ヤダリンのひとりごと
遅発性ジスキネジア、ジストニアについて
平成12年9月15日

 長期にわたり抗精神病薬を服薬することで生じてくる副作用に、遅発性ジスキネジアとか遅発性ジストニアというのがある。ジスキネジアについては、お年寄りが口をもぐもぐと動かしているのを想像すればよい。ジストニアについては、首や体が突っ張ったり捻れたりするものである。またびっこをひく歩き方になることがある。いずれも非可逆性とか難治性とされている。しかし私は必ずしもそうではないと思っている。
 Oさん、40代の男性。これまで他院で数年間の入院歴がある。初めて会った時、彼は首をぐにゅぐにゅと動かしていた。非常に奇妙であった。以前の処方がどうであったか知らないが、訴えが執拗でガラスを割ったりテーブルを引っくり返したりで、しばしば隔離室を必要とする対応困難な患者さんであったらしい。しかし私が受け持ち、レボメプロマジン150mg/日の処方でしだいに首のぐにゅぐにゅとした動きは消えていった。最近少し精神症状が悪化したが、対応困難な患者さんではない。
 Nさん、30代の女性。これまで数年間の治療歴がある。私の初診時には上半身全体がぐにゅぐにゅと動き、まるで先天的な神経疾患を持つ病人のようだった。メレリルとリスパダールとリーマスのいずれも少量が処方されていた。リスパダールを中止してしだいに上半身のジスキネジアは消えていった。なぜか精神症状も安定化していった。
 Fさん、30代の女性。2、3年の治療歴がある。私の初診時には前医でかなり大量の抗精神病薬が投与されていた。処方は入院中の病状の激しさを物語っているようであった。彼女は首が捻れていた。年単位で少しずつ薬を減らしていった。すると現在は全く目立たなくなった。
 Oさん、30代の女性。彼女は最初から私が診ているが、治療を開始して数か月後から首が曲がってきた。彼女はなぜか、ジストニアが起きにくいとされている薬剤よりも起こりやすいとされている薬剤を使った方がジストニアが軽くなったのである。もっと経過を追わないといけないのかもしれない。精神症状も安定化してきた。
 遅発性ジストニアやジスキネジアについてもいろいろ工夫をすることで軽くしたり消失させることができるようである。
 教科書に書かれていることや一般的とされていることの中には、現場では当てはまらないことがある。このホームページでは学問的なことではなく経験的なあるいは非科学的なことも書いていきたいものである。誰からも信用されなくてもいい。間違っているのかもしれない。私の勘違いや思い違いかもしれない。ただ、こういうことがあったということを残しておきたいだけである。

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