第5章,第4項. コックスの役割と向上の要点。 1, コックス コックスには、整調と対面する形でスターンに座るスターンコックスと、バウに仰向けに寝て顔を出すバウコックスがあります。 コックスは、操舵だけではなく漕手の心理的支援のかなめとなる重要なポジションです。 下手なコックスは、漕手の能力を引き出せず、コース侵害などで直接の敗因となることさえあります。 地味だけど責任の大きなポジションです。 しっかりとしたやり甲斐と、クルーに対する責任感を持つことが大切です。 コックスの役割を、以下に示します。 ・ボートの整備,点検,リギング(クルーとともに)。 ・操舵,(ボートの動きをコントロールすること)。 ・安全の確保。 コックスは安全の全責任と全権限を有する。 ・漕手の身体的・心理的コンディショニング。 ・漕手の漕状態の観察と技術的指導。 ・練習メニューの組み立て・調整。 ・レースでの戦術展開。 ・記録(トレーニングメニュー、漕ぎの状態などの記録)。 2, コックスの道具は声とラダーだけ。 コックスが使える道具は、声とラダーの操作だけです。 陸上でボートを運んでいるときも、声だけを使って漕手の動きを制御して、安全に運ばなければなりません。 コックスが艇の端を持って物理的にぶつけないようにするのは、声による制御能力を落とします。 初期を除き、できるだけやめるべきです。 声はできるだけ大きく、はっきり出せるような訓練が求められます。 声の補助装置としては、特にバウコックス艇やエイトでは、コックスボックスといわれるマイクスピーカ装置が使われますが、それでも故障や緊急時に備え、声の訓練は欠かせません。 3、体重の管理。 コックスは自分の体重をよく管理し、太りすぎないように注意します。 しかし減量が艇速にそれほど効果があるわけではありません。 むしろ過度の減量で体調を崩し、判断力を鈍らせ,クルーにとっては逆効果となっているケースが多く見られます。 また特に、成長期にあるジュニア選手の減量は、厳禁です。 4, 視覚障害を持つ漕手への支援。 特に、視覚障害のある漕手にとっては、コックスは周囲の情報を言葉で伝える重要な役割を担っています。 コックスは、漕手の視力のレベルに応じて、適切な量と質の情報を発信します。 例えば、「ボートが今どこを進んでいるのか」とか、「目標まであとどれだけ漕げばよいのか(距離ではなく、ストローク数や時間でめどをたてるなど)」、クルーの他の漕手の状態(3番が遅れている,など)といったことです。 ただし、過度な配慮はかえってわずらわしくなることもあるでしょう。 視覚障害者の持つ聴覚やイマジネーションの能力に期待と信頼を寄せましょう。 あまり「特別扱い」する必要はないでしょう。 どんなことを知りたいか、どのあたりは不要か、そういったことを、漕ぎながら、ボートの上で互いに話しながら最適化していきましょう。 さらに聴覚障害もある場合などでも、支援者は敬遠せずとりくみましょう。 以上で,「舵手の役割と向上」の説明を終わります。