TOPIC No.6-8『ガンマ線バースト(γ-Ray burst)』現象

01. ガンマ線バースト byフリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
02. 宇宙で最も強力なガンマ線バーストの発見 by Moriの天文ページ
03. ガンマ線バーストに伴う X 線残光と鉄輝線の観測 by yonetoku@astro.isas.ac.jp
04. NASAのガンマ線観測衛星「コンプトン」
05. すばる 宇宙からバーストをキャッチ byすばる望遠鏡
06. 天文ニュース目次 by国立天文台
07. ハッブル宇宙望遠鏡コスモロジー by SCIENCE WEB
08. Hubble Space Telescope Public Pictures
09. 星の好きな人のための新着情報

ガンマ線バースト

(2000年12月09日)東奥日報

 ガンマ線というエネルギーの高い電磁波が突然、宇宙のある場所で放出される現象をガンマ線バーストという。太陽が百億年間でつくる量のエネルギーを一秒間で放出するほどのすさまじい爆発現象。地球から非常に遠い場所で一日一回程度発生。正体は不明だが、最近、爆発は鉄を大量に含むガス雲の中で起きたことを示す観測結果を日本やイタリアの共同チームが発表した。

 同チームは、太陽の五十倍以上もある星が爆発し、ガス雲と重い中性子星ができ、その中性子星がブラックホールになって膨大なエネルギーが出たとみる。だが「ガスの濃い場所で起きたことを示すだけだ」との見方もあり、決着にはまだ時間がかかりそうだ。


巨大銀河のガンマ線変化観測 広島大など開発の国際衛星

2009/05/30 中国新聞ニュ−ス

 巨大銀河が高いエネルギーを持つ電磁波「ガンマ線」を大量に放射する様子を、日米欧の研究機関が参加する国際天文衛星「フェルミ」が観測した。この銀河については過去に別の天文衛星がガンマ線を放射していない状態を観測。新旧の観測結果の比較により、ガンマ線放射前後の銀河の変化を世界で初めてとらえることができた。

 成果は三十日、米航空宇宙局(NASA)のホームページで公開。研究チームの片岡淳かたおか・じゅん早稲田大准教授は「銀河でガンマ線が生成される過程を知る上で重要な発見だ」と話している。

 この巨大銀河は、地球から二・三億光年離れたペルセウス銀河団の中心にある「NGC1275」。フェルミは二〇〇八年八月―十二月の観測で、強いガンマ線放射を確認した。

 一九九一年―二〇〇〇年に別の天文衛星が観測した際にはガンマ線放射は見つかっておらず、研究チームは二〇〇〇年から〇八年までの間に、放射を導く何らかの現象があったと結論付けた。

 フェルミは、日米欧が共同で〇八年六月に打ち上げた。広島大が開発を担当した高感度のガンマ線検出器の搭載などが特徴。今回はNGC1275以外でも、これまで放射が確認されていなかった銀河からの微弱なガンマ線検出に成功した。

 深沢泰司ふかざわ・やすし広島大教授は「ガンマ線を観測することにより、高エネルギー状態の宇宙の姿を解明していきたい」と意気込んでいる。

巨大銀河の変化とらえた 国際衛星でガンマ線観測

2009/05/30 47News【共同通信】

 巨大銀河が高いエネルギーを持つ電磁波「ガンマ線」を大量に放射する様子を、日米欧の研究機関が参加する国際天文衛星「フェルミ」が観測した。この銀河については過去に別の天文衛星がガンマ線を放射していない状態を観測。新旧の観測結果の比較により、ガンマ線放射前後の銀河の変化を世界で初めてとらえることができた。

 成果は30日、米航空宇宙局(NASA)のホームページで公開。研究チームの片岡淳早稲田大准教授は「ガンマ線は、銀河中心のブラックホールが周囲の物質を引き寄せるときに発生する。今後の変化を調べて、銀河の性質や構造を明らかにしたい」と話している。

 この巨大銀河は、地球から2・3億光年離れたペルセウス銀河団の中心にある「NGC1275」。フェルミは2008年8月−12月の観測で、強いガンマ線放射を確認した。

 1991年−2000年に別の天文衛星が観測した際にはガンマ線放射は見つかっておらず、研究チームは2000年から08年までの間に、放射を導く何らかの現象があったと結論付けた。

 フェルミは、日米欧が共同で08年6月に打ち上げた。広島大が開発を担当した高感度のガンマ線検出器の搭載などが特徴。今回はNGC1275以外でも、これまで放射が確認されていなかった銀河からの微弱なガンマ線検出に成功した。

大量絶滅の原因はガンマ線バーストか

April 06, 2009 Anne Minard for National Geographic News

 最新の研究によると、まぶしい光を放つガンマ線バーストは4億4000万年前に地球で起きた大量絶滅の原因だった可能性があり、同様の天災に再び見舞われることもあり得るという。

 ガンマ線バーストのほとんどは、非常に質量が大きい星の核が崩壊したときに発生する高エネルギーの放射線と考えられている。

 新しいコンピューターモデルでシミュレーションしたところ、6500光年以内で発生したガンマ線バーストが地球に届けば、オゾン層を破壊して酸性雨を降らせ、地球寒冷化を引き起こす恐れがあることが示された。

 オルドビス紀(4億8800万〜4億4300万年前)の終盤、繁栄していた海洋生物の70%が大量絶滅したのはこういった天災が原因だったかもしれない。

 アメリカ、カンザス州にあるウォッシュバーン大学の天体物理学者で、研究を率いるブライアン・トーマス氏はそのように考えている。また、今回のシミュレーションは、大規模なガンマ線バーストが約10億年ごとに地球への到達範囲内で起きる可能性も示唆している。ただし、放射線が地球に真っすぐ向かわなければ影響はない。

「現在、いて座方向に8000光年の距離にある大質量星WR104が潜在的な脅威だ」とトーマス氏は指摘する。しかし、他の天体物理学者たちにこれといった動揺はない。「この研究は、近距離でガンマ線バーストが起きたらどうなるかを示しているわけだが、科学者はよくそのような考え方をするものだ」と、NASAの天体物理学者デイビッド・トンプソン氏は言う。同氏はフェルミ・ガンマ線天文衛星のプロジェクト副責任者でもある。

 また同氏は、将来ガンマ線バーストが地球にもたらす危険を次のように例えている。「自宅の物置きでホッキョクグマと出くわすようなものだ。可能性がないわけではないが、限りなく小さいので心配しても意味がない」。

 カンザス大学の古生物学者ブルース・リーバーマン氏は2004年、ガンマ線バーストがオルドビス紀の大量絶滅を引き起こしたという理論の構築に協力した。ただし、今回の研究には参加していない。

 リーバーマン氏によると、一般に氷河期の到来が大量絶滅の原因と考えられているが、その説には疑問の残る部分があり、「大量絶滅を伴わない氷河期も複数あった」と指摘する。しかも、オルドビス紀の氷河期は比較的短く、わずか50万年ほどで温暖な気候に戻った。まるで、何か異常な出来事が氷河期を引き起こしたかのようだ。

 今回の研究を率いたトーマス氏と同氏の指導教員だったエイドリアン・メロット氏はこれまでに、オルドビス紀の大量絶滅の最中に南極の上空で、宇宙からなんらかの衝撃を受けたときに匹敵する高レベルの紫外線が降り注いでいたことを突き止めている。

 そしてリーバーマン氏は、カブトガニの仲間の節足動物である三葉虫が絶滅したのはオルドビス紀の出来事に関連していると考えている。三葉虫のほとんどは海底の泥の中で暮らす。しかし、一部の種は若い時期を浅瀬に浮いて過ごすため、紫外線にさらされやすい。ただし、リーバーマン氏もNASAのトンプソン氏と同様、「将来のガンマ線バーストを心配して夜も眠れなくなるようなことはない」と話す。

 同氏は今回の研究を、宇宙の中で地球が弱い存在であることを指摘したものと評価している。「この研究は自然淘汰や適応といった事柄について新たな視点を与えてくれた」。

 この研究をまとめた論文は、「International Journal of Astrobiology」誌に提出された。

史上最大のガンマ線バーストを観測

February 25, 2009 National Geographic News

「観測史上最大のエネルギー量を放つ爆発現象だ」。NASAの科学者たちは、昨年打ち上げたフェルミ・ガンマ線天文衛星がとらえた爆発の姿に驚きの声を上げた。

 今回観測されたのは「ガンマ線バースト」(爆発的放射)と呼ばれる爆発現象で、地球からおよそ122億光年離れた場所で発生した。ガンマ線バーストがフェルミに搭載されている高解像度カメラで撮影されたのは初めてのことである。天文学者の間では、ガンマ線バーストは通常、大質量星が燃料切れを起こして崩壊するときに発生すると考えられている。

 今回のガンマ線バーストは、これまでに観測された爆発現象の中で、放出されたエネルギーの総量が最大で、初期エネルギー出力も最も高く、噴出された粒子ジェットの移動速度も最高速であるという。

ガンマ線衛星がパルサーを新たに発見

January 14, 2009 National Geographic News

 NASAのフェルミ・ガンマ線天文衛星が新たに12個のパルサーを発見した。これにより、超新星残骸であるパルサーの発するエネルギーをさらに詳しく観測することができる。

 このCG画像のように、パルサーの正体は高速回転する中性子星である。大質量星が超新星爆発を起こした後に残る高密度の中心核から放射状のビームが発せられている。

 初めてパルサーが発見されたのは、中性子星の磁極から放射された電波が地上の検出器を通過した瞬間だった。その規則的な周期から、中性子星はパルスを発しているかのように見えた。地球に届く電波は極めて低エネルギーであり、パルサーの持つ強烈なエネルギーのごく一部にすぎない。

 フェルミ・ガンマ線天文衛星は高エネルギーのガンマ線を検出することが可能だ。ガンマ線はパルサーのエネルギー源の1割以上を占めるとされている。

宇宙の灯台は、なぞの天体

2009年01月13日 読売新聞 Yomiuri On-Line

40年越しの「パルサーの不思議」は解けるか?

 古来より夜空の星々は大海原を航海するときの道標として使われてきました。それらの星々の輝くこの広大な宇宙の中の道標となる星、それが「宇宙の灯台=パルサー」なのです。

パルサーから灯台の光のように出る電波がちょうど地球を向いたときだけ光って見える。ライトの光源はパルサーと一緒に自転しているので地球からは規則正しく点滅して見える。

 今から約40年前の1967年のある日のこと、イギリスの天文学者アントニー・ヒュウィッシュと大学院生ジョスリン・ベルの二人は、こぎつね座の方向から宇宙から規則正しく点滅する電波が出ていることを発見しました。

 夜空の星々は瞬いて見えますが、その瞬きは規則的なものではありません。 彼らの発見した電波の点滅は間隔があまりに規則正しく、狂いがなかったので、当時は宇宙人からの信号ではないかと噂された程です。

 科学者達の調査によって、この電波の源はこれまで見つかったことのなかった、まったく新しいタイプの天体であることがわかりました。

 この星は、点滅(パルス)する星(スター)ということで、パルサーと名づけられました。パルサーからはサーチライトのような電波が出ていて、その“光源”が星の自転に合わせてクルクル回っていると考えられています。点滅してみえるのは、電波が地球の方向を向いたり、はずれたりするためです。

 それはまるで、宇宙空間に浮かぶ灯台のようです。もし宇宙を旅したらパルサーをたよりに宇宙での位置を知ることができるはずです。

 それでは、パルサーの正体はなんなのでしょう?

 人体を含め、物質というものはどれも電子、陽子、そして中性子の3種類の小さな粒子が集まってできています。パルサーは、ほとんどが中性子で構成されている中性子星と呼ばれる星だと考えられています。

 このパルサーは太陽の3倍から8倍ぐらいの星がその一生最終段階でおこす大爆発(超新星爆発)の燃え残りです。

 パルサー内部ではギチギチに中性子が詰め込まれており、角砂糖一粒の大きさが、その重さは地球上の全人類の体重を足しあわせた重さと同じくらいになります。

 ものすごく重いパルサーですが、その大きさは市町村ひとつと同じくらい、直径10キロほどです。地球のざっと1000分の1の小さな星です。

 こんな小さなところなのに重さはものすごいため、星を作っている粒子は、重力に押されて、マイナスの電気を帯びた電子とプラスの電気を帯びた陽子はくっついてしまい、中性子ばかりになってしまうんです。

 また、その自転周期も1秒未満から数秒とものすごいスピードです。 

 これは、たとえば、フィギュアスケート選手が回転するとき、腕を伸ばしているより、縮ました方が回転が速くなるのと一緒です。パルサーの場合もともと太陽のサイズあった星が地球の1/1000まで縮むのですから、自転の速度もその分、速くなるんです。

 こんな奇妙な星があるなんて驚きです。宇宙における新しい発見は人々に驚きと感動を与えてくれます。

 パルサーという新しい天体の発見の功績によってヒューウィッシュはノーベル賞を受賞しました。

 多くの天文学者がこの奇妙な星のまわりで何が起きているか知りたいと研究しています。いまではパルサーは約2000個も発見されています。

CTA1と呼ばれている超新星の残骸の中心付近でガンマ線のみを放射しているパルサーが発見された。自転周期0.3168秒、年齢1万歳、太陽の約1000倍のエネルギーを放射している。提供・米航空宇宙局) そのうち7個のパルサーから光の千倍のエネルギーを持つX線や、そのX線よりさらに千倍もエネルギーの大きいガンマ線が出ているのが観測されています。X線やガンマ線は光の速さの99.9999…%まで加速されている電子から放射されています。ほとんど光と同じ速さ。

 地球上では、このような速さまで電子を加速することはできません。電子を光速近くまで加速する実験をするには一般家庭10万戸相当の電力が必要といわれます。それでもここまで加速することはできないのです。

 これまでに見つかったパルサーには、生まれてから1000歳くらいの若いパルサーから10万歳くらいの年配のパルサーまでいろいろあります。ちなみにパルサーは年をとるにつれて電波を出す力が弱くなり、10万歳を超えると電波を出せなくなってしまいます。パルサーのまわりには、陽子とくっつかなかった電子があるそうです。若いパルサーの場合は、きっとこのような元気な電子がたくさんあるのですが、パルサーが年をとるにつれてこのような電子はだんだん少なくなってくるのでしょう。

 私たちはパルサーから届く電磁波を調べることで、パルサーの周りで何が起きているのかをおぼろげながら知ることができます。特に若いパルサーの放つエネルギーの大きな、X線やガンマ線にこそ、情報が多くつまっているのです。

 ではパルサーの周りのいったいどこで、どのように電子がこんなものすごい速さまで加速されているのでしょうか?

 超高速で回転するパルサーがエネルギー源となっていると考えられています。ただし、その仕組みは、これまでの研究によって断片的にはいろいろわかってきたのですが、その全体像はまだ誰も説明できていないのです。これこそパルサーが我々に与えた宿題で、発見から40年経った今でも解けない大問題として残っています。

 この問題解決にむけて台湾中央研究院の高田順平さんは新しい手法でこの難問に取り組むことを考えています。それはコンピュータで観測されるような本物そっくりのパルサーを実際に「作る」という試みです。

パルサーからのガンマ線放射を観測するために開発された望遠鏡を載せているフェルミ天文衛星(提供・米航空宇宙局) また、天体観測を目的とした人工衛星である天文衛星を使ってパルサーを「見る」ことも非常に有効な手段です。特に08年6月11日アメリカ航空宇宙局によって打ち上げられたフェルミ天文衛星は、パルサーからのガンマ線放射を観測するために開発された望遠鏡を載せています。08年10月にフェルミ天文衛星はガンマ線のみを放射しているパルサーを初めて発見しました。

 このことは、さらに多くのガンマ線を出すパルサーをフェルミが見つけることを確実にした、研究者を非常にわくわくさせるような発見でした。

 これらの成果を合わせることでいよいよこの長年の問題に終止符を打つことができるかもしれません。(和田 智秀、山形大学 理工学研究科 博士研究員) (協力・国立天文台 科学文化形成ユニット)

ガンマ線だけを放つパルサー

【2008年10月21日 NASA】AstroArts

 これまでパルサーは電波を規則正しく放つ天体として知られていたが、NASAのガンマ線天文衛星フェルミの観測で、ガンマ線の信号しか見せないパルサーが発見された。似たような天体は数多く隠れている可能性がある。

 超新星残骸CTA 1とパルサーが見つかった位置(中央左寄り)、およびパルサーの想像図。パルサーの磁力線(青)に沿って動く荷電粒子がガンマ線(紫)を生み出している。クリックで拡大(提供:NASA/S. Pineault, DRAO) ケフェウス座の方向約4,600光年の距離にあるCTA 1は、1万年ほど前に起きた超新星爆発の残骸だ。ガンマ線天文衛星フェルミは、ここに約0.3秒(316.86ミリ秒)周期で規則正しくガンマ線を地球へ放つ「パルサー」を発見した。

 超新星爆発のあとには高密度の天体である中性子星が残されることが多いが、そのうち1,600個ほどが「パルサー」として観測されている。中性子星は強力な磁場を持ち、磁極の方向からは電磁波のビームが放たれている。さらに、中性子星は超高速で自転しているため、電磁波のビームは灯台のように回転することになる。離れたところからは規則正しく明滅する電磁波の信号(パルス)が観測されるため、パルサーという名前がついた。

 これまで、ほとんどのパルサーからの信号は電波観測で発見されていたが、中には可視光やX線などで光るものも見つかっていた。しかし、CTA 1に発見されたパルサーから検出されたのは、ガンマ線だけなのである。このようなパルサーが発見されたのは、初めてのことだ。

 フェルミの研究チームによれば、中性子星から放たれるガンマ線は、電波などほかの電磁波のビームに比べて広がっている。そして、CTA 1のパルサーは地球に対してガンマ線だけが届くような角度で自転しているのではないかという。

 研究者は、同様の天体は数多く存在すると考えている。今後もフェルミがその威力を発揮し、新しいガンマ線パルサーを見つけてパルサーの研究に重要な役割を果たすかもしれない。

初の“見えない”パルサーを発見Anne Minard

October 16, 2008 for National Geographic News

 観測衛星や地上からでは観測が不可能だったパルサーを、最新の宇宙望遠鏡「フェルミ・ガンマ線天文衛星」が発見した。

 パルサーとは、大質量の恒星が超新星爆発を起こした後に残る小さくて高密度の中性子星の一種である。パルサーは通常の中性子星と違ってその磁極から放射線を放出し、その放射線はパルサーの自転に従ってまるで灯台のように移動していく。

 新しく見つかったパルサーは、ケフェウス座の一部で地球から4600光年の距離に位置し、時速百数十万キロで自転している。そのガンマ線のビームは1秒に3回ほど地球まで到達している。NASA、米国エネルギー省、および国際的パートナーが共同で開発したフェルミ・ガンマ線天文衛星は、宇宙空間でガンマ線を観測する目的で6月に打ち上げられた。ガンマ線は、電磁スペクトルの中で最もエネルギーの高い電磁波である。

 フェルミ・ガンマ線天文衛星に携わる科学者によると、パルサーは以前から電波やX線で位置が特定されていたが、新しいパルサーはガンマ線観測だけで発見された初めての天体であるという。「これまで隠れていた若いパルサーを見つけるには、フェルミ・ガンマ線天文衛星は最適なツールであることがわかってきている」と、研究論文の共著者であり、メリーランド州にあるNASAゴダード宇宙飛行センターの科学者でもあるアリス・ハーディング氏は言う。

「新種のパルサーの発見や、謎に包まれているガンマ線バーストと呼ばれる現象の源を特定するにはガンマ線での観測が欠かせない。またこのミッションで、私たちの銀河に存在する超新星もその数を増やせるかもしれない」と同氏は期待する。

 最初のパルサーからの電波が発見されたのは1968年のことで、それ以来、天文学者は1800個のパルサーを数え上げてきた。NASAのガンマ線検出器EGRET(Energetic Gamma Ray Experiment Telescope)は1991年から2000年までに数百のガンマ線源のカタログを作成し、その中の一部はパルサーであることが判明している。

 しかしハーディング氏によると、「EGRETが検出したガンマ線源の多くはいまだに正体がわかっていない。現時点では、それらはガンマ線しか放出しないパルサーではないかと考えている。EGRETの感度が良くないために検出されなかったガンマ線源が、ほかにも多く存在している」と言う。

 新たに発見されたパルサーは、約1万年前に爆発したCTA 1と呼ばれる若い超新星の残骸の中にあった。フェルミ・ガンマ線天文衛星には、ガンマ線源を探して3時間ごとに宇宙全域を走査する広域望遠鏡(LAT)が搭載されている。その広域望遠鏡は、おおよそ1分間に1度、CTA 1から放出されてくるガンマ線を観測した。

 科学者は、このガンマ線パルス放出のレートに基づいて中性子星のパルス動作と自転周期を結びつけることができた。「パルサーは、その誕生から1億年の間に放射線ビームの放出ペースが遅くなりやがて停止する」とハーディング氏は補足した。パルサーCTA 1の場合、自転は8万7000年ごとに約1秒というペースで遅くなっている。

 ハーディング氏のチームは、10月16日付けの「Science Express」電子版で公開される論文でこの新しいパルサーを解説している。

NASAが全天ガンマ線宇宙図を発表 -広島大学が開発した高性能センサーの成果-

2008年08月29日 広島大学

 NASAが6月12日(日本時間)にアメリカ合衆国ケープカナベラル空軍基地から打ち上げた、広島大学が開発・日本で製造した高性能センサーを搭載したガンマ天文衛星(GLAST:Gamma-ray Large Area Space Telescope)の本観測が始まり、NASAと国際GLASTチームは8月27日(同)、衛星の新しい名称とファーストライト初期観測成果(全天ガンマ線宇宙図)を発表しました。

 また、広島大学の大杉節宇宙科学センター長が代表を務める日本GLASTチームも、同日11時から東京港区のキャンパスイノベーションセンターで記者会見を開催し発表しました。

 衛星は、ノーベル物理学賞を受賞したエンリコ・フェルミ氏にちなみ、『フェルミ・ガンマ線天文衛星』と命名されました。ガンマ線望遠鏡の主要エレメントとして用いられたセンサーは、予定通りすばらしい性能を発揮していることが確認されました。目(可視光)で見える宇宙の姿より遙かにダイナミックに活動している様子を捉えることが出来ると共に、宇宙で最も巨大な爆発であるガンマ線バーストなど、多数の宇宙の謎を解明することができると期待されています。

 この衛星の開発には、日本から広島大学、JAXA/ISAS、東京工業大学、東京大学の研究者が貢献しています。研究資金としては、主として高エネルギー加速器研究機構、日米科学技術協力事業(高エネルギー分野)および文部科学省科学研究費補助金(特定領域「ブラックホール天文学の新展開」、研究代表者:深澤泰司広島大学教授)により遂行され、その他理化学研究所、広島大学、JAXA/ISAS、東京大学の支援も受けています。

 なお、東京での記者会見には、大杉節宇宙科学センター長のほか、深澤泰司広島大学大学院理学研究科・教授、高橋忠幸宇宙航空開発機構宇宙科学研究本部・教授、河合誠之東京工業大学大学院理工学研究科・教授、高崎史彦高エネルギー加速器研究機構素粒子原子核研究所長/理事が出席されました。

【お問い合わせ先】広島大学学長室広報グループ TEL:082-424-6017

国際ガンマ線天文衛星、「フェルミ・ガンマ線天文衛星」と命名披露

2008年08月29日 国立天文台・広報室

 日本も参加している国際ガンマ線天文衛星 (注) GLAST (グラスト、Gamma-ray Large Area Space Telescope) は、打ち上げから約2カ月間にわたる軌道上での性能検査を終え、科学的なデータを得る準備が整いました。これを区切りに、日本時間の8月27日未明、NASA (アメリカ航空宇宙局) は、GLASTの名称を「フェルミ・ガンマ線天文衛星 (Fermi Gamma-ray Space Telescope) 」と改名して発表しました。

 この新しい名称は、高エネルギー物理学の開拓者であり1938年にノーベル物理学賞を受賞した、エンリコ・フェルミ (Enrico Fermi) 教授の功績をたたえたものです。

 ガンマ線は、最も高いエネルギーを持つ電磁波で、人間の目で見えている可視光線に比べると100万倍のエネルギーを持っています。宇宙において、ガンマ線は、ブラックホールや中性子星、超新星残骸などと関連した現象から放射されます。つまり、宇宙での非常に激しい活動現象を反映する電磁波なのです。

 フェルミ・ガンマ線天文衛星 (以下、フェルミ衛星) は、宇宙からのガンマ線を、高感度、広視野、高位置分解能で、連続的に観測できる画期的なガンマ線望遠鏡です。フェルミ衛星の観測データは、ブラックホールや、中性子星、超新星残骸によって、どのように物質が加速されるかを解明するための手がかりを与えてくれると期待されています。また、謎に包まれたガンマ線バースト現象を明らかにする上でも、貴重なデータをもたらしてくれるでしょう。

 フェルミ衛星には日本の研究者も重要な貢献をしています。たとえば、高視野・高感度でガンマ線を観測するために衛星に搭載された「ガンマ線大面積望遠鏡 (LAT) 」には、広島大学の研究チームと浜松ホトニクスによって開発されたセンサーが使われています。また、衛星の運用も、米国、欧州と共同でおこなっています。

 フェルミ衛星の観測データを使った日本国内の大学・研究機関の研究体制も整いつつあり、今後の成果が期待されます。 たとえば、広島大学の光学赤外線望遠鏡「かなた」や東京工業大学のガンマ線バースト残光追跡観測用望遠鏡「MITSuME (三つ目) 」、X線天文衛星「すざく」などは、フェルミ衛星によって検出されるガンマ線バースト現象や、ガンマ線領域での突発現象天体を別の波長で観測する準備を整えています。

 国際宇宙ステーションの日本モジュール「きぼう」に設置予定の全天X線監視装置MAXIの観測チームは、ブラックホールや中性子星の周りで起こるフレア現象をフェルミ衛星のガンマ線観測と合わせて総合的に解析することで、それらの背景にある物理の基礎過程の理解が進むと考えています。

 また、名古屋大学を中心とする研究チームは、銀河系内の宇宙線が巨大分子雲と相互作用して生成すると考えられているパイ中間子の検出に大きな期待を寄せています。

 注:フェルミ・ガンマ線天文衛星は、米国、日本、イタリア、フランス、スウェーデン、ドイツの協力で開発された、大型の国際ガンマ線天文衛星。6月12日1時5分(日本時間)、米国のケープ・カナベラル空軍基地から、高度560キロメートルの円軌道に打ち上げられた。日本からは、広島大学、東京工業大学、東京大学、宇宙航空研究開発機構 (JAXA) の宇宙科学研究本部 (ISAS) の研究者が衛星の開発に参加している。

参照: 日本のフェルミ衛星チームのホームページ (広島大学)

    NASAのフェルミ衛星のホームページ (英語)

「GLAST」改め「フェルミ」、ファーストライト

ガンマ線で見た全天画像を公開

【2008年08月27日 NASA】AstroArts

 今年6月に打ち上げられたNASAの国際ガンマ線天文衛星「GLAST」が2か月間の観測機器の試験を終了し、そのファーストライト画像が公開された。NASAは画像公開と同時に、同衛星の名前を「GLAST」から、「フェルミ・ガンマ線天文衛星(Fermi Gamma-ray Space Telescope)」に改名したと発表した。

 フェルミ・ガンマ線天文衛星のファーストライト画像。ガンマ線で見た全天で、ラベルは右から順に、かに星雲パルサー、ふたご座にあるパルサー「ゲミンガ」、「ほ座パルサー」、天の川銀河の中心、ブレーザー「3C454.3」。クリックで拡大(提供:NASA/DOE/International LAT Team)

 NASAの国際ガンマ線天文衛星「GLAST」は、ブラックホールやガンマ線バーストなど宇宙でもっとも高いエネルギーを伴う現象の観測を目的に、今年6月に打ち上げられた。

 その後GLASTは、約2か月間にわたる搭載機器の試験を経て、観測を開始した。NASAはGLASTのファーストライト画像を公開するとともに、衛星の名前を変更することを発表した。

 新しい名前は、エンリコ・フェルミ(1901年〜1954年)にちなんだ「フェルミ・ガンマ線天文衛星」。フェルミは、宇宙線がどのように加速されるのかを初めて示したイタリア人物理学者である。

 NASAの科学ミッション委員会の主任研究員Paul Hertz氏は、「彼の名前がつけられた衛星は、多くの新しい現象を発見することでしょう。それら新しい現象を理解するための基礎を与えてくれたのがフェルミの理論なのです」と話している。

 フェルミ・ガンマ線天文衛星には、広域望遠鏡(LAT)とバーストモニター(GBM)が搭載されている。GBMは、すでに31のガンマ線バーストを検出している。公開された画像は、95時間かけて行われたLATのファーストライトで得られたものだ。天の川銀河の銀河面に存在するガスやちり、かに星雲(M1)など3つのパルサー、さらに数十億光年離れた銀河が、ガンマ線の波長で明るく輝いている。

 画像に見られるほ座パルサーやかに星雲の中心にあるパルサーの正体は、大質量星が超新星爆発を起こした後に残された磁場の強い中性子星である。2つの天体はともに電波を放射していたことから発見された。しかし、ふたご座のパルサー「ゲミンガ」は一風変わっている。実は、そのエネルギーのほとんどを電波ではなくガンマ線で放射しているのだ。フェルミ・ガンマ線天文衛星によって同様の天体が発見されれば、その放射メカニズムが明らかにされるかもしれない。

 また、3C454.3は、ブラックホールをエネルギー源とする銀河中心核のなかでも、とくに強力な「ブレーザー」と呼ばれる種類の天体である。この天体では現在、突発的な爆発現象が進んでいて、画像中ひときわ明るく輝いている。

 フェルミ・ガンマ線天文衛星の観測によって活動銀河の中心に潜む超巨大ブラックホール周辺で起きる現象に迫れば、新たな物理法則発見への手がかりにつながる成果が得られるかもしれない。

宇宙全域のガンマ線地図が明らかに

August 26, 2008 Victoria Jaggard for National Geographic News

 GLASTの名で知られる天文衛星から初期観測データが届いている。このデータに基づいて作成した“宇宙地図”により、宇宙物理学の数々の謎が解き明かされるかもしれない。

 6月11日に打ち上げられた国際ガンマ線天文衛星GLASTに、ノーベル物理学賞を受賞したエンリコ・フェルミ氏の名をとって“フェルミ・ガンマ線天文衛星”という正式名称が付けられた。この天文衛星は低高度軌道を周回しながら、宇宙空間のガンマ線の観測にあたっている。

 ガンマ線とは、電磁スペクトルの中で最もエネルギーの高い領域の波長のことで、この高エネルギー放射は、宇宙のかなたの解明が進んでいないさまざまな場所を発生源としている。その発生源には、中性子星や超大質量ブラックホールのほか、ガンマ線バーストという強大なイベントも含まれる。

 フェルミ・ガンマ線天文衛星から送られてきた最初の95時間分の観測記録に基づき、ガンマ線の発生源を地球から見た視点で示す宇宙地図が作成された。これまで作成に1年以上かかっていた詳細な宇宙地図と同レベルのものを作成できたという。この新しい地図が「これからの宇宙物理学の進歩を約束する」とNASAのゴダード宇宙飛行センター(アメリカ、メリーランド州)研究員スティーブ・リッツ氏は語る。

 この天文衛星の視野はこれまでにないほど広く、3時間もあれば宇宙全域を見渡すことができる。ガンマ線が発生源から急激に放出される様子も確認でき、ほかの観測者に伝えて経過を見守ることも可能になるという。

 ガンマ線の波長は短いため地球の大気によって遮られ、また高エネルギーであることから従来の望遠鏡ではレンズを通過してしまい、観測はこれまで困難だった。しかし、アインシュタインの有名な質量とエネルギーの等価性を示す方程式(E=mc2)が基礎となった検出装置を通すことで、ガンマ線のエネルギーを適切な状態に抑えられることが分かってきたという。

 フェルミ・ガンマ線天文衛星の広角望遠鏡では、入射したガンマ線を薄いタングステンのシートと、細いシリコン電極からなる16層の検出器で記録する。ガンマ線がタングステンの層にぶつかると電子と陽電子のペアになることがあり、その軌跡をシリコン上で追跡記録するとガンマ線の発生源が分かる仕組みだ。

 ガンマ線の発生源を調べれば、暗黒物質(ダークマター)などの正体も明らかになる可能性がある。ブラックホールで物質の速度が光速に迫るほど加速される理由や、太陽フレアから危険な高エネルギー荷電粒子が発生する理由も分かるかもしれない。

 フェルミガンマ線天文衛星のデータから作成された宇宙地図には、中央部分に明るい帯域があり、銀河系の中心から非常に高エネルギーのガンマ線が出ていることも判明した。この地図には宇宙で最も明るい“回転する中性子星”ほ座パルサー(Vela Pulsar)も映し出されている。

 さらに成果は宇宙地図だけにとどまらず、搭載されているバーストモニターには、およそ1日1回の頻度でガンマ線バーストも記録されていた。これはほかのどの天文衛星よりも優れた検知頻度だという。ガンマ線バーストはこれまでに観測されている中で最も明るい宇宙現象で、天文学者らの関心を集めている。

 フェルミガンマ線天文衛星は5年間にわたって観測を続ける予定だ。観測の結果、ガンマ線バーストをはじめ、さまざまな宇宙の謎が解明されるのではないかと期待されている。

国際ガンマ線天文衛星「GLAST」、打ち上げ成功

【2008年06月13日 NASA GLAST】AstroArts

 NASAの国際ガンマ線天文衛星「GLAST」が、米国東部夏時間6月11日午後12時5分(日本時間12日午前1時5分)に打ち上げられた。GLASTの開発に関わった日本は、運用やデータの分析にも参加する。

 国際ガンマ線天文衛星「GLAST」を搭載したデルタIIロケットの打ち上げのようす。クリックで拡大(提供:NASA/Sonoma State University/Aurore Simonnet) 米国東部夏時間6月11日(日本時間12日)、NASAの国際ガンマ線天文衛星「GLAST」が米・フロリダ州のケープカナベラル空軍基地からデルタIIロケットで打ち上げられた。

 打ち上げ後、GLASTはデルタIIロケットから分離され、太陽電池パネルを開いて電力の供給を開始したことが地上の官制センターによって確認された。GLASTは現在、地球を周回する円軌道に入っている。

 GLASTは今後約2か月かけて搭載している観測機器の確認を行い、その後本格的な観測に入る。

 なお、日本のX線天文衛星「すざく」は、巨大ブラックホールやガンマ線バースト現象などをGLASTと同時に観測する。

 そのほか、広島大学の可視光近赤外線望遠鏡「かなた」、東京工業大学の可視光望遠鏡「MITSuME」などの日本の望遠鏡も、GLASTによって検出されたガンマ線バースト現象の追跡を行う予定だ。


126億光年先の光を観測 ガンマ線バースト国内最遠

2006年10月06日 中国新聞

 群馬県は6日、同県高山村のぐんま天文台の望遠鏡で、地球から126億光年離れた場所で起きた宇宙最大級の爆発現象「ガンマ線バースト」の残光の観測に成功したと発表した。

 宇宙誕生から10億年程度で発生したもので、ぐんま天文台は「国内で観測された中では最も遠く、世界でも128億光年に次ぐ2番目に遠いものだろう」としている。

 9月27日午後11時すぎ、国際共同事業の観測衛星がペガスス座の方向にガンマ線バーストを発見し、世界中の観測施設に速報。ぐんま天文台は口径150センチの望遠鏡で同11時44分から観測し、約20等級の明るさの残光をとらえた。

 この日晴天だった国内では、大阪大の自動望遠鏡が16等程度、東大の木曽観測所が19等程度の残光を観測した。

 ガンマ線バーストは、大きな恒星の爆発で放出されたガンマ線と考えられている。

謎の大爆発の瞬間とらえた ガンマ線バーストを観測

2005年10月06日 asahi.com

 宇宙で起こる謎の大爆発「ガンマ線バースト」を日米欧の研究グループが観測し、地球から20億光年ほど離れた「つる座」の、古い星が集まっている銀河周辺で起きたことを突き止めた。爆発が瞬間的なガンマ線バーストは観測が難しく、発生場所が特定できたのは初めて。6日発行の英科学誌ネイチャーに論文が掲載される。

 ガンマ線バーストは、宇宙のかなたで突然、高エネルギーのガンマ線が爆発的に放射される現象だ。今回は、日本の理化学研究所と米仏の研究機関が共同開発した天文探査衛星「HETE2」が7月9日、わずか0.07秒間ほどで終わった瞬間的な爆発をとらえ、発生の方角を特定した。

 インターネットで速報されたHETE2の情報を基に、日本のすばる望遠鏡、米国のチャンドラX線観測衛星やハッブル宇宙望遠鏡などが、X線や可視光の「残光」を探した。

 瞬間的なガンマ線バーストは、星の進化の最終形態の一つである中性子星同士か中性子星とブラックホールが衝突、合体して起こるとの学説が有力視されている。観測にかかわった河合誠之・東京工業大教授は「古い星ばかりの銀河で爆発が起きたという観測結果は、この理論を裏付けるものだ」と話す。

 米国の研究グループを率いる米マサチューセッツ工科大のジョージ・リッカー博士は「ガンマ線から可視光まで観測できたのは今回が初めて。複数の観測の組み合わせが、重要な発見につながった」としている。

夜空に光、ブラックホールの「産声」か 3月29日出現

2003年04月20日 asahi.com
 先月29日の夜、南東の夜空に一時的に現れた「光」について、研究者が情報提供を呼びかけている。「ガンマ線バースト」による光で、ブラックホールが誕生するときに出るものとみられ、「産声」にもたとえられる。今回のものはこれまでで最も明るく、肉眼でも見えた可能性が高いという。

 超新星爆発や、中性子星の合体によってブラックホールができるときに出る高いエネルギーのガンマ線が、宇宙にあるガスにぶつかって発光すると考えられている。

 今回のバースト「GRB030329」は理化学研究所などの観測衛星が発見。地球からの距離は18億光年と、これまでで最も近いものの一つ。3月29日午後8時37分ごろ、しし座の背中付近に現れた。今のところ、可視光の観測データがあるのはその約1時間後から。それでも13等級の明るさがあり、出現直後には3等級だったという推測もある。

 河合誠之・東京工業大教授(宇宙物理学)は「出現直後の明るさの変化がわかれば、もとがどんな星だったかがわかり、ブラックホールの形成過程を知る手がかりになる」と話す。

 大西浩次・長野工業高等専門学校助教授(天文学)は「土曜の夜で好天だったので、見たり写真に撮ったりした人も多いのでは」と期待する。情報提供は大西さん(FAX026・295・7027)へ。

ガンマ線バーストをとらえたHETE(ヘティ)

(2001.11.15) 国立天文台・天文ニュース (495)
 NASAの人工衛星HETEが強力なガンマ線バーストをとらえ、その位置を特定しました。これに基づいてその余光に対しておこなわれた追跡観測により、このバーストは、50億光年という、ガンマ線バーストとしては比較的近い距離で起こったことが確かめられました。一般的に、ガンマ線バーストは10億光年以上の距離で起こるものが多いと考えられています。(全文 byアストロアーツ/天文ニュース )

宇宙の巨大な爆発現象ガンマ線バーストを追う

[毎日新聞2000年11月14日]
 宇宙のかなたから突然、多量のガンマ線が放射される「ガンマ線バースト」という謎(なぞ)の現象がある。日米仏3カ国共同の国際プロジェクトとして10月に打ち上げられた観測衛星「HETE(ヘティ)―2」の運用に携わる。

 ガンマ線バーストは1日に1回程度発生していると考えられるが、現在の観測体制では、バーストが発生した位置の特定などに時間を要する問題点があり、発生直後の「ホットな時間帯」での観測が難しかった。HETEはバースト発生から約10秒で位置を決定し、地上に連絡する。速報体制も整備されており、発生直後から天文台などさまざまな機関が観測を始めることが可能になる。

 ガンマ線バーストの観測には「いつ、どこで起きるか分からない正体不明のものを追う『宝さがし』のような魅力を感じる」という。最近はバーストの発生に伴い、大きめの双眼鏡なら観測可能な9等級の明るさを持つ「可視光フラッシュ」という光が見つかった例もあり、さらに興味のすそ野は広がった。

 HETEは年内にも本格運用が始まり、データはインターネットで公開される。「このデータを利用すれば、アマチュアでも可視光フラッシュなどの観測で大きな発見ができるチャンスがある」と、多くの天文ファンの参加を呼びかけている。

HETE-2打ち上げ成功〜宇宙の謎 ガンマ線バースト解明へ〜

理研ニュース2000年12月号
 日米仏3国の国際協力によって製作されたHETE-2(High Energy Transient Explorer:高エネルギートランジェント天体探査衛星・第2号機)が、マーシャル諸島共和国洋上より日本時間2000年10月9日午後2時38分、米国・航空宇宙局(NASA)によって打ち上げられた。

 HETE-2 の主目的は宇宙ガンマ線バーストの観測。当研究所は、ガンマ線バーストの位置決めにおいて中心的な役割を担う観測装置「広視野X線モニター」を製作した。

 また、赤道付近に3ヵ所設けられる主地上局のうち、シンガポール地上局の設置・運用を行うほか、同様に12ヵ所ほど設けられる副地上局のうちシンガポールとパラオの2局を担当している。

 無事計画軌道上に投入されたHETE-2は、現在、地球周回軌道上で観測装置の動作チェックを実施。来年からは本格的な運用が始まり、謎につつまれた宇宙ガンマ線バーストの起源解明へ向け、ガンマ線バーストの監視、観測を行っていく。

理研、宇宙のなぞの大爆発現象の観測めざし衛星打ち上げ

(2000.10.09)asahi.com
 理化学研究所(埼玉県和光市)と米仏研究機関の共同開発の天体探査衛星「HETE2」が日本時間9日午後2時38分、南太平洋・マーシャル諸島共和国の洋上から打ち上げられた。宇宙のなぞの大爆発現象「ガンマ線バースト」を観測をめざす。衛星は予定通り、高度625キロの軌道に投入された。

ガンマ線バーストから超新星が生まれる?

1999年11月04日【国立天文台・広報普及室・天文ニュース(303)
 ガンマ線バーストは、数10ミリ秒から数10分にわたって100万電子ボルトにも達する莫大な量のエネルギーを放出する特異な天体現象です。1967年に初めて発見されて以来謎の現象とされてきました。しかし、イタリア、オランダが共同で打ち上げたガンマ線観測衛星ベッポ・サックスによる精密な位置決定が可能になってから、その残光(afterglow)が観測できるようになり、正体がしだいに明らかになってきました。以下に述べるように、最近は超新星との関連がいわれています。

 ガンマ線バーストを説明するひとつの考えに、コラプサー(collapsar)モデルがあります。これは大質量の恒星核が崩壊し、恒星の自転軸に沿って光速に近い速さでジェット流が噴き出して、ガンマ線バーストになるというモデルです。そのあとにはブラックホールが残り、その周りを太陽質量程度の降着円盤が取り巻く形になります。このとき、ジェット流よりゆっくりした(1万km/s程度の)物質の流れも起こるため、膨張する光球から熱放射が生じて、これは一種の超新星として観測されます。つまり、このモデルが正しいなら、ガンマ線バーストの残光の中に、やや遅れて超新星が見えるはずです。

 1998年4月25日に発生したガンマ線バーストGRB 980425のごく近くに、バースト直後に超新星SN 1998bwが発見され、ちょっと話題になりました(天文ニュース190)。でも、このときにはあまり重要視されませんでした。しかし、別のガンマ線バーストGRB 980326でも、バーストの数週間後に、通常の残光の減衰状態と比べると60倍も明るい輝きが認められ、これも超新星の寄与ではないかと考えられて、超新星との関連はにわかに重大なものになりました。ガンマ線バーストの残光はべき指数法則にしたがって急激に減衰しますが、そこに超新星の寄与を考えると、現実の減衰が非常にうまく説明できるのです。光学的に初めて同定されたガンマ線バーストであるGRB 970228に対しても、超新星を考えれば、同様に残光の減衰が説明できるといわれています。

 こうしたことから、少なくともガンマ線バーストの一部は、大質量恒星核の崩壊によって生ずる可能性が考えられるようになりました。ことによると、すべてのガンマ線バーストがこのメカニズムなのかもしれません。仮定に仮定を重ねる話になりますが、そうだとすると、大質量星や銀河の進化などに対してガンマ線バーストが密接に関係する可能性も無視できなくなります。
  参照 Paradijs,Jan van, Science 286,p.693-694(1999).

90億光年かなたの巨大爆発

1999年3月26日 共同通信社
 今年1月に観測された『ガンマ線バースト(γ-Ray burst)』現象は、地球から90億光年という極めて遠い宇宙空間で起きた巨大な爆発だったことが国際研究グループの調査で分かり、26日発行の米科学誌サイエンスなどに発表された。  

 1月23日に観測された今回のバーストは、これまでに観測された中で最も明るく、宇宙を誕生させたビッグバンに次ぐほどの激しい爆発だったと考えられるという。

超新星がガンマ線バーストに一致

(1998年7月9日)【国立天文台・天文ニュース(190)】byアストロアーツ
 長い間の謎とされていたガンマ線バーストが、非常に遠方で起きた、膨大なエネルギー流出をともなう爆発現象であることがわかったのはつい最近のことです(天文ニュース175)。現在、こうした発見をもとに、多数の理論天文学者が、ガンマ線バーストのメカニズム追及を精力的におこなっていますが、また新しい事実が明らかになりました。

 去る4月25日、ガンマ線観測衛星ベッポ・サックス(Beppo-SAX)は、「ぼうえんきょう座」にある「 GRB980425 」と名付けられたガンマ線バーストを検出しました。アムステル大学のガレマ(Galama,T.J.)らは、このバーストの光学的アフタグローを捕らえようと、チリ、ラシーヤにあるヨーロッパ南天天文台の、口径3.6メートル新技術望遠鏡を4月28日にこの点に向けたところ、そこにある棒渦状銀河( ES0 184-G82と名付けられている)の腕に、15等級の超新星が出現しているのを発見したのです(この超新星には SN 1998bw の記号がつけられました)。

 ガンマ線バーストの位置が超新星と一致したのは初めてのことです。そして、ガンマ線バーストと無関係に超新星が偶然に同じ場所に出現したということは、確率から考えてほとんどあり得ないでしょう。おそらく、ひとつの爆発現象が、ガンマ線領域の観測ではガンマ線バーストとして、また可視光の領域では超新星として捕らえられたものと考えるのが自然です。それでは、ガンマ線バーストと超新星とは同じ現象なのでしょうか。この点を明らかにするため、各国の天文学者は総力を挙げてこの天体の追跡観測をおこないました。

 その結果、かなり詳細な状況が明らかになってきました。まず、超新星 SN 1998bw は約1億4000万光年の距離にあり、ガンマ線による放出エネルギーもそれほど大きいものではなかったことがわかりました。たとえば、昨年12月14日に「おおぐま座」で検出された大規模なガンマ線バースト「GRB971214」に比べると、そのエネルギーは僅かに10万分の1程度しかありません。一方、電波による明るさが一般の超新星に比べて非常に明るいことや、可視域のスペクトルではイオン化した水素やヘリウムの線が見られないことなど、一般の超新星とは異なる特徴も見られました。これらの点から考えて、ガンマ線バーストと一致して観測されたこの超新星は、通常とはかなり異なる特殊な超新星らしく思われ、また、ガンマ線バーストも一般的なものではないと考えられます。したがって、今回観測された天体はひとつの特殊例である可能性が高く、ガンマ線バーストが必ずしも超新星に結び付くものではない、と考えた方がよさそうです。

 このように、ガンマ線バーストと超新星が一致する最初の例が発見されはしましたが、残念ながら今回の発見からは、ガンマ線バーストのメカニズムの謎は、未だ解明されたとはいえないのです。

参照  IAUC 6884(Apr.26,1998). IAUC 6895(May 7,1998). Schilling,G. Science 280,p.1836(1998).

ガンマ線 (gamma-ray) : 波長0.1 nm(100keV)以下の電磁波です。X線よりさらに透過力が強く、機器の非破壊検査などに用いられます。

 ガンマ線天文学 (γ-Ray Astronomy):宇宙からやってくるガンマ線を測定して、宇宙の超高エネルギー現象を調べる天文学。ガンマ線は大変高いエネルギーの荷電粒子や、原子核反応にともなって放出されます。特に、電子と陽電子が衝突して消滅した時に放出される輝線がいくつかのガンマ線天体から検出されています。ガンマ線の検出方法は実に様々で、人工衛星を使ったり、地上に放射線検出器を並べた望遠鏡を使ったり、また、ガンマ線が大気と衝突して原子核反応を起こし、結果として放出される光を地上の望遠鏡で測定したりします。

 ガンマ線バースト (γ-Ray burst):ガンマ線が数秒から数十秒の間突然明るくなる現象。その成因については、まだわかっていません。コンプトンガンマ線天文台の観測により、ガンマ線バースト源は全天にほぼ一様に分布していますが、我々からの距離に対しては一様に分布していない事がわかってきました。これは、ガンマ線源が我々に比較的近いところで存在するのか、または、宇宙論的に遠くに存在するのかどちらかである事を意味します。多くの研究者が精力的に研究しています。

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