Q | パラノイアとは何ですか。 |
A |
■「妄想性障害」とも言われます。 ■一つの固定した内容の強固な体系化した(=話ができあがっている)妄想が慢性的に続くが、それ以外の面では異常を認めない疾患です。 ■経験上、「パラノイア」と診断をつける頻度は非常にまれです。まずないと思います。そのくらい、数少ないまれな疾患という印象を持っています。 ■まず、一般的に「妄想」について考えてみます。妄想というのは、現実にはないことを実際に起こっていると思い込み、たとえ周囲から「そんなことはない」と否定されても訂正できない考えのことです。「思考の内容の障害」です。 ■妄想には、誰も何も言っていないのに「陥れられる」「悪口を言われる」などと信じて疑わない被害妄想、「自分は何でもできる」「世界的な権威を持っている」などの誇大妄想、何もしていないのに「罪を犯した。犯罪者だ」と確信している罪業妄想、実際にそんなことはないのに夫や妻が浮気をしていると思い込んでいる「嫉妬妄想」などさまざまなものがあります。 ■また妄想には、たとえば「誰かが跡をつけてくる」「盗聴される」など現実にあってもおかしくないものと、「何者かがコンピューターで自分の心を読み取る」「テレビから監視されている」などの現実的には考えにくいものがあります。 ■ところで、パラノイアの妄想は、現実的な内容であり、本人の話を聞いていると、別に理論的に飛躍はなく、しかもある特別な妄想があることを除いては常人と変わらず、日常生活や社会生活は通常にできていることが多いと思われます。 ■パラノイアは「妄想型の精神分裂病」との区別が問題になります。現実的な妄想かどうか、その発展性と強固さがどうか、「ある特定の妄想」以外のさまざまな症状、つまり思考のまとまりのなさや意欲の低下や感情の鈍さなどがあるか、日常生活能力が保たれているかどうかといった面から区別しますが、鑑別困難なこともあります。 ■治療に対する反応は良くなく、かなり長期間にわたり妄想が持続し発展していくことが多いと思われます。時として自分の主張が認められないと訴えを起こしたりします。 ■なお、病気と言える範囲に至らないが、通常より疑い深く被害的に物事を考えやすい性格傾向を「妄想型人格障害」と呼びます。 ■パラノイアについて、北里大学精神医学電子教科書もご参照下さい。 |