百獣戦隊ガオレンジャー 携帯変身Gフォン

変身サウンドが鳴る!光る!!

 

 

「百獣戦隊ガオレンジャー」は、地球の生命を蝕む悪鬼「オルグ」を倒すため、はるかな太古より地球と共に生きてきた五体の守護聖獣「パワーアニマル」に選ばれた五人の若者たちの物語だ。精霊の力を身にまとい、ガオレンジャーとなった戦士たちは、自らの象徴であるパワーアニマルの野獣アクションでオルグに立ち向かう!!

ガオレンジャーの変身アイテムは「携帯変身Gフォン」だ。おなじみのブレス型ではなく、携帯電話の形をしている。Gフォンという名も、実在する携帯電話会社「Jフォン」をもじってつけられたものであろう。
携帯電話型の変身アイテムといえば、これ以前にも「電磁戦隊メガレンジャー」の「ケイタイザー」というものがあった。だが、ケイタイザーで変身する「メガシルバー」はシリーズ中盤から現れた助っ人戦士で、本来の主人公である五人の変身アイテムは、やはりブレス型であった。
メインの五人がブレス以外のアイテムで変身するのは「忍者戦隊カクレンジャー」の「ドロンチェンジャー」までさかのぼる。実に八年ぶりの手持ち変身アイテムというわけだ。
戦隊シリーズにおいては、かなり異色の変身アイテムであることは間違いない。

 

 

聞こえるか、地球の叫び

Gフォンの外見は、玩具とはいえ結構リアルなつくりになっている。
表面のゴールドは塗装は、ピカピカしたメッキの金色とは違って上品で落ち着いた色合いをしており、チラリと見ただけなら、一瞬本物の携帯電話のように見えなくもない。
形状も、あちこちに玩具らしい部分はあるのだが、ボタン部分などは本物らしさを意識していてイイカンジだ。
そのうえ、玩具のくせに二つ折り型をしていて、なんだか高級そうな感じがする。
アンテナが伸縮できるようになっているのもなかなかいい。しかも、五種類付属するアンテナヘッドを付け替えることで、五人の戦士のうち、好きなキャラが使っているGフォンに変更できるようになっている。

本体を開いて、獅子のエンブレムが描かれたスイッチを押すと、モニタ部分のLEDが点滅発光して、同時に変身サウンドが鳴り響く!

 

 

Gフォンのもうひとつの特徴は「変形する」ということだ。
携帯電話の形から、パワーアニマルをイメージした動物型に、さらにはガオレンジャーをイメージしたヒーロー型にと三段変形するのである。
しかも、アニマルタイプへの変形は、アンテナヘッドを付け替えて変形形態を変える事で、ライオン型、イーグル型、シャーク型、バイソン型、タイガー型の五種類にチェンジが可能なのだ。
そのうえ、間接の可動も非常に自由度が高く、特にヒーロータイプの時には自在にポーズがつけられる。

 


 

今までの変身アイテムのギミックは、悪く言えば「光って鳴るだけ」のものが多く、ロボット玩具などに比べると、アイテム自体のプレイバリューは劣るというイメージが強かった。
しかし、今回のGフォンは、変身アイテム自体が「変形ロボットトイ」として遊べるようになっているのである。前代未聞、なかなか面白い発想だ。
これなら、変身アイテムとしての遊びだけでなく、ロボット玩具として、いじって動かして遊ぶ事も出来る。
まさに、変身アイテム玩具におけるコロンブスの卵といっていいだろう。

 

 

もうひとつ付け加えるなら、このGフォンは史上初の「携帯電話変形ロボ」でもある。
今まで、ラジカセやカメラ、カセットテープや錠前、石ころまでもがロボットに変形してきたが、携帯電話が変形するロボットは存在しなかったのだ。最近になって急速に普及してきたものだから、当たり前といえば当たり前ではあるが。
そんなわけで、変身アイテムのファンだけでなく変形ロボットのファンも見逃せないのが、このGフォンなのだ。

 

 

3モードを使いこなせ

「変身アイテム」が好きで、「変形トイ」が好きで、ついでに「電話玩具」も好きなわしにとって、その三つの要素が全部入った欲張りなアイテム「Gフォン」は、ある意味で理想ともいえる玩具だ。従来の変身玩具の三倍もの能力を持っているのだから、なかなかすごい。
だが、わしはこいつが他の変身玩具の三倍も気に入ってるかというと、実はそうでもなかったりする。もちろん嫌いではないが、他の変身アイテムを大幅に越えた魅力があるかと聞かれれば、やはり「ノー」と言わざるを得ない。

なぜか。

それは、三つの要素をいれこんでいながら、それぞれが中途半端なレベルにとどまっている為、結局どの要素でも不満を感じてしまうからである。

 

まず「変身アイテム」としての部分だが、肝心の変身サウンドが物足りない。
収録されているサウンド自体が力強さに欠けるうえに、サンプリングレートが低いので、今ひとつ迫力がない。
ダメというほど悪くはないが、特別カッコイイ音でもなければ、印象に残る音というわけでもない。

それに、精霊の力を呼び寄せて変身する野獣戦士の道具が「携帯電話」というのはどう考えてもチグハグだ。
ガオレンジャーを導く巫女「テトム」にしても、物語が始まった時点ではテレビの存在さえ知らなかったのである。テレビも見た事がない人から携帯電話をもらう、というのはどうも納得がいかない。ギャグでやってるんならいいが、見た限りではそうではなさそうだし……。
変身アイテムというものは、ただ存在すればいいというものではない。やはり、そのキャラクターの特徴や能力といったものを感じさせる形状や機能をそなえたもののほうがいいと思う。

 

次に「変形トイ」としての部分だが、これは、形があまりカッコよくないうえに、本編で活躍しないのが問題だ。
邪魔な手足を背中側に折畳んでいるだけなので、裏面から見ると非常に不自然な形状をしている。自動車の変形トイなどでは裏面を見ずに済ませることも出来るが、手に持って遊ぶものなのだから、どうも気になる。
それに、アニマルタイプとかヒーロータイプとかいったところで、パワーアニマルやガオレンジャーそっくりに変形するわけではない。「パワーアニマルみたいな何か」「ガオレンジャーみたいな何か」としかいいようのない、不細工で中途半端な形状をしているのだ。「携帯電話から変形する」という変形機構自体の面白さは、イマイチというところだ。

それでも、その変形したキャラクターが、劇中で魅力的な活躍を見せてくれるのなら、多少は形がアレでも特に問題はない。特警ウインスペクターに登場した「デミタス」や未来戦隊タイムレンジャーに登場した「タイムロボター」などのような実物大のマスコットロボットとして登場したなら、これらの不満も解消できたかもしれない。
自分の意思を持ち、普段は携帯電話の形をしていて、主人公と常に行動を共にし、ある時はコメディリリーフとして愛嬌をふりまき、またある時は主人公を助けて意外な大活躍をする……そういうキャラクターであれば、もっと好きになれた事だろう。
だが、この変形形態は、変身シーンにイメージとして挿入されるだけで、変形したアニマルやヒーローが劇中で実際に活躍したりする事は一切ない。これでは感情移入のしようがない。

 

最後に「電話玩具」としてだが、これがまったくお粗末なものなのだ。
先にも述べたとおり、裏から見ると不自然な部分があるのも問題なのだが、それを除いた他の部分は、いかにも電話らしく出来ていて、非常に好感が持てる。
それよりも問題なのは、電話らしいギミックがほとんどない事だ。
キーを押すと「ピポパピポパ」というプッシュ音や「ピピピピピ」というコール音が鳴るだけで、その他の音声ギミックは全くないのである。せっかく携帯電話の形をしているのに、主人公のセリフなどは一切収録されていない。
せめて、ギンガブレスなどのように、パワーアニマルの吠え声でも入れておいてくれれば、かなり気分も違うだろうに……。電話ギミックが、チープトイと同等かヘタをするとそれ以下というのは、ちょっと寂しい。

わざわざ、「ガオレンジャーらしさ」を度外視してまで「携帯電話」というモチーフを選んでおきながら、その事がギミック的に全く生かされていないというのは、あまりにも残念だ。

 

 

三つの要素を一度に入れ込もうという、欲張りな発想自体は非常に素晴らしい。価格が従来の変身アイテムと同じである以上はどうしても限界があるし、結果として、それぞれの要素ではやや不満の残るものになってしまったが、それもまた仕方のないところであろう。
従来の変身アイテムを単純に継承するのではなく、新たな可能性を模索するという姿勢は、大きく評価できる。
色々と残念な部分はあるが、総合的に見てみれば、やはり面白い変身アイテムだと思う。
マンネリといわれつつも、こういう予想を越えたものが次々に出てくる所が、戦隊ヒーローの楽しいところだ。

 

 

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