ヤダリンのひとりごと
代診
平成12年12月10日

 12月5日(火)、海外出張中であるS理事長の外来代診をさせていただいた。私は今の病院での勤務が長いため、多少は知っている患者さんが多かった。驚いた。病状が安定している人があまりにも多いのだ。表情と動きが良い。訴えが少ない。それに薬の量が少ない人が多かった。ずっと以前は不安定であった患者さんがS理事長が診られるようになって、みごとに良くなっている。しばらく会わないうちに良くなっているのだった。やはり治療法がいいのであろう。これまでのカルテと処方箋を覗きながら感心していた。
 たとえば同じ患者さんを10人の精神科医が診た場合、大まかなところでは同じでも10とおりの考え方が出てきておかしくはない。治療法や経過にある程度の差が出てくるであろう。腕のいい医者にかかった患者さんは幸せである。
 腕のいい医師になるためには、教科書や本に書いてあることをそのまま自分のものにしないことだと思う。身近におられる優秀な先輩の先生方のやり方をよくよく眺めて参考にしながら、実際に自分で体験してみることだ。本に書いてある一般的なやり方よりも、ずっとずっとすぐれた治療技術は存在すると思う。そして数多くの症例に接することだと思う。多くの患者さんにお会いするうちに、自分なりの病像のとらえ方や治療法が生まれてくる。あまり独自のやり方に走りすぎてはならないが、そこでは、理論的なことよりも、経験的、直感的、非科学的で原始的とも言えるものが腕のよさにつながってくる。腕のいい医師になるために、常に自分の診療技術を高める努力と工夫を続けていきたいものだ。

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