どうぶつ宝島

痛快まんが映画の傑作!!

 

日本を代表するアニメーション作家は誰かと聞けば、間違いなくほとんどの人が「宮崎駿」と答える事だろう。
今や、普通の主婦やサラリーマンまでもが「宮崎アニメ」だの「スタジオジブリ」などという言葉を使う時代である。かつては濃い目のアニメファンしかその名を知らなかったのに、えらい変わりようである。
宮崎駿の名が世間一般で認知されるようになったのは割と最近だ。あの「ルパン三世 カリオストロの城」だって、封切り当時の興行成績は決して良くはなかったのだ。
「ナウシカ」も「ラピュタ」も、封切り時に注目していたのはほとんどアニメファンだったし、今ではジブリの顔になっている「トトロ」にしても「火垂るの墓」のオマケ扱いだったのだ。

宮崎ファンを名乗る人はたくさんいるが、多くは「ナウシカ」以後の作品について触れるばかりだ。「未来少年コナン」さえも見た事がないような輩が偉そうに宮崎論を語るという不思議な状況を、わしはあちこちで見てきた。
わしは、そういう連中が知ったように語る「自然と人間の関わり合いがどうのこうの・・・」という安直な感想にはもうウンザリしているのだ。
近年のジブリでの作品にそういった側面があるのは確かだが、少なくともわしにとって、宮崎駿が関わったアニメーションの魅力というのは決して大袈裟なメッセージやテーマ性などではなかった。
一口に言うなら、それは「まんが映画」の魅力だったのだ。

 

宮崎アニメの原点がここにある!!

「どうぶつ宝島」は1971年に公開された東映動画の長編アニメーションだ。
タイトルのとおり、主人公とヒロイン、赤ん坊のバブ以外のキャラクターは全員が動物になっている。親友のグランはネズミ、シルバー船長はブタといった具合だ。だが、メルヘンタッチのほんわかアニメかと思ったら、意外にも激しいアクションの連続!痛快無比の大活劇になっているのでビックリだ。

この映画で宮崎駿は原画を担当している他に「アイデア構成」という肩書きが付いている。
あまり聞かない役職だが、おそらく企画の段階でイメージボードやストーリーボードをガンガンかいたりして、アイデア出しに大きく貢献したという事なのだろう。
実際、この作品は脚本も演出も宮崎駿の手によるものではないのにもかかわらず、全編を通じてかなり宮崎色の強いものとなっている。
後の宮崎駿作品で頻出するシチュエーションや構図などが、すでにここで多く見られる。
クレジットでは「原作 ロバート・L・スチーブンソン」となっているが、原作の「宝島」は完全に無視!ほとんどオリジナル作品と言っていい。だけど、これが面白いんだ、また。

 

主人公ジムと、その親友であるネズミのグランが留守番をしている「ベンボー亭」に深夜、突然現れた客。彼は何者かに追われている様子だった。やがて、追っ手らしい謎の男達が店の周りをうろつき始めた!
その客は「これを持って隠れていろ。絶対に見付かるなよ」と言って、ジムに小さな箱を預ける。やがて追っ手は店の中を荒らし始める。
ジムはなんとかやり過ごしたが、店の中はメチャクチャ。怪しい客も連れ去られてしまったらしい。
怒るジムだが、箱の中身を見て驚く。なんと、小箱の中身は有名な大海賊フリント船長の残した莫大な財宝が隠されている宝島の地図だったのだ!

 

・・・とまあこんな調子でこの後もずっと原作のエッセンスの一部をほんのちょこっと残しながら、ほとんどオリジナルで展開していく。
樽の船での航海、海賊船との遭遇、牢の中でのヒロインとの出会い、奪われた地図の奪回、船上のパーティ、悪役シルバー船長の計略、巨大な装甲船との大海戦、宝島での一大チェイス、そして意外な結末・・・・・・最後まで見せ場の連続だ!
たかが子供向けとバカにしちゃあイケナイ。はっきりいって「カットスロート・アイランド」なんぞよりよっぽどよく出来ているぞ!!

ワクワクするような状況!ドキドキするような冒険!ハラハラするようなピンチの連続!胸のすく主人公の大活躍!ステキなヒロイン!などなど・・・・。わしが宮崎駿のアニメに感じた魅力はそういうところだった。

わしは、宮崎駿には、いらん事を考えないでスカッと気持ちのいい「痛快まんが映画」を作ってもらいたいと思う。
映画の「もののけ姫」も悪くはないが、出版物でも紹介されたストーリーボードの「もののけ姫」のほうがずっとずっとステキだと思うのは、わしだけだろうか?

 

 

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