Q | 普通の人の気分の落ち込みと、うつ病の時の落ち込みの違いはありますか。 |
A |
我々は日常生活でよく「落ち込む」という言葉を使います。通常誰でも経験のある「通常の落ち込み」と病気である「うつ病」とは、どのように違うのでしょうか。実は、不明瞭な点があります。専門家でも区別がつかないことがあります。ひょっとすると連続性があるものかもしれません。 ここでは明瞭に差がある場合を考えてみます。「うつ病」は、「通常の落ち込み」と比較して、落ち込みが、より強く、深く、ある程度持続するものとしてよいでしょう。 「うつ病」の場合は、よく「死ぬこと」を考えます。生きていてもしかたがない、何の夢も希望もない、死んだほうがましだと思います。だから周囲の者は、自殺には特に注意しなければなりません。本当に心が痛むことですが、私自身も自ら命を絶たれた患者さんを何人か思い出します。そのほとんどは「うつ病」の病名がついていた方です。どうしてもう少し待ってもらえなかったのかととても残念に思います。逆に回復された方は、病状が悪い時は「もう絶対に治らない」と言いきっていたのに、良くなると「あの時がウソのようです。ありがとうございます」とにこにこしながら話してくれます。夢からさめたように元気が出てくるのです。 話がそれましたが、「うつ病」の場合は、お金があっても無一文だとか借金があるとか、何もしてないのに自分は罪人だとか警察に逮捕されるべき悪い人間だと思うとか、もう絶対に治らない大病になってしまったと思い込むといった、現実とは異なる誤った思い込み、すなわち妄想を伴うことがあります。そのくらい落ち込みが強いということです。 また、「通常の落ち込み」は、気分転換や楽しいことをすることで、ある程度気分が回復しますが、「うつ病」の場合には簡単に変わりません。いかなることに対しても関心が持てません。その位落ち込みが深いということです。 さらに、「通常の落ち込み」は短期間しか続きません。通常、2週間以上も続くことはないでしょう。「うつ病」の場合は、何も治療をしなければ落ち込みが数週間から数か月続きます。「うつ病」そのものは、放置しておいても数か月も経てば自然にもとに戻ってきます。しかし、適切な治療を受けることでその期間をかなり短縮することができます。 他人との関わり方という面から見ると、「通常の落ち込み」は、人に頼りたい、話を聞いて欲しいという思いがあるものですが、「うつ病」の場合は、人とのかかわりをわずらわしくおっくうに思い、人を避けたいと考えます。 さらに「通常の落ち込み」は、何らかのきっかけがあるのに対し、「うつ病」の場合は、もちろん誘因が明瞭な場合がありますが、特にきっかけがなく落ち込んでくることがあります。 抗うつ薬に対する反応では、「うつ病」の場合はよく効きますが、病気でない場合は副作用ばかりが出て効果がありません。 |