ヤダリンのひとりごと
2011年をぼやく

平成23年12月31日

  あまりにも早過ぎる1年間だった。このホームページもついに今年は年末1回のみの更新となってしまった。とにかく忙しかった。自分では人から言われるほど多くの患者さんを診ているとは思わないが、何が忙しいか。それは、書類作成である。1日2度出勤しての深夜の書類作成が続くことがあった。月2回ほどは、朝方まで書類作成に時間をかけることもあった。それでも終わらない。当然、書類作成は、法的に提出期限が設定されているものが優先される。最大7ヶ月待たせたことがある。裁判所から何度も督促状が届いたが放置。最後に電話がかかってきたが無視した。もし電話に出たら、怒鳴り返したかもしれない。だいたい、成年後見制度利用のための鑑定書の作成料を医師自らが選択するのはおかしい。私としては何万円もいらないので、あんなややこしいものを書かせるのなら、期限をもっと長くしろと言いたい。電子カルテになり、作成が容易になった書類と、逆に時間がかかるようになったものがある。現在の電子カルテの最大の難点は、紙カルテのようにさらっと全体を見渡すことができないことである。「この頃に、たぶんこういうことがあっただろう」と思って、カルテ上、その該当箇所を探すのに手間がかかり過ぎる。すごく時間をかけて探しても、目的とする箇所が結局見つからないことも多い。そして、結局あいまいな記憶に基づいての記載になってしまう。マーカーを多く作ること、付箋機能を作ること、検索機能が充実することが解決策であろう。今は5色のマーカーを日付の横につけられるに過ぎない。せめて、字体や文字の大きさ、色、太さなどが変更できたり、アンダーラインが引けるくらいの機能を持たせて欲しい。あるいは、まるで紙カルテをめくっていくように簡単に全体が見渡せるようなシステムを構築して欲しい。電子カルテ会社さん、頑張ってください。自立支援医療費制度、障害者福祉手帳の診断書に関しては、院内の書類フォーマットのできが悪い。字体、大きさなどが不揃いかつ不適切である。機会あるごとに文句を言っているが、全く改善されない。この種の診断書は、すべて自分でフォントなどを整え、自分でプリントアウトしている。人にまかせられない。しかも、自立支援の診断書の様式は全国的に4月に変更されているはずだが、いまだに、広島市以外の広島県内、山口県の書式は古いままである。いったいどこに問題があるのか。これも文句を言い続けているが、全く改善されない。障害福祉サービス受給のための医師意見書や介護保険の診断書は、何を要求しているのか不明な点、生活状況など、そもそも医師が判断困難な点がある。作成終了時に不全感が残る診断書である。介護保険の診断書は電子カルテでの作成なのに、福祉サービスの意見書は、なぜ手書きなのか。今年は、障害年金の新規申請が異常に多かった。障害年金の新規申請の診断書は、部分的に手書きにするのが早いと思う。さらに、今年は診断書に基づいて決定された障害者手帳や障害年金の等級についての不満も患者さん側から出ることが多かった。役所の窓口で「ここがこう記載されているのでこういう結果になった」と説明を受け、結局、書類作成した主治医のところに苦情がくる。まるで、等級の決定権を主治医が握っているかのような誤解を受けている。等級の決定は役所であり、公的な審査会である。そして、新しい様式は、年金も手帳も就労状況の記載が求められるが、ここの書き方は結果に大きな影響を及ぼす。ほんの短時間でも働いていることを書けば、等級が落ちる可能性が高い。実際、精神障害に罹患すると、さまざまな理由で、能力は落ちることが多い。一言で働いていると言っても、健常時ほど仕事の能率が上がらないことが多い。なかなか新しいことが覚えられなかったり、スピードについていけなかったり、間違いが多くなったりする。それに周囲のサポートがなければ、なかなか続かない。健常人に比べると収入にもなりにくい。いわゆる生活障害とか能力障害と言われているものである。我々は、アルバイトを始められるほど回復したことを患者さんと一緒に喜ぶのであるが、これを診断書や意見書に書くことには、患者さんの不利益につながるので注意を要する。診断書ができあがった連絡がないという苦情も多かった。何件も同様の苦情が多いと、窓口対応がどうなっているんだろうと思わざるを得ない。年末になり急に多くの書類作成依頼が加わり、結局、未処理の書類をたくさん残したまま、年を越すことになってしまった。入院患者や外来患者の診察時間以外に、書類作成のための時間枠を作るべきである。

  今年も病院でいくつかのイベントがあった。受付業務の外部委託化、院外薬局の設立、医療機能評価更新のための受審、広島市認知症疾患医療センターの併設、そして、就労継続支援事業所(トレペンネ)のオープン。すごい勢いでさまざまな変化が起きている。どうしても消化不良気味になってしまう。気づくと、病棟スタッフも大きく変わっていた。なぜ顔なじみの人達がこんなに少なくなったのか。顔なじみのスタッフがいるのといないのとでは安心感が違う。最近は、知らない人には話さなくなった。見知らぬスタッフに話すのがおっくうなのだ。ご高齢の患者さんが増えた。ご高齢の方は必ずと言っていいほど身体合併症を有する。重篤な合併症を有する患者さん、あるいは合併症管理がメインの患者さんを精神科病院で診るわけにはいかない。それが、一般科の先生には理解されていないようである。内科の常勤医はてんてこ舞いである。内科常勤医の充実も望まれるところである。また、訪問看護に期待することは多いが、全く顔を知らないスタッフが多く、意思の疎通がはかりにくい。訪問看護ステーションには直入職よりは、ある程度の病棟勤務経験者の移動が望ましいと考える。また、せっかく作られた訪問看護の報告書が電子カルテ上で見られないのも残念である。これがすぐ参照できれば、各種診断書の生活状況の記載にも役立つであろう。

  以上、文句ばかり書き並べてきたが、医局内の教育システムは充実しつつあると思う。大学から来られた先生方が精力的に取り組まれた結果である。教育は大切である。常勤非常勤合わせて精神科医が22名にもなった。これまで違う世界で働いてきた先生方から学ぶことは多い。私としては、今後、認知症、発達障害、パーソナリティ障害などを身近にいる専門家からもっと学んでいきたいと思う。

  今年は17の講演を行った。そして38の講演を聴講した。講演準備は、頭の整理に役立つ。講演を聞くのは、文字を読むよりインパクトが強い。最近は、診療や治療に関する情報源は講演の聴講とインターネットが主になってしまった。私は今の病院に勤務して、24年目になる。こんなにも長く一ヶ所の病院に勤務する医師はめずらしいようだ。長期に患者さんに関わることで見えてくるものを今後のテーマにしていきたい。

  医師になって初めて、体調不良で欠勤した。2度目の尿路結石である。真夏のことだが、あまりもの痛さに耐えられず、一睡もできずダウンしてしまった。体外衝撃波結石破砕術(ESWL)を希望するかと聞かれたりもしたが、そのままにしておいた。最近でも忘れた頃に、ペニスや睾丸の痛み、頻尿や残尿感がくるので、まだ排出されていないのかもしれない。視力も更に悪化した。重複がひどくなり、夜間の運転など嫌であるが、なかなか視力検査には反映されない。苦痛や生活のしづらさが必ずしも医学的な検査で表現されないことがあるのを実感する。もう一度、初めて眼鏡やコンタクトレンズを使った時のような、あざやかで明瞭な視野を経験してみたいものである。今年は、全く不整脈を感じることがなかったのが良かった。

  来年は、時間をかけない(=話をあまり聞かない)診療、書類作成の効率化、少し時間的にゆとりのある生活を目指したい。

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