ヤダリンのひとりごと
ゼプリオンによる死亡は回避可能か

平成26年4月9日

   持効性注射剤ゼプリオン発売後4ヶ月半の間で17例の死亡が報告された。因果関係は不明であるとされている。しかしながら、関係あるものも多いのではないかと推測される。死亡はゼプリオン投与開始後3〜43日と比較的早い時期に起きている。海外では数年前から使用されているが、こんなに多くはないらしい。ということは、人種差の問題か、それとも使い方の問題かということになろう。
   ヤンセンファーマから発表された11例の死亡症例概要をながめてみた。11例中6例がコンスタからの移行であった。ゼプリオン投与例の約半数はコンスタからの切り替えと言われているので、これが特に多いとは言えないだろう。ただ、6例中3例が等価換算1:2以上の用量で投与されていた。それと、経口併用薬が多いのが気になる。ほぼ全例に抗精神病薬が併用されていた。そして11例中6例もがゼプリオン以外の併用抗精神病薬が2種類以上であった。ここにも悪い習慣である多剤併用が現れている。中に、ゼプリオンとハロマンスの持効性注射剤2剤の併用という例があった。また、ゼプリオン開始時の経口併用薬がインヴェガ12mg+リスパダール9mgなどという例があった。いずれも一瞬、記載ミスかと思ってしまった。もう一つ気になる症例。それは、食事も水分もあまり入っていない病状不安定な患者の入院時にゼプリオンの初回投与を行っていることである。それから、ゼプリオン開始前にインヴェガの経口薬の投与例がほとんどないのも気になる。
   以上のことから、死亡例を限りなく減らすためには、ゼプリオンはインヴェガの持効性注射剤であるから、インヴェガ単剤で精神症状が十分安定している例に使うことが望ましい。公表された死亡症例11例でこれを満たしている例はゼロである。特に急性期での使用は、過去にインヴェガでの有効性が確認されているものの怠薬や拒薬により再発した例に限るべきであろう。そもそも急性期症状を持効性注射剤でコントロールすることは難しい。持効性注射剤は拒薬する患者に打つものではない。同意は必ず得るべきである。身体的に疲弊した状態での開始は避けるべきである。もう20年ほど前に、ハロペリドールの持効性注射剤であるハロマンスを、他院外来で、拒薬を伴う急性期症例に打って悪性症候群を起こし、当院に入院になったことが続いたのを思い出す。そして、併用抗精神病薬はできる限り少ないことが望ましい。コンスタはリスパダールの持効性注射剤であるが、基本的にリスパダールとインヴェガはイコールではなく、有効症例は必ずしも重なるとは限らないので、コンスタからの切り替えも一応注意すべきである。そして、もし切り替えるのなら、1:2の換算は守るべきである。
   以上の点に注意すれば、死亡例は確実に減らすことができると考える。非常に有用性の高いと思われるゼプリオンを不安がる患者さんが出てきたり、使いにくくなることが一番の問題である。

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