電動ブローバックディクテイター


「ディクテイター」とは、1994年にテレビ朝日系で放映された特撮アクション番組「ブルースワット」で、主人公達が使用していた銃である。

この「ブルースワット」という作品は、それまでの特撮ヒーロー番組よりも対象年齢を大幅に引き上げ、小学校高学年から中学生をターゲットとしたリアルな作風が売りであった。

主人公達のスタイルは、ヒーロー然とした装甲服ではなく、現実に存在するスワット・チームの戦闘服そのものであった。英文字でネームのはいったユニフォーム、足には編み上げブーツ、手には指ぬきの皮グローブ、頭には「BLUESWAT」のロゴ入りキャップをかぶり、レイバンのサングラスをかけるという凝りようである。
戦闘時にはこの上に防弾用のアーマーベストとヘルメットを着用するのだが、このヘルメットがかろうじて特撮ヒーローらしさを出していたくらいだ。

光沢のある布地を使用していたのはちょっとアレだが、アリモノの迷彩服を使うのとはわけが違う。特撮ヒーロー番組としては考えられないほどの異常なリアルさであり、正直いって最初に番宣スチールをみたときには大変おどろいたものだ。

ストーリーもハードだ。

地球人の体内に侵入して、意のままに操る事のできるエイリアン達。彼らは人間社会にまぎれこみ、様々な陰謀をめぐらせていた。
このエイリアンを見つけ出し、人間の体から追い出して抹殺する秘密組織、それが「ブルースワット」だ。
だが、その活動が本格化した矢先に、組織の本部がエイリアンの襲撃を受けて壊滅!!情報操作によって事件は爆破テロとして処理され、脱出に成功した主人公達三人は事件の首謀者として死亡した事とされ、社会的に抹殺される。
だが、主人公達はその事を逆に利用して地下に潜伏。資金調達と情報収集の為のダミー会社「ブルーリサーチ」を設立し、脱出時に持ち出した対エイリアン用の特殊装備で恐怖のエイリアン軍団に立ち向かってゆく……。

しかし、本来ターゲットとしていた層の支持を得る事が出来ず、ハードなストーリーや銃撃戦を主体としたバトルは徐々に無くなっていき、中盤以降は全く違う番組のようになってしまった。それはそれで楽しませてくれたのではあるが……。

 

電動ブローバック排莢システム搭載!

対エイリアン用ブローバック式銃。
現在、エイリアンに対して絶対的なダメージを与えられる唯一の武器である。
地球製の弾丸が発射される際、特殊ユニットを通過する事により
エネルギーコーティングされエイリアンに有効打を与えられるハイパーブリットとなる。
セレクターにより、単発発射から1秒間に10発の連続発射に切り替える事が可能である。
(箱の解説より)

 

この玩具、まずパッケージからして普通ではない。見てもらえばわかると思うが、まるでモデルガンである。どう見ても幼児向けの玩具ではない、白と黒を基調とした渋いデザインが目を引く。番組名のロゴも、隅っこに小さく書かれているのみ。
写真ではわからないが、紙もエンボス加工されていて高級感がある。
日曜朝8時から放送されるヒーロー番組なのに「対象年齢7歳以上」というのもどうかしている。

箱を開け、中身を取り出してみると、また驚くことになる。
でかいのだ。
この手の銃の玩具は、普通もっとオモチャくさい形をしていて、しかも劇中に登場する小道具よりもずっと小さい、子供サイズになってしまっているものだ。
しかしこの「電動ブローバック ディクテイター」だけは違う。
なにしろ大人が握っても大きいと感じるほどである。明らかに高い年齢層を狙っているのがわかる。

マガジンにカートリッジをつめてみよう。
このカートリッジが金属製なのだ。弾頭部分は紅い透明プラ製で、人造ルビーとチタンを併用したアーマーピアシング弾という設定を実感させる。
一発一発つめていくと、もう完全にモデルガンのノリである。イイ感じだ。
バレル下の電池ボックスにバッテリーをいれ、装弾したマガジンをセットする。
射撃準備は完了だ。

トリガーを引くと銃口が発光し、同時にスライドが後退、カートリッジが排莢される!
モデルガン人気が下火になってしまった今ではなかなか味わえない痛快な瞬間だ。
バシバシ撃って10発の弾を撃ち尽くすと、なんと!スライドがホールドオープンして止まるのだ!!これにはマジで驚いた。もう完全に幼児向け玩具ではない。

いったんスイッチを切り、マガジンを抜こう。
ちゃんとマガジンキャッチを押さないと抜けないようになっているあたりが素晴らしい。

さて、もう一度装弾したら次はお待ちかねのアレだ。
さあ、セレクターをSからAに切り替えよう。
トリガーを引いたままにすると……フルオートで連射できるのだ!!
外で撃ったりすると地面に落ちたカートリッジがチリンチリンチリンとイイ音をたてるゾ!!
ハッキリいってメチャクチャ痛快!!
あまりの気持ちよさに、わしは思わず予備弾と予備マガジンをバンダイに注文してしまったくらいである。
セレクターがセミオートとフルオートの切り替えのみで、セフティがついていないのは残念だが、金属製カートリッジを連続で飛ばすリアルな銃の玩具だなんて、モデルガンメーカーですらやらなかった快挙を成し遂げた前代未聞の傑作トイだ。銃が好きならマジで一挺買って損はない。

これは本当に凄い玩具なのだが値段も凄くて、当時の定価はなんと7980円もした。
もうまるっきり幼児向け玩具ではない。
しかし、こんなに素晴らしいのに、番組自体に人気が出ず、高価で、しかも初期ロットには欠陥があったりした事もあって、気合とは裏腹に大コケしてしまった。それに加えて現在ではPL法があるため、おそらく今後同種のトイが登場する事はないだろうと思われる。

売れ残りを見付けた時には即座に購入する事を強くオススメする。

 

 

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