ヤダリンのひとりごと
インターネットによる学術講演会『ZEEP』を視聴して
平成15年3月30日

 今日は非常に充実した日曜日であった。非定型抗精神病薬であるジプレキサを発売しているイーライリリー社が主催する、京都での学術講演会(ZYPREXA Experience Presentation Program=『ZEEP』)が3時間にわたりインターネットで生中継され、自宅にいてそれを視聴することができた。インターネットは現在、ブロードバンドの時代に入り、動画や音声、ライブカメラによる風景の中継などが提供されているが、テレビ同様のこうした長時間にわたる生中継が可能だとは思わなかった。これは感動的な素晴らしい企画であり、講演会を生で視聴しながら、パソコン上でメモをとり、場合によってはスライドをコピーすることも可能である。講演会が始まる13時過ぎまで、本当にこのパソコンで視聴できるのかと不安であったが、無事、終了まで参加できた。学術講演会がこうして自宅で生中継で見られるとは、すごい時代になったものだ。インターネットを介し質問も受けつけるという双方向性を有している。これなら外に出かけていく必要はない。私は、出かけるのが苦手なので学術講演会にこれまでほとんど参加しなかったが、インターネット中継なら簡単に視聴することができる。講演会が非常に身近に感じられた。
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 常盤病院副院長の石郷岡純先生を座長とし、山口県立中央病院精神神経科診療部長の兼行浩史先生、春日診療所・神経科科長の遠山照彦先生、函館渡辺病院医長の板橋栄治先生、大阪市立大学大学院医学研究科神経精神医学助手の勝元栄一先生、報昌会本舘病院副院長の阿部佐倉先生、以上5名の先生方の講演があり、その後パネルディスカッションが行われた。
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 ジプレキサは、1996年にアメリカで発売、2001年6月に日本で発売され、世界で1200万人に処方されたという。すなわち膨大な使用データが既に存在することになる。講演全体としては、ジプレキサの有効例を前面に出した形となっていたが(発売元の会社が主催のため)、治療初期からの使用というよりも途中からのジプレキサへの切り替え症例が多かった。そして切り替えの前は、リスパダールをまずファーストチョイスとしている傾向があった。リスパダールでも副作用が出る場合、なお効果が不十分な場合、多剤大量投薬になっている場合などにジプレキサに切り替えられていた。そして血糖、体重増加については非常に注意が払われていた。血糖値の上昇が問題になることはほとんどないようであったが、体重増加は多くの症例にみられていた。急性期症例の紹介もあった。全体を通じて、やはり非定型抗精神病薬単剤処方の重要性が強調されていた。と同時に適切な用量を使用することが強調されていた。すなわち、安易な薬物の増量にならぬように注意すべきだということである。薬を減らして良くなる場合もあるとされる。さらにこれもよく言われることだが、抗コリン薬、すなわち副作用を覆い隠すようなものを併用しないことが大切だとの話があった。中には抗精神病薬を併用せざるを得ない例もあるが、ジプレキサと少量のリスパダールを併用をされている先生がおられた。これまでなら長期間入院となり病院に沈殿していく可能性のある例であっても、早期から非定型抗精神病薬を使用することでそれを防ぐことが可能になろうという印象も受けた。切り替えで効果があったという報告が多い中で、よく話題になることだが、急性期の薬物療法のあり方がパネルディスカッションで取り上げられていた。服薬してもらえない場合にはお手上げで、注射剤のある従来薬を使用せざるを得ないこともあるだろう、とかベンゾジアゼピン系や睡眠薬を補助的に使用すること、またどうしても必要な場合は、低力価の従来薬の併用もやむを得ないこともあろう、リスパダール液剤を使用する、などが取り上げられていた。私は、最近は統合失調症患者さんの入院時にはしばらくの間、ほぼ全例にリスパダール液を使う傾向があり、非常に有用であるとの印象を持っている。
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 現在、私が持ち合わせている知識とほぼ同様の内容ではあったが、私自身はやはり非定型抗精神病薬の中では現在、リスパダールを主体に使っており、今後、ジプレキサの有用性についてさらに検討していきたいと思った。リスパダールが最初そうであったのと同様、私の使い方に問題があるためにジプレキサの力が十分に引き出されていない可能性が大きいからである。
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 本当に充実した3時間であった。今後も、全国をインターネットで結んだWeb放送をもっと企画して欲しいし、参加してみたいものである。さらに、インターネットや携帯電話など情報通信技術の更なる発展を期待し注目していこうと思う。

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