受講ノート:公認C級コーチ養成講習会 1997.12

[Ozawa Rowing Top Page] [Seminar Library INDEX] update:2000-03-05


平成9年度・共通科目・後期・第4会場(岡山)
主催 :(財)日本体育協会
日時 :1997.12.3〜12.7
場所 :玉野青少年スポーツセンター
受講者 :約100名(約20競技)漕艇は10名

この受講ノートは,標記の講習会での個人的な講義記録を整理したものである.内容は,(講義内容を均等に圧縮した抄録ではなく)個人的な関心の度合いに従い,ある程度の偏りをもって圧縮・抜粋されている.公認C級コーチの制度そのものにも課題はあると思うが,このノートで講習会の一面を紹介することで,今後受講する人が増え,漕艇指導者の技術水準が向上することを望む.またもちろん,講習会そのものも向上してほしいと思う.


T C級コーチの制度概要

公認スポーツ指導者制度の概要
(財)日本体育協会が主催する公認スポーツ指導者制度には,スポーツ指導員・スポーツプログラマーといった資格があり,C級コーチもその一つである.基礎資格は,22才以上であること.1年間に,共通科目と専門科目の各2期(計4期)の集合講習会がある.共通科目は全国約6会場であり,他の競技と共通で約5日間の合宿となる(後期の最終日に検定試験).その他に共通科目前期の後,レポートの提出が求められる.専門科目は,戸田で約4日ずつ(日漕が主管).講習内容は,主に講義で一部実習がある.受講料は計\38,000(宿泊費はかからない).1年で修了できない場合,最大4年までの間にとらなければならない(ちなみに私は,仕事がらみで特に共通後期がとれず,4年かかってようやく修了の見込みである.)

漕艇での資格取得状況
漕艇競技では,1993年までの約10年間も講習がなく,その時期を経て,ほとんど制度が認識されていない状況であった.そして94年からは再開された.新しい資格制度になり,現在の資格保持者は,A級コーチ14名,B級コーチ11名,C級コーチ40名である.
資格の運用の一面では,国体の監督を,今後この資格保持者に制限する動きがある.実状では有資格者が非常に少ないので,漕艇競技ではまだその実施は先の話と思われるが,競技によってはすでに監督の資格要件となっている競技もあるし,県によっては全ての競技についてすでに要件としているところもある(愛媛県など).
そのほか,指導者が必要充分な教育を受け資格を持っているかどうかは,その団体および指導者の特に安全指導に対する姿勢を問われる課題でもある.(今後,無資格者の事故発生に対する問題が問われる可能性がある)


U 受講ノート

1 地域におけるスポーツ行政

法治国家の日本では,(法律留保の原則の下)法律に従い生涯スポーツの振興が図られている.また今後の生涯スポーツの発展には,民間組織との連携・調整も重要である.※私見:ただ,スポーツ活動の「全て」が法律や行政の枠組みの中に取り込まれるものではないし,そうであってはならないと思う.

スポーツ行政の目的
ユネスコの「体育・スポーツ憲章」にも謳われている通り,スポーツは人間にとって基本的な権利の一つである.日本の法体系の中では,日本国憲法,教育基本法,社会教育法,スポーツ振興法のなかで,スポーツ行政の目的が示され,それによれば,「国民の心身の健全な発達と,明るく豊かな国民生活の形成に寄与する」ことがスポーツ行政の目的であるといえる.

スポーツ行政の組織・体制
スポーツ行政を施行する国家機関は,日本国憲法,国家行政組織法,文部省設置法,文部省組織令の流れの中で定められ,それによれば文部省(特に体育局)が主務機関と位置づけられる.また地方機関は,日本国憲法,地方自治法,地方行政の組織及び運営に関する法律によって組織整備がなされ,都道府県および市町村の各教育委員会が主務機関と位置づけられている.

スポーツの振興施策(特に施設整備のこと)
地域のスポーツ施設について,保健体育審議会の答申(1972)中の「市町村別人口規模別スポーツ施設設置基準」により量的基準が示され,また答申(1989)中の「スポーツ施設の整備の基準」により質的基準が示された.一例として,地域住民の日常的なスポーツ活動のための身近な施設として,「地域施設」の整備が求められている.もっとも「身近さ」の距離・時間は地域の実状をよく吟味して設定されなければならない.


2 社会体育概論

チームワーク・クラブワーク
スポーツ集団に関連し,「コートの中・コートの外・実社会」の3つの場が考えられる.コートの中は,フェアなテイクが競われる集中・緊迫の場で,チームワークが求められる.これに対して実社会は,ある面でアンフェアなテイクが行われる心の安まらないストレスの場である.この両者の間をつなぐ「コートの外」は,give & takeの互譲の場であり,豊かな人間関係を育む場として重要である.そこで求められる相互関係のあり方を,クラブワークと総称する.

スポーツ制度
日本の近代スポーツの多くは明治以降に,「外来文化」として伝わったが,次第に組織化され,明治44年(1911)には大日本体育協会が組織化され,またその後の変遷を得ながら,競技スポーツは次第に「制度」となっていった.スポーツの社会的現実が制度をつくり,制度がスポーツの社会的現実を作っていると言える.

コマーシャルスポーツ
スポーツ制度と経済制度の重複部分がコマーシャルスポーツで,スポーツの商品化,商業スポーツという言われ方もある.具体的には,(有料)スポーツクラブ・スポーツ教室,スポーツ用具の販売,メディアスポーツ,プロスポーツ,レジャースポーツ等々.試算では,日本でスポーツについて動くお金は,5.7兆円とも言われ,その6割は用具,残りのほとんどは施設に関するものである.10年前の試算では4兆円であったので,現在の不況の中でもスポーツはお金になっていると考えられる.


3 スポーツ心理学

学習のプロセス
学習とは,記憶(シェーマの形成)したことを,再現(実際の運動)することである.

動機付けを高める方法
効果的な指導方法としては,@目標を達成可能なものにする,A成功感・達成感を感じさせる,B主体性ある行動を求める,C目標を明確・具体的なものにする,D興味や関心を引く,E目標やスポーツ,トレーニング自体の価値観を高める,F成功・失敗の原因を正しく分析させる,G成功を多く,失敗を少なく,H結果を返す・知らせる(評価する),I競争・共同をたくさん,J賞と罰(外発的動機付け)(は,慎重に.)

進歩曲線とパフォーマンス曲線
うまくなるにつれて,視覚情報よりも筋感覚そのものが重要になってくる.(詳細略)

あがり
緊張は最適のレベルにあることが必要で,それよりも過度な緊張がいわゆる「あがり」の状態である.あがりによってパフォーマンスは低下する.また一度あがりが大きくなりすぎると,緊張レベルが下がっても,パフォーマンスは回復しない傾向にある.克服のポイントは,@あがりの機構を知り,克服可能であることを理解する,A自分自身のあがりのパターンを分析・理解する,Bセルフコントロールのトレーニング法を知り,決意し,実行する,ことである.

事故防止(省略)


4 トレーニング科学

4-1 スポーツトレーニング具体化の原則

筋タイプ・エネルギー供給系・運動時間(省略)
力・速度・パワー(省略)

持久力
有酸素性作業能力を測定する指標としては,最大酸素摂取量が重要で,一流の持久系選手では80ml/min・kg以上.また持久系の競技では,(規定の心拍数以上を維持するように)レストを管理したインターバルトレーニングが有効である.その際,全体の距離は,実際の競技距離の半分以下にする.

トレーニングの負荷
トレーニング負荷を10RM程度に設定すれば,筋力・持久力の双方に効果がある.MAX〜3RMは一般に,効果よりもリスクの問題が大きい.

回復プロセスの重要性
刺激(トレーニング)と適応(休息中の身体機構の再構築)の組合せが最も重要であり,休息時の過補償(オーバーコンペンセーション)をよく考え,トレーニング間隔(一般に週2回以上),積極的休息(例:毎運動後10〜30分,または週1回)をうまく組み立てることが重要である.

スポーツと社会
一流選手になればなるほど,人間的にしっかりしたものを持ち,社会的影響を考えた言動ができるようになってほしい.また特にジュニアコーチは,良き教育者であるべきで,良き人格形成を支援し,社会性を育てるコーチングが求められる.


4-2 トレーニング計画とその実際

トレーニング計画立案の原則
@目標把握(明確化),A方法の把握,B対象の把握,C一貫性の原則が特に重要である.そのためには,体力・技術特性,これまでの練習記録,時間条件などの情報が重要である.

ジュニアのトレーニングについて
特に成長期の各段階における,体力要素のトレーナビリティに対応した運動内容を選択する必要がある.平均的には,10才未満は技術系,10〜15才は持久系,15才頃から筋力系.ただし個人差が大きいので,個人の成長曲線を把握する必要がある.また,過剰なトレーニングによる心身のスポーツ傷害には充分な注意が必要である.海外では,ジュニアに1種目だけをやらせないような事例もある.

4-3 種目特性とトレーニング計画

スポーツと科学分析
スポーツの科学分析が進歩しつつあるが,現在の課題のひとつは,分析データからの事実を,コーチや選手に簡明に伝えることにある.(私見:分析者がそのコーチや選手の感覚から何かを学ぶことも重要である.運動は総合的・複合的だが,分析者は時に一つの物理学的・あるいは生理学的真実を偏重する傾向がある.)

トレーニング計画
いくつかの事例紹介(詳細略).トレーニング計画は,実行後,成果について振り返り,反省点・改良点をよく検討し,次のトレーニング計画に反映させることが重要.(私:それを選手自身にやらせ,コーチはガイドラインを示す体制がなお重要.)

5 トレーニング科学(実技)

5-1 スピードトレーニング

スピードの生理学的要因
反応時間は,神経伝達時間と動作時間の和であり,前者のうち特に信号が神経を伝わる速度は,個人差が少なく短縮もできない.しかし後者は,筋の内部抵抗,相反神経支配の円滑さ,筋収縮そのものの強さ・速さに関係し,トレーニングの余地がある.

スピードの事例 (省略:テキストのいくつかを紹介)

5-2 全身持久力トレーニング

メニュー (省略:テキストのいくつかを紹介)

心拍数のトレーニングへの応用
心拍数は,持久的負荷の良い指標である.また,近年は,心拍数計測機器も発達し,運動中の心拍数をある程度手軽にチェックできるようになった.

5-3 実技
体育館で,ストレッチング,スピードトレーニングのメニューの紹介,ジョグと心拍チェック,その他(歩行と足裏の重心移動の軌跡の話など).日暮れとともに体育館が急速に寒くなるので,早期に終了.


6 スポーツ指導論

6-2 指導人数とグループ指導

指導人数とグループ指導
@種目特性を考慮しながら指導人数を設定しよう.過剰も過少も問題となり得る.A施設・用具の有効利用を考えよう.稼働率を上げよう.B安全に配慮しよう.C指導者の数を考慮しよう.複数での指導の分担を考えよう.D略 E練習機会を平等に与える工夫をしよう.

種目における適正指導人数 (省略)

グループ指導とグループの分け方
マンツーマンの成否は信頼関係の構築と継続にかかっている.一度崩れると修復は困難.一斉指導は好ましくない.レベルや特性によるグループ分けをうまくして,相互の競争や共同を図る.グループの作り方としては,環境(施設・用具)選手の能力,選手の背景(家庭・社会環境),人間関係などをよく考慮しなければならない.

指導の展開
スポーツ指導の展開の基本パターンは,目標提示,説明と理解,示範,試行,評価,修正,再試行,応用,調整(チームでの組み立てなど),反省と新課題設定と進む.

6-2 施設・用具
施設の用件としては,種目特有の設備,付属設備,トレーニング施設,照明,リラクゼーション要素が考えられる.また安全性も重要である.基本的な準備とともに,点検整備も欠かせない.用具の要件については,誰でも使える,レベルに応じて使える,恐怖心がない,練習回数を多くできる,マンネリ化しない,安全性,理論認識を高めるなどが需要である.
なお,よく施設や用具の不足の話を聴くが,日本の現状は世界的視野に立てば,恵まれすぎているほどである.有効活用の努力をしよう.

6-3 指導計画の実際(参考資料)
省略


7 トレーニング科学

7-1 発育期のスポーツトレーニング

発育・発達の原則とトレーナビリティ
発育と身体の量的増加をいい,発達とは生理的機能が向上・完成段階に向かうことを言う.発育・発達は,@連続的・順序的であるが,A不等速的であり個体差があり,Bそして各器官・機能の発育・発達に「決定的な時期」が存在する.
トレーナビリティ
トレーニングにより身体の機能を向上・発達できる可能性をトレーナビリティという.身長は,第2発育急進期が10才前半にあり,その最も身長発育の盛んな時期をPHV年齢という.PHVは世界的に若年齢化している.PHVは,持久力のトレーナビリティとほぼ一致し,またその発育が止まる頃から筋力トレーニングの本格化が可能となる.骨格の発達のためには,特にオーバーユースに注意し,栄養・運動・休息・睡眠のバランスが重要である.体重は,身体発育の総合指標として重要であり,男子ではPHVと同時期,女子では約1年後にピークとなる.神経系(サイバネティクス,制御系)は10代の早い時期のトレーナビリティが高い.筋力系は思春期スパート以前はにまず遅筋系の発達が先行し,中高生の頃,速筋系が発達する.(なお,老化期には,速筋の萎縮が先行する.)持久性能力は,PHV前後に急激に伸びるが,また,PHV以前の持久的刺激が,PHV以後の発達に好影響を与えるとの報告もある.

7-2 女性のスポーツトレーニング

女性のトレーナビリティ
筋の質・組成比に性差はないが,男性ホルモンの影響による筋量の性差が,男女の筋力差を生じている.呼吸循環系では,血中のヘモグロビン量や生理の点での不利があるが,体重あたり,LBM(除脂肪体重)あたりでは性差はほぼなくなる.しかし,脂肪は女性ホルモンを活性化する働きもあり,脂肪を過度に減らすと,披露骨折の危険が増し,また無月経になる等の問題もある.体脂肪率を適切にコントロールすることが重要である.神経系では,性差はない.

女性のトレーニング対応の特徴
月経とトレーニングの関係では,特に初経発来以前と,初経後数年間とで配慮が異なる.また初経年齢の低年齢化傾向も認識しておく必要がある.初経前にトレーニングを開始すると,低脂肪に起因して初経が遅れる,不順,疲労骨折などの問題がある.また初経後では,月経周期と筋力・体調の変化に注意が必要であるが,個人差も大きい.


8 スポーツ医学―テーピング―

テーピングの適用範囲
テーピングは,けがの予防・再発予防・応急処置の3つの目的で用いる.テーピングが得意とする対象は,ねんざ・肉離れ・打撲などに対してであり,一方で骨折に対するテーピングはない.また捻挫でも重傷の場合は,対処できない.いずれにしても怪我をした場合は,医師による正確な診断が重要である.防と再発予防の違いは,固定の強さの違いで,また,応急処置の場合,腫れを逃がす工夫がポイントとなる.

テーピングの有効性
適切なテーピングによれば,稼働域・運動能力への制限はほとんどないとされる.効果持続時間については多様なデータがある.

テーピングの注意点
正確な診断,循環傷害の回避,間接の動きと靱帯の走向に対する注意,皮膚の状態の把握などが重要である.

テーピングの実施時の注意 省略(テキストのとおり).

実技講習
足首,膝,手首などの捻挫に対するテーピングを実習.


9 スポーツと栄養

微量栄養素の種類と役割
詳細略.ミネラル(Ca,Fe,Na),ビタミンなどについて説明.食事の基本として,偏食を避け,バランスの良いものを適量とることが必要.適切な食生活が守られていれば,サプリメントは不要である.

栄養と食事 (省略:練習・休息とのタイミングの話)


10 スポーツ医学―外科―

10-1 スポーツ傷害の概要

障害発生状況
スポーツ外傷として最も多い部位は,膝・腰,下腿〜足である.種目では,男子は野球・バスケ・ラグビー,女子では,バスケ・バレーである.競技人口に占める傷害発生率は,小学生3%,中学10%,高校15%である.また原因としては,オーバートレーニングや不当なメニュー,不注意の順である.
補足として,内的要因(骨格や筋のアライメント)によって傷害が発生しやすい場合も結構ある(事例紹介).


予防策と治療
オーバートレーニングの防止のため,例えば小学生のトレーニング時間の目安としては,1週間に7時間以内とすべきである.また,疲労骨折などは,使いすぎとメニューの不適当が原因なので,特に指導者の責任が大きい.適切なメニュー,予防的動作を注意すべきである.
診断については,近年はCTなどを使うことで,従来普通のX線だけでは困難だった診断もかなりつくようになったが,コスト面でなお一般的ではない.また,傷害の治療としては,大きく手術的治療と保存的治療が考えられるが,特に成長期などでは治療の選択には充分な注意が必要である.

10-2 スポーツ傷害の救急処置

ビデオ(30分)
救急箱,肉離れ・捻挫・脱臼の処置(RICE),打撲,ABC,目の怪我,骨折,鼻血,棘と出血,熱射病などの処置を説明(スポーツ少年団向き)

実技の注意・実習
足関節の内反捻挫の処置について,基本はRICEであるが,特にパッドを使用し循環阻害をしないテーピング処置について説明.三角巾や伸縮テープを使った上肢の固定法,指の固定法などを実習.


V 資格検定試験

試験の概要
試験は,最終日に実施された.各科目ごとに3〜4問の中から1題を選択して,B5で1ページの解答用紙に答案を記述する.1問あたり25分で設定.教本・ノート類は持ち込めない.採点は,前期の終了後に提出したレポートとの合計で採点され,科目のすべてに合格する必要があり,合格基準は約6割以上とのこと.結果は翌年5月頃通知され,不合格科目については追試がある. なお合格後,登録手続きを行うことで,資格が発行されるシステムとなっている.

試験科目
1 :スポーツ医学(内科系)・同(外科系)・スポーツ行政・障害発生状況(計75分)
2 :トレーニング科学(前期 生理学)・同(後期 生理学1)・同(後期 生理学2)・同(バイオメカニクス)(計100分)
3 :社会体育概論・スポーツと栄養(計50分)
4 :スポーツ心理学(前期)・同(後期)・スポーツ指導論(計75分)

出題内容
出題範囲は,予めリストで配布される他,各講義でも要点が明示されることが多いので,まじめに受講していれば特に問題のないレベル.ただし作文がひどく苦手な場合は,予め想定される出題の中から自分なりの答案を書いて準備しておくことが望ましい.
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