診断書の病名欄に「幻覚妄想状態」と記載されていましたがどういうことでしょうか。
★「幻覚妄想状態」というのは、病気の状態を要約して一言で表現したものです。幻覚とは、実際には存在しないものが聞こえたり見えたり臭ったり感じたりすることです。妄想とは、誤った考えを確信することです。幻覚や妄想を中心とする病像を「幻覚妄想状態」と呼びます。
「幻覚妄想状態」の他に以下のような状態像が存在します。
★不安状態−−−対象のない漠然とした恐れを不安と言い、緊張、心配、焦燥、恐怖、不穏、興奮、顔面紅潮や蒼白、動悸、呼吸困難、尿意、便意、腹痛、下痢、嘔気などの症状が現れます。
★心気状態−−−検査をして特に大きな異常が認められないにもかかわらず、体や病気に関してとらわれすぎている状態です。
★抑うつ状態−−−元気のない状態です。
★躁状態−−−元気のありすぎる、いわゆるテンションの高い状態です。大きなことを言い、大声でしゃべり続け、動き回る状態です。自信過剰で上機嫌であることが多いが、怒りっぽく刺激的になることもよくあります。精神分裂病の支離滅裂な状態と区別しなければいけませんが、わかりにくいこともよくあります。
★興奮状態−−−暴れる状態です。精神運動興奮状態とも言われます。
★昏迷状態−−−固まった状態で、ぼおっと突っ立っていたり、一点を凝視していたり、いつまでも同じ姿勢をとり続けたり、話しかけに返答をすることもありません。精神分裂病の緊張病症候群の一つの症状であったり、うつ病やヒステリーでも見られます。
★無為自閉状態−−−勉強、仕事、日常生活に無関心となり人との関係を避け引きこもっている状態です。もともとは精神分裂病の慢性期の状態を示す言葉でしたが、急性期の幻覚や妄想の結果このような状態になることがあり、また、うつ病、神経症、人格障害でも同様の状態を呈することがあります。
★せん妄状態−−−意識の混濁を基盤に幻覚、錯覚、興奮、不安が追加された状態です。アルコール中毒や薬物中毒、老年期痴呆、肝臓病、低血糖、尿毒症などさまざまな身体疾患で見られます。
★痴呆状態−−−一度正常なレベルまで発達した知能が、正常レベル以下にまで低下した状態です。記憶の障害、見当識の障害(時間や場所や人がわからなくなる)、理解力・思考力・判断力の障害が起きてきます。痴呆をきたす疾患の大部分が、アルツハイマー型老年痴呆と脳血管性痴呆で占められています。
★酩酊状態−−−たとえば酒を飲んで酔っぱらった状態です。
★上記の状態は重複して見られることがあります。また、「○○状態」と病名は、一対一に線で結びつけられるようなものではなく複雑です。すなわち幻覚妄想状態=精神分裂病とか、不安状態=不安神経症というわけではありません。たとえば、精神分裂病では、幻覚妄想状態、興奮状態、抑うつ状態、躁状態、昏迷状態、無為自閉状態などさまざまな状態を呈します。逆に、心気状態を呈する病気には、神経症、うつ病、精神分裂病などがあります。
(2001.8.26)