ルパン三世 ’71 ME TRACKS

ホンモノの音楽を聴く方法は、もはやこれしかない!!

 

ルパン三世。日本人なら誰でも知っている超人気キャラクターである。
毎年のように新作アニメがTVスペシャルや劇場版でつくられ、コミックもモンキー・パンチ氏監修のもとに様々な作家によって今もかかれている。
石油会社がCMでつかい、アイドルやコメディアンがルパンに扮してコントをやる。プライズマシンの景品に使われる事も多いし、ルパン関係の書籍も多数出版されている。
海外でも人気があるらしく、ハリウッドで実写映画化されるという話も出ているくらいだ。
それほどメジャーなキャラクターでありながら、信じがたい事に「ルパン三世」のオリジナルサントラはアナログ、デジタル共に一度も発売されなかったのである。

「まさか?ルパンのCDって物凄くいっぱい出てるじゃないか。レコード屋の一角にルパンコーナーが出来てるくらいだぞ」

よしよし、じゃあ最初から話をしよう。
わしがここで話題にしている「ルパン三世」というのは、1971年に放送された最初のTVシリーズで、ファンの間では通称「旧ルパン」と呼ばれている作品の事なのだ。
一般によく知られているのはその後つくられた新シリーズ、通称「新ルパン」以降のほうだ。
旧作と新作では、様々な点で大きく異なっているのだが(正確に言えば旧作でも初期と中盤以降ではだいぶ違うのだが)、「新ルパン」が大ヒットした為に、「ルパン三世」という作品のイメージはその後一般には「新」の方で定着してしまった。
そのうえ宮崎駿が巨匠と呼ばれるようになり、今ごろになって「カリオストロの城」が名作として世間一般によく知られるようになったことからか、近頃では「かる〜い泥棒ルパン三世がかわいそうな女を助ける」といったような話ばっかり作られるようになってしまった。
それはそれで結構だし、作品が面白ければ大歓迎なのだが……。

「新ルパン」からは一部の例外を除いてルパンの着ているジャケットが赤いので「赤ルパン」などといわれたりするが、世の中には「赤ルパンは絶対許せん、消えて無くなれ!!」などと主張する人も少なからずいるのである。

まあ、そこまで極端になるとちょっとどうかと思うが、心情的には理解できないでもない。
わしも旧ルパンが大好きな一人だからだ。

そして、その魅力のひとつに山下毅雄の音楽があるという事は間違いない。
新ルパン以降の、大野雄二の曲も魅力的だが、旧ルパンの音楽は、それとはまた違った味わいと魅力があるのだ。

 

ルパンのレコードやCDは山ほど出たが、それはみんな大野雄二の作曲したやつばかりで、山下毅雄の旧ルパンの音楽は一部の例外を除いて全然発売されなかったのだ。
かつて「テレビ・オリジナルBGM・コレクション/ルパン三世 〜山下毅雄オリジナル・スコアによるルパン三世の世界〜」というレコードが発売され、後にCD化もされたが、これは新たに演奏しなおしたもので、当時のオリジナルではなかった。

なぜそんなことになったのか?それにはとんでもない理由があったのだ。

実はルパン三世のオリジナル音楽テープは現存していないのだ!!

普通はこのような事はまずありえない事なのだが……。
しかしテープが紛失しているのではどうしようもない。
マスターテープが現存していないのにサントラアルバムをつくるなんて、たとえルパンでもそんなムチャな事は不可能だ。

 

不可能への挑戦!!

だが、全国の旧ルパンファンが熱望した、サントラCDがついに発売される事になった!!
このニュースに大喜びした人は少なくないと思う。
では、不可能なはずのサントラ製作を今回はどうやってクリアーしたのか?
ここでタイトルをもう一度見て欲しい。この「ME TRACKS」というのがミソだ。

MEテープというものがある。
これは、本編にあわせて編集した音楽に効果音をミックスした音楽テープの事。つまり、セリフが入る前の音素材というわけだ。
これを編集してサントラをつくる……と口で言えばカンタンそうだが、実際はかなりの苦労があったらしい。

効果音が入っているのだが、これは分離する事が出来ない。
シーンにあわせて編集されている為、曲の頭からラストまで使われていないものがある。
セリフの入るところなどでは音量が大きくなったり小さくなったりする。

全23話分のMEテープからなるべく効果音のかぶらない個所を選び、元のひとつの楽曲であろうと思われるところまで一曲づつ編集、そして出来るだけ聴きやすくする為に、「根性の続く限り」調整が行われたのだそうだ。

 

通常のサントラCDと違って音質も良くないし、時々効果音がかぶっている事などから、不満に思う人もいるかもしれない。
しかし、努力によってあるはずのない物をつくってしまった、出るはずのない物を出してしまったというのは実に驚くべき事である。

スタッフの努力のおかげで、遂に念願かなって思う存分旧ルパンの音楽を聴く事が出来るようになったのだ。
また、付属のライナーノートは、謎の多い旧ルパン音楽についての詳細な解説書となっている。まさに至れり尽くせりだ!

なんと素晴らしい事であろうか。
ありがとう、バップ!ありがとう!

 

 

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