ヤダじぃのひとりごと
成功した外来患者支援体制:「梅の里」日中利用

平成26年8月16日

   当院には通院患者さんのための強力な支援システムが稼働中である。それは、自立訓練事業所「梅の里」通所型である。もともと、「梅の里」は宿泊型の入所施設であった。そこに、外来患者さんが利用可能な通所型のプログラムができたのである。デイケアに似た設備ではある。と言っても、稼働し始めて3年近くになるのではあるが。
   Aさんは統合失調症で通院中である。「梅の里」で数ヶ月間入所生活を過ごした後、単身アパート生活を始めた。もう発病して25年くらいになる。過去には数回の入院歴があるが、いったん悪化の兆候が見られ始めると、みるみるうちに増悪し、閉鎖病棟に入院せざるを得なくなる。入院してもすぐには良くならず、大量の抗精神病薬を必要とし、入院期間は年単位に及ぶことも多かった。そのAさんに、また悪化の兆候が現れたのである。当然入院かと思わせたが、「梅の里」のスタッフは、自宅にAさんを迎えに行き、日中のプログラムには参加できるような状態ではないため、訓練室で休んでもらい、夕食を食べてもらったあと、服薬させて、お家まで送り届ける。そして、夜9時になると、就寝前の薬を飲むように促す電話をかける。これを土日も含め、連日繰り返した。もちろん、外来で薬の調節も行っている。そうこうしているうちに、病状が落ち着き始めた。結果的に、入院せずに済んだ。Aさんにとっては初めてのことである。感激した。
   Bさんは12年間にも及ぶ入院後に退院した統合失調症の患者さんである。単身アパート生活を送っている。入院中は幻聴や妄想にしばしば支配されトラブルを起こし、油断すると服薬しないこともある人だったが、退院後は土日を含む週4日間、送迎で「梅の里」を利用し、服薬も「梅の里」で行っている。訪問看護も組み合わせて利用している。今のところ日々穏やかに過ごしている。
   Cさんは引きこもりがちで乱れた生活を送っており、デイケアを勧めるも、1、2回しか来られず、その後、病状が悪化して入院した。退院後は「梅の里」の利用をすることになった。まだなかなか自分だけでは来られないが、外見が見違えるように綺麗になった。
   「梅の里」は、デイケアや訪問看護では再入院を抑止できない患者さんであっても有効なことがあると確信している。状態が悪化すると、デイケア通所が途絶えたり、訪問看護を拒否したりし、結果的には更に悪化して再入院となる例はこれまで多かった。しかし、「梅の里」は違う。土曜日曜も稼働している、訪問支援もあり、そして送迎機能を持つため、より積極的な介入が可能になる。来なければ、お家まで行く、連れに行く、これでずいぶん違う。規則的な生活、食事、服薬、そして個別の密な関わり。これだけで十分であることが立証できた。「梅の里」スタッフの半端ない努力に敬意を表したい。また、電子カルテを通じた、病棟の看護記録に劣らぬ詳細、頻回な報告も「梅の里」の有用性を際立たせている。
   救急病棟や急性期病棟は入院期間に縛りがある。十分に病状の改善がなくても退院させざるを得ないことも多い。さらに、今春の診療報酬改定で退院後3ヶ月以内の再入院は許されなくなった。こうなるとどうしても、救急あるいは急性期病棟から退院した患者さんの外来での支援体制の充実を図らざるを得ない。通所型「梅の里」はこういった時にも利用価値が十分あると期待している。
   デイケアや訪問看護は医療であるが、「梅の里」は福祉サービスである。福祉サービスは医療が困難な課題を解決しつつある。このすばらしい「梅の里」のサービスを今後も是非継続して欲しいものである。

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