Q | アルコール依存症と診断されているのですが、幻聴や被害妄想が出てきました。こういうことがあるのですか。 |
A |
■アルコールをあまりにも多く飲みすぎたり、また、長期間にわたり大量に飲んでいたのを急激にやめたりすると一時的に幻覚症状が出ることがあります。これらは「一過性幻覚体験」とか「離脱せん妄」と言われています。 ■それとは別に、すなわち急性中毒でも離脱症状とも言えないのですが、飲酒中やその直後に発症し、「殺す」などの幻聴や被害妄想などが意識清明下で数週から数か月続く「アルコール幻覚症」と言われる病態があります。 ■アルコール幻覚症は、比較的短期間で消退し、大部分は予後が良好とされますが、時に生々しい幻聴に反応して激しい自傷他害行為など問題行動を引き起こすことがあります。ICD−10という国際疾病分類では、F10.5(アルコールによる精神病性障害)にコードされます。また、なかなか精神分裂病との区別がつかないことがあります。安易な精神分裂病の診断を避けると同時に、またその可能性も忘れないようにしなければいけません。少数では、あるものの分裂病の患者さんにアルコール依存症を合併することがあります。 ■なお、アルコールに関連した精神病性障害には、他に「アルコール性てんかん様けいれん発作」「振戦せん妄」「アルコール性痴呆」「アルコール性コルサコフ精神病」「アルコール性嫉妬妄想」などがあります。 (2002.4.28) |