TOPIC No.4-23-3 2000年度/ エシュロン(echlon)


警察・情報機関がすべての通信を監視/英内務省が立法化検討

2000.12.03【ロンドン3日=共同】The Sankei Shimbun
 三日付の英日曜紙オブザーバーは、英国の警察や情報機関が、国内の電話、電子メール、インターネットのホームページ接続などのすべての通信記録を政府のデータベースに七年間保管し利用できるようにする法律の制定を求め、内務省内でひそかに立法化が検討されていると報じた。

 同紙が入手した八月十日付の秘密文書によると、警察や情報局保安部(MI5)、情報局秘密情報部(MI6)などは、全国民の通信監視は個人のプライバシーを基本的人権と定めた法律に抵触する可能性があり論議を呼ぶとしながらも、内務省に早急な立法の必要性を訴えている。

 内務省内ではコンピューター犯罪、児童ポルノ、テロ、国際麻薬取引など現代的犯罪の取り締まりに有効との見方が強いが、一部の議員らからは「プライバシーへの根本的侵害」と反対意見が出ているという。

電子メールの検閲は有罪−仏裁判所

2000年11月7日Mainichi Interactive インターネット事件
 
 仏裁判所は6日までに、学内の学生の電子メールを検閲した大学当局の行為について違法行為に当たるとして有罪判決を言い渡した。この大学は、パリにある工業物理化学大学で、クウェート人の学生の電子メールを検閲していたもの。判決で大学当局の担当者3人は、1万仏フランの罰金を言い渡され、この学生にその罰金を支払うことになる。

 大学当局によれば、検閲を行ったのは、この学生が大学の電子メールシステムを個人目的で使用しているとの情報を得ていたことから、その行為を調査する目的であったという。大学当局側の弁護人は、電子メールについては、一旦インターネットに送信されると守秘義務はなくなるとして、検閲は違法行為に当たらないと主張していた。


FBIの電子メール傍受プログラム『カーニボー』の新真実

By Rachel Konrad/日本語版 森口けい子Thu 16 Nov 2000 17:15 PT by CNET Japan
 米連邦捜査局(FBI)は16日(米国時間)、議論を呼んでいる『カーニボー』(Carnivore)技術に関する追加文書を公開した。これを批判する人々は、この電子メール傍受プログラムが、政府による今までの発表よりもずっと強大であり、プライバシーを侵害するものだということが判明したとして、直ちに反撃に出た。

 『情報自由法』(FOIA)に基づいてFBIを提訴した『電子プライバシー情報センター』(EPIC)は、カーニボーがFBIの主張とは反対に「フィルタリングされていない」インターネット・トラフィックを収集し、保存できることを今回発表された文書は示していると述べた。

 「これまで公開された情報はわずかだが、カーニボー技術とプライバシーとの関わりが深刻な問題として浮上してきている。米国民が、秘密のベールに包まれた覗き見システムを受け入れるとは考えられない」とEPIC顧問弁護士のデビッド・ソベルは声明で述べた。

 公開された文書には、電子メールの選別に用いられるパソコンは「すべてのフィルタリングされていないトラフィックを確実に収集して内部のハードディスクに保存できる」というくだりがあった。6月5日付けのこのFBIの文書には、削除された単語やフレーズが多数ある。

 EPICは、今回公開された文書の出どころや目的に関する詳細についてこれ以上語らなかった。

 FBIは、裁判所命令で押収が正式に認められた電子メールおよびその他のオンライン情報以外は収集しないと国民に確約し、この監視システムを擁護してきた。米上院司法委員会での、FBI副局長ドナルド・M・カーの証言によると、カーニボーは、政府が収集できるデータ量を最小限にとどめるため、ソフトウェア・フィルターを使用しているという。

 17日には、イリノイ工科大学の独立調査チームが、カーニボー・システムに関する「技術報告書」の草案を米司法省に提出することになっている。

 カーニボー・システムは、インターネット・サービス・プロバイダー(ISP)のシステム内に設置され、ISPネットワークを移動するインターネット・トラフィックを「パケット」単位で収集する。同プログラムは、捜査の対象となった人物が伝送したメッセージを探すため、何百万ものメールを厳重に選別する。

 カーニボーは、1997年2月に『オムニボー』(Omnivore)の名で考案された。もともとは『Solaris X86』コンピューター用に提案されていたが、1999年6月、オムニボーはWindows NTベースのコンピューターで稼動するカーニボーに取って替わられた。

 カーニボーは、特定の個人を監視するには有用なツールだが、議会およびプライバシー擁護論者たちの間で大論争を巻き起こした。反対派が恐れているのは、FBIが捜査対象ではない人々の電子メールをも収集する能力を得ることだ。上院司法委員会委員長オリン・ハッチ(ユタ州選出、共和党)や、上院議員パトリック・レーヒー(バーモント州選出、民主党)などは、カーニボーを公に批判し、独立した機関による調査を要求している。

 9月下旬に下院司法委員会は、共和党選出議員チャールズ・キャナディーが提出した、FBIのカーニボー捜査を厳しく制限する法案を20対1で可決した。この法案により、連邦盗聴法に基づいて電話での会話が保護されるのと同様に、電子メールの内容も保護されることになる。

 カーニボーに強く反対する団体の1つ、EPICは10月に、FBIがカーニボーについて公開した565ページに及ぶ文書は、内容的にほとんど無関係なものばかりだったと訴えた。EPICは、FBIがカーニボー・システムのソースコード公開を拒否したことを特に痛烈に非難した。

 EPICはFOIAに基づき、ソースコードその他の技術的詳細、そしてカーニボー技術に伴うプライバシー侵害の可能性を取り上げた法的分析を含む、すべてのFBIの記録を公開することを要求している。

 8月2日に行われた緊急聴聞会で、連邦地方判事のジェームズ・ロバートソンはFBIに対し、8月16日まで裁判所に報告書を提出し、問題となっている文書の量およびそれらを公開する段取りを確認するよう命令した。FBIはその後、3000ページに及ぶ文書を提出したと報告したが、公開の期日については明言は避けた。

 16日に公開された一連の文書は、公開予定文書の第2弾だ。FBIは、3000ページすべてをEPICに公開するまで、定期的に残りの文書を公開していかなければならない。

米のメール傍受システム 高性能過ぎ?論争に

Yomiuri On-Line Bit by Bit デジタルトレンド
 米連邦捜査局(FBI)が秘密開発した電子メール傍受システム「カーニボー(肉食獣)」が、米国内で論争の的になっている。ハイテク武装を進める犯罪組織の追及に役立つと期待される一方、犯罪に関係ない個人のメールまで読み取る能力を持ち、プライバシー侵害が懸念されるためだ。事態を憂慮した米議会も、「カーニボー」が過大な傍受能力を有しているかどうか、中立的な機関に評価を依頼するよう司法省に指示しており、その結果が来月にも出される予定だ。(芝田裕一)

 「カーニボー」の存在が公になったのは今年七月だが、FBIはこれまでに、このシステムを約三十回使用した。電子メールを頻繁に活用するようになってきた麻薬密輸業者やマフィア、ハッカーやテロリストの捜査で、非常に有力な情報を入手することができたという。

 秘密のベールに包まれている「カーニボー」とは、どんなシステムなのか。FBIサイバー技術課のマーカス・トーマス課長によると、ウィンドウズNTの入った端末上で動くプログラムで、インターネット接続業者のホスト・コンピューター(メール・サーバー)につないで使う。

 「カーニボー」の原型である「スニッファー(探知)」と呼ばれるプログラムは、システムに取り付いてユーザーの接続情報を盗むハッカー御用達ソフトとして知られているが、「カーニボー」は、市販のスニッファーより性能が良く、傍受能力は極めて高い。

 問題は、「カーニボー」が、容疑者のメールを見つけ出すため、サーバーを通過するすべてのメールを「捕獲」してしまう点だ。マスコミや市民団体の批判もその点に集中している。

 ワシントンDCに本拠を置く電子プライバシー情報センター(EPIC)のデービッド・ソーベル事務局長は、「われわれ一般国民のメールまでFBIに監視されるのは我慢ならない」と不満をこぼす。EPICのような市民団体の多くが、「FBIは情報技術の急速な発展にかこつけて、通信傍受の権限の拡大を画策している」という印象を持っている。

 これに対し、FBIは「カーニボーがチェックしているのはメールのアドレスだけ。犯罪に関係ないメールの中身は読んでいない」と弁明する。しかし、FBIがプログラムの中身の公開を拒否しているため、市民団体はこの弁明を信用していない。

 捜査機関による電子メールの傍受は世界的な流れとなりつつあり、欧州連合諸国やオーストラリアなどでも法制化の動きが進んでいる。八月十五日に通信傍受法が施行された日本でも、メールの傍受が法的に可能となった。独自の傍受技術を持たない警察庁は、今のところ批判の多い「カーニボー」様式のシステム導入には消極的で、傍受が必要となった場合は、各接続業者に技術協力を求める構えだ。

 しかし、トーマス課長は、「カーニボー」のような装置を次々と開発し、電子的監視技術を高めていかない限り、インターネット時代の犯罪に対応していくのは難しいと断言する。「犯罪者たちはいつも先を行っている。FBIは努力しているが、常に遅れている。もし世界の捜査機関が情報収集能力を失えば、サイバー社会は犯罪者の天国となり、大混乱に陥ってしまうだろう」

エシュロンに関する報告書を発表(仏国民会議)

(2000.10.26) Net security

 フランス国民会議は10月12日、世界規模の監視システム“エシュロン”に関する調査報告書を発表し、エシュロンは欧州の企業や技術開発の偵察に使用されていると指摘した。そして、欧州連合はエシュロンを阻止すべく暗号化技術制限の撤廃および安全なコンピュータ・システムの開発を早急に行うべきだと提言した。

 米国が主体となって運営するエシュロンは英国、カナダ、ニュージーランド、オーストラリアの協力を得て全世界の通信傍受が可能とされているシステムだ。調査委員会の責任者であるArthur Paecht氏は、今回の調査にあたり米国および英国当局に協力を要請したが得られず、そのことは英国をより一層難しい立場に追いやるだろうと述べた。

 一方、米国はエシュロンについて、テロリズムや犯罪そして全ての破壊活動分子の摘発に使用される他、不正行為をたくらむ企業の監視にも有効であると主張している。例えば、企業の贈収賄等の不正行為や、民事および軍事双方の目的で使用可能な技術の監視にもエシュロンは有益だと主張する。しかし、監視対象があまりにも広範囲なため、仮にスパイ行為がなされたとしてもその行為の正当性は容易に立証されるだろう。

 エシュロンおよび英国の役割に関し他のヨーロッパ各国の怒りは相当に強く、今回の報告書で提言された課題が実現化される公算はきわめて高い。

電子メール盗聴システムの公開日程を発表 米司法省

2000年8月17日by Mainichi Interactive
 米司法省は16日(米国時間)、米連邦捜査局(FBI)の電子メール盗聴システム「カーニボー(Carnivore)」に関する書類を、約45日後から公開開始すると発表した。同日付のAP通信が伝えた。同省は、3000ページから成るカーニボー関連の書類を45日ごとに順次公開する予定だが、いつどの部分を公開するかは明らかにしていない。

 カーニボーは、インターネット接続プロバイダー(ISP)の機器に接続して、犯罪関連の電子メールを傍受するシステム。これに対し、プライバシー擁護団体が今月初め、米情報公開法に基づき、情報を速やかに公開することを命じるよう米連邦地裁に請求。地裁はこれに応じて、FBIにカーニボーの情報公開を開始する日程を設定するよう命じていた。

 司法省とFBIが情報公開の日程を発表したのは、地裁の命令に応じたもの。今後、大学などの外部機関や政府内部で評価を行い、12月1日に報告を行う予定だ。

英、「盗聴法」施行延期へ

2000年8月17日by Mainichi Interactive
 英国政府はこのほど、10月までに施行を目指していた調査権統制法(RIP)の早期施行を断念した。いわゆる「盗聴法」として世論の批判を一斉に浴びたためで、欧州人権裁判所でも人権侵害の可能性が指摘されていた。英国内では同法律が施行されぬまま廃止されるとの観測も出ている。

 同法案では、ISPのメールサーバーに監視システムのインストールを義務づけるほか、英国政府および警察の要求に応じて暗号メールの鍵を手渡さなければならない。英国警察は、ISPのサーバーにインストールされた監視システムで、事実上ネットユーザーのメール送信記録をすべて調査することが可能になるはずだった。

騒然!FBIの電子メール検閲ツール「Carnivore」,日本への影響は必至 2000.8.6 14:10 by BizIT
 FBI(連邦捜査局)の電子メール監視ツール「Carnivore(肉食獣)」が,米国で激しい非難の矢面に立たされている。Carnivoreは「麻薬密売」をはじめとした組織犯罪を摘発するために開発された。犯罪者を対象にした電話の盗聴に当たる行為を,インターネットの電子メールに対して行う。しかし特定の犯罪者だけでなく,広く一般市民の電子メールの検閲にまで傍受の対象が拡大する恐れがあるとして,マスコミやプライバシー保護団体が激しく抗議している。

『カーニボー』でメール暗号化の需要が増すか?(上)Chris Oakes2000年8月4日 3:00am PDT by WIRED NEWS

『カーニボー』情報開示問題でプライバシー擁護団体がFBIを提訴 Chris Oakes2000年8月2日 11:00am PDT by WIRED NEWS
 

裁判官命令「カーニボーの情報公開進めよ」Chris Oakes2000年8月2日 11:00am PDT by WIRED NEWS

FBIが『カーニボー』のプライバシー監査を約束 Declan McCullagh 2000年7月25日 9:35am PDT by WIRED NEWS

 
FBIの盗聴システム『カーニボー』、司法省や議会が調査へDeclan McCullagh 2000年7月14日 5:20pm PDT by WIRED NEWS

FBIの電子メール監視システムにプライバシー擁護団体が法的規制を要求(上)Chris Oakes2000年7月12日 3:00am PDT by WIRED NEWS

 
FBIの電子情報盗聴システム『カーニボー』2000年7月11日 10:05am PDT by WIRED NEWS


エシュロンに関する報告書を発表(仏国民会議) (2000.10.26)by NET SECURITY

 フランス国民会議は10月12日、世界規模の監視システム“エシュロン”に関する調査報告書を発表し、エシュロンは欧州の企業や技術開発の偵察に使用されていると指摘した。そして、欧州連合はエシュロンを阻止すべく暗号化技術制限の撤廃および安全なコンピュータ・システムの開発を早急に行うべきだと提言した。

 米国が主体となって運営するエシュロンは英国、カナダ、ニュージーランド、オーストラリアの協力を得て全世界の通信傍受が可能とされているシステムだ。調査委員会の責任者であるArthur Paecht氏は、今回の調査にあたり米国および英国当局に協力を要請したが得られず、そのことは英国をより一層難しい立場に追いやるだろうと述べた。

 一方、米国はエシュロンについて、テロリズムや犯罪そして全ての破壊活動分子の摘発に使用される他、不正行為をたくらむ企業の監視にも有効であると主張している。例えば、企業の贈収賄等の不正行為や、民事および軍事双方の目的で使用可能な技術の監視にもエシュロンは有益だと主張する。しかし、監視対象があまりにも広範囲なため、仮にスパイ行為がなされたとしてもその行為の正当性は容易に立証されるだろう。

 エシュロンおよび英国の役割に関し他のヨーロッパ各国の怒りは相当に強く、今回の報告書で提言された課題が実現化される公算はきわめて高い。

三沢にも傍受基地!? 世界的な通信監視ネットワーク“エシュロン”の実態を報告する国際シンポ開催

2000年7月25日 ASCU24
 米国主導の世界的盗聴ネットワーク“ECHELON(エシュロン)”(コード名)による通信監視の実態を報告する国際シンポジウムが、18日に都内で開催された。主催は市民団体のJCA-NET(市民活動のための通信NGO)。協賛は、進歩的コミュニケーション協会(APC)、ネットワーク反監視プロジェクト(NaST)、盗聴法の廃止を求める署名実行委員会。このシンポジウム“[エシュロン]を知っていますか?”では、日本で8月に施行される予定の通信傍受法(盗聴法)に反対するアピールも同時に行なわれた。

 日本の三沢基地にもエシュロンの施設

 エシュロンについて報告したのは、英国のTVプロデューサのダンカン・キャンベル氏。エシュロンは、'98年に欧州議会に提出された科学技術に関する報告書の中で言及されており、またキャンベル氏がエシュロンに関するレポートを'98年8月に発表したことなどから、注目されるようになったという。

 キャンベル氏は、各地の通信傍受基地の画像を見せながら、エシュロンの実態について説明。エシュロンでは、電話だけでなく、電子メールなどインターネット上のデータ、通信衛星など、ほぼすべての通信の監視が可能という。この世界的な盗聴の連携は、'47年の英国と米国の協定から始まり、その後に、オーストラリア、カナダ、ニュージーランドが加わった。冷戦体制下の当初は、軍事目的での通信傍受だったが、現在では経済活動や外交的な情報、労働運動など、ターゲットを変えて傍受は続いているという。

 青森県三沢市にも、実はエシュロンのための施設が米軍基地内にあるとされている。「施設のコードネームは、“LADYLOVE”(コード名に深い意味はない)。冷戦後に、ソビエト連邦側の人工衛星の数が減ったにも関わらず、三沢のパラボラアンテナの数は増え続けた。現在ではソビエトではなく、他の国の人工衛星の傍受をしていると見られる」と、キャンベル氏は説明した。

 一方、APCのメンバーで、英国で盗聴法反対運動を展開するクリス・ベイリー氏は、電話による盗聴法が法制化され、法律が拡大されEメールなどに適用範囲が拡大しつつある英国の現状を紹介した。

 「エシュロンを利用すれば、Eメールの傍受は簡単にでき、どのWebサイトを見ているか、誰としゃべっているか、インターネット上でどういった通信をしているかがすぐに分かる。日本でも、通信傍受法が施行されれば、これが現実となるだろう」と警鐘を鳴らし、インターネットでの自由と平等を勝ち取るための国際連帯を訴えた。

 プライバシーや国家統制の問題に対し、国民の反応が鈍い韓国の事情

 韓国の市民運動/NGOのための“進歩ネットワークセンター”のスタッフ、オ・ビョンイル氏は、韓国で住民登録証をIC化することによるプライバシーの侵害や国家による国民統制の危険性についてレポートした。韓国では、'68年より住民登録証の携帯が義務づけられており、これには氏名・生年月日、顔写真のほか、指紋などの情報が含まれるという。

 '95年に、この住民登録証をICカード化するという動きが出てきた。ICカード化されると、住民登録証のほか、運転免許証、謄抄本、国民年金証書、医療保険証、印鑑証明など7つの分野、41項目、さらに141の細かい情報が埋め込まれるという。これにより、個人情報が今後大量にIC化され蓄積され、さらにネットワーク上に流出される危険性があることなどから、ICカード化に対する市民の反対運動が広がった。

 市民の反対によりIC化は、'99年2月に取り下げられた。しかしその後、代わりに、これまで紙だった住民登録証がプラスチック化された。氏によれば、プラスチックでの発行システムや形態などは、ICカードのそれと類似しており、これをステップにいつでもIC化できる状態という。プラスチック化に対しても反対運動を展開したが、「韓国は'68年から住民登録証があるという事情から、プライバシーに関する市民の意識が希薄で、反対運動は広がらなかった」という。氏本人の住民登録証を含め、旧来の紙の住民登録証は今年6月で失効したが、これからも、反対運動は継続していくとしている。

 インターネット上の情報に関しては、今年5月に、「金正日将軍を統一の広場に厚くもてなそう」という革命的内容の匿名文書が、労働・社会団体系の複数のホームページに掲載され、情報通信倫理委員会から、削除要求を受けたという。

 氏が所属する進歩ネットワークセンターでは、ホームページのコンテンツそのものに同意はしないものの、コンテンツに違法性はなく、著しく誤った内容を流しているわけではないので、削除要求は不当という立場をとった。しかし、「驚いたことに、情報通信倫理委員会の削除要求に反対立場をとったのは私たちだけだった」という。

 「青少年保護といった建前などのもと、インターネットを規制しようとする当局の動きがあるが、個人の情報が国によっておびやかされることに私たちは反対する。こうした問題は、情報の基本権、すなわち人権の問題であると私たちは考えており、政府当局からの介入を憂慮する。私たちは、韓国において個人の自由、表現の自由のために今後も闘っていく。日本でも盗聴法を無効化すべく闘うことを望む」と締めくくった。 (若菜 麻里)

■ ネット・ウォーズの実態と日本の現状 ■

国際未来科学研究所代表 浜田和幸氏に聞くby 世界日報
軍事的発想で金融・技術戦を戦う米国

 IT(情報技術)革命の進展は、世界中の人々のライフスタイルを大きく変える可能性を秘めているが、その一方で、インターネット・ビジネスの先導役を務める米国は、国家戦略としてこうしたネットの世界での主導権を二十一世紀も確保しようとしている。こうしたネット・ウォーズの実態と日本が置かれている現状について、このほど「ネット・ウォーズ」(PHP新書)を著した国際未来科学研究所代表の浜田和幸氏に聞いた。 (聞き手=佐藤一也、池永達夫記者)

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エシュロンで産業情報入手
ペンタゴンOBが大きな影響力
機密情報筒抜けの日本

 はまだ・かずゆき 昭和28年鳥取県生まれ。東京外国語大学卒。米国ジョージ・ワシントン大学大学院政治学博士課程修了。米国戦略国際問題研究所、議会調査局等を経て現職。専門は政治と技術に関する未来研究、長寿企業の戦略経営、ビジネスヒーローの発掘と分析。著書に「ヘッジファンド」「たかられる大国・日本」「快人エジソン」など多数。

マイクロソフト分割なしのシナリオも

 ――ワシントン連邦地裁は六月初旬、ソフトウエア最大手米マイクロソフトの二分割案の決定を下しましたが、この行方について。

 「たとえば今から十数年前にアメリカで通信法の改正があり、長距離電話会社というのは独占状態にあって、それを分割することによって、競争が加速されて、消費者にとってメリットがある、という大原則の下に、どんどん地域の電話会社というものが誕生した。それがうまくいったかというと、通信の基盤になるのは回線の容量を多くするにしても、光通信のファイバー網を敷設するにしても大変なコストがかかるようになった。

 それを分割された小さな地域会社で負担するというのは、現実的には大変難しい。だから最終的にはもう一度、AT&Tに象徴されるように大規模な通信会社の統合をすることによって、グローバルなヨーロッパや日本の企業に対抗するのだ、という形に変わってきた。

 だから今回のマイクロソフトの件も必ずしも分割することによって、アメリカの消費者にとってプラスになるかどうかというと、まだまだマイクロソフトと司法省の間で交渉の余地があると思う。

 今年は大統領選挙の年なので、年内にはきちんとした決着は出ないだろう。最終的にマイクロソフトが大きく変わっていくというシナリオができていて、具体的には分割という形にはならないのではないか」

 ――インターネット・ビジネスがけん引車となり、アメリカの製造業やサービス業全般が力を回復すれば、円安ドル高の方向に進む。そのシナリオが二〇一〇年までできていると指摘されていますが。

 「必ずしもIT革命が為替に反映されるというわけではないが、日本では製造業や技術開発と金融為替の問題が必ずしも関連づけて見られていない傾向がある。

 アメリカの立場というのは、政治的、経済的、軍事的に超大国として覇権を維持していくためには、軍事的なことは別にして、経済と技術が車の両輪となっている。だから技術開発というのは、IT革命に代表されるように、これからあらゆるビジネスの現場に入り込んでくる。そのことによってアメリカ人が必ず勝てるようなゲームの土壌をつくっていく。

 もう一つはそれを背景にしてウォール・ストリート、つまり金融界に外国から資金が常に還流してくる仕組みをつくり、その資金がまたアメリカの技術開発のために活用されていく。

 強いドルが維持されれば、ヨーロッパや日本から資金が入ってくる。そのことによって国内的には貿易赤字がどんどん増えていっても、財政赤字が改善され、安い物が外国から入ってきて、アメリカの消費者は恩恵を被っているわけだし、しかも外国から入ってきたお金をうまく使って財務省は国債をどんどん買ってもらえる。

 アメリカのIT関連の企業にしても、社債がどんどん売れて、そのことによって研究開発の資金がある程度潤沢に調達できる。その環境のもとで、さらに今のインターネットの先の技術開発の方向に向けて、二十一世紀を通じてアメリカが一貫して技術開発でトップを維持できると。こういったアメリカの大きな国家戦略のシナリオができている」

相手の戦意喪失させ勝つ戦略

 ――ペンタゴン(国防総省)OBなどがこうした国家戦略にも強い影響力を持っているのでしょうか。

 「ドメインネームを提供する会社、ネットセキュリティーに関する会社のほとんどは、ペンタゴンのOBがつくっている会社だ。こういった人たちは、ニューヨークの投資銀行の上層部にも入っている。IT関連企業にもたくさん入っている。そこで彼らは軍事的な発想でネットウォーを戦うという極めて鮮明な戦略を持っている。そのなかに、一番根底のところで、今の金融とか技術開発にも二十一世紀の新しい形の戦争というとらえ方があって、そのなかで為替をどういう形で誘導していこうとかいうのは、情報を巧みに使うことによって戦わずして勝つという戦略だ。

 湾岸戦争のときも、コソボの空爆のときも、基本的には離れたところからミサイルを撃ち込んだり、あるいは空から空爆することで、相手に戦意を失わせてしまうような環境をつくる。それがアメリカの最近の軍事戦略になっていて、そっくり同じことがネットや金融の分野でも採用されている」

 ――エシュロン(ECHELON)と呼ばれる最新鋭の電波傍受装置と暗号解読技術を駆使した情報監視システムで米国は情報戦争に臨んでいるとも指摘されています。

 「これは歴史が長い。一九四一年の真珠湾攻撃にまでさかのぼる話だ。あの時にアメリカでは日本の軍事的脅威に対する危機感が高まって、日本軍の動きをどうやって事前に把握しようかということで、通信傍受と暗号解読の必要性に思い至った。アメリカでは十分それに対応できないということで、アメリカとイギリスの二カ国で最初は通信傍受が始まった。それがカナダ、オーストラリア、ニュージーランドの英語圏の同盟国に広がっていって、それが最終的に日本軍の軍事的な作戦展開が事前に把握できるまで精度が高まってきた。

 冷戦時代にはそういったベースがあったので、それに基づいて旧ソ連、旧東欧の通信傍受を主としてやっていたが、八〇年代の半ばになってきてからは、軍事的対立というよりは、経済技術面でのライバル関係というのがアメリカにとっての新しい脅威になってきた。そういった意味で、日本の政治、経済、技術開発の動向といったものにも軍事的な盗聴技術を応用しようではないかということになった」

 ――それで首相官邸の動向や会話も盗聴されていると…。

 「日本におけるアメリカのエシュロンの電波傍受の中身というものは、日本の政治家として重要な立場にある人の公私にわたる動き、その中には当然官邸のなかの動きも含まれる。たとえば、森総理の『神の国』発言に対して、自分でダメージを受けたと思っているのか、あるいはそのことによって何か精神的に不安定な状況になっていて、精神安定剤をどんな種類の薬を何分、何時間ごとに飲んでいるのか、といったことまで徹底して調べている。

 個別に日米間だけの公電を傍受しているだけではなく、イギリスやニュージーランドやカナダといったところの日本の出先機関が日本の業界、日本政府の個別の通商上の交渉をさまざまにやっている。そういうときに日本の立場についてポロッポロッと書いている。そういったものを丹念に蓄積して全体としての日本政府の基本的な交渉のスタンスを事前に把握する。

 そういったことを日本の主要メディアはあまり報道しないが、諸外国の報道機関というのは熱心にフォローしている。だから昨年あたりから欧州議会で、フランス、ドイツの企業の動きがエシュロンにモニターされて、自分たちがアメリカの企業との競争に負けているのは、そういったエシュロンによって自分たちの産業情報、あるいは入札するときの条件が筒抜けになっているからだということで、ヨーロッパとアメリカとの摩擦の原因になっている」

 情報戦に暗いイメージ持つ日本

 ――この問題について日本はどのように対処していこうとしているのですか。

 「日本側は、たとえば防衛庁が今度市ヶ谷に移ったが、情報本部というのができて、情報収集、情報防衛、つまり情報戦対策の必要性はみな感じている。あるいは自前の偵察衛星を二〇〇三年には打ち上げようとしている。

 今までは日米の同盟関係のなかで、重要な情報はアメリカから提供してもらえばいいと、そういう情報の傘の下に日本は置かれていた。しかし情報の傘の下に置かれるということは、日本の情報も全部筒抜けになっているわけだが、アメリカが何を考えているのか全然分からない。

 だから自前の情報偵察衛星を打ち上げるということも進んできたが、アメリカとすれば面白くない。『何故、自前の偵察衛星を持つんだ。アメリカの物を買えばいい』という形で圧力がかかっている」

 ――政治家にも期待できないのでしょうか。

「政治家にもあまり期待できない。彼らは選挙に勝ち残るのが一番重要だから。情報となると、何か暗い過去の軍国主義のころのイメージが先に立つ。自分たちが日常生活においてプライバシーを侵害されるという暗い動きに関連づけて、マスコミや有識者が発言する傾向が強いので、何か情報戦というとネガティブな受け止め方をする。日本の国益を考えると、本当は一番そこに力を入れるべきなのだが。

 アメリカなどは毎日、朝一番に国家安全保障会議の安全保障担当の補佐官がCIA(中央情報局)やその他から上がってきた一番重要な情報を最初に大統領にブリーフィングする。そういうことと比べると日本の政治家トップの国際情勢に対する感度が鈍い。情報を重視して、価値をきちんと与えて、それを政治的、外交的に生かそうという発想が外務省にも防衛庁にも、個別にはあっても、一本の国家戦略には至っていない」

エシュロンの実態を報告 市民団体がシンポジウム

2000年7月19日Mainichi Interactive
 世界の電話、ファクス、Eメールを盗聴しているとされる米国主導の電子盗聴機関(暗号名エシュロン)の実態やイギリスや韓国での政府による個人情報などの管理問題などを報告する国際シンポジウム「『エシュロン』を知っていますか?」が18日夜、東京都内で開かれた。警察による通信傍受を合法化する盗聴法の施行を来月に控えて、海外の現状を現地のジャーナリストや市民運動家が報告するとあって、市民の関心も高く100人以上が参加して報告に聞き入った。

 シンポジウムを主催したのは、市民団体がコンピュータを道具として使いこなすことを支援する学者やネットワーク専門家らによるNGOであるJCA-NET(市民活動のための通信NGO)=東京都千代田区=。エシュロンの問題を取材・報道している英国のテレビ・プロデューサーのダンカン・キャンベル氏▽進歩的コミュニケーション協会(APC)のメンバーであるクリス・ベイリー氏▽韓国の市民運動家オ・ビョンイル氏−−がそれぞれ報告した。

 キャンベル氏は、実態を報告。盗聴網は1947年に英米2カ国の秘密協定で発足し、その後カナダ、オーストラリア、ニュージーランドが加わり、傍聴用の人工衛星や地上施設などが商業衛星や地上施設の通信を収集。傍受用の地上施設は、日本では三沢基地にもあるとした。また英仏独露も通信傍受施設を持っていて、諜報活動を行っていると指摘した。

 ベイリー氏は、警察にる電子メール盗聴のための装置設定をプロバイダーに義務づける法案の審議が進んでいる英国の現状を紹介。法制化に反対して「インターネットの自由が成り立たなくなる。情報不平等に戦わなくてはならない」と訴えた。

 韓国でも政府による通信傍受が合法とされているが、オ氏は、法律の文言が曖昧なために当局のし意的な運用がなされていると批判。さらに国の安全保障や青少年を有害情報から守るなどと口実にしてインターネットを規制しようとしているという動きがあることを報告した。

 またシンポジウムでは、盗聴法の廃止を求める署名実行委員会の海渡雄一氏が「盗聴法(通信傍受法)の8月からの施行を前に施行令が出てきたが、あいまいなままで歯止めがない。国会を通る前に警察の不祥事が出てきたならば、制定されることはなかった。国民に理解され支持されるまで盗聴法は許されるべきものではない」とアピールした。

[JCA-NET]

【World InfoCon Vol.3】地球規模の情報化によって私たちひとり一人の逃げ場は無くなった ――“サーベイランス&コントロール・テクノロジー” 、“ワールド・コミュニケーション” (セクション講演より)

2000年[7月21日]ASCU24
 7月13日より14日まで、ブリュッセルで開催された“World InfoCon”。セクション講演として“インフォワールド”のテーマに続き、“サーベイランス&コントロール・テクノロジー”と“ワールド・コミュニケーション”をテーマに、非公開の盗聴・傍受システムなどの話題が取り上げられた。

 トラフィックコントロールシステムの導入や、データマイニングによるデータ活用の実態

 “サーベイランス&コントロール・テクノロジー”のセクションでは、相次いで国家情報機関やその連合体、警察機構によって密かに推進している、傍受・傍聴システムの存在とその機能についての報告が、この事態を追求しているジャーナリストやウオッチしているNPOの手によってなされた。

 英国オメガ・ファウンデーション、スティーブ・ライト氏は、「世界中のあらゆる国家があらゆるかたちで、治安および軍事目的で、傍受・傍聴システムを張り巡らしている」と語る。

 「それは西側ハイテク企業の納入による、中国西蔵自治区における歩行者までをも含めたトラフィックコントロールシステムの導入といったものまでに広がっている」と、世界各地の例を語る。

「世界のおおよそほとんどの国々では、これらの行為が明らかになっても、違法なものではないため、その勢いはとどまることがない」と指摘する。そして「そのシステムそのものが、デジタルネットワーク化することで、ただ収集するだけでなく、データマイニングによる効率的な活用が始まりだしている英国の例もある」というのだ。

 エシュロンは全インターネットトラフィックを傍受、分析できるように準備

 次に、“エシュロン”の存在を白日のもとにし続けるために活動を続ける、英国のTVジャーナリスト、ダンカン・キャンベル氏によって、今まで分かってきたエシュロンの実態についてのレポーティングがなされた。

“エシュロン”はアメリカを中心とする英語圏の国々による非公開の国際傍受ネットワークである。これらは米国のNSC(国家安全保障局)とそれに相当する英国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドの安全保障機関の連合体によって運営されているという。

 まず、キャンベル氏は“エシュロン”の存在を証明するものとして、必要以上の規模を持った衛星傍受施設の存在を、そしてそれが米国、英国、ニュージーランド、オーストラリアの各地や青森の三沢基地内にあることを、映像イメージを示しながら指摘。これらの施設を通じて「あらゆる通信衛星の情報トラフィックが傍受され、相互のネットワークを通じて活用、蓄積されている」と述べる。

 未だ明らかにされない“エシュロン”の存在に対して、欧州議会はキャンベル氏に対し、調査を委託、その成果が2000年2月23日に発表されている。

 その調査成果や新たに収集した情報によると、その傍受網は、衛星のみならず、海底ケーブル回線の直接傍受や、マイクロウエーブ波や指向性アンテナによる傍受と多岐に渡っており、その精度も「'90年代に入って、格段に上昇し、音声による個別化が可能」となったと語る。ただし、「その音声の個別化は、声紋による個別の特定にとどまり、俗に述べられているように、全く対象化していない人物に対するある種の単語が入れば収集されるというものまでが、一般的に取り入れられている状態ではない」と語る。

 この総合的な国家および国家連合による傍受・傍聴システムは、「“エシュロン”にとどまらず、フランスにも独自のものが存在している」と語り、米国FBIも国際犯罪対応のため、EUの治安部門に共同のシステム導入とネットワーク作りを呼びかけている状況にあるという。

 キャンベル氏によると「“エシュロン”はインターネットの傍受にまで手を出そうとしている」という。「欧州内での電子メールのトラフィックでありながら、米国内の特定のポイントを経由する頻繁なルーティングのケースは、その兆候のひとつ」としている。そして、「テラ・ペタ規模のメモリー蓄積を有して、3ヵ月程度の全インターネットトラフィックを傍受し、分析できるように準備している」というのだ。

 常時不特定多数を監視するシステムも今や技術的には可能な領域に

 翌14日の午前に続いて開かれたセクション講演のテーマは“ワールド・コミュニケーション”。ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス、コンピュータ・セキュリティー・リサーチセンターのサイモン・デービス氏が“技術はプライバシーを廃する”をテーマにまず発言した。

 昨日のセクション講演を受けて「デジタルネットワークによる地球レベルの情報化の恩恵は、プライバシーをコントロールしたいという存在をももたらしている」と語り、「英国だけでも政府・民間を問わず、150万個以上のカメラが隠され、モニタリングされており、その行為自体は全く違法なものでは無い」と指摘する。

 更に「今までであれば例え“エシュロン”のようなものがあったとしても、それをリアルタイムで分析し、常時不特定多数を監視するようなことは不可能であったが、それも今や技術的には可能な領域になって来た」と指摘する。この“地球上においてプライバシー無き時代”を迎えないためにも、「パブリックアクセスによるネットワークの整備と、その土壌による自由なソフトウェア開発環境、特にオープンな暗号テクノロジーの開発と活用が求められる」と訴えた。

 地球規模での情報通信教育の実現を

 続いて、アムステルダム大学の人権・コミュニケーション・センター、ケース・ハメリンク氏が“情報世界の地球統治:多様な関心のコンフリクトが渦巻くアリーナの中で”をテーマに発言した。

 ハメリンク氏は、世界規模の情報ネットワーク社会を例え、“グローバル・ビルボード・ソサエティー”と比喩し、「今や世界中、どのような生活をしていてもコマーシャルメッセージからは逃れられなくなっている」とした。

 「世界中に流通している広告費用が年間10兆US$になっているにも関わらず、その広告が主な対象としているのは世界の人口の10%程度の人々である」と指摘する。そして「例え望んだとしても、普通だと買うことのできないような物をメッセージ化するこの行為と現実こそが、地球規模のデジタルデバイド最大の悪い点と言ってもいいだろう」と語った。

 このような、持つ者、持たざる者の関係を地球規模で広がっている現実に対し、「地球規模での情報通信教育の実現が必要だ。インターネットを持たざる対象に対しては、持つ側がインターネットを学べる現場に提供することが不可欠である」と述べた。 《岡田智博 coolstates.com》

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エシュロンを産業スパイ容疑で捜査 仏司法当局

2000年7月6日(Mainichi Shimbun)
 世界の電話、ファクス、Eメールを盗聴しているとされる米国主導の電子盗聴機関(暗号名エシュロン)について、フランス司法当局が産業スパイ容疑で捜査に乗り出したことが5日明らかになった。エシュロンの違法性は欧州連合(EU)の議会である欧州議会が調査を進めているが、国家の司法機関が捜査に着手したのは初めて。産業スパイ疑惑を否定している米国とフランスとの関係が悪化する可能性が出てきた。

 フランスからの報道によると、エシュロンの盗聴被害を担当している予審判事が5月末に正式に捜査を開始し、産業スパイ容疑の証拠を握るために仏情報機関の協力を求めたという。欧州議会の調査では、1994年にブラジルでのレーダーシステム入札で仏トムソンCSFの通話が盗聴されて競争相手の米レイセオンが受注するなどの被害が報告されている。

 エシュロンは米、英、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドの英語圏5カ国で編成し、人工衛星と電算機を駆使して世界の情報を休みなく収集しているという。冷戦時代は旧共産圏の軍事情報の収集が主な役割だったが、冷戦終結後は各国の経済情報も盗聴しているとされ、非英語圏のフランスやドイツなどが不満を募らせている。

 エシュロンは1分間に300万の通信を傍受できる史上最強の盗聴機関といわれる。欧州の民間調査機関によると、被害に気がつかない例も含めて欧州企業の6割がエシュロンの盗聴を受け、被害額は年間数十億ユーロ(数千億円)に達するという。また、無差別に大量の通信を傍受できることから、市民のプライバシー侵害の面でも犯罪性が問題になっている。

 米国や英国は「傍受した情報を民間企業に流していない」と反論しているが、盗聴の事実は認めている。また、米中央情報局(CIA)のウルジー元長官は、「欧州企業はわいろを使うから盗聴対象になる。わいろを使った企業の取り引き先の政府や司法当局に通報している」と述べている。

◇情報保護暫定委員会設置を決定 欧州議会

 米英主導の盗聴システム「エシュロン」の問題を受けて、欧州議会(仏ストラスブール)は5日の本会議で、欧州連合(EU)内での今後の情報保護システムを話し合う暫定委員会の設置を決定した。

 調査推進派は当初、過去の被害について調査権限を持つ調査委員会の設置を目指していたが、英国議員団などの反対もあり否決された。しかし主に将来の情報保護システムを作るための暫定委員会については、多数の議員が賛成に回った。

 委員会(36人)の継続期間は1年間で、6日に第1回会合を開く。実質的な活動は9月以降となり、過去の問題点の反省からEUが進めている個人や企業の情報管理やEU国内で生産されたソフトウェアの保護体制などを話し合う。

エシュロン:産業スパイ容疑で捜査に乗り出す 仏司法当局

2000年7月5日【ロンドン5日岸本卓也】Mainichi Interactive
 世界の電話、ファクス、Eメールを盗聴しているとされる米国主導の電子盗聴機関(暗号名エシュロン)について、フランス司法当局が産業スパイ容疑で捜査に乗り出したことが5日明らかになった。エシュロンの違法性は欧州連合(EU)の議会である欧州議会が調査を進めているが、国家の司法機関が捜査に着手したのは初めて。産業スパイ疑惑を否定している米国とフランスとの関係が悪化する可能性が出てきた。

 フランスからの報道によると、エシュロンの盗聴被害を担当している予審判事が5月末に正式に捜査を開始し、産業スパイ容疑の証拠を握るために仏情報機関の協力を求めたという。欧州議会の調査では、1994年にブラジルでのレーダーシステム入札で仏トムソンCSF社の通話が盗聴されて競争相手の米レイセオン社が受注するなどの被害が報告されている。

 エシュロンは米、英、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドの英語圏5カ国で編成し、人工衛星と電算機を駆使して世界の情報を休みなく収集しているという。冷戦時代は旧共産圏の軍事情報の収集が主な役割だったが、冷戦終結後は各国の経済情報も盗聴しているとされ、非英語圏のフランスやドイツなどが不満を募らせている。

 エシュロンは1分間に300万の通信を傍受できる史上最強の盗聴機関といわれる。欧州の民間調査機関によると、被害に気がつかない例も含めて欧州企業の6割がエシュロンの盗聴を受け、被害額は年間数十億ユーロ(数千億円)に達するという。また、無差別に大量の通信を傍受できることから、市民のプライバシー侵害の面でも犯罪性が問題になっている。

 米国や英国は「傍受した情報を民間企業に流していない」と反論しているが、盗聴の事実は認めている。また、米中央情報局(CIA)のウルジー元長官は、「欧州企業はわいろを使うから盗聴対象になる。わいろを使った企業の取り引き先の政府や司法当局に通報している」と述べている。

エシュロン――地球大で情報を吸い込む諜報システム

仮想報道 vol.140 [2000/05/17]by地球村の事件簿
 オーウェルの『1984』をはじめとする呪われた近未来を描いた小説を地でいくグローバルな情報監視システムの全貌が見えてきた。

●電話もメールもファックスもすべて監視されている!!

 アメリカで機密保持のもっとも厳しいスパイ組織・国家安全保障局(NSA)の本部があるフォートミードに行ったことを以前書いたが、この組織が行なっている大がかりな諜報活動がいよいよ明らかになってきた。アメリカ、イギリス、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドのアングロサクソン五カ国の情報機関が連携し、ファックス、電話、メールなど地球上を行き交う情報を収集する“エシュロン”計画の存在を示す証拠が次々とあがってきたのだ。

 '70年代ごろからこうした活動は行なわれていたらしく、その活動がときにクローズアップされることはあったものの、本格的に注目されるようになったのは、ここ1、2年だ。昨年4月には、欧州議会への報告書『通信傍受能力2000』が発表され、そこには、宇宙通信を傍受する巨大なアンテナや、カムチャッカ沖に米潜水艦が設置した盗聴装置などの生々しい写真が載り、“エシュロン”についても詳しく触れられていた。

 NSAは、“エシュロン”についてもほかの多くの活動と同じく厚い機密のベールで覆い、プロジェクトがあることすら認めていない。しかし、ここ数年、オーストラリアやカナダの諜報関係者の証言が相次いで出た。今年1月には、ナショナル・セキュリティ・アーカイヴという民間組織が、収集した公文書のなかに“エシュロン”についての言及があることを確認している。

 ナショナル・セキュリティ・アーカイヴの頭文字はNSAだが、国家安全保障局とは、いわば対極にある組織である。情報公開法などを使って、政府の機密文書を次々と公開させている。そのオフィスを訪ねたことがあるが、ワシントン市内に散在しているジョージ・ワシントン大学の図書館の上にあり、膨大な資料を蒐集し多くの資料をマイクロフィッシュ化している。これまでにも、ニカラグア、イラン・コントラ事件、キューバのミサイル危機、宇宙の軍事利用などのマイクロフィッシュ資料集を刊行している。

 ネット上でも、“エシュロン”の情報を公開するサイトは次々と生まれている。英語サイトばかりでなく、欧州議会への調査報告書をはじめとする基本資料を日本語に翻訳しているサイトも現われている。

 “エシュロン”が、どのように情報収集を行なっているかもしだいに明らかになってきた。“辞書”と名づけたキーワード集が作られ、ファックス、メール、電話を全文検索してそのキーワードに合致した情報を片端から収集する力まかせの方法を取っているらしい。1分間に300万件、1日あたり30億件の情報を処理できるといわれている。カナダの元諜報員が、“エシュロン”を空から吸い上げる巨大な電気掃除機になぞらえていたが、世界の情報は巨大なコンピューターパワーによって吸い取られ、監視されていることになる。日本もこの盗聴網のなかに組みこまれていて、青森県の米軍の三沢基地に傍受システムがあるそうだ。イラクや北朝鮮などの脅威をあたえる国やテロ・麻薬密売の組織ばかりでなく、アムネスティやグリーンピースなどの国際環境団体やNGOも諜報活動の対象になっているようだ。

 「もう爆発しそう」などと電話口で口走ろうものなら、たちまちテロリスト分子としてブラックリストに載ってしまうといった冗談がネットには行き交っているが、知らぬまに思いもよらぬレッテルが貼られ、アメリカなどへの入国を拒否されることがないとはいえない。

 電話に関しては、声紋によって対象を特定して情報を集めることができるそうで、これまでに、ダイアナ妃やローマ法王、マザー・テレサなどが影響力が大きいということで調べられたらしい。

 どうやって探り当てたのか、ネットには“エシュロンの辞書”なるものも載っている。ナパーム弾とかスティングラー、パイプ爆弾、破壊分子、世界制覇などといった物騒な言葉が並んでいる一方、東京とかホワイトハウスなど、誰でも使いそうな言葉も載っている。場所の情報と内容の情報を組み合わせて検索しているのだろう。

 各国の諜報機関が作成した辞書にしたがって集められた情報は、他国の諜報機関の分析をへず、直接その国の諜報機関に送られる仕掛けになっているというが、それと同時に国法を超える諜報活動の連携プレーも行なわれている。

 アメリカやイギリスなどでは、自国民に対する盗聴が禁止されているが、他国の諜報機関が情報を収集しても、法の枠外である。アメリカ人の情報を英国の諜報機関に調べさせる一方で、サッチャー英元首相は、閣僚の背信行為を疑って、カナダの諜報機関に閣僚の電話を盗聴させたらしい。国際諜報システムは、法の網をくぐる機能も果たしているわけだ。

●EUの敵“エシュロン”

 フランスをはじめとする欧州連合(EU)諸国は、アングロサクソンのこの諜報活動にことのほか神経質になっている。米諜報当局が、“エシュロン”によって収集した情報を民間企業に流しているのではないか。経済的な諜報活動も行なっていると見ているのだ。'94年にはレーダーシステムの入札のときに、'95年には航空機販売の際に、フランスの企業の情報が漏れ、米企業が契約をさらった疑いがある。当時のCIA長官も、諜報活動で得た情報を商務省に渡し、米企業の活動が有利になるように利用したことを認めている。

 アメリカ商務省の公文書を見たことがあるが、それを見ると、商務省には全米の企業からさまざまな“陳情”が集まっている。商務省はそれらを集約し、“外圧”をかけるなど米企業のために働くのを仕事のひとつにしている。政府の活動が政治・経済一体のものである以上、集めた情報をその経済活動に利用しようとしても何の不思議もない。

 フランスやドイツ、スイスも、“エシュロン”に対抗して、通信傍聴を始めたものの、盗聴能力は格段に劣るようだ。とはいえ、グローバル・ヴィレッジの時代の誕生は、世界規模の盗聴競争の時代の始まりでもあることがはっきりしてきた。

 けれどもその一方で、、こうした動きに対抗する運動も始まっている。昨年10月21日には、“危険な言葉”を電子メールにつけて送ろうというキャンペーンが行なわれた。ノイズ情報を増大させて諜報システムを攪乱しようというわけだ。

 効果があったかどうかはわからないが、NSAのコンピューターパワーの“限界”が浮かび上がる事件も起こっている。今年の1月、NSAのコンピューターは、大量の情報を傍受したために負荷がかかりすぎ、数日間にわたってデータ処理が停止したのだ。年の変わり目に“2000年問題”が起き、偵察衛星に障害が起きたことが知られているが、それに続く諜報体制の失態である。NSAは、インターネットの全トラフィックを数ヵ月分蓄積できる1000テラバイトのデータ保存施設をつくる準備を進めているといわれているが、そうしたハイテク諜報機関にとっても、飛躍的に増大するデータ量が処理能力を超えたものになる瞬間はあるわけだ。

 アメリカの民主主義は、日本に比べてずっと健全だと感じることも多いが、しかし、その歴史をたどると、明らかに例外があることに気づく。軍とか諜報機関など、情報公開が充分でない組織では、信じがたいほどダークな事件が起きる。情報公開が行なわれていない組織は信用できない、それはアメリカ民主主義の歴史がはっきりと示していることだ。

 自宅で仕事しているフリーランスの身では、連休といっても変わりなく仕事している。ただ、仕事のメールがぱたっと来なくなるので、世間はいっせいに休んでいるのだとあらためて思い知らされる。メールで連絡がつくからほとんどの人はオフィスへ行かず、好きなときに休むという時代がいつかは来るだろうか。

 アメリカ市民自由連合のエシュロン・ウォッチのページ

 欧州議会への報告書『通信傍受能力2000』をはじめとするエシュロン関係文書を精力的に翻訳している河上イチロー氏のページ『Der Angriff』。

 エシュロンをはじめとする諜報活動についての報告書『通信傍受能力2000』をふくむ欧州議会の科学技術選択肢評価委員会の報告書『監視技術の発展と経済情報乱用の危険性』。

盗聴能力は全通信の1%

2000年5月19日 19時54分【ブリュッセル共同】
 19日付のベルギー紙、リーブル・ベルジックによると、ベルギー情報当局は、米国や英国など5カ国による世界的通信傍受網「エシュロン」の盗聴能力は,過大に評価されており、傍受可能なのは、世界の全通信の1%だけだとする秘密報告をまとめた。報告書は同日、議会に提出された。

故ダイアナ妃の盗聴テープ

2000/05/14 by 気になるニュース(AREA ZUIKU)

プライバシー保護のルールを エシュロン盗聴

2000年4月19日Mainichi Interactive(岸本 卓哉、Mainichi Shimbun)
 世界の市民の生活が監視されている。米国が主導し、英、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドの英語圏5カ国で編成する通信傍受機関(暗号名エシュロン=ECHELON)が世界の電話、ファクス、Eメールを盗聴していることが明らかになってきた。だが、米英は「国家機密だ」として詳しい実態を明らかにしない。このままでは各国がエシュロンに対抗する盗聴網の強化に走ってしまう。国境を越えた監視社会が到来する。市民の立場に立ったプライバシー保護のための国際的なルールづくりを急がねばならない。

 「電話では伝えられないので手紙で連絡します」と最近の私は急ぎの用でなければ重要な情報を手紙で送っている。エシュロン機関の取材を始めてからロンドン支局の電話を取るのがいやになった。エシュロン機関に参加する英政府情報本部(GCHQ)が外国の報道機関の電話、ファクス、Eメールを盗聴している可能性があるからだ。

 4月9日の英日曜紙サンデー・テレグラフに興味深い記事が載った。GCHQの盗聴担当職員は約4000人。24時間体制で世界の電話や無線通信を傍受しているが、職員の聴覚障害が深刻化。「耳鳴り」に悩む職員の治療費などが年間で50万ポンド(約8500万円)に達するという。

 英政府にとって「痛い話」かもしれないが、盗聴される側にとっては「聞き捨てならない話」である。

 エシュロンはフランス語などで「はしご」を意味する。1947年に米英の秘密協定で発足し、その後にカナダなどが加わった。英語圏5カ国が横並びで協力し合う狙いがあるのだろう。冷戦時代には共産圏の通信を盗聴していたらしい。ところが、冷戦終結後にフランスなどの企業情報が漏れ、契約が米国企業に奪われているという苦情からエシュロン機関への疑惑が噴き出した。

 「はしご」からはずされたフランスやドイツなど非英語圏諸国の不満を受けた欧州連合(EU)が調査に乗り出している。EUは今年に入って正式に米国と英国に質問状を送った。米英は「不正なことはしていない」と答えたが「通信傍受は国家の経済的安定を維持するための正当な行為である」と開き直る姿勢も見せている。

 EU各国は米国の産業スパイ行為を怒るが、私が心配するのはエシュロンの驚異的な盗聴力の方だ。主に人工衛星を使って商業衛星や地上の電信施設を流れる通信を傍受する。その情報を世界の中継基地を通じて米国家安全保障局(NSA)に送る。そこでは各国の重要人物や組織の名前のほか、「核兵器」「スパイ」「爆弾」など不穏な言葉を辞書のように記憶した電算機が毎分300万もの通信情報を解析できるという。

 昔から各国の情報機関は他国の通信情報を傍受したり、暗号の解読に精を出してきた。しかし、それは目的や対象を絞った盗聴行為であり、いわば「一本釣り」のやり方だ。ところが、エシュロン機関は不特定多数の通信を網(ネット)ですくいあげる。これは各国の安全保障上の情報収集として暗黙のうちに認められてきた盗聴活動の概念を超えていると思う。

 EU加盟国である英国はEU内部の批判を静めるために各国に脅しをかけている。「米英に盗聴活動の実態を公表せよと迫るならば、他国の盗聴活動も明らかにしてもらおうではないか」。この脅しにEU加盟国の政府はひるみ始めた。おそらく、EUの追及はしりすぼみになるだろう。

 そうなれば、各国はエシュロン機関に対抗する盗聴システムづくりに突き進むことになる。盗聴用衛星を打ち上げ、地上に多数の中継基地を設置する。核軍備競争と同じように盗聴力競争も「力の論理」が支配するようになる。すでにフランスはドイツと共同で衛星を打ち上げて世界各地に基地をつくる計画を進めているという。

 EUの論争から推察できるように、そもそも各国政府も情報機関の盗聴を正当化したいのだ。自国民に対する盗聴は傍聴法をつくって正当化させている。日本でも昨年8月に通信傍受法が成立した。政府による通信傍受は国民が政府を信頼していることが前提だが、個人情報を扱う情報機関や警察の職員は信頼できるのだろうか。通信の秘密を悪用しないだろうか。

 ましてや、エシュロン機関のような外国の情報機関も越境して個人の通信を盗聴できる時代になった。日本での電話の内容も米国の盗聴用電算機に吸い込まれているのだ。エシュロンの疑惑は各国政府に任せていてもらちが明かないだろう。個人のプライバシーをどう守るのか。市民の一人一人が政府を問い詰めていくしかない。市民の個人生活を監視する組織を市民の側から監視できない限り、安心して電話もかけられなくなるだろう。

エシュロンの脅威を調査(欧州議会)

(2000.4.6) Net security

 欧州議会は現在、世界規模の監視ネットワーク“エシュロン”の脅威について調査を行っている。米国が主体となって運営するエシュロンは英国、カナダ、ニュージーランド、オーストラリアの協力を仰ぎ、全世界の通信傍受が可能とされているネットワークだ。情報筋によると、フランス代表の議員7名がエシュロンに関する調査にあたっているという。

 緑の党のフランス議員Alima Boumediene-Thiery氏の広報担当によると、緑の党はすでに調査委員会を設置するための十分な議員署名を集めており、調査委員会ではエシュロンにおける英国の役割を解明し、エシュロンに関する情報が欧州連合になかなか入ってこない理由を明らかにする予定だ。

『エシュロン』問題:CIA前長官、欧州での贈収賄活動監視を確認

ワイアード・ニュース・レポート2000年3月13日 11:55am PST by Wired News
 米中央情報局(CIA)の前長官が、米国がヨーロッパに対して行なっているビジネス関連のスパイ活動について、その詳細を語った。

 ドイツのインターネット関連オンライン雑誌『テレポリス』は12日(米国時間)、CIA前長官のジェームズ・ウールジー氏が、米国がヨーロッパの通信を監視して、ビジネスにおける贈収賄活動を探っていることを事実として認めたと報じた。

 「われわれは過去にヨーロッパの贈収賄活動をスパイしていた。米国は今もその種の活動の監視を続けている……ことを私は期待する」。ウールジー氏は7日、このように述べたと記事には書かれている。ウールジー氏がこう発言したのは、ワシントンで行なわれた外国報道陣との記者会見でのこと。

 記事によれば、米国は、経済上の秘密事項を「諜報活動、通信(の傍受)、偵察衛星などを通じて」盗み出しており、経済的なスパイ活動には現在「ますます力が注がれ」るようになっているという。

 この記事を書いたのは、英国のジャーナリスト、ダンカン・キャンベル氏。キャンベル氏は昨年、欧州議会の要請を受け、その存在が取り沙汰されている『エシュロン』という名の国際的監視システムについて調査を行なった。

 ウールジー氏は、ヨーロッパ企業では賄賂が「民族的文化」となっているため、こうしたスパイ活動を行なうのは正当なことだと主張し、さらに、ヨーロッパ各国は大きな国際的契約を結ぶ際に賄賂を手渡していると述べた。

 米国の独立研究機関『ナショナル・セキュリティー・アーカイブ』の研究員ジェフリー・ライチェルソン氏は、エシュロンがどのような目的を持つものか突き止めるため、エシュロン・プロジェクトに言及した政府文書を調査している。ライチェルソン氏によれば、ウールジー氏の発言は、米国の諜報活動方針について何ら新しい事実を明らかにするものではないという。

 ウールジー氏は90年代初めにCIA長官の座にあったが、「その当時、(米国が今後行なう予定にしていることとして)、そういった内容を語っていた」とライチェルソン氏。

 ライチェルソン氏は、7日の記者会見におけるウールジー氏の発言には、米国が産業スパイ活動に関わっているのではないかという疑惑に対して、事実をはっきりさせる狙いがあったのだろうと見ている。同氏によれば、他国の民間企業や政府が行なっている不正行為の情報を収集する活動は、ずっと以前から米国政府に容認されてきたことだという。

 キャンベル氏の報告書『盗聴能力2000』は昨年欧州議会に提出され、先月、同議会の『市民権委員会』(Citizens' Rights Committee)に対して公開された。この報告書は、エシュロンが行なっていることについて、考えられる可能性を調査したもの。エシュロンは電子メール、ファックス、そして電話での会話を傍受することができるとされている。

 ウールジー氏は、キャンベル氏の報告書を「知的な意味で率直なものだ」と評した。

 この『盗聴能力2000』報告書が市民権委員会に公開されると、ヨーロッパ、ことにフランスで政治的な動きが起こった(英文記事)。フランス国民議会の国防委員会は、今後エシュロンに関する疑惑を調査する計画を明らかにしている。また、フランスのエリザベス・ギグー法務大臣は、米国がいくら否定しようとも、自分はエシュロン・システムが実際に産業スパイ「および競争相手の監視」に使われていると確信していると述べた。

 こうした諜報活動の結果を受け取り、それに基づいて行動しているのは、米国の個々の民間企業ではなく、米国政府だとウールジー氏は述べている。

 プライバシー擁護活動家であり、エシュロン関連の資料を保存しているジョン・ヤング氏は、ウールジー氏の発言に関して、「今回の発言は、私がこれまで知る中で、『そう、われわれはスパイ活動を行なっており、それには文化的な根拠がある』と率直に認めるのにもっとも近いものだ」と語った。[日本語版:高橋朋子/合原弘子]

引っ越し代でビルが建つ!/英“盗聴拠点”史上最大の移転

2000-03-08(Mainichi Shimbun, London)Mainichi INTERACTIVE
 世界の通信情報盗聴の疑いで注目されるエシュロン・システム(米、英、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドの英語圏5カ国で編成)の欧州司令本部とされる英政府情報本部(GCHQ)が約6.4キロ離れた新庁舎に移転する。引越し代は約3億ポンド(約540億円)で、新庁舎建設費に匹敵する。英タイムズ紙などによると、24時間の盗聴体制を維持しながらの盗聴機器移動に巨額の費用がかかるという。

 英政府情報本部の前身は政府直轄の暗号研究所。1953年にロンドンから英南西部のチェルトナムに移った。情報通信の発達とともに組織が拡大し、現在では電話、ファクス、テレックス、Eメールなどの盗聴活動に約4500人が従事しているという。巨大電算機など盗聴機器も増大し、新庁舎の建設に迫られた。建設と移転が終わるのは2004年ごろの見込み。

 わずか6キロ余りの距離の引っ越しだが、振動に弱い電算機などの機器類は特別な移送技術が必要なうえ、24時間の盗聴体制を維持するために代替機器類を補充しながら移転する。タイムズ紙は「英国史上で最高の引っ越し代」と指摘している。英政府情報本部は米国家安全保障局(NSA)に並ぶ史上最強の盗聴網エシュロン・システムの拠点といわれる。

エシュロン事件の背景を追う 米議会も調査の意向

2000年3月1日(Mainichi Shimbun, London) by Mainichi INTERACTIVE
 情報を制する国が世界を制する。その言葉通りに超大国の米国は世界の通信情報を掌握しているようだ。欧州連合(EU)の調査によると、米国が主導し、英、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドの英語圏5カ国で編成する通信傍聴システム(暗号名エシュロン)は世界の電話、ファクス、Eメールを盗聴できるという。世界の企業や個人の通信情報を米国は自国の利益にだけ使っているのだろうか。謎の多い盗聴網の実態と国際問題化した背景を探った。

■■驚異的な盗聴力

 米CBSテレビが27日に放映したニュース番組でカナダの元情報機関員のマイク・フロスト氏がエシュロン・システムの驚異的な盗聴能力の一端を証言した。ある米国の主婦が友人との電話の会話で「私の息子が学校で爆発したのよ」と話した。主婦は「爆発した」という言葉を「元気を出した」という意味で使ったが、エシュロンの電算機は「爆発」に反応して主婦を「テロリスト」として登録した。

 電子情報の専門家によると、この巨大電算機は1分間に300万という数の通信を傍聴できる。そして、「爆発」「核兵器」「スパイ」などの不穏な言葉のほかに各国の重要人物の個人名や組織名を辞書のように記憶し、機密性の高い会話を瞬時に探り当てる。このシステムは電話もファクスもEメールも「封筒のない手紙」のように簡単に盗み読めるという。

■■地球規模の「網」

 EUの報告書によると、この盗聴網は1947年に英米2カ国の秘密協定で発足し、その後にカナダ、オーストラリア、ニュージーランドが加わった。傍聴用の人工衛星が商業衛星や地上施設の通信を収集する。傍聴した情報は参加5カ国の少なくとも120カ所の中継所を通じて米国家安全保障局(NSA)に送られる。

 冷戦時代は西側各国はエシュロンが対共産圏に対する傍聴活動をしていると信じていた。ところが、冷戦終結後に欧州企業の契約活動が米国企業に漏れているという訴えが増え始めた。米情報機関が共産圏の軍事情報から米国に有利な産業情報の入手にシフトを変えたためとされた。

■■フランスの怒り

 「契約を米企業に奪われた」と怒る企業はフランスに多い。94年にブラジルでのレーダーシステム入札で仏トムソンCSF社の通話が盗聴されて米レイセオン社が獲得。95年には欧州共同企業エアバス・インダストリー社のサウジアラビアへの航空機販売のファクス通信が漏れて米ボーイング社とマクドネル・ダグラス社がさらったという。

 欧州の民間調査機関によると、被害に気がつかない企業も含めて欧州企業の6割が米国側の盗聴を受けており、被害額は年間数十億ユーロ(数千億円)に達するという。しかし、米国側は「仏企業は自分たちの努力不足を米国のせいにしている」と一蹴する。確かに、仏側に冷戦終結後の米英などの英語圏の繁栄に対する焦りも見える。

■■プライバシー問題

 「産業スパイはしていない」と米政府は否定する。情報機関の仕事だけに証拠はつかみにくい。しかし、米政府にとって外国企業の苦情よりもプライバシー保護を求める声の方が恐いようだ。欧州ではプライバシーの実害がなくても侵害を試みただけで罪になる法律が生まれ始めた。

 米国でもプライバシー保護派が動き始めた。米議会は年内にもエシュロン・システムについてプライバシー侵害の有無を調査する意向だ。かたくなに説明を拒んできた政府側もエシュロンの資料やプライバシーを保護している証拠の公表に迫られる可能性がある。

■■暗号の商品化

 エシュロン・システムは史上最強の傍聴システムだが、参加していない国々が手をこまねいているわけではない。対抗意識の強いフランスも世界各地に中継所を設置して通信傍聴に精を出している。だが、盗聴力は1分間に50程度の通信にすぎない。1分間の傍受通信が300万のエシュロンとは比較にならない。

 とはいえ、盗聴力を維持したい米国に新たな悩みも生じている。暗号の商品化である。電話、ファクス、Eメールが盗聴に無防備ならば、関係者にしかわからない暗号を使えばよい。インターネット用の暗号ソフトが市中に出回るようになり、暗号産業は有望産業となった。

 しかし、これまで暗号は武器とみなされ、各国は武器輸出禁止令の網に暗号を入れてきた。暗号の市場化に積極的な産業界と暗号を規制したい政府側のせめぎあいが続いている。

ローマ法王、ダイアナ妃ら著名人、人権団体も盗聴か

2000-02-28(Mainichi Shimbun)Mainichi INTERACTIVE
 欧州連合(EU)が産業スパイやプライバシー侵害の疑いで本格調査を始めた米国主導の通信傍受システムの問題で、ローマ法王、故ダイアナ英元皇太子妃、インドの修道女の故マザー・テレサら世界的な著名人や人権団体の通信を盗聴していた疑惑が浮上した。27日付の英日曜紙サンデー・タイムズが通信傍受に関係した元情報機関員らの証言などから指摘した。

 エシュロン(ECHELON)と呼ばれる傍受システム(米、英、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドの英語圏5カ国で編成)は、通信衛星とコンピューターを駆使して世界の電話、ファクス、Eメールを傍受できるといわれる。英国などの元情報機関員の証言によると、米国はテロリストや犯罪組織だけでなく、国際世論に影響力のある人物や団体の反米的な言動に神経をとがらせ、エシュロン・システムを使って通信傍受を続けているという。

 ローマ法王は10億人近い世界のカトリック信者への影響力があり、ダイアナさんは対人地雷反対運動が米政府の関心を引いた。マザー・テレサは反戦思想が監視対象となった。また、人権団体のアムネスティー・インターナショナル(本部・ロンドン)や国際環境保護団体のグリーンピースも盗聴対象になっているという。

通信傍受疑惑で報道官 「産業スパイを任務としてない」

2000-02-24(Mainichi Shimbun)Mainichi INTERACTIVE
 
 米国主導の通信傍受システム(エシュロン)で商談などを盗聴され被害を受けたと欧州の企業などが主張している問題で、米国務省のルービン報道官は23日、「米情報機関は産業スパイを任務とはしていない」と述べ、疑惑を否定した。

 エシュロンには米国家安全保障局(NSA)のほか、英国、カナダなどが関与。冷戦中は旧ソ連や中国などの秘密通信傍受を主な任務としていた。米国の民間組織、米国家安全保障公文書館が1月下旬、機密扱いを解かれたNSAの文書を公開し、青森県の米軍三沢基地も傍受の拠点だった可能性が浮上した。

 文書はインターネットで一般に公開され、欧州では「企業盗聴によって自国企業の利益誘導を図った疑いがある」と米国などを批判する声も出ている。ルービン報道官は「NSAは私企業に機密情報を提供することは許されていない」と述べたが、エシュロン自体には言及を避けた。

盗聴網問題で欧州委、動き出す/沈黙の英国、窮地に

2000-02-23(Mainichi Shimbun, London)by Mainichi INTERACTIVE
 欧州連合(EU)は22日(現地時間)、米国主導の盗聴網システム(暗号名ECHELON=エシュロン)が非英語圏諸国の企業の通信を傍受しているという内容の委託専門家による調査報告書を受理し、EU執行機関の欧州委員会は、対抗策の検討を担当部署に指示した。盗聴網に協力している英国は苦しい立場に追い込まれ、北大西洋条約機構(NATO)の結束にも影響を与えそうだ。

 EUは米、英、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドで編成するエシュロンが世界の電話、ファクス、Eメールを傍受している疑いが強いとみて、数年前から本格調査してきた。新しい報告書によると、エシュロンは米国家安全保障局(NSA)の主導で1970年ごろに組織としての基礎ができた。その後、宇宙空間から電波をとらえる技術とコンピューターを組み合わせることによって史上最強の盗聴システムができたという。

 国際会議での各国政府の動きや企業の契約交渉の内容が米国側に漏れたという訴えが続出し、特に非英語圏の仏、独、伊の政府や企業の不満が高い。報告書は「エシュロンは明らかに民間企業の情報を入手している」と指摘し、「米国は、世界の通信情報を一手に把握できる」と結論付けた。

 盗聴網については米英ともに国家機密として一切の言及を拒否している。英国はEU内部での批判を黙って受けるしかない情勢だ。英政府筋は「米英を追い詰めることはNATOの結束に打撃となる」と、EUの反米英の動きに深刻な懸念を示した。

明かされたECHELONの姿

2000/02/18アメリカパワーの源 by気になるニュース(AREA ZUIKU)

『エシュロン』プロジェクトの「証拠」発見

Chris Oakes 2000年1月26日 3:00am PST by Wired News
 米国家安全保障局(NSA)の機密扱いを解かれた文書の中に、『エシュロン』(Echelon)という名のプロジェクトに言及した箇所が初めて見つかったことを、ある研究者が明らかにした。

 機密扱いを解かれたNSAの文書を丹念に調べていた『ナショナル・セキュリティー・アーカイブ』の研究員、ジェフリー・ライチェルソン氏は、エシュロンは実在するとの結論に達した。エシュロンとは、秘密の国際プロジェクトのコード名とされ、あらゆる形式の電子通信を傍受していると言われている。(ナショナル・セキュリティー・アーカイブは、ウェブサイトによれば、ジョージ・ワシントン大学にある民間の独立研究機関および図書館で、政府機関であるNSAとは無関係とのこと)

 「これらの文書で、エシュロンというプロジェクトが存在することを政府が認めたことになる」と、ライチェルソン氏は言う。

 しかし同時に、ライチェルソン氏はこうも述べている――エシュロンをめぐっては一部でかなり過激な陰謀説も取り沙汰されているが、これらの文書を見ると、実際はそのような不法な目的や性質を持つプロジェクトではない可能性が考えられる。

 「私の調査は、実際のエシュロンが、一部の極端な推論で主張されているよりはるかに限定されたプロジェクトである可能性を示唆している」

 実際のところライチェルソン氏は、NSAはエシュロン計画を実行するにあたって、何の法律も犯してはいないのではないか、と考えている。

 諜報活動を監視する団体などは、世界各国の機関が――NSAなどの指揮の下に――市民の私的通信を傍受し、それを互いにやりとりしているのではないかとの疑惑を抱いている。

 ライチェルソン氏がエシュロンへの言及箇所を発見したのは、情報公開法に基づいて入手した膨大な文書の中だった。

 これらの文書には、ほんの6ヵ月ほど前に入手されたばかりのものもあれば、数年前から手元にあったものもある。ライチェルソン氏は先週、この発見をウェブ上で初めて発表した。

 ライチェルソン氏が、明らかにエシュロン・プロジェクトに言及しているとして重要視する文書の1つは、ウェストバージニアのシュガーグローブで展開されている海軍の安全保障活動の機能について書かれたものだ。

 ライチェルソン氏の主張によれば、これらの文書は、エシュロンと呼ばれるプロジェクトが、このシュガーグローブ基地に関連していることを明らかにするものだという。

 エシュロンは、プライバシー擁護団体のあいだでは、地球規模の監視ネットワークだと考えられてきた。このプロジェクトによって、米国およびその主要同盟国――何十年にもわたって同盟関係にある英国、さらにはその同盟に加わっているオーストラリアとニュージーランド――が、あらゆる種類の通信を傍受し、それを各国間でやりとりしているというのだ。しかしライチェルソン氏は、そうした憶測は、実際よりはるかに過大なものだろうと言う。

 「エシュロンはもっと制限されたプロジェクトだ」と、ライチェルソン氏はサイトに記している。

 制限というのは、米英両国の各国国民に関する情報収集活動についての制限も含んでのことだとライチェルソン氏は言う。

 「この(海軍の指令文書)は、シュガーグローブ基地の指揮官が負っている責務の中に、USSID18の規定の定めるところに従って米国民のプライバシーを正しく保護することが含まれていることをも示している」

 NSAの広報宛に、今回の発見に関してコメントを求める電子メールを送ったが、回答は得られなかった。同局広報はこれまで、エシュロンに関して、一貫してコメントを拒否してきた。

 ところが先週、NSAで情報システム保護部門の副責任者をつとめるマイケル・ジェーコブズ氏が、NSAは米国民をスパイしているとの疑惑に猛烈に反論した。厳しい内部の方針によって、NSAはそのような行為ができないようになっている、というのが同氏の主張だ。

 「われわれの任務はそんなものではない。NSAではそうした制限を非常に尊重している」

 『政府機密連盟』(Government Secrecy Federation)の『機密および政府に関する報告プロジェクト』の編集者で、エシュロン問題を追っているスティーブン・アフターグッド氏は、ライチェルソン氏の発見とそれに基づく結論に同意を示している。

 「これらの文書に言及されているエシュロン部隊の活動は、われわれがエシュロン・ネットワークとして知るようになり、追いかけ回しているものだろうか? おそらくそうだと思われる」と、アフターグッド氏は言う。「それがライチェルソン氏の主張であり、私も賛成だ」

 今回の発見は大事件なのだろうか?

 「エシュロンについて、名前を挙げて言及している公式の政府文書を私はこれまで1つも知らなかった。……その点では、たしかに興味深いものだ」と、アフターグッド氏は語る。

 しかしアフターグッド氏はこの文書を、何かの決定的証拠だとは見ていない。発見者のライチェルソン氏自身もそうだ。

 「私は、この文書自体は、何らかの重大な疑惑を呼び起こすものではないと考えている。そうしたネットワークが存在し、世界各地に中継基地を置いているという事実――それ自体にはまったく議論の余地はないのだ」

 「今回の発見は、例えば国内の監視や経済スパイなど、エシュロン神話のその他の要素には関係がない。だから、その観点から見れば、この発見は何ら新たな疑問を呼び起こすものではないのだ」[日本語版:高橋朋子/合原弘子]

通信傍受:冷戦中のエシュロン作戦 三沢基地が拠点に 2000年1月22日【ワシントン21日布施広】

 冷戦中、旧ソ連などの通信を傍受する米国の「エシュロン作戦」に関して、青森県の米軍三沢基地が拠点の一つになっていた可能性が強まった。米国の民間シンクタンク、国家安全保障公文書館が、情報公開法に基づいて機密扱いを解かれた公文書を分析、21日までに結果を公表した。

 同公文書館によると、公開されたのは、米国防総省に所属する国家安全保障局(NSA)の機密文書。エシュロン作戦は、米国や欧州が関与していた大規模な通信傍受活動で、1994年の米空軍情報局(AIA)の文書が、冷戦時代の同作戦の内容に触れていた。

 この文書には「エシュロン作戦の活動」という項目があり、「AIAの参加は(中略)三沢基地でのレディーラブ作戦に限定されていた」と記されている。同作戦はエシュロン作戦の一環で、空軍情報局によるソ連の衛星通信の秘密傍受を指すものとみられる。

 同種の傍受は、英国やドイツなどでも行われていた模様だが、公文書に具体的な地名が出てくるのは異例。公文書館によると、グアムでの傍受活動を示唆する記述もあるという。

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