Q | セロクエルというお薬について知りたいのですが。 |
A |
◆非定型抗精神病薬の一つです。精神分裂病の治療薬です。一般名はクエチアピンです。 ◆国際的には、1997年(平成9年)に誕生しました。アメリカでは発売後確実に処方率が伸びており3年足らずで10%を軽く超えるに至っています。日本では、平成13年2月に発売されたばかりです。 ◆剤型には、25mg錠と100mg錠があります。海外では200mg錠もあります。 ◆通常使用量は、1日250〜750mgです。 ◆体内で代謝されるのが早いため、1日2回以上の服用が必要ですが、400mg以下なら1日1回投与も可能とされます。 ◆高価な薬であり、100mg錠1個で200円もします。従って最大使用量では1日1500円以上もかかることになります。 ◆ろれつが回りにくくなる、体がこわばる、手が震える、いらいらそわそわしてじっとしていられないといった副作用(=錐体外路症状)がほとんど起きません。他の非定型抗精神病薬と比較してもこれらの副作用は非常に低いと考えられます。錐体外路症状を止めるため抗パーキンソン薬などの併用を必要とする例は少ないようです。また、この錐体外路症状は投与量が増えてもほとんど増強しないと言われています。リスパダール(=リスペリドン)などで錐体外路症状が出て十分量を使えない患者さんなどに適していると言えます。 ◆また、性欲が低下する、生理不順になる、乳汁分泌が起きるなどの副作用もほとんど起きません。これはプロラクチンというホルモンを上昇させないためです。 ◆これまで服用している薬で、錐体外路症状や性機能障害などの副作用のある患者さんには、是非試みる意味があると言えます。 ◆ジプレキサ(一般名=オランザピン)と比べると体重の増加率が低いとされます。 ◆副作用が少なく服薬感がいいので、患者さんから不満を言われることが非常に少ない印象があります。結果的には長期にわたる服薬がしやすいことになります。従って分裂病の再発率を低くする可能性が出てくるでしょう。 ◆従来の薬から置き換えると、中には「頭がすっきりして物事が考えやすくなった」「頭の回転が良くなった」「人の言うことがよくわかるようになった」「意欲的になれ動きやすくなった」などと言われる患者さんがおられます。セロクエルの服用で、より充実した生活が送れる可能性があります。 ◆私にとっては非常に処方しやすく、好きな薬の一つです。 ◆幻覚、妄想などの精神病症状に対する効果は従来の薬に比較して、さほど変わらないかあるいは多少すぐれている程度と言われています。しかし、急性期の精神病症状を抑えるには今ひとつ弱い印象があります。 ◆とは言っても、これまでの薬で効果がなかった場合にも効く可能性が指摘されています。 ◆感情の鈍さや意欲の低下、ひきこもり、また認知面の障害などに対しては従来の薬よりすぐれているとされます。しかし、これらは上記の錐体外路症状(副作用)が起きにくい結果とも考えられます。 ◆高齢の精神病患者さんにも安全かつ有効であると評価されています。また、パーキンソン病の患者さんの最大60%で精神病症状が観察されるが、パーキンソン病に伴う精神症状に対しては最も望ましい抗精神病薬とされます。 ◆従来の薬からこの薬に置き換えていく場合、いきなりではなく徐々に行う必要があります。急に変更すると病状が悪化する場合があります。 (2001.8.7) |