ヤダリンのひとりごと
閉鎖病棟の処遇について思うこと
平成16年11月3日

   閉鎖病棟の看護師さんから、A君をカラオケに外出させたいがいいかとの問い合わせがあった。また、別の看護師さんから、Bさんの冬物の衣類をとりに、Bさんの家まで一緒に行く外出許可が欲しいとの話があった。私は一瞬、驚いた。なぜなら、わざわざ一人の患者さんをカラオケに連れて行ってくれるなど思わなかったからだ。衣類をとりに家まで行ってくれるなど予想もしないことだったからだ。A君もBさんも閉鎖病棟に入院して外出したことはない。A君の場合は、私もご家族も、家族とだけの外出には不安があった。Bさんの場合は、ご家族に同伴外出をお願いするのは困難な状況であった。以前なら、こういう場合、もっと病状が安定するのを待つか、院内の売店などで衣類を購入することになったであろう。いずれも、看護者から許可願いという形での依頼であった。
   閉鎖病棟は鍵がかかっていて自由に外に出ることはできないが、病状に応じて、家族同伴あるいは単独で外出や外泊ができる。患者さん一人で院内外出することも状況によっては可能である。昔は、閉鎖病棟から一人で外出するなど考えられなかった。同じ閉鎖病棟でも昔と比較すると、ずいぶん自由度が高くなった。そして、開放的な処遇にも、より多くのステップができた。家族同伴の外出、外泊に加え、単独での院内散歩、さらに、最近ではスタッフ同伴での院内散歩や外出が加わった。こうして、単独や家族とでは外に出られない患者さんでも病棟外や病院外に出られるようになったのだ。外に出られるようになると、気分が落ち着き、病状の改善もより加速するように思える例は多い。職員の数が増えたから個別的な対応が可能になったこともあろうが、スタッフも意欲的になったと思う。数年前から看護師も受け持ち制になり、自分の患者さんをいかにいい方向に持っていくか熱心に取り組むスタッフが多くなった気がする。まだまだ不安定な患者さんでも看護師が病棟外に連れ出している姿をよく見かける。
   すみやかな病気の回復や社会復帰を実現するのは、新規薬剤(第二世代の薬剤、非定型抗精神病薬)を中心に処方することはもちろんのこと、看護師を中心とするスタッフの熱心な個別的かかわりや、開放的な処遇や病棟環境が大きく影響すると思う。私の勤務する草津病院では、閉鎖病棟でも原則24時間、電話をかけたり喫煙することが可能だが、病院によっては夜間9時までしか電話や喫煙ができないところもあるらしい。施設により、ずいぶん処遇に差があるように思う。
   最近、多くの精神科病院がとても綺麗で広い建物を新築している。草津病院が4年半前、西館をオープンした時、凄いと思ったが、今となってはあちこちに同様の精神科病院がある。まもなく、草津病院では閉鎖病棟の隔離室を改修すると聞いている。最初にあるいは急性期にすごす環境が快適になり、病気の回復がさらに早くなることを期待したい。

   今年も残すところ2か月となった。あと院外での講演が4件残っている。南区、東区の精神保健福祉ボランティア養成講座、そしてジプレキサの急性期における有用性に関する延岡と福岡での講演である。
   やっと、ホームページを更新できた。ますますスローになったように思う。最近、このホームページが知られすぎてしまい、それを意識して書きにくくなったことも理由の一つではある。今日、更新できて、ちょっとは落ち着いた。

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