ヤダリンのひとりごと
大災難
平成13年3月16日

 平成13年1月19日、悲劇は起こった。私の愛用しているパソコンが物理的に破壊されてしまった。一瞬にして重要な統計データやさまざまな資料、文書、ホームページの部品ファイル、大量のメール、電子日記などを失ってしまった。すべてが終わったと思った。パソコンは私の身体の一部である。もう一つの脳である。パソコンを使って思考しパソコンのデータをもとにして記憶を振り返り判断する。過去の楽しい想い出も悲しい想い出も喜びも怒りもすべてがパソコンの中にあった。それが皆失われた。私は自分の脳をやられてしまった。気力も感情も記憶もすべて失ってしまった・・・。全身の力が抜けてしまった。後を振りむいてもこれまで私が歩んできた道はもうないのだ。前を見てももやがかかったようで何も見えない・・・。とにかく何をするにしても不便になった。動作も思考も緩慢になり仕事の効率もぐっと落ちた。ぼおっとしていることが多くなった。一つのことをするのに数倍の時間がかかるようになった。これまでどれだけパソコンに依存してきたかがよくわかる。一気に老け込んでしまった。妻にはよく「パソコンと結婚しとけばよかったのに」と嫌味を言われてきた。そのくらい私にとっては大切なものであった。それを失ってしまった・・・。
 私は非常にアンバランスな人間だ。無能力な人間だ。何もできない人間だ。でも私はなぜか運良く医師の免許を取得することができた。そして精神科医になり15年が過ぎようとしている。時間が経つにつれ内科や外科、皮膚科や眼科耳鼻科など他科の知識は限りなくゼロに近づいていく。勉強家の一般人の方々の方が私より知識が豊富であろう。私は精神科医の仕事を失ったらただのオッサンだ。その精神科医の仕事さえろくにできない。能力のない人間であることは認めている。今更、無理をするつもりはない。できないことをやろうと努力する気力はない。自分が人より優れていると思えること、それは恥ずかしいほど限られた狭い領域である。でもただほんの少しでもいいから誰かのためになりたい、そして自分の存在を残したいという思いがこのホームページには込められているのだ。
 何を自惚れているのかと思われるかもしれない。また内容も目標にはほど遠く貧困であることはわかっている。しかし、私はこのホームページ作りに残りの人生をかけるくらいのエネルギーを注いでいるつもりだ。先日、外来で「どうされたんですか。体でも悪くされたんですか。早く更新してくださいよ。『ひとりごと』を楽しみにしています。このホームページは役に立つし元気になれます」と言われ、じっとしていられなくなった。その他にも同様の言葉を何人もの人からいただいた。何としてでも更新可能な状態に復旧させないといけないという思いが込み上げてきた。 それがやっと実現するに至った。3月4日、新しいパソコンを買った。今度のパソコンの性能はすごい。ホームページを開く際の待ち時間は大幅に短縮された。大きな画像でも瞬時に見ることができる。改めてケーブル専用回線の伝送速度の速さを実感することができた。またこの3〜4年の間の技術の進歩に感激した。そして今日、3月16日、これまた他人に貸している間にいつの間にか紛失してしまったホームページ作成ソフトを改めて購入することができ、ついに「ヤダリンの精神科Q&A」の更新が可能になり、今ほっとしているところだ。
 この約2か月間、心配してくださった方々、気にかけてくださった方々、応援してくださった方々に改めて感謝の気持ちを述べたい。

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