ヤダリンのひとりごと
2005年をふりかえり…
平成17年12月30日

   ホームページをほとんど更新しないうちに今年も終わろうとしている。なんとしてでも今日更新しなければならない。これまでも、あまりにも早く時が過ぎてはいたが、さらに今年は早かった気がする。昨年より更に30%くらい早かった。かと言ってそんなに仕事をした記憶もない。おそらく本来業務の診療以外にやることが多かったからかもしれない。仕事は遅れがちで、期限のある書類もついぎりぎりで提出することが多く、ずいぶん迷惑をかけた。出勤直前に書類書きをすることもけっこうあった。それにしてもさまざまな書類作成に忙殺された。多くの文書は活字だが、手書き文字の乱れはいっそう進んだ。今年から研修医の先生が来られることになったが、十分に対応できなかった。ところで、先日、外来終了時刻が過去最も遅く午後10時過ぎになってしまった。これまた周囲に迷惑をかけてしまった。メールの返事などほとんどできない状況が続いた。申し訳ない。ホームページのQ&Aもかなり古くなったまま放置されている。年賀状は昨日の朝、やっと投函した。何故か、パソコンに準備されている多くのフォントがかなり使えなくなっているのだが、原因がわからない。結局、宛名が明朝体になってしまった。ウイルスでもないようだが、過去にもほとんどのフォントが失われてしまったことがある。どうやって復元したのか忘れてしまった。「システムの復元」では戻らない。(ついさきほど、明朝体まで失われたことを確認。どうしよう。)私は今年で46歳になり、ますます頭髪は薄くなった。先日、自分の写真を見て仰天してしまった。(こんなにひどいとは思わなかった!)なんて自分に無関心なんだろうと改めて思った。少ない髪に白髪が混じっている。毎日の生活では出かけることが多かった。昔の引きこもりの自分からは信じられない変化だ。東京に6回も行った。昨年まで不安だった飛行機にもようやく慣れた。8月には東京ディズニーランドに行った。自宅の自分の部屋は散乱し放題で、先ほどやっと多少整理したつもりでいる。歩ける床面積が少し増した。気分のゆとりがなくても、時にとても寂しくなることがあった。めずらしく12月に、3回も大雪が降り、慣れないバスに乗ったところ、窓はくもって外が見えず、降りる停留所を間違え、雪道を相当歩くというポカをしてしまった。
   さて、統合失調症の薬物療法に目を向けると、新規抗精神病薬(非定型抗精神病薬)4剤が発売され4年以上経過し、急性期も維持期も新規抗精神病薬による治療は当然のことになり、治療者は皆、その使い方に習熟し、ある程度共通した認識を持つようになった。と思う。まだそう言えないかもしれないが。試行錯誤の時代は過ぎ、ようやく落ち着いてきたと言えよう。今年は、新規抗精神病薬の剤型が増えた。ジプレキサのザイディス錠(口腔内崩壊錠)とリスパダール液の分包品(チューブに入っている)の登場である。いずれも服薬の際、水を要さない。かなり薬に拒否的な人でもザイディスなら飲んでもらえることが多い。結構患者さんから人気がある。人から聞いて、これに変えて欲しいという例もあった。また、リスパダール液が即効性を発揮する場合がある。絶対入院が必要と思われたのに急性増悪期を数日で乗り切り入院を回避できたり、被害関係妄想を持ちしんどい時に頓服として飲み、30分後に錠剤ではわからなかった効果を実感できたとレポートしてきた患者さんがいた。相変わらず、私は、今年もジプレキサをファーストチョイスとして使うことが多かった。このやり方は定着した感がある。当然、うまくいかないこともあるが、その場合は他剤に変更するタイミングが大切だと思う。一言で言えば、ジプレキサは、「治療導入をスムーズにする。そして、患者さんに優しい。生活をしやすくする。本来の自分や人間らしさを回復させる」薬であると要約することができる。さらに、患者も家族も治療者も皆が楽をでき、治療者は感謝されることが多い薬である。ここでは詳細は省略する。ただ、代謝系の副作用は多いようなので注意は要する。肥満、高血圧、高脂血症、糖尿病などが起きやすく寿命を短くするなどと強調する人達がおり、当然それを無視することはできないが、本来の自分が回復でき、安定かつ充実した人生が楽しめることを期待する患者さんが多いのではないか。確かに代謝系の問題はあるものの、重本病院の杉山先生がよく口にされるように、その対策は、一般人が生活習慣病を予防したり改善するのと同様の考え方なのである。そんなに軽視していいのかと、これまたジプレキサがファーストラインとはなり得ないと主張される方から批判を受けそうである。結局は、患者さんにメリットやリスクを説明の上、何を望むかによって治療薬剤を選択していくことになるのであろう。ただ説明の際、説明する人がどういう考え方をしているかに大きく影響されることであろう。
   先ほど、うちの病院の外来レセプトチェックをしていたが、ずいぶん単純な処方が増えたものである。ジプレキサ10mg錠が一日1回1錠だけとか、リスパダール2mg錠が一日1回1錠だけといった具合である。とにかく簡単なレセプトが増えた。素晴らしい。パーキンソン症候群の傷病名もあまり見なくなった。また、外来に精神病以外の人が増えた。認知症、うつ病、不安障害、パニック障害、強迫性障害、適応障害などの主病名が並んでいる。ちなみに、草津病院の最近の初診患者の疾患分類を調べてみると、統合失調症圏は、10〜15%くらいであった。初診10人に1〜2人くらいしか統合失調症の人はいないのである。精神科病院は統合失調症を診ていればいいという時代は過ぎたようである。しかし、患者総数が多いから、統合失調症が精神科医療の中心であることは変わらないであろう。
   今年は、就労する患者さんが多かった。短時間ではあるが数年ぶりにアルバイトを始める人が何人も現われた。これがまた、皆、ある程度続いているのである。出産した女性患者さんも2人いた(一人は主剤がリスパダール、一人は主剤がセロクエルである。)2人とも母子ともに順調に経過している。
   年明け早々に新しい精神科医が就任する。これまで自分が治せなかった患者さんを治してもらえるチャンスかもしれない。些細なことがきっかけで病状が改善したり退院可能になることはこれまでも経験してきた。また、診療情報管理室なるものが院内に開設される予定である。単科の精神科病院ではめずらしいらしい。診療情報管理士もまもなく誕生しそうである。医学を学んで来なかった事務の方には相当難しい試験のようなので頑張って欲しいものである。さまざまな統計情報がより利用しやすくなることが期待される。私は統計が大好きである。なぜなら、統計は「印象」を直ちに「目に見える形」に変えてくれるからだ。そして、秋には医療機能評価認定の取得5年後の更新のための受審がある。これはかなり大変そうである。要求される水準はかなり高いところにある。
   それから、4月にはいよいよアビリファイが発売される。患者さんはこの名前をよく知っている。よく話題にされる。この薬ほど、待ちわびられた薬はないであろう。もう2年も前から今年は出ると噂されながらすっぽかしを食らってきた。日本で開発された薬であるのに、日本で発売される前にすでに海外数十か国以上で使われている。当然使ってみないとわからないが、おそらく精神症状の効果を期待するというより、これまでの薬で副作用が出やすい人が一番恩恵を受けるのではないだろうかという気がする。おそらく年が明けるとさまざまなデータが呈示されるであろうが、特に認知機能障害の改善や長期投与での効果や再発率がどうなのかに私は注目したい。おそらく作用機序がこれまでの薬と異なるので、切り替え法も特異なものになるのだろうか。しばらくは、また試行錯誤の時が続くであろう。
   来年は、まず楽をして、少し考えるゆとりを持ちたい。楽をしようとする過程で、素晴らしい気づきや工夫が生まれるというのが私の考え方である。そしてあまり期待はできないがホームページの更新にも少しは時間をとりたいものである。

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