Q | バルプロ酸ナトリウム(商品名は、バレリン、デパケンなど)について教えてください。 |
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■もともとは、てんかんの治療薬であり、1975年に発売されました。 ■この薬は、作用時間が短いのですが、それを改良した徐放性製剤は、1991年に発売されています。 ■欧米では、かなり昔からバルプロ酸の抗躁作用が注目されており、近年では双極性障害(躁うつ病)の治療薬として広く処方されています。 ■日本では、2002年9月20日に「躁病および躁うつ病の躁状態」の適応が追加承認されました。 ■私も、過去には大量の抗精神病薬を必要としたのに、比較的少量のバルプロ酸で躁状態が押さえられている例、入院せずに比較的すみやかに躁状態を脱した例を経験しています。 ■過去には、炭酸リチウム(リーマスなど)が躁うつ病の治療薬としてよく使われていました。しかし、近年は、リチウムよりもバルプロ酸が好まれるようです。バルプロ酸とリチウムを比べてみると、効果は同等あるいは、バルプロ酸がリチウムに優るとされます。安全性においては、バルプロ酸は比較的安全域が広く使いやすいが、リチウムは有効域と毒性発現域が比較的近く安全域が狭く、高濃度ではリチウム中毒等の副作用を起こす可能性があります。また、効果発現もバルプロ酸の方が早くみられます。急性躁病の治療開始から3週間において、バルプロ酸はリチウムに匹敵する効果を現し副作用はより少ないとされます。さらに、双極性障害(躁うつ病)の維持療法においても、バルプロ酸はリチウムよりも再発率が低いとされています。再発を繰り返した場合に、バルプロ酸はリチウムと違い、効果が減弱しないとの報告があるようです。 ■リチウムは有効な人でも、口の渇きや、手の震え、眠気、頭がぼおっとするといった副作用のために、服薬継続が困難になることがあります。 ■躁とうつの急速な交代が生じるラピッドサイクラーの治療にもバルプロ酸の効果が期待されます。 ■統合失調症における焦燥、興奮、攻撃性などの鎮静にも有効であり、非定型抗精神病薬に併用することで、非定型抗精神病薬の有用性を最大限に高めることが可能と思われます。アメリカでは統合失調症の患者にバルプロ酸が処方されることが年々増えているようです。 ■バルプロ酸の副作用としては、吐気、消化器症状、眠気、肝機能障害、高アンモニア血症などがあげられます。 ■承認用量は、1200mg/日までであるが、血中濃度を見ながら、2000mg/日くらいまでは使えそうです。海外では3000mg/日を超える投与もみられるようです。 (2003.9.15) |