分裂感情障害とは、どんな病気ですか。
■精神分裂病と躁うつ病は、必ずしも明確に区別されるわけではなく、精神分裂病と躁病の症状が同時に見られたり、精神分裂病とうつ病の症状が同時に見られたり、また、ある時は分裂病、ある時は躁うつ病に見える場合があります。
■長期間、経過を見ていると、発病当時は精神分裂病と言える幻覚妄想状態にあったのに、その後は、きれいな躁うつ病になってしまったり、また逆に、最初は躁うつ病かと思ったのにしだいに精神分裂病像を呈してくることがあります。
■経過が長くていくつかの病院にかかっていると、ある病院では、躁うつ病と診断されたのに、別の病院では精神分裂病と診断されたというようなことも生じるわけです。
■このような場合に、分裂感情障害という概念を用いるとわかりやすくなります。
■すごくおしゃべりになって、電話をかけまくり、大きなことを言い、ちょっとしたことで怒り、次々と物を買い、外を出歩く、いわゆるテンションが高い状態であると同時に、「テレビが自分のことを報道している」「盗聴される」「馬鹿、死ねなどと聞こえる」「電波であやつられている」というような幻聴、妄想が存在する場合、その時点では「分裂感情障害、躁病型」と言えます。
■なお、診断上、注意を要するのは、よく動きよくしゃべる場合、躁状態ではあっても必ずしも躁病症状というわけではなく、分裂病で思考のまとまりが著しく悪い「思路滅裂状態」が躁病様に見えることがあるということです。これは分裂病の症状です。分裂感情障害ではありません
■また、うつ病がひどくて「自分は絶対に直らない大変な病気にかかっている。自分は罪を犯した。警察に行かなければいけない(そのような事実はない)」といった妄想がある場合、これはうつ病の症状である心気妄想や罪業妄想であって、妄想型うつ病ととらえます。これも分裂感情障害ではありません
■ただ、この分裂感情障害という診断名も、どのような診断基準を用いるかにより異なります。たとえば、『ある時に分裂病と躁病が同時に見られたが、いったん普通に戻って、数年後にうつ病像を呈した、その後さらに躁病像となった。しかし、単独で分裂病症状だけを呈したことがない場合』を考えてみます。これをDSM−Wという診断基準で考えると、「躁うつ病(=気分障害)であり最初は精神病像を伴う躁病エピソードであった」となりますが、ICD−10という診断基準では、「最初は、分裂感情障害・躁病型、その後、躁うつ病」となります。このような場合、この人の全経過をとらえて広く「分裂感情障害」とまとめておくとわかりやすくなるでしょう。
■分裂感情障害は、躁うつ病よりから精神分裂病よりまで広範囲にわたるが、典型的な精神分裂病と比べると予後は良く、薬物療法の上からは、炭酸リチウム(リーマス)、カルバマゼピン(テグレトール)、バルプロ酸ナトリウム(バレリン、デパケン)などの気分安定薬が有効なことが多いとされています。
(2001.12.23)