ヤダリンのひとりごと
患者層
平成11年11月23日

 勤務先の病院では、2000年2月末の完成を目指して新病棟の建築が予定通りに進んでいる。この新病棟は7階建てであり、7階にはストレスケア個室病棟と名づけた、ビジネスホテルタイプの開放個室病棟ができる予定である。ここは入院費とは別に個室料がかかることになっている。いったいこの病棟にどんな患者さんが入られるのか。これまで、人格障害の方が入られるとか、ストレスによる神経症の方の休養を目的にした病棟だとか、院内でさまざまなことが言われてきた。昨日の会議において、院長により最終的な確認がされた。疾患名にはよらない。開放病棟になじむ患者さんなら、精神分裂病であろうとうつ病であろうと神経症であろうとかまわないことになる。ただし、高齢の痴呆の方や身体合併症の治療が主になる方は対象外である。開放病棟での療養が適切かどうかは医師が判断する。私はほっとした。少し前には、精神病院というイメージを取り除こうとしていたようだが、もともと、勤務先の病院は精神病院であり、たとえ老人性痴呆疾患の病棟が110床増えるにしても、個人的にはやはり精神病院であって欲しいのである。私は精神病院が好きである。そして精神病の治療に情熱を注いでいるつもりである。(周囲からはそう見えないかもしれないが・・・)
 ところで、私は今の病院に勤務して11年半が経過したことになる。1つの病院に長くいるとどうも精神病院の患者さんはこんなものだと思い込んでしまうのであるが、実は私の勤務先の病院の患者層は、他の精神病院とはかなり違っているようである。とにかく患者さんもスタッフも若いのである。先日、他の病院の精神療養病棟の見学をさせていただく機会を得たスタッフによれば、なんとその病棟の平均年齢は70歳ということであった。私の勤務先の病院では、老人精神病棟を含めても、平均年齢は約20歳以上は若い。また、全国の統計によれば、10年以上の入院者が30%以上を占めているということだが、勤務先の病院では10%にも満たない。もちろん、精神科としての歴史が26年と浅いことがその理由としてあげられるかもしれない。ジスキネジアという薬の副作用を有する患者さんや肥満者が他院よりも少ないとも言われている。また、喫煙者の割合も精神病患者さん一般について言われているよりもはるかに低いのである。精神分裂病の患者さんの割合は他の精神病院と大きな差はないようだが、患者さんの層は明らかに異なり、若くて、発症したばかりのり患年数が少ない者が多い。このことは、我々の治療により将来が大きく変わる可能性のある、人生の過程で非常に重要な時期におられる方が多いことを意味する。それは、より慎重に真剣に取り組まなければならないという思い、患者さんに本当に病気が良くなって充実した人生を歩んで欲しいという願いにつながり、私の精神病治療への意欲がかきたてられるのである。このホームページを作成するエネルギーも、今の病院に勤務しているからこそ生まれてきたものであろう。

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