内科から紹介されて精神科を受診したところ、心気症と言われました。どういうことですか。
■広い意味での心気症は、最近では「身体表現性障害」と呼ばれています。実際には異常ではないけれど、体の症状を訴えることです。この中には、「狭い意味での心気症」「身体化障害」「転換性障害」「身体表現性疼痛障害」などが含まれます。
■もちろん、内科的に検査をしても異常がないことが前提です。精神科の症状とばかり考えていると本当に体の病気を見落とすこともあるので注意が必要です。
■狭い意味での「心気症」−−−誰でも胃腸の調子が悪くなったり頭痛がしたりすることがありますが、胃腸の調子が悪いことから癌ではないか、頭痛がすることから脳腫瘍ではないかと考え、検査を受けて異常が認められなくても、医師の見落としではないかなどとこだわり、また別の病院で検査を受けたりします。健康へのとらわれすぎ、過敏になりすぎです。病院を転々とすることにつながります。自分で病名を結論づけ、強迫的にこだわることが特徴です。「疾病恐怖」とも呼ばれます。
■身体化障害−−−頭痛、めまい、耳鳴り、動悸、息切れ、しびれ、発汗、腰痛、嘔気、下痢など多彩な体の症状を訴えますが、内科的には異常なしです。やはりしばしば病院にかかります。上記「心気症」との違いは、症状をたくさん並べることです。自律神経失調症と言われているものの多くは、この身体化障害に該当すると言えます。
■転換性障害−−−ストレスがきっかけで、声が出なくなったり足が立たなくなったり眼が見えなくなったり、ものが飲み込めなくなったり喉にものがつかえるような感じを持ったりします。また、ふるえや本当のてんかん発作のようなけいれん発作を起こすことがあります。従来、ヒステリーと呼ばれていたものの一部に相当します。
■身体表現性疼痛障害−−−頭痛、眼痛など体の特定の部分に根拠のない、つまり異常所見がないのに痛みを訴え続けることです。痛みを測定する道具はありません。本人にとっては医師から相手にされないだけに苦痛が大きいと思われます。
■体の症状を訴える時には、これらの「身体表現性障害」だけではなく、「うつ病」「不安神経症」なども考える必要があります。なお、身体表現性障害に「うつ病」を合併することもあります。