ヤダリンのひとりごと
処方調査
平成13年4月30日

 当直の夜間(深夜)、書き上げないといけない診断書類を放置して、簡単な処方調査を行ってみた。書類書きはなかなか始まらないが、こういう時だけ(?)は意欲がわいてくる。しんどかったり眠い時でも、自分が関心を持ったり興味深いことに対しては、やる気になるものである。よく「朝、起きれない。日中もごろごろしている。これは薬のせいではないか」などと言われることがあるが、友達と遊びに行くような時には朝、早く起きてしっかり活動していることは多い。何でも悪いことを薬のせいにしてはいけない。
 さて、本題に入るが、平成13年4月24日に草津病院の2つの閉鎖病棟に入院中の109名の患者さんの処方をすべて調べてみた。この2つの病棟の定床はそれぞれ57床計114床であり、この日の夜間の空床は5床であった。病棟の性格は「急性期・慢性期男女混合閉鎖病棟」で隔離室を12床持つ。約30%は3か月以内の入院者、平均年齢は42〜43歳である。109名の中で102名に内服で抗精神病薬が処方されていた。なお、明らかに睡眠薬代わりに使用されているものは除外した。すなわち就寝前のみのレボトミンやベゲタミンについては調査対象外とした。また、液剤は含むが注射剤も対象外とした。非常に少数の方に液剤と注射剤が使用されていた。(草津病院精神科には他に、閉鎖の療養病棟1つと開放の療養病棟2つ及び神経症や軽いうつ病の方が多いストレスケア個室病棟1つ、そして老人性痴呆疾患病棟2つがあるが、これらは全く対象外としている。すなわち精神科全8病棟のうち閉鎖の2病棟のみを対象としている。)
 結果は、グラフに示すとおりである。よく処方されている上位5つの抗精神病薬は、レボトミン、バルネチール、リスパダール、ルーラン、ロシゾピロン(=ゾテピン)であった。新しい系列であるセロトニン・ドパミンアンタゴニスト(SDA)に属するリスパダール、ルーラン、セロクエル以上3剤を合わせると102名のうち39名、38.2%とかなり多くの患者さんに処方されていた。クレミンやエミレースの処方は1例もなく、これらの薬剤は発売当初にだけ一時的に使用されたものと言えよう。また、ハロペリドール、ブロムペリドール、チミペロンといったブチロフェノン系の薬剤も使用頻度はかなり少なかった。また、意外とスルピリドの処方が少なかった。閉鎖病棟でしかも急性期の患者さんもおられるため、鎮静系の薬剤はどうしても必要であろう。従って今後も、レボメプロマジン、ゾテピン、スルトプリドはある程度使用され続けるであろう。後はブチロフェノン系に変わりSDAが多く使われていくであろう。また、外来通院中の方の処方は上記とはかなり違うのではないかと思われる。安定期にある方の処方はほとんど変更しないので以前からの薬剤が継続して使われている可能性があるからだ。さらに、まもなく発売されるオランザピン(商品名:ジブレキサ)が処方されるようになると、また違った結果になるであろう。ちなみに、世界的なレベルでは、リスペリドン(=リスパダール)は約1000万人、オランザピン(=ジプレキサ)は約500万人が服用しているとのことである。
 薬の処方傾向は、病院により医師によりずいぶん異なるのであろうが、何らかの参考になるかと思い呈示してみた。こういうことに時間を費やしてしまい、総務への提出期限がすでに過ぎてしまっている「平成12年度の年次報告書」は全くできていない。こんなものの提出を義務づけるのは納得がいかない。時間の無駄である。医師の診療時間を奪うものである。当分未提出のまま放置しておくつもりだ。一昨日の土曜日の外来は連休前ということもあろうが受診者がかなり多く、久しぶりに手ごたえがあった。診療終了が規定の時刻より3時間遅れの午後8時になった。受付事務所の方、薬局の方、すみませんでした。病棟からの報告事項は全く頭に入っていないし病棟に入る気力もなく、すべて忘れて病院を出ました・・・。ごめんなさい。

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