精神分裂病の患者でも結婚できますか。
 恋愛をしたり結婚をしたいと考えることは、人生の過程では誰にでもあることです。異性を好きになることは正常の心理です。心を豊かにします。そしてその人を成長させます。恋愛や結婚は、その人の人生を大きく変える可能性がある出来事の一つです。
 精神障害があっても結婚できないことはありません。それだけであきらめる必要はありません。実際に、精神分裂病で入院歴があり結婚され、充実した生活を送っている方がおられます。しかし、一般の離婚率が1割前後に対し、精神分裂病の患者さんの場合、離婚率が3割、特に患者さん同士の場合、離婚率が5割とかなり高いという事実はあります。
 結婚生活がうまくいくためには、やはり、病状がある程度の期間安定していること、相手の方に病気を理解していただき、万一病状が悪化した際には協力が得られることが必要になるでしょう。そのためには、交際期間を長くとり、お互いが相手をよく知ることです。そして、その中である程度病気について知っておいてもらうことです。絶対悪くならない自信があるからといって病気を隠して結婚した場合、あとで問題を生じる可能性が非常に高くなります。精神障害があると知ったとたんに態度を変えるような相手の場合は、最初から結婚は諦めておいた方がいいと思います。それと、女性の患者さんの場合は、結婚後も妊娠、出産、子育てという更に大きな出来事に遭遇する可能性を考えておく必要があります。また、病気の遺伝についても知識を得ておいて下さい。周囲の家族も含めて病気について正しく知っておくことが重要です。主治医にも必ず意見を聞いてください。
 私は、どちらかというと若い患者さんを受け持っていることが多いのですが、実際には結婚例が多くあるわけではありません。でも結婚された方は、ずっと続いている場合が多いように思います。結婚してむしろ落ち着いた例があります。また、病気のことをすべて話して結婚後、一時服薬があいまいになり病状が悪化したものの配偶者の理解があり、入院せずに切り抜けた例があります。たとえ、結婚に至らなくても、ずっと仲良く交際を続けている例があります。結婚後に発病した例はしばしばありますが、それで離婚に至った例は身近にはほとんどないように思います。なぜか、私の経験例では配偶者がよき協力者になっていることが多いのです。
 時に聞くことがありますが、結婚すれば病気が良くなるんじゃないか、だから結婚させようなどという周囲の考えはあやまっています。結婚は一つのストレスになります。あくまで当事者どおしが十分な愛情を持ち、助け合っていけるという気持ちが必要です。
 結婚が人生のすべてではありません。たとえ縁がなくても毎日の生活に楽しみを見つけるような努力をしてみましょう。見方を変えれば、結婚せずにいるから、逆に今のような平和な生活が送れているのかもしれません。