宇宙戦艦ヤマト

SOS地球!甦れ宇宙戦艦ヤマト

 

まず最初にことわっておきたいのは、今回ここで取り上げる「宇宙戦艦ヤマト」は1974年10月からよみうりテレビ系で放送された最初のTVシリーズの方であって、後年製作された同名の劇場版ではないという事だ。
「そんなのどっちでもいいじゃん」という人もいるかもしれない。
しかしそうではない。このふたつは全然一緒なんかじゃないのだ。

ちょっと考えればわかることだ。
TVの一話分を仮に25分とすれば全26話で650分ある事になる。
これに対して劇場版は130分しかない。ちょうど1/5だ。
映像作品というものは、わずか10分カットしただけで、全然違う作品になってしまう事が少なくない。切る事によってかえって良くなる事もあるが、少なくとも「ヤマト」に関しては違う。520分もカットしたものは、とても同一の作品とは呼べないだろう。
それから、劇場版にはストーリーの連続性や、エピソードの積み重ねなどといった、TVシリーズ版の魅力が全く失われてしまっている。はっきりいって各回のラストにつく「あとXX日」が入れられないというだけで、既にもう駄目だと思う。
劇場版は「ヤマト」ではない。単なる「ヤマト名場面集」でしかないのだ。

 

しかし、劇場版ヤマトのつくった実績がなければ、現在のアニメ界は無かったといっても過言ではない。「テレビまんが」から「アニメ」へと変貌する大きなきっかけのひとつだったのだ。アニメ史を語るうえでは絶対に外せない、重要な作品である事は間違いない。
だがそれは、作品として優れているという事とは別だ。TV版があまりにも素晴らしい為に、その縮小である劇場版にも素晴らしさが残っていたというだけの事だ。
ビデオデッキが家庭に普及していなかった時代においては、「もう一度ヤマトが観られる」というだけでファンを動かすには充分だったのだ。

今は状況が全く違う。
ヤマトのビデオはレンタルビデオ店にずらりと並んでいて、安い値段で好きなときに好きなように観る事が出来るようになった。名場面集でガマンする必要なんて、全く無いのだ!

さあ、ヤマトを観よう!!

 

本当に観ているか?

しかし、ヤマトを観ろといっても、「ヤマトはもういいよ」という人が少なくない。
いっぱい観たから、もういいんだそうだ。
しかしわしは、そういう人に、あえて言いたい。

本当に、自分が思っているほど観ているだろうか?

もう一度、良く考えてみて欲しい。

 

まず第一に……

後続作品を全部外して、「ヤマト」に限定したら?
たくさん観たというのは「新たなる旅立ち」とか「永遠に」とか、そういったものを含めた話じゃないだろうか?
確かに「さらば」以降にも魅力はある。
しかし、それらを全部寄せ集めても「ヤマト」の持つ魅力には到底及ばないと、わしは思う。

そして第二に……

劇場版と混同していないだろうか?
映画の「ヤマト」が名場面集でしかないというのは、先に述べた通りだ。
あれも色々と見所は多いのだが、それでも短縮版は短縮版だ。
あんなもので満足せずに、本当の「ヤマト」の姿を知って欲しい。

それから第三に……

本当に「もういい」と思うほどに内容を覚えているだろうか?
「ヤマト」は、様々なメディアで露出する機会も多い。
懐かしモノ特番などでは沖田の死ぬシーンが必ずと言っていいほど出てきたりする。
しかし、そういった情報が多いほど、実際にはそれほど観てはいないのに、なんだか観たような気になっていたりするものだ。

 

これらの事は、ほぼそのまま「ガンダム」や「ウルトラマン」にもあてはまる。
メジャーな作品というものは、メジャーであるばっかりに、逆にきちんと見る機会を逃し、断片的な情報で満足してしまっている事が少なくない。

本編は観た事がないのに、ゲームから得た情報だけで知っているような気になって「マジンガーZ」や「ゲッターロボ」について語る人。
TV版のガンダムは一度も観た事がないのに、「Gガンダム」に対して「あんなのはガンダムじゃない」と語る人。
そういう人がたくさんいるのだ。

もう一度、考えてみて欲しい。
「本当に、宇宙戦艦ヤマトをきちんと観た事があるだろうか?」
自信をもって「ある」と答えた人が大勢いたら、わしは嬉しい。

 

内容については、わしはなにも言わない。

観た事のない人は、一度でいいから「宇宙戦艦ヤマト」を全話通して観て欲しい。
観た事のある人は、改めてもう一度「宇宙戦艦ヤマト」を全話通して観て欲しい。

わしの言いたいのはそれだけだ。

 

 

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