ヤダリンのひとりごと
院内研究発表会
平成14年3月3日

 2月28日木曜日、第一回草津病院研究発表会が開かれた。私は、関心があったので午後の予約外来を休診にして覗かせてもらった。昨年までは、看護部教育委員会による看護研究発表会が行われていたが、今回からは看護部のみならず、さまざまな部署も加わり装いを新たに再出発したわけである。演題は12題で3群に分かれ、午後1時から約3時間に及ぶ大がかりなものであった。以下、ごく簡単な概略と感想を述べてみたい。内容を具体的正確に記述したものではないことをお許し願いたい。

 薬局からは、SPD(Supply processing &distribution)という医薬品の購入、搬入、管理を一元化し、それをパソコンによりデータ管理するシステムを導入することで、医薬品購入管理業務が能率良く行えるようになったという報告であった。平成13年4月より、本システムを採用しているとのことだが私は全く知らなかった。県下の病院では初の試みということだ。話はそれるが、ここ数か月、当院の薬局は閉鎖病棟で積極的に服薬指導を行っている。数年前には薬剤師さんが、閉鎖病棟に入ることなど考えられなかった。診察時に薬剤師さんのことを楽しそうに語る患者さんも出てきている。閉鎖病棟での服薬指導が病状回復過程にいかなる影響があるものか注目していきたい。
 作業療法部からは、痴呆病棟で家族を含めた昼食会を企画し、患者さんの生き生きとした姿を具体的症例として報告された。この昼食会についてもこの発表で初めて知った。
 衛生委員会からは、院内喫煙調査の結果が報告された。職員の喫煙率は一般国民と比較しかなり高いとのこと。日本看護協会による喫煙率とはほぼ同じということだが、タバコを吸う看護婦さんが多いことを意味する。確かに近づくとタバコの臭いのする看護婦さんがいる。これってどうかなって思うことがある。演者からは職員に対する禁煙プログラムの導入が提案された。
 心理療法課からは、平成13年4月から12月までに心理面接を受けた138名の統計的特徴についての報告があった。圧倒的に20代、30代の若い女性が多い、診断的には神経症や人格障害の者が8割以上を占める、約4割が本格的な面接に入る前の導入の期間に終了している、それを越し約1年近く面接を継続した例の過半数が何らかの改善を示すなどの傾向が述べられた。心理の事例検討会に参加したことがあるが、一人1時間近くに及ぶ面接を毎日数名ずつ行うことは大変なエネルギーを要すると思われる。臨床心理士の先生方のストレスもまた大変なものであろう。
 医療事故防止委員会からは、与薬エラー発生要因マップを用いての分析結果について報告された。医療事故のニュースが毎日のように報道されている。当院の医療事故防止委員会は平成11年7月に発足し積極的に活動を行っている。ところで、先日明らかにされた平成14年の診療報酬改正要項によれば、「安全対策指針整備、医療事故等の院内報告制度整備、委員会開催、職員研修開催」を行わなければ「医療安全管理体制未整備減算」として病院に入る入院基本料が減額されることになるらしい。医療界全体で今後ますます事故対策が重視されることになろう。
 栄養課からは、魚の嗜好調査の報告があった。10か月間にわたり、各病棟の残飯バケツから形の残っている魚を数えるという大変な作業を行い、その結果を多くのグラフにより示された。まず聞くことのないめずらしい報告であった。
 A病棟(内科老人病棟)からは、ゼラチンを使い独自に作成した安眠枕により、夏にオムツ内の温度を下げ睡眠状態を良くしているとの研究報告がされた。
 B病棟は、医療福祉課、作業療法部門と合同の研究であり、患者、看護婦、作業療法士、精神保健福祉士による個別ミーティング23人分の会話記録と感想を分析し、各職種の視点の相違や独自性を明らかにし、チームアプローチのあり方を述べた発表であった。異なる職種による共同研究ということが目をひいた。最近、当院におけるPSW(ケースワーカー)の活躍はめざましいものがある。PSWが病棟に入っていることが目立つ。患者さんや家族との接触も非常に多く、患者さんとのやりとりや外出時の状況など看護者だけではなくPSWから報告を受けることも増してきた。これも病院が数年前と比較しずいぶん進歩した点であろう。1人の患者さんは、主治医のみならず、担当看護婦、PSWなど複数の職種の複数のスタッフとかかわりを持つことになる。人とのかかわりで助けられることは多い。リハビリテーションや社会復帰の観点からは飛躍的な進歩と言える。患者さんやご家族にとって大きなメリットになっていると思われる。一人の患者さんを治療し回復させ社会参加に導いていくためには、さまざまな人の力が絶対必要なのである。
 C病棟からは、精神科病棟における看護者のストレスについて、経験年数、年齢、所属病棟、性別による違いを検討した報告があった。記述式のアンケートであったため分析がかなり煩雑だったと思う。看護者のストレスを軽減するためにも我々は早く患者さんが回復するように努めなければならない。患者さんご本人を含め、かかわる人皆が力を合わせ、できるだけ早期に患者さんに笑顔と明るさが戻ってくることが最大の願いである。
 D病棟からは、かなりの長期入院者でしめられている病棟における服薬自己管理に対する意識調査の報告があった。10数年前は、一列に並んで、看護者に口に薬を入れてもらう服薬がほとんどであった。今は、薬を飲むにも、1日や1週間分の自己管理を行うことも多くなった。閉鎖病棟でも状態によっては自己管理をしている場合がある。状態が悪い時には薬を飲んでもらう作業は看護者にとって大変な仕事である。吐き出したり、コップの水を撒いたりする方がおられる。ずいぶん時間をかけて口に入れていただいても、ぺっと吐き出されることがある。閉鎖病棟では薬をつぶしたりヨーグルトに混ぜたり、時間をあけて再び説得を試みたりと苦労されている看護者の姿に毎日遭遇する。
 E病棟からは、非常に対応の難しい隔離室処遇のADHD(注意欠陥多動性障害)の患者さんのホール練習に対し行った看護計画の有効性を示した報告があった。薬の効果が期待できない対象とかかわっていくのは看護者にとっては大きなストレスであろう。また、治療効果の期待できない方をどこまで病院が入院においてかかわっていくのか常に考えさせられてしまう。
 F病棟からは、社会的引きこもり状態にある退行した思春期患者が看護で変化していく様子が示された。ところで、「非精神病性の引きこもり」がとかく話題にされることが多くなった。引きこもっている者は全国で80万人以上とされ、「全国引きこもりKHJ親の会」が発足後初の全国大会を開いたとの報道を先日新聞で読んだばかりである。「非精神病性の引きこもり」に関しては、薬が効く効かないの問題では片づけられないため、このような看護部門の研究が対応の基本になっていく可能性があろう。
 最後に、広島赤十字看護専門学校専任教師および当院本部長から講評があった。

 今回の発表会は、自分の所属以外の部署の活動を知ることができ、十分楽しむことができたであろう。私自身、院内のことながら知らないことが多くあった。研究は、いずれも力作ばかりであった。中には院内の発表だけで終わらせるのはもったいないような、院外の学会や専門誌への投稿にも十分耐えうるようなものも多かったように思う。内容は非常にバラエティにとみ、ナウいものもあった。パワーポイントで作られたスライドはとても綺麗で視覚に訴えるものであった。発表時間は数分であるが、データをまとめたり準備をするのには膨大な時間とエネルギーを要したであろう。今日の研究発表会が患者様へのサービスの向上と部署を超えたチーム医療、スタッフの意欲向上、さらに病院の発展の基盤になることを願いたい。

 昨日の外来で「先生、またパソコンが壊れたんですか〜」と聞いて来られた患者さんがいる。ここのところ、何かと忙しくホームページの更新をしていないからである。わざわざ時間をかけて書かれた多くのメールに返答しないまま時間がどんどん過ぎていく。非常に申し訳ない。お詫びしたい。最近、このようなホームページの運営はなかなか大変だと思い始めている。

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