うつ病と診断されてパキシルを処方され、とても調子が良く欠勤することもないのですが、射精しなくなりました。どうすればいいでしょうか。
■パキシルは、最近私も比較的よく処方する抗うつ薬であり、比較的いいイメージを持っています。
■パキシルは、うつ病の治療薬として開発されたSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害剤)であり、1990年にイギリスで承認されて以降、世界各国で処方されており、日本では平成12年11月に発売されました。
■まず、SSRIとは、脳内の神経細胞と神経細胞の間に放出されたセロトニンという物質が再度神経細胞に取り込まれるのを阻害することで神経細胞間のセロトニン量を増やすことにより抗うつ効果を発揮するとされます。
■現在、日本で使えるSSRIは、パキシル(一般名:パロキセチン)とデプロメール、ルボックス(一般名:フルボキサミン)の2種類です。
■SSRIの特徴は、従来の抗うつ薬と副作用が異なることです。口渇、便秘、眼の霞み、体重増加、発汗、日中の眠気、倦怠感などが少なく使いやすいとされます。また、心臓血管系に対する影響が非常に少なく、たとえ自殺目的などで大量に服用した場合にでもきわめて安全とされます。
■ただ、逆に従来の抗うつ薬と比べて悪心、嘔吐など消化器系副作用および射精障害を中心とした男性での性機能障害が起きやすいとされます。
吐き気や嘔吐は確かに比較的多くみられるように思いますが、多くは最初の数日だけであり、1週間もすればおさまります。初めて処方する時に、「こういうことがありますよ」と説明をしておくとたいてい大丈夫です。この説明をしておかないと患者さんに不信感を与え後で医師が怒られると言う結果になります。最初は少量から慣らすあるいは胃薬と併用することで大部分対処可能な副作用と考えます。
射精障害に関しては、現実にはあまり訴えられることのない副作用ですが文献的には多少は存在するようです。ただ、うつ病の症状としても性欲低下があるので病気の症状なのか薬の副作用なのかわかりにくいことがあります。副作用の場合には、このまま様子を見るか、薬の量を減らすか、別の薬に変更するなどが考えられます。SSRIでは、パキシルよりもデプロメール、ルボックスの方が少ないようです。(逆に上記消化器系副作用はパキシルの方が少ないとされます。)
■副作用とは無関係な話になりますが、SSRIは本格的なうつ病のみならず、人格障害や摂食障害の抑うつや、パニック障害、全般性不安障害、恐怖症、強迫性障害、社会不安障害、外傷後ストレス障害などの不安障害にも使えるなど非常に広く精神疾患に使え効果が期待されています。SSRIは抗不安作用を有しており、海外では不安障害の治療は抗不安薬よりもSSRIを基盤にするのが良いと言われています。
■最後に、パキシルの一つの特徴として1日1回投与が可能ということです。夕食後に1〜2錠を飲むだけでよいため服薬のわずらわしさが非常に少ないことが利点と言えるでしょう。
(2002.1.14)