ヤダリンのひとりごと
新薬ラッシュ
平成13年3月25日

 今年は精神病の薬物療法に関しては革命的な年になりそうだ。というのは抗精神病薬の新薬ラッシュになるからだ。抗精神病薬は精神病の治療薬であるが、1955年(昭和30年)にクロルプロマジンが発売され、その後約45年間に約30種類の抗精神病薬が登場したに過ぎない。数年に1個くらいしか出ないのである。時代の流れでほとんど使われなくなったものも多く、現在現場で使われているのは約10数種類くらいであろう。私が通常使うものは数種類しかない。
 これまで最新の抗精神病薬は、平成8年6月に発売されたリスパダール(一般名:リスペリドン)であった。ところが今年は5年ぶりになんと3種類もの抗精神病薬が発売される。これはすごいことだ。2月にすでにセロクエル(一般名:クエチアピン)とルーラン(一般名:ペロスピロン)が発売されている。また夏にはジプレキサ(一般名:オランザピン)が発売予定である。セロクエルとルーランはいずれもSDA(セロトニン・ドパミン拮抗薬)というグループに、ジプレキサはMARTA(多くの受容体に作用する薬剤)というグループに属する。これらの薬剤は、感情的引きこもりや運動減退などの陰性症状への改善効果や錐体外路症状(副作用の一つ)の低さを特徴にあげている。さらには分裂病の神経症様症状や難治性の分裂病に対してもある程度の効果が期待できるらしい。
 しかし、このような話を聞いても実際に使ってみないと感触がつかめないというのが正直なところである。リスパダール(一般名:リスペリドン)は今、すぐれた抗精神病薬とされ、分裂病の治療にはまず第一に選択されることが多くなっている。でも私にとってはまだまだ使い慣れない、そして使いにくい薬剤である。おそらく新しい薬に対する印象はこれまでそれぞれの処方医が使い慣れた薬剤が何であるかによって変わるのであろう。私のこれまでの処方が標準ではないのかもしれない。ハロペリドールやブロムペリドールからリスペリドンへの切り替えは、レボメプロマジンやスルピリドからリスペリドンへの切り替えよりもやりやすいのかもしれない。
 それにしても使える薬が増えるのはいいことだ。精神科や心療内科を受診する方の増加率は他科受診者の増加率よりも大きいと聞く。「皆で精神科に行こう」という時代になったと言っても過言ではあるまい。気軽に精神科を受診できるようになることが精神疾患への偏見の軽減に少しでも結びつくことを期待したい。

 話は変わるが、昨日の地震はすごかった。一瞬、病院の建物が壊れるかと思った。これまで経験のない非常に激しいゆれであった。帰宅すると、家の基礎に沿って地面に5〜10センチ幅の亀裂が3メートルくらい、ブロック塀にも亀裂、車庫の地面のコンクリーにも亀裂が入り、5センチくらいの段差ができていた。部屋の壁にもひびが入り、かなりの食器が割れたり本が散乱していた。でもこれだけのことで済んでよかった。広島県南部で震度6弱とのことで、地震の規模は阪神大震災に匹敵するものらしい。そのわりには、被害は少なかったと言える。被害を被られた皆様に心よりお見舞い申し上げます。

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