止状態に陥っていたことが6日、分かった。

 乳児は約7分後に蘇生(そせい)し、後遺症はないという。病院は医療ミスを認め、家族に謝罪し、県に事故・紛争報告書を提出した。

 病院によると、乳児は14年6月、腹部の手術を受けた際に血圧が低下。麻酔医が血圧を上げる目的で血液製剤「アルブミン液」を注射しようとして、誤って麻酔薬「ラボナール液」計20ミリリットルを投与した。

手術ミスで3人を懲戒解雇 慈恵医大病院の患者死亡

2003年12月26日 The Sankei Shimbun
 東京慈恵会医大青戸病院(東京都葛飾区)の腹腔(ふくくう)鏡手術ミスによる患者死亡事故で、同大は26日、業務上過失致死罪で起訴された執刀医、斑目旬被告(38)と患者の主治医で手術の助手だった長谷川太郎被告(34)、手術の実施を認めた大西哲郎診療部長(52)の3人を懲戒解雇とする処分を発表した。

 手術の助手だった前田重孝被告(32)=同罪で起訴=は「手術の企画、立案には携わっていない」として出勤停止10日間とし、ほかに麻酔科の指導医1人がけん責。

 栗原敏学長ら大学幹部らは、給与の一部を自主返上するとした。

 東京都内で記者会見した栗原学長らは「心より深くおわび申し上げる」とあらためて謝罪。青戸病院がまとめた事故報告書に事実と異なる部分があったことを明らかにしたが、具体的な内容は「さらに検証が必要」として言及を避けた。

 斑目、長谷川両被告は25日に東京地裁で開かれた初公判で起訴事実を認めたが、前田被告は否認した。

 起訴状によると、斑目被告らは昨年11月8日、千葉県の男性=当時(60)=の前立腺がんを摘出する腹腔鏡手術で、誤って静脈を傷つけるなどし、出血多量による低酸素脳症で脳死状態に陥らせ、1カ月後に死亡させた。

新潟県が7500万支払い 医療ミス訴訟で和解

2003年12月22日 The Sankei Shimbun
 新潟県立小出病院(同県小出町)の医療ミスが原因で大学生の長男が死亡したとして、石川県小松市に住む両親が新潟県に約1億3000万円の損害賠償を求めた訴訟は22日、新潟地裁(片野悟好裁判長)で、県が7500万円を支払うことで和解が成立した。

 県病院局は「裁判が長期に及び、和解することにした。過失を認めざるを得ない部分もある」としている。

 訴えによると、1994年4月23日、日本大医学部の学生だった徳家亨さん=当時(21)=は新潟県6日町の日大セミナーハウス3階から地面に転落し、頭の骨を折るなどの重傷で同病院に入院。翌24日、出血性ショックで死亡した。

 父宏さん(58)と母清子さん(56)は96年3月に提訴し「医師が適切な経過観察や十分な診療を怠った」と主張していた。

医療過誤:カテーテル検査で患者死亡 市立川崎病院

2003年12月10日 [毎日新聞]Mainichi INTERACTIVE
 川崎市川崎区の市立川崎病院(秋月哲史(さとし)院長)は15日、心臓カテーテル検査などを行った同市内の70代の女性患者が検査後に死亡したと発表した。同病院の届け出を受けた川崎署は業務上過失致死容疑で捜査を始めた。秋月院長は死因について「一般論としてカテーテルが血管を傷つけたことも考えられる」と医療ミスの可能性を示唆した。

 同病院によると、女性患者は11月30日、急性心筋こうそくと診断され入院し、カテーテルと呼ばれる管状の医療具を使う心臓カテーテル検査と心臓内の血管を広げる冠動脈形成手術を受けた。だが翌12月1日未明、おう吐を繰り返すなど容体が急変。こん睡状態が続き14日死亡した。【伊藤直孝、堀智行】

薬剤投与ミス、患者死亡 奈良

2003年12月10日 The Sankei Shimbun
 奈良県下市町の私立病院で、男性患者=当時(19)=の脳波検査の際、睡眠導入剤を急激に投与して死亡させたとして、県警捜査一課などは10日、業務上過失致死容疑で男性医師(36)=大阪府和泉市=を書類送検した。

 調べでは、医師は今年1月14日午前10時半ごろ、脳波検査のため訪れた同県内の男性患者に2種類の睡眠導入剤を注射したが、量や速度の管理を怠って急激に投与したため、男性をこん睡状態にさせ、約8時間半後に死亡させた疑い。

 同課などは男性が搬送された別の病院から通報を受け、カルテの分析や医師から事情を聴くなどして「男性の血中の酸素濃度を管理する注意義務を怠った過失がある」と判断した。

 男性は同県大淀町の知的障害児施設「吉野学園」に入所。てんかんの発作で、以前にも検診時に精神安定剤や睡眠剤を投与されたが、アレルギーなどはなかったという。

医療事故:報告義務化 ミス明白でない例も対象に 厚労省

2003年12月09日[毎日新聞]Mainichi INTERACTIVE
 医療事故の報告範囲を議論してきた厚生労働省の検討委員会は9日、医療機関側に明らかな誤りが認められなくても、予期しない経過で患者が死亡したり、重症化した事例も報告を義務付けるべきだとの意見をまとめた。これに基づき、同省は来年度から報告を義務化する方針で、今年度内に必要な省令改正を行う。

 検討委は医療事故の再発防止の観点から、事故の事例を幅広く集めて分析すべきだとの意見で一致。その範囲を▽明らかに誤った医療行為や管理上の問題から、患者が死亡したり、障害が残るなどしたケース▽明らかな誤りが認められなくても、予期しない形で患者が死亡したり、障害が残るなどしたケース▽そのほか、医療機関が警鐘的意義が大きいと考えるケース――の3種類に大別した。

 来年度から報告が義務化されるのは、院内に安全管理委員会を設置するなど、情報の収集体制が整っている国立病院や大学病院など266施設。財団法人「日本医療機能評価機構」内に設置される第三者機関が報告の受け付けや分析、国民への情報提供を行う。あくまでも事故の再発防止が目的で、同機関が収集した情報に基づいて関係者を処罰することはない。

 第三者機関の設置について、厚労省は来年度予算に約1億5000万円を概算要求しているが、具体的な体制は予算化が決まった後に決定される見通しだ。【須山勉】

医療過誤:拒食症死亡女性、医師の過失認定 大阪地裁

2003年12月09日[毎日新聞]Mainichi INTERACTIVE

 拒食症を訴えて死亡した大阪府富田林市の榊原雅江さん(当時22歳)の両親が「医師の過失が原因」と主張し、受診した小川外科を経営する医療法人「昭仁会」(同市)と医師らに約8100万円の損害賠償を求めた訴訟で、大阪地裁は9日、同法人と医師に約5900万円の支払いを命じた。岡原剛裁判長は「入院時に吐血しており、消化管出血を疑って内視鏡検査やX線検査などを行う義務を怠った」と医師の過失を認定した。

 判決によると、拒食症の一つの神経性食思不振症だった榊原さんは99年2月27日、激しい腹痛を訴え、小川外科で受診。そのまま入院したが、医師は血液検査を1度しただけで、翌28日午前4時ごろまでの半日間、診察せずに放置した。榊原さんは家族の強い希望で同市内の別の病院に転院したが、同9時20分、消化管出血で死亡した。【山本直】

 医療法人「昭仁会」側の代理人弁護士の話 神経性食思不振症の病状評価や死因について疑問があり、控訴するか検討する。

医療事故防止:問題医師の独自処分、積極的に 日本医師会

2003年12月08日[毎日新聞]Mainichi INTERACTIVE
 日本医師会の坪井栄孝会長は8日会見し、ミスを繰り返す「リピーター医師」など資質に問題のある医師について、会員資格停止などの処分を積極的に行うことを表明した。この日発表した日医独自の医療事故防止対策に盛り込んだ。

 日医はこれまで、厚生労働省の医道審議会の結果を受けて会員を処分してきた。防止策では、リピーター問題に対応するため、行政処分を待たず、日医が独自の調査で実態を把握し、再発防止対策書を提出させたり、医師の再教育、会員資格の停止処分などを徹底させる。

 また、日医会員のための独自の事故報告・共有システムをつくり、資質向上のための生涯教育制度の義務化なども提言している。

 坪井会長は「悪質なリピーター医師は、医療界から退場させる必要がある」と述べた。【江刺正嘉】

患者の点滴チューブ外れ失血死…島根の国立浜田病院

2003/12/07 読売新聞 Yomiuri On-Line
 7日午前1時ごろ、島根県浜田市の国立浜田病院(佐々木清博院長)で、脳こうそくで入院中の同市内の男性患者(83)の点滴チューブが途中で外れ、多量の血液が漏出しているのを見回りの看護師が見つけた。男性は心肺が停止しており、応急処置されたが間もなく死亡。病院側は院内に事故調査委員会を設置し、浜田署に医療事故として届けた。

 同病院によると、男性は今月1日に入院した。点滴チューブは、鎖骨下の静脈に入れた透析用の管と「三方活栓」という接続器具でつながれていたが、この接続部分から外れていた。チューブと接続器具は、外れないように輪ゴムで止めてあり、2時間前の見回りでは異常はなかったという。

 佐々木院長が男性の家族に事情を説明。同院長は「このような事態を招き、本当に申し訳ない。原因を明らかにして再発防止に努めたい」と話している。

手術中、25分間輸血できず…大量出血で女性脳死状態

2003年12月03日 The Sankei Shimbun
 東京女子医大第二病院(東京都荒川区)で5月に悪性黒色腫の摘出手術を受けた女性(74)が、手術中に6600ミリリットル余の大量出血を起こし、輸血措置の遅れで低酸素脳症となり、脳死に近い状態に陥っていることが3日、分かった。

 井上和彦院長は同日記者会見し「出血量の把握や輸血準備などに関し、医師間の連携が不十分だったことが原因と考えている」と謝罪。血液不足で手術中の25分間、輸血ができなくなっていたことを明らかにした。

 一方で、大量の出血が予想外だったことを繰り返し強調し「明らかなミスがあったとは考えていない」と述べた。

 病院によると、女性は約2年前に同病院で直腸がんの一種、悪性黒色腫の摘出手術を受けた。今年初めになって再発が見つかり、4月に入院、5月12日に手術を受けた。手術は外科の教授らが執刀した。

 1200ミリリットルの血液を準備していたが、手術中に約6680ミリリットル出血。血圧が低下した結果、低酸素脳症で脳死に近い状態となり、現在も入院中。輸血量は約3740ミリリットルだった。

 大量出血が予想されたが、手術前に麻酔医らに伝わっておらず、患者や家族に対しても説明していなかったという。

 家族側の関係者によると、病院は手術前「比較的簡単な手術」などと説明。手術直後は「予想より出血が多かったが、仕方ない出血だった。腫瘍(しゅよう)が思ったより大きかった」などと話していたという。

 東京女子医大第二病院は20の診療科を持ち、病床数は約400。東京都から、入院を必要とする重症患者らに対応する2次救急医療機関に指定されている。

 東京女子医大第二病院で悪性黒色腫の摘出手術を受けた女性(74)が、大量出血で脳死状態になった医療事故で、井上和彦院長らが3日、同病院で記者会見し、血液の不足で手術中の25分間、輸血ができなくなっていたことを明らかにした。

 井上院長は「出血量の把握や輸血の準備などに関し、医師間の連携が不十分であったことが原因と考えている」とした上で、大量の出血が予想外だったことを繰り返し強調し「明らかなミスがあったとは考えていない」との見解を示した。

 病院によると、手術は5月12日午後2時すぎに開始。準備した1200ミリリットルの血液は午後3時半に底をつき、25分間輸血が止まった。午後3時15分ごろ、院内の輸血部に追加の血液を依頼したが、検査に手間取り間に合わなかった。

 大量出血が予想されたが、手術前に麻酔医らに伝わっておらず、患者や家族に対しても説明していなかったという。

 井上院長は女性の家族に対してあらためて謝罪し「事実経過の説明や賠償なども含め、誠意を尽くした対応を続けていきたい」と話した。

 病院は手術後、警視庁と東京都に医療事故の発生を報告している。

骨髄液検査で女性が死亡 兵庫の病院で医療ミスか

2003年12月03日 The Sankei Shimbun
 兵庫県山崎町の公立宍粟総合病院(福田昌弘院長)で11月、胸の骨から骨髄液を採取する検査を受けた県内に住む80代の女性が、検査中に死亡していたことが3日、分かった。病院側は医療ミスの疑いもあるとして調査委員会を設置。山崎署は業務上過失致死容疑で捜査している。

 病院などによると、女性は11月20日、重い貧血で入院。原因を調べるため21日、胸骨に「穿刺(せんし)針」を刺して骨髄液を採取する検査を受けた際、胸部内で出血、意識がなくなり死亡した。

 山崎署は、針を刺した際に誤って血管を傷つけた可能性が高いとみて司法解剖し、担当医らから事情を聴いている。

 病院側は「検査は一般的な手法のものだった。医療ミスの可能性もあるので、きちんと調査したい」と話している。

豊胸手術で植物状態、1億7千万円賠償命令

2003/11/29 読売新聞Yomiuri ON-Line
 
 豊胸手術後に低酸素脳症を発症して植物状態になった女性(29)と当時の夫が、手術をした美容外科医院「アクアクリニック」(東京都渋谷区)の院長を務める男性医師に約1億7800万円の損害賠償を求めた訴訟で、東京地裁は28日、慰謝料など約1億7000万円の支払いを命じる判決を言い渡した。

 前田順司裁判長は「発症後に適切な処置をせず、約2時間半、救急病院への搬送を怠った」と指摘した。

 判決によると、女性は一昨年4月、この男性医師の執刀で、全身麻酔をして豊胸手術を受けた直後、低酸素脳症に陥った。都内の救急病院で治療を受けたが、意識は回復せず、現在も植物状態が続いている。

 救急病院の記録によると、この医師は、女性が発症してから2時間半後まで119番通報せず、通報の4分後に救急車が同クリニックに到着していた。ところが、クリニック側の診療記録は、発症の30分後に通報、その20分後に救急車が到着したことになっており、判決は、医師が診療記録をねつ造したと認定。「美容整形の魅力を一方的に宣伝して客を集めながら、記録をねつ造したのは、医師にあるまじき極めて悪質な行為」と批判した。

腹腔鏡手術で出血、67歳が転院先で死亡…福島の病院

2003/11/28 読売新聞Yomiuri ON-Line
 
 福島県猪苗代町の県立猪苗代病院(土屋敦雄院長、65床)で今月19日に腹腔鏡を使った胆のうの摘出手術を受けた同町内の男性患者(67)が、3日後に転院先の病院で死亡していたことが28日、わかった。

 猪苗代病院は、手術中に肝動脈を誤って傷つけたとみて、22日に県警猪苗代署に届け出ている。

 同病院側の説明によると、男性は胆のう腫瘍(しゅよう)で今月18日に入院。19日午後2時10分から腹腔鏡手術が開始され、男性外科医(39)と補助の土屋院長ら計4人が携わったが、15分間で1200ccもの出血があり、開腹手術に切り替え、胆のう動脈を切除し止血、胆のうを同3時半ごろ摘出した。

 しかし、同8時ごろ、男性に血圧低下などがみられ、同県会津若松市内の総合病院に搬送されたが、22日午前7時50分ごろ、出血性ショックで死亡した。総合病院の病理解剖で、胆のうに近い肝動脈に約5ミリの傷が見つかり、猪苗代病院は、臓器をより分ける際に使う電気メス付きの鉗子(かんし)が傷つけたとみている。土屋院長は「患者の遺族には誠意を持って話し合い、再発防止に努めたい」と話した。

医療ミス:誤って10倍の薬剤注射、直後に死亡 京都の病院

2003年11月22日[毎日新聞]Mainichi INTERACTIVE
 京都市伏見区の松ケ崎記念病院(梅原誼(よしみ)院長)に入院していた男性患者(73)が、誤って通常の10倍の薬剤を注射され、直後に死亡していたことが22日、分かった。病院から届け出を受けた京都府警伏見署は医療ミスの可能性もあるとみて、男性を司法解剖し死因などを詳しく調べている。

 調べでは、男性は脳幹こうそくで2年前から入院し、意識がない状態が続いていた。今月15日午後3時ごろ、腎不全が悪化し、不整脈が起こり危篤状態に陥ったため、不整脈を抑える麻酔薬の一種「リドカイン」を、院長の指示で看護師が静脈注射したところ、容体が急変。数分後に呼吸と心拍が停止し、同3時半に男性は死亡した。病院側は同日中に同署に届け出、「本来2%溶液を5ミリリットル投与すべきところを、10倍の10%溶液10ミリリットルを投与してしまった」と説明しているという。同署は死亡との因果関係を慎重に調べる。

 病院は毎日新聞の取材に「対応は弁護士に任せており、詳細はコメントできない」と話している。【酒造唯】

体内にガーゼ置き忘れ2件 高知県立中央病院

2003年11月21日 The Sankei Shimbun
 高知県立中央病院(高知市、堀見忠司院長)は21日、手術時に使ったガーゼを患者の体内に置き忘れた医療ミスが2件起きていた、と発表した。

 同病院によると今月、高知市内の男性患者が腸閉塞(へいそく)の手術をしたところ、ガーゼ1枚(約30センチ四方)が腹部で見つかった。男性は昨年1月に同病院で胃の手術を受けており、その時に置き忘れた可能性が高いという。

 また10月には、県内の女性患者が十二指腸にできた穴をふさぐ手術をした際に、ガーゼ1枚を置き忘れたことが翌日の検査で分かり、あらためて開腹手術して取り除いたという。

 堀見院長は「初歩的なミスで大変申し訳ない。再発防止策を徹底し、信頼回復に努めたい」としている。

東京医大病院で事故相次ぐ 白血病検査後に心停止、男性死亡

2003年11月20日 The Sankei Shimbun
 東京医大病院(東京都新宿区)で3月、白血病の疑いのある70代の男性が胸骨に針を刺して骨髄液を採取する「骨髄穿刺(せんし)」と呼ばれる検査の直後に一時心停止となり、意識不明のまま4月下旬に死亡していたことが20日分かった。病院が同日夜、記者会見で明らかにした。

 病院の事故調査委員会が調査したが「容体急変の原因や死因は分からず、医療ミスがあったかどうかも分からなかった」としている。

 死亡直後に警視庁新宿署に死因不明の「異状死」として届けた。遺族には経緯を説明し「予期せぬ事態で死亡したことを謝罪した」という。東京都や厚生労働省には17日に報告し「報告の機会を逸していた」と釈明した。

 東京医大病院では点滴用のカテーテル(細管)の挿入ミスで患者が意識不明となる事故のほか、20日には難聴の幼児の手術で左右の耳を間違えて切開する事故も明らかになった。

 病院の説明などによると、検査は同病院の経験豊富な医師が担当。長さ約35ミリ、直径約2ミリの針を胸骨に刺した。心停止後、蘇生(そせい)術で心肺機能は回復したがこん睡状態が約2カ月続き死亡した。  検査手順が守られていたか、男性に心臓疾患があったかどうかについて病院側は、警察が調べていることを理由に明らかにしなかった。

手術ミスの医師に有罪判決 高松地裁

2003年11月18日 The Sankei Shimbun
 静脈の一部を切除する手術で間違えて動脈を損傷、患者の女性=当時(51)=に右脚を失う傷害を負わせたとして、業務上過失傷害の罪に問われた医師、大西敏行被告(44)の判決公判が18日、高松地裁で開かれ、高梨雅夫裁判長は同被告に禁固1年、執行猶予2年(求刑禁固1年6月)を言い渡した。

 判決理由で高梨裁判長は「被害者の精神的打撃は計り知れないほど深く、基本的な手術操作を怠った過失は軽いとはいえないが、見誤りやすい状態にあり強く非難することはいささか酷」と述べた。

 判決などによると、大西被告は1999年7月、香川県観音寺市の診療所「クニタクリニック」で、同市内の女性の両下肢静脈瘤(りゅう)を手術した際、誤って右脚の動脈を傷つけた。女性は右脚が壊死(えし)し、転院先の病院で右脚切断を余儀なくされた。

 女性は2000年4月に自殺。遺族は右脚切断を苦にしていたとして、大西被告に約8900万円の損害賠償を求める訴訟を起こしている。

 弁護側は、過失を認めた判決を不服として、即日控訴した。

医療過誤:目の手術で未熟児が呼吸停止状態 横浜の病院

2003年11月10日[毎日新聞]Mainichi INTERACTIVE
 横浜市立大学センター病院(同市南区)は13日、生後3カ月の未熟児の男児が目の手術を受ける際、酸素を吸引させるところを誤って窒素を吸わせ、男児が約40分間、呼吸停止状態になっていたことを明らかにした。現在、男児の状態は安定しているが、脳に重い障害が残るおそれがあるという。

 同病院によると、12日午後4時ごろ、新生児集中治療室から男児を手術室に運ぶ際、移動用の保育器に取り付けられていた窒素ボンベを使ってしまい、男児は約5分後に心拍が低下し呼吸が停止した。当初、医師や看護師は窒素の吸引に気付かず、心臓マッサージなどを行ったが、症状は改善されなかった。しかし約40分後、窒素ボンベが取り付けられていることが分かり、酸素の吸入に切り替えたところ症状は改善した。

 保育器には今年7月に別の手術で使った窒素ボンベが取り付けられたままになっていた。今回の手術前日と当日のチェック時にも、医師や看護師は気付かなかったという。今田敏夫副院長は「基本的な確認が行われていなかった。ご迷惑を掛け、申し訳ありません」と謝罪した。【広瀬登】

京大病院看護師に有罪 エタノール混入死亡事件

2003年11月10日 The Sankei Shimbun
 
 京都大病院(京都市左京区)で2000年、人工呼吸器に誤って消毒用エタノールを注入し、入院していた同市の藤井沙織さん=当時(17)=を中毒死させたとして、業務上過失致死罪に問われた看護師、高山詩穂被告(27)に対し、京都地裁の古川博裁判長は10日、禁固10月、執行猶予3年(求刑禁固10月)の判決を言い渡した。

 古川裁判長は判決理由で「薬剤のラベルすら確認しないなど、看護師として最も基本的な注意義務を怠った過失は重大」と述べた。

 弁護側は病院側のずさんな管理体制を指摘し、禁固刑では国家公務員の被告が失職するため罰金刑を求めていた。古川裁判長は「管理体制問題にかかわらない初歩的過失で、禁固刑が相当」とした上で「反省し、事件後は積極的に医療事故防止活動に取り組んでいる」として、執行猶予を付けた。

 判決によると、高山被告は同年2月28日午後6時ごろ、藤井さんの人工呼吸器の加湿器に蒸留水と間違えて消毒用エタノールを注入。約53時間にわたり吸引させ、急性エタノール中毒で死亡させた。

 京都地検は昨年10月、業務上過失致死容疑などで書類送検された高山被告や担当医ら8人のうち、同被告だけを起訴。遺族は京都検察審査会に審査を申し立てている。

 <京大エタノール混入事件> 2000年2月28日、京都大病院で入院患者の藤井沙織さん=当時(17)=が人工呼吸器に蒸留水と間違えて消毒用エタノールを注入され、急性中毒で死亡した。京都府警は01年、業務上過失致死容疑で看護師、高山詩穂被告(27)ら7人を、死亡診断書にうその死因を記載したとして虚偽有印公文書作成容疑などで担当医を書類送検したが、京都地検は高山被告を除き起訴猶予や不起訴処分にした。遺族は担当医ら4人の処分は不当と検察審査会に申し立て、高山被告らに約1億1200万円の損害賠償を求め京都地裁に提訴した。

腰痛止め治療で3人死亡 3年9カ月の事例を医師分析

2003/11/09 asahi.com
 03年6月までの3年9カ月間に、腰痛治療に頻繁に用いられる「神経ブロック」により、3人が死亡、5人が両足マヒになっていたことが分かった。日本整形外科学会安全医療推進委員会アドバイザーの山崎典郎医師が8日、東京都内で開かれた日本腰痛学会で発表した。

 賠償を求められた整形外科関係の事故316例をもとに分析した。神経ブロックは、痛みのもとになっている神経の近くに麻酔薬を注射する治療法。

 死者のうち2人は注射を受けた後、全身マヒに陥り、呼吸困難などを起こして死亡。1人は注射器を体内に埋め込む方法の神経ブロックを受けた後、埋め込むための切り口から細菌に感染し、体内に毒素がまわる敗血症で死亡した。

 山崎医師によると、麻酔する部位を誤ると、全身マヒが起こる。しかし、早い段階で足を高く上げて心臓に血液が回るようにし、気管内挿管で酸素を送るなどすれば、後遺症を残さずにすむという。2人の場合は、担当医があわててしまい、対応が遅れたらしい。

 敗血症で死んだ患者の例では、通常の埋め込み期間の3日を過ぎても注射器を取り出さなかったためとみられる。

 両足がマヒした5人のうち3人は、注射の仕方が悪かったことによる。2人は注射に伴ってできた血の塊(血腫)が神経を圧迫してマヒにつながった。

 山崎医師は「死亡事故まで起きている事実を直視すべきだ。簡単だと思い込んで医師が安直に実施する傾向を改めなくてはならない。万一に備えて治療に臨む必要がある」と警告している。

 神経ブロックは、整形外科的な治療だけではなく、がんによる痛みを抑えるためにも使われる。

酢酸濃度を間違え注入、がん患者死亡…舞鶴赤十字病院

2003年11月07日 YAHHO! News(読売新聞)
 舞鶴赤十字病院(京都府舞鶴市倉谷)に肝臓がんで入院していた舞鶴市内の男性(62)が、患部に適正濃度(50%)の約1・8倍の酢酸を注入された後、死亡していたことが7日、わかった。治療に当たった男性医師(33)が酢酸の適正濃度を確認しないまま注入したことが判明、同病院は遺族に治療ミスを認め、謝罪した。

 院長の説明では、男性は10月6日に入院。男性医師は、腫瘍(しゅよう)に無水エタノールを注入する治療をしたが、効果が上がらず、同27日に酢酸を麻酔薬とともに注入する治療を開始。直後にけいれんを起こし、約4時間後に死亡した。

 容体急変後に死亡したため病院が調査したところ、50%に薄めて使う酢酸が、原液に近い89%の高濃度だったことがわかった。病院は、これが死因として否定できないとし、遺族に謝罪、舞鶴西署に届けた。同署は任意で事情を聞いている。

 弘中武院長の話「新たな治療の前に文献などで確認する基本が欠如していた」


ヘルニア手術後に死亡、術後管理ミスと病院に賠償命令

2003/10/29 読売新聞 Yomiuri On-Line
 香川県坂出市の私立回生病院で1998年11月、つい間板ヘルニアの手術を受けた男性(当時51歳)が、手術後に呼吸不全で死亡したのは術後管理のミスなどとして、松山市内の妻(53)ら遺族5人が同病院を経営する医療法人「大樹会」に約9500万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が29日、高松地裁丸亀支部であり、高橋正裁判長は病院側のミスを認め、約6100万円の支払いを命じた。

 判決によると、男性は術後、気管から呼吸用チューブを抜いた後、のどがむくんで呼吸困難になったが、むくみがひどくてチューブを再挿入できず、3日後に死亡。高橋裁判長は「全身麻酔後は気管閉そくが起こりやすく、チューブを抜く時期を慎重に検討しなければならないのに注意義務を怠った」などと指摘した。

医師を書類送検 事故後の適切処置怠った 東京

2003年10月25日 The Sankei Shimbun
 警視庁千住署は25日までに、交通事故後の処置が適切でなかったとして、業務上過失致死の疑いで、足立共済病院(東京都足立区)の男性医師(39)を書類送検した。

 調べでは、医師は13年2月、バイク事故を起こした飲食店従業員の男性(33)を診療。胸部エックス線撮影で左肺が損傷を受けた「血気胸」の状態が確認できたのに適切な処置を行わず、男性を死亡させた疑い。

 血気胸は胸部の外傷で肺の一部が損傷し、胸部にたまった血液と空気が肺を圧迫する状態。呼吸困難にならないように血液を抜く穴を開ける手術をすることもある。

 男性は事故から2時間後に容体が急変して死亡。千住署には「急死」と届けたが、男性の遺族が医療ミスとして告訴した。医師は「治療に最善を尽くした」と主張しているという。

「似た薬」監視強化へ 医療ミス対策で厚労省

2003/10/22中国新聞ニュース
 品名や包装がよく似た医薬品を取り違えて患者に投与するミスが後を絶たないため、厚生労働省は二十二日までに、国内で流通している医薬品の品名と外観をデータベース化し、類似品が出回らないよう監視を強化する方針を決めた。

 二〇〇四年度中にインターネット上にデータベースを公表し、製薬会社に紛らわしい命名やデザイン変更をしないよう指導する。医薬品の数は年々増える一方で、鹿児島大病院で抗がん剤の種類を誤って投与された男性患者が、その後死亡する問題が発覚したばかり。命名や包装方法は製薬会社任せで、国レベルの対策を求める声が医療現場から上がっていた。

 厚労省安全対策課によると、品名データベースは医薬品として承認を受けた二万品目以上を、品名の主要部分で約七千種類に整理。文字の数や配列から類似度≠点数ではじき出せるようにする。

 製薬会社は新薬の品名候補を入力すれば類似度の高い既存品名を一覧できるほか、病院が新商品の使用を検討するときも既に使っている薬と似ていないか点検できる。

 外観データベースは取り違えの多い注射薬を中心に整備。材質やラベルの色などを入力すれば、似た形状の既存品の画像を検索できる。

 データベースは既に研究事業で試作しており、厚労省は実用化費用として二〇〇四年度予算に約七百万円を概算要求。運用開始後は、製薬会社が新しい商品を発売するときに自らデータを更新する方式を検討している。

 厚労省が〇一〜〇二年に、医療事故になりかねなかった全国の「ヒヤリハット事例」を分析した結果、約四割が調剤や処方時などに起きた薬剤に関するミスだった。名前や容器が似ている薬を取り違えて患者が死亡した事故はここ数年、北海道、岐阜県、富山県、京都府などで相次いでいる。

医療事故:規定量の10倍、点滴用を注射され男性患者死亡

2003年10月20日[毎日新聞]Mainichi INTERACTIVE
 静岡県浜松市三方原町の聖隷三方原病院(荻野和功病院長)は20日、急性心筋こうそくの患者に規定量の10倍の抗不整脈剤を注射し、男性が注射直後に死亡したと発表した。病院から届け出を受けた同県警浜松中央署は業務上過失致死の疑いで関係者から事情を聴いている。

 同病院によると、19日午前10時40分ごろ、農作業中に胸の痛みを訴えた浜松市内の男性(66)が同病院に救急車で搬送された際、循環器科の医師(29)が看護師(39)に誤って高濃度の抗不整脈剤の名称を告げ、投与を指示した。このため、看護師が本来は点滴用に使われるこの抗不整脈剤を静脈から注射したという。病院側は「規定量を投与していたら患者は助かった可能性がある」として、遺族に謝罪したという。【葛西大博、吉崎孝一】

医療事故:腹部内に流動食漏れ死亡 2医師を書類送検

2003年10月20日[毎日新聞]Mainichi INTERACTIVE
 流動食注入用チューブの交換ミスで患者を死亡させたとして、千葉県警捜査1課と船橋署は20日、同県船橋市金杉1、同市立医療センター(清川尚院長)に勤務していた脳神経外科の担当医師(46)と、同科の医療チーム責任者の医師(51)を業務上過失致死の疑いで千葉地検に書類送検した。2人は容疑を認めているという。担当医師は今年3月末に同センターを退職している。

 調べでは、担当医師は昨年2月28日、脳障害で入院していた女性患者(当時24歳)の胃に直接注入していたチューブ(太さ約4・6ミリ)を太いもの(約5・3ミリ)に交換した。その際、チューブの先が胃に達せず、腹部内に流動食が漏れて腹膜炎を起こし、同3月2日に女性を敗血症で死亡させた疑い。

 責任者の医師について同課などは、容体が悪化するまで医療ミスに気づかなかった点を過失ととらえた。

 女性の死亡後、責任者の医師が同署に通報した。同センターは市立の総合病院で、医師の書類送検を受けて「二度とこのような事故が起こることのないよう、事故防止対策委員会で検討を行います」とのコメントを出した。【森禎行】

10倍濃度の強心剤処方、5カ月男児死亡 兵庫県立尼崎病院

2003年10月15日 The Sankei Shimbun
 兵庫県尼崎市の県立尼崎病院(平尾敬男院長)は15日、同病院で手術を受け退院した兵庫県内の生後5カ月の男児が、誤って処方された薬を服用したため、14日に死亡したと発表した。

 病院薬剤部の女性薬剤師(33)が本来よりも10倍高濃度の強心剤「ジゴシン」(ジギタリス製剤)を調剤、10日分を渡していた。

 病院は男児の遺族に経緯を説明し謝罪。兵庫県警尼崎東署などに報告した。同署は業務上過失致死容疑で関係者から事情聴取を始めた。

 会見した平尾院長らによると、男児は今年8月、総動脈幹症などの先天的な心臓病のため手術を受け、10月5日に退院したが、嘔吐(おうと)や発熱の症状が出たため、12日に受診。その後も発熱などが止まらず、ミルクを吐くなどしたため14日午前、緊急入院した。医師は心拍数が低下し全身が蒼白(そうはく)になった症状からジギタリス中毒を疑い、血液検査で薬の濃度が異常に高いことを確認したが、男児は同日午後5時前に同中毒による心室細動で死亡した。

 同病院の薬剤部では4月にもてんかんの薬を多く処方するミスがあり、薬の瓶に名前を明記し、瓶を手に取ったときに声出し確認するなどの対策を取ったが、今回は、調剤した女性薬剤師がこの確認を怠り、ダブルチェックするはずの女性薬剤師(51)も気付かなかったという。

 ■ジギタリス 心臓病の治療や予防に用いられる代表的な強心剤。弱くなった心筋に直接働き掛けて収縮力を強化し、1回の収縮で十分な血液を送り出せるようにする効果がある。ヨーロッパ原産の多年草の名が語源。その葉は古くから強心作用のある生薬として知られた。現在でも心筋梗塞(こうそく)や狭心症、手術などによる心不全・頻脈の際に一般的に使用される。使用量が少ないと効き目がなく、多すぎると徐脈や不整脈、視覚障害などの中毒症状を起こす使用の難しい薬とされる。

慈恵会医大の3医師起訴 男性患者死亡の手術ミス

2003年10月15日 The Sankei Shimbun
 東京慈恵会医大青戸病院(東京都葛飾区)で昨年、前立腺がん摘出のため腹腔(ふくくう)鏡手術を受けた千葉県の男性患者=当時(60)=が死亡した医療ミスで、東京地検は15日、業務上過失致死の罪で主治医だった長谷川太郎容疑者(34)ら医師3人を起訴した。

 手術を許可した上司の診療部長(52)と輸血を担当した別の医師2人も書類送検されたが「事故を防ぐため、ある程度の対応はした」として近く不起訴処分とする方針。

 ほかに起訴されたのは執刀医の斑目旬(38)、前田重孝(32)の両容疑者。長谷川被告らは「前立腺がんの腹腔鏡手術の経験はなく、失敗するかもしれないと思ったが試してみたかった。申し訳なかった」と起訴事実を認めているという。

 起訴状によると、長谷川被告らは昨年11月8日、知識、経験がないのに高度先進医療の腹腔鏡手術で男性の前立腺がんを摘出しようと安易に計画。手術中に誤って静脈を傷つけるなどし、出血多量による低酸素脳症で脳死状態に陥らせて12月8日に死亡させた。

 腹腔鏡での前立腺摘出は腎臓などに比べ高度な技術が必要とされるが、長谷川、前田両被告は動物実験しか経験がなく、斑目被告も助手として数回手術に立ち会ったことがあるだけだった。

 しかし診療部長に強く手術実施を求め、部長は押し切られる形で許可。その際、指導医を立ち会わせ状況次第で迅速に安全な開腹手術に切り替えるよう指示したが、指導医は立ち会わなかった。

 通常7−10時間で終わる手術は約13時間に及び、針で血管を傷つけた上、止血用具でさらに傷を拡大。手術中、輸血担当の医師が開腹手術に切り替えるよう何度も提案したが、長谷川被告らは「止血は終わりました」と拒み、やっと応じた時には手遅れだった。

 手術前は患者や家族に危険性を十分説明せず、手術後も一貫して「手術は成功したが、結果として脳死になった」などとうその説明をしていたことも判明している。

「点滴ミスで男児死亡」 鹿児島、遺族が損賠求め提訴

2003年10月10日 The Sankei Shimbun
 ぜんそく症状で点滴治療を受けた男児=死亡時(7つ)=が死亡したのは、看護師が点滴の際ポンプの設定を誤り、過剰に薬を投与したためなどとして、両親ら遺族が鹿児島県川内市の済生会川内病院(馬場泰忠院長)と看護師らに慰謝料など計約1億9000万円の損害賠償を求める訴訟を10日、鹿児島地裁に起こした。

 原告側は「看護師は基本的な業務上の注意義務を怠り、点滴を指示した主治医も経過観察をきちんとしなかった」などと主張。また病院には使用者責任があるとしている。

 訴状によると、男児は2001年4月30日、せきなどの症状のため川内病院に入院したが、同日午後4時半ごろ、女性看護師が抗不整脈剤を点滴する際、ポンプの設定を誤り、通常の16倍の量が点滴された。

 男児は一時心肺停止状態になり、同日午後別の病院に転院した。意識が一度も戻らないまま02年11月20日、多臓器不全のため死亡した。

 記者会見した男児の父親(26)は「この裁判が前例となり、今後私たちと同じような状況に置かれる人が出ないですむようになることを望む」と話した。

 病院側は「訴状を見ていないので現段階ではコメントできない。申し訳ないと思っており誠意を持って対応していきたい」とコメントしている。

肺がん手術で医師の説明不十分、遺族への慰謝料命令

2003/10/09読売新聞 Yomiuri On-Line
 東京都立駒込病院で肺がんの手術を受けた後に死亡した男性患者の遺族が、手術前に医師から十分な説明を受けなかったなどとして、都と執刀医らに慰謝料約5000万円を求めた訴訟で、東京地裁は9日、都などに275万円の支払いを命じる判決を言い渡した。

 福田剛久裁判長は「不十分な説明で、患者は自ら手術を受けるか否かを判断する機会を奪われた」と、インフォームドコンセント(十分な説明と同意)の欠如を指摘した。

 判決によると、患者は1996年9月、都立駒込病院で肺に腫瘍(しゅよう)があると診断されて入院、肺の一部を切除した。執刀医らは手術前の検査で、肺の別の個所にもがんが転移している兆候を発見したが、患者や家族には伝えず手術の承諾を得た。患者は翌月退院したが再入院。回復しないまま、99年2月に75歳で死亡した。

 判決は「がんが転移していた場合、手術の成功率が低くなることを事前に十分、患者側に理解させるべきだった」と述べた。

腹腔鏡手術の女性、1カ月後に死亡 大量出血、止血ミスか

2003年10月08日 The Sankei Shimbun
 横浜市青葉区の昭和大藤が丘病院で昨年10月、腹腔(ふくくう)鏡を使った副腎腫瘍(しゅよう)摘出手術を受けた派遣社員、中沢操さん=当時(29)、川崎市=が止血ミスにより大量出血し、約1カ月後に死亡していたことが8日、分かった。

 両親の届けを受けた神奈川県警青葉署が司法解剖した結果、死因は副腎動脈の縫合不全による出血死とされた。同署は病院からカルテの任意提出を受け、主治医らから事情を聴くなど業務上過失致死容疑での立件を検討している。

 病院は両親に対し、止血ミスは認めたが「死因はくも膜下出血」などと死亡との因果関係を否定し、原因究明に当たる外部調査委員会の設置も拒んでいるという。

 厚生労働省で記者会見した母親の美智代さんによると、中沢さんは主治医から「傷あとがきれいだし、治りも早い」と勧められ手術に同意。昨年10月1日に実施された手術は8時間半余に及んだ。翌朝、出血多量でショック状態となり、急きょ開腹手術した結果、動脈を止めるクリップが1カ所外れているのが判明。急性膵(すい)炎などを発症し、意識不明のまま同28日に死亡した。

 腹腔鏡手術は高度な技術が必要とされるが、主治医はこの方法で副腎腫瘍を取り出す手術を過去4例しか経験していなかった。事前に中沢さんに危険性の説明もしていなかったという。

 腹腔鏡手術による死亡事故では9月、東京慈恵医大青戸病院の医師3人が警視庁に逮捕されたばかり。美智代さんは「青戸病院の件を聞き、同じだなと涙が出た。娘の死を公表することで、腹腔鏡手術の難しさを知ってほしい」と話した。

254人に放射線過剰照射 国立弘前病院

2003年10月04日 The Sankei Shimbun
国立弘前病院で放射線治療機器として使用される「リニアック」

 国立弘前病院(青森県弘前市、伊藤文也院長、365床)で1988年から99年まで、がんなどの放射線治療をした患者計254人に対し、技師の計算ミスから過剰な放射線を照射していたことが3日分かった。今年8月、患者の1人が過剰照射の副作用とみられる直腸炎で手術を受け、過去の診療記録からミスが発覚。乳房変形やろっ骨骨折など計7人の副作用が疑われている。

 ミスをした技師は1人で、同病院は青森県と同県警に医療事故として届けた。今後、外部の専門家を含む調査委員会を設置、過剰照射した患者全員と連絡を取り、副作用の有無を確認する。

 過去に東京都や石川県で10−20人台の患者に放射線を過剰照射した例はあるが、254人への過剰照射は国内最大規模とみられる。

 同病院によると、今年8月、放射線照射の影響とみられる直腸炎を発症した男性患者に人工肛(こう)門を付ける手術を実施。治療記録を調べると、97年の前立腺がん治療で高エネルギーエックス線装置「リニアック」を使用した際の放射線量が適正線量を超えていたことが分かった。

 その後の内部調査の結果、88年7月から99年10月(91年4月−95年3月を除く)の期間に1人の放射線技師が線量計算を間違えるミスを繰り返し、254人(延べ327回)に医師が指示した放射線量の1・28−1・11倍を照射していた。

 91−94年度はこの技師が担当を外れていたという。同病院は「技師の計算式が間違っているかまで、医師が確認していなかった。チェックが甘かった」としている。

 これまで連絡が取れた過剰照射患者は約30人だけで、このうち7人に副作用とみられる症状が出ており、副作用被害は拡大する恐れがある。

 放射線をめぐっては、金沢市の金沢大病院で2000−02年、技師の入力ミスで、患者12人に過剰照射。1人に重症の副作用が出た。99−2000年には東京都港区の虎の門病院でも患者23人に過剰照射し、うち7人にのどの炎症などの副作用が出た。

■弘前病院会見の一問一答

 放射線過剰照射が明らかになった青森県弘前市の国立弘前病院の伊藤文也院長らが3日夜、行った記者会見の一問一答は次の通り。

 −技師からの説明は。

 「計算式の思い込みだったと話し、反省している」

 −なぜ長年気づかなかったのか。

 「照射量は毎日チェックしているが、技師の計算自体が間違っているとは思っていなかった」

 −技師が担当した全患者でミスがあったのか。

 「半数程度だった」

 −副作用のある7人への過剰照射の程度は。

 「おおむね1・25倍になっていた」

 −254人の中で死亡した患者はいるか。

 「もともとガン治療のための放射線治療で、治療後にガンで亡くなっている人はいる。しかし、過剰照射の副作用との因果関係ははっきりせず、これから調査する」

 −患者への説明は。

 「これから文書を送って説明し誠意を持って対応していきたい。副作用にかかる治療費は当病院が負担していく」

医療ミス兵庫県に7千万円賠償命令 出産時の輸血措置で過失

2003年10月02日 The Sankei Shimbun
 出産後の出血で妻=当時(34)=が死亡したのは輸血措置の過失が原因として、兵庫県尼崎市の男性(32)と子供らが同市内の産婦人科医と転送先の県立尼崎病院(尼崎市)を開設する県に慰謝料など計約9300万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、神戸地裁尼崎支部は2日、県に計約7100万円の支払いを命じた。

 安達嗣雄裁判長は判決理由で「尼崎病院の医師は到着時の診察で直ちに輸血を開始すべき注意義務があったのに、時期が大幅に遅れた過失がある」との判断を示した。産婦人科医への請求は棄却した。

 判決によると、女性は2001年7月17日、産婦人科医院で男児を出産後に出血が続き、医師は輸血用血液の到着が間に合わないと判断し、尼崎病院に転送。同病院の医師は大量出血を聞き、止血手術などをしたが、輸血を開始したのは転送から数十分以上後で、女性は18日午後、出血性ショックで死亡した。

 県立尼崎病院の船田理総務部長(57)は「できるだけの処置を行ったが、主張が認められず非常に残念。判決文をよく読み、控訴を含め、今後の対応を検討したい」と話している。

挿管ミス気付かず患者死亡 横浜市民病院

2003年10月02日 The Sankei Shimbun
 横浜市立市民病院(同市保土ケ谷区、福島恒男院長)は2日、別の病院から救急搬送された50代の男性患者について、気道を確保するため気管内に入れる管が、誤って食道に入っていたのに気付くのが遅れ、死亡したと発表した。

 届け出を受けた保土ケ谷署が司法解剖した結果、死因は肺炎による病死だったが、同署は管が食道に入った経緯などを調べる方針。

 市民病院によると、患者は肺炎が悪化したため、横浜市磯子区の私立病院から9月30日午後7時ごろ、挿管された状態で運び込まれた。点滴治療や人工呼吸器を装着するなどしたが1日午前10時半ごろ、心肺停止状態となった。

 医師が蘇生(そせい)措置をした際、管から胃の内容物が出たため、挿管ミスに気付き、管を気管内に入れ直したが、同11時40分ごろ、死亡したという。

 私立病院側は「医師は間違いなく管を気管に入れた」と説明。市民病院の渡辺古志郎副院長は「当院での挿管ミスはない。気付くのが遅れ、申し訳ない」としている。

手術ミスで医師3人逮捕 マニュアル見ながら執刀

2003/09/25中国新聞ニュース
 東京慈恵会医大青戸病院(東京都葛飾区、落合和彦院長)で昨年十一月、前立腺がんの摘出手術を受けた千葉県の男性患者=当時 (60)=が一カ月後に死亡する医療ミスがあり、警視庁捜査一課は二十五日、業務上過失致死容疑で同病院の医師三人を逮捕した。

 逮捕されたのは、いずれも泌尿器科の斑目旬(38)、長谷川太郎 (34)、前田重孝(32)の三容疑者。二十六日、手術方式の報告を受けていた診療部長(52)と麻酔医師二人の計三人を書類送検する。

 警視庁は二十五日、同病院を家宅捜索、亀有署に捜査本部を設置した。

 手術は腹腔(ふくくう)鏡という器具を使って行われたが、斑目容疑者らは、内視鏡の業者から術中に取り扱い説明を受けたり、手術方式のマニュアルを見ながら執刀するなど手術がずさんだったことから、異例の強制捜査に踏み切った。

 捜査本部は(1)手術経験の浅い斑目容疑者らが担当した(2)より安全な開腹手術への変更が遅れた(3)大量出血に備えた輸血用血液の確保を怠った―ことが事故を招いたと判断した。

 調べでは、男性患者は昨年十一月八日、同病院で前立腺がんの摘出手術を受けたが、止血処理が十分にできず、出血多量による低酸素状態で脳死状態に陥り、十二月八日に死亡した。

 手術は摘出する前立腺の回りの静脈が出血しやすいため結んで止血したり、前立腺を摘出した後にぼうこうと尿道をつなぐなど高度な技術が必要とされる。

 慈恵会医大病院では千葉県柏市にある別の付属病院などでこの手術を認めているが、青戸病院は大学の倫理委員会の承認を得ていなかった。

 斑目容疑者らは診療部長に手術方式を報告したが、診療部長は倫理委員会には知らせず、手術方式を独断で認めていた。逮捕された医師の一人は「自分で成功症例を挙げたかった」などと話しているという。

 腹腔鏡手術は、腹を開く開腹手術に比べて傷口が小さいことや、日常生活への復帰が早いため普及。開腹しないためテレビモニターの画像を見ながら手術をしなければならず、熟練した技術が必要とされている。

医療事故:輸血に人工透析用ポンプを使用 阪大病院

2003年09月23日[毎日新聞]Mainichi INTERACTIVE
 大阪大病院(大阪府吹田市)で今年3月、輸血を担当した麻酔科医師が手術中にポンプの操作を誤り、患者(70)が一時、心停止になった事故で、使ったポンプは輸血用でなく人工透析用だったうえ、正しい使い方をしていなかったことが、同病院の「医療事故調査委員会」の調査で分かった。同病院は22日、調査報告書をホームページに掲載した。

 報告書によると、ポンプは人工透析を安全に行うために空気の混入など4種類の異常を検出し、自動停止する安全装置があり、一つでもスイッチが入っていないと警報音が鳴る仕組み。しかし、輸血に使う場合、空気混入を知らせる装置しか必要ないため、ほかの三つの装置のスイッチを切り、警報音が鳴っていた。医師らはこの音を聞いていたが、警報音と認識しなかった。さらに、空気混入を知らせる装置も何らかの理由で切れていたのに、医師らはそれにも気づかなかったという。

 ポンプは医療機関で輸血用に使われていることが多いとされ、報告書では「目的外使用とは言えない」としたが、同病院は事故後、このポンプの使用を原則禁止とした。【根本毅】

医療過誤:頭部手術で男子中学生死亡 国立長野病院

2003年09月17日[毎日新聞]Mainichi INTERACTIVE
 長野県上田市の国立長野病院(進藤政臣院長)が行った同市内の男子中学生(15)の頭部切開手術で、血液吸収綿を残したまま縫合するミスがあり、取り出すための再手術をする際、全身麻酔をしたところ中学生の心臓が一時停止し死亡したことが17日、分かった。病院側は医療ミスを認めている。病院から届けを受けた上田署は業務上過失致死の疑いで病院関係者から事情を聴いている。

 同病院などによると中学生は、脳内にうみがたまる脳膿瘍(のうのうよう)と判明、今月3日に摘出手術を受けたが、手術後のエックス線検査で頭部内に1センチ四方の血液吸収綿を取り残したことが分かった。

 このため、同病院は家族に医療ミスがあったことを説明して謝罪。4日に家族の同意を得たうえで綿を取り除くための再手術に踏み切り、患者に全身麻酔したところ約1時間後に患者の心臓が停止。心臓マッサージで心拍数は正常に戻ったものの、血液の循環状態が不安定だったため、人工心肺補助装置を使用して集中治療室に戻したが、中学生は昏睡状態のまま15日、死亡した。同病院は既に厚生労働省関東信越厚生局と上田署に医療事故として報告た。

 進藤院長は会見で「血液吸収綿の残置は明らかな確認ミスで深くおわびする。ご遺族には誠心誠意対応していきたい」と話した。【森俊樹】

東大病院で輸血ミス 20代の女性患者重体

2003年09月02日 The Sankei Shimbun
 東大病院(東京都文京区本郷)は2日、肝臓の病気で入院した関東地方の20歳代女性への手術で、輸血の際に誤って血管内に空気を注入する医療ミスがあり、女性が意識不明の重体になった、と発表した。

 東大病院は警視庁本富士署などに事故を報告。同署は業務上過失致傷の疑いもあるとみて病院から事情を聴く。

 同病院によると、手術中の1日午前、男性研修医(24)が輸血量を増やしたところ、女性が不整脈を起こし心臓が停止した。超音波検査の結果、心臓などに空気が混入したことが判明した。

 血を送り込む急速輸血ポンプの管の密閉が不十分だったうえ、空気感知器の設置場所が適当でなかったことが原因とみられる。

 ポンプは通常の輸血ポンプの数十倍の速さで輸血可能で、急激に輸血量が増えると、その分、空気混入の危険性が増す。制御が難しく、同病院では操作は麻酔科の専門医が行い、研修医が扱うことは許されていない。

 専門医(43)は手術前、研修医にポンプを触らないよう指示したが、ほかの手術を監督するため数分間手術室を離れており、研修医が操作した。

 手術を行った外科医が「今日の輸血量は多めに」と指示したところ、研修医は「輸血量を今すぐ増やすように」と思い込み、反射的にポンプを操作したとみられる。

 永井良三同病院長は「重大な事故を招き、誠に残念。深くおわび申し上げます」と謝罪した。

投薬ミスで一時こん睡状態に 愛知

2003年08月21日 The Sankei Shimbun
 愛知県半田市の市立半田病院(肥田野等院長)で昨年3月、同県南知多町の男性患者(65)に、血圧降圧剤の代わりに血糖降下剤を処方し、自宅で服用した患者が一時こん睡状態に陥っていたことが21日分かった。

 名前の似た薬をパソコンに誤入力したことが処方ミスの原因で、病院側は過失を認めて男性に謝罪。こん睡による入院の費用を出すとともに、今年6月、慰謝料など約23万円を支払った。

 病院によると、男性は慢性腎不全の持病があり、昨年3月28日、内科を受診した際、医師が血圧降圧剤の「アルマール」を出すように事務員に指示したが、事務員は血糖降下剤の「アマリール」をパソコンに入力。確認を求められた医師も誤りを見過ごした。

 男性は2日後に自宅で処方された薬をのみ、こん睡状態になって半田病院に入院。回復したが同年4月10日まで入院した。

 病院側の調査でミスが分かり、同年4月3日に院長が謝罪。内科の医師に注意した上で、再発防止のためパソコン入力の際の薬の名前を「糖尿アマリール」に変えた。

民間病院は報告義務なし 医療事故報告で厚労省

2003年08月21日 The Sankei Shimbun
 医療事故の防止策などを検討している厚生労働省が、事故報告を義務付ける医療機関を国立病院などに限定し、医療法人などの民間病院を対象外とする方針を示していたことが21日明らかになった。方針は日本医師会(日医)の求めに応じて同省が提出した「確認書」の中で示された。

 民間病院を対象から除外すれば、9割以上の医療機関が事故の報告義務から免れることになり、患者が求めている「医療情報の公開」は大幅な後退を余儀なくされる。

 確認書は、7月29日に開催された「事故報告範囲検討委員会」(範囲検討委)に先立ち、医政局総務課長が同月28日付で日医側に示した。「範囲検討委の検討内容は、(上部機関の)医療事故事例情報検討部会の議論を踏まえ、事故の分析体制が確立されている国立高度専門医療センター、国立病院、国立療養所、大学病院(本部)に限定し、報告対象病院の範囲については検討しない」などとしている。

 厚労省は、ことし12月中に範囲検討委の意見書を取りまとめる予定だが、関係者の間では、この方針により、民間病院への適用拡大が絶望的になったとの見方が有力。

 日医は「報告数を増やせば、有益な情報が得られるわけではない。医療関係者が同じ基準や方法で集めた正確な情報を共有して防ぐべきだ」として制度の整った国立病院などに限定し、民間病院については個々に努力すべきだと主張している。

医療事故:人工呼吸器外れ、ALS患者死亡 青森・三沢

2003年08月11日[毎日新聞]Mainichi INTERACTIVE

 青森県三沢市の市立病院(坂田優院長)に入院中の同県内の男性患者(74)の人工呼吸器が外れて、死亡したことが11日、分かった。男性は筋委縮性側索硬化症(ALS)で、自分で人工呼吸器を外すのは不可能なため、三沢署は医療ミスの可能性が高いとみて、業務上過失致死の疑いで調べている。

 同病院によると、7日午前6時35分ごろ、男性の人工呼吸器が外れたことを知らせる警報が鳴った。医師の処置で一度は呼吸が回復したが、8日に急変、同日午前11時10分過ぎに死亡した。

 男性は2年前に入院。自力呼吸ができないため、常に人工呼吸器を付けた状態だったが、たんを吸引するため数時間に1回は外している。7日も午前5時半ごろに付け直したが、病院側は「午前6時ごろ、外れていないことを確認した」と話している。【小山由宇】

医療ミス:男性腹部に置き忘れガーゼ 新潟大

2003年08月11日[毎日新聞]Mainichi INTERACTIVE
 新潟大医学部付属病院(新潟市、下條文武院長)が91年、県内の70代の男性患者に行った手術で、使用したガーゼ(縦35センチ、横35センチ)2枚を男性の腹部内に置き忘れる事故があったことが11日、分かった。11年後の昨年10月、別の病気の検査で腹部に異物を発見。今月、摘出手術を行ったが、経過は良好という。

 同病院によると、術前と術後にガーゼ数を数える際に、確認を誤ったらしい。今年7月に男性が異常を訴えていた。

 同病院は01年から、X線を通さないガーゼを使用し、術後にX線検査の実施を義務づけている。下條院長は「患者さんに大変申し訳ない。再発防止に努力したい」と陳謝した。【柴田真理子】

人工授精患者取り違え 愛知の病院

2003年08月11日 The Sankei Shimbun
 愛知県小牧市の小牧市民病院(末永裕之院長)で昨年11月、不妊治療のため同県内の30代の女性に人工授精を行った際、患者の確認を怠り、誤って夫以外の精液を注入する医療ミスがあったことが11日までに分かった。

 同病院は直後にミスに気付いて処置を取ったため、妊娠はしなかったという。

 小牧市はミスを認め、末永院長が女性に謝罪し、精神的苦痛への賠償で女性と既に合意している。賠償金は市議会の承認を経て、9月に支払われる見込み。

 同病院によると、治療を受けた診察台はカーテンで仕切られ、患者の顔を医師らが見えないようになっており、医師らはこの女性の前に治療を受ける予定だった別の女性と取り違えていた。

東京医科歯科大で投薬ミス 男性患者重体

2003年08月07日 The Sankei Shimbun
 東京医科歯科大病院(東京都文京区)で投薬を受けた50代の男性患者が一時心停止状態に陥り、その後も重体になっていることが、7日分かった。病院側は同日記者会見し、不整脈治療剤を患者に過剰に投与した医療ミスの疑いがあることを明らかにした。

 文部科学省や東京医科歯科大病院によると、重体になっているのは都内在住の男性。今月上旬、不整脈などのための入院治療中に呼吸の状態が安定しないため、医師が不整脈治療剤を静脈注射。

 その後、男性が一時心停止するなど危険な状態に陥った。病院で内部調査した結果、治療剤を過剰に投与していたことが判明したという。

薬剤原液投与され患者死亡 山梨赤十字病院

2003年07月21日 The Sankei Shimbun
 山梨県河口湖町の山梨赤十字病院(小沢興院長)で、看護師が誤って入院患者にカリウム補給剤を原液のまま投与し、患者が死亡していたことが20日、分かった。

 小沢院長は投与ミスを認めた上で「患者の直接の死因かどうかは不明」と説明。富士吉田署は業務上過失致死の疑いがあるとみて、看護師らから事情を聴き、詳しい死因を調べる方針。

 病院によると、死亡したのは県内の70代の女性で、うっ血性心不全などのため15日に緊急入院。19日朝の採血で、不整脈を防ぐ血液中のカリウムが減少していることが分かり、主治医が「KCL」と呼ばれるカリウム補給剤20ミリリットルの投与を決めた。

 主治医はKCLを点滴剤に混ぜて薄め、ゆっくり投与するよう指示したが、看護師は誤ってKCLの原液を点滴チューブを経由して静脈に直接投与。数分後に不整脈が起こり、心臓マッサージなどを施したが、約1時間後に死亡したという。

「治療遅れ脳障害」 広島の男性が賠償提訴

2003/07/09中国新聞地域ニュース
 市民病院・県立病院で受け入れられず

 心臓発作のため救急車で運ばれた広島市民病院(広島市中区)と県立広島病院(南区)に入院できず、救命治療が遅れたことで重度の脳障害を負ったとして、南区の公務員男性(54)と妻が八日、それぞれの病院を管理、運営する市、県に二億三百万円の損害賠償を求める訴訟を広島地裁に起こした。

 訴状によると、男性は一昨年十二月二十三日未明、自宅で持病の狭心症の発作を起こし救急車を呼んだ。男性が通院していた広島市民病院に救急隊員が電話をしたところ、当直医が救急救命センターに連絡するよう指示。しかし、センターの電話コンセントが抜けていたため、電話がつながらなかった。

 やむを得ず向かった県立病院の当直医は、男性が心肺停止の状態だったのに、満床を理由に受け入れを拒否。最終的に運ばれた広島大医学部付属病院(南区)の処置で心臓は動き始めたが、重い脳障害が残って現在も植物状態が続いている。

 原告側によると、両病院は、電話のコンセントが抜けていた事実や満床を理由に受け入れを拒否した経緯の誤りを認めて謝罪。しかし、救急措置を施しても脳障害を避けられたかどうかは分からない―との姿勢を示したため、訴訟に踏み切ったという。

 市の病院事務局と、県の県立病院室はいずれも「訴状を見てから対応を検討をする。現段階でのコメントは差し控えたい」としている。

業過致死容疑:鎮静剤注射され85歳死亡、東和病院が事情聴取

2003年07月06日[毎日新聞]Mainichi INTERACTIVE
 東京都足立区東和4の「東和病院」(299床)で6月上旬、鎮静剤を注射された85歳の女性が直後に死亡していたことが分かった。警視庁綾瀬署は業務上過失致死容疑で病院関係者から事情を聴いている。

 調べでは、足立区内に住む女性は脳内出血のため入院。磁気共鳴画像化装置(MRI)で精密検査を受ける際に頭部を固定するため、女性看護師が鎮静剤を注射した。女性はその直後に呼吸不全に陥り、約2時間後に急死した。看護師は担当医師の指示に従って鎮静剤を注射した。同病院は事故当日、「必要以上の量を注射した後、死亡した」と同署に届け出た。

 鎮静剤には筋弛緩(しかん)作用があり、患者の興奮を抑えたり、手術前に脱力させたりする目的で投与される。だが、血圧低下や無呼吸状態になることがあり、投与量に注意が必要という。【長谷川豊】

医療過誤:病院側控訴断念 7000万円余支払いへ 福岡

2003年07月01日[毎日新聞]Mainichi INTERACTIVE
 
 脳腫瘍(しゅよう)の開頭手術後に死亡した高校2年の女生徒(当時17歳)の死因を巡り、両親と北九州市小倉北区貴船町の小倉記念病院が約10年争った訴訟で、病院側は1日、控訴を断念した。先月26日の1審判決で、福岡地裁小倉支部(杉本正樹裁判長)は開頭手術と死亡の因果関係や、同手術以外の治療法を説明しなかった説明義務違反を認め、ほぼ両親側の請求通り約7270万円の損害賠償を病院側に命じた。

 伴敏彦病院長は「重要な争点だった誤診や手術ミスがなかったという点で当方の主張が認められた。裁判の長期化が好ましくないとも判断した」とコメントした。原告の母親で福岡県宗像市の医師、久能恒子さん(67)は「改めてよかったなと思う。主治医などの当時者は既に病院を去り、病院側にも苦しい選択だったと想像できる」と話した。【近藤聡司】

広島市に賠償命令 不妊治療で主婦に障害過失認定

2003/06/28 中国新聞地域ニュース
 不妊治療で使われた排卵誘発剤の副作用で、脳梗塞(こうそく)になって後遺症を負ったとして、広島市中区の主婦(41)が、広島市民病院を運営する市と、持田製薬(東京)に一億五千七百万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が二十七日、広島高裁であった。鈴木敏之裁判長は一審判決を破棄。市に八千五百五十八万円の支払いを命じた。持田製薬への訴えは棄却した。

 副作用で「卵巣過剰刺激症候群」と診断された後も排卵誘発剤を投与した点について、鈴木裁判長は「超音波検査をしないまま漫然と投与したのは医師の過失」と指摘。入院が遅れた過失も認定して「すぐに入院させなかったために引き起こされた」とした。

 訴状によると主婦は一九九五年三月、排卵誘発剤による治療を始めた。副作用で腹痛などを発症した後、脳梗塞を併発。手術後も言語障害や右半身まひが残り、九六年に提訴した。広島地裁は二〇〇〇年、「独特の体質によるまれな結果で、医師や製薬会社に過失はない」として、訴えを棄却した。

 岡崎富男病院長は「主張が認められず残念。判決内容をよく検討して今後の対応を決めたい」と話している。

医療ミス繰り返す「リピーター」医師をなくせ!

2003/06/26 ZAKZAK
厚生労働省が「医師資質向上対策室」

 厚生労働省は26日までに、医療ミスを繰り返す「リピーター」医師に対する行政処分の申し立てを受け付けたり、具体的な処分方法を検討したりするための「医師資質向上対策室」(仮称)を、7月1日付で医事課内に5人前後の態勢で新設する方針を決めた。

 リピーター医師問題では医療事故被害者から対策を求める声が強く、同省は業務停止や免許取り消しの処分対象を広げる方針を決めている。具体的な仕組みは今後、木村光江・都立大教授(刑法)や民法学者など数人による研究班を設置し、本年度中にまとめる。

 従来の行政処分は、刑事事件で罰金刑以上が確定した医師や診療報酬の不正請求が判明した医師に限られていた。刑事事件にならないミスで処分する場合、厚労省が注意義務違反を認定する調査、分析が必要となり、課題は多い。対策室は今後、どの程度の処分拡大が可能かを検討する。

 この問題で26日、三重県四日市市の小学校教諭伊藤永真さん(37)らがつくる市民団体「リピーター医師をなくす会」が、処分強化などを求める約3万6000人分の署名を厚労省に提出した。

 伊藤さんは、妻が出産時の麻酔ミスで寝たきり状態になったのはリピーター医師を放置した国の責任として提訴している。この医院はほかにも2件の事故を起こし訴訟中という。記者会見した伊藤さんは「今もどこかでミスが起き、人が殺されている。早急に悪質な医師を把握し、処分してほしい」と訴えた。

医療ミス:まぶたに歯を入れたまま縫合 衝突事故の女性患者に

2003年06月22日[毎日新聞]Mainichi INTERACTIVE
 北九州市立夜間・休日急患センター(沖勉所長、小倉北区馬借)で1月、自転車同士の衝突事故でまぶたをけがした同区内の女性(19)の傷口を処置した際、男性外科医が相手の歯の破片を除去しないまま縫合していたことが分かった。センターは事実関係を認め「解決金」を支払う意向。

 センターは、市医師会所属の医師が交代で当直。当日は70代の開業医だった。センターによると、女性は1月20日夜、同区井堀で高校生の自転車と衝突し左まぶたを切ったため、受診した。翌日、民間の形成外科医院で再縫合した際に、傷口から長さ数ミリの歯の破片数個が見つかった。

 また受診の際、当直外科医は形成外科への転送を提案した看護師に「信用できないのか」と言ったり、傷跡を心配した女性に「心掛け次第」と言ったりしたという。

 女性の家族からの抗議で、市は「医療事故調査会」を設置。外科医らから事情を聴いたうえで、今月20日に沖所長らが女性宅を訪れ謝罪した。また3万円の「解決金」支払いを提示したが、女性側は「現在も通院しており不満がある」と応じなかったという。

 野口博喜センター事務局長は「当直医は歯が入るような事故と知らずに処置した。現時点でミスとは即断していないが、患者の接し方などに問題があった。おわびするとともに誠意をもって話し合いたい」としている。

医療訴訟:東邦大に7710万円の支払い アレルギー見落とし

2003年06月21日[毎日新聞]Mainichi INTERACTIVE
 東邦大付属大森病院(東京都大田区)に入院していた神奈川県内の男性(65)がアレルギー体質だったにもかかわらず、問診や予備検査などをせずに肝機能検査をした結果、試薬に対するアレルギー反応で植物状態になったとして、男性の妻(57)らが同大に約2億460万円の損害賠償を求めた訴訟で、横浜地裁(桜井登美雄裁判長)は20日、大学側に約7710万円の支払いを命じる判決を言い渡した。

 判決などによると、男性は98年3月上旬から、不安定狭心症の治療で大動脈冠動脈バイパス手術を受けるため同病院に入院。ヨウ素に反応するアレルギー体質だったが、同30日、問診が不十分なまま、手術の適否を判断する肝機能検査でヨウ素を含む試薬を静脈注射。直後にアレルギー反応を起こして心停止し、植物状態になった。

 桜井裁判長は「問診義務を尽くしていない。その過失から植物状態に至ったと認めるのが相当」などと指摘した。

 大学側は「心停止はたまたま再発した心筋こうそくに起因するもので、検査との間に因果関係はない」などと主張していた。同病院事務部は判決について「病院側の主張が認められず残念。判決内容を検討して対応を考える」としている。【馬場理沙】

医療ミス:リピーター医師の処分強化求める署名3万人

2003年06月15日[毎日新聞]Mainichi INTERACTIVE
 妻が出産事故で寝たきりになった三重県四日市市の小学校教諭、伊藤永真(えいしん)さん(37)が、医療ミスを重ねる医師への行政処分の強化を求める署名活動を始めたところ、3週間で3万人分が集まる広がりを見せている。かつての教え子やその父母が街頭に立ち、看病に追われる伊藤さんを支えてきた。「先生の苦しみを繰り返してはいけない」と近く厚生労働省に署名を提出する。【嶋野啓二郎、江刺正嘉】

 伊藤さんの妻(32)は01年12月に四日市市内の産婦人科医院で長女を出産した際、麻酔によるショック状態に陥り、今も寝たきりの状態が続いている。この医院ではこれまで新生児に重い障害が残る3件の事故が起き、1件は示談が成立、残る2件も医院側がミスを認めて和解を申し入れた。

 4件目の事故に遭った伊藤さんは今年1月、院長だけでなく、ミスを繰り返す「リピーター」医師を放置してきた国の責任も問う国家賠償訴訟を津地裁四日市支部に起こした。さらに医療被害者らと「リピーター医師をなくす会」を作って代表になった。

 5月23日から始めた会の署名活動では「ミスを繰り返す医師は技術や注意力に明らかに問題がある。最優先に処分を検討しなければならない」と訴えている。処分を決める厚労相の諮問機関・医道審議会にも「今の体制では医療ミスの情報収集自体が不十分。医療に詳しい弁護士や学者をスタッフに加えるべきだ」と求めている。

 伊藤さんの活動を知った教え子の高校生や社会人、PTAによる支援の輪は広がり、繁華街での街頭署名に加えて署名用紙が回覧されている。会の事務局長を務める恩村清美さん(44)は「大勢の人の協力で目標の1万人をはるかに超えることができた。大きな力となるでしょう」と反響の大きさに驚いている。

 署名した四日市市の主婦、石原香理さん(28)は「長女を出産する時、胃痛でもらった薬は妊婦が飲んではいけないものだと分かってびっくりしたことがある。人ごととは思えない」と話した。

 問い合わせは会のメールアドレス(stop.repeaterdr@mbh.nifty.com)へ。

医療過誤:頭部手術で死亡 病院に7000万円命令 神戸地裁

2003年06月12日[毎日新聞]Mainichi INTERACTIVE
 神戸大医学部付属病院(神戸市中央区)で、中学2年の二男(当時14歳)が頭部内にできたのう胞の摘出手術後、死亡したのは病院側の術後管理に問題があったとして、長崎県諌早市の両親が同病院を経営する国を相手どり、総額7800万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が12日、神戸地裁であった。古川行男裁判長は両親の訴えをほぼ認め、約7000万円の支払いを命じた。

 判決によると、二男は地元の病院で98年3月に検査を受け、「頭部にできものがある」と診断された。同年8月、夏休みを利用して神大付属病院で摘出手術を受けたが、術後に頭痛を訴えたため、鎮静剤「ドルミカム」と睡眠剤を投与された。しかし術後3日目の未明に死亡した。

 古川裁判長は「ドルミカムは規定量を1・1ミリグラム上回る11ミリグラムを投与しており、併合投与で呼吸抑制の副作用が出て、死亡につながった。また死亡前日に心電図モニターを外しており、外していなければ助かった可能性があった」と術後管理の過失を認めた。

 判決後、原告の父(55)は「病院の注意義務違反が認められ、ほっとしている」と話した。一方、神戸大医学部総務課は「主張が認められなかったことは残念。関係機関と協議して今後の対応を決めたい」とした。【井上大作】

医療事故防止、企業に学べ 中電病院が管理手法導入

2003/06/12 中国新聞地域ニュース
 ■リスクを分析 「優先度」算出

 製品の故障を未然に防ぐために製造業などが用いる品質管理の手法を医療事故防止に応用する試みに、広島市中区の中電病院が乗り出した。より効果的な危機管理法として、担当の石橋克彦医師が十三、十四の両日、仙台市である医療マネジメント学会で紹介する。

 同病院が導入したのは、FMEA(潜在的故障モード影響解析)と呼ばれる手法。製品使用時の発生が予想される故障の原因や仕組みを設計段階で分析し、頻度や影響度の高い項目に的を絞って、問題を徹底的に排除するノウハウだ。

 院内のリスクマネジメント部会長を務める石橋医師が「危機管理は企業に学ぶべし」と注目。看護科から昨年報告のあった「ヒヤリ・ハット」事例五百七十三件のうち、約四割を占めた投薬時の事例をFMEAで分析した。

 投薬の手順を、医師の指示や看護師のメモ取り、処方せんの記入など十五段階に分類。医師や看護師の話し合いで、各段階で想定されるミスを挙げ、頻度や影響度、見つけにくさの項目ごとに、各五ポイントの「危険優先度」をつけた。

 結果、合計ポイントが高かった、看護師のメモの取り忘れ▽略語で指示するなど医師の伝達不備▽機器の誤操作―の三点に的を絞り、手順や確認事項を細かく指示するチャートやマニュアルを作った。今後、検査ミスや患者の転倒・転落などの防止策にも応用する。

 石橋医師は「三点だけで、総ポイントの40%を占めた。ミスが起こりやすい項目の対策をより徹底することで、その分、危険度は低くなるはず」と説明する。「分厚いマニュアルを作っても、徹底できなければ意味がない。FMEAは安全対策の効果を上げ、危機管理のコスト削減にもつながる」と広がりを期待する。

鑑定対象の74%が医療過誤 調査会が8年間の実績発表

2003年06月08日 The Sankei Shimbun
 全国の医療過誤訴訟などの鑑定を引き受けている医療事故調査会(事務局・大阪府八尾市)が8日、大阪市内でシンポジウムを開催。過去八年間に実施した医学的鑑定618件のうち約74%が病院側の医療過誤で、インフォームドコンセント(十分な説明と同意)の不備などが原因のケースが急増しているとする鑑定実績を発表した。

 事例報告では、医師が手術を受けることによる危険性より受けないことによる被害を強調し、患者を誘導することの問題点が指摘された。

 これに対し、聖霊病院(名古屋市)の鈴木満医師は「医師が自分のやりたい治療法に誘導してしまうことは避けがたい」とした上で「医師には患者の人格を尊重し、情報操作をしないことが求められる」と述べた。

 同調査会代表の森功・八尾総合病院長は「医師任せのインフォームドコンセントを患者が判断できるように変えるための法制化を急ぐべきだ」と強調した。

 医療被害者救済の会(大阪府堺市)の豊田尚美副代表は「病院は結果が悪い時には説明しない。事故後の説明責任こそ重要」と訴えた。

02年度、国立病院の事故124件 水道水点滴、心臓に針

2003/06/03 中国新聞ニュース
 全国の国立病院や療養所、高度専門医療センターから二〇〇二年度に報告があった医療事故の件数が百二十四件に上ることが三日、共同通信の情報開示請求に対し厚生労働省が公開した「医療事故報告書」で分かった。

 水道水を間違って点滴したり、手術に使った針を心臓部に置き忘れたりしたケースのほか、手術部位を左右取り違えて切ったミスや薬の過剰投与もあり、高度な医療を提供する国立医療機関で単純ミスが頻発する実態が明らかになった。

 報告書などによると、国立療養所原病院(広島県)では二〇〇二年十一月、看護師が水道水を入れた袋を輸液と間違って二十代の男性患者に点滴した。患者は一時的に肝機能障害が出たが、その後回復したという。

 国立循環器病センター(大阪府)の小児科では一九九三年と九四年に、心臓手術で使った針を患者の心臓部に置き忘れる事故が発生。いずれも二〇〇二年になってエックス線撮影で気付き、家族に謝罪した。

 豊橋東病院(愛知県)では〇二年十二月、脳外科手術で手術部位を左右間違えて切開した。使用済みの注射器を患者に使用してしまうミスは、大分病院(大分市)と西群馬病院(群馬県)で起きていた。

 「ほかの患者の薬を間違えて注射」(石川県・七尾病院)、「モルヒネを投与すべき患者にコカインを投与」(静岡県・富士病院)、「三倍以上の過剰投与」(宇都宮市・栃木病院)など薬剤関連のミスも多かった。

 函館病院(北海道)、下関病院(山口県)などが患者の血液型と違う血液を輸血。内視鏡検査で腸に穴を開けた事故も滋賀病院(滋賀県)、岩国病院(山口県)、大分病院などで起きた。

 報告は、医療機関側が過失を認めた例のほか、過失は認めていないが患者や家族から抗議を受けたケースも含まれる。

 件数は、事故報告制度が始まった〇一年度より三十一件増えたが、増加原因について、厚労省政策医療課は「報告が徹底された結果だろう」と分析している。

腸閉そくの5歳児死亡、病院側が処置の遅れ認め謝罪

2003/06/01 読売新聞 Yomiuri On-Line
 今年3月、東京都葛飾区の都保健医療公社「東部地域病院」で、5歳の男児が腹痛を訴えていたのに入院から2時間半にわたって医師が診察せず、結局、容体が悪化して死亡したことが1日、わかった。同病院の鈴木謙三院長は、病院側の不手際で処置が遅れたことを認め、遺族側に謝罪した。

 同病院によると、死亡したのは同区内の保育園児、豊田理貴(りき)ちゃん。

 理貴ちゃんは、3月9日午前4時55分ごろ、腹痛を訴え、母親に連れられて同病院の小児救急外来に来院した。当直の小児科医(32)の診察を受けて1度帰宅したが、症状が治まらず、同7時半に再び来院。腹部エックス線撮影などから当直医は「腸閉そくか、急性胃腸炎」と診断、入院することが決まった。

 理貴ちゃんが実際に入院したのは、同11時すぎ。担当は当直医から40代の日勤の小児科医に代わっていたが、医師同士では「腸閉そくの疑いの子供がいる」という引き継ぎをしただけだった。理貴ちゃんが痛みを訴えていたにもかかわらず点滴を与えただけで、日勤医は入院から約2時間半にわたって診察をしなかった。その間、看護師が処置をしていた。

 ところが理貴ちゃんは午後1時半すぎに胃液のようなものを吐いて容体が急変。日勤医が駆けつけた時には呼吸停止状態に陥り、症状が回復しないまま同4時すぎに死亡した。死因は、重症の腸閉そくだった。

 同病院によると、日勤医はこの日、別の救急外来の患者の対応に追われ、エックス線写真などは見ずに当直医の引き継ぎだけで、理貴ちゃんの症状は悪化しないと判断していたという。同病院側は「エックス線写真などを当直医以外の他の医師が見ていれば、容体が急変する兆候に気付く可能性はあった」と連絡不足があったことを認めている。

10倍の薬注射で患者重体 旭川赤十字病院

2003年05月21日 The Sankei Shimbun
 北海道旭川市の旭川赤十字病院(後藤聡院長)で、手術時に患者に誤って必要量の10倍の薬を注射、さらに自発呼吸の止まった患者の気管へのチューブ挿入を間違えるという二重のミスを起こし、この患者が意識不明の重体となっていることが21日、分かった。

 同病院が記者会見で明らかにした。既に市保健所と旭川中央署に届け出ており、同署が業務上過失傷害の疑いで関係者から事情を聴いている。

 それによると、患者が今月上旬、急性心筋梗塞(こうそく)の手術を受けた際、担当した循環器科副部長の男性医師(51)は不整脈の薬100ミリグラムの投与が必要と考え、女性看護師(48)に「100ミリ」と指示。これを看護師が、薬を溶かした液100ミリリットルと誤解し、結果的に必要量の10倍の量を注射した。

 患者は約20分後、心臓が止まり、自発呼吸も停止。男性医師は呼吸を確保するため気管にチューブを挿入したが、約45分後に気付くまで、正しく挿管されていなかった。

 同病院の中沢修副院長は「投与の指示の仕方に問題があった。挿管の確認も慎重にするよう徹底したい」としている。

医療ミス隠し:都立広尾病院元院長に再び有罪 東京高裁判決

2003年05月19日
[毎日新聞]Mainichi INTERACTIVE
 東京都立広尾病院による医療ミス隠し事件で、医師法(異状死体の届け出義務)違反などに問われた元院長、岡井清士被告(67)に対し東京高裁は19日、1審と同じ懲役1年、執行猶予3年、罰金2万円を言い渡した。中川武隆裁判長は「点滴薬を取り違えて、患者に投与したことが死因なのに、虚偽の診断書などを作成した」と指摘した。

 判決によると、岡井被告は99年2月、入院中の主婦、永井悦子さん(当時58歳)が医療ミスで死亡した疑いがあることを認識しながら、医師法で定められた「24時間以内の警察への届け出義務」を怠った。さらに、同年3月、死因を偽った死亡診断書と死亡証明書を作成して、遺族に交付した。

 この事件では、主治医が罰金2万円の略式命令を受け、看護師2人が有罪となったが、岡井被告らとの共謀に問われた元東京都病院事業部の副参事は無罪が確定している。

 判決後、永井さんの夫の裕之さん(62)は「常識的な判断でほっとした」と話した。【渡辺暖】

血液型取り違え…輸血ミス後に81歳男性死亡

2003年05月16日 The Sankei Shimbun
 北海道根室市の市立根室病院(羽根田俊院長)で4月、肺がんの手術を受けた同市の男性(81)に、医師が血液型を取り違えて輸血し、男性が約1カ後に死亡していたことが16日、分かった。

 輸血のミスと死亡の因果関係は不明だが、同病院は「医療ミスがあった事実は認める」として、根室署にも届け出。同署は男性の遺体を司法解剖し、死因を調べるとともに、業務上過失致死容疑で、輸血した医師から事情を聴く方針。

 市立病院によると、男性は4月8日の手術中に、本来のA型ではなく、誤ってB型の血液を輸血されて容体が変化。病院側はミスに気付いて術後回復室で救命救急措置をとり、男性の容体はいったん回復したが、約1カ月後の今月14日に死亡したという。

 同病院は「輸血の際に血液型を取り違えた状況については、亡くなった男性の家族と相談した上で公表したい」としている。

美容整形手術で女性死亡 京都、業過致死で医師を書類送検

2004/05/11 The Sankei Shimbun
 京都市下京区の「川崎クリニック山口美容外科」で美容整形手術を受けた滋賀県甲南町の女性=当時(50)=が脳死状態に陥ってその後死亡する事故があり、京都府警五条署は11日、執刀医に過失があったとして、業務上過失致死容疑で同医院に勤務する男性医師(34)=大阪府吹田市=を書類送検した。

 調べでは、医師は昨年9月14日、女性に麻酔薬を投与して下あごの骨を削る手術を実施。女性は途中で気道閉鎖を起こし体内酸素濃度が低下、脳死状態になり、意識が戻らないまま10月2日、転院した病院で肺炎のため死亡した。

 医師は、麻酔薬を使う手術では気道閉鎖などが想定されるのに酸素吸入のためのボンベを準備せず、業務上必要な注意義務を怠った疑い。

 同署によると、医師は「救護措置が十分でなく悔やまれる」と容疑を認めている。100例以上の同様手術の執刀経験があるが、いつもボンベを準備していなかったという。

 川崎クリニックは京阪神を中心に数医院を展開。女性の遺族には約5000万円を支払い、示談が成立しているという。

 川崎クリニックは「医師が適切な処置をとったと信じたいが、司直の判断を待ちたい。誠意を持って対応した」としている。

医療事故相談センター開設へ 広島県

2003/05/13 中国新聞地域ニュース
 広島県は十二日、「医療安全支援センター」を本年度中に設置する方針を固めた。医療事故相談などへの対応の充実を図るのが狙い。センターは厚生労働省が昨年四月に打ち出し、都道府県に早期体制整備を求めていたが、県は本年度当初の設置は見送っていた。

 県は従来、医療事故に関する相談などには福祉保健部医務看護室や各保健所で対応してきた。国の方針が示された昨年度の段階では、「従来体制を続けながら設置を検討する」との姿勢にとどめていた。

 しかし、厚労省が四月末にセンターの運営指針を作成し、五月七日の全国会議で都道府県の担当者に対応を急ぐよう要請した。これを受け県は、福祉保健部へのセンター設置に向け、医師ら専門職員の配置などについて本格的に検討することを決めた。

 県によると、医務看護室に寄せられる相談は年間二百件程度。医療過誤に関する内容が八割を占め、残り二割は医療機関の体制不備、医師や看護師の対応などに関する苦情という。

 センターは、中立的な立場で患者や家族、遺族から医療行為をめぐる苦情や相談を受け付け、医療機関に仲介することで問題解決を図る。中国地方では既に岡山県が設置している。

名古屋刑務所:受刑者間違え注射 医療ミス7件未公表

2003年04月29日[毎日新聞]Mainichi INTERACTIVE
 名古屋刑務所で98〜01年にかけて、誤って別の受刑者にインスリン注射をするなど計7件の医療上のミスがあり、担当職員らが処分を受けていたことが28日、関係者の話で分かった。同刑務所はミスによる受刑者の容体の悪化や異常な症状などはなかったとして、いずれも国家公務員法に基づく懲戒処分でなく、内部処分(監督措置)として公表もしていなかった。

 関係者によると、98年9月に医務部長注意の処分を受けた同刑務所の看護師のケースでは、刑務所内の病室で、インスリン注射を受けることになっていた受刑者ではなく、同室で同姓の受刑者に誤って注射した。本人確認を怠ったことが原因で、当初、この看護師は上司に報告しなかった。

 また、00年5月には、受刑者から、うがい薬をもらいたいとの申し出を受けた工場の交代職員が、保管するロッカーから間違えて入浴剤を取り出し支給したとして、所長厳重注意の処分を受けた。

 このほか、本人確認を怠って必要のない者に点眼(98年3月に課長注意)▽誤って他人の薬を投与(00年7月に所長厳重注意)――で職員が処分を受けた。さらに01年には3、8、11月に、いずれも収容者に対する誤投薬事案で4人が部長注意などとされた。【北村和巳】

元看護師に有罪 新生児うつぶせ寝死亡事件

2003年04月18日 The Sankei Shimbun
 東邦大大橋病院(東京都目黒区)で1995年、生後3日の男児をうつぶせ寝のまま放置し死亡させたとして、業務上過失致死罪に問われた当時の担当看護師、川島三幸被告(36)に対し、東京地裁は18日、罰金40万円(求刑禁固8月)の判決を言い渡した。

 弁護側は「乳幼児突然死症候群(SIDS)のような病気だった」と無罪を主張したが、山崎学裁判長はうつぶせ寝による窒息が原因と認定。「男児をよく監視するか、あおむけに寝かせれば事故は防げた。幼い命を預かる立場として責任は重いが、病院の看護体制の不備も一因だった」として罰金刑を選択した。

 市民団体「赤ちゃんの急死を考える会」によると、乳幼児のうつぶせ寝をめぐる事故で医療従事者が有罪となったのは初めて。

 判決理由で山崎裁判長は、事故原因について「うつぶせ寝のため、鼻をふさがれた上、吐いたミルクを気道内に詰まらせ窒息した」と判断。その上で「被告はうつぶせ寝の危険性を知りながら約25分間も新生児室を離れ、新生児の看護専門家として守るべき重要な注意義務に反した」と指摘した。

 病院の責任については「15人前後の新生児を被告1人で看護していた体制も事故の遠因となった」と述べた。

 判決によると、川島被告は95年1月、東京都多摩市の舞台俳優、井上達也さん(38)の二男、湧介ちゃんを新生児用ベッドにうつぶせに寝かせて放置、窒息により心肺停止状態に陥らせた。その後蘇生(そせい)したが、低酸素脳症で同年8月、死亡させた。

 井上さんらが起こした民事訴訟では一審の東京地裁、二審の東京高裁がいずれも病院側の損害賠償責任を認め、病院側が上告している。

リピーター医師の処分を

2003年04月11日 The Sankei Shimbun
 出産時の医療ミスの被害者でつくる「陣痛促進剤による被害を考える会」は11日、医療ミスを繰り返しているリピーター医師ら6人を行政処分の対象にするよう厚生労働省医道審議会に申し立てた。

 処分を求めたのは、陣痛促進剤の過剰投与で母子を死亡させるなど4件の医療事故を繰り返している名古屋市の医師や、新生児を死亡させるミスなど3件の事故を起こした仙台市の医師ら6人。

 医道審議会は昨年末、罰金以上の刑が確定した場合に限定していた医師の行政処分について、明白な医療ミスやカルテの改ざん行為なども処分の対象にするよう方針変更している。

院内事故:障害負った女性に和解金1150万円 大阪の病院

2003年04月10日[毎日新聞]Mainichi INTERACTIVE
 入院中の事故で四肢まひの障害を負ったとして、大阪府守口市の60代の女性(昨年7月に病死、遺族4人が承継)が、同市で寺方生野病院を経営する医療法人弘雅会に損害賠償を求めた訴訟で、病院側が遺族に和解金1150万円を支払う内容で大阪地裁で和解したことが10日、分かった。

 訴状などによると、女性は00年2月、背中の痛みなどを訴え入院。ポータブルトイレを使うためベッドから下りる際、転倒してベッドの金属製の枠であごを強打し、脊髄(せきずい)を傷めた。その後、両手両足がまひし、身体障害者1級の認定を受けた。

 女性側は「入院時の症状から転倒は予見できたはずで、病院はトイレの際にはベッド上で介護するべきだった」と看護上の注意義務違反を主張。6500万円の賠償を求めた。病院側は事故と障害の因果関係は認めたが、「看護に落ち度はない」などと反論していた。

 同病院は「女性は亡くなられており、長引かせるわけにいかないと考え和解に応じた」としている。 【山本直】

自治医大病院で医療ミス、動脈損傷で女性患者出血死

2003年04月07日 Asahi.com
 栃木県南河内町の自治医科大学付属病院(布施勝生病院長)で今年1月、重い急性肝炎で入院した埼玉県内の女性患者(当時46)が、カテーテルと呼ばれる細管を首の静脈に通す処置を受けた際、男性医師が過って動脈を傷つけ、出血性ショックで死亡していたことが7日分かった。病院側は医療ミスによる死亡を認め、遺族に謝罪した。栃木県警は業務上過失致死の疑いで医師らから事情を聴いている。

 病院によると、女性は同月中旬、埼玉県内の病院から転院してきた。同月下旬、30代の医師が栄養剤を補給するためカテーテルを通す処置をしていたところ、容体が急変。3日後、出血性ショックのため死亡したという。

医療ミス:新生児死亡、5500万円で和解 千葉県銚子市

2003年04月07日 [毎日新聞]Mainichi INTERACTIVE
 産科医が気管内挿管の技術を持たなかったために、無呼吸状態で生まれた新生児の救命ができなかったとして、死亡した女児の両親が千葉県銚子市の診療所に約8580万円の損害賠償を求めた訴訟は7日、5500万円の支払いなどで双方が合意し、東京地裁(貝阿弥(かいあみ)誠裁判長)で和解が成立した。

 和解条項は診療所の過失に直接触れていないが、今後、気管内挿管について診療所が「適切な施行に心掛け、医療に役立てる」と言明した。原告代理人は「救命技術が不十分な産科医への警鐘になる」と話している。

 女児は99年12月に仮死状態で生まれ、自発呼吸がないまま01年9月に死亡した。両親は(1)呼吸抑制の副作用のある無痛分べん薬を母親の承諾なく投与した(2)救急車到着までの50分間、呼吸確保のための気管切開をせず酸素マスクだけで処置していた――と、産科医のミスを主張していた。 【清水健二】

医療ミス:逆転有罪の麻酔医が上告 横浜市大病院事件で

2003年04月07日 [毎日新聞]Mainichi INTERACTIVE
 99年1月、横浜市立大学医学部付属病院で手術患者を取り違えた医療事故で、業務上過失傷害罪に問われ、東京高裁で逆転有罪判決(先月25日)を受けた麻酔科医の佐伯(旧姓・芦田川)美奈子被告(33)側は7日、上告した。佐伯被告は横浜地裁で無罪(01年9月)、2審で罰金25万円を言い渡された。 【小林直】

医療事故対応策を共有、全国で事業化   今夏から日本医療機能評価機構

2003-03-31 The Sankei Shimbun
 病院選び、医師選びが再三雑誌で紹介されるなど、医療の質への関心は急速に高まっている。病院情報の開示やインフォームド・コンセント(十分な説明に基づく同意)はもちろん、医療事故や対応ミスが表面化する機会が増え、患者側にとって病院選びの重要な「選択条件」になっている。これまでは、医療現場の閉鎖性を背景に、事故情報の集積や分析を通じた防止策への取り組みが全国規模で行われたことはなかったが、今夏、ようやく始まろうとしている。(鈴木 隆)

都立墨東病院の出産事故、都が3500万支払いで和解

2003/03/31 読売新聞 Yomiuri On-Line
 長男が分べん中に仮死状態となり、出産後に死亡したのは都立墨東病院(墨田区)側に過失があったためだとして、都内の男性会社員(39)と妻(38)が東京都に約6000万円の損害賠償を求めた訴訟の和解が31日、東京地裁(近藤寿邦裁判長)で成立した。都が夫婦に計3500万円を支払うことになった。

 原告側代理人によると、長男は1999年1月、分べん中に低酸素症に陥り仮死状態になった。病院側は吸引措置をしたがうまくいかず、その後、帝王切開を行った。生まれた長男は同年4月に死亡した。裁判の中で夫婦は、<1>母胎の状況を考えれば最初から帝王切開を選択すべきだった<2>帝王切開の決定から手術まで1時間を要したのも遅すぎる――などと主張。昨年9月、裁判所が双方に和解を勧告し、協議が行われていた。

 同病院が麻酔医や看護師の確保に手間取って帝王切開が遅れたことを受け、和解条項には、病院側が夜間や休日の当直体制を強化するなど、再発防止策を講じることも盛り込まれた。

医療過誤訴訟:豊島病院の乳児死亡 賠償命令判決で都が控訴

2003年03月26日 [毎日新聞]Mainichi INTERACTIVE
 東京都立豊島病院で01年3月に起きた小児用麻酔呼吸器とチューブの接続不具合で乳児が死亡した医療過誤訴訟で、東京地裁が都とメーカー2社に連帯して計約5000万円の損害賠償の支払いを命じた判決を不服として、都が控訴したことが26日分かった。

 20日の判決は2社の製造物責任を指摘する一方、点検しないまま器具を使用した病院側の過失も認定した。26日に会見した乳児の母親(32)は「解決をこれ以上長引かせないでほしい」と撤回を求め石原慎太郎知事に面会を申し入れた。【川辺康広】

輸血ミス、一時心停止 大阪大病院

2003年03月25日 The Sankei Shimbun
 大阪大病院(大阪府吹田市)は25日、手術中の麻酔科チームが輸血用送血ポンプの操作を誤ったため、患者の心臓などに空気が入り、手術終了直前に一時心臓が停止する事故が起きたと発表した。患者は現在、予断を許さない状況という。

 事故が起きたのは今月実施した手術で、同病院は医療事故調査委員会を設置し、根本的な原因を究明する方針。吹田署や近畿厚生局などにも既に事故を報告した。

 また麻酔中の輸血業務に関するマニュアルを見直し、操作を誤った輸血用送血ポンプの使用も当面見合わせる。

患者取り違えの執刀医ら全員に二審は罰金

2003年03月25日 The Sankei Shimbun
 患者を取り違え病気とは無関係の手術をしたとして業務上過失傷害罪に問われた横浜市立大病院の当時の執刀医や看護師計6人の控訴審判決で、東京高裁は25日、1人を無罪、1人を執行猶予付き禁固刑、4人を罰金刑とした一審横浜地裁判決を破棄、全員に罰金刑を言い渡した。

 検察側は控訴審でも「全員に禁固刑が相当」としたが、安広文夫裁判長は「病院の体制に不備があった上、起訴されていない主治医らも被告と同等かそれ以上の責任を問われてしかるべきで、禁固刑とするとあまりに均衡を欠く」と述べた。

 逆転有罪となったのは麻酔医、佐伯美奈子被告(33)で罰金25万円。看護師、河埜陽子被告(38)は執行猶予付き禁固刑から減刑され、罰金50万円。元第一外科部長の執刀医、高梨吉則被告(59)ら残る4人は各罰金50万円(一審罰金50万−30万円)。

 判決理由で安広裁判長はまず「病院全体で患者確認をするシステムを構築すべきだが、当時の横浜市立大病院にはそのシステムがなく、それぞれが職責に応じて患者確認をする義務を負っていた」と認定した。

 その上で、一審で「主治医に患者確認を求めており、過失はない」とされた佐伯被告については「患者取り違えの可能性に気付いた後も麻酔を続けた過失があり、無罪とした一審判決は事実誤認」と指摘。

 さらに河埜被告ついて「過失はほかの看護師と同等であり、手術室で漫然と患者を受け取ったことを理由に突出して過失を重く認定したのは誤り」とした。

 高裁判決によると、6人は1999年1月、男性患者を取り違え、当時84歳の肺疾患患者に心臓手術をし、当時74歳の心臓疾患患者に肺を一部切除する手術をして、それぞれ5−2週間の傷害を負わせた。

リピーター医師:被害者らが法整備求める署名を提出

2003年03月24日 [毎日新聞]Mainichi INTERACTIVE
 埼玉医大の医療ミスで長女を亡くした埼玉県鴻巣市の古館文章さん(49)ら被害者が24日、カルテの改ざん防止や、ミスを繰り返す「リピーター」医師を排除する法整備を求めて、署名6819人分を厚生労働省に提出した。さらに被害者らは、改ざんを防ぐ法整備を急ぐよう、厚労省のカルテ開示検討会(座長・大道久日大教授)に要望書を提出した。

 要望書では、「東京女子医大事件は改ざんを証拠隠滅罪で立件した稀有(けう)なケース。法的規制がない現状では、改ざんは後を絶たない」と訴えている。【江刺正嘉】

元主治医らに有罪判決 埼玉医大医療ミス

2003年03月20日 The Sankei Shimbun
 埼玉県川越市の埼玉医大総合医療センターで2000年10月、同県鴻巣市の高校2年、古館友理さん=当時(16)=が抗がん剤を過剰投与され死亡した医療ミスで、業務上過失致死罪に問われた元主治医、墨一郎(33)ら3被告の判決公判が20日、さいたま地裁であった。

 金山薫裁判長は墨被告に禁固2年、執行猶予3年(求刑禁固2年)、元指導医、本間利生被告(37)に罰金30万円(求刑禁固2年)、元教授、川端五十鈴被告(67)に罰金20万円(求刑禁固2年)を言い渡した。

 論告によると、古館さんはあごの腫瘍(しゅよう)治療で入院。墨被告は週1回投与すべき抗がん剤を誤って毎日投与し2000年10月7日、多臓器不全で死亡させた。本間、川端両被告は墨被告の誤った治療計画書を承認するなど、指導監督義務を怠った。

 古館さんの両親は、死因を「病死」とした虚偽診断書作成などの容疑について3被告が不起訴になったのを不服として昨年、さいたま検察審査会に審査を申し立てたほか、埼玉医大と3被告ら6人に計約2億3000万円の賠償を求める訴訟を起こしている。

成人と同量投与か 点滴ミスで9カ月女児死亡

2003年03月14日 The Sankei Shimbun
 大阪府八尾市の医療法人「医真会」八尾総合病院(森功理事長、374床)で昨年2月、通常量の約5倍の気管支拡張剤を点滴された女児(当時9カ月)が重度のけいれん状態となり、転院先の病院で約3カ月後に死亡していたことが14日、分かった。

 八尾総合病院によると、女児は昨年2月18日、気管支炎などで入院。同月20日、気管支拡張剤のアミノフィリンを点滴したところ、けいれん状態になった。

 女児は同日、大阪市立総合医療センターへ転院。検査の結果、アミノフィリンの血中濃度が1リットルあたり50ミリグラムを超える異常に高い値と判明。女児はその後、意識不明の状態が続き、5月2日に死亡した。

 八尾総合病院は「アミノフィリンの調合を誤って成人と同量を投与した可能性が考えられる」などと説明している。

 森理事長は「何度おわびを繰り返してもどうにもならない申し訳ない事故。幼い命を失った責任と向きあっていきたい」と謝罪している。

がん手術で乳房切除、国に慰謝料120万円支払い命令

2003年03月14日(読売新聞)Yomiuri On-Line
 国立がんセンター中央病院(東京都中央区)の医師が不要な手術をしたために乳房を失ったとして、東京都大田区の女性(59)が国を相手取り、約2400万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が14日、東京地裁であった。土屋文昭裁判長は「医師は病状を丁寧に説明せず、原告が手術を受けるかどうか熟慮する機会を与えなかった過失がある」と述べ、国に慰謝料など計120万円の支払いを命じた。

 判決によると、女性は1992年7月、同病院で右の乳首付近の腫瘍(しゅよう)を取り除くため、乳せんをすべて切り取る手術を受けたが、手術内容について十分な事前説明をしてもらえなかった。判決は「手術に緊急性はなく、部分切除を選択する余地もあった」と指摘、医師に説明義務違反があったと認定した。

 同病院の野村和弘院長は「最善を尽くしたが、我々の主張が受け入れられず残念だ。判決内容を検討し、今後の対処を決めたい」とコメントした。

医療過誤:茨城の医療法人に賠償命令 カルテ改ざんの疑いも

2003年03月12日[毎日新聞]Mainichi INTERACTIVE
 急激な腹痛を訴え、敗血症で死亡した茨城県鹿嶋市の女性(当時43歳)の遺族が「入院先の外科病院が適切な治療をしなかった」と訴えて、医療法人「土合会」(同県波崎町)に約8400万円の損害賠償を求めた訴訟で、東京地裁は12日、6137万円余の賠償を命じた。宮崎章裁判長は、原告側の主張をほぼ認め「病院から提出された診療記録は、改ざんされたか抜き取られている疑いが強い」と指摘した。

 判決によると、93年3月に胃がんの切除手術を受けていた女性は、翌月、消化管に開いた穴から食べ物などが漏れたことによる細菌性腹膜炎にかかり、症状が進行して死亡した。

 病院側は当初の診療で家族に「食中毒」と伝えていたが、判決は「医師は早期に腹膜炎を疑っており、直ちに手術をせず、適切な治療をしなかったことが死亡につながった」と認定した。

 さらに、カルテについて(1)胃の手術時の記録に比べ記載がずさん(2)数十カ所にわたり修正・加筆がある――などと指摘し、病院の証拠保全への対応も批判。「不誠実な姿勢が、遺族の精神的苦痛を強める結果になった」と述べた。 【清水健二】

広島市民病院医療過誤 元研修医に有罪判決

2003/03/12 中国新聞地域ニュース
 広島地裁 罰金20万円

 広島市民病院(広島市中区)で二〇〇〇年春、安芸区矢野西六丁目、会社員大谷孝明さん(31)の長男萌生ちゃん(5つ)が心臓手術後に脳障害を負った事故で、注意義務を怠ったとして業務上過失傷害の罪に問われた医師水野憲治被告(29)=岡山市奥田南町=の判決公判が十二日、広島地裁でああった。小西秀宣裁判長は罰金二十万円(求刑禁固一年)を言い渡した。

 当時、研修医だった水野被告の責任について小西裁判長は「監視モニターに異常が生じた場合、他の医師に報告し、脳障害を防ぐ注意義務があった。全治不能の傷害を負わせ、責任は軽くない」と指摘した。

 その上で「病院の集中治療室の管理の甘さも一因。同じく刑事責任を問われた麻酔科部長は、罰金刑に処せられた」と量刑理由を述べた。

 判決などによると、水野被告は〇〇年三月十六日、集中治療室で付き添っていた萌生ちゃんの容体が急変し、モニターが異常を示したのに、機器の故障と判断。看護婦が気付くまで担当医への連絡や触診をせず、低酸素脳症の傷害を負わせた。公判では「注意義務はない」と無罪を主張した。

 判決を受けて孝明さんは「どんな判決でも、気持ちの整理はつかない。研修医の責任を認めた点で内容に納得している」と語った。市民病院の岡崎富男病院長は「司法の判断を厳粛に受け止め、あらためて、事故を起こさぬよう安全管理に万全を尽くしたい」とのコメントを発表した。

医療事故報告:再発防止へ義務化の方針 厚労省

2003年03月11日[毎日新聞]Mainichi INTERACTIVE
 厚生労働省は11日、医療事故の再発防止策のために導入する医療機関からの事故報告制度を義務化する方針を決めた。東京女子医大病院事件などで医療不信が高まっており、任意報告では医療の透明性は確保できないと判断した。10月にも制度をスタートし、まず大学病院や国公立病院など500床以上の大規模病院に報告を義務化し、順次拡大する。

 厚労省は事故事例を集めやすくするため、処分権限を持つ国から独立した第三者機関を設置して事故の収集・分析や改善策をまとめる。事故一歩手前の「ヒヤリ・ハット」事例を00年10月から収集している同省の認可法人などへの委託を検討中だ。

 収集する事故は当面、医療ミスによって患者が死亡したり重い障害が残ったりしたケースに限定する。報告は全国すべての病院と、病床を持つ診療所を合わせた約2万7700施設(99年度)だけでなく、患者・家族などからも幅広く集める。

 報告を促すため、第三者機関に集まった事故事例を積極的に捜査機関や民事訴訟関係者に通報しないことを原則とする。04年度の診療報酬改定で報告への優遇措置を導入する。刑事事件に発展するような重大事故を第三者機関が把握した場合には、関係者に公表や捜査機関への通報を要請する。 【江刺正嘉】

治療ミスで下半身まひ、病院に7千万賠償判決…兵庫

(2003/3/11 読売新聞)Yomiuri On-Line
 兵庫医科大病院(兵庫県西宮市)で髄膜炎の治療を受けた同市内の男性(21)が、治療が原因で下半身まひになったとして、同医科大を相手に約1億1000万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が11日、神戸地裁尼崎支部であった。

 渡辺安一裁判長は「採用すべきでない治療法を選択して後遺症を生じさせた」と医師の過失を認め、約7180万円の支払いを命じた。

 判決によると、男性は腹部の異状を訴え1998年8月、同病院に入院。医師らは髄膜炎と診断、脊椎に抗生物質を針で直接注入する治療を行ったところ、男性は完全に下半身がまひした。

 男性は▽医師が誤って危険な位置に針を刺し、脊髄を損傷させた▽通常以上の量の抗生物質を使用し、抗生物質の神経毒によって脊髄が損傷した―と主張、病院側と全面的に争っていた。

 渡辺裁判長は、男性の訴えを認めたうえで、脊髄へのこの抗生物質の直接投与は重大な副作用があるとされ、保険の承認を受けていない危険な治療法と指摘。そうした危険を伴う治療を受けるほど男性の症状は悪化しておらず、「投与の必要性は必ずしも高くなかった」と認定した。

 同病院業務部は「判決文を見てないのコメントできない」としている。

4800万円支払いで和解 静岡県浜松市、医療ミスで

2003年03月11日 The Sankei Shimbun
 静岡県浜松市の県西部浜松医療センター(脇慎治院長)は11日、浜松市内の男児が1歳半で死亡したのは、生まれた際の医療ミスが原因と発表した。センターを運営する浜松市が男児の両親に医療過誤に関する損害賠償金として4800万円を支払うことで和解した。

 センターによると、男児は1998年5月の誕生直前に脈拍数が減る症状を示していたが、医師は自然出産できると判断。男児は容体が急変し、吸引出産されたが、重症新生児仮死状態となり、1年半後に敗血症で死亡した。

 男児の両親が医療過誤ではないかとセンター側に1億5000万円の損害賠償を請求。訴えを受けたセンターが調査した結果、脈拍が減った際に帝王切開していれば男児の死亡は避けられたことが分かった。

 脇院長は「皆さまに多大なご迷惑をかけたことをおわびします」と謝罪した。

福岡の病院で10倍の抗がん剤を誤投与

2003年03月06日 The Sankei Shimbun
 福岡市中央区の浜の町病院(西田之昭院長)で、勤務2年目の20代の研修医が、悪性リンパ腫の50代の女性患者に適正量の10倍の抗がん剤を誤って点滴投与し、女性に視覚障害や歩行障害などの症状が出る医療事故が起きていたことが6日分かった。

 西田院長は同日、会見し「患者やご家族に大変な苦痛や心労をお掛けし申し訳ない」と謝罪。5日に届け出を受けた中央署は今後、病院の関係者から詳しく事情を聴く。

 病院によると、研修医は、悪性リンパ腫が再発し入院した女性に昨年12月22日から3日間、抗がん剤「フルダラ」を投与した。しかし、同28日に女性の白血球が大幅に減少する異常に気付いた渋谷恒文内科部長がカルテを確認した結果、1日あたり「35ミリグラム」のはずの投与量が10倍の「350ミリグラム」になっていたという。

 処方せんの提出を受けた薬剤師は当初、投与量を不審に思い問い合わせたが、研修医は「正しい」と返答。研修医に指示した主治医も投与量の確認をしていなかった。

 病院側は1月6日になって女性の夫にミスを説明。女性は2月上旬から起立困難などの症状が出始めたという。2月下旬に市内の別の病院に転院し、治療を続けている。

 病院側は「同時に投与した他の薬の量が3ケタだったため誤記入したようだが、考えられないミスだ。今後、処方せんを2人の医師がチェックするなど対策を強化する」としている。

医療過誤で国が逆転敗訴 福岡高裁

2003年01月31日 The Sankei Shimbun
 宮崎医大病院(宮崎県清武町)で大腸がんの手術を受け死亡した同県日向市の自営業男性=当時(54)=の妻が「手術ミスが原因」などとして、国に約6800万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審で、福岡高裁宮崎支部は31日、原告の訴えを棄却した宮崎地裁判決を取り消し、国に約5900万円の支払いを命じる逆転判決を言い渡した。

 判決理由で馬渕勉裁判長は「危険な状態にもかかわらず、余分に時間を要する手術をしたのは選択の誤り。併発した腹膜炎の原因は縫合不全が医学的常識なのに、他の可能性を探り時間を空費した」と指摘した。

 判決によると、男性は1995年8月、同病院で大腸がんの手術を受けた2日後に腹膜炎を発症。再手術が行われたがショック状態に陥り、最初の手術から5日後に敗血症で死亡した。妻は97年12月、宮崎地裁に提訴したが、2000年11月、敗訴した。

 宮崎医大病院の住吉昭信病院長は「上告については判決内容を検討した上で決定したい」と話している。

医療過誤:病院に賠償命じる判決 北九州、検査前投薬で死亡

2003年01月09日 毎日新聞
 北九州市小倉北区の民間病院で胃カメラ検査前に投薬を受けて死亡した女性会社員(当時23歳)の両親が、病院を経営する社会福祉法人・小倉新栄会に8762万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が9日、福岡地裁小倉支部で言い渡された。杉本正樹裁判長は「患者への問診・観察と説明を担当医師が怠った」として、病院側に6716万円の支払いを命じた。

 判決によると、女性は98年1月、胃カメラ検査のため、のど用麻酔剤▽胃腸抑制剤▽鎮静剤――を投与され、いずれかによるショックで心臓が止まり死亡した。

 杉本裁判長は、3薬すべてにショックを起こす可能性があり、極めてまれながら死亡例もあると知りながら、医師が投薬の適否を判断するのに必要十分な問診・観察をせず、鎮静剤は投与しなくても良いことを説明しなかった、と指摘した。

 判決について、別の病院で胃カメラを担当する医師は「患者を過度に興奮させないため、鎮静剤を使う医師は多い」と話す。病院側は「判決文を検討して控訴するかどうか決めたい」と話している。

医療過誤:投薬ミスで足失ったと提訴 横浜、乳児の両親

2003年01月09日 毎日新聞
 横浜市南区の神奈川県立こども医療センター(黒木良和所長)で、未熟児の男の乳児が医師の投薬ミスから右足切断を余儀なくされたとして、同市に住む両親が9日、損害賠償約1億7000万円を県に求めて横浜地裁に提訴した。

 訴えによると、乳児は01年5月にセンターで生まれた。出生時は670グラムで、生後10日目に栄養を補うためカリウムの投与を受けた際、0・6ミリリットルのところを誤って6ミリリットル投与され、「高カリウム血症」になった。

 センターは高カリウム血症治療のため乳児にカルシウム剤を点滴したが、血管の外側の組織に漏れて固まったカルシウムが血管を圧迫したため、右足が壊疽(えそ)を起こし同月25日、手術で右足のひざ下を切断したという。

 こども医療センターは9日、毎日新聞の取材に「訴状を見ておらず担当者も不在のため、コメントできない」と答えた。 【木村光則】

医療過誤訴訟:鑑定医討論方式 東京地裁で初めて実施

2003年01月08日 毎日新聞
 患者の死亡をめぐる医療過誤訴訟で、3人の専門医が過失の有無などを法廷で議論する「カンファレンス(討論)方式」と呼ばれる鑑定が8日、東京地裁(前田順司裁判長)で初めて行われた。1年以上かかることも少なくない鑑定が、今回は依頼から2カ月で終了した形で、迅速化や集中審理の面では一定の成果が得られた。

 この日の審理は、争点整理などの弁論準備手続きで主に使われるラウンドテーブル(円卓)式の法廷で行われ、裁判官、代理人、鑑定医が同席した。東京大、東京医科歯科大、慶応大の循環器と麻酔の専門医3人が、あらかじめ裁判資料を検討して作成しておいた意見の要旨を争点ごとに述べた後、裁判官や代理人と質疑応答し、約3時間で終了した。

 今回の訴訟は、医師が患者の心疾患の可能性を調べずに手術し、血圧の急激な低下を招いたことに対する過失の有無が争点。医師が心疾患を疑うべきだったかどうかについては「考慮すべきだった」「予測は難しかった」「判断できない」と意見が分かれた。しかし質疑を重ねた結果、「心電図から疾患を読み取るのは困難だった」との認識では一致し、その後の容体の変化のとらえ方が違っていたことが明確になった。

 救命の可能性があったかどうかについては、鑑定医3人とも否定的な見解を示した。

 また、鑑定医1人に一方的に質問するだけの証人尋問と異なり、裁判官が3人に同時に意見を求めたり、鑑定医側から代理人に対し、治療経過などを質問した場面もあった。意見が一致しなかった部分も含め、この日の討議全体が鑑定結果として記録された。

 原告側代理人は終了後、カンファレンス方式について「すべての事案で妥当かどうかは分からないが、裁判所の取り組みは評価できる。医師の負担は1人で受けるよりも軽く、鑑定医選任の道は広がるだろう」と述べた。被告側代理人は「今の段階ではコメントできない」と話した。

 傍聴した医療関係者からは「議論が尽くされていないとも感じたが、公開の法廷で議論することで医療裁判が分かりやすくなる」との声も聞かれた。 【清水健二】

医療ミス:「処分怠る」国に3億円賠償提訴へ リピーター被害

2003年01月01日毎日新聞
 「医療ミスを繰り返す医師の過失で妻が寝たきりになったのは、厚生労働省が医師の行政処分を怠ってきたのが原因」として、三重県内の男性(37)と家族が1日、国と四日市市の産婦人科医院を相手に約3億3000万円の損害賠償訴訟を津地裁四日市支部に起こす。医療事故対策をめぐり国の責任が裁判で問われるのは初めて。厚労省は今年、医師の行政処分の強化策をまとめるが、提訴は国に抜本的な対策を迫ることになる。

 訴状によると、男性の妻(31)は01年12月、この医院で長女を出産した。帝王切開の手術部位が痛み、院長(62)の指示で看護師が麻酔薬を投与した。この際、針が血管に入らないよう注意していなかった。このため、針が静脈を傷つけ、麻酔薬が血液に混じってショック状態に陥り、心肺が停止した。さらに人工呼吸器が一時外れ、重い障害が残った。

 この医院では、98年と00年に女児が仮死状態で生まれて重い障害を負う2件の事故があり、2家族が01年10月に「出産を看護師らに任せて立ち会わず、ミスを繰り返した」として損害賠償訴訟を起こした。医院側は2件とも責任を認め、和解を申し出ている。

 95年には院長の留守中、出産時に女児が重度障害を負う事故があり、医院側が損害賠償を支払って示談した。

 いずれも刑事事件にはなっていない。

 厚労相の諮問機関・医道審議会はミスを起こした医師について、刑事罰が確定した場合に限り、医業停止などの行政処分の対象にしてきた。しかし医療事故の多発を受けて先月、それ以外でもミスが明白であれば処分する方針を発表した。

 原告の男性らは「国がもっと早く対策をとっていればリピーターの被害が広がらず、妻は事故に遭わずに済んだ」と訴えている。

 院長は「麻酔薬の投与を看護師任せにした責任は重い。反省し、事故の翌日から出産に関する業務をやめている」と話している。

 厚労省医事課は「訴状を受け取っていないので正式な見解は控えたい」としている。【医療問題取材班】

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