第1章、第1項。 開始の条件。  (4分15秒です。) ロウイングは、視覚に障害があっても楽しめる、また、競技できるスポーツとして、進化しようとしています。 ぜひボートにチャレンジしてみてください。 1。 見えなければ漕げない?。 これまでのボート界の常識は、どうだったでしょうか? 「ボートを漕ぐためには、周囲をよく見て安全を確保しなければならない。 前の漕手をよく見て、正確に合わせなければならない。」だから、「ボートをするには、視力が不可欠」ということでした。 たしかに、舵手、シングルスカル、「舵手なし艇」のバウなどは、少なくとも乗艇練習では今のところ、視覚が必要でしょう。 しかし、クルーボートの漕手に、視覚は絶対必要なのでしょうか? 答えが、否であることに、私も最近ようやく気づきました。 いくつかの工夫や発想の転換が必要ですが、漕ぐ動作や合わせることのために、「視覚は、大切だけれど、絶対必要とも言えない」と思います。整調であれば、合わせることからも開放されます。実際、過去に全盲の整調で活躍した人もいます。 最終的に、クルーロウイングは、健常者と視覚障害者の間に、区別の必要もない、十分互角に競えるスポーツになれる、と確信しています。 しかしすでに、それは、千950年代に実証した人がいました 。 さらに舵手やシングルスカルでも、直線の競漕であれば、少しの配慮と工夫で、視覚障害を克服し健常者と普通に競漕できる時代が来ると思います。 そして練習でも、ガイド艇がついて、全盲でシングルスカルを楽しむ事例もみられます。 視覚障害者と健常者を区別する必要などない、そういうスポーツに、進化させることができるのです。 その時代を開拓していきましょう。 2。 いくつかの工夫、配慮すべきこと。 視覚障害を持ってボートをする場合、いくつかの規定、条件、工夫を抜粋しておきます。 まず、アダプティブ種目では、M X L T A 4+に、2名の視覚障害者が乗らなければなりません。 つぎに。クルーボートでは、整調を漕ぐだけでなく、他のポジションでも、ユニフォーミティを獲得できる可能性が充分にあります。 漕手に関しては、たとえ全盲であっても、健常者と区別なく渡り合える可能性が充分にあります。 つぎに。舵手については、支援のない状態では「練習には」従事できないでしょう。 ただし、支援を工夫すれば、直線コースでの競漕に従事できる可能性があります。 つぎに。落水、転覆に備え、ライフジャケットの着用を推奨します。 つぎに。転覆時に、ボートの場所を確認し、接近できる措置が必要と思われます。 つぎに。転覆防止のため、安定した船型のボートで、両側にフロートを装着することが推奨されます。 つぎに。シングルスカルを漕ぐ場合は、前方をガイド艇が誘導し、本人は、静かに指示を聴きながら漕ぐことで対応できます。 つぎに。ブレードの向きが、握っただけで分かるように、グリップの形状を工夫することが大切です。 つぎに。リギングに補助が必要です。 またブレード深さの感触を身につけることに、大きな努力が払われることになるでしょう。 3。視点・発想として注意すべき点。 以上のように、障害者がロウイングをする場合に、健常者のロウイングを既成概念として考えるとすれば、いくつかの制約的な条件が発生します。しかし、ここで、間違っていけない重要な視点があります。それは、健常者のロウイングを基準にして、「これができない、それは無理だ、あれはしょうがない。」と、能力水準やテクニックの未達成を、欠けていることのように捉えたり、または安易に障害のせいにして妥協してしまうことです。 ロウイングをすることの絶対条件は唯一、「自分の意思で漕ぎたいと思っているのか」ということだけです。そうであれば、あとは、その人や集まったクルーが持っている機能を有効に活用し、隠れている潜在能力や育とうとしている未来の可能性を開発し、そのクルーができるロウイングを発揮することだけです。そこに、健常者と比較して物事を制限的に、欠けているといった発想でとらえる必要は全くありません。もし、コーチや、あるいはクルー自身が、「これは、この障害があるから無理だ。」ということがあれば、どうかもう一度考えなおしてください。特に、コーチ自身は、これまでのいわゆる健常者のロウイングでの常識や原則にとらわれて間違った指導をしていないか、よく考えることが必要です。 以上で、「開始の条件」の説明を終わります。