[Ozawa Rowing Top Page] [Seminar Library INDEX] update:2007-02-23
| 会議名 | 太田川水域各ボート部水難事故防止対策検討会 |
| 日時 | 2001年4月10日9:30〜11:30 |
| 場所 | 広島市西消防署会議室(広島市西区都町) |
| 主催 | 広島市西消防署 |
| 出席者 | 消防署5名,県ボート協会2名,ボート部4団体(広大,工大,修道大,太田川BC) |
| 式次第 | 開会/挨拶/心肺蘇生実技講習(30分)/検討事項(消防隊の出動状況,ボート部の活動状況,消防局通信指令課(119)からの要望,事故の未然防止策)/その他/閉会 |
以下は,会議に参加しての個人的記録であり,議事録ではない.話の一部,要点を抜粋・再整理したものである.特に斜線部は個人的意見(一部,発言).
2 全体の要約
太田川水域では過去5年に4件も一般市民からの「ボート遭難!」の通報で消防署が出動するという事態になっている.ただしいずれも自力回復などで,実際の救助活動には至らなかった.中には,当該クルーは通報があったことさえ知らず艇庫に戻り,一方で到着した消防隊はすでに誰もいない現場で,「水没して行方不明か?」と心配するが,関係者にもコンタクトが取れず心配する,などというギャップが生じていた.
問題点を整理すると,(a)安全水準が落ちているのではないかという危惧,(b)市民(第三者)からの誤報の問題,(c)関係者に連絡がなかなかとれない問題,などがある.消防署は事故の未然防止策をはかりたいと考え,これらの問題について漕艇関係者と協議し,対策の糸口を探るためにこの検討会を開催した.消防署は,安全対策の徹底を求め,具体的には「誤報を生まないシステム」,「連絡がとれるシステム」をまず,当時者に自発的に考えてほしいこと,そして協力して安全システムをつくっていきましょうと提案した.これを受けてボート部側は,水域の連絡会議などを通じ改善策を検討する方向を示した.また広島県ボート協会もこの問題について検討し,水域のボート部との協議・調整をはかることとなった.
3 心肺蘇生法(実技)
溺水者に対する応急処置(人工呼吸・心臓マッサージ)の実技講習.
感想:最初は,検討会の趣旨から,未然防止の話がしたいのに起きた後の対処の実技講習というのは場違いか?とも思ったが,よく考えてみるとこういう訓練はそれほど機会もあるわけでなく,知識としてでなくやはり何度もやることが大切と実感.未経験者もいたことを考えると,確かにあってよかった.
4 水難事故にかかる消防隊(救助隊)の出動状況
太田川水域では漕艇関係で過去5年間に4件の出動があった;1997.8.5:H大学1×の沈(3艇),1998.8.1:(所属不明の)1×の沈-自力回復,1999.8.31:K大学4+の沈,艇折損-自力で接岸,2001.2.27:K大学2×の沈,着岸〜再乗艇で帰還.いずれも通りがかりの一般市民(第三者)からの通報である.いずれも自力で回復または岸にたどり着き,消防隊は出動したものの実際に「救助活動」はなかった.中には,クルーは119番通報されたことを知らないで帰還し,一方で駆けつけた消防隊は艇を確認できず,また関係者への連絡も取れず,沈没-行方不明さえ想定して長く現場に留まる事態も生じた.
水難事故の通報では,(水難救助第1出動で)救助工作車2台,指揮車1台,ポンプ車1台,救急車1台,救助艇1台,ヘリ1機,総勢30名の出動となる(加えて,警察などの出動もあり得る).通報から太田川水域への到着は,車両・(西飛行場からの)ヘリが約6〜7分,アクアラング隊や(宇品からの)救助艇は約15〜20分(ただし水深2mより浅いところまでは行けない.干潮時は遡上範囲が限られる).太田川水域では,もし実際に遭難という事態になった場合(通報があれば),約10〜20分,艇から離れず(または浮き輪を膨らませ)浮いていれば救助の手がとどくと期待できる.
一方で(救助の手のいらない回復可能な沈でも,誤報によって)通報-出動となればそれだけの大がかりな救助体制が敷かれ,大きな労力が無駄に裂かれてしまうことになる.(別の重大な事故が同時発生すれば,間接的にその無駄は,別の誰かの命を危険に晒すことにもなる.)
補足:誤報の背景には,携帯電話の普及や,安易な状況誤認-通報の傾向も関係していると思われる.しかし,万一を考えると,善意の通報を,(結果として)誤認であっても責められないのは当然だ.むしろ,第三者から見ても「危ない!」と思わせるような状況に陥ることが漕艇サイドに問われている.社会に対して余計な心配をかけないという責任も考えなければならない.
なお,どこの水域でも,第三者からの通報の可能性や,消防による救助体制や到着の見込み時間などは把握しておく必要がある.しかし基本は,自分たちでまず,いざというときの備えをきちんとして乗艇していなければならないのはいうまでもない.
5 各ボート部の活動状況について
消防署として,各RCの活動状況を知りたいとのことで,各RCが,活動人数,活動日・活動時間帯,艇種,安全管理体制(出艇判断,指導者,救命具,救助艇),陸上と艇の通信手段などの概要を説明した(詳細省略).また協会からは,救命具の概要,競漕規則(救命具の装着義務),水域ごとの安全講習会開催のことなどを説明した.ボートを漕ぐことに関連する法律,泳力の実態などの質問もあった.(ローイングという行為を規制するような)法律は(当然だが)ないこと(注:競漕規則はあくまで競技のなかのルール),泳力についてはジュニア規定やスイムテスト,実態,事故例などを説明.私は太田川BCとしての安全管理についても少しふれた.
6 消防局通信指令課(119番)からの要望
119番を受信する部署からの要望として,(1)転覆の回復練習など,一般市民が事故と誤認しかねない訓練は,事前に届け出てほしい./(2)艇庫・コーチなどの連絡体制(=119番通報受信時,消防側からの問合わせに対応できる体制)を確立しておいてほしい/(3)ライフジャケットを装着していない場合が多い,安全対策を徹底してほしい.との要望があった.また,参考として「ボート練習実施計画(届出)」の文書案も提示された.
漕艇サイドでの対応としては,沈の訓練などを事前に届けることは考慮に値する.しかし毎日の乗艇練習を逐一届けるのはほとんど現実的ではない.しかし水域でのクラブ相互の連絡体制や,消防側からの問い合わせに対応できる連絡体制は必要だろうと思われる.水域の連絡会議などを通じて具体的な対策を講じ,また提示する方針.協会も,安全を把握,指導する立場として,理事会(4/21)で協議し,また各クラブへの(市民レガッタ等の協力要請の)会議などでこの問題を調整し,対応策を伝えたい.消防に対する窓口は,県ボート協会(原田)にしていただくこととなった.
こういうことの窓口は協会があたって当然と思う(それがなければ協会の意味がない).が,一方で各クラブは自律した団体として,また自分たちの直接の責任の問題として,(協会に下駄を預けてその指導を受けるというような消極的な姿勢でなく)まず自分たちから協議し,改善を検討する姿勢が不可欠である.
B1:開催日時と出席状況
気になったことのひとつは開催の日時のこと.新学期開始時期の平日午前というのは非常に疑問「だった」.大学漕艇部や社会人のコーチ,また特に社会人中心のクラブにとって出席はきびしい.しかし,こと水域の安全のことなので,クラブの安全担当としては少し無理して会社を休み出席した(フレックスなどという気の利いたシステムがあればと思う…).しかし主催者から「当初は夕方を計画したが,地震の関係でやむを得ずこの日程,時間帯で」との説明に(一応)納得.でも,次回はぜひ夕方か休日にしてほしい!(もっとも勤務に絡められる立場の人には,やはり平日昼間が都合が良いのかも?).そういうわけで時間帯の無理もあるが,やはりなんとか全団体の出席が望まれる.
B2:自分たちの不甲斐なさ
最初にこの会議開催を聴いたとき,水域のボート部連絡会議でなく,また県ボート協会でもなく,消防署から安全対策の会議が発議されたことに違和感と失望を覚えた.このような事態はおそらく太田川水域で始めてだ.(誤解なきよう補足すれば)それはもちろん消防署に対しての違和感・失望ではない.消防署から言われる前に,水域内でもっと自発的にこの問題に取り組むべきであったということ,つまり自分(たち)自身に向いたものである.
自発的な相互協議がなされなかったことの理由は,第三者からの通報の一部に誤報「的」なものも含まれているため,当事者には「余計な通報をされて…」という意識があったのかもしれない.また日頃安全管理に腐心しているクラブとしては,「うちのクラブはちゃんとやっているのに,あの騒ぎでこういうことに…」という心理も働く.しかし冷静に考えてみれば,救助活動には至らなかったとはいえ,4件には,誤報とは言えないもの,通報されてしかるべき事態だったという側面があることも否めない.実際,安全に対する相互交流や連絡体制が,危惧すべき(少なくとも向上の余地が大いにある)状態にあることを漕艇関係者は認識すべきだろう.太田川BCでも,いくつか留意すべきケースもないわけではない(→インシデントレポートとして整理する計画).
そういう訳で,多少ネガティブな心理状態で出席したが,結果としては(予想に反し?)有意義で建設的な検討会となり,改めて水域全体の安全や活性化を考える良い動機付けの機会になった.主催された消防署の方に感謝と敬意を表したい.
B3:見てもらおう,来てもらおう
安全という共通のキーワードがあっても,ローイングに携わっている人の常識は,かならずしも救助する側の知識ではなく,またイメージが結構異なる要素もあるとわかった.考えてみれば当然ではある.消防署の人たちは,ありとあらゆる事故や災害を相手にしなくてはならないのだから.今回は,ローイングの概要を知っていただく良い機会となった.しかし机上の説明では限界があるとも感じた.ぜひ次回は,艇庫や水上で実際の活動風景を見ていただく機会を漕艇サイドが準備してはどうかと感じた(もちろん,望まれればいつでも来ていただいても良いのだが).遭難-救助訓練をぜひ,クラブ,協会,消防署,警察,河川管理者(太田川工事事務所),報道(?)など合同でやりたいものだ.もちろん,クラブの自発的な発議が重要だ.
B4:自由だけではいけない
同じボートに携わっていても,ローイングに対する価値観は人それぞれ違う.自分にとってのローイングの位置付けのひとつは,歩いたり,走ったり,自転車に乗ったり,泳いだり,そういう「誰もが当たり前にして良い,自然で基本的な行為・権利である」ということだ.本来スポーツというのはそういうもののはずだ.自発的に自分の体を動かすことに,何の外的な規制も管理も必要ではない.
しかし一方で,(自己を含め)周囲の人や環境に,危険が及ぶ可能性のある行為は,安全のために相応の外的制約がかかるのは当然だ.また,公正な条件下で競い合う競技スポーツということになれば,そこにもやはりルールが成立する.そういった中で,社会(や自然環境)に対して迷惑をかけないということも大事なルールのひとつだ.たとえ死傷者や物的被害がなくても,事故や前事故事象で騒ぎをおこすということ事態,考えなければならない.他に迷惑をかけないという前提のもとで,自分たちの楽しみの自由は始めて認められる.
B5:誤報は予防できるか
なかなか難しい問題だ.長期的には,ローイング(の,特に沈)に対する認知度が高まり,沈(転覆)しても大丈夫な状況とそうでないのが見分けてもらえれば言うことはないのだが,それはほとんど難しい(少なくとも短期的な対策ではない).一方で漕艇サイドでできることとしては,「危なくない状況であれば,危ない状況と誤解されないような姿を示す,あるいは危ないときには救助を求める」といった工夫はある程度可能である.まず自分たちにできることをさぐるべきだろう.(詳細は,水域の連絡会議で紹介したい).
B6:太田川水域の安全水準は落ちているか
結論から言えば全体的にはイエス.対策が必要である.(原因,具体的な事象,の記載は別の機会に譲る).
B7:その他の危険
漕艇サイドの課題としては,技術不足や整備不良に起因する事故,気象・水象の判断ミスに起因する事故の予防について,真摯に善処をはからなければならない.しかし,それらは(社会的な責任は別として)どちらかといえばクルー,クラブの自己責任の要素も強く,損失を自ら受忍しなければならない.しかしそれとは別に,太田川での事故リスクとしては,外的危険要因として,水上バイク・水上スキーの問題が増加しつつある.協会にはアピールしていることではあるが,漕艇関係者だけでなく,河川管理者,警察,消防,マリーナ,水上バイク販売者,マスコミなども加えて,この問題への認識を高め,然るべき具体的対策が講じられ,事故が起きる前に,このリスクを撲滅したいものである.
B8:クルー,クラブ,(所属母体),協会
それぞれの安全に対する役割(使命),責任,権限を間違えないようにしながら,協力して実質的・本質的な安全体制を作っていかなければならない.基本は,クルー自身が自律的な安全能力をいかにたかめるか,またそれを外からいかに客観的に適切にクルー(クラブ)の安全と危険を把握するかということにつきる.